JP5967920B2 - 車両用軽合金ホイールの製造方法及び車両用軽合金ホイール - Google Patents
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Description
車両用軽合金ホイールの製造方法において、ホイールリムにおける筒状リム胴部の端縁部に突設するリムフランジ部を加工する工程を含むホイールリムの加工工程にあって、
前記ホイールリムの加工工程は、車両走行中に突発的に受けた衝撃でホイール内径方向へ微小変形しエア漏れなく走行可能な場合であって前記微小変形部位へ車両走行によって受ける繰り返し応力を原因とする割れの起点となるリムフランジ部に対して、回転式のボール又はローラからなる押圧工具をタイヤと接触するリムフランジ部の外側表面部に押し当て加圧することで前記リムフランジ部の外側表面部には前記微小変形による引っ張り応力を緩和させるための圧縮残留応力が付与された組織構造の緩和層となる表層部と、意図的な前記圧縮残留応力が付与されず変形可能な組織構造の内層部との2層構造が形成される押圧工程を含み、
前記押圧工程により、前記表層部には表面から150μmの深さで300MPa〜350MPaの圧縮残留応力値を有し、当該圧縮残留応力値が表面から300μmの深さにおける前記内層部の圧縮残留応力値よりも高い緩和層が形成されるものである。
ところで、車両走行中の衝撃によってリムフランジ部に約3mm程度の微小変形を生じた場合、目視では判別し難い微小変形と言え、即座に走行不能となることはないため、車両使用者が気付かず車両走行を続けてしまうことが考えられる。
そこで、前記表層部には表面から150μmの深さで300MPa〜350MPaの圧
縮残留応力値を有し、当該圧縮残留応力値が表面から300μmの深さにおける前記内層部の圧縮残留応力値よりも高い緩和層が形成され、この場合、前記のような状況下で車両走行を続けて変形部位に繰り返し応力がかかっても、この変形部位が起点となって割れ発生することを抑制することができる。
これにより、リムフランジ部全域を強化することができる。
これにより、押圧工具としての回転式ボール又はローラのツールの追加のみで、旋盤でのホイールリムの切削加工完了後そのままツール交換して加圧することで前記押圧工程を行うことができる。従って、特別な設備を導入することなく既存設備を活用して短時間で効率よくリムフランジ部の強化構造形成を行うことができる。
車両走行時、タイヤと車両用ホイールは左右でハの字型に角度がつくため、インナーリムフランジ部に最も負荷がかかりやすい。しかも、インナーリムフランジ部は、車体内側に位置しているから車体外側からは通常確認しにくいため、インナーリムフランジ部に微小変形が生じても運転者等の車両使用者は気付かず車両走行を続けてしまうことが考えられる。従って、インナーリムフランジ部に対して前記押圧工程を行うことで、インナーリムフランジ部に微小変形が生じた場合であっても、車両走行を続けて変形部位に繰り返し応力がかかっても、この変形部位が起点となって割れ発生するのを抑制することができる。
筒状のリム胴部の端縁部にリムフランジ部を連設するホイールリムを備える車両用軽合金ホイールにおいて、
前記リムフランジ部には、車両走行中の衝撃で微小変形し割れの起点となるリムフランジ部におけるタイヤと接触するリムフランジ部外側表面部に対して前記微小変形による引っ張り応力を緩和させるための圧縮残留応力が付与された組織構造の緩和層となる表層部と、意図的な圧縮残留応力が付与されず変形可能な組織構造の内層部との2層構造が形成され、
前記表層部には表面から150μmの深さで300MPa〜350MPaの圧縮残留応力値を有し、当該圧縮残留応力値が表面から300μmの深さにおける前記内層部の圧縮残留応力値よりも高い緩和層が形成されているものである。
この車両用軽合金ホイールによれば、前記製造方法での説明と同様に、リムフランジ部が微小変形する程度の外的衝撃を受けても割れを生じ難くするとともに、その微小変形の存在下で車両走行を続行し変形部位に繰り返し応力がかかっても割れの起点とり難い性能を具備した車両用ホイールが提供できる。しかも、リムフランジ部は、既存のホイールリムフランジ形状から形状変更されないから、既存の打ち込みタイプのバランスウエイトを支障なく使用することができ、且つ重量増にもならない。
リムフランジ部の肉厚を厚くする場合に比べて、軽量化され、打込みタイプのバランスウエイトが使用可能であるといったメリットがある。
リムフランジ部の肉厚を厚くすると変形域が少なくなり、外的衝撃を受けると伸びて変形するよりも剛性によって即時に破断が生じやすいが、本発明によれば、外的衝撃に対してリムフランジ部の変形による引っ張り応力を緩和して割れの発生を抑制することができる。
リムフランジ部に微小変形が生じても割れを防いで走行可能となるから、ランフラットタイヤのように非常・応急時の使用もより安全に使用可能となる。
図1に示す車両用軽合金ホイール1は、自動車の車軸に取り付けられるホイールディスク2と、タイヤが装着される円筒状のホイールリム3とを備える。この車両用軽合金ホイール1は、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン合金等の軽合金製の鋳造品又は鍛造品により形成され、また、ホイール構成は、1ピースタイプ、2ピースタイプ、3ピースタイプ等の各種の構成が採用可能である。ホイールディスク2は、中央に設けられて自動車の車軸が連結されるハブ取付部21と、ハブ取付部21の外周に形成された複数のスポーク部22と、各スポーク部22の間に形成された飾り孔23とを備える。ホイールリム3は、タイヤのビードを着座させるビードシート部32を両端部に形成する円筒状のリム胴部31と、リム胴部31の両側の端縁部においてビードシート部32からL形に湾曲して突設されてタイヤのビート側面を支持するリムフランジ部33とを備える。ホイールディスク2は、ホイールリム3の内径部に設けられ、車体外側に向く表面が意匠面を構成する。リムフランジ部33は、車両用軽合金ホイール1を車体に取り付けた際、車体外側に向く方をアウターリムフランジ部33fとし、車体内側に向く方をインナーリムフランジ部33rとする。
リムフランジ部33を所定の最終形状に加工した後のホイールリム3に対して、回転式のボール又はローラからなる押圧工具(ボール又はローラを回転可能に取り付けた工具)をリムフランジ部33表面に押し当て加圧する押圧工程を行う。このとき、図3に示すように、ホイールリム3は回転軸線を中心に押圧工具6に対して相対回転させ、押圧工具6はリムフランジ部33表面を押し込みつつリムフランジ部33の表面に沿ってホイールリム3の軸線方向へ移動させる。なお、図3は、インナーリムフランジ部33rとアウターリムフランジ部33fとを同時に押圧工具6を押し当てている様子を図示するが、前記押圧工程は、インナーリムフランジ部33rとアウターリムフランジ部33fとを別々に押圧工具6を押し当てる場合も含む。また、前記押圧工程は、ホイールディスク2を装備していない状態のホイールリム3に対して行う場合も含む。
例えば、半径方向負荷耐久試験時におけるホイールリム3の応力解析の結果、最大応力部はタイヤと接触するリムフランジ部33の外側(外径側)表面部であった(図2参照)。従って、前記押圧工程として、リムフランジ部33表層部に対して圧縮残留応力を付与した緩和層の形成は、リムフランジ部33全域に施工するのが望ましいが、少なくともタイヤと接触する外側面(車両走行時に最も応力を受ける部位)のみに施工することにより、衝撃による微小変形部位が起点となって割れ発生するのを抑制することができる。この場合、前記押圧工程をリムフランジ部33全域に行う場合に比べて簡易に且つ短時間で済ませることができる。
所定の鍛造によりアルミニウム合金(A6061)の鍛造品からなる車両用軽合金ホイール1を成形し、その後、旋盤により切削加工する切削工程を行って最終のホイールの形状及び寸法と略等しい外形に形成した。この車両用軽合金ホイール1は、リム径19インチとし、リム胴部31の肉厚約2.5mm、リムフランジ部33の肉厚約7mmとする。
2 ホイールディスク
3 ホイールリム
4 タイヤ
5 突起物
21 ハブ取付部
22 スポーク部
23 飾り孔
31 リム胴部
32 ビードシート部
32f アウタービードシート部
32r インナービードシート部
33 リムフランジ部
33f アウターリムフランジ部
33r インナーリムフランジ部
6 押圧工具
k 割れ
Claims (5)
- 車両用軽合金ホイールの製造方法において、ホイールリムにおける筒状リム胴部の端縁部に突設するリムフランジ部を加工する工程を含むホイールリムの加工工程にあって、
前記ホイールリムの加工工程は、車両走行中に突発的に受けた衝撃でホイール内径方向へ微小変形しエア漏れなく走行可能な場合であって前記微小変形部位へ車両走行によって受ける繰り返し応力を原因とする割れの起点となるリムフランジ部に対して、回転式のボール又はローラからなる押圧工具をタイヤと接触するリムフランジ部の外側表面部に押し当て加圧することで前記リムフランジ部の外側表面部には前記微小変形による引っ張り応力を緩和させるための圧縮残留応力が付与された組織構造の緩和層となる表層部と、意図的な前記圧縮残留応力が付与されず変形可能な組織構造の内層部との2層構造が形成される押圧工程を含み、
前記押圧工程により、前記表層部には表面から150μmの深さで300MPa〜350MPaの圧縮残留応力値を有し、当該圧縮残留応力値が表面から300μmの深さにおける前記内層部の圧縮残留応力値よりも高い緩和層が形成される車両用軽合金ホイールの製造方法。 - 請求項1に記載の車両用軽合金ホイールの製造方法において、
前記押圧工程は、リムフランジ部におけるタイヤと接触しない側の面を含めてリムフランジ部全域に対して行われる車両用軽合金ホイールの製造方法。 - 請求項1又は2に記載の車両用軽合金ホイールの製造方法において、
前記押圧工程は、リムフランジ部の切削加工を行った旋盤加工工程において引き続いて切削工具を前記押圧工具に交換して行われる車両用軽合金ホイールの製造方法。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用軽合金ホイールの製造方法において、
前記押圧工程は、少なくともインナーリムフランジ部に対して行われる車両用軽合金ホイールの製造方法。 - 筒状のリム胴部の端縁部にリムフランジ部を連設するホイールリムを備える車両用軽合金ホイールにおいて、
前記リムフランジ部には、車両走行中の衝撃で微小変形し割れの起点となるリムフランジ部におけるタイヤと接触するリムフランジ部外側表面部に対して前記微小変形による引っ張り応力を緩和させるための圧縮残留応力が付与された組織構造の緩和層となる表層部と、意図的な圧縮残留応力が付与されず変形可能な組織構造の内層部との2層構造が形成され、
前記表層部には表面から150μmの深さで300MPa〜350MPaの圧縮残留応力値を有し、当該圧縮残留応力値が表面から300μmの深さにおける前記内層部の圧縮残留応力値よりも高い緩和層が形成されている車両用軽合金ホイール。
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