JP5957940B2 - フッ素樹脂水性分散体、水性フッ素塗料及び該塗料で塗装された物品 - Google Patents

フッ素樹脂水性分散体、水性フッ素塗料及び該塗料で塗装された物品 Download PDF

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Description

本発明は、水性媒体中にフッ素共重合体を分散させたフッ素樹脂水性分散体、この分散体を用いた水性フッ素塗料、及び該塗料で塗装された物品に関する。
フッ素樹脂を用いた塗料は、耐候性、耐薬品性等に優れるため、建築用塗料や自動車上塗り用塗料等の保護被膜を形成する材料として、幅広く利用されている。特に、水酸基を有するフッ素樹脂、水酸基と反応性を有する硬化剤及び有機溶剤を含有する二液硬化型塗料用樹脂組成物は、優れた塗膜物性を有している(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、前記特許文献1に記載の二液硬化型塗料用樹脂組成物は、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤等の比較的溶解性の高い有機溶剤(強溶剤)を含有しているため、塗装面を侵食することから塗装の補修等には使用困難であった。また、これらの有機溶剤は環境負荷が大きく、特に近年は環境対応の観点からその使用が難しい状況にあった。
このため、塗装面への侵食性が低く、環境負荷も低い、粉体塗料用樹脂や乳化重合による水性塗料樹脂用樹脂が開発されている。しかし、粉体塗料用樹脂は、塗膜を得るためには高温焼付けが必要であり、現場施工には適さない問題があった。また、乳化重合法を用いて水性フッ素樹脂を製造する方法が知られているが、この乳化重合型水性フッ素樹脂は、常温造膜性が十分ではなく、また塗膜作製後に塗膜中に残留する乳化剤が原因となって耐水性が低下したり、乳化剤が水で洗い流されてできた痕が細孔となって、そこから塗膜が侵食されたりし、フッ素樹脂の長所である耐候性が十分に活かせない問題もあった。
上記の乳化重合型水性樹脂の問題を解決すべく、耐水性に影響する乳化剤を使用しない自己分散型(ディスパージョン型)の水性フッ素樹脂が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この自己分散型の水性フッ素樹脂は、フッ素樹脂にカルボキシル基等の酸基を導入し、その酸基を塩基性化合物で中和して、水性媒体中での自己分散性を付与したものである。この自己分散型の水性フッ素樹脂は、現場施工が可能で、常温での造膜性に優れ、機械的安定性にも優れるが、安定な水分散性を得るためには多くの酸基を樹脂に導入する必要があるため、塗膜の耐水性低下にともない耐候が低下するという問題があった。
少ない酸基でフッ素樹脂の水分散安定性を向上させる方法として、酸基が多い成分と酸基が少ない成分とを混合して分散させることで、フッ素樹脂水性分散体の分散性を向上させる提案がされている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、この方法では、フッ素樹脂が有する水酸基に対して、メタクリル酸等の酸基と不飽和基を有する化合物をエステル化反応させて樹脂に不飽和基を導入し、さらにこの不飽和基にアクリル酸やメタクリル酸など酸基を有する単量体と、(メタ)アクリル酸エステル等とを共重合してグラフト鎖を導入する必要があり、フッ素樹脂の製造操作が煩雑になる問題があった。また、フッ素樹脂水性分散体の貯蔵安定性が低いという問題もあった。
特公平6−062910号公報 特開平8−337620号公報 特開平2−233749号公報
本発明が解決しようとする課題は、簡便な方法で製造することができ、高耐候性の塗膜を形成することが可能で、かつ長期の貯蔵安定性に優れたフッ素樹脂水性分散体を提供することである。また、該分散体を含有する水性フッ素塗料及び該塗料で塗装された物品を提供することである。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、組成が異なる単量体混合物を2段階で共重合反応させて得られたカルボキシル基を有するフッ素共重合体を塩基性化合物で中和した後、水媒体中で分散させたフッ素樹脂水性分散体は、高耐候性の塗膜を形成することが可能で、かつ長期的に貯蔵安定性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、フルオロオレフィン化合物(a1)及び水酸基を有するビニル単量体(a2)を必須とした単量体混合物(I)を共重合反応させる第1工程、
第1工程で得られた反応物に、フルオロオレフィン化合物(a1)、水酸基を有するビニル単量体(a2)及びカルボキシル基を有するビニル単量体(a3)を必須とした単量体混合物(II)を加えて、さらに共重合反応させて、フッ素共重合体(A)を得る第2工程、
前記フッ素共重合体(A)が有するカルボキシル基を塩基性化合物で中和して、水媒体中で分散させる第3工程を経て、得られることを特徴とするフッ素共重合体水性分散体に関する。
また、フルオロオレフィン化合物(a1)、水酸基を有するビニル単量体(a2)及びカルボキシル基を有するビニル単量体(a3)を必須とした単量体混合物(II)を共重合反応させる第1工程、
第1工程で得られた反応物に、フルオロオレフィン化合物(a1)及び水酸基を有するビニル単量体(a2)を必須とした単量体混合物(I)を加えて、さらに共重合反応させて、フッ素共重合体(A)を得る第2工程、
前記フッ素共重合体(A)が有するカルボキシル基を塩基性化合物で中和して、水媒体中で分散させる第3工程を経て、得られることを特徴とするフッ素樹脂水性分散体に関する。
さらに、本発明は、上記フッ素樹脂水性分散体を用いた水性フッ素塗料、及び該塗料で塗装された物品に関する。
本発明のフッ素樹脂水性分散体は、乳化剤を用いず、環境負荷の低い水性媒体に分散されており、常温乾燥により高耐候性の塗膜を形成することが可能で、機械的安定性に優れ、かつ長期の貯蔵安定性にも優れている。したがって、水性フッ素塗料に用いることができる。また、本発明のフッ素樹脂水性分散体を用いた水性フッ素塗料は、溶剤系フッ素塗料と同様に、高い耐候性、耐光性、耐薬品性を有するため、例えば、直射日光が当たり、特に高い耐候性が要求される一般建造物の屋根や、高い化学的耐久性を要求されるコンビナート地域の工場建屋の外装に保護被膜を形成する塗料として有用である。
本発明のフッ素樹脂水性分散体は、下記の2つの態様により得ることができる。
第1の態様は、フルオロオレフィン化合物(a1)及び水酸基を有するビニル単量体(a2)を必須とした単量体混合物(I)を共重合反応させる第1工程、
第1工程で得られた反応物に、フルオロオレフィン化合物(a1)、水酸基を有するビニル単量体(a2)及びカルボキシル基を有するビニル単量体(a3)を必須とした単量体混合物(II)を加えて、さらに共重合反応させて、フッ素共重合体(A)を得る第2工程、
前記フッ素共重合体(A)が有するカルボキシル基を塩基性化合物で中和して、水媒体中で分散させる第3工程を経て、フッ素樹脂水性分散体を得る方法である。
また、第2の態様は、フルオロオレフィン化合物(a1)、水酸基を有するビニル単量体(a2)及びカルボキシル基を有するビニル単量体(a3)を必須とした単量体混合物(II)を共重合反応させる第1工程、
第1工程で得られた反応物に、フルオロオレフィン化合物(a1)及び水酸基を有するビニル単量体(a2)を必須とした単量体混合物(I)を加えて、さらに共重合反応させて、フッ素共重合体(A)を得る第2工程、
前記フッ素共重合体(A)が有するカルボキシル基を塩基性化合物で中和して、水媒体中で分散させる第3工程を経て、フッ素樹脂水性分散体を得る方法である。
前記フルオロオレフィン化合物(a1)は、炭素−炭素不飽和二重結合を有し、この二重結合を形成している炭素原子にフッ素原子が結合している化合物である。このフルオロオレフィン化合物(a1)としては、例えば、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン、フルオロアルキルトリフルオロビニルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、耐候性、常温造膜性等に優れることから、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンが好ましい。また、これらのフルオロオレフィン化合物(a1)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
前記ビニル単量体(a2)は、水酸基と重合性を有する炭素−炭素不飽和二重結合とを有する化合物である。このビニル単量体(a2)としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル化合物;エチレングリコールアリルエーテル、ジエチレングリコールアリルエーテル等のヒドロキシアリルエーテル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。これらの中でも、共重合性に優れ、工業的に入手が容易なことから、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルが好ましい。また、これらのビニル単量体(a2)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の一方又は両方をいう。
前記ビニル単量体(a3)は、カルボキシル基と重合性を有する炭素−炭素不飽和二重結合とを有する化合物である。このビニル単量体(a3)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、クロトン酸、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、2−ヘキセン酸、3−ヘキセン酸、5−ヘキセン酸、2−ヘプテン酸、3−ヘプテン酸、6−ヘプテン酸、3−オクテン酸、7−オクテン酸、2−ノネン酸、3−ノネン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸、10−ウンデセン酸、3−アリルオキシプロピオン酸、アリルオキシ吉草酸等の1つのカルボキシル基を有する単量体;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の2つのカルボキシル基を有する単量体;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノイソブチル、フマル酸モノ−t−ブチル、フマル酸モノヘキシル、フマル酸モノオクチル、フマル酸モノ−2−エチルヘキシル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノイソブチル、マレイン酸モノ−t−ブチル、マレイン酸モノヘキシル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノ−2−エチルヘキシル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノイソブチル、イタコン酸モノヘキシル、イタコン酸モノオクチル、イタコン酸モノ−2−エチルヘキシル等の2つのカルボキシル基を有する単量体のモノアルキルエステル化合物;アジピン酸モノビニル、コハク酸モノビニル、マレイン酸モノビニル等のジカルボン酸のモノビニル化合物などが挙げられる。これらのビニル単量体(a3)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
上記のビニル単量体(a3)の中でも、本発明のフッ素共重合体水性分散体の貯蔵安定性がより向上することから、カルボキシル基とビニル基との間の原子数(カルボキシル基及びビニル基に含まれる原子は加えない。)が4以上の単量体が好ましく、6〜20の範囲の単量体がより好ましく、8〜15の範囲の単量体がさらに好ましい。このようなビニル単量体(a3)としては、3−アリルオキシプロピオン酸(カルボキシル基とビニル基との間の原子数4)、10−ウンデセン酸(カルボキシル基とビニル基との間の原子数8)、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート(カプロラクトンの繰り返し単位数2のもの;カルボキシル基とビニル基との間の原子数14)等が挙げられる。
また、前記ビニル単量体(a2)及び(a3)以外に、カルボキシル基及び水酸基を有さないビニル単量体(a4)を前記フッ素共重合体(A)の原料として用いても構わない。このようなビニル単量体(a4)としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、トリデシルビニルエーテル、ヘキサデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル化合物;シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル化合物;ベンジルビニルエーテル、フェネチルビニルエーテル等のアラルキルビニルエーテル化合物;等のビニルエーテルモノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の直鎖状カルボン酸のビニルエステル化合物、ピバリン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、ネオノナン酸ビニル、ネオデカン酸ビニル等の分岐状カルボン酸のビニルエステル化合物;シクロヘキサンカルボン酸ビニル等の環状脂肪族カルボン酸のビニルエステル化合物;安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニル等の芳香族カルボン酸のビニルエステル化合物;エチレン、プロピレン等のオレフィン化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン化合物、エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル等のアリルエーテル化合物、酢酸アリル、プロピオン酸アリル等のアリルエステル化合物;メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル化合物などが挙げられる。これらのビニル単量体(a4)を前記ビニル単量体(a2)及び(a3)と共重合することで、水性フッ素塗料とした際に他の塗料成分との相溶性が良好になることから好ましい。また、これらのビニル単量体(a4)の中でも、他の単量体と共重合しやすく、工業的に入手しやすいことから、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルが好ましい。なお、これらのビニル単量体(a4)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
また、前記ビニル単量体(a4)として、前記フルオロオレフィン化合物(a1)以外のフッ素原子を有する単量体として、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルビニルエーテル、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルビニルエーテル、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルーエテル、パーフルオロオクチルビニルエーテル、パーフルオロシクロヘキシルビニルエーテル等のフルオロアルキルビニルエーテル化合物を用いても構わない。
本発明のフッ素樹脂水性分散体を製造するためには、まず、前記フッ素共重合体(A)を製造する。このフッ素共重合体(A)の製造方法としては、例えば、下記の2つの方法が挙げられる。
(製造方法1)
[第1工程]
前記フルオロオレフィン化合物(a1)及び水酸基を有するビニル単量体(a2)を必須とした単量体混合物(I)を共重合反応させる。
[第2工程]
第1工程で得られた反応物に、前記フルオロオレフィン化合物(a1)、水酸基を有するビニル単量体(a2)及びカルボキシル基を有するビニル単量体(a3)を必須とした単量体混合物(II)を加えて、さらに共重合反応させる。
(製造方法2)
[第1工程]
前記フルオロオレフィン化合物(a1)、水酸基を有するビニル単量体(a2)及びカルボキシル基を有するビニル単量体(a3)を必須とした単量体混合物(II)を共重合反応させる。
[第2工程]
第1工程で得られた反応物に、前記フルオロオレフィン化合物(a1)及び水酸基を有するビニル単量体(a2)を必須とした単量体混合物(I)を加えて、さらに共重合反応させる。
なお、上記の製造方法1及び製造方法2において、第1工程及び第2工程で用いる単量体混合物(I)又は単量体混合物(II)は、一度に仕込んでも、複数回に分けて仕込んでも構わない。
前記単量体混合物(I)には、前記フルオロオレフィン化合物(a1)及び水酸基を有するビニル単量体(a2)を必須とするが、その他、前記ビニル単量体(a4)が、単量体混合物中に含まれていても構わない。
前記単量体混合物(I)中の各単量体の使用量は、水性フッ素塗料とした際に他の塗料成分との相溶性が良好になり、塗膜の耐候性及び耐薬品性が良好になることから、前記フルオロオレフィン化合物(a1)1モルに対して、前記ビニル単量体(a2)及び(a4)の合計で、0.6〜1.5モルの範囲が好ましく、0.8〜1.2モルの範囲がより好ましく、0.9〜1.1モルの範囲がさらに好ましい。また、前記ビニル単量体(a2)及び(a4)の合計中の前記ビニル単量体(a2)のモル比率は、10〜100モル%の範囲が好ましく、15〜60モル%の範囲がより好ましく、20〜50モル%の範囲がさらに好ましい。なお、前記単量体混合物(I)中には、カルボキシル基を有するビニル単量体(a3)を含んでいても構わないが、前記単量体混合物(I)中のモル比率は、2モル%以下とすることが好ましく、1.5モル%以下とすることがより好ましく、1モル%以下とすることがさらに好ましい。
また、前記単量体混合物(II)は、前記フルオロオレフィン化合物(a1)、水酸基を有するビニル単量体(a2)及びカルボキシル基を有するビニル単量体(a3)を必須とするが、その他、前記ビニル単量体(a4)が、単量体混合物中に含まれていても構わない。
前記単量体混合物(II)中の各単量体の使用量は、耐候性及び耐薬品性が良好になり、水性フッ素塗料とした際に他の塗料成分との相溶性が良好になることから、前記フルオロオレフィン化合物(a1)1モルに対して、前記ビニル単量体(a2)、(a3)及び(a4)の合計で、0.6〜1.5モルの範囲が好ましく、0.8〜1.2モルの範囲がより好ましく、0.9〜1.1モルの範囲がさらに好ましい。また、前記ビニル単量体(a2)、(a3)及び(a4)の合計中の前記ビニル単量体(a2)のモル比率は、10〜97モル%の範囲が好ましく、15〜60モル%の範囲がより好ましく、20〜50モル%の範囲がさらに好ましい。さらに、前記ビニル単量体(a2)、(a3)及び(a4)の合計中の前記ビニル単量体(a3)のモル比率は、3〜60モル%の範囲が好ましく、5〜50モル%の範囲がより好ましく、8〜40モル%の範囲がさらに好ましい。
なお、前記単量体混合物(I)において、前記ビニル単量体(a2)及び(a4)の合計中の前記ビニル単量体(a2)のモル比率が100モル%未満の場合と、前記単量体混合物(II)において、前記ビニル単量体(a2)、(a3)及び(a4)の合計中の前記ビニル単量体(a2)及び(a3)の合計モル比率が100モル%未満の場合は、残部は前記ビニル単量体(a4)となる。
上記の製造方法1及び2で行う共重合反応に用いる重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物;t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等の過酸化物などが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
また、前記重合開始剤の使用量としては、重合開始剤の種類、重合温度、共重合体の分子量等に応じて適宜決定することができるが、共重合させる単量体の合計100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲が好ましい。
また、上記の製造方法1及び2で行う共重合反応の際に、必要に応じて、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノ−ル、チオグリセロール、エチルチオグリコ−ル酸、オクチルチオグリコ−ル酸等の連鎖移動剤を使用しても構わない。
さらに、共重合反応は有機溶剤中で行うことが好ましい。共重合反応を阻害しない有機溶剤であれば、各種のものが使用可能であるが、本発明の目的であるフッ素樹脂水性分散体を得るためには、水に混和可能な有機溶剤を主とすることが好ましい。水に混和可能な有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール等のアルキルアルコール;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n−プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のグリコールエーテルエステル;ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ダイアセトンアルコール、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
上記の有機溶剤の中でも、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロパノール等の低沸点溶剤や、ブタノール、ブチルセロソルブ等の水と共沸可能な溶剤を、反応溶剤や分散助剤として用いた場合、これらの有機溶剤を常圧又は減圧下で容易に留去することができ、有機溶剤の含有量を低減したフッ素樹脂水性分散体を得ることができる。
また、上記の共重合反応における反応温度は、通常のラジカル重合の反応温度域で行うことができるが、0〜150℃の範囲が好ましく、40〜100℃の範囲がより好ましい。反応時間としては、1〜50時間の範囲が好ましく、3〜30時間の範囲がより好ましい。
上記の製造方法1及び2の第2工程で得られるフッ素共重合体(A)の酸価は、水分散性が良好となり、高い貯蔵安定性が得られ、水性フッ素塗料とした際の塗膜の耐水性も良好となることから、5〜35の範囲が好ましく、8〜33の範囲がより好ましく、10〜32の範囲がさらに好ましい。
本発明のフッ素樹脂水性分散体を、後述する硬化剤(B)を配合した水性フッ素塗料に用いる際に、該塗料の塗膜の機械的強度が優れたものとなることから、上記の製造方法1及び2の第2工程で得られるフッ素共重合体(A)の水酸基価は、20〜200の範囲が好ましく、30〜150の範囲がより好ましく、30〜120の範囲がさらに好ましい。なお、フッ素共重合体(A)が有する水酸基は、後述する硬化剤(B)反応して架橋点となる。
また、上記の製造方法1及び2の第2工程で得られるフッ素共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、水分散性が良好となり、高い貯蔵安定性が得られ、水性フッ素塗料とした際の塗膜の機械的強度も良好となることから、5,000〜100,000の範囲が好ましく、10,000〜60,000の範囲がより好ましく、12,000〜40,000の範囲がさらに好ましい。ここで、重量平均分子量(Mw)はゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)測定に基づきポリスチレン換算した値である。なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
[GPC測定条件]
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度4mg/mLのテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
上記の製造方法1及び2の第3工程でカルボキシル基の中和に用いる塩基性化合物としては、例えば、アンモニア;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン等のアルキルアミン;ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、アミノメチルプロパノール等のアミノアルコール;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の多価アミン;モルホリンなどが挙げられる。これらの中でも、水及び有機溶剤との混和性が良く、揮発性で塗膜とする際に塗膜に残留しにくいことから、ジメチルアミノエタノールが好ましい。また、これらの塩基性化合物は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
前記フッ素共重合体(A)の塩基性化合物で中和した樹脂を分散させる水媒体としては、水を主成分とするもので、少なくとも50質量%が水であるものが好ましい。水とともに水媒体として用いることができるものとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール等のアルキルアルコール;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n−プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ、メチルカルビール、エチルカルビトール、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル等のグリコールエーテル;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のグリコールエーテルエステル;またはジオキサン、ジメチルホルムアミド、ダイアセトンアルコール、テトラヒドロフランなどが挙げられる。また、これらの水媒体は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
本発明の水性フッ素塗料は、上記のフッ素樹脂水性分散体、及び水酸基又はカルボキシ基と反応する官能基を有する硬化剤(B)を含有するものである。前記硬化剤(B)は、本発明のフッ素樹脂水性分散体とともに水性塗料として配合可能で、フッ素樹脂水分散体が有する水酸基又はカルボキシル基と反応する官能基を有する化合物であれば使用可能である。この硬化剤(B)のうち、水酸基と反応する官能基を有する化合物としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物、ポリシクロカーボネート化合物、アミノ樹脂、ポリカルボキシ化合物、ポリヒドロキシ化合物、ポリオキサゾリン化合物、ポリカルボジイミド化合物等が挙げられる。これらの中でも、現場施工など常温乾燥する場合は、水分散が可能なポリイソシアネート化合物が、使用方法の簡便さや得られる塗膜物性に優れることから好ましい。
また、前記硬化剤(B)は、本発明では水性フッ素塗料に配合するため、水分散性を有するものが好ましい。例えば、ポリイソシアネートの水分散性を有するものとしては、アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基等の親水性基を有するポリイソシアネートが挙げられ、中でも、耐水性に優れる塗膜が得られることから、親水性基としてノニオン性基を有するポリイソシアネートが好ましく、具体的には、ポリオキシエチレン基を有するポリイソシアネートが好ましい。このような水分散性ポリイソシアネートとして、例えば、DIC株式会社製の「バーノック DNW−5500」等が挙げられる。
前記硬化剤(B)は、単独で用いることも2種以上併用することもでき、水酸基と反応する官能基を有するものと、カルボキシル基と反応する官能基を有するものとを併用することも可能である。
前記硬化剤(B)として、ポリイソシアネート化合物を用いる場合、良好な機械的強度の塗膜が得られることから、その使用量としては、ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基(NCO)と、フッ素樹脂水性分散体中のフッ素共重合体(A)が有する水酸基(OH)との当量比(NCO/OH)が0.5〜2.0となる範囲が好ましく、0.7〜1.5となる範囲がより好ましく、1.0〜1.3となる範囲がより好ましい。
本発明の水性フッ素塗料には、必要に応じて、無機顔料、有機顔料、体質顔料、染料、ワックス、界面活性剤、安定剤、流動調整剤、消泡剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、可塑剤等の各種添加剤を配合することができる。
また、本発明の水性フッ素塗料は、塗装する際に使用される被塗装物としては、例えば、鉄、ニッケル、アルミニウム、銅、鉛等の金属;これらの金属を含む合金;前記金属又は合金のメッキや化成処理が施された各種の表面処理金属;ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂;不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、架橋ポリウレタン等の熱硬化性樹脂;前記金属、樹脂等の成形品;コンクリート、スレート、タイル、瓦、ガラス、木製建築資材等の建設部材などが挙げられる。
さらに、本発明の水性フッ素塗料の塗膜は、特に化学的安定性に優れており、塗膜寿命が長いことから、屋根基材や化学工場建屋等の過酷な環境での使用される物品、高層ビル外壁や大型橋梁等の塗り替え困難な建築物用物品を保護する材料として好適に用いることができる。
また、本発明の水性フッ素塗料は、重防食塗装など長期保護機能が要求される用途において、厚膜で塗装することも可能であり、乾燥後の塗膜厚さが40μm以上の塗膜を形成することもできる。
次に、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。なお、重合体の酸価は、JIS試験方法K 0070−1992に準拠して測定したものである。また、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、下記のGPC測定条件で測定したものである。
[GPC測定条件]
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度4mg/mLのテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
(実施例1)
[第1工程]
内部を窒素で置換したステンレス製のオートクレーブに、ジエチレングリコールジメチルエーテル(以下、「MDM」と略記する。)75質量部、メタノール144.2質量部、エチルビニルエーテル(以下、「EVE」と略記する。)25.9質量部、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(以下、「HBVE」と略記する。)26.7質量部、シクロヘキシルビニルエーテル(以下、「CHVE」と略記する。)21質量部、光安定剤(BASFジャパン株式会社製「チヌビン292」、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート及びメチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートの混合物;以下、「HALS」と略記する。)16.2質量部、及び重合開始剤としてt−ブチルパーオキシピバレート3.9質量部を仕込んだ。次いで、オートクレーブ内に、液化したクロロトリフルオロエチレン(以下、「CTFE」と略記する。)88.1質量部を圧入した後、オートクレーブを63℃に昇温した。続いて、温度を63℃に保持したまま、液化したCTFE264.1質量部を2.5時間かけて圧入した。CTFEの圧入開始と同時に、EVE77.5質量部、HBVE79.9質量部、CHVE63質量部、MDM116.1質量部、及びt−ブチルパーオキシピバレート11.6質量部からなる混合物を2.5時間かけて圧入した。
[第2工程]
第1工程での単量体の圧入終了後、続けてオートクレーブ内に、液化したCTFE213.2質量部を1.5時間かけて圧入した。また、EVE54.9質量部、HBVE53.9質量部、CHVE1.1質量部、10−ウンデセン酸(以下、「UDA」と略記する。)107.7質量部、MDM103.2質量部、及び重合開始剤としてt−ブチルパーオキシピバレート10.3質量部からなる混合物を2.5時間かけて圧入した。この圧入終了後、圧入ライン洗浄のためにMDM42.2質量部を圧入した。オートクレーブを63℃に保温し、第一工程でのCTFE圧入開始から12時間反応を行った後、オートクレーブの内圧を常圧に戻し、反応物を1531.4質量部回収した。得られた溶液を3リットルの4つ口フラスコに入れ、無機合成吸着剤(協和化学工業株式会社製「キョーワード500(G7)」)73.4質量部を添加して60℃で4時間撹拌した。続いてろ過を行い、ろ過液を減圧留去し、フッ素共重合体(A−1)の75質量%溶液を得た。このフッ素共重合体(A−1)の酸価は31.7mgKOH/gであり、数平均分子量(Mn)は4,700であり、重量平均分子量(Mw)は18,100であった。
[第3工程]
第2工程で得られたフッ素共重合体溶液500質量部を2リットルの4つ口フラスコに入れ、40℃まで加熱してからジメチルエタノールアミン15.1質量部を加え、1時間撹拌して均一にした後、60℃に昇温して、撹拌しながらイオン交換水422.4質量部を徐々に加えて、不揮発分39.3質量%のフッ素樹脂水性分散体(1)を得た。
上記で得られたフッ素樹脂水性分散体(1)について、下記の貯蔵安定性、塗膜のゲル分率、水性フッ素樹脂塗料に用いた際の塗膜特性(光沢及び鉛筆硬度)を評価した。
<貯蔵安定性の評価>
フッ素樹脂水性分散体(1)を40℃の恒温槽に保管し、1週間後、2週間後及び4週間後に外観を目視で観察し、下記の基準で貯蔵安定性を評価した。
◎:沈殿物の発生、ゲル化、白濁がなかった。
○:沈殿物の発生、ゲル化はないが、やや白濁した。
△:ゲル化には至らないが、増粘した。
×:沈殿物の発生又はゲル化があった。
<フッ素樹脂水性分散体塗膜のゲル分率>
ポリプロピレン板上に上記で得られた水性フッ素樹脂水分散体(1)を塗布して、108℃で2時間乾燥させた。乾燥した塗膜をポリプロピレン板から剥離して秤量した後、アセトンに24時間浸漬した。アセトンに溶解せずに残った塗膜を108℃で2時間乾燥させた後、その質量をアセトンに浸漬する前の質量で除した値の百分率をゲル分率とした。
<水性フッ素樹脂塗料の調製及び塗膜の作製>
フッ素樹脂水性分散体(1)76.3質量部(フッ素樹脂として30質量部)、酸化チタン(石原産業株式会社製「タイペークCR−97」)70質量部、及びイオン交換水20.4質量部を混合し、顔料混合物を得た。この顔料混合物のPWC(固形分質量に対する顔料質量の百分率)は70質量%であり、不揮発分は60質量%であった。この顔料混合物を、バッチ式ミルを用いて分散し、顔料分散体を得た。この顔料分散体100質量部に対して、フッ素樹脂水性分散体(1)114.5質量部、界面活性剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK−348」)0.6質量部、消泡剤(サンノプコ株式会社製「SNデフォーマー777」)0.2質量部、及びイオン交換水4質量部を加えた後、均一に混合して、PWC40質量%、不揮発分48質量%である塗料主剤を得た。次いで、前記塗料主剤100質量部に、硬化剤(DIC株式会社製「バーノックDNW−5500」、水分散性ポリイソシアネート、不揮発分80質量%)14.3質量部を加えた後、均一に混合して、水性フッ素樹脂塗料(1)を得た。
上記で得られた水性フッ素樹脂塗料(1)を、リン酸亜鉛処理鋼板(日本テストパネル株式会社製のJIS G3141(SPCC−SD)PB−44)に、8ミル(203μm)のアプリケーターを用いて塗装した後、23℃の恒温室で7日間乾燥させて、厚さ50μmの塗膜を作製した。
<塗膜の光沢度の測定>
上記で得られた塗膜について、光沢度計(村上カラーリサーチラボラトリー社製「グロスメーターGM−26D」)を用いて、60°光沢度、及び20°光沢度をそれぞれ5点測定して、その平均値を測定値とした。
<塗膜の鉛筆硬度の測定>
上記で得られた塗膜について、JIS試験方法 K5600−5−4:1999に準拠して、鉛筆に三菱鉛筆株式会社製「ユニ」を用いて、鉛筆硬度を測定した。
(実施例2)
[第1工程]
内部を窒素で置換したステンレス製のオートクレーブに、MDM75質量部、メタノール144.2質量部、EVE20.6質量部、HBVE20.2質量部、CHVE0.4質量部、UDA40.4質量部、HALS16.2質量部、及び重合開始剤としてt−ブチルパーオキシピバレート3.9質量部を仕込んだ。次いで、オートクレーブ内に、液化したCTFE80質量部を圧入した後、オートクレーブを63℃に昇温した。続いて、温度を63℃に保持したまま、液化したCTFE133.2質量部を1.5時間かけて圧入した。CTFEの圧入開始と同時に、EVE34.3質量部、HBVE33.7質量部、CHVE0.7質量部、UDA67.3質量部、MDM64.5質量部、及びt−ブチルパーオキシピバレート6.4質量部からなる混合物を1.5時間かけて圧入した。
[第2工程]
第1工程での単量体の圧入終了後、続けてオートクレーブ内に、液化したCTFE352.2質量部を2.5時間かけて圧入した。また、EVE103.4質量部、HBVE106.6質量部、CHVE84質量部、MDM154.8質量部、t−ブチルパーオキシピバレート15.5質量部からなる混合物を3.5時間かけて圧入した。この圧入終了後、圧入ライン洗浄のためにMDM42.2質量部を圧入した。オートクレーブを63℃に保温し、第一工程でのCTFE圧入開始から12時間反応を行った後、オートクレーブの内圧を常圧に戻し、反応物を1470.5質量部回収した。得られた溶液を3リットルの4つ口フラスコに入れ、無機合成吸着剤(協和化学工業株式会社製「キョーワード500(G7)」)74.1質量部を添加して60℃で4時間撹拌した。続いてろ過を行い、ろ過液を減圧留去し、フッ素共重合体(A−2)の76.1質量%溶液を得た。このフッ素共重合体(A−2)の酸価は30.1mgKOH/gであり、数平均分子量(Mn)は5,800であり、重量平均分子量(Mw)は18,000であった。
[第3工程]
第2工程で得られたフッ素共重合体溶液500質量部を2リットルの4つ口フラスコに入れ、40℃まで加熱してからジメチルエタノールアミン14.6質量部を加え、1時間撹拌して均一にした後、60℃に昇温して、撹拌しながらイオン交換水436.7質量部を徐々に加えて、不揮発分39.0質量%のフッ素樹脂水性分散体(2)を得た。
上記で得られたフッ素樹脂水性分散体(2)について、実施例1と同様に操作して、貯蔵安定性、塗膜のゲル分率を評価、測定した。また、フッ素樹脂として30質量部となる量のフッ素樹脂水性分散体(2)を用いて、実施例1と同様に操作して、水性フッ素樹脂塗料(2)を調製して、塗膜を作製し塗膜特性(光沢及び鉛筆硬度)を評価した。
(実施例3)
[第1工程]
内部を窒素で置換したステンレス製のオートクレーブに、MDM75質量部、メタノール144.2質量部、EVE8.1質量部、HBVE20.2質量部、CHVE24.2質量部、UDA32.3質量部、HALS16.2質量部、及び重合開始剤としてt−ブチルパーオキシピバレート3.9質量部を仕込んだ。次いで、オートクレーブ内に、液化したCTFE76.7質量部を圧入した後、オートクレーブを63℃に昇温した。続いて、温度を63℃に保持したまま、液化したCTFE127.9質量部を1.5時間かけて圧入した。CTFEの圧入開始と同時に、EVE13.4質量部、HBVE33.7質量部、CHVE40.4質量部、UDA53.9質量部、MDM64.5質量部、及びt−ブチルパーオキシピバレート6.4質量部からなる混合物を1.5時間かけて圧入した。
[第2工程]
第1工程での単量体の圧入終了後、続けてオートクレーブ内に、液化したCTFE333.9質量部を2.5時間かけて圧入した。また、EVE52.8質量部、HBVE106.6質量部、CHVE152.9質量部、MDM154.8質量部、t−ブチルパーオキシピバレート15.5質量部からなる混合物を3.5時間かけて圧入した。この圧入終了後、圧入ライン洗浄のためにMDM42.2質量部を圧入した。オートクレーブを63℃に保温し、第一工程でのCTFE圧入開始から12時間反応を行った後、オートクレーブの内圧を常圧に戻し、反応物を1518.8質量部回収した。得られた溶液を3リットルの4つ口フラスコに入れ、無機合成吸着剤(協和化学工業株式会社製「キョーワード500(G7)」)76.8質量部を添加して60℃で4時間撹拌した。続いてろ過を行い、ろ過液を減圧留去し、フッ素共重合体(A−3)の75.9質量%溶液を得た。このフッ素共重合体(A−3)の酸価は25.4mgKOH/gであり、数平均分子量(Mn)は5,300であり、重量平均分子量(Mw)は19,700であった。
[第3工程]
第2工程で得られたフッ素共重合体溶液500質量部を2リットルの4つ口フラスコに入れ、40℃まで加熱してからジメチルエタノールアミン12.2質量部を加え、1時間撹拌して均一にした後、60℃に昇温して、撹拌しながらイオン交換水436.6質量部を徐々に加えて、不揮発分39.3質量%のフッ素樹脂水性分散体(4)を得た。
上記で得られたフッ素樹脂水性分散体(3)について、実施例1と同様に操作して、貯蔵安定性、塗膜のゲル分率を評価、測定した。また、フッ素樹脂として30質量部となる量のフッ素樹脂水性分散体(3)を用いて、実施例1と同様に操作して、水性フッ素樹脂塗料(3)を調製して、塗膜を作製し塗膜特性(光沢及び鉛筆硬度)を評価した。
(実施例4)
[第1工程]
内部を窒素で置換したステンレス製のオートクレーブに、MDM75質量部、メタノール144.2質量部、EVE28.3質量部、HBVE20.2質量部、CHVE2質量部、UDA26.3質量部、HALS16.2質量部、及び重合開始剤としてt−ブチルパーオキシピバレート3.9質量部を仕込んだ。次いで、オートクレーブ内に、液化したCTFE84.8質量部を圧入した後、オートクレーブを63℃に昇温した。続いて、温度を63℃に保持したまま、液化したCTFE141.4質量部を1.5時間かけて圧入した。CTFEの圧入開始と同時に、EVE47.1質量部、HBVE33.7質量部、CHVE3.4質量部、UDA43.7質量部、MDM64.5質量部、及びt−ブチルパーオキシピバレート6.4質量部からなる混合物を1.5時間かけて圧入した。
[第2工程]
第1工程での単量体の圧入終了後、続けてオートクレーブ内に、液化したCTFE371.6質量部を2.5時間かけて圧入した。また、EVE157.2質量部、HBVE106.6質量部、CHVE10.8質量部、MDM154.8質量部、t−ブチルパーオキシピバレート15.5質量部からなる混合物を3.5時間かけて圧入した。この圧入終了後、圧入ライン洗浄のためにMDM42.2質量部を圧入した。オートクレーブを63℃に保温し、第一工程でのCTFE圧入開始から12時間反応を行った後、オートクレーブの内圧を常圧に戻し、反応物を1451.8質量部回収した。得られた溶液を3リットルの4つ口フラスコに入れ、無機合成吸着剤(協和化学工業株式会社製「キョーワード500(G7)」)73.0質量部を添加して60℃で4時間撹拌した。続いてろ過を行い、ろ過液を減圧留去し、フッ素共重合体(A−4)の77.0質量%溶液を得た。このフッ素共重合体(A−4)の19.9mgKOH/gであり、数平均分子量(Mn)は6,800であり、重量平均分子量(Mw)は18,900であった。
[第3工程]
第2工程で得られたフッ素共重合体溶液500質量部を2リットルの4つ口フラスコに入れ、40℃まで加熱してからジメチルエタノールアミン9.7質量部を加え、1時間撹拌して均一にした後、60℃に昇温して、撹拌しながらイオン交換水452.4質量部を徐々に加えて、不揮発分40.2質量%のフッ素樹脂水性分散体(5)を得た。
上記で得られたフッ素樹脂水性分散体(4)について、実施例1と同様に操作して、貯蔵安定性、塗膜のゲル分率を評価、測定した。また、フッ素樹脂として30質量部となる量のフッ素樹脂水性分散体(4)を用いて、実施例1と同様に操作して、水性フッ素樹脂塗料(4)を調製して、塗膜を作製し塗膜特性(光沢及び鉛筆硬度)を評価した。
(実施例5)
[第1工程]
内部を窒素で置換したステンレス製のオートクレーブに、MDM75質量部、メタノール144.2質量部、EVE32.3質量部、HBVE20.2質量部、CHVE2質量部、UDA20.2質量部、HALS16.2質量部、及び重合開始剤としてt−ブチルパーオキシピバレート3.9質量部を仕込んだ。次いで、オートクレーブ内に、液化したCTFE86.8質量部を圧入した後、オートクレーブを63℃に昇温した。続いて、温度を63℃に保持したまま、液化したCTFE144.7質量部を1.5時間かけて圧入した。CTFEの圧入開始と同時に、EVE53.9質量部、HBVE33.7質量部、CHVE3.4質量部、UDA33.7質量部、MDM64.5質量部、及びt−ブチルパーオキシピバレート6.4質量部からなる混合物を1.5時間かけて圧入した。
[第2工程]
第1工程での単量体の圧入終了後、続けてオートクレーブ内に、液化したCTFE371.5質量部を2.5時間かけて圧入した。また、EVE157.2質量部、HBVE106.6質量部、CHVE10.8質量部、MDM154.8質量部、t−ブチルパーオキシピバレート15.5質量部からなる混合物を3.5時間かけて圧入した。この圧入終了後、圧入ライン洗浄のためにMDM42.2質量部を圧入した。オートクレーブを63℃に保温し、第一工程でのCTFE圧入開始から12時間反応を行った後、オートクレーブの内圧を常圧に戻し、反応物を1463.5質量部回収した。得られた溶液を3リットルの4つ口フラスコに入れ、無機合成吸着剤(協和化学工業株式会社製「キョーワード500(G7)」)74.0質量部を添加して60℃で4時間撹拌した。続いてろ過を行い、ろ過液を減圧留去し、フッ素共重合体(A−5)の77.8質量%溶液を得た。このフッ素共重合体(A−5)の酸価は15.4mgKOH/gであり、数平均分子量(Mn)は6,500であり、重量平均分子量(Mw)は22,200であった。
[第3工程]
第2工程で得られたフッ素共重合体溶液500質量部を2リットルの4つ口フラスコに入れ、40℃まで加熱してからジメチルエタノールアミン7.6質量部を加え、1時間撹拌して均一にした後、60℃に昇温して、撹拌しながらイオン交換水464.9質量部を徐々に加えて、不揮発分39.5質量%のフッ素樹脂水性分散体(5)を得た。
上記で得られたフッ素樹脂水性分散体(5)について、実施例1と同様に操作して、貯蔵安定性、塗膜のゲル分率を評価、測定した。また、フッ素樹脂として30質量部となる量のフッ素樹脂水性分散体(5)を用いて、実施例1と同様に操作して、水性フッ素樹脂塗料(5)を調製して、塗膜を作製し塗膜特性(光沢及び鉛筆硬度)を評価した。
(実施例6)
[第1工程]
内部を窒素で置換したステンレス製のオートクレーブに、MB75質量部、メタノール144.2質量部、EVE36.3質量部、HBVE20.2質量部、CHVE2質量部、UDA13.3質量部、HALS16.2質量部、及び重合開始剤としてt−ブチルパーオキシピバレート3.9質量部を仕込んだ。次いで、オートクレーブ内に、液化したCTFE89.7質量部を圧入した後、オートクレーブを63℃に昇温した。続いて、温度を63℃に保持したまま、液化したCTFE149.4質量部を1.5時間かけて圧入した。CTFEの圧入開始と同時に、EVE60.6質量部、HBVE33.7質量部、CHVE3.4質量部、UDA22.2質量部、MB64.5質量部、及びt−ブチルパーオキシピバレート6.4質量部からなる混合物を1.5時間かけて圧入した。
[第2工程]
第1工程での単量体の圧入終了後、続けてオートクレーブ内に、液化したCTFE372.6質量部を2.5時間かけて圧入した。また、EVE156.2質量部、HBVE106.6質量部、CHVE10.8質量部、MB154.8質量部、t−ブチルパーオキシピバレート15.5質量部からなる混合物を3.5時間かけて圧入した。この圧入終了後、圧入ライン洗浄のためにMB42.2質量部を圧入した。オートクレーブを63℃に保温し、第一工程でのCTFE圧入開始から12時間反応を行った後、オートクレーブの内圧を常圧に戻し、反応物を1484.9質量部回収した。得られた溶液を3リットルの4つ口フラスコに入れ、無機合成吸着剤(協和化学工業株式会社製「キョーワード500(G7)」)75質量部を添加して60℃で4時間撹拌した。続いてろ過を行い、ろ過液を減圧留去し、フッ素共重合体(A−6)の75.9質量%溶液を得た。このフッ素共重合体(A−6)の酸価は10.3mgKOH/gであり、数平均分子量(Mn)は6,900であり、重量平均分子量(Mw)は19,700であった。
[第3工程]
第2工程で得られたフッ素共重合体溶液500質量部を2リットルの4つ口フラスコに入れ、40℃まで加熱してからジメチルエタノールアミン4.9質量部を加え、1時間撹拌して均一にした後、60℃に昇温して、撹拌しながらイオン交換水443.8質量部を徐々に加えて、不揮発分40.2質量%のフッ素樹脂水性分散体(7)を得た。
上記で得られたフッ素樹脂水性分散体(6)について、実施例1と同様に操作して、貯蔵安定性、塗膜のゲル分率を評価、測定した。また、フッ素樹脂として30質量部となる量のフッ素樹脂水性分散体(6)を用いて、実施例1と同様に操作して、水性フッ素樹脂塗料(6)を調製して、塗膜を作製し塗膜特性(光沢及び鉛筆硬度)を評価した。
(比較例1)
窒素ガス置換した4つ口フラスコに、水酸基を有するフッ素樹脂(DIC株式会社製「フルオネートK−700」、不揮発分50質量%、フッ素樹脂の水酸基価48mgKOH/g)280質量部、無水メタクリル酸3質量部、及びトリエチルアミン0.5質量部を仕込み、内容物を撹拌しながら80℃まで昇温し、同温度を保ちながら2時間撹拌することによって、メタクリロイル基を導入したフッ素樹脂を得た。このメタクリロイル基を導入したフッ素樹脂283.5質量部に、メタクリル酸6質量部、メタクリル酸イソブチル51質量部、及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート2.8質量部を加えて均一に混合し、混合物を得た。次いで、窒素ガス置換した4つ口フラスコに、得られた混合物のうちの100質量部を入れて80℃まで昇温した。80℃を保ちながら、残りの混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後、さらに80℃で4時間撹拌することで、アクリル変性フッ素樹脂溶液を得た。このアクリル変性フッ素樹脂溶液の不揮発分は57.4質量%であり、酸価は25.6mgKOH/gであった。
上記で得られたアクリル変性フッ素樹脂溶液52.3質量部(アクリル変性フッ素樹脂として30質量部)、及び水酸基を有するフッ素樹脂(DIC株式会社製「フルオネートK−700」、不揮発分50質量%、フッ素樹脂の水酸基価48mgKOH/g)140質量部を窒素ガス置換した4つ口フラスコに仕込み、40℃まで加熱してからジメチルエタノールアミン1質量部を加え、1時間撹拌して均一にした後、60℃に昇温して、撹拌しながらイオン交換水150質量部を徐々に加えて水分散体を得た。得られた水分散体を減圧して濃縮することで、不揮発分40.8質量%のフッ素樹脂水性分散体(R1)を得た。
上記で得られたフッ素樹脂水性分散体(R1)について、実施例1と同様に操作して、貯蔵安定性、塗膜のゲル分率、水性フッ素樹脂塗料に用いた際の塗膜特性(光沢及び鉛筆硬度)を評価した。
(比較例2)
比較例1で得られたアクリル変性フッ素樹脂溶液43.6質量部(アクリル変性フッ素樹脂として25質量部)、及び水酸基を有するフッ素樹脂(DIC株式会社製「フルオネートK−700」、不揮発分50質量%、フッ素樹脂の水酸基価48mgKOH/g)150質量部を窒素ガス置換した4つ口フラスコに仕込み、40℃まで加熱してからジメチルエタノールアミン0.7質量部を加え、1時間撹拌して均一にした後、60℃に昇温して、撹拌しながらイオン交換水150質量部を徐々に加えて水分散体を得た。得られた水分散体を減圧して濃縮することで、不揮発分40.2質量%のフッ素樹脂水性分散体(R2)を得た。
上記で得られたフッ素樹脂水性分散体(R2)について、実施例1と同様に操作して、貯蔵安定性、塗膜のゲル分率を評価、測定した。また、フッ素樹脂として30質量部となる量のフッ素樹脂水性分散体(R2)を用いて、実施例1と同様に操作して、水性フッ素樹脂塗料(R2)を調製して、塗膜を作製し塗膜特性(光沢及び鉛筆硬度)を評価した。
(比較例3)
内部を窒素で置換したステンレス製のオートクレーブに、MDM75質量部、メタノール144.2質量部、EVE23.7質量部、HBVE24.1質量部、CHVE12.8質量部、UDA16.2質量部、HALS16.2質量部、及び重合開始剤としてt−ブチルパーオキシピバレート3.9質量部を仕込んだ。次いで、オートクレーブ内に、液化したCTFE84.8質量部を圧入した後、オートクレーブを63℃に昇温した。続いて、温度を63℃に保持したまま、液化したCTFE480.6質量部を4時間かけて圧入した。CTFEの圧入開始と同時に、EVE134.6質量部、HBVE136.3質量部、CHVE72.3質量部、UDA91.5質量部、MDM236.2質量部、及びt−ブチルパーオキシピバレート21.9質量部からなる混合物を5時間かけて圧入した。
CTFE圧入開始から12時間反応を行った後、オートクレーブの内圧を常圧に戻し、反応物を1375質量部回収した。得られた溶液を3リットルの4つ口フラスコに入れ、無機合成吸着剤(協和化学工業株式会社製「キョーワード500(G7)」)75質量部を添加して60℃で4時間撹拌した。続いてろ過を行い、ろ過液を減圧して濃縮し、フッ素共重合体(RA−1)の74.1質量%溶液を得た。このフッ素共重合体(RA−1)の酸価は30.0mgKOH/gであり、数平均分子量(Mn)は5,400であり、重量平均分子量(Mw)は14,300であった。
フッ素共重合体溶液(RA−1)500質量部を2リットルの4つ口フラスコに入れ、40℃まで加熱してからジメチルエタノールアミン13.7質量部を加え、1時間撹拌して均一にした後、60℃に昇温して、撹拌しながらイオン交換水448.6質量部を徐々に加えて、不揮発分38.2質量%のフッ素樹脂水性分散体(R3)を得た。
上記で得られたフッ素樹脂水性分散体(R3)について、実施例1と同様に操作して、貯蔵安定性、塗膜のゲル分率を評価、測定した。また、フッ素樹脂として30質量部となる量のフッ素樹脂水性分散体(R3)を用いて、実施例1と同様に操作して、水性フッ素樹脂塗料(R3)を調製して、塗膜を作製し塗膜特性(光沢及び鉛筆硬度)を評価した。
上記の実施例1〜6及び比較例3で製造したフッ素共重合体の単量体の組成、酸価、数平均分子量及び重量平均分子量を表1に示す。また、フッ素樹脂水性分散体の貯蔵安定性、塗膜のゲル分率、フッ素樹脂水性分散体を水性フッ素樹脂塗料に用いた際の塗膜特性(光沢及び鉛筆硬度)を評価した結果を表2に示す。
Figure 0005957940
Figure 0005957940
表2に示した実施例1〜6の評価結果から、本発明のフッ素樹脂水性分散体は、非常に優れた貯蔵安定性を有しており、当該フッ素樹脂水性分散体を用いた水性フッ素塗料の塗膜特性も良好なものであった。
表2に示した比較例1〜3の評価結果から、以下のことが分かった。
比較例1は、特許文献3記載のフッ素樹脂水性分散体に相当するものを用いた例であるが、当該フッ素樹脂水性分散体を用いた水性フッ素塗料の塗膜特性は比較的良好であったが、貯蔵安定性に劣ることが分かった。
比較例2は、特許文献3記載のフッ素樹脂水性分散体に相当するものを用いた例であるが、当該フッ素樹脂水性分散体を用いた水性フッ素塗料の塗膜特性は比較的良好であったが、貯蔵安定性に劣ることが分かった。
比較例3は、実施例2に相当する単量体組成で、第1工程及び第2工程の2段階で共重合反応をせずに、1段階で共重合反応を行った例であるが、当該フッ素樹脂水性分散体を用いた水性フッ素塗料の塗膜特性は比較的良好であったが、貯蔵安定性に劣ることが分かった。

Claims (8)

  1. フルオロオレフィン化合物(a1)及び水酸基を有するビニル単量体(a2)を必須とした単量体混合物(I)を共重合反応させる第1工程、
    第1工程で得られた反応物に、フルオロオレフィン化合物(a1)、水酸基を有するビニル単量体(a2)及びカルボキシル基を有するビニル単量体(a3)を必須とした単量体混合物(II)を加えて、さらに共重合反応させて、フッ素共重合体(A)を得る第2工程、
    前記フッ素共重合体(A)が有するカルボキシル基を塩基性化合物で中和して、水媒体中で分散させる第3工程を経て、得られることを特徴とするフッ素樹脂水性分散体の製造方法
  2. フルオロオレフィン化合物(a1)、水酸基を有するビニル単量体(a2)及びカルボキシル基を有するビニル単量体(a3)を必須とした単量体混合物(II)を共重合反応させる第1工程、
    第1工程で得られた反応物に、フルオロオレフィン化合物(a1)及び水酸基を有するビニル単量体(a2)を必須とした単量体混合物(I)を加えて、さらに共重合反応させて、フッ素共重合体(A)を得る第2工程、
    前記フッ素共重合体(A)が有するカルボキシル基を塩基性化合物で中和して、水媒体中で分散させる第3工程を経て、得られることを特徴とするフッ素樹脂水性分散体の製造方法
  3. 前記単量体混合物(I)又は(II)に、前記フルオロオレフィン化合物(a1)、ビニル単量体(a2)、ビニル単量体(a3)以外のその他のビニル単量体(a4)を含む請求項1又は2記載のフッ素樹脂水性分散体の製造方法
  4. 前記単量体混合物(I)中の各単量体の使用量が、前記フルオロオレフィン化合物(a1)1モルに対して、前記ビニル単量体(a2)及び(a4)の合計で、0.6〜1.5モルの範囲であり、前記ビニル単量体(a2)及び(a4)の合計中の前記ビニル単量体(a2)のモル比率が10〜100モル%の範囲であり、前記単量体混合物(II)中の各単量体の使用量が、前記フルオロオレフィン化合物(a1)1モルに対して、前記ビニル単量体(a2)、(a3)及び(a4)の合計で、0.6〜1.5モルの範囲であり、前記ビニル単量体(a2)、(a3)及び(a4)の合計中の前記ビニル単量体(a2)のモル比率が、10〜97モル%の範囲であり、前記ビニル単量体(a2)、(a3)及び(a4)の合計中の前記ビニル単量体(a3)のモル比率が、3〜60モル%の範囲である請求項3記載のフッ素樹脂水性分散体の製造方法
  5. 前記ビニル単量体(a3)が、カルボキシル基とビニル基との間の原子数が4以上の単量体である請求項1〜4のいずれか1項記載のフッ素樹脂水性分散体の製造方法
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載のフッ素樹脂水性分散体、及び水酸基又はカルボキシ基と反応する官能基を有する硬化剤(B)を含有することを特徴とする水性フッ素塗料の製造方法
  7. 前記硬化剤(B)が、ポリイソシアネート化合物である請求項6記載の水性フッ素塗料の製造方法
  8. 請求項6又は7記載の水性フッ素塗料で塗装されたことを特徴とする物品の製造方法
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