JP5949388B2 - 樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、耐熱性と耐光性に優れた光反射体に好適な樹脂組成物及びその光反射体に関する。
高温条件下でも、長期間に渡って優れた光反射率を維持するLED光反射体を与える樹脂組成物として、多環式ノルボルネン系単量体由来の繰り返し単位を有する結晶性の環状オレフィン開環重合体水素添加物とワックスと核剤とを含有する樹脂組成物が、特許文献1において提案されている。特許文献1によれば、LED光反射体の製造に際しては、この樹脂組成物に耐熱性を向上させる目的で、白色顔料やガラス繊維を配合することが好ましい(段落0089)。
ところで、脂環構造含有重合体に、ピペリジン誘導体である、ある種のヒンダードアミン系光安定剤を配合すると、透明性に優れ、かつ、青色光線に対する耐性に優れたブルーレーザーを使用した光学機器の光学部品に好適な樹脂組成物となることが開示されている。ピペリジン誘導体を配合すると、他のヒンダードアミン系光安定剤に比して、青色光線に対する耐性と透明性に優れる(段落0008)。特許文献2で好適なヒンダードアミン系光安定剤は、ピペリジン骨格を構成する窒素原子に水素又はメチル基を有するものである。
国際公開第WO2012/033076号 国際公開第WO2007/004605号
本発明は、成形性に優れ、長期間高温や光照射にさらされても、反射率を維持する光反射版に好適な樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、特許文献1の樹脂組成物に対して、酸化チタンと、ピペリジン環の窒素原子に水素原子が結合していない、N−置換のピペリジン誘導体である光安定剤とを、それぞれ所定量、配合した樹脂組成物であれば、上記の問題を解決できることを見出した。
また、この樹脂組成物を用いることにより、熱の影響による光反射率の低下が起こり難いLED光反射体を良好な成形性で得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、多環式ノルボルネン系単量体由来の繰返し単位を有する結晶性の環状オレフィン開環重合体水素添加物、当該水素添加物100重量部に対して20〜100重量部の酸化チタン、及び当該酸化チタンの重量の、1/500〜1/150倍重量のN−置換ピペリジン構造を有する光安定剤(以下、「特定HALS」ということがある。)を含有する樹脂組成物が提供される。
また、本発明によれば、前記樹脂組成物を、溶融成形して得られる光反射体が提供される。光反射体は、LED用の光反射体であるのが好ましい。
以下、本発明を、1)樹脂組成物、及び、2)成形体、に項分けして詳細に説明する。
1)樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、多環式ノルボルネン系単量体由来の繰返し単位を有する結晶性の環状オレフィン開環重合体水素添加物(以下、単に「結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物」ということがある。)、当該水素添加物100重量部に対して20〜100重量部の酸化チタン、及び当該酸化チタンに対して、1/500〜1/150倍重量の特定HALSを含有することを特徴とする。
<結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物>
本発明に用いる結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物は、多環式ノルボルネン系単量体を少なくとも含有する単量体を開環重合し、得られた開環重合体の主鎖二重結合を水素化することにより得られるものであって、かつ、結晶性を有するものである。
前記結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物を得る方法は、特に限定されるものではないが、例えば特開2006−52333号公報に記載される方法が挙げられる。この方法によれば、シンジオタクチック立体規則性を有する環状オレフィン開環重合体を得て、それを水素化することで、目的とする環状オレフィン開環重合体水素添加物を効率よく得ることができる。
本発明に用いる環状オレフィン開環重合体は、3環以上の環を有する多環式ノルボルネン系単量体を少なくとも単量体の一部として用いて得ることができる。
多環式ノルボルネン系単量体は、分子内に、ノルボルネン骨格と、そのノルボルネン骨格に縮合した1つ以上の環構造を有するノルボルネン系化合物であればよい。樹脂組成物からなる成形体の耐熱性を特に良好なものとする観点からは、多環式ノルボルネン系単量体として、下記式(1)又は(2)で表される化合物が特に好ましい。
Figure 0005949388
Figure 0005949388
式(1)、(2)中、R、R、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基;又はケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基;を表す。また、RとR、RとRはそれぞれ結合して環を形成していてもよい。Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の二価の炭化水素基である。mは1又は2である。
、R、R〜Rのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基;エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル(プロパルギル)基、3−ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等のアルキニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニリル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;等が挙げられる。
これらの置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;等が挙げられる。
の置換基を有していてもよい炭素数1〜20の二価の炭化水素基の、二価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基等のアルキレン基;ビニレン基等のアルケニレン基;エチニレン基等のアルキニレン基;フェニレン基等のアリーレン基;これらの組み合わせ;等が挙げられる。その置換基としては、R、R、R〜Rの炭化水素基の置換基として例示したのと同様のものが挙げられる。
式(1)で表される多環式ノルボルネン系単量体の具体例としては、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレンともいう)、テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9,9a,10−ヘキサヒドロアントラセンともいう)が挙げられる。
また、式(2)で表される多環式ノルボルネン系単量体としては、式(2)のmが1である場合のテトラシクロドデセン類と、式(2)のmが2である場合のヘキサシクロヘプタデセン類が挙げられる。
テトラシクロドデセン類の具体例としては、テトラシクロドデセン、8−メチルテトラシクロドデセン、8−エチルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキシルテトラシクロドデセン、8−シクロペンチルテトラシクロドデセン等の無置換又はアルキル基を有するテトラシクロドデセン類;8−メチリデンテトラシクロドデセン、8−エチリデンテトラシクロドデセン、8−ビニルテトラシクロドデセン、8−プロペニルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキセニルテトラシクロドデセン、8−シクロペンテニルテトラシクロドデセン等の環外に二重結合を有するテトラシクロドデセン類;8−フェニルテトラシクロドデセン等の芳香環を有するテトラシクロドデセン類;8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−ヒドロキシメチルテトラシクロドデセン、8−カルボキシテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸無水物等の酸素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−シアノテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸イミド等の窒素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−クロロテトラシクロドデセン等のハロゲン原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−トリメトキシシリルテトラシクロドデセン等のケイ素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;が挙げられる。
ヘキサシクロヘプタデセン類の具体例としては、ヘキサシクロヘプタデセン、12−メチルヘキサシクロヘプタデセン、12−エチルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキシルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンチルヘキサシクロヘプタデセン等の無置換又はアルキル基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−メチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−エチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−ビニルヘキサシクロヘプタデセン、12−プロペニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキセニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンテニルヘキサシクロヘプタデセン等の環外に二重結合を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−フェニルヘキサシクロヘプタデセン等の芳香環を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−メチル−12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−ヒドロキシメチルヘキサシクロヘプタデセン、12−カルボキシヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸無水物等の酸素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−シアノヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸イミド等の窒素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−クロロヘキサシクロヘプタデセン等のハロゲン原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−トリメトキシシリルヘキサシクロヘプタデセン等のケイ素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;が挙げられる。
これらの多環式ノルボルネン系単量体は、1種単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
なかでも、環状オレフィン開環重合体水素添加物の結晶性を高め、得られる成形体の耐熱性を特に良好なものとする観点からは、多環式ノルボルネン系単量体全体に対して50重量%以上のジシクロペンタジエンを含むものを用いることが好ましく、ジシクロペンタジエンを単独で用いることが特に好ましい。
また、多環式ノルボルネン系単量体には、エンド体及びエキソ体の立体異性体が存在するが、そのどちらも単量体として用いることが可能であり、一方の異性体を単独で用いてもよいし、エンド体及びエキソ体が任意の割合で存在する異性体混合物を用いることもできる。但し、環状オレフィン開環重合体水素添加物の結晶性を高め、得られる樹脂組成物の耐熱性を特に良好なものとする観点からは、一方の立体異性体の割合を高くすることが好ましく、例えば、エンド体又はエキソ体の割合が、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが特に好ましい。なお、割合を高くする立体異性体は、合成容易性の観点から、エンド体であることが好ましい。
環状オレフィン開環重合体を得るにあたっては、結晶性を有する重合体を与える範囲において、多環式ノルボルネン系単量体に、多環式ノルボルネン系単量体以外の単量体を共重合させてもよい。多環式ノルボルネン系単量体と共重合できる単量体としては、ノルボルネン骨格に縮合した環構造を有しない2環のノルボルネン系化合物、モノ環状オレフィン、及び環状ジエン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。
ノルボルネン骨格に縮合した環構造を有しない2環のノルボルネン系化合物の具体例としては、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−ブチルノルボルネン、5−ヘキシルノルボルネン、5−デシルノルボルネン、5−シクロヘキシルノルボルネン、5−シクロペンチルノルボルネン等の無置換又はアルキル基を有するノルボルネン類;5−エチリデンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−プロペニルノルボルネン、5−シクロヘキセニルノルボルネン、5−シクロペンテニルノルボルネン等のアルケニル基を有するノルボルネン類;5−フェニルノルボルネン等の芳香環を有するノルボルネン類;5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−エトキシカルボニルノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−メチル−5−エトキシカルボニルノルボルネン、ノルボルネニル−2−メチルプロピオネイト、ノルボルネニル−2−メチルオクタネイト、5−ヒドロキシメチルノルボルネン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5,5−ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5−ヒドロキシ−i−プロピルノルボルネン、5,6−ジカルボキシノルボルネン、5−メトキシカルボニル−6−カルボキシノルボルネン、等の酸素原子を含む極性基を有するノルボルネン類;5−シアノノルボルネン等の窒素原子を含む極性基を有するノルボルネン類;が挙げられる。
モノ環状オレフィンの具体例としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンが挙げられる。
また、環状ジエンの具体例としては、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンが挙げられる。
なかでも、環状オレフィン開環重合体水素添加物の結晶性を高め、得られる成形体の耐熱性を特に良好なものとする観点からは、水素化反応に供する環状オレフィン開環重合体を得るための単量体として、用いる単量体全体に対して80重量%以上の多環式ノルボルネン系単量体を含むことが好ましく、用いる単量体が実質的に多環式ノルボルネン系単量体のみで構成されることが特に好ましい。
シンジオタクチック立体規則性を有する環状オレフィン開環重合体水素添加物を得るためには、シンジオタクチック立体規則性を有する環状オレフィン開環重合体を水素化反応に供する必要がある。
したがって、多環式ノルボルネン系単量体を開環重合するにあたっては、環状オレフィン開環重合体にシンジオタクチック立体規則性を与えることができる開環重合触媒を用いる必要がある。このような開環重合触媒としては、環状オレフィン開環重合体にシンジオタクチック立体規則性を与えることができるものであれば特に限定されないが、下記式(3)で表される金属化合物(以下、「金属化合物(3)」ということがある。)を含んでなる開環重合触媒が好適である。
Figure 0005949388
式中、Mは周期律表第6族の遷移金属原子から選択される金属原子であり、Rは3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、又はCH10で表される基であり、Rは置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基から選択される基であり、Xはハロゲン原子、アルキル基、アリール基及びアルキルシリル基から選択される基であり、Lは電子供与性の中性配位子であり、aは0又は1であり、bは0〜2の整数である。R10は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基から選択される基である。
金属化合物(3)を構成する金属原子(M)は、周期律表第6族の遷移金属原子(クロム、モリブデン、タングステン)から選択される。なかでも、モリブデン又はタングステンが好適に用いられ、タングステンが特に好適に用いられる。
金属化合物(3)は、金属イミド結合を含んでなるものである。Rは、金属イミド結合を構成する窒素原子上の置換基である。
3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基が有しうる置換基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;等が挙げられ、さらに、3,4,5位の少なくとも2つの位置に存在する置換基が互いに結合したものであってもよい。
3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基の具体例としては、フェニル基;4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基等の一置換フェニル基;3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基等の二置換フェニル基;3,4,5−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリクロロフェニル基等の三置換フェニル基;2−ナフチル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−2−ナフチル基等の置換基を有していてもよい2−ナフチル基;が挙げられる。
金属化合物(3)において、窒素原子上の置換基(式(3)中のR)として用いられ得る、−CH10で表される基におけるR10の、置換基を有していてもよいアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常1〜20、好ましくは1〜10である。また、このアルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。このアルキル基が有し得る置換基は、特に限定されないが、例えば、フェニル基、4−メチルフェニル基等の置換基を有していてもよいフェニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシル基;が挙げられる。
10の、置換基を有していてもよいアリール基アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。このアリール基の置換基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、4−メチルフェニル基等の置換基を有していてもよいフェニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシル基;等が挙げられる。
10としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等の炭素数が1〜20のアルキル基が好ましい。
金属化合物(3)は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基及びアルキルシリル基から選択される基を3個又は4個有してなる。すなわち、式(3)において、Xは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基及びアルキルシリル基から選択される基を表す。なお、金属化合物(3)においてXで表される基が2以上あるとき、それらの基は互いに結合していてもよい。
Xで表される基となり得るハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ベンジル基、ネオフィル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。
金属化合物(3)は、1個の金属アルコキシド結合又は1個の金属アリールオキシド結合を有するものであってもよい。この金属アルコキシド結合又は金属アリールオキシド結合を構成する酸素原子上の置換基(式(3)中のR)は、置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基から選択される基である。このRで表される基となり得る、置換基を有していてもよいアルキル基や置換基を有していてもよいアリール基としては、前述のR10で表される基におけるものと同様のものを用いることができる。
金属化合物(3)は、1個又は2個の電子供与性の中性配位子を有するものであってもよい。この電子供与性の中性配位子(式(3)中のL)としては、例えば、周期律表第14族又は第15族の原子を含有する電子供与性化合物が挙げられる。その具体例としては、トリメチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジン等のアミン類;が挙げられる。これらの中でも、エーテル類が特に好適に用いられる。
シンジオタクチック立体規則性を有する環状オレフィン開環重合体を得るための開環重合触媒として、特に好適に用いられる金属化合物(3)としては、フェニルイミド基を有するタングステン化合物(式(3)中、Mがタングステン原子で、かつ、Rがフェニル基である化合物)を挙げることができ、その中でも、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)が特に好適である。
金属化合物(3)は、第6族遷移金属のオキシハロゲン化物と、3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニルイソシアナート類、又は一置換メチルイソシアナート類と、電子供与性の中性配位子(L)、及び必要に応じてアルコール類、金属アルコキシド、金属アリールオキシドを混合すること等(例えば、特開平5−345817号公報に記載された方法)により合成することができる。合成された金属化合物(3)は、結晶化等により精製・単離したものを用いてもよいし、精製することなく、触媒合成溶液をそのまま開環重合触媒として使用することもできる。
開環重合触媒として用いる金属化合物(3)の使用量は、(金属化合物(3):用いる単量体全体)のモル比で、通常1:100〜1:2,000,000、好ましくは1:500〜1:1,000,000、より好ましくは1:1,000〜1:500,000となる量である。触媒量が多すぎると触媒除去が困難となるおそれがあり、少なすぎると十分な重合活性が得られない場合がある。
金属化合物(3)を開環重合触媒として用いるにあたっては、金属化合物(3)を単独で使用することもできるが、重合活性を高くする観点から、金属化合物(3)に有機金属還元剤を併用することが好ましい。
用いる有機金属還元剤としては、炭素数1〜20の炭化水素基を有する周期律表第1、2、12、13、14族が挙げられる。なかでも、有機リチウム、有機マグネシウム、有機亜鉛、有機アルミニウム、又は有機スズが好ましく用いられ、有機アルミニウム又は有機スズが特に好ましく用いられる。
有機リチウムとしては、n−ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム等が挙げられる。有機マグネシウムとしては、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド等が挙げられる。有機亜鉛としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛等が挙げられる。有機アルミニウムとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムイソブトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジイソブトキシド等が挙げられる。有機スズとしては、テトラメチルスズ、テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズ等が挙げられる。
有機金属還元剤の使用量は、金属化合物(3)に対して、0.1〜100モル倍が好ましく、0.2〜50モル倍がより好ましく、0.5〜20モル倍が特に好ましい。使用量が少なすぎると重合活性が向上しない場合があり、多すぎると副反応が起こりやすくなるおそれがある。
結晶性環状オレフィン開環重合体を得るための重合反応は、通常、有機溶媒中で行う。用いる有機溶媒は、目的とする開環重合体やその水素添加物が所定の条件で溶解もしくは分散させることが可能であり、重合反応や水素化反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。
有機溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素炭化水素系溶媒;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフラン等のエ−テル類;又はこれらの混合溶媒が挙げられる。これらの溶媒の中でも、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、エーテル類が好ましく用いられる。
開環重合反応は、単量体と、金属化合物(3)と、必要に応じて有機金属還元剤とを混合することにより開始させることができる。これらの成分を添加する順序は、特に限定されない。例えば、単量体に金属化合物(3)と有機金属還元剤との混合物を添加して混合してもよいし、有機金属還元剤に単量体と金属化合物(3)との混合物を添加して混合してもよく、また、単量体と有機金属還元剤との混合物に金属化合物(3)を添加して混合してもよい。
各成分を混合するにあたっては、それぞれの成分の全量を一度に添加してもよいし、複数回に分けて添加してもよく、比較的に長い時間(例えば1分間以上)にわたって連続的に添加することもできる。なかでも、重合温度や得られる開環重合体の分子量を制御して、特に成形性に優れた樹脂組成物を得る観点からは、単量体又は金属化合物(3)を、複数回に分けて、又は連続的に、添加することが好ましく、単量体を、複数回に分けて、又は連続的に、添加することが特に好ましい。
有機溶媒中の重合反応時における単量体の濃度は、特に限定されないが、1〜50重量%であることが好ましく、2〜45重量%であることがより好ましく、3〜40重量%が特に好ましい。単量体の濃度が低すぎると重合体の生産性が悪くなるおそれがあり、高すぎる場合は重合後の溶液粘度が高すぎて、その後の水素化反応が困難となる場合がある。
重合反応系には、活性調整剤を添加してもよい。活性調整剤は、開環重合触媒の安定化、重合反応の速度及び重合体の分子量分布を調整する目的で使用することができる。活性調整剤は、官能基を有する有機化合物であれば特に制限されないが、含酸素、含窒素、含りん有機化合物が好ましい。具体的には、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、フラン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチルアセテート等のエステル類;アセトニトリルベンゾニトリル等のニトリル類;トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、キヌクリジン、N,N−ジエチルアニリン等のアミン類;ピリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、2−t−ブチルピリジン等のピリジン類;トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等のホスフィン類;トリメチルホスフェ−ト、トリフェニルホスフェ−ト等のホスフェート類;トリフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類;等が挙げられる。これらの活性調整剤は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。添加する活性調整剤の量は、特に限定されないが、通常、開環重合触媒として用いる金属化合物に対して0.01〜100モル%の間で選択すればよい。
また、重合反応系には、開環重合体の分子量を調整するために分子量調整剤を添加してもよい。分子量調整剤としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル、酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレート等の酸素含有ビニル化合物;アリルクロライド等のハロゲン含有ビニル化合物;アクリルアミド等の窒素含有ビニル化合物;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン等の非共役ジエン;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン;が挙げられる。
添加する分子量調整剤の量は目的とする分子量に応じて決定すればよいが、通常、用いる単量体に対して、0.1〜50モル%の範囲で選択すればよい。
重合温度は特に制限はないが、通常−78℃〜+200℃の範囲であり、好ましくは−30℃〜+180℃の範囲である。重合時間は、特に制限はなく、反応規模にも依存するが、通常1分間から1000時間の範囲である。
上述したような金属化合物(3)を含む開環重合触媒を用いて、上述したような条件で多環式ノルボルネン系単量体を含む単量体の開環重合反応を行うことにより、シンジオタクチック立体規則性を有する環状オレフィン開環重合体を得ることができる。
水素化反応に供する環状オレフィン開環重合体におけるラセモ・ダイアッドの割合は、特に限定されないが、通常60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70〜99%である。環状オレフィン開環重合体のラセモ・ダイアッドの割合(シンジオタクチック立体規則性の度合い)は、開環重合触媒の種類を選択すること等により、調節することが可能である。
水素化反応に供する環状オレフィン開環重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、ポリイソプレン換算で10,000〜100,000であることが好ましく、15,000〜80,000であることがより好ましい。このような重量平均分子量を有する環状オレフィン開環重合体から得られる環状オレフィン開環重合体水素添加物を用いると、成形性に優れ、得られた成形体の耐熱性に優れる点で好ましい。環状オレフィン開環重合体の重量平均分子量は、重合時に用いる分子量調整剤の添加量等を調節することにより、調節することができる。
水素化反応に供する環状オレフィン開環重合体の分子量分布〔ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリイソプレン換算の数平均分子量と重量平均分子量との比(Mw/Mn)〕は、特に限定されないが、通常1.5〜4.0であり、好ましくは1.6〜3.5である。このような分子量分布を有する環状オレフィン開環重合体から得られる環状オレフィン開環重合体水素添加物を用いると、成形性に優れる点で好ましい。
環状オレフィン開環重合体水素添加物の分子量分布は、開環重合反応時における単量体の添加方法や単量体の濃度により、調節することができる。
環状オレフィン開環重合体の水素化反応(主鎖二重結合の水素化)は、水素化触媒の存在下で、反応系内に水素を供給することにより行うことができる。水素化触媒としては、オレフィン化合物の水素化に際して一般に使用されているものであれば使用可能であり、特に制限されないが、例えば、次のようなものが挙げられる。
均一系触媒としては、遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなる触媒系、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の組み合わせが挙げられる。さらに、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリド、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の貴金属錯体触媒が挙げられる。
不均一触媒としては、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、又はこれらの金属をカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタン等の担体に担持させた固体触媒、例えば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナ等の触媒系が挙げられる。
水素化反応は、通常、不活性有機溶媒中で行う。このような不活性有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン等の脂環族炭化水素;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;等が挙げられる。不活性有機溶媒は、通常は、重合反応に用いる溶媒と同じでよく、重合反応液にそのまま水素化触媒を添加して反応させればよい。
水素化反応は、使用する水素化触媒系によっても適する条件範囲が異なるが、反応温度は通常−20℃〜+250℃、好ましくは−10℃〜+220℃、より好ましくは0℃〜200℃である。水素化温度が低すぎると反応速度が遅くなりすぎる場合があり、高すぎると副反応が起こる場合がある。水素圧力は、通常0.01〜20MPa、好ましくは0.05〜15MPa、より好ましくは0.1〜10MPaである。水素圧力が低すぎると水素化速度が遅くなりすぎる場合があり、高すぎると高耐圧反応装置が必要となる点において装置上の制約が生じる。反応時間は所望の水素化率とできれば特に限定されないが、通常0.1〜10時間である。
環状オレフィン開環重合体の水素化反応における水素化率(水素化された主鎖二重結合の割合)は、特に限定されないが、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上、最も好ましくは99%以上である。水素化率が高くなるほど、結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物の耐熱性が良好なものとなる。
以上のようにして得られる、結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物は、下記の式(4)又は式(5)で表されるような多環式ノルボルネン系単量体由来の繰返し単位を有するものである。
Figure 0005949388
(式中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基;又はケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基;を表す。R、Rは結合して環を形成していてもよい。Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の二価の炭化水素基である。)
Figure 0005949388
(式(4)、(5)中、R〜R及びmは、前記と同じ意味を表す。)
また、以上のようにして得られる結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物では、水素化反応に供した開環重合体が有するシンジオタクチック立体規則性が維持される。したがって、得られる環状オレフィン開環重合体水素添加物は、シンジオタクチック立体規則性を有する。本発明に用いる結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物におけるラセモ・ダイアッドの割合は、その水素添加物が結晶性を有する限りにおいて特に限定されないが、通常55%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは65〜99%である。
水素化反応で重合体のタクチシチーが変化することはないので、シンジオタクチック立体規則性を有する環状オレフィン開環重合体を水素化反応に供することにより、シンジオタクチック立体規則性を有することに基づいて結晶性を有する、多環式ノルボルネン系単量体由来の繰返し単位を有する結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物を得ることができる。
このようなシンジオタクチック立体規則性を有する結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物を用いることにより、得られる樹脂組成物が、熱の影響により変形が特に起こり難い成形体を与えることができるものとなる。なお、結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物のラセモ・ダイアッドの割合は、水素化反応に供する環状オレフィン開環重合体のラセモ・ダイアッドの割合に依存する。
結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物のラセモ・ダイアッドの割合は、13C−NMRスペクトルを測定し、該スペクトルデータに基づいて定量することができる。定量の方法は、重合体によっても異なるが、例えばジシクロペンタジエンの開環重合体水素添加物の場合、オルトジクロロベンゼン−d4を溶媒として、150℃で13C−NMR測定を行い、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルの強度比からラセモ・ダイアッドの割合を決定できる。
本発明の樹脂組成物を構成するために用いられる結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物は、結晶性を有するものである限りにおいて、その融点は特に限定されないが、200℃以上の融点を有することが好ましく、230〜290℃の融点を有することがより好ましい。このような融点を有する結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物を用いることによって、特に成形性と耐熱性とのバランスに優れた樹脂組成物を得ることができる。結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物の融点は、そのシンジオタクチック立体規則性の度合い(ラセモ・ダイアッドの割合)を調節したり、用いる単量体の種類を選択したりすること等により、調節することができる。
<酸化チタン>
本発明の樹脂組成物に配合する酸化チタンは、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタンのいずれも使用することができるが、熱安定性の点でルチル型酸化チタンを用いることが特に好ましい。また、酸化チタンの形状も特に限定されず、球状、鱗片状、不定形等のいずれであってもよい。酸化チタンの平均粒径は、通常0.05〜5μm、好ましくは0.05〜1μm、さらに好ましくは0.1〜1μmである。このような平均粒径を有する酸化チタンを用いることにより、可視光の反射率が特に優れるLED光反射体を成形することができる組成物を得ることができる。
なお、酸化チタンの粒径とは、球状の場合は直径を指し、その他の場合は最長の両端間距離を指す。また、平均粒径は、電子顕微鏡(透過型(TEM)又は走査型(SEM))でいくつかの単一粒子径を測定し、平均した値である。
酸化チタンの量は、上述した結晶性の環状オレフィン開環重合体水素添加物100重量部に対して、20〜100重量部である。酸化チタンの量が少なすぎると、光反射体としての白色が十分に確保されず、逆に酸化チタンの量が多すぎると、成形性に劣り、また光反射体にした際の耐久性にも劣る傾向があり、いずれも好ましくない。
<特定HALS>
本発明の樹脂組成物に配合する特定HALSは、N−置換ピペリジン構造を有する光安定剤であり、好適には、ピペリジン環に含まれる窒素原子に置換基としてアルキル基を有するヒンダードアミン、又はピペリジン重縮合物が用いられる。特定HALSは、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いても良い。
好適な特定HALSの一つであるピペリジン環に含まれる窒素原子に置換基としてアルキル基を有するヒンダードアミンは、前記アルキル基がメチル基であるものが好ましく、ピペリジン環の2位と6位にもメチル基を有するものがより好ましく、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル基を有するものが特に好ましい。
特に好ましいピペリジン環に含まれる窒素原子に置換基としてアルキル基を有するヒンダードアミンとしては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケ−ト、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンと2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジンとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジノ−ルとトリデシルアルコ−ルとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸−ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)3−ドデシル−1−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−ピロリジン−2,5−ジオンなどが挙げられる。
好適な特定HALSのもう一つであるピペリジン重縮合物は、ジカルボン酸ジアルキルエステルと末端に4−ヒドロキシ−1−ピペリジル基を有する炭素数1〜4のアルコールとの重縮合物が好ましく、ジカルボン酸のジメチルエステルと末端に4−ヒドロキシ−1−ピペリジル基を有する炭素数1〜4のアルコールとの重縮合物がより好ましく、炭素数4〜8のジカルボン酸のジメチルエステルと末端に4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジル基を有する炭素数1〜4のアルコールとの重縮合物が特に好ましい。
特に好ましいピペリジン重縮合物としては、コハク酸(炭素数4)ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重合物、コハク酸ジメチルと1−メトキシ−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重合物、コハク酸ジメチルと1−(3−ヒドロキシプロピル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重合物、コハク酸ジメチルと1−(4−ヒドロキシブチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重合物、マロン酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重合物、グルタル酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重合物、アジピン酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重合物、フタル酸(炭素数8)ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重合物、テレフタル酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重合物、イソフタル酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重合物などが挙げられる。
特定HALSの重量は、上述した酸化チタンの重量の、1/500〜1/150倍、好ましくは1/450〜1/200倍である。酸化チタンと特定HALSとの量比がこの範囲にあると、耐熱性と耐光性とがバランスされ、成形性も確保できるので、好ましい。
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物は、結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物、酸化チタン、及び特定HALSのみで構成してもよいし、さらに他の成分を配合して構成することもできる。
他の成分としては、酸化防止剤;石油系ワックスやフィッシャートロプシュワックスやポリアルキレンワックスなどのワックス;ソルビトール系化合物、有機リン酸の金属塩、有機カルボン酸の金属塩、カオリン及びタルクなどの核剤;ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、アゾール系誘導体(例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、及びベンゾチアソール誘導体)、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ナフタル酸誘導体、及びイミダゾロン誘導体などの蛍光増白剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などの紫外線吸収剤;ガラス繊維;着色剤;難燃剤;難燃助剤;帯電防止剤;可塑剤;近赤外線吸収剤;滑剤、及び、結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物以外の高分子材料;等を例示することができる。
LED光反射体を成形する場合、酸化防止剤を添加するのが好ましい。酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤を用いることができる。これらのなかでも、フェノール系酸化防止剤を用いることが好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレート等の特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタン[すなわち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート)]、トリエチレングリコール ビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)等のアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン基含有フェノール系化合物;等が挙げられる。これらのなかでも、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましく用いられる。
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のモノホスファイト系化合物;4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキルホスファイト)(アルキル部分の炭素数12〜15)等のジホスファイト系化合物が挙げられる。
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル 3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル 3,3’−チオジプロピピオネート、ジステアリル 3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル 3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
酸化防止剤を用いる場合、その配合量は、特に限定されないが、上述した結晶性の環状オレフィン開環重合体水素添加物100重量部に対して、通常0.001〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部の範囲で選択される。
本発明の樹脂組成物は、常法に従い、結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物に、酸化チタン、特定HALS、及び所望により他の成分を配合して混合することによって調製することができる。混合方法は特に限定されず、例えば一軸混練機や二軸混練機等を用いて溶融混練することにより行ってもよいし、ミキサー等を用いてドライブレンドして行ってもよい。
なお、LED用の光反射体の成形に際しては、結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物、酸化チタン、特定HALSの他に、酸化防止剤、さらに所望により他の成分(例えば紫外線吸収剤、蛍光増白剤、ワックス、核剤など)を配合して混合することによって樹脂組成物を調製するのが好ましい。このような樹脂組成物を用いることで、より光反射率に優れ、高温条件下や長時間の光照射を受けても、その優れた光反射率が、低下することなく長期間維持されるLED光反射体を、良好な成形性で得ることができる。
LED用の光反射体の光反射率(波長450nmの分光反射率、劣化前)は、特に限定されないが、80%以上であることが好ましく、85〜95%であることがより好ましい。LED用の光反射体の光反射率は、白色顔料の種類及び配合量により調節することが可能である。
本発明の樹脂組成物のメルトフローレート(290℃、2.16kgf)は、特に限定されないが、5〜150g/10分であることが好ましく、10〜100g/10分であることがより好ましい。樹脂組成物のメルトフローレートは、用いる結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物の分子量や白色顔料の種類及び配合量により調節することが可能である。
本発明の樹脂組成物によれば、比較的低温の金型温度で射出成形しても、結晶化が十分に進行し、熱の影響による変形が起こり難い成形体を与えることができる。
2)成形体
本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物を溶融成形してなることを特徴とする。
溶融成形する方法としては、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、カレンダー成形等の方法が挙げられる。溶融成形法は目的とする形状等に応じて選択すればよいが、本発明の樹脂組成物は優れた成形性(溶融成形性)を有することから、量産性に優れる射出成形法を適用することが好ましい。
成形体の形状は特に制約されない。
成形体としては、例えば、コネクター、リレー、コンデンサ、センサー、アンテナ、ICトレイ、シャーシ、コイル封止、モーターケース、電源ボックス等の電子部品;LED光反射体;車両用灯具のリフレクタ;自動車用モーターケース、センサケース、モジュール部品ケース等の自動車部品;光学レンズ鏡筒;フレキシブルプリント基板;プリント配線板積層用離型フィルム;太陽電池用基板;電子レンジ、炊飯器、電動ジャーポット、乾燥洗濯機、食器洗い機、エアコン等の家電部品;包装用、梱包用フィルム;食品用シート、トレイ;LEDモールド材;ポンプケーシング、インペラ、配管継ぎ手、浴室パネル等の住設部品等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の成形体としては、LED光反射体であるのが好ましい。
LED光反射体としては、例えば、大型液晶表示装置のバックライトの光源、照明器具、携帯電話等の小型電子機器の液晶ディスプレイのバックライトの光源、道路交通表示板等の電光表示板の光源として用いられるLEDの光反射体等が挙げられる。
LED光反射体の形状は、その用途等に応じて適宜決定すればよく、必要に応じて、他の材料と組み合わせてLED光反射体を構成することもできる。
得られるLED光反射体に、常法にしたがい、半導体チップや封止材を組み合わせることによりLEDを構成することができる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。なお、各例中の部及び%は、特に断りのない限り、重量基準である。
また、各例における測定や評価は、以下の方法により行った。
(1)環状オレフィン開環重合体の分子量(重量平均分子量及び数平均分子量)
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム HLC−8220(東ソー社製)で、Hタイプカラム(東ソー社製)を用い、テトラヒドロフランを溶媒として40℃で測定し、ポリスチレン換算値として求めた。
(2)環状オレフィン開環重合体水素添加物における水素化率
H−NMR測定により求めた。
(3)環状オレフィン開環重合体水素添加物の融点
示差走査熱量計を用いて、昇温温度:10℃/分で測定した。
(4)環状オレフィン開環重合体水素添加物のラセモ・ダイアッドの割合
オルトジクロロベンゼン−dを溶媒として、150℃で13C−NMR測定を行い、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルの強度比に基づいて決定した。
(5)光反射率
初期反射率は、熱や光に暴露する前の成形体の450nmにおけるSCI(正反射光込みの反射率)を、分光測色計(コニカミノルタオプティクス社製、製品名「CM−3600A」;以下、同じ)を用いて測定した。
耐熱反射率は、成形体を180℃の恒温器VTR−111(いすゞ製作所社製)に24時間投入し、室温で30分放置した後に、初期反射率と同様にして分光測色計を用いて、450nmにおけるSCIを測定した。
耐光反射率は、成形体を耐光性試験機(スガメタリング照射試験機、スガ試験機社製)を使用し、ブラックパネル温度80℃の条件下で240時間照射し、室温で30分放置した後に、初期反射率と同様にして分光測色計を用いて、450nmにおけるSCIを測定した。
初期反射率は90%以上必要であり、耐熱反射率と耐光反射率とは、85%未満では製品として成り立たず不良と判断される。このため、耐熱反射率と耐光反射率とは、それぞれ85%以上であるのが好ましく、90%以上であるのが特に好ましい。
(6)成形性
小型射出成形機(Micro Injection Moulding Machine 10cc、DSM Xplore社製)を用いて、成形温度290℃、射出圧力0.7MPa、金型内保持時間10秒で、それぞれ金型温度を150℃の条件で、縦70mm、横30mm、厚さ3mmの平板を成形し、充填不良の有無を目視して確認した。
〔合成例1〕
充分に乾燥した後、窒素置換したガラス製耐圧反応容器に、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の75%シクロヘキサン溶液40部(ジシクロペンタジエンの量として30部)を仕込み、さらに、シクロヘキサン738部及び1−ヘキセン3.3部を加え、50℃に加温した。一方、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体1.1部を56部のトルエンに溶解した溶液に、19重量%のジエチルアルミニウムエトキシド/n−ヘキサン溶液4.6部を加えて10分間攪拌し、触媒溶液を調製した。この触媒溶液を反応器に加えて開環重合反応を開始させた。その後、50℃を保ちながら、5分毎に75%ジシクロペンタジエン/シクロヘキサン溶液40部を9回添加した後、2時間反応を継続した。ついで、少量のイソプロパノールを加えて、重合反応を停止させた後、重合反応溶液を多量のイソプロパノール中に注ぎ、開環重合体を凝固させた。
凝固した重合体をろ過により回収した。得られた開環重合体を、減圧下40℃で20時間乾燥した。重合体の収量は296部(収率=99%)であった。また、この重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、10,100及び17,200であり、これらから求められる分子量分布(Mw/Mn)は1.70であった。
続いて、得られた開環重合体60部とシクロヘキサン261部を耐圧反応容器に加えて攪拌し、重合体をシクロヘキサンに溶解後、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.039部をトルエン40部に溶解した水素化触媒溶液を添加し、水素圧4MPa、160℃で5時間水素化反応を行った。得られた水素化反応液を多量のイソプロピルアルコールに注いでポリマ−を完全に析出させ、濾別洗浄後、60℃で24時間減圧乾燥して、結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物Aを得た。
結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物Aの水素化率は99%以上、ラセモ・ダイアッドの割合は79%であり、融点は260℃であった。重合反応において用いた1−ヘキセンの量、得られた開環重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)、並びに得られた開環重合体水素添加物の水素化率及び融点を、下記表1にまとめて示す。
〔合成例2、3〕
合成例1において、1−ヘキセンの量を下記表1に示す通りに変更したこと以外は、合成例1と同様にして、結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物B及びCを得た。得られた開環重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)、並びに得られた開環重合体水素添加物の水素化率、ラセモ・ダイアッドの割合及び融点を、下記表1にまとめて示す。
Figure 0005949388
〔実施例1〕
結晶性環状オレフィン開環重合体水素添加物A 100部、酸化チタン(A)(商品名「PC−3」、平均粒径0.21μmのルチル型酸化チタン、石原産業社製)20部、ガラス繊維(商品名「CSG 3PA−830」、日東紡社製)10部、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、商品名「イルガノックス(登録商標)1010」、BASFジャパン社製)0.8部、光安定剤(a)(コハク酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、商品名「チヌビン(登録商標)622」、BASFジャパン社製)0.05部を混合後、小型混練機(Micro15Compounder、DSM Xplore社製)を用い、290℃、100rpmの条件で2分間混練し、得られた混練物をペレット化した。その後、小型射出成形機(Micro Injection Moulding Machine 10cc、DSM Xplore社製)で成形温度290℃、射出圧力0.7MPa、金型内保持時間10秒で、それぞれ金型温度を150℃の条件で、縦70mm、横30mm、厚さ3mmの平板を成形した。組成物の組成とそれぞれの評価結果を、表2にまとめて示す。
〔実施例2〜6及び比較例1〜5〕
実施例1において、組成物の配合量(重量部)を表2に示す通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、成形体を得て、その評価を行った。それぞれの評価結果は、表2にまとめて示した。なお、表2において、酸化チタン(B)は、商品名「FTR−700」(平均粒子径0.2μmのルチル型酸化チタン、堺化学工業社製)、ヒンダードアミン系光安定剤(b)は、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンと2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジンとの縮合物(商品名「キマソーブ(登録商標)119」、BASFジャパン社製)、ヒンダードアミン系光安定剤(c)は、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジ・ル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕(商品名「キマソーブ(登録商標)2020」、BASFジャパン社製;ピペリジン環には水素原子が結合している)である。
Figure 0005949388
この結果から、本発明の樹脂組成物(実施例1〜6)は、耐熱反射率、耐光反射率が高く、更に成形性の良い成形体が得られた。一方、ヒンダードアミン系光安定剤に対する酸化チタンの重量が少ない(酸化チタン/光安定剤比が小さい)と、耐熱反射率の低下が顕著となり、ヒンダードアミン系光安定剤に対する酸化チタンの重量が多い(酸化チタン/光安定剤比が大きい)と、耐光反射率の低下が顕著となることがわかる(比較例1、2)。
また、ピペリジン環に含まれる窒素原子に置換基として水素を有するヒンダードアミン系光安定剤(c)を用いた場合、耐熱反射率が低くなった(比較例3)。
更に、酸化チタンの含有量が少ないと、隠蔽性の低さから成形体の耐熱反射率と耐光反射率に劣り、酸化チタンの含有量が多いと、成形性に劣る(比較例4、5)。

Claims (3)

  1. 多環式ノルボルネン系単量体由来の繰返し単位を有する結晶性の環状オレフィン開環重合体水素添加物、当該水素添加物100重量部に対して20〜100重量部の酸化チタン、及び当該酸化チタンの重量の、1/500〜1/150倍重量のN−置換ピペリジン構造を有する光安定剤を含有する樹脂組成物。
  2. 請求項1記載の樹脂組成物を、溶融成形する、光反射体の製造方法
  3. 光反射体がLED用の光反射体である請求項2に記載の光反射体の製造方法
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