本発明は、熱アシスト磁気ヘッド素子が個々に分離される前のローバーの状態で、または熱アシスト磁気ヘッド素子がローバーから個々に分離されてジンバルに組み付けられたヘッドアセンブリの状態で、熱アシスト磁気ヘッド素子が発生する近接場光の発光状態及び磁界の分布を走査型プローブ顕微鏡を応用した装置を用いて検査する磁気ヘッド素子検査方法及びその装置に関するものである。
以下に、本発明を実施するための形態(実施形態)を、熱アシスト磁気ヘッド素子が個々に分離される前のローバーの状態で検査する場合について、図を用いて説明する。
図1Aに、本実施例に基づく熱アシスト磁気ヘッド素子を検査する装置の構成を示す。本実施例による熱アシスト磁気ヘッド検査装置100は、磁気ヘッド素子の製造工程において、多数の薄膜磁気ヘッド素子が形成されたウェハを加工してスライダ単体(薄膜磁気ヘッドチップ)を切り出す前の工程のローバー40(ヘッドスライダが複数配列されたブロック)の状態で熱アシスト磁気ヘッド素子の発生する近接場光の強度分布を測定することが可能なものである。通常、3cm〜10cm程度の細長いブロック体として多数の薄膜磁気ヘッド素子が形成されたウェハから切り出されたローバー40は、40個〜90個程度のヘッドスライダ(薄膜磁気ヘッド素子)が配列された構成となっている。ローバー40は、発光元となるレーザ素子を内蔵している。
本実施形態に係る磁気ヘッド素子検査装置100は、走査型プローブ顕微鏡をベースとしている。磁気ヘッド素子検査装置100は、検査ステージ101と、検査ステージ101上に載置されてローバー40をX,Y方向に微小な距離移動可能なピエゾ素子(図示せず)で駆動されるXステージ106、Yステージ105を備えている。
ローバー40は、その長軸方向の片側面がYステージ105の上面に設けられているローバー40の位置決め用の載置部114の段差部1142に設けられた基準面1141に突き当てられることによってX方向に位置決めされる。ローバー40は、図1Bに示すようにこの段差部1142の側面(基準面)1141に当接されることによってZ方向及びX方向の所定位置に設置されるようになっている。段差部1142の側面(基準面1141)には、ローバー40の後側面(熱アシスト磁気ヘッド素子の磁気ヘッド素子電極41及び42が形成されている面の反対側の面)が当接されてローバー40の位置決めが行われるようになっている。
磁気ヘッド素子検査装置100には、図1Aに示すように、Yステージ105の上方にはローバー40の位置ずれ量測定用のカメラ103が設けられている。Zステージ104は検査ステージ101のカラム1011に固定されており、カンチレバー10をZ方向に移動させるものである。検査ステージ101のXステージ106、Yステージ105、Zステージ104は、それぞれ図示していないピエゾ素子で駆動されるピエゾステージで構成されている。
磁気ヘッド素子検査装置100は更に、カンチレバー10、加振部122、近接場光検出光学系115、変位検出部130、プローブユニット140、発振器102、ピエゾドライバ107、差動アンプ111、DCコンバータ112、フィードバックコントローラ113、制御部30を備えている。また、制御部30は、近接場光検出光学系115を制御する近接場光検出制御系530を内部に備えている。
カンチレバー10は、Zステージ104でZ方向の位置が制御されて、Zステージ104に固定されている加振部122により、所定の周波数で所定の振幅で振動させられる。
変位検出部130は、カンチレバー10の振動の状態を検出する。変位検出部130は、レーザ光源109と変位センサ110とを備え、レーザ光源109から発射したレーザをカンチレバー10に当て、カンチレバー10で正反射した光を変位センサ110で検出する。変位センサ110から出力された信号は差動アンプ111、DCコンバータ112、フィードバックコントローラ113を介して制御部30に送られて処理される。
プローブユニット140は、制御部30からの信号301を受けて載置部114に載置されたローバー40の検査対象素子に電力とレーザとを印加して、検査対象素子に磁場と近接場光とを発生させる。
近接場光検出光学系115は、ローバー40の検査対象素子から発生した近接場光を検出して、検出信号302を制御部30へ出力する。
ピエゾドライバ107は、発振器102の信号を受けてピエゾ駆動信号を発振して、Xステージ106、Yステージ105、Zステージ104を駆動する。
上記した構成において、制御部30は、カメラ103で撮像したローバー40の画像に基づいてピエゾドライバ107を介してXステージ106、Yステージ105、Zステージ104を制御してローバー40が所定の位置にくるように位置決め調整を行う。ローバー40の位置決め調整が終了すると、制御部30からの指令に基づいてプローブユニット140が駆動され、プローブ141の先端部分がローバー40に形成された磁気ヘッド素子電極41と42に接触する。
プローブユニット140は、図2Aにその側面図を示すように、プローブカード(若しくは基板)141と、プローブカード141に取付けられたプローブ142をプローブベース143に固定した構成を有し、プローブベース143は支持プレート144で検査ステージ101に支持されている。一方、ローバー40は、図2Bの斜視図示すように磁気ヘッド素子501が多数形成された角棒状の基板であり、図2Cに示したように磁気ヘッド素子のローバー40の内部に形成された磁気ヘッド素子電極41と42とにプローブ142の先端部分1421と1422とを接触させた状態で交流電流1431を印加することにより、書込み回路部43の書込み磁界発生部502(図4A参照)から磁界が発生する。ローバー40に印加する交流電流の周波数をカンチレバー10の共振周波数とは異なる周波数とすることによってカンチレバー10の振動に影響を与えないようにした。なお、図面では省略しているが、ローバー40はレーザドライバ531と接続する接続パットも有している。
このような状態でXステージ106及びYステージ105を駆動して書込み磁界発生部502を含む走査領域401をカンチレバー10で走査し、カンチレバー10の振幅の変化を変位検出部130で検出して得られた信号を制御部30で処理することにより、ローバー40の書込み磁界発生部502から発生する磁界の分布を高速に測定し、ライト実行トラック幅を測定することができる。ローバー40は、載置部114に設けた図示していない吸着手段により吸着保持される。
プローブカード141は、駆動部143によりX方向に移動可能な構成になっていて、プローブ142の先端部分1421及び1422とローバー40に形成された多数の磁気ヘッド素子電極41及び42とが順次接触、離れの動作を行うように駆動する。
図3に、近接場光検出光学系115の詳細な構成について、制御部30の内部の近接場光検出制御系530、及びカンチレバー10との関係において説明する。なお、図3に示したローバー40(501)及びカンチレバー10と近接場光検出光学系115との位置関係は、図1Aに示したものと反対になっている。
カンチレバー10は、ローバー40に形成された熱アシスト磁気ヘッド素子部501の表面からヘッド浮上高さHfに相当する高さに、カンチレバー10の先端部付近に形成した探針4の先端部5が位置するように、Zステージ104によって位置決めされる。探針4の表面には、薄い磁性膜2(例えば、Co,Ni,Fe,NiFe,CoFe,NiCo等)及び貴金属(例えば金や銀又は白金等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3が形成されている。
熱アシスト磁気ヘッド素子部501には、書き込み磁界発生部502と近接場光発生部504が形成されている。
近接場光検出光学系115は、対物レンズ511とハーフミラー512、LED光源513、結像レンズ514を備えた結像レンズ系510と、光検出器切替機構210によって切替えが可能な光検出器(フォトマル)523と、CCDカメラ525とにより構成される。結像レンズ514により結像された光は、光検出器523の直前に備えたピンホール521を通過して光検出器523により検出される。また、CCDカメラ525が結像レンズ系510に対向して配置された場合には、結像レンズ514により結像された光がCCDカメラ525により撮像される。
光検出器切替機構210は、例えば回転テーブル又は回転アーム220に光検出器523と、CCDカメラ525とを固定して構成し、これをモータで駆動して、切替えて位置決めする構成とすることが考えられる。
結像レンズ系510は、ハーフミラー512を結像レンズ系510の光軸から外すための駆動部5121を備えており、CCDカメラ525で撮像する場合には、LED光源513から発射された光を観察対象へ照射するためにハーフミラー512を設置して使用する。一方、光検出器523を結像レンズ系510に対向して配置して、カンチレバー10の先端部より散乱される近接場光505を検出する場合には、駆動部5121でハーフミラー512を結像レンズ系510の光軸から外して退避することにより、カンチレバー10の探針4で発生した散乱光の光量をハーフミラー512で半減させることなく光検出器523で検出させる。
制御部30の一部を構成する近接場光検出制御系530は、熱アシスト磁気ヘッド素子部501の近接場光発生部504から近接場光505を発生させるために、図示していない導波路を介して近接場光発生部504にパルス駆動電流又はパルス駆動電圧5311を印加させるレーザドライバ531、レーザドライバ531から発振するパルス駆動電流又はパルス駆動電圧5311の発振周波数を調整するパルス変調器532、レーザドライバ531やパルス変調器532を制御する制御基板533、光検出器(フォトマル)523にバイアス電圧を印加するバイアス電源534、光検出器523で検出した信号からカンチレバー10の振動と同期した信号を取り出すロックインアンプ535、ロックインアンプ535で検出した光検出器523からの出力信号とCCDカメラ525からの出力信号を受けて処理する制御PC536を備えている。制御PC536からの出力は、制御部30のモニター画面31上に表示される。
上記したような近接場光検出光学系115と近接場光検出制御系530の構成において、レーザドライバ531からは制御基板533で制御されたパルス変調器532からのパルス変調信号で制御されたパルス駆動電流又はパルス駆動電圧5311が、図示していない導波路を経由して熱アシスト磁気ヘッド素子部501の近接場光発生部504に印加され、パルスレーザにより熱アシスト磁気ヘッド素子部501の表面に近接場光505を発生させる。
近接場光505そのものは近接場光発生部504の上面のごく限られた領域にしか発生しないが、カンチレバー10の探針4の表面の磁性膜2上に形成した貴金属又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3が近接場光505の発生領域に入ると、貴金属又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3からは近接場光505による散乱光を発生する。この発生した散乱光のうち結像レンズ系510の対物レンズ511に入射した散乱光により、結像レンズ514の結像面上にカンチレバー10の探針4の表面の散乱光像が形成される。この結像面上で探針4の表面の散乱光像が形成される場所にピンホール521が位置するように設置されている。探針4の大きさは、ピンホール521の大きさと比べると十分に小さいので、探針4の表面の散乱光像はピンホール521を通過し光検出器523で検出される。一方、探針4の表面以外からのノイズとなる光は結像面上でピンホール521からずれた位置に到達してピンホール521を通過できず、光検出器523に対して遮光される。このように構成することにより、熱アシスト磁気ヘッド素子部501の近接場光発生部504から発生した近接場光により探針4の表面で発生した散乱光の発光強度を、ノイズとなる光の影響を低減して光検出器523で検出することができる。
一方、CCDカメラ525を測定部の観察のために位置決めた場合(観察光学系設定)は、熱アシスト磁気ヘッド素子部501に対して、LED光源513から発射された光のうち、ハーフミラー512で対物レンズ511の側に反射された光は、対物レンズ511を透過してカンチレバー10の探針4及び熱アシスト磁気ヘッド素子部501を照明する。この照明光が照射された領域の像は結像レンズ系510により結像レンズ514の出射側で再び結像される。CCDカメラ525の検出面をこの結像レンズ514の出射側の結像面と一致するように設置することにより、カンチレバー10の探針4及び熱アシスト磁気ヘッド素子部501の像が、CCDカメラ525で撮像される。
このCCDカメラ525による撮像は、熱アシスト磁気ヘッド素子部501の検査を開始する前、即ち、近接場光発生部504から近接場光505を発生させない状態で行う。
CCDカメラ525で撮像された像は、A/D変換された濃淡画像が制御PC536に取り込まれて画像処理がなされる。図6Aのモニター画面31例に示すように、例えば、画面上に予め設定されたアライメントLine601に、検査対象の熱アシスト磁気ヘッド素子部501の下端のラインが一致するように、また、隣接する熱アシスト磁気ヘッド素子部との境界をエッジ検出などにより認識して、画面上に予め設定されたアライメントLine602、603などと一致するように、観察光学系の視野を調整する。この視野の調整には、Xステージ106、Yステージ105、及びZステージ104を駆動する場合と、前記近接場光検出光学系115全体の位置決め位置を連動して駆動して調整する手段が考えられる。これにより、カンチレバー10の探針4で発生した散乱光を最適に捕らえられるように、光学系のアライメントを実施する。
また、図6Aのモニター画面31例に示すように、検査対象の熱アシスト磁気ヘッド素子部501に刻印された製品番号などのIDデータは、例えば、認識ウインドウ610が設定されて、文字認識処理によって認識されて、結果が記録される。
以上のようにして近接場光検出光学系115が設定された状態で、制御部30で制御されて、プローブユニット140のプローブ141が駆動部143で駆動されて、プローブ141の先端部分1421と1422とがローバー40に形成された磁気ヘッド素子電極41と42にそれぞれ接触する。また、図示していないレーザドライバ531からの導波路と熱アシスト磁気ヘッド素子501の近接場光発生部504とが接続された状態になる。
これにより、制御部30から出力する信号301(交流電流1431とパルス駆動電流又はパルス駆動電圧5311)がローバー40に形成された熱アシスト磁気ヘッド素子に供給可能な状態となる。この状態で、載置部114に設けた図示していない吸着手段により吸着保持されているローバー40の検査対象の熱アシスト磁気ヘッド素子501は、書込み磁界発生部502から磁界を発生可能、近接場光発光部504から近接場光が発光可能な状態となる。
図4Aに示すように、検査ステージ101のYステージ105上に載置されたローバー40の上方の対向する位置には、前記近接場光と磁界との両方を測定できるカンチレバー10が配置されている。カンチレバー10は、Zステージ104の下側に設けられた加振部122に取り付けられている。加振部122はピエゾ素子で構成され、ピエゾドライバ107からの励振電圧によって機械的共振周波数近傍の周波数の交流電圧が印加され、カンチレバー10は加振されて先端部の探針4は上下方向(Z方向)に振動する。
図4A及び図4Bに示すように、本実施例におけるカンチレバー10の探針4は、カンチレバー10の板状のレバー1の先端部に四面体構造で形成されている。レバー1と探針4とはシリコン(Si)で形成されている。レバー1と探針4の正面側(近接場光検出光学系115に面する側:図4A及び図4Bの左側)には薄い磁性膜2が形成されており、磁性膜2の表面には貴金属又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3が形成されている。カンチレバー10は、レバー1と探針4、薄い磁性膜2、貴金属の粒子又は薄膜3とを備えて構成したことにより、近接場光と磁界との両方を測定することができる。
すなわち、探針4の表面に形成した薄い磁性膜2は、磁界を測定する際の感度と分解能を決め、磁界発生部502で発生した磁界503を測定する時に被測定物の磁場を感受する。また、探針4の表面に形成した貴金属(例えば金や銀等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3は、探針4が近接場光506の発生領域に入ったときに微粒子又は薄膜3から発生する散乱光を、局在型表面プラズモン増強効果により増幅して、近接場光検出光学系115で検出することが可能な程度までの光量にする。ただし、貴金属又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3は必ずしも必要ではなく、磁性膜2が十分に薄ければ、磁性膜2に近接場光505が当った時に局在型表面プラズモン増強効果により、近接場光により探針4の表面から発生する散乱光506を、近接場光検出光学系115で検出することが可能な程度までの光量に増幅させることができる。
カンチレバー10の探針4のZ方向の振動は、図1Aに示すように、半導体レーザ素子109と、4分割光ディテクタ素子からなる変位センサ110とを備えて構成される変位検出部130により検出される。この変位検出部130においては、半導体レーザ素子109から出射したレーザがカンチレバー10の探針4が形成されている面と反対側の面に照射され、カンチレバー1で反射したレーザは変位センサ110に入射する。変位センサ110は、受光面が4つの領域に分割された4分割センサであり、変位センサ110の分割されたそれぞれの受光面に入射したレーザはそれぞれ光電変換されて4つの電気信号として出力される。
ここで、変位センサ110は4つに分割された受光面を持ち、カンチレバー10が加振部122により振動が加えられていない状態、即ち静止した状態で半導体レーザ素子109からレーザが照射されたときに、カンチレバー10からの反射光が4つに分割された受光面のそれぞれに等しく入射するような位置に設置されている。差動アンプ111は、変位センサ110から出力される4つの電気信号の差分信号に所定の演算処理を施してDCコンバータ112に出力する。
すなわち、差動アンプ111は、変位センサ110から出力される4つの電気信号間の差分に対応した変位信号をDCコンバータ112に出力する。従って、カンチレバー10が加振部122により加振されていない状態では、差動アンプ111からの出力はゼロになる。DCコンバータ112は、差動アンプ111から出力される変位信号を実効値の直流信号に変換するRMS−DCコンバータ(Root Mean
Squared value to Direct Current converter)で構成される。
差動アンプ111から出力される変位信号は、カンチレバー10の変位に応じた信号であり、検査時にカンチレバー10は振動しているので交流信号となる。DCコンバータ112から出力される信号は、フィードバックコントローラ113に出力される。フィードバックコントローラ113は、カンチレバー10の現在の振動の大きさをモニターするための信号として制御部30にDCコンバータ112から出力される信号を出力すると共に、カンチレバー10の励振の大きさを調整するためのZステージ104の制御用信号として制御部30を通じて、ピエゾドライバ107にDCコンバータ112から出力される信号を出力する。この信号を制御部30でモニタし、その値に応じて、ピエゾドライバ107によりZステージ104を駆動するピエゾ素子(図示せず)を制御することによって、測定開始前に、カンチレバー10の初期位置を調整するようにしている。
本実施例においては、加振部122でカンチレバー10を所定の周波数で振動させた状態でピエゾドライバ107でXステージ106及びYステージ105を駆動することにより、図5Aに示すような熱アシスト磁気ヘッド素子部501の検査領域401を、カンチレバー10で走査する。この検査領域401は、1辺が数百nmから数μmの領域である。
この検査領域401をカンチレバー10を上下に振動させながらXステージ106を移動させる場合に、探針4をX方向に点線402に沿って図の左側から右側に向って走査する(熱アシストヘッド素子501を図4Aの+X方向に移動させる) 場合には、熱アシスト磁気ヘッド素子部501の書き込み磁界発生部502からは磁界を発生させて、カンチレバー10をMFM(Magnetic Force Microscope:磁気力顕微鏡)モードで駆動して、発生させた磁界を検出する。このMFMモードで検査している間は、レーザドライバ531から近接場光発光部504へのレーザの出力を停止している。
一方、Xステージ106をX方向に点線403に沿って図の右側から左側に向かって走査する(熱アシストヘッド素子501を図4Bの−X方向に移動させる)場合には、熱アシスト磁気ヘッド素子部501の書き込み磁界発生部502から磁界を発生させずにカンチレバー10をAFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)モードで駆動して検査領域401の表面の凹凸形状を計測すると共に、レーザドライバ531から近接場光発光部504へパルス駆動電流又はパルス駆動電圧を出力して近接場光発生部504から近接場光を発生させ、近接場光検出光学系115で検出する。
レーザドライバ531から発振したパルス駆動電流又はパルス駆動電圧5311により近接場光発生部504から近接場光を発生させる。ここで、近接場光発生部504における近接場光の発光効率はレーザ入射エネルギに対して数%程度であり、残りは熱エネルギに変換され、近接場光発生部504及びその近傍が発熱することになる。熱アシスト磁気ヘッド素子が磁気ディスクに組込まれて磁気ディスクにデータの書込みを行うときには磁気ディスクが数千rpmの速度で回転しており、磁気ディスクと熱アシスト磁気ヘッド素子との間に巻き込まれた空気により熱アシスト磁気ヘッド素子の近接場光発生部が空冷されて温度上昇が抑制される。しかし、熱アシスト磁気ヘッド素子を検査する場合には空冷機構が無いので、近接場光を発生させて検査を行う場合に、近接場光発生部の温度は、例えば、レーザドライバ531に50Wの電力を印加して発生させた連続発振レーザを近接場光発生部504に入射した場合、レーザを近接場光発生部504及びその近傍は200〜300℃程度まで温度が上昇する。
この発熱の影響を低減するために、本実施例においては、上記に説明したように熱アシスト磁気ヘッド素子部501で発生する近接場光の検出(AFMモード検出)と磁界の検出(MFMモード検出)とを交互に行うようにして、連続して近接場光を発生させる時間をできるだけ短くするようにした。また、近接場光を発生させるために近接場光発生部504にパルス駆動電流又はパルス駆動電圧を印加して発生するパルスレーザは、デューティーが25%以下となるようにレーザドライバ531を制御して、近接場光発生部504の発熱を抑えるようにした。
このように、検査時に、カンチレバー10に対する熱アシスト磁気ヘッド素子部501のX方向の走査の向きによってMFMモード検査とAFMモード検査とを切替えて、MFMモードで検査している間は近接場光発光部504へのパルス駆動電流又はパルス駆動電圧5311の印加を停止することにより、近接場光発光部504からの発熱による熱アシスト磁気ヘッド素子部501の温度上昇を抑制することが可能になり、熱アシスト磁気ヘッド素子部501でのダメージの発生を回避することができる。
このMFMモード時とAFMモード時とにおいて、熱アシスト磁気ヘッド素子部501の検査領域401の表面に対するカンチレバー10の探針4の高さを切替える。すなわち、AFMモードで検査する場合には、熱アシスト磁気ヘッド素子部501の検査領域401の表面に対するカンチレバー10の探針4の高さを、磁気ディスクへの書込み時のヘッド浮上高さHfに相当する高さに設定する。一方、これに対してMFMモードの場合には探針4の高さがHfより大きくなる(検査領域401の表面と探針4の先端部のギャップを大きく)ように設定する。この高さの切り替えは、Zステージ104をピエゾドライバ107で駆動することにより行う。
なお、図5Aに示した例では、隣り合う点線402と403とは、Y方向で異なる位置を走査するように表示しているが、Y方向に同じ位置、即ち点線402と403とは重なるように走査してもよい。その場合には、最初に点線402に沿って熱アシスト磁気ヘッド素子部501を移動させてAFMモードの検査を行い、熱アシスト磁気ヘッド素子部501を点線403に沿って逆方向に移動させてMFMモードの検査を行う。次に、熱アシスト磁気ヘッド素子部501をY方向に1ピッチ移動させてAFMモードの検査とMFMモードの検査を行う。
次に、MFMモード検査時において熱アシスト磁気ヘッド素子部501から発生する磁界を検出する方法について説明する。
まず、探針4がMFMモード検査時の熱アシスト磁気ヘッド素子部501に対する高さ位置(ギャップ)となるように、ピエゾドライバ107でZステージ104を制御する。一方、プローブユニット140の駆動部143で駆動されてプローブ142の先端部分1421と1422とがそれぞれローバー40に形成された電極41と42とに接触した状態で交流電流1431を印加すると、書込み回路部43の書込み磁界発生部502から書込み磁界503が発生する。このとき、レーザドライバ531から近接場光発生部504へのレーザの出力は遮断されている。次に、カンチレバー10が加振部122により振動を加えられた状態で、ローバー40を載置したXステージ106をピエゾドライバ107で制御されたピエゾ素子(図示せず)により一定の速度で図4Aの+X方向に移動させることにより、探針4で熱アシスト磁気ヘッド素子501の検査領域401を、図5の点線402に沿った方向(+X方向)に走査する。
カンチレバー10の探針4が書込み磁界発生部502により発生した書込み磁界503の中に入ると、探針4の表面に形成された薄膜の磁性体2が磁化され、探針4が磁気力を受けることにより、カンチレバー10の振動状態が変化する。この振動の変化を図1Aの変位センサ110で検出する。すなわち、カンチレバー10の振動状態が変わると、半導体レーザ素子109から発射されてカンチレバー10で反射されたレーザの変位センサ110の4つに分割された受光面への入射位置が変化する。
この変位センサ110の出力を差動アンプ111で検出することにより、走査する位置に応じたカンチレバー10の振動状態の変化を検出することができる。この検出した信号を制御部30で処理することにより、熱アシスト磁気ヘッド素子部501の磁界発生部502が発生する書込み磁界503の強度分布を検出することが可能となる。この検出した書込み磁界の強度分布を予め設定した基準値と比較することにより、書込み磁界発生部502の良否を判定することができる。
Xステージ106を駆動して探針4を検査領域401のX方向の距離分だけ移動させた後、Xステージ106の駆動を停止してMFMモードの検査を停止し、AFMモードに切り替えたのち、Xステージ106を逆方向に移動させる。
次に、AFMモード検査時において熱アシスト磁気ヘッド素子部501からの近接場光の発生の状態を検出する方法について説明する。AFMモード検査時においては、加振部122で駆動してカンチレバー10を振動させた状態で、探針4で検査領域401を点線403に沿って−Xの方向に走査させ、走査中のカンチレバー10の振幅の変化を変位検出部130で検出して、検査領域401の表面の凹凸の情報を得ると同時に、近接場光発生部504の上面を走査中に探針4から発生する散乱光を近接場光検出光学系115で検出する。AFMモード検査を行うには、先ず、探針4がAFMモード時の熱アシスト磁気ヘッド素子部501に対する高さ位置(ギャップ)となるように、ピエゾドライバ107でZステージ104を制御する。次に、レーザドライバ531から出力されたパルス駆動電流又はパルス駆動電圧5311を、プローブユニット140から熱アシスト磁気ヘッド素子部501の近接場光発生部504に印加させる。
このような状態で、図4Bに示すように、加振部122によりカンチレバー10をローバー40の表面(記録面)510に対して上下方向に振動させ、ローバー40を載置したXステージ106を一定の速度でX方向で、先に説明したMFM検査時とは逆の方向(−X方向)に走査する。Xステージ106を走査中のカンチレバー10の振動の変化は、変位検出部130の変位センサ110で検出される。一方、Xステージ106を走査中に探針4が近接場光発生部504により近接場光505が発生している領域に到達すると、探針4の近接場光505が発生している領域内に存在する部分の表面から散乱光506が発生する。この探針4の表面で発生した散乱光は、探針4の表面の磁性膜2の上に形成された貴金属(例えば金や銀等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3による局在型表面プラズモン増強効果により増幅される。この増幅された散乱光のうち、カンチレバー10の近傍に配置された近接場光検出光学系115に入射した散乱光は、光検出器523で検出される。
Xステージ106を駆動して探針4で検査領域401のX方向の距離分だけMFMモード時とは逆の方向に走査した後、Xステージ106の駆動を停止してAFMモードの検査を停止する。次に、Yステージ107を駆動して探針4に対して検査領域401をY方向に1ピッチ分移動させXステージ106を前回のMFMモード時と同じ方向に駆動して探針4で検査領域401のX方向に走査することを繰返して、探針4で検査領域401の全面を走査する。
このようにして探針4で検査領域401を1回全面走査することで、熱アシスト磁気ヘッド素子部501の磁界発生部502から発生した磁界発生領域と近接場光発生部504から発生した近接場光による探針4からの散乱光を検出することにより近接場光発生領域とを検出することが可能となる。
図7に、制御PC536の構成を示す。制御PC536は一般的なコンピュータで実現され、演算部710は中央処理装置により、記憶部720はハードディスク装置などの外部記憶装置により、キーボードやマウスなどの入力部730、入出力インタフェース740を備えて構成される。図1Aでは、制御部30の中に近接場光検出制御部530が含められる構成として記載しているが、図7の制御PC536は、磁気ヘッド素子検査装置100の各部の制御機能を含めて記載する。
記憶部720は、磁気ヘッド素子検査装置100の各部の制御パラメータを予め登録しておく制御パラメータ記憶領域721と、演算部536で実行する制御プログラムを記憶しておく制御プログラム記憶領域722、熱アシスト磁気ヘッド素子501の検査領域401を走査して検出した磁界強度値を探針の走査座標値と対応付けて記録する磁界強度記憶領域723と、熱アシスト磁気ヘッド素子501の近接場光発生部504の上面を走査して検出した近接場光発光強度値を探針の走査座標値と対応付けて記録する近接場光発光強度記憶領域724と、前記磁界強度記憶領域723、および前記近接場光発光強度記憶領域724に記録されたデータに基づき算出された磁界の分布、近接場光の強度の分布、近接場光発生領域形状及び位置などの計測結果を製番と対応付けて記憶する計測結果記憶領域725とを有する。
演算部710は、制御プログラム記憶領域722に記憶されている各制御プログラムを演算部のメモリにロードして実行することにより実現する各処理部を有する。
計測スキャン制御部711は、計測対象の熱アシスト磁気ヘッド素子501の検査領域401に対して、プローブユニット140、X,Y,Zステージ、加振部122、変位検出部130、近接場光検出光学系115を制御して、全面、または所要の走査領域を探針で走査して、磁界強度、近接場光発光強度を計測する。
探針加振制御部712は、カンチレバー10を所定の周波数で所定の振幅で振動させ、カンチレバー10の振動の状態を変位検出部130により検出して、変位センサ110から出力された信号は差動アンプ111、DCコンバータ112、フィードバックコントローラ113を介して入力して振動の状態の変化を検出する。
ワークアライメント制御部713は、Yステージ105の上面の位置決め用の載置部114に、ワーク(ローバー、ジンバルに組み付けられたヘッドアセンブリなど)が搭載ロボットにより搭載された状態をカメラ103で撮像して、位置ずれの確認を行い、ワークの検査初期位置への位置決めを制御する。
光学系アライメント制御部714は、前記CCDカメラ525が配置された前記近接場光検出光学系115により測定部のワーク(ローバーに形成された熱アシスト磁気ヘッド素子部、ジンバルに組み付けられたヘッドアセンブリなど)の位置をCCDカメラ525からの出力画像より認識して、画像上のアライメントLineにワークの所定形状を合わせるように、X,Y,Zステージを調整するか、または前記近接場光検出光学系115全体の位置決め位置を連動して駆動して調整する。これにより、カンチレバー10の探針4で発生した散乱光を最適に捕らえられるように、光学系のアライメントを行なう。
製番認識部715は、観察光学系の画像において、検査対象の熱アシスト磁気ヘッド素子部501に刻印された製品番号などのIDデータを、例えば認識ウインドウ610を設定して、文字認識処理によって認識する。
磁界強度分布検出部716は、前記計測スキャン制御部711の処理における書込み磁界発生部502上の探針4の走査によって発生した磁気力に起因して、変位センサ110の出力変化を差動アンプ111で検出することにより、走査する位置に応じたカンチレバー10の振動状態の変化を検出する。検出した磁界強度を探針の走査座標値と対応付けて磁界強度記憶領域723に記録する。
近接場光発光強度検出部717は、近接場光発生部504から発生した近接場光による探針4からの散乱光を近接場光検出光学系115の光検出器523により検出し、検出した信号からカンチレバー10の振動と同期した信号をロックインアンプ535により取り出した出力より近接場光発光強度を算出して、探針の走査座標値と対応付けて近接場光発光強度記憶領域724へ記録する。
計測結果演算部718は、磁界強度記憶領域723と、近接場光発光強度記憶領域724に記録されたデータに基づき、磁界発生部502から発生した磁界強度の分布と近接場光発生部504から発生した近接場光の強度の分布を求める。例えば、近接場光の強度の分布は、図6Bに示すようなガウス分布が得られる。統計処理によりその中央値620の探針走査位置座標621は、近接場光発生部504のX座標位置を表わす。また、Y方向にシフトした各走査線上の同一X座標値の近接場光の強度の分布を求めれば、同様にして近接場光発生部504のY座標位置を求めることができる。
同様にして、磁界発生部502から発生した磁界強度の分布の統計処理により、磁界発生部502の位置を求めることができる。
また、磁界強度の分布と近接場光の強度の分布を予め設定した基準データと比較することにより磁界発生部502から発生した磁界と近接場光発生部504からの近接場光発光の状態(磁界強度、磁界分布、磁界発生領域形状及び位置、近接場光強度、近接場光分布、近接場光発生領域形状及び位置など)の良否を判定することができる。
更に、熱アシスト磁気ヘッド素子部501の磁界発生部502が発生する書込み磁界(交流磁界)503と近接場光発生部504から発生する熱アシスト光(近接場光)505との位置関係も測定することが可能となる。これにより、製造工程途中のできるだけ早い段階で熱アシスト磁気ヘッド素子の書込み磁界と近接場光の強度分布の検査及び両者の位置関係の測定を行うことができる。
以上の演算結果、判定結果を計測結果記憶領域725へ、製番認識部715が認識したワーク(熱アシスト磁気ヘッド素子部)の製番と対応付けて記録する。
本実施例による熱アシスト磁気ヘッド検査装置100による検査プロセスのフローを図8に示す。
ステップS801では、図示していないハンドリングユニットで供給トレイからワーク(ローバー40)を1本取り出し、検査ステージ101上に搬送してYステージ105の基準面1141にローバー40を押し当てた状態でYステージ105と載置部114により形成された段差部1142にローバー40を載置する。それと同期して、光検出器切替機構210を駆動してCCDカメラ525を検査対象の熱アシスト磁気ヘッド素子501を観察する位置へ設定する(観察光学系設定)。
ステップS802では、カメラ103でローバー40を撮像してローバー40の位置情報を得て、この得た位置情報に基づいてXステージ106又はYステージ105を駆動してローバー40の位置を調整するアライメントを行う。
ステップS803では、前記CCDカメラ525により、検査対象の熱アシスト磁気ヘッド素子501を撮像した画像より、画像上のアライメントLineにワークの所定形状を合わせるように、X,Y,Zステージを調整するか、または近接場光検出光学系115全体の位置決め位置を連動して駆動・調整して光学系のアライメントを行なう。
ステップS804では、光検出器切替機構210を駆動して、光検出器523を測定位置へ切り換える。
ステップS805の計測処理フローを、図9に示す。
計測処理は、まず、プローブユニット140の駆動部143を作動させてプローブ142を前進させ、プローブ142の先端部1421と1422とをローバー40に形成された熱アシスト磁気ヘッド素子部501の磁気ヘッド素子電極41と42とに接触させる。(S901)
次に、Zステージを駆動してカンチレバー10が熱アシスト磁気ヘッド素子部501の記録面510の検査領域401にMFMモードで検査する位置に移動する。(S902)
次に、熱アシスト磁気ヘッド素子部501に信号301を供給して磁界発生部502から書込み磁界(交流磁界)503を発生させる(S903)。
次に、加振部122でカンチレバー10を振動させながらピエゾドライバ107によりピエゾ素子(図示せず)を駆動してXステージ106をX方向に一定の速度で移動させながらカンチレバー10をMFMモードで検査領域401を走査する(S904)。カンチレバー10の探針4が検査領域401のX方向の端部に達したらXステージ106の駆動を停止する(S905)。次に、Zステージを駆動して熱アシスト磁気ヘッド素子部501の記録面510と探針4との間隔がAFMモード時の間隔になるようにカンチレバー10の位置を調整し(S906)、プローブユニット140から近接場光発生部504にパルス駆動電流又はパルス駆動電圧5311を印加させて検査領域401の内部の近接場光発生部504近傍に近接場光を発生させる(S907)。
次に、加振部122でカンチレバー10を振動させながらピエゾドライバ107によりピエゾ素子(図示せず)を駆動してXステージ106を−X方向に一定の速度で移動させながらカンチレバー10をAFMモードで検査領域401を走査する(S908)。カンチレバー10の探針4が検査領域401のX方向の反対側の端部に達したらXステージ106の駆動を停止する(S909)。
次に、検査領域401上の所定走査線を全て検査したかをチェックし(S910)、全ての所定走査線の検査が終わっていない場合には(S910でNOのとき)、ピエゾドライバ107によりピエゾ素子(図示せず)を駆動してYステージ105を次の走査線のY座標へ移動させ(S911)、S901からS910までを繰り返し実行する。
このS901からS911までの処理を繰り返し実行することにより、熱アシスト磁気ヘッド素子501の磁界発生部502から発生する書込み磁界503の分布と近接場光発光部504から発生した近接場光505の発生領域の形状とを、検査領域401上の所定走査線を探針4で1回スキャンするだけで検出することができる。
次に、図8のステップS806に戻り、ワーク(ローバー40)上に未だ検査をしていない次の熱アシスト磁気ヘッド素子501が残っているかを判定して、残っている場合は、ステップS807へ移り、次の熱アシスト磁気ヘッド素子501を測定位置へ移動させる。
ステップS808では、光検出器切替機構210を駆動して、光検出器523からCCDカメラ525を測定位置へ切り換えて、ステップS803へ移る。
ステップS806において、ワーク(ローバー40)上に未だ検査をしていない次の熱アシスト磁気ヘッド素子501が残っていないと判定された場合には、ステップS809へ移り、図示していないハンドリングユニットで検査ステージ101上の載置部114に載置されたワーク(ローバー40)を搬出して、回収トレイに収納する。
次に、ステップS810において、供給トレイに未検査のワーク(ローバー40)があるか否かをチェックして、有る場合には、ステップS811へ移って次のワーク(ローバー40)を選択して、ステップS801の処理へ移り、未検査のワーク(ローバー40)が無い場合には、検査を終了する。
本実施形態によれば、熱アシスト磁気ヘッドの検査部100でローバー40に形成された熱アシスト磁気ヘッド素子501から発生する書込み磁界(交流磁界)と熱アシスト光(近接場光)とをカンチレバー10により検査領域全面、または所定数の走査線を1回スキャンするだけで検出することができ、製造工程の上流で、かつ、比較的短い時間で検査を行うことができる。
なお、上記実施例では、ローバー40に形成された熱アシスト磁気ヘッド素子501を検査する例について説明したが、熱アシスト磁気ヘッド素子501が図示していないジンバルに組み付けられたヘッドアセンブリの状態でも、同様にして検査を行うことができる。この場合には、載置部114を、ヘッドアセンブリを搭載するのに適した形状に変更すればよい。
次に、上記実施の形態と異なる他の実施の形態について説明する。上記実施の形態と異なる点は、上記実施の形態では図5Aに示すように、熱アシスト磁気ヘッド素子部501の検査領域401をカンチレバー10で走査する際に、X方向及び−X方向にカンチレバー10で走査させたが、他の実施の形態では、図5Bに示すようにY方向及び−Y方向にカンチレバー10で走査させる。
この検査領域401をカンチレバー10を上下に振動させながらYステージ105を移動させる場合に、探針4をY方向に点線1602に沿って図の上側から下側に向って走査する(熱アシストヘッド素子501を図4Aで紙面垂直方向に対して下方に移動させる) 場合には、熱アシスト磁気ヘッド素子部501の書き込み磁界発生部502からは磁界を発生させて、カンチレバー10をMFMモードで駆動して、発生させた磁界を検出する。このMFMモードで検査している間は、レーザドライバ531から近接場光発光部504へのレーザの出力を停止している。
一方、Yステージ105をY方向に点線1603に沿って図の下側から上側に向かって走査する(熱アシストヘッド素子501を図4Bの紙面垂直方向に対して上方に移動させる)場合には、熱アシスト磁気ヘッド素子部501の書き込み磁界発生部502から磁界を発生させずにカンチレバー10をAFMモードで駆動して検査領域401の表面の凹凸形状を計測すると共に、レーザドライバ531から近接場光発光部504へレーザを出力して近接場光発生部504から近接場光を発生させ、近接場光検出光学系115で検出する。
このように、検査時に、カンチレバー10に対する熱アシスト磁気ヘッド素子部501のY方向の走査の向きによってMFMモード検査とAFMモード検査とを切替えて、MFMモードで検査している間は近接場光発光部504へのパルス駆動電流又はパルス駆動電圧5311の印加を停止することにより、近接場光発光部504からの発熱による熱アシスト磁気ヘッド素子部501の温度上昇を抑制することが可能になり、熱アシスト磁気ヘッド素子部501でのダメージの発生を回避することができる。
このMFMモード時とAFMモード時とにおいて、熱アシスト磁気ヘッド素子部501の検査領域401の表面に対するカンチレバー10の探針4の高さを切替える。すなわち、AFMモードで検査する場合には、熱アシスト磁気ヘッド素子部501の検査領域401の表面に対するカンチレバー10の探針4の高さを、磁気ディスクへの書込み時のヘッド浮上高さHfに相当する高さに設定する。一方、これに対してMFMモードの場合には探針4の高さがHfより大きくなる(検査領域401の表面と探針4の先端部のギャップを大きく)ように設定する。この高さの切り替えは、Zステージ104をピエゾドライバ107で駆動することにより行う。
なお、図5Aに示した例と同様に図5Bに示した例では、隣り合う点線1602と1603とは、Y方向で異なる位置を走査するように表示しているが、Y方向に同じ位置、即ち点線1602と1603とは重なるように走査してもよい。その場合には、最初に点線602に沿って熱アシスト磁気ヘッド素子部501を移動させてAFMモードの検査を行い、熱アシスト磁気ヘッド素子部501を点線603に沿って逆方向に移動させてMFMモードの検査を行う。次に、熱アシスト磁気ヘッド素子部501をX方向に1ピッチ移動させてAFMモードの検査とMFMモードの検査を行う。
また、レーザドライバ531は、パルス駆動電流又はパルス駆動電圧でなく、一定の電流又は電圧を印加して、熱アシスト磁気ヘッド素子部501の近接場光発生部504から近接場光505を発生させるようにしてもよい。
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。