以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明は、例えば図1のブロック図に示すような構成の変位検出装置100に適用される。
この変位検出装置100は、回折格子14を用いて被測定部材1の被測定面1aにおける垂直な方向(測定方向Z)の変位を該被測定面1aにより反射される測定光L1に基づいて検出するものであって、光源10と、この光源10から出射される測定光L0を2つの光束L1,L2に分割する光束分割部12と、回折格子14と、反射鏡18と、上記被測定部材1の被測定面1aにより反射される測定光L1に基づいて、上記測定方向Zの相対位置を光学的に検出する相対位置検出部20を備える。
光源10には、例えば半導体レーザダイオードやスーパールミネッセンスダイオード、ガスレーザ、固体レーザ、発光ダイオード、白色光等が挙げられる。
光源10として、可干渉距離が短い光源を用いると、可干渉距離が短くなるほど、不要な迷光の干渉によるノイズを防ぐことができ、高精度な計測をすることができる。したがって、光源10は、可干渉距離ができるだけ短い光源を用いることが望ましい。
さらに、光源10として、シングルモードのレーザを用いると、波長を安定させるために、光源10の温度をコントロールすることが望ましい。また、シングルモードのレーザの光に、高周波重畳などを付加して、光の可干渉性を低下させてもよい。さらに、マルチモードのレーザを用いる場合も、ペルチェ素子等で光源10の温度をコントロールすることで、不要な迷光の干渉によるノイズを防ぎ、さらに安定した計測が可能になる。
この光源10から出射された測定光L0は、コリメートレンズ等からなるレンズ11を介して光束分割部12に入射されている。レンズ11は、光源10から出射された測定光L0を平行光にコリメートする。そのため、光束分割部12には、レンズ11により平行光にコリメートされた測定光L0が入射される。
光束分割部12は、コリメートされた測定光L0を物体光である第1の光束L1と、参照光である第2の光束L2に分割する。第1の光束L1は、物体光として、第1の位相板13を介して被測定部材1に照射され、第2の光束L2は、参照光として、第2の位相板15と光路長調整プリズム17aを介して反射鏡18に照射される。また、光束分割部12は、例えば、光源10から入射される測定光L0のうち、s偏光を反射し、p偏光を透過する偏光ビームスプリッタからなる。
光束分割部12では、測定光L0が第1の光束L1と第2の光束L2に分割されるが、その光量比率は、相対位置検出部20の受光部20Aに入射する際に被測定部材1側と反射鏡18側でそれぞれが同じ光量になるような比率にすることが好ましい。
また、光源10と光束分割部12との間に偏光板を設けてもよい。これにより、それぞれの偏光に対して直行した偏光成分としてわずかに存在する漏れ光、ノイズを除去することができる。
また、第1の位相板13及び第2の位相板15は、それぞれ1/4波長板等から構成されている。
ここで、光路長調整プリズム17aは、図2に示すように、参照光として入射される第2の光束L2の光軸と直交する方向に可動部17bにより移動されることにより、第2の光束L2の光路長を可変する光路長調整手段として機能する。上記可動部17bには、ステージやピエゾ素子が用いられる。
光路長調整プリズム17aと可動部17bによる光路長調整手段17は、光束分割部12から回折格子14までの第2の光束L2の光路中に設けられることにより、第2の光束L2の光路長を任意に調整できる。
これにより、透明ガラスなどの保護膜で表面が覆われた被測定部材1の被測定面1aや図3に示すように多層膜で形成された被測定部材1の各層の境界面1A,1B・・・1Nを被測定面1aとする場合にも、L2=L1の条件が成立する被測定面1aを検出することができる。さらに光源10の可干渉距離が短いので、L2=L1の条件が成立する層の境界面のみを被測定面1aとして選択して検出することができる。
ここで、一般に被測定部材1としては、ミラー等が用いられるが、透明ガラスなどの保護膜で表面が覆われた被測定部材1の被測定面1aや図3に示すように多層膜で形成された被測定部材1の各層の境界面1A,1B・・・1Nを被測定面1aとする場合には、保護膜のない被測定部材1の表面を被測定面1aとする場合と光路長が異なるため、可干渉距離が短い光源では、表面1sの反射光で干渉信号が得られても、媒体内の層の境界面1A,1B・・・1Nによる反射光との干渉信号は得られない。
各層の境界面1A,1B・・・1Nを被測定面1aとする多層膜で形成された被測定部材1の例としては、多層膜や半導体のウエハなどがあげられる。
表面反射の場合、被測定部材1の変動によって光路長A=A’,B=B’よりA+BとA’+B’が、常に等しいことため、一度第1の光束L1と第2の光束L2の長さを等しく調整してしまえば、第1の光束L1の光路内の媒体の屈折率が変化しない限り、安定して検出が可能になる。一方、表面反射と、積層した媒体内の屈折率nとする場合、A=A’であっても媒体内は、B<B’になるため、光路長に差が生じる。よって各層の面を検出するためには、図4の(A),(B)に示すように、それぞれの第1の光束L1の光路長に一致させるように第2の光束L2を調整する必要がある。
光路長調整プリズム17aと可動部17bによる光路長調整手段17は、この光路長の差を解消し、各層の面を選択して検出する働きをする。
上記光路長調整手段17は、物体光である第1の光束L1における光束分割部12から回折格子14を介して上記光束結合部12に戻るまでの光路長と、参照光である第2の光束L2における光束分割部12から回折格子14を介して上記光束結合部12に戻るまでの光路長との一致点を含む光路長調整範囲を有している。
なお、この変位検出装置100では、上記光路長調整手段17により第2の光束L2を調整に連動して反射鏡18を回転させて、回折格子14への第2の光束L2の入射角が変化しないようにしている。
この変位検出装置100において、回折格子14は、入射した光を反射させ、かつ回折させる反射型の回折格子である。
そして、被測定部材1は、回折格子14によって回折された第1の光束L1を反射して、再び光束分割部12へ戻す。回折格子14は、被測定部材1の被測定面1aに対して略直角、すなわち回折格子14の回折面と被測定部材1の被測定面1aで形成される角度がほぼ90°となるように配置されている。
なお、回折格子14における被測定部材1に対する配置する精度は、変位検出装置100に要求する測定精度によって種々設定されるものである。すなわち、変位検出装置100に高い精度を要求する場合、回折格子18を被測定部材1の被測定面1aに対して90°±0.5°の範囲に配置することが好ましい。これに対し、回折格子14を被測定部材1の被測定面1aに対して90°から±2°の範囲で配置しても、変位検出装置100を工作機械等の低精度の測定に用いる場合には、十分である。
また、回折格子14に入射した第1の光束L1は、回折格子14によって反射し、かつ回折される。この回折格子14の格子ピッチΛは、回折角が回折格子14への入射角とほぼ等しくなるように設定される。すなわち、回折格子14の格子ピッチΛは、被測定面1aへの入射角をθ、光の波長をλとすると、次の式1を満たす値に設定することが好ましい。なお、上述したように、回折格子14が被測定部材1の被測定面1aに対して直角に配置されているため、回折格子14への入射角は、π/2−θとなる。
Λ=λ/(2sin(π/2−θ)) ・・・式1
そのため、回折格子14によって反射し、かつ回折されて再び被測定部材1の被測定面1aに入射するときの光路が、光束分割部12によって分割された第1の光束L1が被測定部材1の被測定面1aによって反射されて回折格子14に入射するときの光路に重なり合う。その結果、回折格子14よって回折された第1の光束L1は、光束分割部12から被測定部材1の被測定面1aに照射された照射スポットP1と同じ点に戻る。そして、第1の光束L1は、被測定部材1の被測定面1aで再び反射され、光束分割部12から照射されたときの光路と同じ光路を通って光束分割部12に戻る。
なお、回折格子14としては、例えば図5の側面図に一例を示すような構造の回折格子が用いられる。
この回折格子14は、溝の断面形状を鋸歯状に形成した、いわゆるブレーズド回折格子14A,14Bからなる。この回折格子14によれば、被測定部材1の被測定面1aで反射された物体光である第1の光束L1や、反射鏡18で反射された参照光である第2の光束L2の回折効率を高めることができ、信号のノイズを低下させることができる。
また、反射鏡18は、図1に示すように、光束分割部12によって分割された第2の光束L2を回折格子14に反射するものである。この反射鏡18は、回折格子14を間に挟んで被測定部材1と対向する位置に設けられている。そして、反射鏡18の反射面は、被測定部材1の被測定面1aと略平行に配置される。そのため、反射鏡18及び回折格子14は、反射鏡18の反射面と回折格子14の回折面で形成される角度がほぼ90°となるように配置される。
また、反射鏡18は、回折格子14によって回折された第2の光束L2を再び反射して光束分割部3に戻す。なお、反射鏡18によって反射され、かつ回折格子14によって回折された第2の光束L2も、第1の光束L1と同様に、光束分割部12から照射されたときの光路と同じ光路を通って光束分割部12に戻る。
この反射鏡18は、第1の光束L1における光束分割部12から回折格子14までの光路長と、第2の光束L2における光束分割部12から回折格子14までの光路長が等しくなるように配置される。反射鏡18を設けたことで、この変位検出装置100を製造する際に、第1の光束L1の光路長と第2の光束L2の光路長や光軸の角度を調整し易くすることができる。その結果、気圧や湿度や温度の変化による光源10の波長変動の影響を受けにくくすることができる。
上述したように、反射鏡18の反射面と回折格子14の回折面は、被測定部材1の被測定面1aと回折格子14の関係と同様に、略直角に配置することが好ましい。これにより、回折格子14によって回折されて再び反射鏡18の反射面に入射するときの光路が、反射鏡18によって反射されて回折格子14に入射するときの光路に重なり合う。
また、光束分割部12は、被測定部材1及び反射鏡18から反射されて戻ってきた第1の光束L1及び第2の光束L2を重ね合わせて、相対位置検出部20の受光部20Aに照射する。すなわち、この変位検出装置100における光束分割部12は、測定光L0を第1の光束L1と第2の光束L2に分割する光束分割部としての役割と、第1の光束L1と第2の光束L2を重ね合わせる光束結合部としての役割を有している。
ここで、光束分割部12から被測定部材1及び回折格子14を介して光束分割部12に戻るまでの長さと、光束分割部12から反射鏡18及び回折格子14を介して光束分割部12に戻るまでの長さは、略等しく設定されている。すなわち、第1の光束L1と第2の光束L2の光路長を等しく設定したため、気圧や湿度、温度の変化による光源10の波長変動があったとしても、第1の光束L1及び第2の光束L2が受ける影響を等しくすることができる。その結果、気圧補正や湿度補正、温度補正を行う必要がなく、周囲環境に関わらず安定した測定を行うことができる。
相対位置検出部20は、受光部20Aと相対位置情報出力部20Bからなる。
相対位置検出部20の受光部20Aは、光束分割部12により重ね合わされた第1の光束L1と第2の光束L2が入射される集光レンズ21と、この集光レンズ21により集光された第1の光束L1と第2の光束L2すなわち入射光を分割するハーフミラー22と、このハーフミラー22により分割された入射光が入射される第1の偏光ビームスプリッタ23と、上記ハーフミラー22により分割された入射光が例えば1/4波長板等からなる受光側位相板24を介して入射される第2の偏光ビームスプリッタ25を備える。
これら第1の偏光ビームスプリッタ23及び第2の偏光ビームスプリッタ25は、s偏光成分を有する干渉光を反射させ、p偏光成分を有する干渉光を透過させて、第1の光束L1と第2の光束L2との干渉光を分割するものである。
第1の偏光ビームスプリッタ23は、入射される光束の偏光方向が入射面に対して45度傾くように配置されている。この第1の偏光ビームスプリッタ23における光の出射口側には、第1の受光素子26と、第2の受光素子27が設けられている。また、第2の偏光ビームスプリッタ25における光の出射口側には、第3の受光素子28と、第4の受光素子29が設けられている。
また、相対位置検出部20の相対位置情報出力部20Bは、図6に示すように、第1の差動増幅器61aと、第2の差動増幅器61bと、第1のA/D変換器62aと、第2のA/D変換器62bと、波形補正処理部63と、インクリメンタル信号発生器64とを有している。
第1の差動増幅器61aは、受光部20Aの第1の受光素子26及び第2の受光素子27が入力端に接続され、出力端に第2のA/D変換器62bが接続されている。また、第2の差動増幅器61bは、受光部20Aの第3の受光素子28及び第4の受光素子29が入力端に接続され、出力端に第2のA/D変換器62bが接続されている。そして、第1のA/D変換器62a及び第2のA/D変換器62bは、波形補正処理部63に接続されている。波形補正処理部63は、インクリメンタル信号発生器64に接続されている。
このような構成の変位検出装置100において、光束分割部12により重ね合わされて、相対位置検出部20の受光部20Aに入射される第1の光束L1と第2の光束L2は、第1の偏光ビームスプリッタ23に対してそれぞれp偏光成分とs偏光成分を有することになる。したがって、第1の偏光ビームスプリッタ23を透過した第1の光束L1及び第2の光束L2は、同じ偏光方向を有する偏光同士が干渉する。よって、第1の光束L1と第2の光束L2を第1の偏光ビームスプリッタ23によって干渉させることができる。
同様に、第1の偏光ビームスプリッタ23によって反射される第1の光束L1及び第2の光束L2は、第1の偏光ビームスプリッタ23に対して同じ偏光方向を有する偏光同士が干渉する。そのため、第1の偏光ビームスプリッタ23によって干渉させることができる。
第1の偏光ビームスプリッタ23によって反射された第1の光束L1及び第2の光束L2との干渉光は、第1の受光素子26によって受光される。また、第1の偏光ビームスプリッタ23を透過した第1の光束L1及び第2の光束L2との干渉光は、第2の受光素子27によって受光される。ここで、第1の受光素子26と第2の受光素子27とによって光電変換される信号は、180度位相の異なる信号となる。
したがって、第1の受光素子26と第2の受光素子27によって、Acos(Kz+δ)の干渉信号が得られる。Aは、干渉の振幅であり、Kは2π/Λで示される波数である。また、zは、回折格子14上における第1の光束L1の移動量を示しており、δは、初期位相を示している。Λは、回折格子4における格子のピッチである。
ここで、図7に示すように、被測定部材1が高さ方向にz/2だけ移動すると、被測定部材1の被測定面1aに照射される第1の光束L1は、照射スポットP1から照射スポットP2に移動する。また、被測定部材1の被測定面1aで反射された第1の光束L1は、回折格子14の回折位置T1から回折位置T2に移動する。ここで、回折格子14は、被測定部材1の被測定面1aに対して略直角に配置されているため、回折位置T1と回折位置T2の間隔は、照射スポットP1と照射スポットP2の間隔の2倍のzとなる。すなわち、回折格子14上を移動する第1の光束L1の移動量は、被測定部材1を移動した際の2倍のzとなる。
また、回折格子14が被測定部材1の被測定面1aに対して略直角に配置されているため、被測定部材1が高さ方向に変位しても、P2−T2間の距離と、P2−P1−T1間の距離が一定であることから、第1の光束L1の光路長は常に一定となることが分かる。すなわち、第1の光束L1の波長は、変化しない。そして、被測定部材1が高さ方向に変位すると、回折格子14に入射する位置だけが変化する。
よって、回折された第1の光束L1には、Kzの位相が加わる。つまり、被測定部材1が高さ方向に対してz/2だけ移動すると、第1の光束L1は回折格子14上ではzだけ移動する。そのため、第1の光束L1には、Kzの位相が加わり、1周期の光の明暗が生じる干渉光が第1の受光素子26、第2の受光素子27によって受光される。
ここで、第1の受光素子26及び第2の受光素子27によって得られる干渉信号には、光源10の波長に関する成分が含まれていない。よって、気圧や湿度、温度の変化による光源の波長に変動が起きても干渉強度には、影響を受けない。
一方、ハーフミラー22を透過した光束Laは、受光側位相板24を介して第2の偏光ビームスプリッタ25に入射される。互いに偏光方向が90度異なる直線偏光である第1の光束L1及び第2の光束L2からなる光束Laは、受光側位相板24を透過することにより、互いに逆回りの円偏光となる。そして、この互いに逆回りの円偏光は同一光路上にあるので、重ね合わされることにより直線偏光となって、第2の偏光ビームスプリッタ25に入射される。
この直線偏光のs偏光成分は第2の偏光ビームスプリッタ25によって反射され、第3の受光素子28に受光される。また、p偏光成分は、第2の偏光ビームスプリッタ25を透過し、第4の受光素子29によって受光される。
上述したように、第2の偏光ビームスプリッタ25に入射する直線偏光は、互いに逆回りの円偏光の重ね合わせによって生じている。そして、第2の偏光ビームスプリッタ25に入射される直線偏光の偏光方向は、被測定部材1が高さ方向にΛ/2だけ移動すると1/2回転する。したがって、第3の受光素子28と第4の受光素子29でも同様に、Acos(Kz+δ’)の干渉信号が得られる。δ’は初期位相である。
また、第3の受光素子28と第4の受光素子29とで光電変換される信号は、180度位相が異なる。
なお、この変位検出装置100では、第1の偏光ビームスプリッタ23に対して、第3の受光素子28と第4の受光素子29に受光される光束を分割する第2の偏光ビームスプリッタ26を45度傾けて配置している。このため、第3の受光素子28と第4の受光素子29において得られる信号は、第1の受光素子26と第2の受光素子27において得られる信号に対し、90度位相がずれている。
したがって、例えば第1の受光素子26と第2の受光素子27で得られる信号をsin信号、第3の受光素子28と第4の受光素子29において得られる信号をcos信号として用いることによりリサージュ信号を取得することができる。
これらの受光素子26〜29によって得られる信号は、相対位置情報出力部20Bによって演算され、被測定面1aの変位量がカウントされる。
相対位置情報出力部20Bでは、まず、受光部20Aの第1の受光素子26と第2の受光素子27で得られた位相が互いに180度異なる信号を第1の差動増幅器61aによって差動増幅し、干渉信号の直流成分をキャンセルする。
そして、この信号は、第1のA/D変換器62aによってA/D変換され、波形補正処理部63によって信号振幅とオフセットと位相が補正される。この信号は、例えばA相のインクリメンタル信号としてインクリメンタル信号発生器64から出力される。
また同様に、第3の受光素子35及び第4の受光素子36で得られた信号は、第2の差動増幅器61bによって差動増幅され、第2のA/D変換器62bによってA/D変換される。そして、波形補正処理部63により信号振幅とオフセットと位相とが補正され、A相と位相が90度異なるB相のインクリメンタル信号としてインクリメンタル信号発生器64から出力される。
こうして得られた2相のインクリメンタル信号は、図示しないパルス弁別回路等により正逆の判別が行われ、これにより、被測定部材1の被測定面1aの高さ方向の変位量が、プラス方向であるかマイナス方向であるかを検出できる。
また、図示しないカウンタによってインクリメンタル信号のパルス数をカウントすることにより、第1の光束L1と第2の光束L2の干渉光強度が上述の周期の何周期分変化したのかを計測できる。これにより、被測定部材1の被測定面1aの変位量が検出される。
なお、この変位検出装置100における相対位置情報出力部20Bの出力する相対位置情報は、上述の2相のインクリメンタル信号であってもよいし、それから算出された変位量、変位方向を含む信号であってもよい。
ここで、上記変位検出装置100では、光束分割部12から回折格子14までの第2の光束L2の光路中に光路長調整プリズム17aと可動部17bによる光路長調整手段17を設けることにより、第2の光束L2の光路長を任意に調整できるようにしたが、光束分割部12から回折格子14までの第1の光束L1の光路中に光路長調整プリズム17aと可動部17bによる光路長調整手段17を設けることにより、第1の光束L1の光路長を調整するようにしてもよい。
また、図8に示す変位検出装置100Aのように、参照光である第2の光束L2を反射する反射鏡18を第2の光束L2の光軸と直交する配置して、可動部17Aにより上記反射鏡18を第2の光束L2の光軸方向に移動させて第2の光束L2の光路長を調整する光路長調整手段を備えるものとすることもできる。この場合、光路長調整手段は、物体光である第1の光束L1における光束分割部12から回折格子14を介して上記光束結合部12に戻るまでの光路長と、参照光である第2の光束L2における光束分割部12から反射鏡18を介して上記光束結合部12に戻るまでの光路長との一致点を含む光路長調整範囲を有するものとされる。上記可動部17Aには、ステージやピエゾ素子が用いられる。
さらに、図9に示す変位検出装置100Bのように、物体光である第1の光束L1を回折させる反射型の回折格子14Aと参照光である第2の光束L2を回折させる反射型の回折格子14Bを分離して配し、上記回折格子14Aと回折格子14Bの一方又は両方を可動部17A,17Bにより被測定面1aの測定方向Zと直交する方向Xに移動させて第1の光束L1と第2の光束L2の一方又は両方の光路長を調整する光路長調整手段を備えるものとすることもできる。この変位検出装置100Bにおいて、上記回折格子14Aと回折格子14Bは、光路長調整手段による調整範囲で第1の光束L1と第2の光束L2の光路長を一致させることができるように予め測定方向Zと直交する方向Xにずらして配置される。
上記可動部17A,17Bには、ステージや板バネやピエゾ素子が用いられる。また、上記可動部17A,17Bを温度調節し、物体の温度膨張を利用して移動させても良い。
なお、上記変位検出装置100A,100Bにおいて、上記変位検出装置100と共通する構成要素については、図中に同一の符号を付して重複した説明を省略する。
また、上記変位検出装置100において、相対位置情報検出部20は、上記被測定部材1の被測定面1aにより反射される測定光L1を反射型回折格子14を介して受光する受光部20Aを備え、上記受光部20Aにより得られる光検出出力に基づいて上記被測定面1aの上記測定方向Zの相対位置情報を相対位置情報出力部20Bから出力するものとしたが、本発明は、例えば図10に示すように、被測定部材1の被測定面1aにより反射される測定光L1を透過型回折格子14Cを介して受光する受光部20Aを備え、上記受光部20Aにより得られる光検出出力に基づいて上記被測定面1aの上記測定方向Zの相対位置情報を相対位置情報出力部20Bから出力する変位検出装置100Cに適用することもできる。
すなわち、図10に示す変位検出装置100Cは、上記変位検出装置100と同様に、測定方向Zとは垂直な方向Xに相対移動可能な被測定部材1の被測定面1aの変位を該被測定面1aにより反射される測定光L1に基づいて検出するものであって、光源10と、この光源10から出射される測定光L0を2つの光束L1,L2に分割する光束分割部12と、透過型の回折格子14C、反射鏡18と、戻り用反射鏡ブロック19と、上記被測定部材1の被測定面1aにより反射される測定光L1に基づいて、上記測定方向Zの相対位置と絶対位置を光学的に検出する相対位置検出部20と絶対位置検出部30を備える。
なお、この変位検出装置100Cにおいて、上記変位検出装置100と共通する構成要素については、図中に同一の符号を付して重複した説明を省略する。
この変位検出装置100Cでは、光源10から出射された測定光L0がレンズ11Aによりコリメートされ平行光として光束分割部12に入射され、光束分割部12により物体光である第1の光束L1と、参照光である第2の光束L2に分割される。
光束分割部12で分割された第1の光束L1は、第1の位相板13を介して被測定部材1の被測定面1aにおける第1の照射スポットPc1に入射され、この被測定面1aで反射されて透過型の回折格子14Cに入射される。
回折格子14Cは、入射された光を透過させ、かつ回折する透過型の回折格子である。
すなわち、この変位検出装置100Cでは、上記変位検出装置100における反射型の回折格子18に替えて上記透過型の回折格子14Cが設けられている。
そして、この透過型の回折格子14Cに入射された第1の光束L1は、当該透過型の回折格子14Cを透過し、かつ1回回折されて、被測定部材1の被測定面1aにおける上記第1の照射スポットPc1と異なる第2の照射スポットPd1に入射され、この被測定面1aで反射されて戻り用反射鏡ブロック19の第1の反射面19Aに入射される。
また、上記透過型の回折格子14Cに入射された第1の光束L1は、当該透過型の回折格子14Cを透過し、絶対位置検出部30の受光部31に入射される。
また、光束分割部12で分割された第2の光束L2は、第2の位相板15と光路長調整プリズム17aを介して反射鏡18に入射され、この反射鏡18を介して被測定部材1の被測定面1aにおける第1の照射スポットSc1に入射され、この被測定面1aで反射されて透過型の回折格子14Cに入射される。
そして、この透過型の回折格子14Cに入射された第2の光束L2は、当該透過型の回折格子14Cを透過し、かつ1回回折されて、反射鏡18の反射面における上記第1の照射スポットSc1と異なる第2の照射スポットSd1に入射され、この反射面で反射されて戻り用反射鏡ブロック19の第2の反射面19Bに入射される。
戻り用反射鏡ブロック19は、第1の反射面19Aと第2の反射面19Bとを有する略三角形状のミラーである。第1の反射面19Aは、被測定部材1の被測定面1aで反射されて入射された第1の光束L1を反射して入射したときと同じ光路で被測定部材1の被測定面1aと透過型の回折格子14Cを介して光束分割部12に戻す。また、第2の反射面19Bは、反射鏡18の反射面で反射されて入射された第2の光束L2を反射して入射したときと同じ光路で反射鏡18の反射面と透過型の回折格子14Cを介して光束分割部12に戻す。
この変位検出装置100Cにおいて、戻り用反射鏡ブロック19は、第1の光束L1の光路長と、第2の光束L2の光路長が等しくなるように配置される。また、この戻り用反射鏡ブロック19は、被測定部材1の被測定面1aの測定方向Zに可動部17Cにより移動させることができるようになっている。上記可動部17Cには、ステージや板バネやピエゾ素子が用いられる。また、上記可動部17Cを温度調節し、物体の温度膨張を利用して移動させても良い。
すなわち、この変位検出装置100Cは、上記可動部17Cにより戻り用反射鏡ブロック19を被測定部材1の被測定面1aの測定方向Zに移動させることによって、第1の光束L1と第2の光束L2の光路長を調整する光路長調整手段を備えている。この変位検出装置100Cでは、上記光路長調整手段によって、第1の光束L1の光路長と第2の光束L2の光路長を調整することで、被測定部材1が積層された反射面であっても、各層の境界面からの第1の光束L1に光路長を調整して、測定対象の境界面を選択して検出することができる。
そして、この変位検出装置100Cでは、被測定部材1及び反射鏡18から反射されて光束分割部3に戻ってきた重ね合わせされた第1の光束L1及び第2の光束L2を相対位置検出部20の受光部20Aで受光することにより、上記変位検出装置100と同様に、上記受光部20Aにより得られる光検出出力に基づいて上記被測定面1aの上記測定方向Zの相対位置情報を相対位置情報出力部20Bから出力する。
ここで、この変位検出装置100Cにおいて、透過型の回折格子14Cは、被測定部材1の被測定面1aに対して略垂直に配置されており、図11に示すように、被測定面1aにおける第1の照射スポットPc1に入射角θ1で入射した第1の光束L1が入射角π/2−θ1で入射される。さらに、第1の光束L1は、被測定部材1の被測定面1aにおける第2の照射スポットPd1に入射角θ2で入射される。
また、回折格子14Cの格子ピッチΛは、回折角が回折格子14Cへの入射角とほぼ等しくなるように設定されることが好ましい。すなわち、回折格子14Cの格子ピッチΛは、上述したように被測定部材1の被測定面1aの一回目の入射角をθ1、二回目の入射角をθ2、波長λとすると、次の式2を満たす。
Λ=nλ/(sin(π/2−θ1)+sin(π/2−θ2)) ・・・式2
なお、nは、正の次数である。
回折格子14Cへの入射角と回折角が等しくなる場合、第1の照射スポットPc1と第2の照射スポットPd1は、回折格子14Cに対して対称に構成することができる。そして、式2は、次の式3にて示すことができる。
2Λsinθ=nλ ・・・式3
なお、θは、回折格子14Cの入射角及び回折角である。
すなわち、ブラッグ条件を満たすことができ、回折格子14Cによって回折される回折光を強めることが可能となる。
また、角度θ2で被測定部材1の被測定面1aに入射した第1の光束L1は、被測定部材1の被測定面1aにより反射され、戻り用反射鏡ブロック19の第1の反射面19Aに入射し、この第1の反射面19Aで反射されて、行きと同じ光路をたどり、再び被測定部材1の被測定面1aの第2の照射スポットPd1に入射角θ2で入射される。
さらに、被測定部材1の被測定面1aによって反射した第1の光束L1は、回折格子14Cに角度π/2−θ2で再び入射される。なお、第1の光束L1における2回目の回折は、式1の条件により回折角π/2−θ1で回折される。そして、回折格子14Cによって回折された第1の光束L1は、再び被測定部材1の被測定面1aの第1の照射スポットPc1に入射角θ1で入射される。そのため、被測定部材1の被測定面1aによって反射された戻りの第1の光束L1の光路が、光束分割部12によって分割された行きの第1の光束L1の光路と重なり合う。
また、被測定部材1の被測定面1aが高さ方向にz/2だけ移動すると、被測定部材1の被測定面1aに照射される第1の光束L1は、第1の照射スポットPc1から第1の照射スポットPc2に移動する。また、被測定部材1の被測定面1aにおける第1の照射スポットPc1,Pc2で反射された第1の光束L1は、回折格子14Cの回折位置T1から回折位置T2に移動する。さらに、回折格子14Cによって1回目の回折が行われた第1の光束L1は、被測定部材1の被測定面1aにおける第2の照射スポットPd1から第2の照射スポットPd2に移動する。
ここで、回折格子14Cは、被測定部材1の被測定面1aに対して略直角に配置されており、回折位置T1と回折位置T2の間隔は、第1の照射スポットPc1と第1の照射スポットPc2の間隔の2倍のzとなる。すなわち、回折格子14C上を移動する第1の光束L1の移動量は、被測定部材1を移動した際の2倍のzとなる。
また、回折格子14Cが被測定部材1の被測定面1aに対して略直角に配置されており、第1の光束L1の光路長は、被測定部材1が高さ方向に変位しても、常に一定となる。すなわち、第1の光束L1の波長は、変化しない。そして、被測定部材1が高さ方向に変位すると、回折格子14Cに入射する位置だけが変化する。
なお、反射鏡18に照射された第2の光束L2においても、第1の光束L1と同様であるため、その説明は省略する。
この変位検出装置100Cでは、第1の光束L1を2回回折している。そのため、2回回折された第1の光束L1には、2Kzの位相が加わる。Kは、2π/Λで示される波数である。また、zは、回折格子14C上における第1の光束L1の移動量を示している。つまり、被測定部材1が高さ方向に対してz/2だけ移動すると、第1の光束L1は回折格子14C上では2倍のzだけ移動する。さらに、2回回折することで、第1の光束L1には、2Kzの位相が加わり、2周期分の光の明暗が生じる干渉光が相対位置検出部20の受光部20Aによって受光される。
すなわち、上記受光部20Aの第1の受光素子26と第2の受光素子27では、Acos(2Kz+δ)の干渉信号を得ることができる。また、第3の受光素子28と第4の受光素子29では、Acos(2Kz+δ’)の干渉信号を得ることができる。
よって、この変位検出装置100Cでは、回折格子14Cの格子ピッチと上述の変位検出装置100における回折格子14の格子ピッチが同じ場合、上記変位検出装置100よりも2倍の分解能とすることができる。
例えば、回折格子14Cの格子ピッチΛを0.5515μm、波長λを780nm、回折格子14Cの入射角及び回折角を45°に設定したとき、被測定部材1の被測定面1aを高さ方向に0.5515μmだけ移動した場合、第1の光束L1は、回折格子14C上を0.5515μmの2倍、すなわち2ピッチ分移動する。さらに、第1の光束L1は、2回回折されるため、4回の光の明暗を相対位置検出部20の受光部20Aによって得ることができる。すなわち、得られる信号の1周期は、0.5515μm/4=0.1379μmとなる。
また、この変位検出装置100Cでは、一台の光学系で第1の光束L1を被測定部材1の被測定面1aにおける第1の照射スポットPc1と第2の照射スポットPd1の2箇所に照射しているので、1台の光学系で、測定ポイントをキャンセルすることができる。
さらに、上述したような構成にすることで、被測定部材1の被測定面1aがチルトしても、第1の照射スポットPc1に照射するときと第2の照射スポットPd1に照射するときによってチルトを打ち消すことができる。そのため、第1の光束L1の光路長に変化が生じ難くなり、第1の光束L1の光路長と、第2の光束L2の光路長との差を小さくすることができる。