以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
−エンジン始動制御装置の全体構成−
図1は、本実施形態に係るエンジン始動制御装置の概略構成図である。このエンジン始動制御装置1は、車両に搭載されるものであり、エンジン2と、エンジン2を始動させるためのスタータ3と、駆動レンジにおけるスタータ3の駆動を禁止するためのニュートラルスタートスイッチ4と、不図示のインジェクタや点火プラグ等を制御するエンジン制御装置(第1制御手段)5と、エンジン2の停止および再始動を自動的に制御するエコラン制御装置(第2制御手段)6と、スタータ3等の電源であるバッテリ7と、を備えている。
スタータ3は、エンジン2側に押し出されることで、エンジン2のクランク軸(図示せず)の一端におけるフライホイールの外周部に形成されたリングギヤ12と噛み合うピニオンギヤ13と、当該ピニオンギヤ13をエンジン2側に押し出すためのピニオン駆動用ソレノイド33と、ピニオンギヤ13を介してエンジン2に回転動力を供給するスタータモータ23と、スタータモータ23を回転駆動させるためのモータ駆動用ソレノイド43と、を備えている。このように、本実施形態のスタータ3は、1つのソレノイドによりピニオンギヤ13の押し出しとスタータモータ23への通電とを行うのではなく、ピニオン駆動用ソレノイド33とモータ駆動用ソレノイド43とを個別に設定したタンデムソレノイドスタータとなっている。それ故、本実施形態のエンジン始動制御装置1は、エンジン停止制御後も暫くの間はエンジン2が惰性で回転するアイドルストップシステムに適用可能となっている。
ピニオン駆動用ソレノイド33とモータ駆動用ソレノイド43とは、共に電線を円筒状に巻いたコイル(図示せず)と円筒状のコイルに挿入された可動鉄心とで構成されており、コイルに電流が流れると電磁石となり可動鉄心が移動するようになっている。そうして、ピニオン駆動用ソレノイド33では、電圧が印加されると、可動鉄心としてのピニオンギヤ13がエンジン2側に押し出される一方、モータ駆動用ソレノイド43では、電圧が印加されると、不図示の可動鉄心がスタータモータ23への通電を行うスイッチとして作動する。
また、エンジン始動制御装置1は、ピニオン駆動用ソレノイド33に電圧を印加するためのピニオン駆動用リレー53と、モータ駆動用ソレノイド43に電圧を印加するためのモータ駆動用リレー63とを備えており、これらピニオン駆動用ソレノイド33及びモータ駆動用ソレノイド43への電圧の印加はこれらのリレー53,63を介して行われる。
ピニオン駆動用リレー53は、不図示のリレーコイル及びリレー接点を備えた周知の構成を有するリレーである。リレーコイルの一端はグランドラインに接地されている一方、他端はニュートラルスタートスイッチ4とエコラン制御装置6とに接続されている。また、リレー接点は、リレーコイルに通電されたときにONする通常時開状態の接点であり、一端がバッテリ7の正極に接続される(図示省略)一方、他端がピニオン駆動用ソレノイド33に接続されている。
モータ駆動用リレー63も、不図示のリレーコイル及びリレー接点を備えた周知の構成を有するリレーである。リレーコイルの一端はグランドラインに接地されている一方、他端はエコラン制御装置6に接続されている。また、リレー接点は、一端がバッテリ7の正極に接続される(図示省略)一方、他端がモータ駆動用ソレノイド43に接続されている。
ニュートラルスタートスイッチ(以下、NSWともいう)4は、イグニッションスイッチ8とピニオン駆動用リレー53との間に配置されているとともに、シフトレバー装置14と接続されている。このシフトレバー装置14には、シフトレバー14aの操作に連動して、選択されたシフトレンジに応じた信号を出力する5つのレンジ接点(P(パーキング)レンジ接点、R(リバース)レンジ接点、N(ニュートラル)レンジ接点、D(ドライブ)レンジ接点、B(ブレーキ)レンジ接点)が設けられている。これらのレンジ接点は、シフトレバー14aの角度に応じてON/OFFが切り換わるようになっており、対応するシフトレンジが選択されているときはONとなる接点範囲をそれぞれ有している。そうして、これらのレンジ接点は、あるレンジ(例えばニュートラルレンジ)が選択されると(レンジ接点がONになると)、当該あるレンジ(例えばニュートラルレンジ)を表すレンジ信号をエンジン制御装置5に出力するようになっている。
NSW4には、シフトレバー装置14の5つのレンジ接点とは別系統で、シフトレバー14aの角度に応じてON/OFFが切り換わるNSWレンジ接点(Pレンジ接点およびNレンジ接点)が設けられている。このNSWレンジ接点は、非駆動レンジ(Nレンジ又はPレンジ)が選択されているときはONとなる接点範囲を有している。そうして、NSW4は、シフトレバー14aが操作されて非駆動レンジが選択されたとき(NSWレンジ接点がONのとき)には、当該NSW4自体がONとなる(図1に示す、バッテリ7からイグニッションスイッチ8及びNSW4を介してピニオン駆動用リレー53に至る回路9をクローズする)ように構成されている。一方、NSW4は、駆動レンジ(Dレンジ又はRレンジ又はBレンジ)が選択されたとき(NSWレンジ接点がOFFのとき)には、当該NSW4自体がOFFとなる(図1に示す回路9をオープンする)ように構成されている。
なお、NSWレンジ接点の接点範囲は、シフトレバー装置14の5つのレンジ接点の接点範囲よりも狭く設定されている。具体的には、シフトレバー装置14のNレンジ接点の接点範囲よりも、NSWレンジ接点におけるNレンジ接点の接点範囲の方が狭くなっているとともに、シフトレバー装置14のPレンジ接点の接点範囲よりも、NSWレンジ接点におけるPレンジ接点の接点範囲の方が狭くなっている。それ故、シフトレバー装置14の5つのレンジ接点の接点範囲は、製造上のバラツキ等により重なる場合があり得るが、例えば、NSWレンジ接点におけるNレンジ接点の接点範囲と、シフトレバー装置14のRレンジ接点やNレンジ接点の接点範囲とは重ならないようになっている。
エンジン制御装置(以下、EFI−ECUともいう)5は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータを備えている。このEFI−ECU5には、上述のインジェクタや点火プラグの他、各種のセンサが接続されており、これにより、EFI−ECU5は、エンジン運転状態に応じて燃料噴射量、燃料噴射時期および点火時期を制御する。また、EFI−ECU5には、エコラン制御装置6がデータ通信可能に接続されている。さらに、このEFI−ECU5は、後述するように、変速機のシフトレンジがニュートラルレンジ又はパーキングレンジである、すなわち、非駆動レンジであると判定するニュートラル判定を行うように構成されている。なお、このEFI−ECU5は、NSW4の端子電圧を読み込むようになっており、NSW4の端子電圧が+B(バッテリ電圧)レベルのときには、NSW4をOFFであると判定する一方、NSW4の端子電圧がグランドレベルのときには、NSW4をONであると判定するように構成されている。
エコラン制御装置(以下、エコランECUともいう)6は、EFI−ECU5の上位に位置付けられる電子制御装置であり、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータを備えている。このエコランECU6は、主として、エンジン作動中に所定のアイドルストップ条件(エンジン停止条件)が成立した場合にアイドルストップ(エンジン2を一時的に停止)させ、その後、所定のエンジン再始動条件が成立したときにスタータ3を駆動させてエンジン2を再始動させる所謂アイドルストップ機能を実現するための、各種制御を行う。
このエコランECU6には、不図示のブレーキペダル及びアクセルペダルのON状態やOFF状態をそれぞれ検知するブレーキペダルセンサ10及びアクセルペダルセンサ11が接続されている。そして、エコランECU6は、ブレーキペダルセンサ10及びアクセルペダルセンサ11から入力された情報と、EFI−ECU5から通信線を介して得た情報とを用いて、エンジン2の停止要求および再始動要求の条件の判定処理を行う。このように、EFI−ECU5とエコランECU6とは、制御に必要な制御データの一部をデータ通信によって互いに受取り、この制御データを両者の間で共用しており、エコランECU6には、EFI−ECU5により演算されたエンジン回転数、スロットル開度センサ(図示せず)からの出力信号等が入力される。
バッテリ7は、車両に搭載されており、スタータ3の他、車載された他の制御装置や駆動部などに電力を供給する電源である。また、バッテリ7とNSW4との間に配置されたイグニッションスイッチ8は、運転者が不図示のイグニッションキーやスタートスイッチを操作すること(以下、キー操作等ともいう)によって、ONになるように構成されている。
−エコランモード−
エコランECU6は、各種の入力情報に基づいてエンジン2の状態を判定し、エンジン2の状態に応じて5種類のエコランモード信号を、EFI−ECU5を初めとする車載の装置に出力するように構成されている。本実施形態では、エコランモードは、図2に示すように、(1)エンジン停止中であるユニット状態、(2)エンジン回転数が所定回転数Ne以上である通常走行状態、(3)エンジン停止の準備期間であるエコラン準備状態、(4)エンジン回転数が所定回転数Ne未満である(アイドルストップを含む)エコラン状態、(5)エンジン2を再始動させるエコラン復帰状態に分かれている。
エコランECU6は、エンジン回転数等からユニット状態であると判定すると、ユニット状態に対応するエコランモード信号をEFI−ECU5等へ出力する。そうして、運転者のキー操作等によりスタータ3が駆動して、エンジン回転数が所定回転数Ne(例えば800rpm)以上になると、エコランECU6は、通常走行状態であると判定し、通常走行状態に対応するエコランモード信号をEFI−ECU5等へ出力する。
通常走行後、ブレーキペダルがON状態になったりアクセルペダルがOFF状態になったりすると、エコランECU6は、エコラン準備状態であると判定する。エコラン準備状態に対応するエコランモード信号がEFI−ECU5等へ出力されると、クラッチの開放等が行われる。
そうして、車両が減速して、エンジン回転数が所定回転数Ne未満になると、エコランECU6は、エコラン状態であると判定し、エコラン状態に対応するエコランモード信号をEFI−ECU5等へ送信する。
車両がアイドルストップした状態から、ブレーキペダルがOFF状態になったりアクセルペダルがON状態になったりすると、エコランECU6は、エコラン復帰状態であると判定し、エコラン復帰状態に対応するエコランモード信号をEFI−ECU5、ピニオン駆動用リレー53、モータ駆動用リレー63等へ送信する。エコランモード信号がピニオン駆動用リレー53及びモータ駆動用リレー63に入力されると、スタータ3が駆動してエンジン2の再始動が開始される。エンジン回転数が所定回転数Ne以上になると、エコランECU6は、通常走行状態であると判定する。
−エンジン始動制御装置による通常始動制御−
このように構成されたエンジン始動制御装置1では、駆動レンジ(例えばDレンジ)が選択されており、それ故にNSW4がOFFのときは、回路9がオープンすることから、たとえイングニッションスイッチがONとなっても、ピニオン駆動用リレー53には電圧が供給されない。これにより、駆動レンジにおけるスタータ3の駆動を抑制することができる。一方、シフトレバー14aの操作によって非駆動レンジが選択されると、回路9がクローズすることから、ピニオン駆動用リレー53への電圧の供給が可能となる。つまり、本実施形態においては、NSW4は、それ自体がONのときは、ピニオンギヤ13の押し出しを許可する一方、それ自体がOFFのときは、ピニオンギヤ13の押し出しを禁止する役目を果たしている。
そうして、運転者のキー操作等によってイグニッションスイッチ8がONになると、NSW4がONであることを条件として、バッテリ7の電圧がピニオン駆動用リレー53に供給される。なお、この場合には、ユニット状態に対応するエコランモード信号がEFI−ECU5等へ出力されている。ピニオン駆動用リレー53を介してピニオン駆動用ソレノイド33に電圧が印加されると、ピニオンギヤ13がエンジン2側に押し出されてリングギヤ12と噛み合う。このとき、ピニオンギヤ13が押し出されたこと(ピニオン駆動用リレー53に電圧が供給されたこと)は、信号としてエコランECU6に入力され(図1の黒抜き矢印参照)、かかる信号を受けたエコランECU6は、スタータモータ23の駆動を指示するスタータ信号(以下、STA信号ともいう)を、モータ駆動用リレー63と、EFI−ECU5とに出力する。このように、エコランECU6は、ピニオンギヤ13の押し出しに関する信号を受けて初めて、STA信号をモータ駆動用リレー63に出力することから、換言すると、ピニオンギヤ13の押し出しとスタータモータ23の回転とが同期しないように、これらを個別に制御することから、ピニオンギヤ13を回転させずエンジン2のリングギヤ12へ噛み合わせることができる。
エコランECU6を介して不図示のバッテリから供給される電圧が、モータ駆動用リレー63を介してモータ駆動用ソレノイド43に印加されると、スタータモータ23への通電を行うスイッチがONとなり、スタータモータ23にバッテリ7から電圧が印加されて、スタータモータ23が回転駆動する。これにより、リングギヤ12と噛み合ったピニオンギヤ13を介して、エンジン2のクランク軸にスタータモータ23の回転動力が伝達されて、エンジン2が始動する。
−エンジン始動制御装置によるアイドルストップ後の再始動制御−
シフトレンジが非駆動レンジのときのみ、NSW4によってピニオンギヤ13の押し出しが許可される通常始動とは異なり、アイドルストップ後の再始動では、NSW4を介することなく、エコランECU6から直接ピニオン及びモータ駆動用リレー53,63に対し、スタータ3の駆動を指示する再始動スタータ信号(エンジン再始動信号)が出力される。よって、アイドルストップ後の再始動においては、シフトレンジが駆動レンジ(例えばDレンジ)であるか非駆動レンジ(例えばNレンジ)であるかに拘わらず、スタータ3の駆動が行われることになる。
エコランECU6は、エコラン状態におけるアイドルストップ中に、「運転者に車両発進の意思あり」と判断した場合には、エコラン復帰状態であると判定し、エコラン復帰状態に対応するエコランモード信号をEFI−ECU5、ピニオン駆動用リレー53(図1の白抜き矢印参照)、モータ駆動用リレー63等へ送信する。ここで、「運転者に車両発進の意思あり」と判断する場合としては、例えば、ブレーキペダルセンサ10からブレーキペダルがOFF状態になったとの情報が入力された場合、アクセルペダルセンサ11からアクセルペダルがON状態になったとの情報が入力された場合、例えばDレンジからシフトレバー14aの操作によってNレンジが選択された後、DレンジやRレンジが選択された場合等が挙げられる。
ピニオン駆動用リレー53及びモータ駆動用リレー63には不図示のタイマーが付加されており、ピニオン駆動用リレー53はエコラン復帰状態に対応する信号が入力されてから所定時間Δt1後にONになるように構成されているとともに、モータ駆動用リレー63はピニオン駆動用リレー53がONになってから所定時間Δt2後にONになるように構成されている。つまり、エコラン復帰状態に対応するエコランモード信号の一部が、再始動スタータ信号(以下、再始動STA信号ともいう)を構成している。
ピニオン駆動用リレー53がONになると、具体的には、エコランECU6を介して不図示のバッテリからの電圧がピニオン駆動用リレー53に供給されると、ピニオン駆動用ソレノイド33に電圧が印加され、ピニオンギヤ13がエンジン2側に押し出されてリングギヤ12と噛み合う。
その後、エコランECU6を介して不図示のバッテリからの電圧がモータ駆動用リレー63に供給されると、モータ駆動用ソレノイド43に電圧が印加される。そうして、スタータモータ23への通電を行うスイッチがONになると、スタータモータ23にバッテリ7からの電圧が印加されて、スタータモータ23が回転駆動する。これにより、リングギヤ12と噛み合ったピニオンギヤ13を介して、エンジン2のクランク軸にスタータモータ23の回転動力が伝達されて、エンジン2が再始動する。
このように、アイドルストップ後の再始動においても、エコランECU6は、ピニオンギヤ13の押し出しとスタータモータ23の回転とが同期しないように、これらを個別に制御することから、ピニオンギヤ13を回転させずエンジン2のリングギヤ12へ噛み合わせることができる。なお、本実施形態では、ピニオン駆動用リレー53及びモータ駆動用リレー63に付加されたタイマー並びにエコランECU6が、ピニオンギヤ13とスタータモータ23とを個別に制御する第2制御手段に相当する。
−エコランECU及びEFI−ECUによる制御−
ところで、上述の如く、NSW4は、シフトレバー14aが操作されて非駆動レンジが選択されたときには、それ自体がONとなる一方、駆動レンジが選択されたときには、それ自体がOFFとなる。そうして、NSW4には、入力が無い場合に+Bレベルの電圧をかける働きをするプルアップ抵抗が取り付けられていることから、NSW自体がOFFの場合には、基本的にNSW4の端子電圧は+Bレベルとなり、かかる端子電圧を読み込んだEFI−ECU5は、NSW4がOFFであると判定する。一方、NSW4は、ピニオン駆動用リレー53のリレーコイルの先端がグランドラインに接地されているため、それ自体がONの場合には、基本的にその端子電圧がグランドレベルとなり、かかる端子電圧を読み込んだEFI−ECU5は、NSW4がONであると判定する。
しかしながら、EFI−ECU5は、NSW4自体がONのときに、常にNSW4がONであると判定する訳ではない。すなわち、NSW4は、通常始動時にイグニッションスイッチ8がONになり、バッテリ7からの電圧がピニオン駆動用リレー53に供給される場合や、アイドルストップ後の再始動時に、エコランECU6を介して不図示のバッテリからの電圧がピニオン駆動用リレー53に供給される場合には、それ自体がONであっても、例外的にその端子電圧がグランドレベルとならないようになっている。それ故、EFI−ECU5は、通常始動であるか、アイドルストップ後の再始動であるかを問わず、ピニオンギヤ13の駆動時(イグニッションスイッチ8がONや再始動STA信号がONのとき)には、NSW4自体がONであっても、NSW4の端子電圧を+Bレベルとして読み込み、NSW4がOFFであると判定する。
ここで、本実施形態の理解を助けるため、1つのソレノイドによりピニオンギヤの押し出しとスタータモータへの通電とを行うスタータ、換言すると、ピニオンギヤの押し出しとスタータモータへの通電とが同期するスタータ(以下、従来型スタータという)を用いて通常始動制御を行う場合について説明する。
図6は、従来型のスタータを用いた場合における通常始動制御の一例を示すタイミングチャートである。先ず、t0’では、ユニット状態に対応するエコランモード信号がEFI−ECU等へ出力されており、シフトレバーの操作によって非駆動レンジが選択されていることから、NSWはONとなっている。このとき、EFI−ECUは、NSWがONであると判定するとともに(NSW信号ON)、変速機のシフトレンジが非駆動レンジであると判定するニュートラル判定を行う(ニュートラル判定ON)。
次に、t1’において、運転者のキー操作等によってイグニッションスイッチがONになると、ピニオンギヤ及びスタータモータの共通のソレノイドにバッテリから電圧が印加されて、ピニオンギヤの押し出し(駆動)とスタータモータの回転とが同時に行われる。このとき、EFI−ECUは、NSWの端子電圧を+Bレベルとして読み込み、NSWがOFFであると判定するとともに(NSW信号OFF)、STA信号がEFI−ECUに入力される(STA信号ON)。この場合も、EFI−ECUはニュートラル判定を行う(ニュートラル判定ON)。
その後、イグニッションスイッチがONになってから所定時間経過したt2’においてエンジンが始動し、エンジン回転数が50回転に達したt3’において、エンジン始動判定がONとなる。そうして、エンジン始動後のt4’において、スタータモータの回転が停止するとともにピニオンギヤが引っ込むと、NSWの端子電圧がグランドレベルとなり、かかる端子電圧を読み込んだEFI−ECUは、NSWがONであると判定するとともに(NSW信号ON)、ニュートラル判定を行う(ニュートラル判定ON)。
以上のように、ピニオンギヤの押し出しとスタータモータへの通電とが同期する場合には、NSW信号がONのときはSTA信号が必ずOFFになる一方、STA信号がONのときは必ずNSW信号がOFFとなるという同時性がとれていた。これにより、従来型スタータを用いて通常始動制御を行う場合には、NSW信号がON、又は、STA信号がON(且つエコランモードがユニット状態)ならば、EFI−ECUはニュートラル判定を行うことが可能であった。
しかしながら、シフトレンジが駆動レンジであるか非駆動レンジであるかを問わず、スタータ3の駆動が行われる、アイドルストップ後の再始動において、NSW4を用いてニュートラル判定を行う従来の判定方法を適用した場合には、以下のような問題が生じる。
図7は、アイドルストップ後の従来の再始動制御の一例を示すタイミングチャートである。なお、例えばDレンジ等の駆動レンジが選択された状態で、エンジン再始動が行われる場合には、そもそもニュートラル判定を行う必要はないことから、図7に示すタイミングチャートは、例えばNレンジ等の非駆動レンジが選択されている場合のものとする。
先ず、t0”では、シフトレバー14aの操作によって非駆動レンジが選択されていることから、NSW4はONとなっている。このとき、EFI−ECU5は、NSW4がONであると判定するとともに(NSW信号ON)、ニュートラル判定を行う(ニュートラル判定ON)。
次に、t1”において、ブレーキペダルセンサ10やアクセルペダルセンサ11等の情報から、エコランECU6が「運転者に車両発進の意思あり」と判断すると、エコランECU6からピニオン駆動用リレー53及びモータ駆動用リレー63に対して、再始動STA信号が出力され、ピニオン駆動用リレー53のリレーコイルに電圧が印加されて、ピニオンギヤ13の押し出しが行われる。このとき、EFI−ECU5は、NSW4の端子電圧を+Bレベルとして読み込み、NSW4がOFFであると判定する(NSW信号OFF)。ここで、EFI−ECU5は、NSW4の端子電圧が+Bレベルかグランドレベルかを基準として当該NSW4のON/OFFを判定することから、t1”におけるNSW4のOFF判定が、シフトレンジが駆動レンジであることに因るものなのか(NSW自体がOFF)、それとも、ピニオンギヤ13が駆動していることに因るものなのか(NSW自体はON)を区別することは困難である。故に、EFI−ECU5はニュートラル判定を行わない(ニュートラル判定OFF)。
そうして、t1”から微小時間後のt2”に、スタータモータ23にバッテリ電圧が印加されて、スタータモータ23が回転駆動する。その後再始動STAが入力されてから所定時間経過したt3”においてエンジン2が始動し、エンジン回転数が50回転に達したt4”において、エンジン始動判定がONとなる。そうして、エンジン始動後のt5”において、スタータモータ23の回転が停止するとともにピニオンギヤ13が引っ込むと(再始動STAOFF)、NSW4の端子電圧がグランドレベルとなり、かかる端子電圧を読み込んだEFI−ECU5は、NSW4がONであると判定するとともに(NSW信号ON)、ニュートラル判定を行う(ニュートラル判定ON)。
以上のように、アイドルストップ後の再始動において、NSW4を用いてニュートラル判定を行う場合には、t1”〜t5”の間は、EFI−ECU5は、NSW4の端子電圧を+Bレベルとして読み込み、NSW4がOFFであると判定することから、未判定の期間が生じることになる。
このような未判定期間が生じるということは、実際のシフトレンジの状態と、制御上のシフトレンジの状態とが一致しておらず、制御における誤作動が生じる原因となり得る。例えば、シフトレバーが非走行位置から走行位置へ操作されたときに、非駆動レンジ接点と駆動レンジ接点との間の無接点状態において、クラッチを係合させるためのモジュレータ油圧よりも低く調圧されたガレージシフト油圧をクラッチに供給することにより、クラッチを滑らかに係合させるようにしたガレージシフト制御では、以下のような問題が生じる。すなわち、EFI−ECU5は、NSW信号がOFFの間はニュートラル判定を行わないものの、NSW信号がOFFであると認識しているとともに、例えばシフトレバー装置14のDレンジ接点等がOFFであることから、無接点状態と判定し、クラッチを係合させる準備としてガレージシフト油圧をクラッチに供給する。しかし、実際には、例えばシフトレバー装置14のNレンジ接点等の非駆動レンジ接点がONであることから、モジュレータ油圧が供給されないまま、ガレージシフト油圧がドレインされることになり、無駄な油圧制御が行われることになる。
そこで、本実施形態のエンジン始動制御装置1では、アイドルストップ後の再始動において、NSW信号がOFFになる期間は、所定の条件の下でニュートラル判定フラグをONにし、かかるニュートラル判定フラグがONのときも、ニュートラルであると判定するようにしている。より詳しくは、EFI−ECU5は、NSW4をONと判定したとき(NSW信号がONのとき)に、ニュートラル判定を行うことを前提としつつ、再始動STA信号がONで、且つ、シフトレバー装置14のNレンジ接点またはPレンジ接点がオンのときに、再始動NSW判定フラグ(ニュートラル判定フラグ)をONにするとともに、当該再始動NSW判定フラグがONのときもニュートラル判定を行うように構成されている。
かかる構成によれば、NSW信号がONの場合には、ニュートラル判定が行われる。また、NSW信号がOFFで且つ再始動STA信号がOFFの場合には、それはシフトレンジが非駆動レンジではないことを意味するので、当然にニュートラル判定を行わない。
一方、NSW信号がOFFで且つ再始動STA信号がONの場合としては、駆動レンジであるためにNSW信号がOFFである場合と、非駆動レンジであるが、再始動STA信号がONであるためにNSW信号がOFFである場合とが想定されるが、EFI−ECU5は、シフトレバー装置14のNレンジ接点またはPレンジ接点がオンのときに、再始動NSW判定フラグを設定することから、駆動レンジであるためにNSW信号がOFFである場合を排除することができる。これらにより、ニュートラル判定が未判定となる期間が生じるのを抑えて、制御における誤作動が生じるのを回避することができる。
また、EFI−ECU5は、スタータモータ23の駆動が終了したときに(再始動STA信号がOFFのときに)、再始動NSW判定フラグをOFFにするように構成されている。このようにすれば、再始動NSW判定フラグが設定された状態が不必要に継続されるのを回避するとともに、制御における誤作動が生じるのを抑えることができる。そうして、スタータモータ23の駆動が終了すれば、ピニオンギヤ13の駆動も終了することから、EFI−ECU5は、スタータモータ23の駆動終了時にシフトレンジが非駆動レンジであれば、NSW4をONと判定して、ニュートラル判定を行う。
さらに、EFI−ECU5は、シフトレバー装置14のNレンジ接点およびPレンジ接点以外のレンジ接点がONのときに、再始動NSW判定フラグをOFFにする(ONにしない)ように構成されている。ここで、EFI−ECU5は、シフトレバー装置14のNレンジ接点またはPレンジ接点がONのときに、再始動NSW判定フラグを設定することから、Nレンジ接点およびPレンジ接点以外のレンジ接点がONであるか否かを検出することは重複する作業とも思える。しかしながら、上述の如く、製造上のバラツキ等により、レンジ接点の接点範囲が重なる場合があり得るところ、レンジ接点の接点範囲が重なると、EFI−ECU5が二接点をONとして読み込んだり無接点を読み込んだりするおそれがある。このため、Nレンジ接点またはPレンジ接点がONと判定されても、実際にはDレンジ接点がONの場合や、Nレンジ接点およびPレンジ接点がOFFであるにも拘わらず、再始動NSW判定フラグが設定される場合があり得る。それ故、シフトレバー装置14のNレンジ接点またはPレンジ接点がONであっても、Dレンジ接点またはRレンジ接点またはBレンジ接点がONのときに、再始動NSW判定フラグをOFFにするようにすれば、Pレンジ接点がOFFで且つNレンジ接点がOFFであるにも拘わらず、ニュートラル判定が行われるのを回避できるというフェールセーフを達成することができる。
次いで、本実施形態に係るアイドルストップ後の再始動制御の一例を、図3のフローチャートを参照して説明する。なお、このフローチャートは、NSW信号がONの場合にニュートラル判定を行う制御を補完するものであり、具体的には、エコラン復帰状態において適用されるものである。
先ず、ステップS1では、EFI−ECU5が、アイドルストップからのエンジン再始動か否か、具体的には、エコランモードがエコラン復帰状態か否かを判定する。このステップS1の判定がNOのときには、NSW信号がOFFになる期間とは無関係なので、そのままENDする。一方、ステップS1の判定がYESのとき、すなわち、ブレーキペダルセンサ10からブレーキペダルがOFF状態になったとの情報や、アクセルペダルセンサ11からアクセルペダルがON状態になったとの情報等が入力されることで、エコランECU6がエコラン復帰状態であると判定し、エコラン復帰状態に対応する信号がEFI−ECU5に入力された場合には、ステップS2に進む。
次のステップS2では、EFI−ECU5が、再始動STA信号がONか否かを判定する。このステップS2の判定がNOのとき、すなわち、エコラン復帰状態ではあるが、エコラン復帰状態に対応する信号が入力されてから所定時間Δt1が未だ経過していない場合や、スタータモータ23の駆動が終了した(再始動STA信号がOFFの)場合には、ステップS9に進む。そうして、再始動STA信号がOFFの場合には、NSW4自体がOFFであれば、EFI−ECU5はNSW4がOFFであると判定するし、NSW4自体がONであれば、EFI−ECU5はNSW4がONであると判定することから、このステップS9では、再始動NSW判定フラグをOFFにし(ONにせずに)、その後ステップS10に進む。一方、ステップS2の判定がYESのときには、ステップS3に進む。
次のステップS3では、駆動レンジであるためにNSW信号がOFFなのか、それとも、非駆動レンジであるが、再始動STA信号がONであるためにNSW信号がOFFなのかを確認すべく、EFI−ECU5が、シフトレバー装置14のPレンジ接点がONか否かを判定する。このステップS3の判定がNOのときには、もう一方の非駆動レンジ接点であるNレンジ接点のON/OFFを確認すべく、ステップS4に進む。
次のステップS4では、EFI−ECU5が、シフトレバー装置14のNレンジ接点がONか否かを判定する。このステップS4の判定がNOのとき、すなわち、Pレンジ接点のみならずNレンジ接点もOFFのときには、駆動レンジであるためにNSW信号がOFFであることが確認されたので、ステップS9に進み、再始動NSW判定フラグをOFFにし、その後ステップS10に進む。一方、ステップS3及びステップS4の判定がYESのときには、ステップS5に進む。
ステップS5に進むということは、シフトレンジが非駆動レンジであることを意味するが、二接点をONとして読み込んだり無接点を読み込んだりするのを回避できるというフェールセーフを達成すべく、EFI−ECU5は、ステップS5では、シフトレバー装置14のRレンジ接点がOFFであるか否かを判定し、次のステップS6では、シフトレバー装置14のDレンジ接点がOFFであるか否かを判定し、さらに次のステップS7では、シフトレバー装置14のBレンジ接点がOFFであるか否かを判定する。
これらステップS5、ステップS6、ステップS7の判定が全てYESのとき、すなわち、シフトレバー装置14の駆動レンジ接点が全てOFFときには、非駆動レンジであるが、再始動STA信号がONであるためにNSW信号がOFFであることが確認されたので、ステップS8に進み、再始動NSW判定フラグをONにし、その後ステップS10に進む。一方、これらステップS5、ステップS6、ステップS7の判定がいずれか1つでもNOのときには、二接点をONとして読み込んでいる可能性が高いことから、ステップS9に進み、再始動NSW判定フラグをOFFにし、その後ステップS10に進む。
次のステップS10では、NSW4をONと判定したとき(NSW信号がON)、又は、通常始動時のニュートラル判定条件であるスタータモータ23の駆動時(STA信号がON且つエコランモードがユニット状態)という条件に加え、再始動NSW判定フラグがONという条件を満たすか否かが判定される。すなわち、EFI−ECU5は、NSW信号がONのとき、又は、STA信号がON(且つエコランモードがユニット状態)のとき、又は、再始動NSW判定フラグがONのときに、ステップS10の判定がYESであると判定する。
そうして、このステップS10の判定がYESのときには、ステップS11に進み、ニュートラルであると判定した後に(ニュートラル判定を行った後に)、ステップS13に進む。次のステップS13では、再始動NSW判定フラグが設定されている可能性があることから、次回のエンジン再始動時に持ち越されないように、再始動NSW判定フラグをリセットし、その後ENDする。
一方、このステップS10の判定がNOのときには、ステップS12に進み、ニュートラルではないと判定する。なお、ステップS12に進むということは、再始動NSW判定フラグがONではないことを意味するので、ステップS13に進むことなく、そのままENDする。
−アイドルストップ後の再始動時のニュートラル判定−
次に、エコランECU6及びEFI−ECU5によるニュートラル判定について、図4に示すタイミングチャートを用いて説明する。なお、例えばDレンジ等の駆動レンジが選択された状態で、エンジン再始動が行われる場合には、そもそもニュートラル判定を行う必要はないことから、図4に示すタイミングチャートは、例えばNレンジ等の非駆動レンジが選択されている場合のものとする。
先ず、t0では、シフトレバー14aの操作によって非駆動レンジが選択されていることから、NSW4はONとなっている。このとき、EFI−ECU5は、NSW4がONであると判定するとともに(NSW信号ON)、ニュートラル判定を行う(ニュートラル判定ON)。
そうして、ブレーキペダルセンサ10やアクセルペダルセンサ11等の情報から、エコランECU6が「運転者に車両発進の意思あり」と判断すると、エコランECU6からピニオン駆動用リレー53及びモータ駆動用リレー63に対して、エコラン復帰状態に対応する信号が出力され、かかる信号が入力されてから所定時間Δt1後のt1において、ピニオン駆動用リレー53のリレーコイルに電圧が印加されて、ピニオンギヤ13の押し出しが行われる。このとき、エコラン復帰状態に対応する信号(再始動STA信号を含む)が入力されたEFI−ECU5は、NSW4の端子電圧を+Bレベルとして読み込み、NSW4がOFFであると判定するとともに(NSW信号OFF)、再始動STA信号がONで、且つ、シフトレバー装置14のNレンジ接点またはPレンジ接点がONであることから、再始動NSW判定フラグを設定する。このように再始動NSW判定フラグが設定されていることから、NSW信号がOFFであっても、EFI−ECU5はニュートラルであると判定する(ニュートラル判定ON)。
そうして、t1から微小時間Δt2後のt2に、スタータモータ23にバッテリ電圧が印加されて、スタータモータ23が回転駆動する。その後、ピニオンギヤ13の押し出しが行われてから所定時間経過したt3においてエンジン2が始動し、エンジン回転数が50回転に達したt4において、エンジン始動判定がONとなる。エンジン始動後のt5において、スタータモータ23の回転が停止するとともにピニオンギヤ13が引っ込むと(再始動STA信号OFF)、NSW4の端子電圧がグランドレベルとなり、かかる端子電圧を読み込んだEFI−ECU5は、NSW4がONであると判定する(NSW信号ON)とともに、再始動NSW判定フラグをリセットする。このように、NSW信号がONであることから、EFI−ECU5は、ニュートラル判定を行う(ニュートラル判定ON)。
以上のように、本実施形態のエンジン始動制御装置1では、t1〜t5の間においてNSW信号がOFFなっても、未判定期間を生じさせることなく、ニュートラル判定を行うことができる。これにより、アイドルストップ後のエンジン再始動において、ニュートラル判定が未判定となる期間が生じるのを抑えて、制御における誤作動が生じるのを回避することができる。
−通常始動時のニュートラル判定−
以下、本実施形態のエンジン始動制御装置1による、通常始動時のニュートラル判定について説明する。
上述の如く、従来型スタータを用いた場合には、NSW信号がON、又は、STA信号がON(且つエコランモードがユニット状態)ならば、EFI−ECUはニュートラル判定を行うことが可能であった。しかしながら、タンデムソレノイドスタータを用いた本実施形態のエンジン始動制御装置1に、通常始動時において、NSW信号がON、又は、STA信号がON且つエコランモードがユニット状態であればニュートラル判定を行う従来の判定方法を適用した場合には、以下のような問題が生じる。
すなわち、運転者のキー操作等によってイグニッションスイッチ8がONになると、ピニオン駆動用リレー53のリレーコイルにバッテリ7から電圧が印加されて、ピニオンギヤ13の押し出しが行われる。このとき、EFI−ECU5は、NSW4の端子電圧を+Bレベルとして読み込み、NSW4がOFFであると判定する(NSW信号OFF)。もっとも、この時点では、スタータモータ23の駆動を指示するスタータ信号のON信号がEFI−ECU5に入力されていないので(STA信号OFF)、EFI−ECU5はニュートラル判定を行わない(ニュートラル判定OFF)。
このように、タンデムソレノイドスタータを用いた場合には、NSW信号とSTA信号とが共にOFFになる期間が生じるため、NSW信号がON、又は、STA信号がON且つエコランモードがユニット状態であればニュートラル判定を行う従来の判定方法では、未判定の期間が生じることになる。
そこで、本実施形態のエンジン始動制御装置1では、EFI−ECU5は、NSW4をONと判定したとき(NSW信号がONのとき)、又は、スタータモータ23の駆動時(STA信号がON且つエコランモードがユニット状態のとき)に、ニュートラル判定を行うことを前提としつつ、NSW4をOFFと判定したときに、NSW履歴フラグを設定し、且つ、当該NSW履歴フラグが設定されている間もニュートラル判定を行うように構成されている。これにより、ニュートラル判定が未判定となる期間が生じるのを抑えて、制御における誤作動が生じるのを回避することができる。
また、EFI−ECU5は、スタータモータ23の始動時に、NSW履歴フラグをリセットするように構成されている。このようにすれば、NSW信号とスタータ信号とが共にOFFという期間が終了したときに、NSW履歴フラグがリセットされることから、NSW履歴フラグが設定された状態が不必要に継続されるのを回避することができる。
次に、通常始動時のニュートラル判定について、図5に示すタイミングチャートを用いて説明する。
先ず、T0では、シフトレバー14aの操作によって非駆動レンジが選択されていることから、NSW4はONとなっている。このとき、EFI−ECU5は、NSW4がONであると判定するとともに(NSW信号ON)、ニュートラル判定を行う(ニュートラル判定ON)。
次に、T1において、運転者のキー操作等によってイグニッションスイッチ8がONになると、ピニオン駆動用リレー53のリレーコイルにバッテリ7から電圧が印加されて、ピニオンギヤ13の押し出し(駆動)が行われる。このとき、EFI−ECU5は、NSW4の端子電圧を+Bレベルとして読み込み、NSW4がOFFであると判定するとともに(NSW信号OFF)、NSW履歴フラグを設定する。このようにNSW履歴フラグが設定されていることから、スタータ信号がEFI−ECU5に入力されていなくても、EFI−ECU5はニュートラルであると判定する(ニュートラル判定ON)。
そうして、T1において、ピニオンギヤ13が押し出されたことは、信号としてエコランECU6に入力される。かかる信号を受けたエコランECU6は、T1から微小時間後のT2に、STA信号を、モータ駆動用リレー63とEFI−ECU5とに出力する。これにより、スタータモータ23にバッテリ電圧が印加されて、スタータモータ23が回転駆動するとともに、EFI−ECU5は、ニュートラル判定を行い(ニュートラル判定ON)、且つ、NSW履歴フラグをリセットする。
その後、イグニッションスイッチ8がONになってから所定時間経過したT3においてエンジン2が始動し、エンジン回転数が50回転に達したT4において、エンジン始動判定がONとなる。そうして、エンジン始動後のT5において、スタータモータ23の回転が停止するとともにピニオンギヤ13が引っ込むと、NSW4の端子電圧がグランドレベルとなり、かかる端子電圧を読み込んだEFI−ECU5は、NSW4がONであると判定するとともに(NSW信号ON)、ニュートラル判定を行う(ニュートラル判定ON)。
このように、エンジン始動制御装置1では、T1〜T2の間においてNSW信号とSTA信号とが共にOFFなっても、未判定期間を生じさせることなく、ニュートラル判定を行うことができる。これにより、非駆動レンジではピニオンギヤ13の押し出しを禁止するというNSW4の特性を活かしつつ、且つ、新部材を追加するなど回路構成に変更を加えることなく、ニュートラル判定が未判定となる期間が生じるのを抑えて、制御における誤作動が生じるのを回避することができる。
以上のように、本実施形態のエンジン始動制御装置1では、(1)NSW信号がONのとき、又は、(2)STA信号がONで且つエコランモードがユニット状態のとき、又は、(3)NSW履歴フラグが設定されているとき、又は、(4)再始動NSW判定フラグが設定されているときに、ニュートラル判定を行うことにより、通常始動時およびアイドルストップ後のエンジン再始動時において、ニュートラル判定が未判定となる期間が生じるのを抑えることができる。
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
上記実施形態では、シフトレバー装置14のDレンジ接点またはRレンジ接点またはBレンジ接点がONのときに、再始動NSW判定フラグをOFFにするようにしたが、これに限らず、シフトレバー装置14のNレンジ接点またはPレンジ接点がONであれば、再始動NSW判定フラグを設定するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、通常始動時にはNSW履歴フラグを設定するとともに、アイドルストップ後のエンジン再始動時には再始動NSW判定フラグを設定するようにしたが、ニュートラル判定が未判定となる期間が生じるのを抑えることができるのであれば、これに限らず、通常始動時には他の制御を行うようにしてもよい。
さらに、上記実施形態では、エコランモードとして5つの状態を設定したが、これに限らず、5未満または6以上の状態を設定してもよいし、各状態についても上記の5態様に限定されない。
また、上記実施形態では、駆動レンジ接点として、Rレンジ接点、Dレンジ接点、Bレンジ接点を挙げたが、これに限らず、例えば、S(スポーツ)レンジ接点等を設けてもよい。
さらに、上記実施形態では、ピニオン駆動用リレー53及びモータ駆動用リレー63に付加されたタイマーを用いて、エコラン復帰状態に対応する信号の一部を再始動スタータ信号として兼用するようにしたが、これに限らず、エコラン復帰状態に対応する信号とは別に、エコランECU6から再始動スタータ信号を出力するようにしてもよい。
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。