JP5937223B2 - 過共晶アルミニウム−シリコン合金ダイカスト部材およびその製造方法 - Google Patents

過共晶アルミニウム−シリコン合金ダイカスト部材およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は過共晶アルミニウム−シリコン合金ダイカスト部材およびその製造方法、とりわけシリコンを20.0質量%〜30.0質量%含有し、厚さが2.5mm以下の過共晶アルミニウム−シリコン合金ダイカスト部材およびその製造方法に関する。
アルミニウム(Al)−シリコン(Si)合金の共晶点組成以上、すなわち12.6質量%以上のシリコンを含有する過共晶アルミニウム−シリコン合金は、線熱膨張係数が小さく、かつ耐摩耗性に優れている。これは、共晶点組成以上のシリコンを含有することにより、凝固時に初晶Siを形成できるからであり、シリコン含有量が共晶点組成未満(すなわち、12.6質量%未満)で初晶Alが形成する亜共晶アルミニウム−シリコン合金では得られない特性である。
特に、シリコン含有量が20.0質量%〜30.0質量%の範囲内にあると、十分な量の初晶Siを得られること等により、線熱膨張係数がより小さくなって銅と同程度となり、また耐摩耗性が大きく向上し、さらには高い熱伝導率を有する。
このため、シリコン含有量が20.0質量%〜30.0質量%である過共晶アルミニウム−シリコン合金は、例えばその表面に銅等の金属の配線を有する半導体素子用基板、および各種ハウジング(筐体)等の多くの用途での利用が期待されている。
しかし、過共晶アルミニウム−シリコン合金は、鋳造後の加工性が低いため、所望の形状に二次加工するのが難しいという問題がある。
そこで、加工性が低い過共晶アルミニウム−シリコン合金を所望の形状に鋳造する方法としてダイカスト法が提案されている。
ダイカスト法は、最終形状または最終形状に近い形状を容易に得られる方法であり、得られたダイカスト部材に切削および研磨等の工程を行うことなく、または行ったとしても軽度な加工で済むという利点がある。
しかし、一般に、シリコン含有量が17%よりも高くなると、溶湯の流動性が悪くなるとされており、シリコン含有量が20.0質量%〜30.0質量%である過共晶アルミニウム−シリコン合金は、相当に溶湯の流動性が悪いとされていたため、薄肉のものに限らず、通常の部材であっても通常のダイカスト装置ではダイカストを行うのは難しいとされ、ダイカストが実施されることはほとんどなかった。
すなわち、シリコンを20.0質量%〜30質量%含む過共晶アルミニウム−シリコン合金は、シリコン量がより低いアルミニウム−シリコン合金のダイカスト部材を得るための母合金(シリコン源)として用いられることはあっても、20.0質量%〜30質量%含む過共晶アルミニウム−シリコン合金のダイカスト部材は、実用材としては、ほとんど存在していなかった。
このことは、特許文献1に、シリコンを5〜16%含む高熱伝導性の加圧鋳造(ダイカスト)用合金が開示されており、Si量が15%程度で流動性が最大になり、16%以上になると鋳造性が低下すると記述されていることでわかる。
シリコン含有量が20.0質量%より低い領域については、例えば、特許文献2に、シリコン含有量が14〜17重量%のアルミニウム−シリコン合金より成る耐摩耗性部材を得るため、溶湯をスリーブ内に注湯し、この溶湯を初晶Siの晶出温度と共晶温度との間の温度範囲で保持した後、射出成形してダイカスト部材を得る方法が開示されている。
また、シリコン含有量が20.0質量%〜30.0質量%に近い領域においては、例えば、特許文献3には、大きな初晶Siを晶出させて防振性を付与するために、シリコンを20〜33%含むアルミニウム−シリコン合金の溶湯を当該合金の液相線温度よりも低い温度に、例えば、1時間と比較的長い時間保持して、溶湯が多量の晶出したシリコンを含む状態でダイカストを行う方法が開示されている。
さらに、シリコン含有量が30%より高い領域については、特許文献4に、シリコンを37%、残部がアルミニウムの割合で配合し、Ar雰囲気中で高周波溶解にて溶融した980℃のアルミニウム−シリコン合金の溶湯を、ダイカスト金型中に注入し、920℃×3秒、15MPaで圧縮成形するダイカスト法による放熱部材の製造方法が開示されている。
特開2001−316748号 特開平11−226723号 特開昭58−16038号 特開2001−288526号
シリコン含有量が20.0質量%〜30.0質量%の範囲内の過共晶アルミニウム−シリコン合金は上述のように優れた特性を有するために、CPU等の半導体素子のヒートスプレッダ、IGBT等の半導体素子を配置する電子基板のベースプレートおよびLED等の発光素子用のヒートシンクおよびランプハウスを含む諸々の用途で用いることができる。
そして、これらの用途の多くが、その厚さが2.5mm以下(好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下)という薄い部材での使用となる。
しかし、過共晶アルミウム−シリコン合金の中でもシリコン含有量が20.0質量%〜30.0質量%と多くなると、初晶Siが容易に粗大化することから、シリコン含有量がより低い過共晶アルミニウム−シリコン合金と比べてよりダイカスト成形が困難となり厚さが2mm以下のダイカスト部材を得ることが極めて困難となる。実際には、厚さ2mm以下はもちろん、厚さ2.5mm以下のダイガスト部材を得ることも極めて困難であった。
特許文献1にも示されるようにシリコン量が16質量%を超えると成形性が低下すると考えられており、特許文献2のようにシリコン量がせいぜい17%のものしかできていない。特許文献2の方法では、シリコン量が17%のものであっても、得られるダイカスト部材の実用性が低下するという問題がある。すなわち、喩えダイカスト部材を得られても割れまたは湯皺のような表面欠陥が高い比率で発生し工業的に使用できない場合が多い。
また、特許文献3に記載の方法は、もともと防振性に優れたダイカスト部材を得ることを目的としており、このために初晶Siを例えば長さ200μm〜1000μm程度あるいはそれ以上と粗大化させることを目的としている。そして、この粗大化した初晶Siは、鋳造性(ダイカスト成形性)を低下させることから、厚さが2mm以下はもちろん、厚さ2.5mm以下のダイカスト部材を得ることは、極めて困難である。
さらに、特許文献4に記載の方法は、高温(980℃)のアルミニウム−シリコン合金溶湯を必要とするために高周波溶解を用いており、高温下での酸化を防止するためにAr雰囲気中で溶融するための特別な装置を必要とする。このため設備コストや加熱のためのエネルギーコストがかかる。また、920℃の高温で射出するため、ダイカスト金型への熱負荷が高く、金型寿命が短くなり、その結果、製造コストが高くなる。
そこで、本願発明は、シリコンを20.0質量%〜30.0質量%含有し、かつ厚さが2.5mm以下(好ましくは2.0mm以下)である過共晶アルミニウム−シリコン合金ダイカスト部材を提供することを目的とする。また、サーボ装置や射出の位置・速度・昇圧のマイコン制御装置のような特別高価な装置を用いなくても、また生産性の悪くなる工程を要さずとも、従来のダイカスト装置を用いてシリコンを20.0質量%〜30.0質量%含有し、かつ厚さが2.5mm以下(好ましくは2.0mm以下)である過共晶アルミニウム−シリコン合金ダイカスト部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本願発明の態様1は、20.0質量%〜30.0質量%のシリコンを含有する過共晶アルミニウム−シリコン合金より成り、厚さが2.5mm以下で、初晶Siの大きさが0.04mm〜0.20mmであることを特徴とするダイカスト部材である。
本願発明の態様2は、前記ダイガスト部材の表面積Sおよび厚さTmが以下の関係を満足することを特徴とする態様1に記載のダイガスト部材である。
S≦50cmの場合、Tm≦0.8mm
50cm<S≦200cmの場合、Tm≦1.2mm
200cm<S≦1000cmの場合、Tm≦2.1mm
1000cm<Sの場合、Tm≦2.5mm
本願発明の態様3は、表面積が50cmより大きく且つ200cm以下であり、厚さが1.2mm以下であることを特徴とする態様1に記載のダイガスト部材である。
本願発明の態様4は、表面積が50cm以下であり、厚さが0.8mm以下であることを特徴とする態様1に記載のダイガスト部材である。
本願発明の態様5は、前記過共晶アルミニウム−シリコン合金が、アルミニウムとシリコンと不可避的不純物から成ることを特徴とする態様1〜4のいずれかに記載のダイカスト部材である。
本願発明の態様6は、前記過共晶アルミニウム−シリコン合金が、アルミウム(Al):60.0質量%以上と、シリコン(Si)と、銅(Cu):0.5質量%〜1.5質量%、マグネシウム(Mg):0.5質量%〜4.0質量%、ニッケル(Ni):0.5質量%〜1.5質量%、亜鉛(Zn):0.2質量%以下、鉄(Fe):0.8質量%以下、マンガン(Mn):2.0質量%以下、ベリリウム(Be):0.001質量%〜0.01質量%、リン(P):0.005質量%〜0.03質量%、ナトリウム(Na):0.001質量%〜0.01質量%およびストロンチウム(Sr):0.005質量%〜0.03質量%から成る群から選択される1つ以上と、を含んで成ることを特徴とする態様1〜4のいずれかに記載のダイカスト部材である。
本願発明の態様7は、 1)20.0質量%〜30.0質量%のシリコンを含有する過共晶アルミニウム−シリコン合金であり該合金の液相線温度よりも高い温度となっている溶湯を準備し、該溶湯をスリーブ内に供給する工程と、2)前記スリーブ内の前記溶湯が、前記過共晶アルミニウム−シリコン合金の液相線温度と共晶温度との間の予め設定した射出開始温度に達すると直ちに前記スリーブ内に挿入したプランジャーを移動させて、半凝固状態の前記溶湯を射出し、金型のキャビティに該溶湯を充填する工程と、を含むことを特徴とするダイカスト部材の製造方法である。
本願発明の態様8は、前記工程2)の前記射出開始温度が、下記(1)式で表される下限温度TLと前記過共晶アルミニウム−シリコン合金の液相線温度との間にあることを特徴とする態様7に記載の製造方法である。

TL(℃)=−0.46×[Si]+25.3×[Si]+255 (1)
(ここで、[Si]は過共晶アルミニウム−シリコン合金の質量%で表したシリコン含有量である。)
本願発明の態様9は、前記工程2)の前記射出開始温度が、下記(2)式で表される下限温度TLと前記過共晶アルミニウム−シリコン合金の液相線温度との間にあることを特徴とする態様7に記載の製造方法である。

TL(℃)=−6×[Si]+800 (2)
(ここで、[Si]は過共晶アルミニウム−シリコン合金の質量%で表したシリコン含有量である。)
本願発明の態様10は、前記工程1)において、前記スリーブ内に供給する前記溶湯の温度が、50℃以内の差で前記過共晶アルミニウム−シリコン合金の前記液相線温度より高いことを特徴とする態様7、8または9に記載の製造方法である。
本願発明の態様11は、前記工程1において、前記溶湯を前記スリーブの外側に設けた冷却板の上を流動させて液相線温度以下の温度に冷却した後、該スリーブに供給することを特徴とする態様7〜10のいずれかに記載の製造方法である。
本願発明の態様12は、前記過共晶アルミニウム−シリコン合金が、アルミニウムとシリコンと不可避的不純物から成ることを特徴とする態様7〜11のいずれかに記載の製造方法である。
本願発明の態様13は、前記過共晶アルミニウム−シリコン合金が、アルミウム(Al):60.0質量%以上と、シリコン(Si)と、銅(Cu):0.5質量%〜1.5質量%、マグネシウム(Mg):0.5質量%〜4.0質量%、ニッケル(Ni):0.5質量%〜1.5質量%、亜鉛(Zn):0.2質量%以下、鉄(Fe):0.8質量%以下、マンガン(Mn):2.0質量%以下、ベリリウム(Be):0.001質量%〜0.01質量%、リン(P):0.005質量%〜0.03質量%、ナトリウム(Na):0.001質量%〜0.01質量%およびストロンチウム(Sr):0.005質量%〜0.03質量%から成る群から選択される1つ以上と、を含んで成ることを特徴とする態様7〜10のいずれかに記載の製造方法である。
本願発明により、シリコンを20質量%〜30質量%含有し、かつ厚さが2.5mm以下(好ましくは2.0mm以下)である過共晶アルミニウム−シリコン合金ダイカスト部材を提供することが可能となる。また、シリコンを20質量%〜30質量%含有し、かつ厚さが2.0mm以下である過共晶アルミニウム−シリコン合金ダイカスト部材の製造方法を提供することも可能となる。
図1は、本願発明に係るダイカスト部材の製造に用いるダイカスト装置(ダイカストマシン)100を模式的に示す概略断面図であり、図1(a)は金型6に溶湯が充填される前の状態を示し、図1(b)は、金型6に溶湯10が充填された状態を示す。 図2は、本願発明に係る製造方法の実施形態2に用いるダイカスト装置100Aを模式的に示す概略断面図である。 図3は、冷却装置22内部の溶湯の流れを模式的に示す上面図であり、図3(a)は、好ましい形態を示し、図3(b)は、一般的な形態を示す。 図4は、射出開始温度およびシリコン含有量とダイカスト成形性の関係を示すグラフである。 図5は、表面観察したダイカスト部材の例を示す写真であり、図5(a)に実施例1−12の写真を示し、図5(b)に比較例1−1の写真を示す。 図6は、光学顕微鏡観察結果の例であり、図6(a)は実施例1−12の光学顕微鏡観察結果であり、図6(b)は比較例1−2の光学顕微鏡観察結果である。 図7は、得られたダイカスト部材(実施例1−12)の外観を例示する写真である。 図8(a)、(b)は得られたフィン形状のダイカスト部材(実施例2−2)の外観を例示する写真である。 図9は実施例2−2の光学顕微鏡観察結果である。 図10は、比較例2−1のサンプルの表面観察結果の例を示す。
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一の部分又は部材を示す。
本願発明者らは鋭意検討した結果、20.0質量%〜30.0質量%のシリコンを含有する過共晶アルミニウム−シリコン合金の溶湯をダイカスト装置のスリーブ内に供給した後、当該溶湯が、過共晶アルミニウム−シリコン合金の液相線温度と共晶温度との間に予め設定した射出開始温度に達すると直ちに、スリーブ内に挿入したプランジャーを移動させて、半凝固状態の前記溶湯を金型のキャビティに充填することにより厚さが2.5mm以下のダイカスト部材、さらには厚さが2.0mm以下および1.0mm以下のダイカスト部材を得ることができることを見出した。
本願発明者らは鋭意検討した結果、20.0質量%〜30.0質量%のシリコンを含有する過共晶アルミニウム−シリコン合金の溶湯をダイカスト装置のスリーブ内に供給した後、当該溶湯が、過共晶アルミニウム−シリコン合金の液相線温度と共晶温度との間に予め設定した射出開始温度に達すると直ちに、スリーブ内に挿入したプランジャーを移動させて、半凝固状態の前記溶湯を金型のキャビティに充填することにより厚さが2.5mm以下のダイカスト部材、さらには厚さが2.0mm以下または1.0mm以下のダイカスト部材を得ることができることを見出した。
すなわち、本願発明は、所謂、半凝固ダイカスト法を、20.0質量%〜30.0質量%のシリコンを含有する過共晶アルミニウム−シリコン合金に適用したものであり、その際に所定の射出開始温度に達すると直ちにダイカスト(金型のキャビティ)への充填を開始することを特徴とする。このようなダイカスト法を用いることで、初晶Siの粗大化が抑制されて、高い鋳造性(ダイカスト成形性)が得られ、割れや湯皺等の問題となる表面欠陥を有することなく厚さ2.5mm以下(さらには、厚さ2.0mm以下または厚さ1.0mm以下)のダイカスト部材が得られることを本願発明者らが初めて見出したものである。
本願発明の製造方法により、厚さ2.5mm(好ましくは2.0mm以下)でかつ20.0質量%〜30.0質量%のシリコンを含有する過共晶アルミニウム−シリコン合金のダイカスト部材が得られる理由は、未だ完全には解明されていない。
現在までに得られている知見に基づいて本願発明者らが推定するメカニズムは以下の通りである。ただし、以下に述べるメカニズムは、本願発明の技術的範囲を制限することを目的とするものではないことに留意されたい。
多くの場合、ダイカスト法は、用いる合金の液相線温度以上の温度の溶湯が金型のキャビティに充填される。すなわち、過共晶アルミニウム−シリコン合金においては、初晶Siが晶出していない状態の溶湯が金型のキャビティに充填される。この場合、溶湯の温度が高いこともあり、溶湯が部分的に金型に融着する等により、得られるダイカスト部材の表面に焼け付き、ガスの巻き込みによるフクレ、湯皺等の表面欠陥が生じやすい。
一方、半凝固ダイカスト法を適用しても、従来の半凝固ダイカスト法では半凝固状態で比較的長い時間保持することから、20質量%以上のシリコンを含有していると、容易に初晶Siが成長し粗大化してしまう。粗大化した初晶Siが存在すると溶湯の流動性が低下し、金型への未充満(金型のキャビティの一部が溶湯で満たされないこと)を起こしやすい。この傾向は得ようとするダイカスト部材の厚さが薄いほど、すなわち金型のキャビティのギャップ(または幅)が狭いほど顕著となる。また、初晶Siが粗大化すると割れの起点となる場合がる。
これに対して、本願発明に係る製造方法では、上述のように半凝固状態において、所定の充填温度に達すると直ちに金型のキャビティへの充填を開始するため、形成される初晶Siが微細となる。このため、溶湯の流動性が保たれるので、金型に充満する前に凝固して未充満になることなく、厚さ2.0mm以下(さらには、厚さ1.0mm以下)の金型でも溶湯を充填させることができる。そして、20.0質量%〜30.0質量%とシリコン含有量が多いため、微細な初晶Siが多く晶出することとなる。このように微細な初晶Siを多く含む溶湯(半凝固状態の溶湯)は、金型との部分的な融着が生じにくく、また割れの発生も少ないため、鋳造性に優れ、表面欠陥の極めて少ないダイカスト部材が得られる。
このように、微細な初晶Siが多く晶出すると割れおよび金型との融着が発生しない理由は、以下のように考えられる。割れについては、初晶Siが微細なため、粗大化した初晶Siのように割れの起点となることがほとんどない。一方、融着については、半凝固状態であることから、全てが液相である状態と比べて温度が低いことに加え、微細な初晶Siが溶湯の離型材として作用し、溶湯を金型との融着を抑制していると考えられる。
以下に本願発明に係るダイカスト部材の製造方法および当該製造方法により得られるダイカスト部材について詳述する。
1.ダイカスト部材の製造方法
(1)実施形態1
図1は、本願発明に係るダイカスト部材の製造に用いるダイカスト装置(ダイカストマシン)100を模式的に示す概略断面図であり、図1(a)は金型6に溶湯が充填される前の状態を示し、図1(b)は、金型6に溶湯10が充填された状態を示す。
ダイカスト装置100は、本願発明の製造方法を実施できる装置の例として示すものであって、本願発明に用いることができるダイカスト装置はこれに限定されるものではない。以下に詳細を示す本願発明の製造方法を実施できる限り、既存の任意の構成のダイカストマシンを用いてよい。
ダイカスト装置100は、内部の空洞にラドル20から供給された溶湯10を収納可能なスリープ2と、スリーブ2の空洞内を移動し、スリーブ2内部の溶湯10を加圧してスリーブ2外に射出(排出)するプランジャー(射出部)4と、スリーブ2から排出された溶湯10が充填される金型6を有する。
金型6は、得ようとする製品の形状のキャビティを形成している。本願発明においては、金型6内に形成されたキャビティに溶湯を充填後、溶湯が凝固して得られるダイカスト部材の厚さが2.5mm以下(好ましい実施形態の1つにおいては2.0mm以下)となるように金型6が構成されている。
図1(a)、(b)に示す実施形態では、金型6により形成されるキャビティは、図1(a)の上方向に向けて拡がるメガホン型形状となっているが、言うまでもなく、得られるダイカスト部材の厚さが2.5mm以下の部分を含む限り任意の形状であってよい。
図1(a)、(b)に示す、ダイカスト装置100は、スリーブを溶湯内に浸漬せずにラドル等を用いてその内部に溶湯を供給する、コールドチャンバータイプのダイカストマシンである。本願発明において、スリーブを溶湯内に配置した状態でその内部に溶湯を供給するホットチャンバー方式を用いてよい。しかし、詳細を後述するように、本願発明においては、スリーブ2内で溶湯を予め定めた射出開始温度まで冷却することから、溶湯を容易に冷却できるコールドチャンバータイプを用いることが好ましい。
次に、ダイカスト装置100を用いた実施形態1の製造方法を説明する。
ラドル20から、シリコンを20質量%〜30質量%含む過共晶アルミニウム−シリコン合金の溶湯10をスリーブ2の内部に供給する。
ラドル20から、スリーブ2に供給される溶湯10の温度(スリーブ2に入る際の溶湯の温度)は、溶湯10を構成する過共晶アルミニウム−シリコン合金の液相線温度よりも高い温度である。ラドル20内において液相線温度以下の温度(半凝固状態)で長い時間保持されると、初晶Siが晶出し、成長して粗大化してしまう。従って、本実施形態ではこれを避けるために、溶湯10が、スリーブ2に入るまでは初晶Siを実質的に晶出させないようにしている。
詳細を後述するように本実施形態では、溶湯10は実質的にスリーブ2の中に入ってから初めて初晶Siを晶出し、晶出開始後迅速に溶湯10を金型6に充填することで、微細な初晶Siを得ることにより高い鋳造性得ている(すなわち、薄いダイカスト製品を得る)からである。
スリーブ2に供給される溶湯10の温度は、好ましくは、50℃以内の差で液相線温度よりも高くなっている(液相線温度+50℃以下の温度である。)溶湯10の温度が高くなると、より多くの熱量がスリーブ2に供給され、溶湯10を射出開始温度まで冷却する速度が遅くなるからである。さらに、熱によるスリーブ2の損傷を抑制でき、溶解および溶湯保持のエネルギーを低く抑えることができる効果も有する。
スリーブ2に供給される溶湯10の温度は、より好ましくは、20℃以上50以下の差で液相線温度より高くなっている(液相線温度+20℃〜液相線温度+50℃である。)。スリーブ2に供給される溶湯10の温度を液相線温度より20℃以上高くすることで、より確実に、スリーブ2に入る前に溶湯10に初晶Siが形成されるのを防止できるからである。また、溶湯温度を液相線温度+20℃未満のある温度で保つことは、溶湯温度の変動で溶湯が凝固してしまう場合がある。
なお、本明細書において液相線温度とは、溶湯10の組成(得られるダイカスト部材の組成に実質的に同じ)において全体が液相になる温度を意味し、通常、平衡状態図において溶湯10の成分を用いて求めることができる。例えば、溶湯10が、アルミニウムとシリコンと不可避的不純物とから成る場合は、Al−Si平衡状態図より求めることができる。
一方、溶湯10がアルミニウムとシリコン以外に意図的に添加した元素を含む場合は、それら添加元素も含む多元系平衡状態図によりまたは実測により液相線温度を求めることができる。しかし、多元系状態図は成分系等により入手が困難な場合もあり、また液相線温度を実測するための測定精度を確保するのが困難な場合があることから、アルミニウムの量が60質量%以上であれば(従って、溶湯10がアルミニウム:60質量%以上とシリコン:20質量%〜30質量%とを含む場合)、Al−Si平衡状態図を用いて液相線温度を決定してよい。
これは、共晶温度についても同じである。すなわち、共晶温度は、溶湯10の成分系に応じた平衡状態図を用いて求めることができる。例えば、溶湯10が、アルミニウムとシリコンと不可避的不純物とから成る場合は、Al−Si平衡状態図より求めた値(577℃)を用いることができる。
一方、溶湯10がアルミニウムとシリコン以外に意図的に添加した元素を含む場合は、それら添加元素も含む多元系平衡状態図によりまたは実測により共晶温度を求めることができる。しかし、多元系状態図は成分系等により入手が困難な場合があり、また共晶温度の測定精度を確保することが困難な場合があることから、アルミニウムの量が60質量%以上であれば(従って、溶湯10がアルミニウム:60質量%以上とシリコン:20質量%〜30質量%とを含む場合)、Al−Si平衡状態図を用いて共晶温度(577℃)を決定してよい。
金型6のキャビティを充填するのに十分な量の溶湯10をスリーブ2の内部に供給した後、溶湯が共晶温度と液相線温度の間(すなわち、溶湯10が半凝固状態である温度域)に予め定めた射出開始温度に達すると直ちにプランジャー4を図1(a)の右方向から左方向に移動させて、溶湯10を射出し、図1(b)に示すように金型6に形成されたキャビティに溶湯10を充填する。
ここで、射出開始温度は、共晶温度と液相線温度の間の任意の温度であってよい。この射出開始温度を変更することにより、金型6のキャビティ内に射出(充填)する溶湯10内に晶出している初晶Siの量を調整できる。すなわち、射出開始温度を高くすると、初晶Siの量が少なくなり(従って、液相の量が多くなり)、射出開始温度を低くすると、初晶Siの量が多くなる(従って、液相の量が少なくなる)。
好ましくは、射出温度は以下の(1)式で示される下限温度TLと液相線温度との間にある。

TL(℃)=−0.46×[Si]+25.3×[Si]+255 (1)
ここで、[Si]は溶湯10(すなわち、過共晶アルミニウム−シリコン合金)の質量%で表したシリコン含有量である。
この(1)式は、後述する実施例に詳細を示すように、実験的に求めたものであり(図4参照)、下限温度TL以上の温度(上限は液相線温度)であれば、金型に充満しないという問題を抑制できる。
一方、射出開始温度が、共晶温度以上で下限温度TL未満の場合は、金型の形状や厚み等の条件により未充満が発生する場合がある。
さらに好ましくは、射出開始温度は以下の(2)式で示される下限温度TLと液相線温度との間にある。

TL(℃)=−6×[Si]+800 (2)
ここで、[Si]は溶湯10(すなわち、過共晶アルミニウム−シリコン合金)の質量%で表したシリコン含有量である。
この(2)式は、後述する実施例に詳細を示すように、実験的に求めたものであり(図4参照)、下限温度TL以上の温度(上限は液相線温度)であれば、得られたダイカスト部材の表面に割れや湯皺といった問題となる表面欠陥はもとより、多くの用途で問題とならないレベルの微細な肌荒れの発生も抑制できる。
一方、射出開始温度が、共晶温度以上で下限温度TL未満の場合は、多くの用途で問題となることはないレベルの微細な肌荒れが生ずる場合がある。
なお、(2)式から判るように下限温度TLは、シリコン含有量が増加するほど低くなる。これは、シリコンがアルミニウムに対して凝固潜熱が大きく(シリコン:833kJ/mol、アルミニウム:293kJ/mol)、シリコン量が増えるほどシリコンが晶出するときに放出される凝固潜熱が多くなるため、射出温度が低くても急激に凝固しないためと考えられる。
スリーブ2内の溶湯10の温度は、例えば、熱電対等の接触式温度計または非接触式温度計で測定してもよい。また、これらの温度測定手段を用いて、スリーブ内の溶湯の冷却速度(溶湯温度の時間経過)を予め測定しておき、これを用いて時間管理を行うことでスリーブ内の溶湯の温度を求めてもよい。
本願発明に係る製造方法では、射出開始温度に達したら直ちにプランジャー4を起動し、溶湯10の射出を開始する。これにより、晶出した初晶Siが成長し粗大化して鋳造性が低下するのを防止できる。
なお、ここでいう「直ちに」とは、溶湯10の温度が射出開始温度に達したことを確認した後、意図的に遅延させることなく、プランジャー4を起動することを意味する。
これにより、図1(b)に示すように、金型6のキャビティには、半凝固状態の溶湯10が充填される。金型6は、溶湯10が充填される前は常温におかれ、溶湯10の充填中はヒーター等により加熱されないことが好ましい。半凝固状態の溶湯10の冷却が遅れ、初晶Siが粗大化するのを抑制するためである。このため、金型6は、必要に応じて、例えば外周を水冷する等の方法により冷却されてもよい。
また、以上に説明した以外のダイカスト鋳造条件について、射出速度は、0.1m/s以上であることが好ましく、より好ましくは、0.2m/s以上である。ダイカスト装置の一般的な溶湯ダイカスト射出速度より低速、例えば1.0m/s程度の速度であっても、良好な流動性のため未充満を起こさずに厚さ1.0mm以下のダイカスト部材を得ることができる。
以上に説明した方法を用いることにより、20.0質量%〜30.0質量%のシリコンを含有する過共晶アルミニウム−シリコン合金より成り、厚さが2.5mm以下であるダイカスト部材が得られる。そして、厚さ2.5mm以下といっても実際には、例えば2.1mm以下、1.2mm以下または0.8mm以下といったより薄いダイガスト部材を得ることができる。
実際にどの程度まで薄いダイカスト材を確実に得ることができるかは、得ようとするダイカスト部材の面積に依存することが知られている。すなわち、Leivyは、アルミニウム合金において、ダイカスト部材の単一平面の面積が、小さいほどより薄いダイカスト部材を得ることを示している。
そこで、本願発明者らは、本発明に係る方法を用いることにより、20.0質量%〜30.0質量%のシリコンを含有する過共晶アルミニウム−シリコン合金より成るダイカスト部材において、面積と、得ることができる厚さとの関係について検討した。
Leivyは、面積として上述のように単一平面の面積を用いたが、本願発明者らは曲面を有する場合および複雑な形状を有する場合にも対応できるように、ダイカスト部材の表面積:Sと安定して得ることができる厚さ:Tmとの関係を検討し、以下の関係を得た。

Sが50cm以下の場合:Tmは0.8mm以下
(S≦50cm以下の場合、Tm≦0.8mm (I))

Sが50cmより大きく200cm以下の場合:Tmは0.8mm以下
(50cm<S≦200cm以下の場合、Tm≦1.2mm (II))

Sが200cmより大きく1000cm以下の場合:Tmは2.1mm以下
(200cm<S≦1000cm以下の場合、Tm≦2.1mm (III))

Sが1000cmより大きい場合:Tmは2.5mm以下
(1000cm<Sの場合、Tm≦2.5mm (IV))
なお、表面積Sは、厚さTmのダイカスト部材を安定して言えることができる面積を意味するのであり、表面積Sよりも大きくかつ厚さTmを有するダイカスト部材を得ることが不可能であるという意味では無いことに留意されたい。
表面積Sは、ダイカスト部材のうち、実際に製品として用いる製品部分の表面積をいう。例えば、ダイカスト後除去する予定の湯道等は含まない。
また、1つの部材の中に比較的近い距離(例えば7mm以下以内)で複数の厚さの薄い部分を有する場合(例えば、薄い部分(厚さが上記の式(I)〜(IV)の少なくとも1つが規定するTmの範囲内の部分)同士をより厚い部分で接続する場合)、この薄い部分の表面積を合計して、その部分の当該厚さTmに対応する表面積Sとしてよい。
(2)実施形態2
図2は、本願発明に係る製造方法の実施形態2に用いるダイカスト装置100Aを模式的に示す概略断面図である。図3は、冷却装置22内部の溶湯の流れを模式的に示す上面図であり、図3(a)は、好ましい形態を示し、図3(b)は、一般的な形態を示す。
ダイガスト装置100Aが、上述したダイカスト100と異なると点は、スリーブ2の内部に溶湯10を供給する溶湯注入口に冷却装置22が設けられていることである。
これ以外の構成は、ダイガスト装置100と同じであってよい。
冷却装置22は、ラドル20から排出された液相線温度より高い温度の溶湯10を液相線温度以下でかつ射出開始温度よりも高い温度まで冷却して、この冷却した溶湯10をスリーブ2の内部に供給する。
冷却装置22は、溶融金属の冷却に用いる任意の形態の冷却装置を用いてよい。しかし、液相線温度以下の所定の温度まで冷却するのに長い時間を要すると晶出した初晶Siが粗大化してしまう。このため、好ましくは、冷却装置22は、ラドル20をから供給された溶湯10を所定の液相線温度以下の温度(スリーブ2に供給する温度)まで冷却するのに要する時間が5秒以内である。
この好適に冷却条件を満足するために、図2の実施形態では、冷却装置22は、例えば鋼等の金属により形成されたメガホン型形状(図2において下から上方向に拡がるメガホン型形状)の冷却板である。上面の上端部近傍(メガホン型形状の内面の上端側)にラドル20から溶湯10を供給し、溶湯10が冷却板と接触しながら流動する間に冷却され、上面の中心部(メガホン型形状の内面下端側)よりスリーブ2の内部に溶湯10が供給される。
このように、溶湯10を急速に液相線温度以下の温度に冷却してからスリーブ2に供給するため、スリーブ2の内部で液相線温度以上の温度から射出開始温度まで冷却する場合と比べて、より早く溶湯10は射出開始温度に到達する。このため、晶出する初晶Siがより微細となり、より高い鋳造性(ダイカスト成形性)を得ることができる。
なお、メガホン型形状の冷却板上で溶湯を冷却する場合、一般的には図3(b)に示すように、溶湯10の流路30Bが直線上になるように溶湯を流動させることが多い。しかし、メガホン型形状の冷却板上で、より効率的に溶湯10を冷却するために、図3(a)に示すように溶湯10の流路30Aが螺旋状となるように溶湯10を流動させることが好ましい。注湯方向を中心からずらすこと(例えば、注湯方向を円周方向とする)により溶湯10の流路30Aを螺旋状とすることができる。
また冷却装置(冷却板)22の高い冷却能を維持するために、冷却面の下面を例えば、水冷または空冷等により冷却することが好ましい。
2.ダイカスト部材
このような、本願発明に係る方法で形成した、厚さ2.5mm以下(好ましくは2.0mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下)のダイカスト部材は、微細な初晶Siを有する。
より詳細には、多くの場合、初晶Siは、スリーブ内に注湯する前に半凝固処理を行った従来の方法の場合は板状であり、その平均寸法は1mm程度である。これに対し、本願発明では初晶Siの形状は塊状またはロゼット状であり、その平均寸法は、0.04mm〜0.20mmであり、より好ましくは0.06mm〜0.10mmである。
初晶Siの平均の大きさ(平均寸法)の測定は、ダイカスト部材の異なる3ヶ所(射出側に近い根元部、中央部および先端寄り部)において、湯流れ方向に直行する方向で切り出し、当該3ヶ所それぞれの断面の任意の箇所につき、光学顕微鏡の倍率を変えて1mm×0.7mmの視野サイズにて撮影し、完全な形状の初晶Siが30個入るように枠取りして、この30個の寸法を測定して平均寸法を求め、さらに上記3ヵ所の平均を取って初晶Siの平均寸法を求める。なお、初晶Siの寸法は、結晶の最大径(最大長さ)を測定する。
3.合金組成
以下に、本願発明に用いる溶湯10の合金組成(すなわち、得られるダイカスト部材の合金組成)についてより詳細を説明する。
本願発明に過共晶アルミニウム−シリコン合金は、シリコン:20.0〜30.0質量%を含有する。
シリコン含有量が20質量%以上なのは、上述したように十分な量の初晶Siを得られること等により、線熱膨張係数がより小さくなり銅と同程度となり、耐摩耗性が大きく向上し、さらには高い熱伝導率を有することができるからである。一方、Si量が30.0質量%を超えると容易に初晶Siの粗大化が起こり十分な鋳造性を得ることが困難な場合が多い。
好ましい実施形態の1つにおいては、本願発明の過共晶アルミニウム−シリコン合金はシリコン:20.0〜30.0質量%を含み残部がアルミニウムと不可避の不純物からなる。
しかし、これに限定されるものではなく、シリコン:20.0〜30.0質量%とアルミニウム60質量%とを含有している限りは、得られたダイカスト部材の各種の特性の向上を目的に、さらに任意の元素を添加してよい。
このように特性の向上を目的として添加してよい元素の例を以下に示す。
・銅(Cu)
銅(Cu)を0.5〜1.5質量%含有してよい。
銅は、得られたダイカスト部材の強度を向上させる効果を有する。
添加する場合、添加量が0.5質量%より少ないとその効果を充分に得られない場合がある。一方、1.5質量%を超えて添加すると延性を低下させる等の問題を生ずる場合がある。
・マグネシウム(Mg)
マグネシウム(Mg)を0.5〜4.0質量%含有してよい。
マグネシウムは、得られたダイカスト部材の強度を向上させることができる。また、伸びが向上することからダイカスト成形性を向上できる。マトリクスの強化により得られたダイカスト成形品の表面状態も美麗になる。これらの効果をより確実に得るためには、0.5質量%以上含有するのが好ましい。しかし、4.0質量%を超えて添加すると得られたダイカスト部材の靱性を低下させる場合がある。
・ニッケル(Ni)
ニッケル(Ni)を0.5〜1.5質量%含有してよい。ニッケルは、得られたダイカスト部材の強度を向上させる効果を有する。
添加する場合、添加量が0.5質量%より少ないとその効果を充分に得られない場合がある。一方、1.5質量%を超えて添加すると延性を低下させる等の問題を生ずる場合がある。
・亜鉛(Zn)
亜鉛を0.2質量%以下含有してよい。
亜鉛は、溶湯の流動性を改善するという効果を有する。一方、亜鉛の量が0.2質量%を超えると耐食性が劣化する場合がある。
・鉄(Fe)
鉄(Fe)を0.8質量%以下含有してよい。
鉄は、得られたダイカスト部材の耐摩耗性を向上させる効果を有する。
0.8質量%を超えると材料の延性を低下させる場合がある。
・マンガン(Mn)
マンガン(Mn)を2.0質量%以下含有してよい。
マンガンを過共晶アルミニウム−シリコン合金に添加すると、合金が鋳造時および塑性加工の加熱時等に高温となった場合に、表面の酸化を抑制する効果を有する。
添加する場合、その効果を確実に得るために0.05質量%以上添加することが好ましい。2.0質量%を超えて添加すると延性を低下させる等の問題を生ずる場合がある。
・ベリリウム(Be)
ベリリウム(Be)を0.001〜0.01質量%含有してよい。
ベリリウムは晶出する初晶Siを微細化する効果を有する。
しかしながら0.001%未満ではその効果が小さく、0.01%を超えると、得られたダイカスト部材の靭性が低下する場合があるため、0.001〜0.01%の範囲が好ましい。
・リン(P)
リン(P)を0.005〜0.03質量%含有してよい。リンは初晶Siを晶出させる際にシードとして機能する異質核AlP(リン化アルミニウム)を生成する。0.005質量%未満の含有量では、十分な量の異質核が生成せず、初晶Siの微細化作用が充分でない場合がある。一方、リンの添加効果は、0.03重量%で飽和するため、0.03重量%を超える量を添加しても添加量に見合った効果が得られないことが多い。
・ナトリウム(Na)
ナトリウム(Na)を0.001〜0.01質量%含有してよい。
ナトリウムは、初晶Siの微細化という効果を有する。ナトリウムの含有量が0.001質量%未満ではその効果を十分に得ることができない場合がある。一方、ナトリウムの量が0.01質量%を超えると粗大Si相が形成される場合がある。
・ストロンチウム(Sr)
ストロンチウム(Sr)を0.0005〜0.03質量%含有してよい。
ストロンチウムは、初晶Siの微細化という効果を有する。ストロンチウムの含有量が0.0005質量%未満ではその効果を十分に得ることができない場合がある。一方、ストロンチウムの量が0.03質量%を超えるとSrを含有する化合物が塊状に生成する場合がある。
好ましい実施形態の1つにおいては、シリコン:20.0〜30.0質量%と銅(Cu):0.5質量%〜1.5質量%、マグネシウム(Mg):0.5質量%〜4.0質量%、ニッケル(Ni):0.5質量%〜1.5質量%、亜鉛(Zn):0.2質量%以下、鉄(Fe):0.8質量%以下、マンガン(Mn):2.0質量%以下、ベリリウム(Be):0.001質量%〜0.01質量%、リン(P):0.005質量%〜0.03質量%、ナトリウム(Na):0.001質量%〜0.01質量%およびストロンチウム(Sr):0.005質量%〜0.03質量%から成る群から選択される1つ以上と、を含有し、残部がアルミニウムと不可避の不純物からなる。
しかし、これに限定されるものではなく、シリコン:20.0〜30.0質量%と、アルミニウム:60質量%以上とを含有し、さらに、銅(Cu):0.5質量%〜1.5質量%、マグネシウム(Mg):0.5質量%〜4.0質量%、ニッケル(Ni):0.5質量%〜1.5質量%、亜鉛(Zn):0.2質量%以下、鉄(Fe):0.8質量%以下、マンガン(Mn):2.0質量%以下、ベリリウム(Be):0.001質量%〜0.01質量%、リン(P):0.005質量%〜0.03質量%、ナトリウム(Na):0.001質量%〜0.01質量%およびストロンチウム(Sr):0.005質量%〜0.03質量%から成る群から選択される1つ以上と含有している限りは、得られた成形品の各種の特性の向上を目的に更に任意の元素を添加してよい。
<実施例1>
1.サンプル作製
シリコンを20.0質量%含み残部がアルミニウムと不可避的不純物とから成る合金1と、シリコンを25.0質量%含み残部がアルミニウムと不可避的不純物とから成る合金2と、シリコンを30.0質量%含み残部がアルミニウムと不可避的不純物とから成る合金3の3つの合金組成を用いた。
合金1:Si20.17質量%、Fe0.21質量%、Cu0.01質量%、Mn0.02質量%、Mg0.02質量、Cr0.01質量、Zn0.02質量、Ti0.02質量%、Ni0.03質量%。
合金2:Si25.24%質量、Fe0.19質量%、Cu0.00質量%、Mn0.03質量%、Mg0.03質量%、Cr0.03質量%、Zn0.03質量%、Ti0.03質量%、Ni0.03質量%。
合金3:Si30.35質量%、Fe0.23質量%、Cu0.00質量%、Mn0.02質量%、Mg0.01質量%、Cr0.01質量%、Zn0.03質量%、Ti0.02質量%、Ni0.01質量%。
なお、合金1、合金2および合金3の状態図より求めた液相線温度はそれぞれ690℃、760℃および828℃である。
そして図1に示すダイカスト装置100(株式会社ケーデーケーマシン製 KDK 50C−30 コールドチャンバー)を用いて表1に示す条件(合金、溶湯温度(ラドル20から出湯する温度)、射出開始温度)でダイカストを行い、上端側(拡がっている方の端部)外径48mm、高さ55mm(製品部分の高さ51mm)、厚さ(厚さTm)0.7mmのメガホン型形状のダイカスト部材を作製した。
図7は、得られたダイカスト部材(実施例1−12)の外観を例示する写真である。図7に示す高さH1の部分を製品部分の高さとして、上部および下部に開口を有するメガホン形状の外側面、内側面、上端面および下端面の面積を合計して求めた表面積Sは、113cmである。図7からも判るように上端面には若干の凹凸が認められるが、平滑な面として上端面の面積を求めた。
なお、射出開始温度は、予め、合金1〜3について、スリーブ内での溶湯の冷却特性(時間と温度の関係)を求めておきスリーブ内での経過時間を制御することにより制御した。また、射出速度は1.0m/s以下であった。
Figure 0005937223
(*)ラドル内で700℃まで冷却
なお、表1に示すように合金2について2つの比較例(比較例1および比較例2)を作製した。比較例1−1は、射出開始温度を800℃と液相線温度以上に設定したサンプルである。比較例1−2は、800℃の溶湯をラドル20内で液相線温度以下の温度である700℃まで約3分かけて冷却する半凝固処理を行った後、ラドル20から出湯したサンプルである。
2.サンプル評価結果
(1)ダイカスト部材の表面観察
このようにして得た実施例サンプルと比較例サンプルのそれぞれについて表面観察を行った。表面観察はそれぞれのサンプルについて、上述のメガホン型形状のダイカスト部材を10個ずつ作製し、その10個全てについて表面観察を行った。
そして、10個のサンプルのうち、1個でも湯皺または割れが認められたサンプルについては「×」とし、10個のサンプルのうち、1個でも肌荒れ(多くの用途で問題ないレベルの肌荒れで写真等では明確に認識できないことが多い)があれば「□」と、10個全てについて、割れ、湯皺および肌荒れが認められない場合を「○」とした。さらに、10個のサンプルのうち、1個でも肌荒れがあり、且つ、再現性を確認している際に、未充満が発生したサンプル(希ではあるが未充満が発生したサンプル)を「△」とした。
この表面観察結果を表2に示す。また、表面観察したダイカスト部材の例として図5(a)に実施例1−12の写真を示し、図5(b)に比較例1−1の写真を示す。図5(a)の例では何れのサンプルも表面状態が良好であった。一方、図5(b)の例では、図中に矢印で示すように、一番右のダイカスト部材に湯皺が認められた。実際比較例1−1では、10個のダイカスト部材のうち3個に湯皺が認められた。
また、図4は、実施例1−1〜1−18および比較例1−1の結果を整理して記載した、射出開始温度およびシリコン含有量とダイカスト成形性の関係を示すグラフである。
なお、湯皺の有無の判定は、日本ダイカスト協会提供の「ダイカスト鋳肌基準片(作製方法変更)、基準片24個、発行日:H19.8」と対比して行った。
Figure 0005937223
表1および図4から判るように、実施例サンプルは、何れも割れおよび湯皺が認められず実用上十分に使用可能なことが判る。
特に、射出開始温度が、図4より求めた以下の(2)式で示される温度以上の場合は、微細な肌荒れも認められず、得られたダイカスト部材の表面性状が極めて優れていることが判る。
TL(℃)=−6×[Si]+800 (2)
ここで、[Si]は溶湯10(すなわち、過共晶アルミニウム−シリコン合金)の質量%で表したシリコン含有量である。
また、射出開始温度が、図4より求めた以下の(1)で示される温度以上の場合は、未充満が発生しないことも判る。
一方、(1)式により求まる温度TLと共晶温度との間の温度を射出開始温度に選択しても通常は、多くの用途で実用上問題のない表面状態のダイカスト部材を得ることができるが、希に未充満が発生し、所望のダイカスト部材が得られない場合がある。換言すれば、この条件で実用上問題のないレベルのダイカスト部材を多量に作製する場合には、希に出現し得る未充満に起因する不良品を確実に見つけるために、得られたダイカスト部材を目視等で検査する必要がある。
TL(℃)=−0.46×[Si]+25.3×[Si]+255 (1)
ここで、[Si]は過共晶アルミニウム−シリコン合金の質量%で表したシリコン含有量である。
これに対して比較例1では、湯皺が認められ、比較例2では割れが認められており表面性状が明らかに劣ることが判る。
(2)初晶Siの平均寸法
全ての実施例サンプルと比較例2について、初晶Siの平均寸法を測定した。測定は、それぞれのサンプルの異なる3ヶ所(射出側に近い根元部、中央部および先端寄り部)で、湯流れ方向に直行する方向で切り出し、断面の任意の箇所につき、光学顕微鏡の倍率を変えて1mm×0.7mmの視野サイズにて撮影し、完全な形状の初晶Siが30個入るように枠取りして平均寸法を求め、さらに上記3ヵ所の平均を取って初晶Siの平均寸法を求めた。なお、初晶Siの寸法は、結晶の最大径(最大長さ)を測定した。
実施例サンプルの何れでも初晶Siの形状は塊状またはロゼット状であり、平均寸法は、0.08mmであった。一方、比較例1−2では、初晶Siの形状は板状でありその平均寸法は1mmであった。
図6は光学顕微鏡観察結果の例であり、図6(a)は実施例1−12の光学顕微鏡観察結果であり、図6(b)は比較例1−2の光学顕微鏡観察結果である。図6(a)、(b)の両方とも代表的な初晶Siを矢印で示した。
<実施例2>
1.サンプル作製
実施例2−1および実施例2−2のサンプルについては、実施例1で用いた合金2を用いた。比較例2−1のサンプルについてはADC12合金(Si 10.91質量%、Cu 1.88質量%、Zn 0.85質量%、Fe 0.77質量%、Mg 0.26質量%、Mn 0.22質量%、Ni 0.06質量%、Ti 0.04質量%、Pb 0.04質量%、Sn 0.03質量%、Cr 0.05質量%、Cd 0.0015質量%、アルミニウム 残部)を用いた。
用いたADC合金の液相線温度は580℃である。
そして図1に示すダイカスト装置100を用いて表3に示す条件(合金、溶湯温度(ラドル20から出湯する温度)、射出開始温度)でダイカストを行い、フィン形状のダイカスト部材を作製した。
図8(a)、(b)は得られたフィン形状のダイカスト部材(実施例2−2)の外観を例示する写真である。得られたダイガスト部材は湯道Rと接続して形成された、縦90mm×横45mm×厚さ2mm台座(ベースプレート)Bの上に4つのフィン部Fを有している。
フィン部Fは、基端側(台座側)の長さ56mmであり、末端側(上側)の長さが84.3mmである。フィン部Fは、また、円錐台状の4つの柱部Cと、この4つの柱部Cのそれぞれを挟むように配置された5つのフィン薄肉部FT1〜FT5から成る。柱部Cは、基端側の直径が5mm、末端側の直径が4mm、高さ30mmである。フィン薄肉部FT1〜FT5は、それぞれ、厚さが0.5mmであり、高さが30mm、抜き勾配が0.5度である。
このようなダイガスト部材は、台座部Bと4つのフィン部Fとを有する、厚さTmが2mm(部材内で最も厚い部分の厚さが2mm)の放熱用製品(放熱部材)と考えることができる。この場合、製品部分の表面積Sは267.8cmとなる。
さらに、台座部Bを湯道として用いる場合、すなわち、台座部Bから、それぞれのフィン部を取り外してフィン製品(フィン部材)として用い場合、5mm以下という比較的近い距離に厚さTmが0.5mmの複数の薄い部分を有する1つのフィン部材と考えることができる(すなわち、フィン薄肉部FT1〜FT5は、それぞれ、柱部Cにより隣接する他のフィン薄肉部と接続されている)。この場合、製品部分の表面積Sは40.8cmとなる。
なお、比較例2−1については、金型内での湯の回りが悪いことが予想されたため、フィン部の高さ(フィン薄肉部FT1〜FT5および柱部Cの高さ)を25mmと低くした(それ以外の形状条件は、実施例2−1および2−2と同じ)ダイカスト部材を得た。このダイカスト部材の表面積Sは、放熱部材としては237.8cmとなり、フィン部材としては34.2cmとなる。
射出開始温度は、予め、合金2およびADC12について、スリーブ内での溶湯の冷却特性(時間と温度の関係)を求めておきスリーブ内での経過時間を制御することにより制御した。また、射出速度は約1.0m/sであった。
Figure 0005937223
2.サンプル評価結果
(1)ダイカスト部材の表面観察
このようにして得た実施例サンプルと比較例サンプルのそれぞれについて表面観察を行った。すなわち、それぞれのサンプルについて、ダイカスト部材を10個ずつ作製し、その10個全てについて実施例1と同じ方法により表面観察を行った。
この表面観察結果を表4に示す。上述の図8(a)、(b)は、表面観察したダイカスト部材(実施例2−2)の例である。実施例2−1および2−2は、何れのサンプルも表面状態が良好であった。一方、比較例2−1は、上述のようにダイカスト部材の高さを低くしたにも関わらず、また、射出速度を上げてバルブ開度からの推定で1.5m/s(バリが出ない限界速度)で行ったが、十分に湯が回らず、ダイカスト部材、特にフィン薄肉部に貫通穴および未充填部を生じた。
図10は、比較例2−1のサンプルの表面観察結果の例を示す。図10の矢印D1は貫通穴を示し、矢印D2は未充填部を示す。
Figure 0005937223
射出開始温度が、図4より求めた以下の(2)式で示される温度以上である実施例2−1および2−2の両方とも、表4に示すように、微細な肌荒れも認められず、得られたダイカスト部材の表面性状が極めて優れていることが判る。
TL(℃)=−6×[Si]+800 (2)
ここで、[Si]は溶湯10(すなわち、過共晶アルミニウム−シリコン合金)の質量%で表したシリコン含有量である。
(2)初晶Siの平均寸法
実施例2−1、2−2のサンプルについて、初晶Siの平均寸法を測定した。測定は、それぞれのサンプルのフィン薄肉部の異なる3ヶ所(基端側、中央部および末端側)で、湯流れ方向に直行する方向で切り出し、断面の任意の箇所につき、光学顕微鏡の倍率を変えて1mm×0.7mmの視野サイズにて撮影し、完全な形状の初晶Siが30個入るように枠取りして平均寸法を求め、さらに上記3ヵ所の平均を取って初晶Siの平均寸法を求めた。なお、初晶Siの寸法は、結晶の最大径(最大長さ)を測定した。
実施例サンプルの何れでも初晶Siの形状は塊状またはロゼット状であり、平均寸法は、77μm(0.077mm)であった。
図9は実施例2−2の光学顕微鏡観察結果である。
本出願は、日本国特許出願、特願第2012−211241号を基礎出願とする優先権主張を伴う。特願第2012−211241号は参照することにより本明細書に取り込まれる。
2 スリーブ
4 プランジャー
6 金型
10 溶湯
20 ラドル
22 冷却装置
100、100A ダイカスト装置

Claims (6)

  1. 1)20.0質量%〜30.0質量%のシリコンを含有する過共晶アルミニウム−シリコン合金であり該合金の液相線温度よりも高い温度となっている溶湯を準備し、該溶湯を初晶Siが晶出していない状態でスリーブ内に供給する工程と、
    2)前記スリーブ内の前記溶湯が、前記過共晶アルミニウム−シリコン合金の液相線温度と共晶温度との間の予め設定した射出開始温度に達すると直ちに前記スリーブ内に挿入したプランジャーを移動させて、半凝固状態の前記溶湯を射出し、金型のキャビティに該溶湯を充填する工程と、
    を含むことを特徴とするダイカスト部材の製造方法。
  2. 前記工程2)の前記射出開始温度が、下記(1)式で表される下限温度TLと前記過共晶アルミニウム−シリコン合金の液相線温度との間にあることを特徴とする請求項に記載の製造方法。
    TL(℃)=−0.46×[Si]+25.3×[Si]+255 (1)
    (ここで、[Si]は過共晶アルミニウム−シリコン合金の質量%で表したシリコン含有量である。)
  3. 前記工程2)の前記射出開始温度が、下記(2)式で表される下限温度TLと前記過共晶アルミニウム−シリコン合金の液相線温度との間にあることを特徴とする請求項に記載の製造方法。
    TL(℃)=−6×[Si]+800 (2)
    (ここで、[Si]は過共晶アルミニウム−シリコン合金の質量%で表したシリコン含有量である。)
  4. 前記工程1)において、前記スリーブ内に供給する前記溶湯の温度が、50℃以内の差で前記過共晶アルミニウム−シリコン合金の前記液相線温度より高いことを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記過共晶アルミニウム−シリコン合金が、アルミニウムとシリコンと不可避的不純物から成ることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記過共晶アルミニウム−シリコン合金が、
    アルミウム(Al):60.0質量%以上と、
    シリコン(Si)と、
    銅(Cu):0.5質量%〜1.5質量%、マグネシウム(Mg):0.5質量%〜4.0質量%、ニッケル(Ni):0.5質量%〜1.5質量%、亜鉛(Zn):0.2質量%以下、鉄(Fe):0.8質量%以下、マンガン(Mn):2.0質量%以下、ベリリウム(Be):0.001質量%〜0.01質量%、リン(P):0.005質量%〜0.03質量%、ナトリウム(Na):0.001質量%〜0.01質量%およびストロンチウム(Sr):0.005質量%〜0.03質量%から成る群から選択される1つ以上と、を含んで成ることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の製造方法。
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