JP5981841B2 - 磁気記録媒体用アルミニウム基板の製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体用アルミニウム基板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、磁気記録媒体(磁気ディスク)の基板として用いられ、高温下で磁性膜(記録層)形成に好適なSiO膜が成膜されたアルミニウム基板に関するものである。
情報記録用媒体として磁気記録媒体は汎用性の高い媒体である。磁気記録媒体に要求される特性として、硬度、および耐疵付性に優れていることが求められている。例えば磁気記録媒体は製造時や使用時に衝撃を受けて磁気ヘッドと磁気記録媒体が接触することがあるが、該接触等によって磁気記録媒体表面に疵や窪みなどの物理的欠陥が生じると、該欠陥が記録媒体の不良原因となる。そのため磁気記録媒体は十分な硬度と耐疵付性を有していることが要求されている。
また磁気記録媒体の表面が平滑であることも求められている。磁気記録媒体への情報の記録・読み出しは、記録媒体上を移動する磁気ヘッドを介して行われているが、磁気ヘッドと磁気記録媒体の間隔(磁気ヘッドの浮上高さ)はせいぜい数nm程度である。そのため磁気ヘッドとの接触や記録・読み出し不良を防ぐために磁気記録媒体にはサブナノメーターレベルの優れた表面平滑性が求められている。
磁気記録媒体用の基板としてはアルミニウム基板が知られているが、アルミニウム基板単独では、硬度や耐疵付性が不十分であり、また研磨による平滑性実現も困難である。そのため、アルミニウム基板表面に無電解NiPめっきが施されたNiPめっきアルミニウム基板が用いられている。NiPめっき皮膜は、硬度や耐疵付性も高く、研磨により優れた平滑性を実現できる。
NiPめっきアルミニウム基板は、圧延して製造されたコイル状のアルミニウム板を円板状に打ち抜き、内外周の旋盤加工および主表面の研削加工(グラインド加工)を施した後、無電解めっきによりNiPめっきを行い、更に研磨加工(ポリッシュ加工)、洗浄を行って製造される(非特許文献1)。
例えば磁気記録媒体の構成は、NiPめっきアルミニウム基板に、軟磁性裏打ち層、中間層(結晶粒制御層、結晶配向制御層など)などが形成され、その上に記録層として磁性膜が成膜され、更に表面保護層(硬質カーボンなど)が形成されている。
近年、磁気記録媒体は大容量化が進んでおり、記録密度を飛躍的に高める次世代磁気記録媒体の開発が行われている。例えば磁気記録媒体の高密度化を進めようとすると、磁性粒子を微細化する必要があり、磁気記録データの一部が周囲の熱の影響で消失してしまう熱揺らぎの問題が生じるため、磁性膜の保磁力を高めた磁気記録媒体が提案されている。しかしながら保磁力を高めると従来のヘッドではデータの記録が困難となることから、レーザで記録媒体を加熱しながらデータを記録する熱アシスト記録方式が注目されている。この記録方式では、磁気記録媒体に形成した磁性膜の加熱部分の保磁力を低下させているためデータの記録が可能であり、また非加熱部分は保磁力が高いため、熱揺らぎを解消できる。
このような熱アシスト記録方式に適した磁気記録媒体の製造過程においては、磁性膜の成膜温度など製造時の熱履歴が300℃以上、更には350℃以上になることがある。現在汎用されているNiPめっき皮膜を形成したアルミニウム基板の場合、下地のアルミニウム基板の耐熱性は370℃以上であるが、NiPめっき皮膜は300℃以上に加熱されると結晶化して磁性を持つようになるため、事実上300℃程度までしか対応できず、基板の耐熱温度が磁気記録媒体製造上の大きな制約となっている。
このような問題に対して、第三成分の添加によるNiPめっき皮膜の耐熱性改善が試みられているが(特許文献1)、せいぜい320℃程度までの耐熱性であり、十分な耐熱性改善効果が得られていない。
このため、現行のNiPめっきに代わる、非磁性で高硬度かつ耐疵付性に優れ、更に耐熱性にも優れた基板皮膜の開発が必要となっている。このような条件に合致する皮膜として非晶質のSiO2膜が着目されている。
例えば特許文献2には、ゾル−ゲル法によるSiO2膜が提案されている。しかしながらゾル−ゲル法で成膜した場合、その成膜過程での質量減少および体積収縮が大きく、必要とする膜厚を確保することが困難である。
更に特許文献3には、スパッタリング法によって、0.6μm程度のSiO2膜を成膜する技術が提案されている。表面精度、硬さ、耐摩耗性は実現できるものの、膜厚さ0.6μmでは耐疵付性を実現するには不十分である。耐疵付性を改善するためにSiO2膜を厚くすると、SiO2膜とアルミニウム基板との熱膨張率の差が大きいため高温環境下に曝されるとSiO2膜に亀裂が生じ易くなるという問題が生じる。
SiO2自体は非磁性で高温耐熱性を有するものの、実際にアルミニウム基板に成膜した場合には、上記のような亀裂等の問題が生じる。そのため、高温環境下に曝されても亀裂等が生じない実用性を有するSiO2膜は未だ提供されていない。
一方で、磁気記録媒体に用いられるアルミニウム基板自体(母材)の耐熱性は、例えば5086合金(JIS H4000)などは300℃以上における優れた高温耐熱性を有しており、また近年、500℃程度でも表面平滑性などを維持できるアルミニウム合金基板も提案されている(特許文献4)。
したがってこれら高温耐熱性に優れたアルミニウム基板に見合うSiO2膜を実現できれば、上記熱アシスト記録方式などのような磁気記録分野へのアルミニウム合金基板の利用に対する制約を大きく緩和することができる。
特開2012−195021号公報 特許第2552682号公報 特公昭53−37202号公報 特開2012−99179号公報
砥粒加工学会誌、Vol.43、No.11、1999年11月、p.475〜479
本発明は上記のような事情に着目してなされたものであって、その目的は、耐熱性、硬度、耐疵付性に優れた磁気記録媒体用アルミニウム基板を提供することである。更に本発明の目的は、これら特性に加えて、必要に応じて表面粗度を小さくするための研磨が可能であり、研磨後の表面平滑性にも優れた磁気記録媒体用アルミニウム基板を提供することである。
上記課題を解決し得た本発明の磁気記録媒体用アルミニウム基板は、厚さ6.0μm以上のSiO2膜が成膜されたアルミニウム基板であって、前記SiO2膜は前記アルミニウム基板を150℃〜370℃に加熱して、気相成膜法により成膜されたものであることに要旨を有する。
本発明の好ましい実施態様として上記気相成膜法は、プラズマCVD法であることが推奨される。
本発明の磁気記録媒体用アルミニウム基板は、所定の温度域に加熱されたアルミニウム基板に所定の膜厚のSiO2膜が成膜されているため、非磁性で耐熱性(好ましくは300℃以上、より好ましくは350℃以上、更に好ましくは400℃以上)と硬度(好ましくは4.0GPa以上、より好ましくは7.0GPa以上)、および耐疵付性(好ましくはNiPめっきと同等以上)に優れた特性を有する。更に本発明に係るSiO2膜は、成膜後の研磨手段として、従来のガラス基板の研磨技術を適用することが可能であり、研磨することによって、より表面平滑性に優れた磁気記録媒体用アルミニウム基板を提供できる。
したがって本発明のSiO2膜が成膜されたアルミニウム基板は、磁気記録媒体として好適であり、熱アシスト記録方式などのような磁気記録分野へのアルミニウム合金基板の利用に対する制約を大きく緩和することができる。
図1は、成膜時基板温度と[耐熱評価温度−成膜時基板温度]との関係を示すグラフである。 図2は、各種皮膜(試験材1〜4(SiO2膜)、および参考例1、2(SiO2膜なしとNiPめっき皮膜)と疵深さとの関係を示すグラフである。 図3は、SiO2膜の研磨前後のSiO2膜の表面粗さを示すグラフである。 図4は、SiO2膜を成膜する前のアルミニウム基板表面の表面粗さとSiO2膜を成膜した後のSiO2膜の表面粗さの変化を示すグラフである。
以下、本発明について説明するが、本発明において「成膜時の基板温度」とは、SiO2膜を成膜するときのアルミニウム基板自体の温度であり、基板に熱電対を設置して測定される基板の温度である。本明細書においては「成膜時の基板温度」を単に「成膜温度」、あるいは「基板温度」ということがある。
また「加熱時の基板温度」とは、磁性膜、表面保護層の形成など磁気記録媒体の製造過程で高温環境下に曝されたときの基板自体の温度であり、上記と同様熱電対により測定される基板の温度である。本明細書においては「加熱時の基板温度」を単に「加熱温度」、あるいは「耐熱評価温度」ということがある。
更に「加熱温度差」とは上記「加熱時の基板温度」と、「成膜時の基板温度」との温度差をいう。
なお、本発明では、基板の温度を測定しているため、SiO2膜や磁性膜などを成膜する際の装置や雰囲気等の設定温度と基板の温度(加熱時の基板温度)は一致しないことがある。例えば本発明の実施例ではSiO2膜が成膜された基板の耐熱性を評価するため、予め基板に熱電対を取り付けて、加熱炉内の温度と基板の温度との関係を調べ、基板の温度が製造過程の熱履歴を模擬した温度になるように加熱炉の温度を設定しているため、加熱炉の温度が基板の温度と一致していない場合がある。
本発明者らは、従来のNiPめっき皮膜に代替可能な程度の硬度や耐疵付性を有し、且つNiPめっき皮膜を凌駕する耐熱性に優れた皮膜について鋭意研究を重ねた。
一般にアルミニウム(純アルミニウム、アルミニウム合金含む)の熱膨張係数は、おおむね、24×10-6/K前後であり、400℃の温度上昇で約1%線膨張することが知られている。一方、SiO2の熱膨張係数は、おおむね、1×10-7〜1×10-6/K程度の熱膨張係数であることが知られており、SiO2膜の線膨張はアルミニウムの線膨張に対して数十分の一程度である。
本発明者らは様々な条件でSiO2膜を成膜したアルミニウム基板について検討した。
まず、SiO2膜を成膜するときのアルミニウム基板温度を室温(25℃)程度に設定して膜厚3.5μmのSiO2膜を成膜し、次いでアルミニウム基板を電気炉に挿入して加熱したところ、250℃程度の加熱温度(加熱時の基板温度)になるとSiO2膜に亀裂が生じたり、アルミニウム基板からSiO2膜が剥離するなどの問題が生じることがわかった。
一方、SiO2膜の成膜時の基板温度を150℃以上に高めた場合、基板の加熱温度(耐熱評価温度)が300℃以上になってもSiO膜に亀裂や剥離は認められなかった(表1のNo.3〜24)。このことから、300℃以上の耐熱性(加熱時の基板温度)を確保するためには、成膜時の基板温度を少なくとも150℃以上とすればよいことがわかった。
このように高温下でSiO2膜を成膜した場合に300℃以上(耐熱評価温度)での優れた高温耐熱性を示す理由は次のように考えられる。
形状や大きさも影響するがSiO2は、一般に引張力に対しては破断しやすいが、圧縮力に対しては破壊されにくい性質をもつ。したがって上記のようにアルミニウム基板を加熱した状態でSiO2膜を成膜した場合、成膜温度から室温まで冷却するとSiO2膜は圧縮された状態であり、SiO2膜とアルミニウム基板との収縮差による負荷(圧縮力)が生じるが、SiO2膜は圧縮力に対する耐久性に優れており、SiO2膜の亀裂や剥離が生じないと考えられる。
一方、このように室温で圧縮力が作用したSiO2膜が成膜されたアルミニウム基板を加熱した場合、アルミニウム基板が熱膨張することでSiO2膜が引き伸ばされるが、室温において圧縮力が作用していた分、SiO2膜の成膜温度までは圧縮状態が緩和される方向に作用するため、実際にSiO2膜に作用する引張力が緩和され、その結果、SiO2膜の亀裂や剥離が生じ難く、優れた耐熱性を示すものと考えられる。
すなわち、SiO2膜の熱膨張は主に加熱温度と成膜温度との差に支配されるため、高温で成膜した場合は、再加熱しても室温から成膜温度まではSiO2膜には引張力は実質的に作用せず、成膜温度を超えて基板が加熱された場合に該成膜温度と加熱温度までの範囲でSiO2膜に引張力が作用する。したがってSiO2膜の成膜温度が高い場合、SiO2膜の成膜温度とSiO2膜成膜後の加熱温度との差分が引張力を生み出すため、室温でSiO2膜を成膜した場合と比べて上記熱膨張率差に起因するSiO2膜の亀裂や剥離が発生しにくくなるものと考えられる。
また成膜時の基板温度が高くなるにしたがって常温下でのSiO2膜の硬度も高くなる傾向を示した。例えば成膜時の基板温度を150℃とした場合のSiO2膜の硬度は8.0GPaであったが、基板温度が高くなるにつれて、硬度も8.4GPa(200℃)、8.8Gpa(250℃)となっている(No.13〜18)。同様のことは膜厚が異なる場合にも当てはまり、例えば膜厚が10.5μmとした場合も同様に(No.19〜24)、温度が高くなるにつれて(200℃→250℃→300℃)、硬度も高くなる傾向を示した(8.5GPa→8.8GPa→9.2GPa)。
したがって十分な硬度を付与するにはSiO2膜の成膜温度を高くすればよいことがわかった。
更にSiO2膜の膜厚が薄いとアルミニウム基板表面に対する保護膜としての機能(耐疵付性)が不十分であり、ある程度の膜厚が必要であることがわかった。すなわち、膜厚が6μm未満の例(No.1〜12)では、いずれも耐疵付性が悪かったが、膜厚が6μm以上の例では、満足できるレベルの耐疵付性を備えており(No.13以降)、特に膜厚が10μm以上の例(No.19〜24)では、より優れた耐疵付性を備えていた。
本発明は上記知見に基づいてなされたものであって、厚さ6.0μm以上のSiO2膜が成膜されたアルミニウム基板であって、前記SiO2膜は前記アルミニウム基板を150℃〜370℃に加熱して、気相成膜法により成膜されたものであることに要旨を有する。
以下、本発明の磁気記録媒体用アルミニウム基板の構成について具体的に説明する。
[SiO2膜の膜厚:6.0μm以上]
アルミニウム基板に形成したSiO2膜の膜厚が薄いと、硬度が高くても耐疵付性が不十分であり、磁気記録媒体に欠陥が生じ易くなる。一方、所定の成膜時の基板温度域で膜厚6.0μm以上のSiO2膜を形成すると磁気記録媒体表面が製造時や使用時に衝撃を受けても、疵や窪みなどの物理的欠陥を抑制できる程度の十分な耐疵付性を付与できる。したがってSiO2膜の膜厚は6.0μm以上とする必要があり、好ましくは9.0μm以上、より好ましくは10.0μm以上である。一方、耐疵付性の観点から膜厚の上限は特に限定されないが、SiO2膜の膜厚が厚くなりすぎると後記するように熱膨張に起因する引張応力に対する耐力が低下するため、好ましくは15.0μm以下である。
なお、所望の表面平滑性を確保するためにSiO2膜を研磨する場合、研磨量も考慮して成膜するSiO2膜の膜厚を決定し、研磨後の膜厚が上記範囲となるようにすることが望ましい。
[SiO2膜成膜時のアルミニウム基板温度:150℃〜370℃]
アルミニウム基板の温度が150℃よりも低い温度でSiO2膜を成膜した場合、基板の加熱温度が300℃に達する前にSiO2膜に亀裂等が生じる場合があるため、NiPめっきの耐熱温度である300℃を超える耐熱性を付与することができない。一方、成膜時のアルミニウム基板の温度が370℃を超えるとアルミニウム基板自体の強度(引張強度)や0.2%耐力が低下してしまうため、磁気記録媒体に要求される基板特性が不良となる。特に基板温度が370℃を超えるとアルミニウム基板の強度は室温下の強度の1/4以下まで低下してしまい、成膜中や成膜後の冷却過程でアルミニウム基板が変形したり、基板表面に凹凸が発生したりする。その結果、室温まで冷却してもSiO2膜に十分な圧縮力を作用させられなくなる場合がある。そのため、再度加熱すると成膜温度よりも低い温度からSiO2膜に引張力が発生してしまい、所望の高温耐熱性が得られないことがある。
耐熱性を高める観点からはSiO2膜成膜時のアルミニウム基板の温度は高い方がよいため、アルミニウム基板温度は150℃以上、好ましくは200℃以上である。またアルミニウム基板の温度を高くし過ぎると上記したようにアルミニウム基板の強度などの特性が低下するため、370℃以下、好ましくは350℃以下である。
アルミニウム基板の温度を150℃〜370℃に高めた状態で当該温度域にて気相成膜法によりSiO2膜を成膜することによって、上記したように、SiO2膜が加熱による熱膨張に起因する引張力が作用し始める温度を高めることができるため、SiO2膜の亀裂や剥離を防止できる。
更に本発明においてSiO2膜の成膜温度は、SiO2膜の膜厚と要求される耐熱温度(加熱時の温度)を考慮して決定することも好ましい実施態様である。本発明者らがSiO2膜の膜厚、加熱温度差([加熱時の基板温度]−[成膜時の基板温度])、耐熱性の関係について検討した結果、SiO2膜の膜厚が厚くなり、また加熱温度差が大きくなるほど、SiO2膜の加熱温度差によって生じるSiO2膜とアルミニウム基板との熱膨張の差に起因する引張力に対する耐力が低くなってSiO2膜の亀裂や剥離が生じる傾向があることがわかった(表1、および図1)。したがって上記成膜温度や引張応力との関係で亀裂等の欠陥発生を抑制するためには製造条件を適切に制御することが望ましい。
例えば膜厚6.1μmの例では(表1のNo.13〜18)、成膜時の基板温度(表1中「成膜時基板温度」)が、150℃、200℃、250℃のいずれの場合も、加熱温度差(表1中、「耐熱評価温度−成膜時基板温度」)が150〜175℃の範囲であれば優れた耐熱性(表1中、「耐熱性評価」)が得られたが(No.13、15、17)、加熱温度差が200℃の場合は耐熱性に劣っていた(No.14、16、18)。一方、膜厚10.5μmの例では(表1のNo.19〜24)、成膜時の基板温度が、200℃、250℃、300℃のいずれの場合も、加熱温度差が100〜125℃の範囲であれば優れた耐熱性が得られたが(No.19、21、23)、加熱温度差が150℃の場合は耐熱性に劣っていた(No.20、22、24)。これら例のうち、成膜時の基板温度が200℃であるNo.15(膜厚:6.1μm)と、No.19(膜厚10.5μm)を比べると、No.15では加熱温度差が175℃であっても耐熱性を発揮したのに対し、No.19では耐熱性を発揮した温度は125℃までであった。したがって、No.15の場合は、加熱時の基板温度(表1中、「耐熱評価温度」)は375℃まで耐熱性を有するが、No.19の場合は325℃までであり、No.15と同等の加熱時の基板温度(375℃)で耐熱性を発揮させるには成膜時基板温度を250℃まで上げる必要がある(No.21)。
このような傾向は図1にまとめた通りであるが、例えば耐熱性を有する加熱時の基板温度を350℃以上とするには(図1中、「350℃線」よりも右側)、SiO2膜の膜厚が膜厚6.1μmの場合は、成膜時の基板温度を200℃以上とすればよいが、膜厚10.5μmの場合は250℃以上であり、膜厚が厚くなるほど、成膜時の基板温度を高くし、加熱温度差が小さくなる傾向にある。
したがって高温で耐熱性を発揮させるには、SiO2膜の膜厚を厚くするほど、成膜時の基板温度を高くして加熱時の基板温度との差を小さくすることが望ましい。
なお、このような膜厚と加熱温度差との関係は上記したように加熱時の基板温度にかかわらず、同じ膜厚であればほぼ同様の傾向を示すため、所望の加熱時の基板温度で耐熱性が得られるように成膜時の基板温度を高くすればよい。
[SiO2膜の硬度:好ましくは4.0GPa以上]
SiO2膜の硬度は特に限定されないが、物理的衝撃などに対するアルミニウム基板の耐久性を向上させる観点からは硬度は高い方が望ましい。また耐疵付性を向上させるには十分な硬度を確保した上で膜厚を厚くすることが望ましい。SiO2膜の硬度は、好ましくは4.0GPa以上、より好ましくは7.0GPa以上である。
なお、SiO2膜の硬度は、SiO2膜の成膜時の基板温度が高いほど、硬度が高くなる傾向にあるため、上記成膜時の基板温度の範囲(150℃〜370℃)で所望の硬度が得られるように基板温度を設定すればよい。
[SiO2膜の成膜:気相成膜法]
更に本発明のSiO2膜は気相成膜法で成膜されたものである。気相成膜法は膜厚を制御し易く、また均一で緻密な成膜が容易であるため望ましい。気相成膜法とは、スパッタ法、蒸着法などの物理的気相法(PVD)やプラズマCVDなどの化学的気相法(CVD)である。これらの中でも6μm以上の所望の膜厚の成膜が容易であることから化学的気相法が好ましい。更に化学的気相法としては、特にプラズマCVD法がより好ましい。プラズマCVD法は成膜速度の制御がし易いため、所望とする膜厚のSiO2膜の成膜方法として好適であり、しかも均一で緻密な成膜が容易であるため、SiO2膜の表面平滑性を所定の範囲に調整しやすいため望ましい。
特に表面平滑性に関してプラズマCVD法が好ましい理由は次の通りである。すなわち、図4はSiO2膜成膜前のアルミニウム基板表面の粗さとプラズマCVD法でSiO2膜を成膜した後のSiO2膜表面の粗さの一般的な傾向を示す図であり、図4中「触針法」は複数の試料についてTaylor/Hobson社製Intraを用いて測定した結果であり、「AMF1」はNano Science Instrument社製Nanosurf EasyScan(視野角10μm)、「AMF2」はNano Science Instrument社製Nanosurf EasyScan(視野角2μm)を用いた測定した結果である。いずれの測定方法によってもSiO2膜の成膜前後の表面粗さ(中心線表面粗さRa(nm))はほぼ同等であることからプラズマCVD法でSiO2膜を成膜した場合、成膜前のアルミニウム基板表面の表面粗さがほぼそのまま成膜したSiO2膜表面の表面粗さに反映されていると考えられる。
しかしながら後記実施例でも示しているように、プラズマCVD法で成膜したSiO2膜は、公知のガラス基板の表面研磨方法によって研磨が容易であり、表面粗さを所望の値まで減少させることができ、優れた平滑性が容易に得られるからである(図3)。
なお、スパッタ法でSiO2膜を成膜する場合は、Siをターゲットに使用しArにO2を添加したキャリアガスをRFプラズマやパルスDC放電プラズマを用いてスパッタする反応性スパッタ法で行うことが、成膜速度が速くて実用的である。
また蒸着法でSiO2膜を成膜する場合は、SiとSiO2の混合粉末を炉で加熱し、昇華温度が低いSiOとして気化させ、微量のO2を基板表面近傍に付加すれば、SiO2膜を形成できる。
以下、本発明に係る磁気記録媒体用アルミニウム基板の製造方法について説明する。
まず、アルミニウム基板を準備する。本発明で使用するアルミニウム基板(母材)は特に限定されないが、室温での引張強度および0.2%耐力が5086合金と同等以上のものが好ましい。アルミニウム基板の板厚は、特に限定されず、種々の厚さのものを用いることができるが、通常、磁気記録媒体として要求される所定の厚さに仕上がるように適宜設定すればよい。例えば、φ95mmの磁気記録媒体用アルミニウム基板には、厚さ1.270mmまたは厚さ1.753mmのアルミニウム基板を用いればよく、またφ65mmの磁気記録媒体用アルミニウム基板には、厚さ0.635mmまたは厚さ0.800mmのアルミニウム基板を用いればよい。
アルミニウム基板は、所望の形状に打ち抜き、焼鈍処理を施しておくことが推奨される。焼鈍処理を施すことによって加工による歪みを取り除くことができ、また平坦度も改善できる。
上記アルミニウム基板表面には、圧延等に起因した表面変質層が形成されているため、この表面変質層を旋盤による面削またはグラインド加工などの加工方法、あるいは両者の組合せによって除去し、アルミニウム基板表面を平滑にしておくことが好ましい。またアルミニウム基板の表面粗度が大きすぎると、SiO2膜を研磨しても所望の表面粗度(表面平滑性)が得られない可能性があるため、表面を平滑にしておくことが好ましい。
上記加工方法は特に限定されず、一般にはPVA砥石を用いた湿式研削や、ダイヤモンドバイトを用いた面削を採用できる。また、面削後に、PVA砥石を用いた湿式研削をおこなってもよい。
上記アルミニウム基板の表面粗度は、例えば、JIS B0601(2001年)で規定される中心線平均粗さRaで20nm以下であることが好ましく、より好ましくは12nm以下である。
[SiO2膜の成膜]
本発明では、150℃〜370℃に加熱したアルミニウム基板に対して、気相成膜法により6.0μm以上のSiO2膜を成膜すればよい。
例えば気相成膜法として望ましい化学的気相法でSiO2膜を成膜する場合、所定の温度に加熱されたアルミニウム基板表面に、有機シロキサンガス(分子骨格にSi−O−Si結合を有する化合物)、またはシランガスと、酸素含有ガスとを用いてSiO2膜を成膜することができる。
また膜質の良い、即ち、緻密で硬質、且つ平滑なSiO2膜を成膜するためには、有機シロキサンガスに含まれるSiを完全にSiO2に転化することが好ましく、そのためには、SiO2膜の成膜にあたっては、上記有機シロキサンガスに含まれるSiをSiO2に転化するために必要な酸素ガスの化学量論量に対して1.2倍以上の量の酸素含有ガスを用いることが推奨される。理論上は、有機シロキサンガスに含まれるSiをSiO2に転化させるために必要な化学量論量の酸素含有ガスを用いれば、SiはSiO2に完全に転化するはずであるが、実際には、反応ロスや副生物などの影響を受ける。そのため、SiをSiO2に完全に転化するには化学量論量に対して過剰量(具体的には、1.2倍以上)の酸素ガスを用いることが望ましい。本発明では、成膜時の酸素ガスの流量比が上記範囲となるように酸素含有ガスの流量を上記範囲に制御することが推奨される。
上記有機シロキサンとしては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)やオクタメチルトリシロキサンなどを用いることができ、これらを併用してもよい。適切な蒸気圧、安全性、入手の容易さ、成膜速度および成膜されるSiO2膜の硬さを考慮すると、HMDSOを用いることが好ましい。
上記シランガスとしては、例えば、SiH4、SiHCl3、SiH2Cl2、SiH3Cl、SiCl4、SiBr4、SiI4、SiF4、Si(OC252などを用いることができ、これらを併用してもよい。これらの中でも特に好ましいのはSiH4である。
また上記酸素含有ガスとしては、O2、N2Oなどが例示される。なお、酸素含有ガスには、SiO2膜を成膜するために必要に応じて添加されるH2ガスなどとの混合ガスも含む趣旨である。これらの中でも特に好ましいのはO2、またはN2Oガスの混合ガスである。
[研磨(ポリッシュ)工程について]
上記成膜後のSiO2膜は、その表面粗度が、例えば、JIS B0601(2001年)で規定される中心線平均粗さRaで好ましくは0.5nm以下、より好ましくは0.3nm以下であることが好ましい。
しかしながら上記したようにプラズマCVD法でSiO2膜を成膜した場合、アルミニウム基板表面の表面粗度がそのままSiO2膜の表面粗度として反映される。そのため、SiO2膜の表面平滑性も高く、SiO2膜の研磨に要する負荷を軽減するには、上記したようにSiO2膜の成膜前に予めアルミニウム基板表面の平滑性を高めておくことが望ましい。
また成膜後にSiO2膜を研磨する場合は、SiO2膜の表面を公知の条件で研磨し、上記所望の平滑度(上記表面粗度)となるようにすればよい。本発明のSiO2膜の研磨には、従来から用いられているガラス板を研磨する方法やその装置などをそのまま利用できる。例えば、研磨パッドと研磨スラリーを用いて湿式研磨すればよい。研磨圧力は、例えば、40〜150gf/cm2、摺動速度は、例えば、40〜160cm/秒程度とすればよい。
[用途]
本発明のSiO2膜が成膜されたアルミニウム基板は、磁気記録媒体として好適に用いることができる。特に耐熱性を向上させた本発明のSiO2膜が成膜されたアルミニウム基板は、磁性膜形成時の基板温度の制約緩和に寄与するものである。本発明のSiO2膜が成膜されたアルミニウム基板を用いて磁気記録媒体を製造するにあたっては、該アルミニウム基板のSiO2膜表面に、公知の条件で磁気記録膜などを形成し、必要に応じて、更に保護膜や潤滑膜を形成して、磁気記録媒体を製造することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実験1
実験1では、SiO2膜の成膜温度とSiO2膜の特性との関係を調べた。
アルミニウム基板(アルミニウム合金(4.2質量%Mg−残部:Alおよび不可避的不純物)、サイズ:外径65mm、内径20mm、厚さ約0.84mmの円盤状ディスク)をPVA砥石で研削し、圧延による変質層を除去した。研削加工には、Speed Fam製16B両面加工機を使用し、研削圧力:80gf/cm2、摺動速度:80cm/秒で行い、面当りの除去量:約20μm程度とし、研磨後のアルミニウム基板の厚さが0.800mmになるように設定した。研削後のアルミニウム基板の表面粗さを触針法で測定したところ、Ra=12nmであった。その後、成膜時の基板温度を80℃〜350℃の間で変化させると共に(表1中、「成膜時基板温度(℃)」)、下記条件のプラズマCVD法によって膜厚3.5μm〜10.5μmのSiO2膜を成膜した。この際、成膜時の基板温度は、予め熱電対を取り付けたアルミニウム基板を用いて成膜装置の設定温度と基板温度との相関を求めて、これに従い成膜時の基板温度が所定の温度になるように制御した。成膜後、室温まで放冷してアルミニウム基板表面にSiO2膜が成膜された試験材を得た。
(プラズマCVD法の成膜条件)
キャリアガス:モノシランと窒素の混合気体と亜酸化窒素
ガス比:SiH4/N2=1/9 流量:80sccm、N2O 流量:56sccm
圧力:133Pa
RFパワー:150W
(SiO2膜の表面性状)
得られた各試験材の表面性状を室温下で調べた。各試験材のSiO2膜に亀裂や基板との剥離が生じていないか目視で確認した。その結果、亀裂や剥離が生じている試験材はなく、全ての試験材の表面性状は良好であった。
(SiO2膜の膜厚)
各試験材のSiO2膜の膜厚はnanometrics社製nanospec/AFTmodel5100を用いて測定した。
(SiO2膜の硬度)
各試験材のSiO2膜の硬度をナノインデンテーション法によって測定した。具体的にはナノインデンター(Agilent Technology社製Nano Indenter XP/DCM)を用いて測定した。測定は、励起振動数:45Hz、励起振動振幅:2nm、歪速度:0.05/秒、押込み深さ:2000nmで行った。
(耐熱性評価)
耐熱性を評価するため、予め熱電対を取り付けた基板を用いて、加熱炉の設定温度と基板温度との相関を調べ、それに従って加熱炉の温度を設定した。表1に示す耐熱評価温度(加熱時の基板温度)に対応する温度に加熱した加熱炉内に試験材を挿入し、30分間、保持した後、試験材を炉外に取り出して室温(25℃)になるまで放冷した。
放冷した後、室温下で試験材の表面性状について観察した。具体的には蛍光灯照明下での目視、および光学顕微鏡(倍率:50倍および200倍、片面に当り基板内周部、中央部、外周部について各任意の5箇所)にてSiO2膜の亀裂の有無、およびアルミニウム基板とSiO2膜との剥離の有無について調べ、下記基準で評価した(表1中、「耐熱性評価」)。
○:SiO2膜に亀裂や剥離が認められなかった
○注1:SiO2膜に亀裂や剥離が認められなかったが、耐熱温度が300℃未満の例
×注2:アルミニウム基板に変形が発生した
×:SiO2膜に亀裂や剥離が認められた
なお耐熱評価温度は250℃から数十℃ずつ昇温させて耐熱性を評価し、「○」評価の例は、亀裂や剥離が認められない最高温度を示し、「×」評価は亀裂や剥離が認められた温度を示した。例えばNo.13、14では、325℃までの耐熱性評価は「○」であったが(No.13)、更に25℃昇温した350℃では「×」(No.14)となったことを示す。
(耐疵付性評価)
10g、または50gの荷重を加えたスタイラスの先端部(半径0.1mmのダイヤモンド球)を試験材表面(皮膜成膜面側)に接触させて摺動させた。摺動速度は一定速度(5mm/秒)、摺動距離は15mmとした。摺動後、試験材表面の摺動痕の深さを非接触式光学粗さ計で測定し、下記基準で評価した。
○:荷重10g、および50gのいずれでもNiPめっきと同等以下の疵深さ
△:荷重10gではNiPめっきと同等以下であるが50gではNiPめっきよりも疵が深くなる
×:荷重10gでもNiPめっきより疵が深くなる
−:十分な耐熱性が得られなかったため(耐熱性評価「×」)、耐疵付性については評価しなかった。
上記各試験結果を表1に示す。
また表1の「○」評価の例に基づいてSiO2膜の膜厚毎に、成膜時基板温度と[耐熱評価温度−成膜時基板温度]との関係について図1に示した。図1中、斜めの線(「300℃線」、「350℃線」、「基板変形」)は耐熱温度に対応する。
本発明の膜厚、および成膜条件を満足するNo.13〜24は、耐熱性(耐熱評価温度:300℃以上)、耐疵付性(△以上)および、硬度(4.0GPa以上)に優れていた。特にSiO2膜の膜厚を10μm以上としたNo.19〜24では、膜厚6.1μmとしたNo.13〜18と比べてより優れた耐疵付性が得られた。
一方、本発明の要件を満足しない例では、所望の特性が得られなかった。
成膜時の基板温度(80℃)が低い場合(No.1、2)、275℃での耐熱性は得られたが(No.1)、300℃以上の高温耐熱性は得られなかった(No.2)。
またSiO2膜の膜厚(3.5μm)が薄い場合(No.3〜12)、300℃以上の耐熱性は得られるものの、耐疵付性が低かった。
実験2
実験2ではSiO2膜と耐疵付性の関係について調べた。
上記実験1で使用したアルミニウム基板を250℃に加熱し、SiO2膜の膜厚を3.5μm(試験材1)、6.1μm(試験材2)、9μm(試験材3)、10.5μm(試験材4)にした以外は上記実施例1と同じようにしてプラズマCVD法でアルミニウム合金基板(円盤状ディスク)にSiO2膜を成膜して試験材を作製した。
参考のため、上記実験1で使用した皮膜を成膜していないアルミニウム基板を参考例1、およびNiPめっき基板を参考例2として用意した。
NiPめっきは、脱脂(上村工業製:AD−68F)、酸洗浄(上村工業製:AD−107F)、ジンケート処理(上村工業製:AD−301 F3−X)を行った後、NiPめっき処理(上村工業製:ニムデンHDX−7Gと上村工業製:HDX−Aの混合液)を用いて行った。めっき厚さは10μmであった。
(耐疵付性試験)
10g、または50gの荷重を加えたスタイラスの先端部(半径0.1mmのダイヤモンド球)を試験材表面(皮膜成膜面側)に接触させて摺動させた。摺動速度は一定速度(5mm/秒)、摺動距離は15mmとした。摺動後、試験材表面の摺動痕の深さを非接触式光学粗さ計で測定した。結果を図2に示す。
図2より次のことがわかった。まず、SiO2膜の膜厚を3.5μmとした試験材1の摺動痕深さは、参考例1(アルミニウム合金基板)よりは良好であったが、参考例2(NiPめっき基板)よりも劣っており、十分な耐疵付性を有していなかった。
一方、SiO2膜の膜厚を6.1μm(試験材2)、9μm(試験材3)、10.5μm(試験材4)とした場合、参考例1(アルミニウム合金基板)と比べて優れた耐疵付性を有していた。また荷重10gの場合、試験材2〜4の摺動痕深さは参考例2と同等であり、優れた耐疵付性を有していた。更に荷重50gの場合、試験材2(膜厚6μm)の摺動痕深さは参考例2よりも悪化したが、試験材3(膜厚9μm)、試験材4(膜厚10.5μm)の摺動痕深さは参考例2よりも良好であり、より優れた耐疵付性を有することがわかった。
実験3
実験3では、SiO2膜研磨の有無が、アルミニウム合金基板の表面に成膜したSiO2膜の表面粗度(中心線平均粗さRa)に及ぼす影響を調べた。
SiO2膜の膜厚を7μm、基板温度250℃とした以外は上記実験1で用いたアルミニウム基板に、プラズマCVD法によりSiO2膜を成膜して試験材を製造した。
その際、SiO2膜を成膜する前に、使用するアルミニウム基板の表面粗度を測定した。まず、アルミニウム基板の表面粗度として中心線平均粗さRaを、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)で測定した。AFMとしては、Nano Science Instrument社製の「Nanosurf easyScan2 FlexAFM」を用いた(視野2μm角)。
なお、上記中心線平均粗さRaは、二次元で測定される中心線平均粗さRa[JIS B0601(2001年)]に基づいて測定条件を設定した。中心線平均粗さRaを測定した結果、SiO2膜を成膜する前のアルミニウム基板の中心線平均粗さRaは、8.9nmであった。
次に、アルミニウム基板に成膜したSiO2膜の中心線平均粗さRaを測定した。その結果、SiO2膜の中心線平均粗さRaは8.9nmであり(図3中、「研磨量0μm」)、SiO2膜成膜前後で同じ表面粗度であった。
続いてSiO2膜の表面を研磨機(SPEED Fam製9B両面研磨機)で研磨した。研磨は市販のガラス基板用研磨パッド(ロデールニッタ製RN−Hパッド)と研磨スラリー(フジミ製Compol 20研磨スラリー)を用いた。なお、研磨する際の条件は研磨圧力100gf/cm2、摺動速度60cm/秒とし、研磨量は、研磨前後での重量変化からシリカ膜の密度(2.2g/cm3)を仮定して見積もった。
SiO2膜を0.39μm研磨した後に測定した中心線平均粗さRaは0.45nmであり、研磨によりSiO2膜成膜の表面平滑性を大きく改善できた。
更にSiO2膜を0.60μm研磨した後に測定した中心線平均粗さRaは0.27nmであり、ガラス基板用の研磨方法を適用することで、十分に平滑な面を得られることが確認された。

Claims (2)

  1. ルミニウム基板を150℃〜370℃に加熱して、気相成膜法により厚さ6.0μm以上のSiO 2 膜を成膜ることを特徴とする磁気記録媒体用アルミニウム基板の製造方法
  2. 前記気相成膜法は、プラズマCVD法である請求項1に記載のアルミニウム基板の製造方法
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