JP5954044B2 - 連続鋳造鋳片の製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、生産性を向上させるために鋳造速度を増加すると、最終凝固位置は鋳片の鋳造方向下流側に移動する。最終凝固位置が鋳片支持ロールの範囲を超えてしまうと、鋳片が静鉄圧により膨らみ(以下、「バルジング」と記す)、内質の悪化や巨大バルジングの場合には鋳造停止と云った問題が発生する。又、鋳片の中心偏析を低減して高品質化を図るための軽圧下操業では、最終凝固位置を軽圧下帯に位置させるように鋳造速度や2次冷却水量を制御する必要がある。
例えば、鋳片の中心偏析を低減するためには、上記の軽圧下帯を用いた軽圧下操業であっても、最終凝固位置を鋳片幅方向で均一にすることが必要である。鋳片幅方向で最終凝固位置が異なる場合には、軽圧下帯における軽圧下量が鋳片幅方向各位置で異なり、軽圧下量の少ない位置では十分な中心偏析改善効果が得られない。又、生産性を向上させるために、鋳造速度を最大限にしていた場合には、最終凝固位置の伸張した箇所が鋳片支持ロールの範囲を超えてしまうことがあり、この場合にはバルジングに伴う内質の悪化などと云った問題が発生する。
最終凝固形状は鋳片内部の成分偏析などの品質異常と相関が強いと考えられ、例えば凝固形状の凹凸が大きいほど成分偏析が大きいとされている。そのため、品質異常防止・品質管理のため、凝固形状を常時把握し、更にその凝固形状に基づき制御する技術が求められている。
例えば、超音波センサを使用して最終凝固状態を推定する方法では、十分な信号強度を得るには、超音波センサを例えば鋳片から8mm以内の位置に設置する必要があり、そのため、センサは800℃程度の高温環境下にさらされる。冷却水で冷却するなどの対策をとっても、連続使用する場合、センサが故障するケースが多い。また最終凝固形状の幅方向の分布を計測するには、幅方向に多数の超音波センサを設置するか、もしくはセンサを幅方向に自動的に動作させる必要がある。その場合、各幅方向位置でセンサを鋳片から適切な距離に自動的に保つのは難しい。
ここで特許文献2には、上記のように計算により推定した凝固状態と実際の凝固状態とのずれを表面温度計測値によって修正する方法が記載されている。しかし、この特許文献2には、冷却による熱流束を温度誤差に基づいて直接修正する方法が記載されているものの、特許文献2に記載の方法では、最終凝固位置や形状の推定はできない。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、連続鋳造における最終凝固位置、および最終凝固形状をより精度良く推定した結果に基づき鋳造条件を制御することを目的とする。
0.4mm/m〜1.3mm/mの範囲内で予め設定した初期設定の軽圧下量で鋳片の鋳造を開始し、
鋳片幅方向の表面温度分布を計測し、この計測された表面温度実測値と上記凝固状態推定計算結果の上記表面温度分布計測位置における表面温度推定値との誤差が最小となるように、鋳片断面温度分布の計算値を修正し再推定計算することにより、最終凝固位置および形状の予測精度を向上させて最終凝固の形状を予測し、
上記予測した最終凝固の形状に基づき、上記軽圧下帯における軽圧下量を、0.4mm/m〜1.3mm/mの範囲内で上記初期設定の軽圧下量から変更させることで、最短最終凝固位置と最長最終凝固位置との鋳造方向の差が予め設定している基準範囲内に制御することを特徴とする。
このとき、鋳片断面温度分布の計算値を修正し再推定計算するにあたっては、
上記表面温度分布計測位置より上流で、かつ最終凝固位置より上流である位置を定め、該定めた上流位置での断面の温度分布を最適化手法を用い修正し、該修正された上流位置での断面の温度分布を用いて再推定計算しても良い。
0.4mm/m〜1.3mm/mの範囲内で予め設定した初期設定の軽圧下量で鋳片の鋳造を開始し、
少なくとも上記2次冷却の冷却条件に基づく熱流束を使用した熱伝達モデルによって上記鋳片の凝固状態を推定すると共に、鋳片長手方向における予め設定した計測位置での鋳片幅方向の温度分布を計測し、
上記計測位置における上記熱伝達モデルで推定した推定温度と上記計測した鋳片幅方向の温度分布とが一致するように、上記熱流束の鋳片幅方向の熱流束分布を補正することで、上記熱伝達モデルの出力を修正して、最終凝固の形状を推定し、
上記推定した最終凝固の形状に基づき、上記軽圧下帯における軽圧下量を、0.4mm/m〜1.3mm/mの範囲内で上記初期設定の軽圧下量から変更させることで、最短最終凝固位置と最長最終凝固位置との鋳造方向の差が予め設定している基準範囲内に制御する。
また、上記2次冷却は、複数の冷却ゾーンによって実施され、
上記熱流束分布を補正するための熱流束分布の補正係数を上記各冷却ゾーン毎に個別に設定して良い。
また、上記予め設定している基準範囲は2mとすると良い。
(第1実施形態)
図1は、本発明が適用される垂直曲げ型連鋳機の構成例を示す図である。図中、1はタンディッシュ、2は鋳型、3は浸漬ノズル、4は表面温度分布計測器、5は鋳片、6はサポートロール、および7〜13は冷却ゾーンをそれぞれ表す。
垂直曲げ型連鋳機では、タンディッシュ1の下方に鋳型2が設けられ、タンディッシュ1の底部に鋳型2への溶鋼供給口となる浸漬ノズル3が設けられている。そして、鋳型2の下方には、サポートロール6が設置されている。冷却ゾーン7〜13は、それぞれ分割された2次冷却帯を構成している。
各冷却ゾーンには、複数のスプレーまたはエアミストスプレー用のノズルが配置されており、スプレーノズルから鋳片の表面に2次冷却水が噴霧される。なお、冷却ゾーンにおいて、反基準面側(上面側)の冷却ゾーンをaで表示し、基準面側(下面側)をbで表示している。
さらに、本実施形態の連続鋳造機は鋳片5を軽圧下するための、圧下ロール(軽圧下ロール)が設置されている。すなわち、本実施形態の連続鋳造機は、図1に示すように、サポートロール6の一部として鋳片5を軽圧下するための軽圧下帯16が設置されている。軽圧下帯16は複数組のサポートロール6で構成され、対向するサポートロール6のロール間の間隔が鋳片5の鋳造方向下流側に向かって徐々に狭くなるように設定され、鋳片5に対して圧下力を付加することの可能な構造になっている。
ここで、鋳片鋳造の開始の際に、軽圧下量を、軽圧下帯域内で予め設定した初期設定の軽圧下量に設定する。軽圧下帯域での初期設定の軽圧下量は、0.4mm/m〜1.3mm/mの範囲である。軽圧下帯域での軽圧下量は、同一鋼種における過去鋳造の実績において、偏析度が小さく望ましい品質になった値を使用するのが好ましい。
CC(連続鋳造機)の2次冷却計算は、例えば、単位長さ(鋳造方向)にスライスされた鋳片断面を考え、鋳造中のストランド内の場所に応じて、水冷、空冷、ミスト冷却、ロール抜熱などで様々な状況での境界条件の熱流束を与えて、以下の式(1)に示す2次元伝熱方程式を解くことで実施される。
計算は、まず鋳造方向単位長さの2次元断面スライス1枚ごとをメニスカスから機端まで連続して温度計算を行う。すなわち、2次冷却計算全体を一度実行し、上流境界条件・機端表面温度分布を計算する。
そして、表面温度観測位置における鋳片表面温度計算値と表面温度実測値の差を誤差面積などで評価関数とし、その値を用いて評価する。その評価関数値が小さくなるように温度計測位置より上流で、最終凝固すなわちクレータエンド(以下、CEとも略記する)の位置よりも上流の適当な位置を定め、その断面の温度分布を修正する。 この断面の温度
分布修正と温度誤差の評価関数による評価の繰り返しにより、評価関数が最小となる温度分布を算出(最適化計算)し、その温度分布に基づいて再計算した結果を、もっとも誤差の少ない温度とする。
このようにして、評価関数を最小にする上流位置の断面温度分布が得られたならば、その位置から下流へ向かって操業条件に沿った冷却計算を再度実施して最終凝固位置・形状を算出する。
Step100では、CE位置より上流の位置を定め温度分布を仮定して与える。そして、Step101で、温度モデルによる機端表面温度分布を推定計算する。推定計算した表面温度分布と実測した表面温度分布と比較し、その誤差を評価関数を用いて評価する(Step102)。
そして、評価関数の収束性を判断し、収束と判断されない場合には、上流温度分布を修正する(Step103)。
まず、幅方向を計算メッシュより粗い指定した数で分割し、分割区間は一定温度として近似する方法で幅方向表面温度を与え、これを求める変数とする。
次に、厚み方向の分布は最初に計算した鋳片温度の、指定された上流位置の厚み方向の分布を2次関数近似した関数を用いて厚み方向中央部までの温度を決定するものとした。なお、ここでは2次関数近似をしているが、厚み方向の温度分布は、表面冷却の状況に応じて計算で得られた分布形状をそのまま利用しても良いし、適切な修正を行って用いても良い(具体的方法として、厚み方向のメッシュ間の温度比率を保存する方法などが考えられる)。
本発明に基づく第1実施形態を適用した具体例を次に説明する。
図4は、機端の放射温度計計測位置の表面温度の予測値と実測値との比較図である。
この例は、最適化計算すなわち上流温度分布の修正を行っていない例であり、表面温度の実測と計算で温度の値に差が生じており、幅方向の分布の仕方も異なっていることが分かる。このような状況では計算結果からCE位置形状を予測しても実態と合っているという保証はない。
ここで、温度合わせこみに用いる幅方向の変数(幅方向メッシュ)については、点の間隔が50〜100mmであれば良い。本例では、半幅1000mmに対して15点としたので、点の間隔が約70mmである。これは、内部での幅方向伝熱があるため、表面に現れる計測温度も幅方向において50〜100mm以下のピッチとすると、極端な差が発生しないためである。一方、細かいピッチに設定すると、計算負荷が増大し、所望の計算時間内に計算が終了しないケースが発生するといった問題がある。
表面温度の計算結果は全般に上昇し、温度計測点のある部分では数値計算結果と一致する温度計算が実現されている。評価関数で指定した表面温度の差が着実に小さくなるような計算が、非線形最適化計算で実現できることが分かる。
最初の計算温度が実測表面温度より低いため、最適化計算によって温度を修正することで計算温度が上昇し、その結果、最終凝固の位置も下流に伸びる結果となっている。このように、表面温度計測位置での計算結果と実測値が一致するならば、スラブ内部の温度状態によってきまるCE位置・形状の予測の妥当性が期待される。
このように、高精度にCE位置・形状が予測できるならば、鋳造条件(スプレー条件、軽圧下条件、鋳造速度、モールド電磁攪拌強度など)を様々変更し、この形状がどのように変化していくかを把握することができる。これによって、クレータエンド形状がフラットで中心偏析の少ない鋳片製造条件を定めることができ、優れた品質のスラブを提供することが可能になる。
通常、最短最終凝固位置及び最長最終凝固位置の鋳片幅方向位置は鋳造中にも変化する。しかし、スプレーノズルの詰まりなどがない状態で鋳片5を冷却している場合には、最短最終凝固位置は鋳片幅中央部に存在し、最長最終凝固位置は、鋳片短辺面から200mm前後離れた位置に存在する。そのため、最終凝固形状は図22に示すようなW型になっている場合が多い。但し、この場合に最終凝固形状は鋳片5の中心に対して左右で対象ではなく、図22に示すように幅方向左右で差が生じる。このような場合に、最終凝固山谷差は厳密には図中の差L1であるが、差L1及び差L2のどちらを基準として軽圧下量を変更しても良い。
次に、本発明に基づく第2実施形態について図面を参照して説明する。
図7は、本発明に基づく鋳片5の凝固状態推定装置が適用される連鋳機の一例を示す概要図である。図7では、連鋳機として垂直曲げ型連鋳機を例示している。但し、図1と同じものには同一の符号を使用している。
図7に示すように連鋳機では、タンディッシュ1の下方に鋳型2が設けられ、タンディッシュ1の底部に鋳型2への溶鋼供給口となる浸漬ノズル3が設けられている。鋳型2の下方には、複数のサポートロール6が設置され、その複数のサポートロール6に沿って鋳片5が所定の引抜き速度で引き抜かれる。符号7〜15は、それぞれ分割された冷却ゾーンであり2次冷却ゾーンを構成する。その各冷却ゾーンには複数のスプレーまたはエアミストスプレー用ノズルなどの冷却ノズル(不図示)が配置されており、各冷却ノズルから鋳片5の表面に2次冷却水が噴霧されることで、目標とする鋳片5の2次冷却が実施される。なお、図7では、反基準面側(上面側)の冷却ゾーンをaで表示し、基準面側(下面側)をbで表示している。また図7では冷却ゾーンが合計9ゾーンの場合を例示しているが、ゾーン数はこれに限定されない。実際の連鋳機のゾーン数は、機長などによって、いくつに分割されるかは様々である。
ここで、鋳片鋳造の開始の際に、軽圧下量を、予め設定した軽圧下帯域内で予め設定した初期設定の軽圧下量に設定する。軽圧下帯域は、0.4mm/m〜1.3mm/mの範囲の範囲である。同一鋼種における過去鋳造の実績において、偏析度が小さく望ましい品質になった値を使用するのが好ましい。
符号20は、連鋳制御部である。
連鋳制御部20は、2次冷却制御部20Aと、凝固状態推定部20Bと、操作量制御部20Cとを備える。
2次冷却制御部20Aは、製造管理用制御部21からの指令に基づき、上記各冷却ゾーンでの2次冷却を制御する。例えば各冷却ゾーンでの出側温度がその位置での目標温度となるように冷却条件が設定される。この冷却条件は、凝固状態推定部20Bにも入力される。
凝固状態推定部本体20Baは、少なくとも2次冷却の冷却条件に基づき熱流束を求めつつ、その求めた熱流束を使用した熱伝達モデルによって、鋳片5の凝固状態(温度状態)を推定する。
なお、上記凝固状態推定部本体20Baは、上記熱流束分布補正部20Bbで補正係数が変更される度に、再度作動して、再計算を実施することで出力値を修正する。
Q :熱流束
κ :熱伝導率
κd:基準温度での熱伝導率
h :熱伝達係数
T :モデル表面温度
Ta:雰囲気温度
である。
c:比熱
ρ:密度
κ:熱伝導率
T:温度
t:時間
x、y:座標
である。
また、上記(2)〜(4)式を用いて、スライスされた単位長さの断面を鋳片長手方向に沿って連続的に次々と発生させ、計算することによって、鋳造速度変化時などの非定常における温度計算も実現することができる。現在計算機能力が飛躍的に向上しており、水冷実績データ、鋳造速度、タンディッシュ溶鋼温度などの操業条件をオンラインで取り込み、リアルタイムで2次冷却計算、最終凝固計算が可能である。
Qij =dih(T −Ta) ・・・(5)
ここで、
di :熱伝達係数の補正係数(初期値は「1」)
i :幅方向補正位置
j :長手方向位置
である
本実施形態においては、前述の2次冷却モデル(熱伝達モデル)の表面温度計算値と幅方向の表面温度実測値を用いて、2次冷却計算に用いるパラメータを調整することで鋳片5の温度分布を推定し、最終凝固位置・形状を推定する。具体的には2次冷却位置での幅方向の熱流束分布、もしくは熱伝達係数分布を補正するパラメータである補正係数diの修正を行う。
本実施形態に用いる実測する温度計4の位置は機内最終凝固位置に近い位置の鋳片表面温度であるのが、より望ましいが、原理的には長手方向位置のどの位置でも構わない。
2次冷却計算は、上記(5)式及び(4)式を用いて、まず鋳造方向単位長さの2次元断面スライス1枚について、そのときの鋳造履歴に応じた鋳造速度で温度を計算する。そのスライスされた単位長さの断面を鋳片長手方向に沿って連続的に次々と発生させ、計算する。
次に、ステップS30では、連続的に入力する温度計4の計測値から計測位置における実測した鋳片幅方向の温度分布を求める。例えば予め設定した時間間隔における計測値の平均値を、実測した鋳片幅方向の温度分布とする。
ここで、鋳片幅方向の補正点nを複数、例えば20点(n=20)に設定し、その各補正点位置において、推定温度と実測値との偏差を求め、その偏差の最大値が上記閾値以下か否かを判定する。
なお、幅方向熱伝達係数hの補正係数diの変更は、長手方向の冷却ゾーンでは一律でされるものとする。これは幅方向に計測可能な温度計4が長手方向の一箇所のみに設置するとして、便宜的に長手方向で一律変更としている。
上述の2次冷却計算について、以下に補足説明を行う。
通常の連続鋳造の2次冷却計算は、例えば、鋳片長手方向(鋳造方向)に沿って単位長さでスライスされた鋳片断面を考え、鋳造中のストランド内の場所に応じて、水冷、空冷、ミスト冷却、ロール抜熱などからなる2次冷却条件によるスラブ表面での境界条件を示す上記式(2)に基づき熱流束を求め、その求めた熱流束を使用して、上記式(4)の2次元伝熱方程式を解くことで実施される。
ここで、式(4)で示される2次元熱伝導方程式は、鋳片断面において、スラブの鋳造方向には熱伝導が無いものと仮定した式である。
そこで、実際の計算では公知の手法である「含温度-変換温度法」を用いて、温度を以下のように置き換えて線形化している。
ここで、スライスの内部点と表面点で差分式が異なる。
スラブ表面では、下記(9)式で表されるとし、
これら(11)、(12)の差分化式を用いて差分化法により実際の伝熱計算を行う。
この実際の計算過程では、以下のような(1)〜(9)の手続きを踏んで3次元計算をトレースしている。
(1)解析開始とともに1枚の2次元シートがモールドに入り進んでいく。
(2)このシートが外部の境界条件と2次元内部の熱伝導のみで計算されていく。(進行方向の熱伝導は考えない。)
(3)途中で、速度のデータにより各時刻で速度が変化していく。
(4)途中で、外部冷却パターンデータにより、スプレーパターンが切り替わる。
(5)この1枚のシートが、解析時間の終了時刻まで計算される。
(6)次のシートに移ったとき、入力に合わせ物性値、初期温度を変える。
(7)1枚のシートの計算が終了したら、タイムステップの時間だけ離れて次のシートの計算を開始し解析時間終了時刻まで計算する。
(8)以上の計算を各シートにつき、引き抜き終了時刻まで行う。
(9)途中必要に応じてファイル出力を行う。
上記伝熱計算の演算は、スラブ内の熱伝導を差分法を用いて解析しており、また、構造的対象性より厚み方向1/2の部分を解析対象としている。例えば、短辺、長辺を、m分割、n分割した場合には、メッシュは図9のようになる。
[使用する熱伝達係数について]
また式(9)における熱伝達係数hは、水冷、空冷、ミスト冷却などの冷却方式、冷却操作量、ロール抜熱量などの2次冷却条件によって決定される。また熱伝達係数hは冷却方法(水のみ、水と空気、空気のみ、およびそれぞれの流量)に従い、計算式を変更する。
実際に使用する抜熱は、これらと放射冷却を比較して、より大きい値を採用している。
固相率の計算は、各セルの温度が、液相線温度よりも下に有る時は固相率=1、固相線温度よりも上に有る時は固相率=0、液相線温度と固相線温度の間にある時は、下記式としている。
モールド内ではスライスのモールド通過時間により表面抜熱量を決定している。
なお、抜熱は長辺、短辺ともに均一として決定する。
[計算条件の例について]
計算条件は例えば次のように設定する。
・シミュレーション時間刻み:0.02sec
・鋳造速度:1.4mpm
・解析厚:125mm(半厚、全厚250mm)
・解析幅:1050mm(半幅、全幅2100mm)
・雰囲気温度:30℃
・2次冷却水温度:28℃
・溶鋼温度:1555℃
・基準温度での熱伝導率:対象とする材の成分に基づき決定
・上記成分から求めた液相温度、固層温度:実験その他で決定
・変換温度φ−温度の関係:実験その他で決定
・含熱量H−温度の関係:実験その他で決定
・密度ρ−温度の関係:実験その他で決定
・メッシュ幅方向分割数の例
幅(n)=66
厚(n)=25
図10は本実施形態による幅方向の熱流束分布の補正を実施することなく、表面温度計測時の操業条件を取り込んだ上で、2次冷却計算のみを用いて、温度計設置位置(計測位置)でのモデル計算温度と実測温度を比較した図である。図10では、鋳片5の幅方向中央から片側の状態を図示している。後述の図11〜14等においても同様である。
この図10に示すように計算温度(推定温度)の温度分布は鋳片幅方向にフラットであり、また表面温度実測値との間に差が生じている、このため、計算温度と実測温度とでは、幅方向の分布の仕方も異なっている。このような状況では計算結果から最終凝固位置形状を予測しても実態と合っているという保証はない。
この2つの場合(図10及び図11参照)における、最終凝固の位置(CE位置)および形状を求めたものが図13(比較例)及び図14(実施例)である。図13及び図14は、縦軸が鋳型2からの鋳片長手方向の距離、横軸が鋳片幅方向位置における凝固完了位置を示している。
このように、表面温度計測位置での計算結果と実測値が一致するならば、鋳片内部の温度状態によって決まる最終凝固位置・形状の推定値の妥当性がより向上する。
ここで、上記実施形態では、熱伝達係数を調整することで熱流束の分布を補正しているが、他のパラメータを調整することで、熱流束の幅方向分布を補正しても良い。
更に本実施形態では、上記精度良く推定した鋳片幅方向の最終凝固形状に応じて、最終凝固山谷差を求め、その鋳片幅方向の最終凝固山谷差が小さくなるように軽圧下帯16の軽圧下量を変更する。
これによって更に中心偏析を低減しつつ連続鋳造鋳片の製造が可能となる。
上述の図11〜図14においては、また熱伝達係数の補正係数diの値(補正倍率)は、複数の冷却ゾーンの各ゾーンに対し一律に変更している。
具体的には、式(20)に基づき補正係数diの計算を行っている。
補正係数更新値
=(モデル温度-実測温度)×ゲイン+補正係数前回値 ・・・(20)
更にこれを拡張して、式(21)に示すように、長手方向の冷却ゾーン毎に個別に調整可能(設定変更可能)としても良い。
冷却ゾーンnの補正係数更新値
=(モデル温度-実測温度)×ゲインn+(冷却ゾーンnの補正係数前回値)
・・・(21)
ここでnは冷却ゾーンの番号を示す。
ゲインnは、例えば、基準として設定したゾーンに対するゲインを基準ゲインとし、その基準として設定したゾーンよりも冷却が強いゾーンでは、基準ゲインよりも大きな値にゲインnを設定すると共に、基準として設定したゾーンよりも冷却が弱いゾーンでは、基準ゲインよりも小さな値にゲインnを設定する。
このように冷却ゾーン毎に個別に調整する場合には、冷却ゾーン毎に冷却ムラがある場合などがあっても、精度良く最終凝固位置・形状の予測結果を求めることが可能となる。
本例では、温度計4aを使用するケース場合を示す。
式(20)を用いた補正では、表1に示すように冷却ゾーンの全ゾーン共通のゲインnを用いている。
図15に示されるように、同じ温度計値を使用した場合でも、変形例に基づき表2のようにゾーン毎に個別のゲインnを使用した場合の方が最終凝固形状の山谷差が大きくなっている。これは温度計から遠く、かつ冷却の強いゾーンで強く表面温度の補正したためである。このように式(20)のケースと比べ、調整の自由度が向上したことがわかる。これにより、更に実際に即した調整が可能となる。
このときの最長クレータエンド位置はメニスカスから30.8mの位置、最短クレータエンド位置はメニスカスから28.2mの位置であり、クレータエンド山谷差は2.6mであった。そこで、軽圧下量を0.9mm/mに変更し、その他の鋳造条件は同一のまま鋳造を続けた。その結果、最長クレータエンド位置はメニスカスから29.4m位置、最短クレータエンド位置はメニスカスから28.3m位置となり、クレータエンド山谷差が1.1mとなって、軽圧下量の変更によりクレータエンド山谷差を大幅に短縮することができた。
このように、軽圧下量を変更することにより、鋳片幅方向のクレータエンド山谷差を短縮することができ、更にクレータエンド山谷差を2m以下にすることにより中心偏析を低減することができた。
5 鋳片
16 軽圧下帯
20 連鋳制御部
20A 次冷却制御部
20B 凝固状態推定部
20Ba 凝固状態推定部本体
20Bb 熱流束分布補正部
20C 操作量制御部
di 補正係数
h 熱伝達係数
Claims (2)
- 鋳片を軽圧下するための軽圧下帯が備えられた連続鋳造機を用い、鋳型に注入された溶鋼を、引き抜きながら2次冷却を行うことで凝固させ、鋳片の凝固完了位置を軽圧下帯の範囲内に制御して溶鋼を連続鋳造する連続鋳造鋳片の製造方法であって、
0.4mm/m〜1.3mm/mの範囲内で予め設定した初期設定の軽圧下量で鋳片の鋳造を開始し、
少なくとも上記2次冷却の冷却条件に基づく熱流束を使用した熱伝達モデルによって上記鋳片の凝固状態を推定すると共に、鋳片長手方向における予め設定した計測位置での鋳片幅方向の温度分布を計測し、
上記計測位置における上記熱伝達モデルで推定した推定温度と上記計測した鋳片幅方向の温度分布とが一致するように、上記熱流束の鋳片幅方向の熱流束分布を補正することで、上記熱伝達モデルの出力を修正して、最終凝固の形状を推定し、
上記推定した最終凝固の形状に基づき、上記軽圧下帯における軽圧下量を、0.4mm/m〜1.3mm/mの範囲内で上記初期設定の軽圧下量から変更させることで、最短最終凝固位置と最長最終凝固位置との鋳造方向の差が予め設定している基準範囲内に制御し、
上記2次冷却は、複数の冷却ゾーンによって実施され、
上記熱流束分布の倍率を補正するための熱流束分布の補正係数di(i:幅方向補正位置)を上記各冷却ゾーン毎に個別に設定し、
上記補正係数diは、上記熱流束の熱伝達係数に乗算する係数であって該乗算することで熱流束の倍率を補正し、且つ上記幅方向補正位置iを2以上設定することで、上記熱流束分布の倍率が補正されることを特徴とする連続鋳造鋳片の製造方法。 - 上記予め設定している基準範囲は2mであることを特徴とする請求項1に記載した連続鋳造鋳片の製造方法。
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