JP5929113B2 - ポリエステル樹脂 - Google Patents
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Description
(1)繊維用のポリエステル中の異物は、紡糸時の口金汚れの原因となると同時に、製品である繊維自体の強度低下をもたらす。
よって、ポリエステル繊維の製造においては、操業性および品質の観点から、異物の生成の少ないポリエステル重合触媒が求められる。
(2)フィルム用のポリエステルにおいては、析出は、ポリエステル中の異物となり、製膜時のロール汚れの原因になるだけでなく、フィルムの表面欠点の原因にもなる。
よって、ポリエステルフィルムの製造においても、操業性および品質の観点から、異物の生成の少ないポリエステル重合触媒が求められる。
(3)また、異物を含有するポリエステルを、中空成形品等の原料として用いた場合には、透明性に優れた中空成形体を得ることが困難である。
しかしながら、アルミニウム化合物とリン化合物とからなる触媒系においても触媒異物が発生するという問題がある。この問題を解決するために、触媒として用いるアルミニウム化合物やリン化合物のエチレングリコール溶液の調整方法を工夫したり、エステル反応終了後にリン化合物を添加することにより、重縮合触媒に起因する異物の生成を低減するという技術が知られている(例えば、特許文献5、6参照)。
((式A)において、X1、X2は、それぞれ、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または1価以上の金属を表す。)
上記において、ポリエステル樹脂中に含まれるアルミニウム化合物のアルミニウム原子と、化学式(式A)で表されるリン化合物及びその熱分解物を含めた全リン化合物のリン原子の比率P/Al(モル比)が1.4≦P/Al≦100であることが好ましい。
上記において、ポリエステルが、エチレンテレフタレート構造単位を85モル%以上含有することが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂は、アルミニウム化合物および前記化学式(式A)で表されるリン化合物を触媒として用いて得られたポリエステル樹脂である。さらに、本発明のポリエステル樹脂は、昇温時結晶化温度(Tc1)が170℃以上、降温時結晶化温度(Tc2)が175℃以下である。
Tc1は、より好ましくは171℃以上であり、さらに好ましくは172℃以上であり、特に好ましくは173℃以上であり、最も好ましくは174℃以上である。上記未満であると、透明性が低下し、口栓部結晶化のコントロールがし難く、コントロール幅が狭い状態となることがある。
Tc1の上限は、現実的には好ましくは195℃であり、より好ましくは190℃であり、さらに好ましくは187℃であり、特に好ましくは186℃であり、最も好ましくは185℃である。
Tc2は、より好ましくは174℃以下であり、さらに好ましくは173℃以下であり、特に好ましくは172℃以下であり、最も好ましくは171℃以下である。Tc2が175℃を超えると成形体のヘイズが高くなる、肉厚部が白化する、といった問題が生じやすくなる。Tc2の下限は、現実的には好ましくは145℃であり、より好ましくは150℃であり、さらに好ましくは155℃であり、特に好ましくは160℃であり、最も好ましくは165℃である。
Tc1を170℃以上、Tc2を175℃以下にするための手段を以降に説明する。Tc1を170℃以上にするためには、中でも、重縮合工程の温度時間積が重要になる。Tc2を175℃以上にするためには、アルミニウム触媒由来の異物を低減させることが重要になる。
ポリエステル樹脂は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルであって、好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を85モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含む線状ポリエステルである。
なお、本発明で言う「ポリエステル樹脂」とは、単一の化学種としてのポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)に、重合触媒やその分解物を含むものである。その点からすると、「組成物」とも解されるが、触媒成分等は、非常に少ない量であるので、本願では「ポリエステル樹脂」と称する。また、本願発明の効果を損なわない範囲で、本願発明のポリエステル樹脂に各種の添加剤が含まれても良い。
これらのジカルボン酸は、全カルボン酸成分のうち、好ましくは0〜15モル%、より好ましくは0.5〜10モル%、更に好ましくは0.8〜7.5モル%、特に好ましくは0.9〜5.0モル%、最も好ましくは1.0〜2.5モル%の範囲で用いることができる。
これらのグリコールは、全グリコール成分のうち、好ましくは0〜15モル%、より好ましくは0.5〜10モル%、更に好ましくは0.8〜7.5モル%、特に好ましくは0.9〜5.0モル%、最も好ましくは1.0〜2.5モル%の範囲で用いることができる。
本発明にかかるポリエステル重合触媒を構成するアルミニウム化合物としては、公知のアルミニウム化合物が限定なく使用できる。
上記を下回ると触媒活性不良となる可能性があり、上記を超えるとアルミニウム化合物由来の異物生成を引き起し、Tc1低下、Tc2上昇となる可能性がある。
また、X1は、金属が2価以上であって、X2が存在しなくても良い。さらには、リン化合物に対して金属の余剰の価数に相当するアニオンが配置されていても良い。
金属としては、Li,Na,K、Ca,Mg,Alが好ましい。
但し、リン化合物については、ポリエステル重合時に減圧環境下に置かれる際、その条件により、添加量の約10〜30%が系外に除去される。そこで、実際は、条件を変えて数回の試行実験を行い、リン化合物のポリエステル中への残留率を見極めた上で、添加量を決める必要がある。
リン化合物の添加量が少ない場合には、触媒活性不良となったり、アルミニウム化合物由来の異物生成を引き起こす場合があり、多すぎてもポリエステル重縮合触媒としての触媒活性が低下する場合があり、その低下の傾向は、アルミニウム化合物の添加量等により変化する。触媒活性が不良となった場合は、後述するが、重縮合での温度時間積が多く必要となるためにリン化合物の分解物量が多くなり、Tc1を170℃以上とすることが困難となる場合がある。
また、リン化合物の添加量が多すぎる場合、後述するが、リン化合物の分解物量が多くなり、Tc1を170℃以上とすることが困難となる場合がある。
P/Alが低すぎると、ポリエステル重縮合触媒としての触媒活性が低下したり、アルミニウム化合物由来の異物生成を引き起こし、Tc1低下、Tc2上昇となる場合があり、高すぎても、やはりポリエステル重縮合触媒としての触媒活性が低下する場合がある。触媒活性が低下した場合には、Tc1を170℃以上とすることが困難となる場合がある。アルミニウム化合物由来の異物が多く生成した場合、Tc2を175℃以下にすることが困難となる。
共存させる場合、アンチモン化合物は、重縮合して得られるポリエステルに対して、アンチモン原子として30ppm以下の量であることが好ましい。より好ましくは、20ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下、特に好ましくは5ppm以下である。アンチモンの添加量を30ppm超にすると、金属アンチモンの析出が起こり、Tc1、Tc2が、前記範囲から外れることがあるため好ましくない。
アルミニウム化合物およびリン化合物を触媒として用いる場合には、スラリー状あるいは溶液状で添加するのが好ましく、水やグリコールなどの溶媒に可溶化したもの、特に、水および/またはエチレングリコールに可溶化したものを用いることが好ましい。
(1)塩基性酢酸アルミニウムの水溶液の調製例
塩基性酢酸アルミニウムに水を加え、50℃以下で3時間以上攪拌する。攪拌時間は、6時間以上であることが更に好ましい。その後、60℃以上で数時間以上攪拌を行う。この場合の温度は、60〜100℃の範囲であることが好ましい。攪拌時間は、1時間以上であることが好ましい。水溶液の濃度は、10g/l〜30g/lが好ましく、特に15g/l〜20g/lが好ましい。
上記の水溶液に対して、エチレングリコールを加える。エチレングリコールの添加量は水溶液に対して、容量比で0.5〜5倍量が好ましい。より好ましくは1〜3倍量である。該溶液を数時間常温で攪拌することで、均一な水/エチレングリコール混合溶液を得る。その後、該溶液を加熱し、水を留去することでエチレングリコール溶液を得ることができる。温度は80℃以上が好ましく、200℃以下が好ましい。より好ましくは90〜150℃で数時間攪拌して水を留去することが好ましい。また留去の際に系を減圧にしても良い。減圧にすることで、より低温で迅速にエチレングリコールを留去することができる。つまり減圧下では、80℃以下でも留去が可能となり、系に与える熱履歴をより少なくすることができる。
乳酸アルミニウムの水溶液を調製する。調製は室温下でも加熱下でもよいが、室温下が好ましい。水溶液の濃度は20g/l〜100g/lが好ましく、50〜80g/lが特に好ましい。該水溶液にエチレングリコールを加える。エチレングリコールの添加量は水溶液に対して容量比で1〜5倍量が好ましい。より好ましくは2〜3倍量である。該溶液を常温で攪拌し、均一な水/エチレングリコール混合溶液を得た後、該溶液を加熱し、水を留去することで、エチレングリコール溶液を得ることができる。温度は80℃以上が好ましく、120℃以下が好ましい。より好ましくは90〜110℃で数時間攪拌して水を留去することが好ましい。
アルキレングリコールとしては、エチレングリコール等の目的とするポリエステルの構成成分であるグリコールを用いることが好ましい。
溶媒中での加熱処理は、リン化合物を溶解してから行うのが好ましいが、完全に溶解していなくても良い。
また、加熱処理の後に、化合物が元の構造を保持している必要はなく、溶媒に対する溶解性が向上する構造に変性する方が、重合活性向上に対してはより好ましい。
ポリエステルの製造法としては、特に制限はなく、テレフタル酸を含む多価カルボン酸と多価アルコールとの直接エステル化法もしくは、テレフタル酸等のアルキルエステルと多価アルコールとのエステル交換法によってテレフタル酸等と多価アルコールとのオリゴマーを得、しかる後に、常圧あるいは減圧下で溶融重縮合してポリエステルを得ることができる。このとき、必要に応じてエステル化触媒もしくは前記の重縮合触媒を用いることができる。
前記溶融重縮合反応は、連続式反応装置で行うことが好ましい。連続反応装置とは、エステル化反応またはエステル交換反応の反応容器と溶融重縮合反応容器を配管でつなぎ、それぞれの反応容器を空にさせることなく連続的に原料投入、配管での溶融重縮合反応容器への移送、溶融重縮合反応容器からの樹脂の抜き出しを行う方法である。なお、この場合、連続とは完全に常時原料投入から抜き出しが行われている必要はなく、少量ずつ、例えば反応容器量の1/10程度の量で、原料投入から抜き出しを行うような間欠的なものであっても良い。
これらいずれの方式においても、エステル化反応、あるいはエステル交換反応は、1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。溶融重縮合反応も、1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。固相重合反応は、溶融重縮合反応と同様連続式装置で行うことが出来る。
また、バッチ式の場合、ポリエステル重合修了後も反応装置内から樹脂を全量抜き出すのに、数十分から数時間かかり、この間にリン化合物の分解が進み、Tc1の低下が生じ、同一ロット内でのTc1が変動すると言う問題が起こる場合があるだけでなく、チップを全体で均一混合した場合では、Tc1の低下が起こることがある。
連続式反応装置では、そのメリットを活かすためには、時間当たり1トン以上の規模で生産を行うことが好ましい。上限は時間当たり50トン程度である。また、同一条件で2日以上生産することが好ましい。
本発明においては、アルミニウム化合物溶液およびリン化合物溶液を、同時に添加することが重要である。同時に添加するとは、それぞれ単独で同じ反応容器や反応容器間の配管に添加する方法、予めアルミニウム化合物溶液およびリン化合物溶液を混合して、一液化して添加する方法が挙げられる。一液化する方法としては、それぞれの溶液をダンクで混合する方法、触媒を添加する配管を途中で合流して混合させる方法などが挙げられる。
なお、反応容器に添加する場合には、反応容器の攪拌を高くすることが好ましい。反応容器間の配管に添加する場合には、インラインミキサーなどを設置して添加された触媒溶液が、速やかに均一混合されるようにすることが好ましい。
また、アルミニウム化合物溶液およびリン化合物溶液は、エステル化反応またはエステル交換反応終了後に添加することが重要である。エステル化反応またはエステル交換反応終了前に添加をすると、Tc1が低くなることがある。これは、後述するが、エステル化工程でもリン化合物の熱分解が進行して分解物が多くなるためだと考えられる。
Tc1の高いポリエステル樹脂を得るために、重縮合工程の条件が重要な要素となる。
本発明者らは、アルミニウム化合物とリン化合物からなる触媒を用いたポリエステルの重合条件と結晶化温度の関係を精査し、その原因、解決法を検討したところ、重縮合温度、時間によってTc1が変動することを突き止めた。
さらに、Tc1変動の原因となっていたものは、触媒として用いられるリン化合物の特定の分解物であることを明らかにし、製造条件を適正化して、この分解物の量をコントロールすることで、アルミニウム化合物とリン化合物からなる触媒を用いたポリエステル樹脂を170℃以上のTc1、かつ175℃以下のTc2という従来知られていなかったものとすることができ、このポリエステル樹脂は成形体の透明性が高く、耐熱性のボトルに用いた場合には、口栓部の結晶化コントロールがしやすく、また、成形用シートに用いた場合には、成形での加熱の際に白化しにくいことが分かった。
以下説明する。
リン化合物の分解物としては様々なものがあるが、本発明者らの検討の結果、特に前記(式A)のリン化合物のt−Bu基が一つ外れたものである、下記(B)構造のものがTc1に大きな影響を与えることが分かった。
リン熱分解物量の上限は、好ましくは10.5ppmであり、さらに好ましくは10ppmであり、特に好ましくは9.5ppmであり、最も好ましくは9ppmである。
なお、(B)構造のものは、樹脂中ではAl塩として存在していると考えられるが、測定においては、リン酸を添加することで、「−PO(OH)2」となり、(B)構造で示されるリン化合物の量は、「−P−O−」部位が「−P−OH」となったものとしての値である。
分解による(B)の生成は、重縮合の温度が高く、時間が長いほど、分解が進行するため、温度と時間を特定の範囲とすることが好ましい。
即ち、[重縮合温度−240](℃)×重縮合時間(分)で表される温度時間積は、1000〜6500(℃×分)が好ましく、より好ましくは2000〜6300(℃×分)であり、更に好ましくは2500〜6200(℃×分)であり、特に好ましくは3000〜6100(℃×分)であり、最も好ましくは3500〜6000(℃×分)である。
上記範囲を超えると、Tc1を170℃以上にすることが困難となることがある。また、上記範囲以下では現実的な溶融重縮合が困難である。
ここで、240℃以上の温度としたのは、重縮合の時間として有意差が認められる5〜10分の時間で、リン化合物の分解にも有意差が生じる温度が240℃以上だからである。
また、IVの高い溶融重合樹脂とするためには、一般的には温度時間積を大きくする必要があり、上記好ましい範囲にしにくい場合がある。このような場合は、反応缶内の減圧度を高める、攪拌を上げることにより重縮合の速度を早めて、狙いの温度時間積で重縮合を行うことが出来る。
本発明のポリエステル樹脂は、一般的に用いられる溶融成形法を用いて、中空成形体、フィルム、シート状物、繊維、その他の成形体等を成形し、また溶融押出法によって別の基材上にコートした被覆物を形成することができる。
本発明のポリエステル樹脂からなるシート状物を、少なくとも一軸方向に延伸することにより、機械的強度を改善することが可能である。
本発明のポリエステル樹脂からなる延伸フィルムは、射出成形もしくは押出成形して得られたシート状物を、通常PETの延伸に用いられる一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のうちの任意の延伸方法を用いて成形される。また、圧空成形、真空成形により、カップ状やトレイ状に成形することもできる。
チップ1個当たりの重量としては10〜50mgが好ましく、さらには20〜45mgが好ましく、特には25〜40mgが好ましい。
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(2/3重量比)混合溶媒中の30℃での溶液粘度から算出した。
ティー・エイ・インスツルメント社製の示差熱分析計(DSC)TAS100型熱分析システムを用いて測定した。ポリエステル樹脂7.5±0.3mgをアルミ製のパンに入れ、融点測定器を用いて280℃まで加熱し、1分間保持した後、液体窒素にて急冷した。上記サンプルを、室温から20℃/分の昇温速度で300℃まで加熱し、昇温結晶化温度(Tc1)並びに融点(Tm)を測定した。更に、300℃に到達してから2分間保持した後、10℃/分の降温速度で冷却し、降温時結晶化温度(Tc2)を測定した。Tc1、Tc2、Tmは、それぞれのピークの極大部分の温度とした。
なお、サンプルは約30−40mgのポリエステルチップ5個をニッパーにて細かく刻み、これら破片のなかから、単独もしくは組み合わせて規定の重量になるよう選び出して測定した。さらに同じ5個のチップから得られた破片の中から、別サンプルを選び出して測定する作業を行い、合計5回測定を行った。5回の測定で得られた値の平均値をTc1、Tc2、Tmの値とした。
白金製るつぼにポリエステル樹脂を秤量し、電気コンロでの炭化の後、マッフル炉で550℃/8時間の条件で灰化した。灰化後のサンプルを、6M塩酸で酸処理の後、1.2M塩酸により20mlに定容した。
ICP発光測定により金属濃度を求めた。
装置:SPECTRO社製 CIROS−120
プラズマ出力:1400W
プラズマガス:13.0L/min
補助ガス:2.0L/min
ネブライザー:クロスフローネブライザー
チャンバー:サイクロンチャンバー
測定波長:167.078nm
1.硫酸、硝酸、過塩素酸による湿式分解を行った。
2.1の操作後、アンモニア水で中和した。
3.2で調整した溶液にモリブデン酸アンモニウム及び硫酸ヒドラジンを加えた。
4.島津製作所製紫外−可視吸光光度計UV−1700を用いて、波長830nmでの吸光度を測定した。
試料ポリエステルを真空乾燥機にて乾燥して、水分率を100ppm以下とし、名機製作所製150C−DM型射出成形機、及びプリフォーム用金型(金型温度5℃)を用いて有底プリフォーム(PF)を成形した。M−150C−DM射出成形機による可塑化条件としては、フィードスクリュー回転数=70%、スクリュー回転数=120rpm、背圧0.5MPa、シリンダー温度はホッパー直下から順に45℃、250℃及びノズルを含めた以降のシリンダー温度(以下、Sxとする)を290℃に設定した。また成形品重量が28.4±0.2gになるように射出圧力及び保圧を調整した。
次いで、プリフォームの口栓部を、フロンティア(株)製NC−01口栓部結晶化装置を用いて加熱結晶化させた。更に、シデル社製のSBO LabN゜1045タイプ1Labブロー成形機を用いて、160℃に設定した金型内で圧力36barの空気を吹込みながら、30秒の成形サイクルにて、750bphで、縦方法に2.5倍、周方向に3.8倍の倍率で、前記プリフォームを二軸延伸ブローした。
ヤマト科学社製真空乾燥器DP61型を用いて140℃で16時間程度真空乾燥したポリエステルを名機製作所社製射出成形機M−150C−DM型射出成形機により図1、図2に示すようにゲート部(G)を有する、2mm〜11mm(A部の厚み=2mm、B部の厚み=3mm、C部の厚み=4mm、D部の厚み=5mm、E部の厚み=10mm、F部の厚み=11mm)の厚さの段付成形板を射出成形した。
成形中に吸湿を防止するために、成形材料ホッパー内は乾燥不活性ガス(窒素ガス)パージを行った。M−150C−DM射出成形機による可塑化条件としては、フィードスクリュー回転数=70%、スクリュー回転数=120rpm、背圧0.5MPa、シリンダー温度はホッパー直下から順に45℃、250℃、以降ノズルを含め290℃に設定した。射出条件は射出速度及び保圧速度は20%、また、成形品重量が146±0.2gになるように射出圧力及び保圧を調整し、その際保圧は射出圧力に対して0.5MPa低く調整した。
射出時間、保圧時間はそれぞれ上限を10秒、7秒、冷却時間は50秒に設定し、成形品取出時間も含めた全体のサイクルタイムは概ね75秒程度とした。
金型には常時、水温10℃の冷却水を導入して温調するが、成形安定時の金型表面温度は22℃前後であった。
成形品特性評価用のテストプレートは、成形材料導入し樹脂置換を行った後、成形開始から11〜18ショット目の安定した成形品の中から任意に選ぶものとした。
5mm厚みのプレート(図1のD部)をヘイズ測定に使用した。
日本電色(株)製ヘイズメーター model NDH2000を用いて、試料のヘイズを測定した。
試料ポリエステル420mgを、HFIP+C6D6(1+1)混合溶媒2.7mlに溶解し、リン酸25%重アセトン溶液を10μl添加して、遠心分離を行った。上澄み液に、トリフロロ酢酸105〜125mgを添加し、すぐにP−NMR測定を行った。得られたスペクトル中で、該当するリン化合物の熱分解物に相当するケミカルシフト値である32.3での積分値の、他のリン化合物に相当する積分値を合わせた合計に対する比率を求め、該当する熱分解物の全リン化合物に対するモル比とした。この値と、(4)のリン化合物量の値より、ポリエステル中の該当するリン化合物の熱分解物量を算出した。
三菱化学製のカールフィッシャー微量水分測定装置CA−100型と水分気化装置VA−100を使用した。三菱化学製の水分気化装置VA−100を、予め乾燥筒2本(シリカゲルと五酸化リンを充填)に乾燥した、窒素ガスを流速250ml/分で流しながら、加熱炉を230℃に加熱して、試料ボードを加熱炉に入れ、加熱炉と試料ボードから得られた乾燥窒素が無水になっていることを、微量水分測定装置CA−100で確認した後、試料3gを乾燥しておいた専用サンプル容器に精秤し、速やかに、サンプルを試料ボードに入れた。サンプルから気化した水分は、乾燥窒素によって、微量水分測定装置CA−100型に運ばれカールフィッシャー滴定され、水分率が求められた。
無作為にチップ100粒を取り(但し、2つ以上が融着したものは除く)その重量を測定し、1粒あたりの重量を求めた。
(1)アルミニウム化合物の調製
塩基性酢酸アルミニウム(ヒドロキシアルミニウムジアセテート)の20g/l水溶液に対して、等量(容量比)のエチレングリコールをともに調合タンクに仕込み、室温で数時間攪拌した後、減圧(3kPa)下、50〜90℃で数時間攪拌しながら系から水を留去し、20g/lのアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液を調製した。
リン化合物として、上記(化1)で表されるIrgamod295(ビーエーエスエフ社製)を、エチレングリコールとともに調合タンクに仕込み、窒素置換下攪拌しながら液温175℃で2時間半加熱し、50g/lのリン化合物のエチレングリコール溶液を調製した。
3基の連続エステル化反応器及び3基の重縮合反応器よりなり、かつ第3エステル化反応器から第1重縮合反応器への移送ラインに高速攪拌器を有したインラインミキサーが設置された連続式ポリエステル製造装置に、高純度テレフタル酸1質量部に対してエチレングリコール0.75質量部を混合して調整されたスラリーを連続的に供給し、第1エステル化反応器の反応温度255℃、170kPa、第2エステル化反応器の反応温度261℃、第3エステル化反応器の反応温度266−267℃にて反応させて、低次縮合物を得た。
該低次縮合生成物を、3基の反応器よりなる連続重縮合装置に連続して移送し、初期重合反応器の反応温度268℃、中期重合反応器の反応温度270℃、0.567kPa、後期重合反応器の反応温度274℃、0.168kPaにて重縮合を行い、IVが0.554dl/gのPETを得た。このときの重縮合時間は計190分であり、温度時間積は5640℃・分となった。ポリエステル樹脂は、ストランド状に押し出し、水中で冷却した後カットし、振動型篩い器で水滴を除去した後、連続ホッパー型乾燥機に投入して140℃の乾燥窒素ガスで12時間乾燥させた。連続的に取り出されたチップは一旦ホッパーに貯蔵された後、1000kgのフレコンバッグに入れ、製品形態とした。
なお、製品は前バッチの影響を排除して高品位な製品を確保するため、運転開始後または条件変更後30時間以上経過したものを採取した。
インラインミキサーからは、前記方法にて調整したアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液を、重縮合終了後の残留量が、得られるポリエステル樹脂の質量に対して、アルミニウム原子として15ppmとなるように、リン化合物のエチレングリコール溶液を、重縮合終了後の残留量が、得られるポリエステル樹脂の質量に対して、リン原子として45ppmとなるように添加した。
チップは切断面が短径2,5mm長径3.0mmの俵型で長さ3.3mm(いずれも10粒をノギスで測った平均値)であり、平均重量36.2mgであった。水分含有量は50ppmであった。
こうして得られたPETの評価結果を表1に示す。
初期重合反応器の反応温度275℃、中期重合反応器の反応温度278℃、1.394kPa、後期重合反応器の反応温度282℃、0.234kPa以外は実施例1と同様に行い、IVが0.544dl/gのPETを得た。このときの重縮合時間は計190分であり、温度時間積は7050℃・分となった。
こうして得られたPETの評価結果を表1に示す。
初期重合反応器の反応温度276℃、中期重合反応器の反応温度282℃、1.589kPa、後期重合反応器の反応温度284℃、0.3kPa以外は実施例1と同様に行い、IVが0.563dl/gのPETを得た。このときの重縮合時間は計190分であり、温度時間積は7400℃・分となった。
こうして得られたPETの評価結果を表1に示す。
初期重合反応器の反応温度269℃、中期重合反応器の反応温度272℃、0.450kPa、後期重合反応器の反応温度275℃、0.115kPa以外は実施例1と同様に行い、IVが0.578dl/gのPETを得た。このときの重縮合時間は計190分であり、温度時間積は5870℃・分となった。
こうして得られたPETの評価結果を表1に示す。
インラインミキサーの回転数を、より高く設定した以外は、実施例1と同様に行い、IVが0.578dl/gのPETを得た。このときの重縮合時間は計190分であり、温度時間積は5640℃・分となった。
こうして得られたPETの評価結果を表1に示す。
3基の連続エステル化反応器及び2基の重縮合反応器を使用し、初期重合反応器の反応温度270℃、後期重合反応器の反応温度275℃にした以外は、実施例3と同様に行い、IVが0.565dl/gのPETを得た。このときの重縮合時間は計130分であり、温度時間積は4100℃・分となった。
こうして得られたPETの評価結果を表1に示す。
初期重合反応器の反応温度269℃、中期重合反応器の反応温度275℃、0.567kPa、後期重合反応器の反応温度280℃、0.168kPa以外は実施例3と同様に行い、IVが0.558dl/gのPETを得た。このときの重縮合時間は計190分であり、温度時間積は6190℃・分となった。
こうして得られたPETの評価結果を表1に示す。
リン化合物のエチレングリコール溶液を、重縮合終了後の残留量が、得られるポリエステル樹脂の質量に対して、リン原子として55ppmとなるように添加した以外は、実施例1と同様に行い、IVが0.563dl/gのPETを得た。このときの重縮合時間は計190分であり、温度時間積は5640℃・分となった。
こうして得られたPETの評価結果を表1に示す。
3基の連続エステル化反応器及び2基の重縮合反応器を使用し、初期重合反応器の反応温度270℃、後期重合反応器の反応温度275℃にした以外は、実施例6と同様に行い、IVが0.568dl/gのPETを得た。このときの重縮合時間は計130分であり、温度時間積は4100℃・分となった。
こうして得られたPETの評価結果を表1に示す。
重縮合時の真空度とインラインミキサーの回転数をより高く設定した以外は、実施例3と同様に行い、IVが0.620dl/gのPETを得た。このときの重縮合時間は計190分であり、温度時間積は5640℃・分となった。
こうして得られたPETの評価結果を表1に示す。
実施例3にて得られたPETを、常法により固相重縮合し、IVが0.720dl/gのPETを得た。このときの重縮合時間は計190分であり、温度時間積は5640℃・分となった。
こうして得られたPETの評価結果を表1に示す。
酸成分を高純度テレフタル酸98.5質量部とイソフタル酸1.5質量部混合する以外は、実施例1と同様に行い、IVが0.556dl/gのPETを得た。このときの重縮合時間は計190分であり、温度時間積は5640℃・分となった。
こうして得られたPETの評価結果を表1に示す。
リン化合物のエチレングリコール溶液を、重縮合終了後の残留量が、得られるポリエステル樹脂の質量に対して、リン原子として30ppmとなるように添加した以外は、実施例1と同様に行い、IVが0.551dl/gのPETを得た。このときの重縮合時間は計190分であり、温度時間積は5640℃・分となった。
こうして得られたPETの評価結果を表1に示す。
アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液を、第2エステル化反応器に添加する以外は、実施例1と同様に行い、IVが0.552dl/gのPETを得た。このときの重縮合時間は計190分であり、温度時間積は5640℃・分となった。
こうして得られたPETの評価結果を表1に示す。
重縮合時間を240分とした以外は、実施例1と同様に行い、IVが0.557dl/gのPETを得た。このときの中期重合反応器の圧力は0.7kPa、後期重合反応器の圧力は0.23kPaで、温度時間積は7120℃・分となった。
こうして得られたPETの評価結果を表1に示す。
(比較例5)
アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液を、重縮合終了後の残留量が、得られるポリエステル樹脂の質量に対して、アルミニウム原子として10ppmとなるように添加し、リン化合物のエチレングリコール溶液を、重縮合終了後の残留量が、得られるポリエステル樹脂の質量に対して、リン原子として15ppmとなるように添加した以外は、実施例1と同様に行い、IVが0.553dl/gのPETを得た。このときの重縮合時間は計190分であり、温度時間積は5640℃・分となった。
こうして得られたPETの評価結果を表1に示す。
以下に、Tc1のコントロールの容易さを示す。
接触処理後のポリエステル樹脂を(4)の方法でプリフォームを作成した。プリフォーム10本をランダムに取り出し、口栓部からサンプルを切り出して、Tc1を測定した。なお、1本のプリフォームからは3点サンプルを取ってTc1を測定し、その3点の平均値をそのプリフォームのTc1とした。10本のプリフォームのTc1の平均と最大、最小値を求めた。結果を表2に示す。
比較例4はTc1がやや低いため、目標としたTc1に対してばらつきが大きく、好適なTc1コントロールが出来なかった。これは配合させるポリエチレンが微量であるため、接触処理でポリエチレンの付着が安定しなかったためと考えられる。
Claims (4)
- アルミニウム化合物および下記化学式(式A)で表されるリン化合物を触媒として用いて得られたポリエステル樹脂であって、昇温時結晶化温度(Tc1)が170℃以上、降温時結晶化温度(Tc2)が175℃以下であり、極限粘度が0.35〜0.80dl/gであることを特徴とするポリエステル樹脂。
((式A)において、X1、X2は、それぞれ、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または1価以上の金属を表す。) - ポリエステル樹脂中に含まれる化学式(式A)で表されるリン化合物及びその熱分解物を含めた全リン化合物のリン原子の量が、ポリエステル樹脂質量に対して20〜65ppmであることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂。
- ポリエステル樹脂中に含まれるアルミニウム化合物のアルミニウム原子と、化学式(式A)で表されるリン化合物及びその熱分解物を含めた全リン化合物のリン原子の比率P/Al(モル比)が、1.4≦P/Al≦100であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂。
- ポリエステルが、エチレンテレフタレート構造単位を85モル%以上含有することを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂。
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