JP5980625B2 - 圧延パススケジュールの決定方法 - Google Patents
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Description
粗圧延機及び仕上圧延機は可逆式の圧延機であり、圧延材を順方向及び逆方向に複数回通過させることで目標の板厚となるまで徐々に圧延する。圧延機に圧延材を通過させて圧下を行うことを「パス(圧延パス)」と呼ぶので、圧延材は複数回の圧延パスを経て目標の板厚となるまで圧延されるともいえる。複数回の圧延パスのそれぞれにおいては、圧延機によって圧延材に付加される圧延荷重、圧延トルク、圧下率などの圧延条件が、各圧延パスにおける圧延材の入側板厚、出側板厚、及び予測温度などに基づいて予め設定されている。
圧延パススケジュールの決定にあたっては、圧延荷重を設備制約の上限に近づけることで圧延パス数を最小化して生産性を向上させる圧延パススケジュール(高生産型パススケジュール)を選択することができる。その一方で、板クラウンや平坦度を満足させることに主眼をおいた圧延パススケジュール(形状重視型パススケジュール)を選択することも可能である。
重などを考えている。さらに、上記決定パス数での出側板厚と仕上げ板厚の差に基づいて、各パスの圧下率が補正される。
ところが、特許文献1及び特許文献2が前提とする従来の圧延設備は、圧延機本体の耐荷重制約やロールの耐荷重制約の限界に近い高荷重で圧延を行うと、目的とする圧延形状および板クラウンを実現することが困難であり、製品特性として目標の板クラウンや平坦度を満足させることは難しい。そのため、特許文献1及び特許文献2に開示の技術では、目的とする圧延形状および板クラウンが実現できる範囲においてしか圧延荷重を選択することができず、高精度な板クラウンの実現と生産性の高い高能率な圧延の両立は困難である。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、例えば、高精度な板クラウンの実現と生産性の高い高能率の圧延とを両立させる圧延パススケジュールを決定可能な圧延パススケジュールの決定方法を提供することを目的とする。
本発明に係る圧延機の圧延パススケジュールの決定方法は、圧延材を圧延する一対のワークロールを備えるとともに、前記圧延材の形状を制御する形状制御機構を備える圧延機によって前記圧延材を圧延する際の圧延パススケジュールを決定する方法であって、前記圧延機の設備制約の上限となる圧延条件で、前記圧延材を圧延する第1パススケジュールと、前記形状制御機構の制御を用いて、前記圧延の荷重誤差に起因するクラウン比率変化が形状不感帯に含まれるような圧延条件で圧延する第2パススケジュールと、によって決定されることを特徴とする。
なお、前記形状パラメータは、圧延材の板厚、板クラウン、板幅などであるが、前記形状パラメータとして、圧延材の板厚を採用すると好ましい。
また、本発明に係る圧延パススケジュールの決定方法の最も好ましい形態は、圧延材を圧延する一対のワークロールと、前記圧延材の形状を制御すると共に耐荷重制約の限界荷
重においても形状修正能力を有する形状制御機構を備えた圧延機によって前記圧延材を圧延する際の圧延パススケジュールを決定する方法であって、前記圧延機の設備制約の上限となる圧延条件で、前記圧延材を圧延する第1パススケジュールと、前記形状制御機構の制御を用いて、前記圧延の荷重誤差に起因するクラウン比率変化が形状不感帯に含まれるような圧延条件で圧延する第2パススケジュールと、によって決定されることを特徴とする。
図1に示すように、厚鋼板(厚板)等の圧延材を圧延する圧延装置1は、その上流側に圧延材2を加熱する加熱炉3を有し、加熱炉3の下流側には、圧延材2の粗圧延を行う粗圧延機4を備えている。粗圧延機4の下流側には、仕上げ圧延を行う仕上圧延機5が備えられている。加熱炉3で加熱されたスラブ(圧延材2)は、粗圧延機4及び仕上圧延機5のそれぞれで複数回(複数圧延パス)圧延されて、製品の厚鋼板となる。
また、圧延機5のフレーム11には、ワークロール6,6に付加された圧延荷重Pを計測する荷重計測手段(ロードセル)12が設けられている。
る。加えて、制御部10は、ワークロールベンダ、ワークロールシフト機構、及びペアクロス機構などを含むクラウン制御機構(形状制御機構)よって圧延材2のクラウン形状などの圧延形状を制御(形状制御)している。
既に述べたように、圧延機5は、最大圧延荷重Pmax下においても、クラウン制御機構によって圧延材2の板形状が所望のクラウン形状となるように高精度に制御できる。従って、圧延の開始から終了まで、つまり圧延の開始圧延パスから終了圧延パスまで最大圧延荷重Pmaxで圧延材2を圧延することが考えられる。開始圧延パスから終了圧延パスまで最大圧延荷重Pmaxで圧延を行う圧延パススケジュールを作成すれば、圧延材2を最小の圧延パス数で目標の出側板厚hにまで圧延することができ、圧延材2の生産性が非常に高くなる。
この点に関し、図3を参照しながら、高生産型パススケジュールの問題について説明する。
具体的には、高生産型パススケジュールにおいて、圧延機5は、圧延材2に最大圧延荷重Pmaxが付加されるように、圧延材2の硬さに応じて圧延荷重Pを予測してワークロール6の圧下位置を制御している。しかし、圧延材2の温度降下が予測より速ければ、ある圧延パスにおける圧延材2の実際の温度は予測温度よりも低くなり、圧延材2は予想温度での硬さよりも硬くなってしまう。つまり、圧延機5は、予測温度における硬さで圧延材2に最大圧延荷重Pmaxが付加されるように制御(圧延荷重予測)しているにもかかわらず、実際には予測よりも温度が低く硬い圧延材2を圧延することとなる。このように、圧延材2の温度降下の予測のずれは、圧延機5が圧延材2に付加する圧延荷重Pに誤差を生じさせる。
この高生産型パススケジュールは、圧延機5の本体やワークロール6の耐荷重制約の上限に近い高荷重(最大圧延荷重Pmax)下での圧延条件(圧延荷重及び圧延トルク)で作成されている。そのため、上述のとおり圧延荷重予測誤差率に対応する圧延荷重誤差の絶対値が大きくなって、実際に圧延材2に付加される圧延荷重Pが圧延機5の耐荷重制約(最大圧延荷重Pmax)を越えてしまい、圧延荷重誤差がロールたわみの予測誤差を招き、ひいては、該圧延パススケジュールで想定した圧延材2の平坦度や板クラウンも予測した値や形状とは異なってしまう。つまり、最終圧延パスでの品質である平坦度や板クラウンにも影響が及んでしまう。
m以下となれば、圧延材2の温度降下が予測より速くなるためだと考えられる。さらに図3によると、出側板厚hが10mm以下となれば、単に圧延荷重誤差が大きくなるだけでなく、圧延荷重誤差が正(プラス)の方向に発生していることがわかる。つまり、出側板厚hが10mm以下となれば、圧延材2が予測よりも硬くなり、圧延材2に実際に付加される圧延荷重Pが耐荷重制約(最大圧延荷重Pmax)を越えてしまう可能性があることを示している。
これに対し、最終圧延パスでの出側板厚hが限界板厚以下となる場合の圧延材2の圧延パススケジュールは、上述の圧延荷重誤差による板形状への影響を回避するために高生産型パススケジュールとは異なる圧延パススケジュールにしなくてはならない。圧延材2の出側板厚hが限界板厚以下となるまでは、最大圧延荷重Pmaxで圧延する高生産型パススケジュールを作成したとしても、出側板厚hが限界板厚以下となった時点で、上述の圧延荷重誤差による板形状への影響を回避するように圧延荷重Pを調整しなくてはならない。
圧延荷重誤差によるクラウン比率変化Δεとは、ある圧延パスでの圧延前後における圧延材2の板クラウン比率εの変化である。板クラウン比率εは、下式(1)に示すとおり、圧延材2の幅方向断面における板中心の厚みhcと板端の厚みheによって決まる板形状を表す指標である。
以上の説明によれば、圧延荷重Pが均衡圧延荷重Pbを超えて、板クラウン比率変化Δεが板クラウン修正比率Δε′よりも大きく(Δε−Δε′>0)なれば、圧延材2に修正しきれないクラウン形状の変化が起こり、圧延材2は形状不良となってしまうことになる。
つ形状不感帯に含まれる圧延条件で形状重視型パススケジュール(第2パススケジュール)を決定する。言い換えれば、形状制御機構であるワークロールベンダによって圧延材2の形状を示す板クラウン比率変化Δεが確実に制御されている状態、又は形状制御機構による制御が若干不十分であっても板クラウン比率変化Δεや比率差Dが形状不感帯に含まれる状態のいずれかを実現する圧延条件(圧延荷重P)を用いて形状重視型パススケジュールを作成するといえる。
ここで、図5を参照する。図5は、出側板厚hと比率差D(Δε−Δε′)との間で決まる圧延材2の平坦度限界線を示すグラフである。図5に示すように、比率差D(Δε−Δε′)の絶対値には、板クラウン比率変化Δεが板クラウン修正比率Δε′を超えて(Δε−Δε′>0)も圧延材2の表面が平坦を保つ形状不感帯があり、比率差D(Δε−Δε′)の絶対値における形状不感帯の幅は出側板厚hに応じて異なる。ある出側板厚h1において比率差D(Δε−Δε′)が値D1以下であれば形状不感帯であるので、圧延材2の表面は平坦に保たれる。しかし、比率差D(Δε−Δε′)が値D1を超えれば、圧延材2の表面には端波が形成され形状不良となる。本実施形態では、出側板厚h1における比率差Dの値D1のように、圧延材2の表面形状が平坦から形状不良(端波や中波など)に変化する境界となる比率差Dの値を平坦度限界値とよぶ。
図5に示すように、比率差D(Δε−Δε′)の値が負となる場合、つまり圧延荷重Pが均衡圧延荷重Pb未満となる場合にも、圧延材2の表面が平坦を保つ形状不感帯があり、比率差D(Δε−Δε′)の値が形状不感帯を超えて小さくなれば、圧延材2の表面には中波が形成され形状不良となる。しかし、本実施形態では、圧延材2の形状をクラウン制御機構によって十分に高精度に制御できる範囲で、圧延材2をできる限り高い圧延荷重Pで圧延する圧延パススケジュールを作成する方法を考える。その場合、比率差Dの値が0以上となる(Δε−Δε′≧0)ので、比率差D(Δε−Δε′)の値が負となる場合についての説明は省略する。
しかし、図5に示すとおり、板クラウン比率変化Δεが板クラウン修正比率Δε′を超えても(Δε−Δε′>0となっても)圧延材2の表面が平坦を保つ形状不感帯がある。つまり、形状不感帯(圧延材2の形状に変化が起こらない範囲)に含まれる限りは、比率差D(Δε−Δε′)が正となる(Δε−Δε′>0)ことが許容されるので、この形状不感帯に含まれる比率差D(Δε−Δε′>0)をもって図4(b)を参照すれば、均衡圧延荷重Pbよりも大きな圧延荷重Pを選択できることがわかる。
このように、本実施形態によれば、圧延荷重Pなどの圧延条件が、圧延材2の形状に変
化が起こらない範囲(形状不感帯)に含まれるように決定されるとともに、形状不感帯の上限となる比率差D(Δε−Δε′)を用いて、可能な限り高い圧延荷重Pによる圧延条件で圧延パスを決定することができる。
まず、最終圧延パスである第n圧延パスにおける圧延材2の最終出側板厚hnが限界板厚以下であるかどうか、つまり、第n圧延パスが形状重視型パスであるかどうかを判断する。第n圧延パスが形状重視型パスではない場合、形状重視型パススケジュールを作成せず高生産型パススケジュールのみで圧延パススケジュールを作成する。
この第n圧延パスの圧延荷重Pnと第n圧延パスにおける圧延材2の最終出側板厚hn(製品板厚)とから、圧延荷重式(ゲージメータ式)を用いて第n圧延パスの入側板厚Hnを算出する。入側板厚Hnが限界板厚(例えば10mm)を超えない場合、形状重視型パスとして第n圧延パスの前圧延パスに第(n−1)圧延パスを追加する。
上記の説明では、圧延材2の製品としての板厚、つまり最終圧延パスでの出側板厚hが限界板厚より大きければ高生産型パススケジュールによって圧延パススケジュールを作成し、最終圧延パスでの出側板厚hが限界板厚より小さければ高生産型パススケジュールと形状重視型パススケジュールを組み合わせた圧延パススケジュールを作成する。これによって、高精度な板クラウンの実現と生産性の高い高能率の圧延とを両立させる圧延パススケジュールを決定することができる。
本発明の圧延パススケジュールの決定方法によれば、圧延材の温度予測誤差などに起因
する荷重予測誤差が大きくなってしまった場合にも、この荷重予測誤差を原因として起こる種々の問題、つまり、ロールクラウンの予測誤差からくる形状不良の発生などといった問題を抑制する効果がある。その結果、圧延材の板厚、板クラウン、及び板幅といった形状パラメータの高精度な制御を実現し、安定した圧延作業が出来るという効果ももたらされる。
2 圧延材
3 加熱炉
4 粗圧延機
5 仕上圧延機
6 ワークロール
7 バックアップロール
8 入側板厚計
9 出側板厚計
10 制御部
11 フレーム
12 ロードセル
Claims (4)
- 圧延材を圧延する一対のワークロールと、前記圧延材の形状を制御すると共に耐荷重制約の限界荷重においても形状修正能力を有する形状制御機構を備えた圧延機によって前記圧延材を圧延する際の圧延パススケジュールを決定する方法であって、
前記圧延機の設備制約の上限となる圧延条件で、前記圧延材を圧延する第1パススケジュールと、
前記形状制御機構の制御を用いて、前記圧延の荷重誤差に起因するクラウン比率変化が形状不感帯に含まれるような圧延条件で圧延する第2パススケジュールと、
によって決定されることを特徴とする圧延パススケジュールの決定方法。 - 前記第2パススケジュールは、前記第1パススケジュールの後に行われる圧延パススケジュールであって、
前記圧延材の形状パラメータが所定値以下となったときに、前記第1パススケジュールから前記第2パススケジュールへ切り替えることを特徴とする請求項1に記載の圧延パススケジュールの決定方法。 - 前記形状パラメータは、前記圧延材の板厚であることを特徴とする請求項2に記載の圧延パススケジュールの決定方法。
- 前記圧延条件として、圧延荷重又は圧延トルクを採用していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧延パススケジュールの決定方法。
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