JP5983101B2 - 車両の後部車体構造 - Google Patents
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Description
特許文献1,2の車両の後部車体構造では、サスペンションハウジング近傍部分にロアレインやガセットを設け且つホイールハウスの下部とリヤサイドフレームとの連結部分を一部に含むように上下方向に連続した閉断面を構成しているため、構造的には車体剛性を増加でき、内倒れや車体振動を抑制することが可能である。しかし、このような効果を奏するためには、前記連結部分に構成された閉断面が実際にサスペンションハウジング近傍部分に作用する荷重に耐え得るような十分な断面剛性を備える必要があり、連結部分をその一部に含む閉断面の断面係数を高くする必要がある。
節部材によって断面係数を増す場合には、閉断面内部に充填材を充填する際と同様に、車体重量と製造コストの面で課題が残る。特に、節部材は、ホイールハウスやガセット等の閉断面を構成する車体部材に対してスポット溶接によって接合されるため、ホイールハウスの下部とリヤサイドフレームとの連結部分において、車体構造上、スポットガンを配置するスペースや作業スペースを確保することが困難である。
これにより、車体重量を増すことなく、サスペンションハウジング近傍部分の車体剛性と生産性とを両立することができる。
また、補強部材を軽量化して、車体重量の増加を一層抑制することができる。
更に、リヤサイドフレームの断面係数を増加しつつ車幅方向内側部分の高さ位置を低くできるため、車体剛性の確保と後席乗員の上下スペース確保とを両立することができる。
図1〜図8に示すように、本実施例の車両Vは、後側部分にリフトゲート(図示略)を備えた4ドアタイプのハッチバック車である。この車両Vは、フロアパネル1と、左右1対のサイドパネル2と、左右1対のリヤサイドフレーム3と、左右1対のリヤサスペンション4と、左右1対のリヤホイールハウス5と、左右1対の補強部材30等を備えている。
フロアパネル1には、前後方向途中部に形成された後方上がり傾斜状のキックアップ部1aと、このキックアップ部1aよりも前側に左右1対のリヤシート(図示略)を設置するためのリヤシートパン1bと、キックアップ部1aよりも後側に荷室を形成するためのリヤフロア1cとが設けられている。
下側メンバ部材7は、キックアップ部1aの下部に固着され、キックアップ部1aの下部と協働して車幅方向に延びる閉断面を構成している。
前壁部8aと後壁部8bは、リヤサイドフレーム3の車幅方向外側端部に対応する位置まで延設されている。上壁部8cの車幅方向外側端部、所謂開口部8dの車幅方向内側端は、リヤサイドフレーム3の車幅方向内側端に対応する位置に設けられている。
サイドパネルインナ2aには、キックアップ部1aの頂部に対応する部分から後側部分に亙って車室内側へ膨出するリヤホイールハウス5が形成されている。
上側フレーム10には、車幅方向内側部分に前後方向に延びる上壁部10aと、上壁部10aの車幅方向外側部分に連なり且つ前後方向に延びる段差部10bとが一体形成されている。段差部10bは、上壁部10aよりも高さ位置が高くなるように上方に突出状に設けられている。
これら1対のリヤホイールハウス5は左右対称構造であるため、以下、右側のリヤホイールハウス5について主に説明し、左側のリヤホイールハウス5の詳細な説明を省略する。
図1〜図4,図8に示すように、リヤホイールハウス5は、サイドパネルインナ2aの下端から車幅方向外側へ膨出するホイールハウスアウタ(図示略)と、サイドパネルインナ2aの下端から車幅方向内側へ膨出するホイールハウスインナ5aとにより形成されている。
ホイールハウスアウタは、部分円環状に形成され、上縁部がサイドパネルインナ2aの円弧状下端部に連結され、下縁部がサイドパネルアウタの下端部に連結されている。
ホイールハウスアウタには、アッパレインアウタ(図示略)が設けられている。このアッパレインアウタは、断面略ハット状に形成され、上縁部がサイドパネルインナ2aの車幅方向外側部分に連結され、下縁部がホイールハウスアウタの上側部分に連結されている。
サスペンションハウジング12は、ホイールハウスインナ5aの上部に車室側へ張り出すように設けられ、リヤサスペンション4のダンパ装置4aを収容可能な柱状空間を構成している。サスペンションハウジング12の前後方向略中央部分には、ダンパ装置4aの上端を支持可能なダンパ支持部12aが設けられている。このダンパ支持部12aは、ホイールハウスインナ5aの上側位置において略水平状に形成され、車幅方向外側端部がサイドパネルインナ2aに接合されている。
後側ガセット14は、断面略コ字状の本体部14aと、この本体部14aの前後端から夫々延びる前後1対のフランジ部14bとを備えている。この後側ガセット14は、上端が後側膨出部13bの下端に接合され、下端がリヤサイドフレーム3の段差部10bに接合され、1対のフランジ部14bがホイールハウスインナ5aに接合されている。これにより、後側ガセット14は、ダンパ支持部12aの後側近傍位置とリヤサイドフレーム3との間を連結するための上下方向に延びる閉断面を構成している。
図2〜図7に示すように、第1ガセット部21は、断面略コ字状の本体部21aと、この本体部21aの前後端から夫々延びる前後1対のフランジ部21bとを備えている。この第1ガセット部21は、上端が前側膨出部13aの下端にスポット接合され、下端が第2ガセット部22の上端にスポット接合され、1対のフランジ部21bがホイールハウスインナ5aにスポット接合されている。これにより、第1ガセット部21は、ダンパ支持部12aの前側近傍位置から下方へストレート状に延びる閉断面を構成している。
それ故、前側ガセット20は、ホイールハウスインナ5a、リヤサイドフレーム3及びクロスメンバ6と協働して略L字状の閉断面を形成している。
図4,図6〜図9に示すように、前側ガセット20が構成する閉断面の内部には、補強部材30が収納されている。この補強部材30は、ハニカム構造体31と、このハニカム構造体31を夫々の車体部材に接着接合するための発泡接着剤32とによって構成されている。尚、接着剤32は、発泡前では、例えば1mm程度の厚さを有し、所定温度以上で数倍、例えば2〜3mmの厚さまで発泡し、ハニカム構造体31と各車体部材とを接着可能な性質を有している。
それ故、図9(d)に示すように、接着剤32は、後側表面部34と上側表面部35と下側表面部36と右側表面部37とに貼着される。
前側ガセット20の接合前段階において、補強部材30を前側表面部33が前方を向く姿勢で段差形状部39が上壁部10a及び段差部10bの上面に面当接するように載置する。その後、予め第1ガセット部21と第2ガセット部22とが接合された前側ガセット20を上側メンバ部材8にスポット接合し、補強部材30を上部から覆いつつ、段差部10bとスポット接合、更に、予め前側膨出部13aが接合されたホイールハウスインナ5aとスポット接合する。
このとき、接着剤32が後側表面部34と上側表面部35と下側表面部36と右側表面部37とに貼着されているため、後側表面部34が前側ガセット20及び上側メンバ部材8の後壁部8bに接着され、上側表面部35が前側ガセット20に接着され、下側表面部36がリヤサイドフレーム3に接着され、右側表面部37がホイールハウスインナ5aに接着される。これにより、ホイールハウスインナ5aの下部とリヤサイドフレーム3(上壁部10a及び段差部10b)との連結部分を含む閉断面の断面係数を増加でき、断面剛性を高くしている。
実施例1の補強部材30では、型抜き方向を前側に設定したため、前側表面部33を塞ぐ壁を省略したが、変形例1の補強部材30Aでは、型抜き方向を斜め上下方向に設定している。
実施例1の補強部材30では、型抜き方向を前側に設定したため、前側表面部33を塞ぐ壁を省略したが、変形例2の補強部材30Bでは、型抜き方向を前後方向に設定している。
これにより、ハニカム構造体31Bの成形時、型抜き方向を前後方向に設定することができる。
これらのグラフは、比較例の車体構造の評価値を100%としたとき、補強部材30,30A,30Bを夫々設置した車体構造の車体捩り剛性とサスペンション支持剛性との評価結果を示している。尚、比較例は、実施例1の前側ガセット20の内部から補強部材を省略した構造である。
この車両の後部車体構造によれば、前側ガセット20とホイールハウスインナ5aとリヤサイドフレーム3とによって構成された閉断面の内部にこれら閉断面構成部材に接着接合された補強部材30を設けたため、閉断面の断面積増加や充填材の閉断面内部への充填を行なうことなく、閉断面の断面係数を増すことができ、十分な断面剛性を確保することができる。また、接着接合によって補強部材30のためのスポット溶接工程を省略することができるため、スポットガンの配置スペースや作業スペースを確保する必要がなく、生産能率を増加することができる。これにより、車体重量を増すことなく、サスペンションハウジング12近傍部分の車体剛性と生産性とを両立することができる。
リヤサイドフレーム3はその車幅方向内側部分よりも上方に突出状に形成された段差部10bを備え、ハニカム構造体31に段差部10bの上面に接着接合される段差形状部38を設けたため、リヤサイドフレーム3の断面係数を増加しつつ車幅方向内側部分の高さ位置を低くでき、車体剛性の確保と後席乗員の上下スペース確保とを両立することができる。
1〕前記実施例においては、前側ガセットを第1ガセット部と第2ガセット部とによって構成した例を説明したが、単一部品で構成した前側ガセットを使用しても良い。また、3部材以上で構成した前側ガセットを使用することも可能である。
ハニカム構造体のリブとして格子状に延びる面状のリブを説明したが、特に形状について制限はなく、ピン形状等種々の形状を使用することができる。尚、ハニカム構造体とは、六角形(六角柱)に限らず、三角形(三角柱)や四角形(四角柱)等の多角形(多角柱)を並べたものも含む。
3 リヤサイドフレーム
4 リヤサスペンション
5a ホイールハウスインナ
8 上側メンバ部材
10b 段差部
12a ダンパ支持部
20 前側ガセット
30,30A,30B 補強部材
31,31A,31B ハニカム構造体
32 接着剤
33,33A,33B 前側表面部
34,34A,34B 後側表面部
39,39A,39B 段差形状部
V 車両
Claims (3)
- 車体側壁から車室内側に膨出すると共に上部にサスペンション部材のダンパ支持部を備えた左右1対のホイールハウスと、これら左右1対のホイールハウスの下部に連結されて前後方向に延びる左右1対のリヤサイドフレームと、前記ダンパ支持部近傍とリヤサイドフレームとを車室内側で連結する左右1対のホイールハウスガセットとを備えた車両の後部車体構造において、
前記リヤサイドフレームはその車幅方向内側部分よりも上方に突出状に形成された段差部を備え、
前記ホイールハウスガセットが前記ホイールハウス及びリヤサイドフレームと協働して正面視にて略L字状の閉断面を形成し、
前記閉断面の内部に前記ホイールハウスガセットとホイールハウスとリヤサイドフレームとに接着接合された補強部材を設け、
前記補強部材は、前記閉断面と略同じ形状に形成されたハニカム構造体と、このハニカム構造体を少なくとも前記ホイールハウスガセットとホイールハウスとリヤサイドフレームとに接着接合するための接着剤とで構成され、
前記ハニカム構造体に前記段差部の上面に接着接合される段差形状部を設けたことを特徴とする車両の後部車体構造。 - 前記左右1対のリヤサイドフレームを連結すると共にその左右端部が左右1対のホイールハウスガセットの下部に夫々連結されたクロスメンバ部材を備え、
前記補強部材が前記クロスメンバ部材に接着接合されていることを特徴とする請求項1に記載の車両の後部車体構造。 - 前記ハニカム構造体は、前側表面部と後側表面部のうち少なくとも一方の表面部が前記ホイールハウスガセットに前記接着剤によって接着接合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の後部車体構造。
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