以下、本発明を実施するための形態について、説明する。
本発明の一形態によれば、セルロースエステル樹脂(A)と、オクタノール−水分配係数(logP)値が1.0以上3.0未満であるビニルモノマー(BI)およびlogP値が−2.5以上1.0未満であるビニルモノマー(BII)を含有するモノマー成分を重合して得られたビニルポリマー(B)とを含む、偏光板保護フィルムが提供される。
<セルロースエステル樹脂(A)>
本発明に係る偏光板保護フィルムは、その主成分としてセルロースエステル樹脂(A)を含む。セルロースエステル樹脂(A)の具体的な形態について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。
セルロースエステル樹脂とは、セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位中の2位、3位および6位の水酸基(−OH)の水素原子の一部または全部がアシル基で置換されたセルロースアシレート樹脂をいう。
セルロースエステル樹脂としては、特に制限されない。例えば、セルロースの水酸基部分の水素原子が、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ラウロイル基、ステアロイル等の炭素数2〜20の脂肪族アシル基で置換されたセルロースエステル樹脂が挙げられる。これらのうち、炭素数2〜4のアシル基を有するものが好ましく、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基がより好ましい。なお、セルロースエステル中のアシル基は単一種であってもよいし、複数のアシル基の組み合わせであってもよい。
具体的な好ましいセルロースエステルとしては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースアシレート樹脂が挙げられ、より好ましくは、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースエステルプロピオネート等のセルロースアシレート樹脂を含む。これらのセルロースエステルは単一種を使用してもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
セルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることができる。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。
本発明に係るセルロースエステルは、公知の方法により製造することができる。一般的には、原料のセルロースと所定の有機酸(酢酸、プロピオン酸など)と酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸など)、触媒(硫酸など)と混合して、セルロースをエステル化し、セルロースのトリエステルができるまで反応を進める。トリエステルにおいてはグルコース単位の三個のヒドロキシ基(水酸基)は、有機酸のアシル基で置換されている。同時に二種類の有機酸を使用すると、混合エステル型のセルロースエステル、例えばセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートを作製することができる。次いで、セルロースのトリエステルを加水分解することで、所望のアシル置換度を有するセルロースエステル樹脂を合成する。その後、濾過、沈殿、水洗、脱水、乾燥などの工程を経て、セルロースエステル樹脂ができあがる。
具体的には、特開平10−45804号、特開2005−281645、特開2003−270442号などに記載の方法を参考にして合成することができる。
市販品としては、ダイセル社L20、L30、L40、L50、イーストマンケミカル社のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60S等が挙げられる。
セルロースエステル樹脂のアセチル基置換度(平均置換度;DSac)は、好ましくは2.0以上3.0未満(2.0≦DSac<3.0)である。ここで、偏光板保護フィルムに位相差フィルムとしての機能を持たせ、Rthを100〜250nm(フィルム厚み40μm)としたい場合にはアセチル基置換度を2.0以上2.5未満の範囲とすることが好ましい。一方、Rthを10〜100nm(フィルム厚み40μm)としたい場合にはアセチル基置換度を2.5以上3.0未満の範囲とすることが好ましい。
セルロースアセテートの平均置換度を求める最も一般的な方法は、ASTM−D−817−91(セルロースアセテートなどの試験方法)における酢化度の測定方法である。
セルロースエステル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は80,000〜400,000が好ましく、15,0000〜300,000がさらに好ましい。重量平均分子量(Mw)が80,000以上であれば、破断点伸度が十分高く確保される。一方、重量平均分子量(Mw)が400,000以下であれば、粘度の上昇が抑えられ、良好な濾過性が得られる。
なお、セルロースエステル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
測定条件は以下の通りである。
溶剤: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
本発明に係る偏光板保護フィルムに含まれるカルシウムおよびマグネシウムの総量(質量ppm)と酢酸量(質量ppm)は下記の数式3を満たすことが好ましい。
カルシウムおよびマグネシウムは、偏光板保護フィルムの原料となるセルロースエステル樹脂(A)に含まれるが、セルロースエステル製造過程に添加される酸触媒(特に硫酸)を中和・安定化するため、金属酸化物、金属水酸化物、金属塩(無機酸塩、有機酸塩)として添加されてもよい。また偏光板保護フィルム製膜時に金属酸化物、金属水酸化物、金属塩(無機酸塩、有機酸塩)として添加してもよい。本発明でいう偏光板保護フィルムに含まれるカルシウムおよびマグネシウムの総量(質量ppm)は、それらの合計量を指す。
また、セルロースエステルは製造過程において、反応溶剤やエステル化剤として無水酢酸、酢酸が用いられる。未反応の無水酢酸は反応停止剤(水、アルコール、酢酸等)により加水分解され酢酸を生じる。本発明でいう偏光板保護フィルムに含まれる酢酸量(質量ppm)は、それらの残留酢酸や、遊離酢酸の総量を指す。
上記数式3に示すように、酢酸量(質量ppm)/カルシウムおよびマグネシウムの総量(質量ppm)は1以上30以下である。この比の値が1より小さいとき、カルシウムおよびマグネシウム量に対して酢酸量が少ないことを示すが、この場合にはカルシウムおよびマグネシウム金属塩による光散乱が生じ、コントラストを低下させてしまうことから好ましくない。また、この比の値が30より大きいと、カルシウムおよびマグネシウム量に対して酢酸が過剰量であることになり、セルロースエステルを偏光子に貼り合わせた後、酢酸により偏光子の劣化が促進されてしまうことから好ましくない。
なお、偏光板保護フィルムに含まれるカルシウムおよびマグネシウムの総量(絶対値)は5〜130質量ppmが好ましく、5〜80質量ppmがより好ましく、5〜50質量ppmがさらに好ましい。また、偏光板保護フィルムに含まれる酢酸量は、20〜500質量ppmが好ましく、25〜250質量ppmがより好ましく、30〜150質量ppmがさらに好ましい。ここで、偏光板保護フィルムに含まれるカルシウムおよびマグネシウムの定量は、公知の方法を用いることができるが、例えば、乾燥したセルロースエステルを完全に燃焼させた後、灰分を塩酸に溶解した前処理を行った上で原子吸光法により測定することができる。測定値は絶乾状態のセルロースエステル1g中のカルシウムおよびマグネシウム含有量として質量ppmを単位として得られる。また、偏光板保護フィルムに含まれる酢酸の定量は、公知の方法を用いることができるが、例えば、次のような方法を用いることができる。フィルムを塩化メチレンに溶解し、さらにメタノールを加えて再沈殿を行う。上澄み液をろ過し、その上澄み液をガスクロマトグラフィーにて測定することで、酢酸量を得ることができる。
<ビニルポリマー(B)>
本発明に係る偏光板保護フィルムは、上述したセルロースエステル樹脂(A)に加えて、ビニルポリマー(B)を含む。このビニルポリマー(B)は、所定のビニルモノマー由来の構成単位を含むものである。
具体的には、ビニルポリマー(B)は、オクタノール−水分配係数(logP)値が1.0以上3.0未満であるビニルモノマー(BI)由来の構成単位およびlogP値が−2.5以上1.0未満であるビニルモノマー(BII)由来の構成単位を含むビニルポリマー(B)を含む。ビニルモノマー(BI)のlogP値は、好ましくは1.5以上2.5未満である。一方、ビニルモノマー(BII)のlogP値は、好ましくは−2.0以上0.5未満である。ビニルモノマー(BI)のlogP値が1.0未満である場合、ビニルポリマー(B)が親水性となり、偏光板保護フィルムとした際に耐水性が低下する虞がある。一方、ビニルモノマー(BI)のlogP値が3.0以上である場合、偏光板保護フィルムを構成する主樹脂との相溶性が低下するため好ましくない。また、ビニルモノマー(BII)のlogP値が−2.5未満である場合、偏光板保護フィルムを構成する主樹脂との相溶性が低下するため好ましくなく、ビニルモノマー(BII)のlogP値が1.0以上であると、表面が十分に親水化されないため好ましくない。
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、JIS Z−7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法または経験的方法により見積もることも可能である。
計算方法としては、Crippen’s fragmentation法(“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,27巻、p21(1987年))、Viswanadhan’s fragmentation法(“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,29巻、p163(1989年))、Broto’s fragmentation法(“Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.”,19巻、p71(1984年))、CLogP法(参考文献Leo,A.,Jow,P.Y.C.,Silipo,C.,Hansch,C.,J.Med.Chem.,18,865 1975年)などが好ましく用いられるが、Crippen’s fragmentation法(“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,27巻、p21(1987年))がより好ましい。後述する実施例では、Molinspiration Cheminformatics社のWebに公開されている無料ソフトウェアを用いて計算を行った。なお、測定(計算)方法によってモノマーのlogP値にバラツキが生じる場合には、実施例に記載の手法により測定した値を採用するものとする。
ビニルモノマー(BI)の具体例としては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)等、または上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものが挙げられる。好ましくは、メタクリル酸メチル(メチルメタクリレート;MMA)である。ただし、上述したlogP値の規定を満足する限り、任意のビニルモノマーがビニルモノマー(BI)として用いられうることは当然である。
また、ビニルモノマー(BII)の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐酸基含有モノマーなどが挙げられる。また、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミドやN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド、N−アクリロイルモルホリンなどのスクシンイミド系モノマーなどもモノマー例として挙げられる。
さらに、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールおよびこれらの末端アルキル化物などのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルや2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマーなども使用することができる。
なかでも、メトキシポリエチレングリコ−ルメタクリレ−ト、ポリエチレングリコ−ルメタクリレ−トであることが好ましく、この際、ポリエチレングリコールのオキシエチレン基の繰り返し数nが4〜16であることが好ましく、より好ましくは6〜10である。オキシエチレン基の繰り返し数nが4以上であれば、十分にフィルム表面を親水化することができる。一方、nが16以下であれば、偏光板保護フィルムの透明性が十分に確保されうる。
ビニルポリマー(B)における、ビニルモノマー(BI)由来の構成単位とビニルモノマー(BII)由来の構成単位との含有比率について特に制限はないが、好ましくは95:5〜30:70(BI:BIIの質量比)であり、より好ましくは90:10〜60:40であり、さらに好ましくは80:20〜50:50である。これらの含有比率が上記範囲内の値であると、耐水性を劣化させることなく特異的にフィルム表面を親水化することができるという点で有利である。
なお、場合によっては、ビニルポリマー(B)は、上述したビニルモノマー(BI)およびビニルモノマー(BII)以外のモノマー由来の構成単位をさらに含んでもよい。ただし、これらのモノマーはlogP値が大きすぎるか小さすぎることから、好ましい実施形態において、ビニルポリマー(B)におけるこれらのモノマー由来の構成単位の含有比率は、ビニルモノマー(BI)由来の構成単位およびビニルモノマー(BII)由来の構成単位の合計100質量%に対して、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である。すなわち、これらのモノマー由来の構成単位を含まないことが最も好ましい。
ビニルポリマー(B)の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜50,000が好ましく、より好ましくは5,000〜30,000である。ビニルポリマー(B)の重量平均分子量が1000以上であれば、偏光板保護フィルムの物性が脆くならず、一方、Mwが50,000以下であれば、十分にフィルム表面を親水化することができる。なお、ビニルポリマー(B)の重量平均分子量(Mw)は、上述したセルロースエステル樹脂(A)のMwと同様のGPC測定により測定される。
ビニルポリマー(B)を重合する方法は特に問わないが、従来公知の方法を広く採用することができ、例えばラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などが挙げられる。ラジカル重合法の開始剤としては、例えば、アゾ化合物、過酸化物等が挙げられ、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスイソブチル酸ジエステル誘導体、過酸化ベンゾイルなどが挙げられる。重合溶剤は特に問わないが、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤、メタノール等のアルコール系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、水溶剤等が挙げられる。溶剤の選択により、均一系で重合する溶液重合、生成したポリマーが沈澱する沈澱重合、ミセル状態で重合する乳化重合を行うこともできる。
また、ビニルポリマー(B)の重量平均分子量(Mw)は、公知の分子量調節方法で調整することができる。そのような分子量調節方法としては、例えば四塩化炭素、ラウリルメルカプタン、チオグリコール酸オクチル等の連鎖移動剤を添加する方法等が挙げられる。重合温度は通常室温から130℃、好ましくは50〜110℃で行われる。
<偏光板保護フィルム>
(含有比率)
本発明に係る偏光板保護フィルムにおいて、セルロースエステル樹脂(A)とビニルポリマー(B)との含有比率について特に制限はないが、好ましくは99:1〜70:30((A):(B)の質量比)である。より好ましくは95:5〜80:20であり、さらに好ましくは90:10〜85:15である。これらの含有比率が上記範囲内の値であると、耐水性を劣化させることなく特異的にフィルム表面を親水化することができるという点で有利である。
(内部ヘイズ)
本発明に係る偏光板保護フィルムの内部ヘイズは、0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.03以下、さらに好ましくは0.01以下である。正面コントラストを改良させるためには、セルロースエステルフィルムのヘイズを低下させることが必要であるとされてきたが、ヘイズをフィルム内部のものと表面のものに分離した場合その改善効果が内部のものの方が大きいということが判ってきた。内部ヘイズとは、フィルムの内部の散乱因子により発生するヘイズであり、内部とは、フィルム表面から5μm以上の部分である。この内部ヘイズは、フィルム屈折率±0.05の屈折率の溶剤をフィルム界面に滴下して、フィルム表面のヘイズをできるだけ無視できる状態にして、ヘイズメーターにより測定される。
〈内部ヘイズ測定装置〉
ヘイズメーター(濁度計)(型式:NDH 2000、日本電色(株)製)
光源は、5V9Wハロゲン球、受光部は、シリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)を用いている。なお、測定はJIS K−7136に準じて測定した(後述する実施例も参照)。
<添加剤>
本発明に係る偏光板保護フィルムは、種々の添加剤を含みうる。以下、偏光板保護フィルムに含まれうる添加剤の例について説明するが、下記の形態のみには限定されない。
〈加水分解防止剤(糖エステル化合物)〉
加水分解防止剤について特に制限はないが、オクタノール−水分配係数(logP)が7以上11未満のものが好ましい。logPが以上であれば、加水分解防止効果が十分に確保され、またlogPが11未満であれば、セルロースエステル樹脂(A)との相溶性が十分に確保される結果、湿熱によるブリードアウトの発生が防止される。
加水分解防止剤は、例えば、ピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基の一部がエステル化されたエステル化合物の混合物を好ましく用いることができる。
ピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化したエステル化合物のエステル化の割合としては、ピラノース構造またはフラノース構造内に存在するOH基の70%以上であることが好ましい。
本発明においては、上記エステル化合物を総称して、糖エステル化合物とも称す。
本発明に用いられるエステル化合物の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、あるいはアラビノース、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースあるいはケストース挙げられる。
この他、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。
これらの化合物の中で、特にピラノース構造とフラノース構造を両方有する化合物が好ましい。
例としてはスクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、更に好ましくは、スクロースである。
ピラノース構造またはフラノース構造中のOH基のすべてもしくは一部をエステル化するのに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、酢酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができ、より、具体的には、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、γ−イソジュリル酸、ジュリル酸、メシト酸、α−イソジュリル酸、クミン酸、α−トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、サリチル酸、o−アニス酸、m−アニス酸、p−アニス酸、クレオソート酸、o−ホモサリチル酸、m−ホモサリチル酸、p−ホモサリチル酸、o−ピロカテク酸、β−レソルシル酸、バニリン酸、イソバニリン酸、ベラトルム酸、o−ベラトルム酸、没食子酸、アサロン酸、マンデル酸、ホモアニス酸、ホモバニリン酸、ホモベラトルム酸、o−ホモベラトルム酸、フタロン酸、p−クマル酸を挙げることができるが、特に安息香酸、ナフチル酸が好ましい。
オリゴ糖のエステル化合物を、本発明に係るピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1〜12個を有する化合物として適用できる。
オリゴ糖は、澱粉、ショ糖等にアミラーゼ等の酵素を作用させて製造されるもので、本発明に適用できるオリゴ糖としては、例えば、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖が挙げられる。
また、前記エステル化合物は、下記一般式(A)で表されるピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下縮合した化合物である。ただし、R11〜R15、R21〜R25は、炭素数2〜22のアシル基または水素原子を、m、nはそれぞれ0〜12の整数、m+nは1〜12の整数を表す。
R11〜R15、R21〜R25は、ベンゾイル基、水素原子であることが好ましい。ベンゾイル基は更に置換基R26を有していてもよく、例えばアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、フェニル基が挙げられ、更にこれらのアルキル基、アルケニル基、フェニル基は置換基を有していてもよい。オリゴ糖も本発明のエステル化合物と同様な方法で製造することができる。
以下に、本発明に係るエステル化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明に係る偏光板保護フィルムは、加水分解防止剤を偏光板保護フィルムの全量100質量%に対して0.5〜30質量%含むことが好ましく、特には、2〜15質量%含むことが好ましい。
〈可塑剤〉
本発明に係る偏光板保護フィルムは、機械強度や耐水特性を向上させる目的で、可塑剤を含有することが好ましい。なお、可塑剤オクタノール−水分配係数(logP)が0以上7未満の化合物であることが好ましい。可塑剤は、樹脂に相応した適度な溶解性が必要であるが、本発明の偏光板保護フィルムにおいて、logPが0以上であれば、化合物の水溶性が高くなりすぎずに配向乱れの発生が防止され、またlogPが7未満であれば、化合物の配向性がある程度存在し、所望の位相差を得ることができる。
(ポリエステル化合物)
可塑剤としては、ポリエステル化合物(ポリエステル系可塑剤)を使用することが好ましい。
ポリエステル化合物は特に限定されないが、例えば、ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体とグリコールとの縮合反応により得ることができる末端がヒドロキシ基(水酸基)となる重合体(以下、「ポリエステルポリオール」という)、または、当該ポリエステルポリオールの末端のヒドロキシ基がモノカルボン酸で封止された重合体(以下、「末端封止ポリエステル」という)を用いることができる。ここで言うエステル形成性誘導体とは、ジカルボン酸のエステル化物、ジカルボン酸クロライド、ジカルボン酸の無水物のことである。
上記ポリエステルポリオールや末端封止ポリエステルを用いることにより、フィルムの経時での剥がれ・しわ発生が一層抑制されうる。かような効果が得られる理由は明確ではないが、上記化合物は、セルロースエステルフィルム製膜時に面方向に配向し、吸湿時の変形応力が厚み方向へ分散されるため、フィルムの経時での剥がれ、しわが抑えられたと推定している。
具体的には、ポリエステル化合物として、下記一般式(1)で表されるエステル系化合物を好ましく用いることができる。
(式中、Bはヒドロキシ基、ベンゼンモノカルボン酸残基または脂肪族モノカルボン酸残基であり、Gは炭素数2〜18のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基であり、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜16のアリールジカルボン酸残基であり、nは1以上の整数である。)
上記一般式(1)において、Bがヒドロキシ基である化合物がポリエステルポリオールに相当し、Bがベンゼンモノカルボン酸残基または脂肪族モノカルボン酸残基である化合物が末端封止ポリエステルに相当する。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物は、通常のポリエステル系可塑剤と同様の反応により得られるものである。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物の脂肪族モノカルボン酸成分としては、例えば、炭素数3以下の脂肪族モノカルボン酸が好ましく、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸(酪酸)が挙げられ、これらはそれぞれ一種又は二種以上の混合物として使用することができる。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物のベンゼンモノカルボン酸成分としては、例えば、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、脂肪族酸等があり、これらはそれぞれ一種又は二種以上の混合物として使用することができる。特に、安息香酸、またはパラトルイル酸を含むことが好ましい。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物の炭素数2〜18のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール(1,2−プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール(1,3−プロピレングリコール)、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、一種又は二種以上の混合物として使用される。なかでもエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、2−メチル1,3−プロパンジオールが好ましく、更に好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコールである。
特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースエステルとの相溶性に優れているため、特に好ましい。より好ましくは炭素数2〜6のアルキレングリコールであり、さらに好ましくは炭素数2〜4のアルキレングリコールである。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物の炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、一種又は二種以上の混合物として使用できる。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物の炭素数6〜12のアリールグリコールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、1,4-ベンゼンジメタノール等の環状グリコール類があり、これらのグリコールは、一種又は二種以上の混合物として使用できる。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物の炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ一種又は二種以上の混合物として使用される。
一般式(1)で表されるポリエステル化合物の炭素数6〜16のアリールジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸等がある。上記アリールジカルボン酸は芳香族環に置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基が挙げられる。
Bがヒドロキシ基である場合、すなわち、ポリエステル化合物がポリエステルポリオールである場合には、一般式(1)において、Aは炭素数10〜16のアリールジカルボン酸残基であることが好ましい。例えばベンゼン環構造、ナフタレン環構造、アントラセン環構造等の芳香族環式構造を有するジカルボン酸を使用することができ、具体的なアリールジカルボン酸成分としては、例えばオルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸を挙げることができる。好ましくは、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸であり、更に好ましくは、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、特に好ましくは、2,6−ナフタレンジカルボン酸である。これらは単独で使用又は二種以上併用できる。
上記ポリエステルポリオールは、原料として使用するジカルボン酸の炭素数の平均が10〜16の範囲であることが重要である。かかるジカルボン酸の炭素数の平均が10以上であれば、セルロースエステルフィルムの寸法安定性に優れ、炭素数の平均が16以下であれば、セルロースエステルとの相溶性に優れ、セルロースエステルフィルムの透明性が著しく優れる。ジカルボン酸として、好ましくは炭素数の平均が10〜14であり、更に好ましくは炭素数の平均が10〜12である。
前記ポリエステルポリオールのジカルボン酸の炭素数の平均とは、単一のジカルボン酸を用いてポリエステルポリオールを重合する場合は該ジカルボン酸の炭素数を意味するが、二種以上のジカルボン酸を用いてポリエステルポリオールを重合する場合、それぞれのジカルボン酸の炭素数とそのジカルボン酸のモル分率の積の合計を意味する。
前記炭素数の平均が10〜16であれば、前記10〜16個の炭素原子を有するアリールジカルボン酸とそれ以外のジカルボン酸を併用することができる。
併用できるジカルボン酸としては、4〜9個の炭素原子を有するジカルボン酸が好ましく、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸やこれらのエステル化物、酸塩化物、酸無水物を挙げることができる。
以下に、ポリエステルポリオールの炭素数が10〜16であるジカルボン酸の具体例を示すが、本発明はこれに限定されない。
(1)2,6−ナフタレンジカルボン酸
(2)2,3−ナフタレンジカルボン酸
(3)2,6−アントラセンジカルボン酸
(4)2,6−ナフタレンジカルボン酸:コハク酸(75:25〜99:1 モル比)
(5)2,6−ナフタレンジカルボン酸:テレフタル酸(50:50〜99:1 モル比)
(6)2,3−ナフタレンジカルボン酸:コハク酸(75:25〜99:1 モル比)
(7)2,3−ナフタレンジカルボン酸:テレフタル酸(50:50〜99:1 モル比)
(8)2,6−アントラセンジカルボン酸:コハク酸(50:50〜99:1 モル比)(9)2,6−アントラセンジカルボン酸:テレフタル酸(25:75〜99:1 モル比)
(10)2,6−ナフタレンジカルボン酸:アジピン酸(67:33〜99:1 モル比)
(11)2,3−ナフタレンジカルボン酸:アジピン酸(67:33〜99:1 モル比)
(12)2,6−アントラセンジカルボン酸:アジピン酸(40:60〜99:1 モル比)
本発明において用いることができるポリエステル化合物としては、上記のポリエステルポリオール以外に、化合物の水溶性や配向性の観点から、オクタノール−水分配係数(logP(B))は0以上7未満の化合物を用いることも好ましい。
ポリエステルポリオールは、ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体(一般式(1)のAに相当する成分)とグリコール(一般式(1)のGに相当する成分)を必要に応じてエステル化触媒の存在下で、例えば180〜250℃の温度範囲内で、10〜25時間、周知慣用の方法でエステル化反応させることによって製造することができる。
エステル化反応を行う際に、トルエン、キシレン等の溶剤を用いても良いが、無溶剤若しくは原料として使用するグリコールを溶剤として用いる方法が好ましい。
前記エステル化触媒としては、例えばテトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、p−トルエンスルホン酸、ジブチル錫オキサイド等を使用することができる。前記エステル化触媒は、ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体の全量100質量部に対して0.01〜0.5質量部使用することが好ましい。
ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体とグリコールを反応させる際のモル比は、ポリエステルの末端基がヒドロキシ基(水酸基)となるモル比でなければならず、そのためジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体1モルに対してグリコールは1.1〜10モルである。好ましくは、ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体1モルに対して、グリコールが1.5〜7モルであり、更に好ましくは、ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体1モルに対して、グリコールが2〜5モルである。
上記ポリエステルポリオールの末端基はヒドロキシ基(水酸基)であるが、ポリエステルポリオール中には、副生成物としてカルボキシ基末端の化合物も含まれうる。ただし、ポリエステルポリオール中におけるカルボキシ基末端は、湿度安定性を低下させるため、その含有量は低い方が好ましい。具体的には、酸価5.0mgKOH/g以下が好ましく、更に好ましくは1.0mgKOH/g以下であり、特に好ましくは0.5mgKOH/g以下である。
ここでいう「酸価」とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシ基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価はJIS K0070:1992に準拠して測定したものである。
前記ポリエステルポリオールは、ヒドロキシ(水酸基)価(OHV)が35mg/g〜220mg/gの範囲であることが好ましい。ここで言うヒドロキシ(水酸基)価とは、試料1g中に含まれるOH基をアセチル化したときに、ヒドロキシ基(水酸基)と結合した酢酸を中和するために要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。無水酢酸を用いて試料中のOH基をアセチル化し、使われなかった酢酸を水酸化カリウム溶液で滴定し、初期の無水酢酸の滴定値との差より求める。
前記ポリエステルポリオールのヒドロキシ基(水酸基)含有量は、70%以上であることが好ましい。ヒドロキシ基(水酸基)含有量が少ない場合、ポリエステルポリオールとセルロースエステルとの相溶性が低下する。このため、ヒドロキシ基(水酸基)含有量は、70%以上が好ましく、更に好ましくは90%以上であり、最も好ましくは99%以上である。
本発明において、ヒドロキシ基(水酸基)含有量が50%以下の化合物は、末端基の一方がヒドロキシ基(水酸基)以外の基で置換されているためポリエステルポリオールには含まれない。
前記ヒドロキシ基(水酸基)含有量は、下記の式(A)により求めることができる。
前記ポリエステルポリオールは、300〜3000の範囲内の数平均分子量を有することが好ましく、350〜2000の数平均分子量を有することがより好ましい。
また、本発明に係るポリエステルポリオールの分子量の分散度は1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることが更に好ましい。分散度が上記範囲以内であれば、セルロースエステルとの相溶性に優れたポリエステルポリオールを得ることができる。
また、前記ポリエステルポリオールは、分子量が300〜1800の成分を50%以上含有することが好ましい。数平均分子量を前記範囲とすることにより、相溶性を大幅に向上させることができる。
数平均分子量、分散度および成分含有率を上記の好ましい範囲に制御する方法として、ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体1モルに対してグリコールを2〜5モル使用し、未反応のグリコールを減圧留去する方法が好ましい。減圧留去する温度は、100〜200℃が好ましく、更に好ましくは120〜180℃であり、特に好ましくは130〜170℃が好ましい。減圧留去する際の減圧度は、0.1〜500Torrが好ましく、さらに好ましくは0.5〜200Torrであり、最も好ましくは1〜100Torrである。
ポリエステル化合物(ポリエステルポリオール、末端封止ポリエステル)の数平均分子量(Mn)および分散度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
測定条件の一例は以下の通りであるが、これに限られることはなく、同等の測定方法を用いることも可能である。
溶剤: テトラヒドロフラン(THF)
カラム: TSKgel G2000HXL(東ソー(株)製を2本接続して使用する)
カラム温度:40℃
試料濃度: 0.1質量%
装置: HLC−8220(東ソー(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: PStQuick F(東ソー(株)製)による校正曲線を使用する。
Bがベンゼンモノカルボン酸残基または脂肪族モノカルボン酸残基である場合、すなわち、ポリエステル化合物が末端封止ポリエステルである場合には、一般式(1)において、好ましいAとしては、アジピン酸残基、フタル酸残基等が挙げられる。
また、一般式(1)におけるAは、炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基と炭素数6〜16のアリールジカルボン酸残基との両方を含むことが好ましく、より好ましくは、アジピン酸残基とフタル酸残基との両方を含む。
末端封止ポリエステルは、2つの末端基Bのうちの少なくとも一方がモノカルボン酸残基であればよい。すなわち、2つの末端基Bのうちの一方がヒドロキシ基であり、他方がモノカルボン酸残基であってもよい。ただし、2つの末端基Bの両方がモノカルボン酸残基であることが好ましい。
末端基Bとしては、上述したベンゼンモノカルボン酸残基、脂肪族モノカルボン酸残基を使用することができるが、好ましくはベンゼンモノカルボン酸残基である。すなわち、芳香族末端ポリエステルであることが好ましい。
上記末端封止ポリエステルは、グリコール(一般式(1)のGに相当する成分)と、ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体(一般式(1)のAに相当する成分)およびモノカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体(一般式(1)のBに相当する成分)とエステル化反応させることにより得ることができ、例えば、特開2011−52205号公報、特開2008−69225号公報、特開2008−88292号公報、特開2008−115221号公報等を参考にして合成することができる。
上述したエステル化合物は、その合成時点では分子量および分子構造に分布を有する混合物であるが、そのなかに本発明に好ましい成分、例えば、一般式(1)のAとしてフタル酸残基およびアジピン酸残基を有するポリエステル化合物を少なくとも1種類有していればよい。
末端封止ポリエステルは、数平均分子量が、好ましくは300〜1500、より好ましくは400〜1000の範囲が好適である。また、その酸価は、0.5mgKOH/g以下、ヒドロキシ(水酸基)価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、ヒドロキシ(水酸基)価は15mgKOH/g以下のものである。
以下に、本発明に用いることのできる一般式(1)で表されるエステル系化合物の具体的化合物を示すが、本発明はこれに限定されない。
本発明に係る偏光板保護フィルムは、ポリエステル化合物を、偏光板保護フィルムの全量100質量%に対して、0.1〜30質量%含むことが好ましく、特には、0.5〜10質量%含むことが好ましい。
〈その他の可塑剤〉
本発明に係る偏光板保護フィルムは、上記ポリエステル化合物に代えてまたはこれに加えて、他の可塑剤を含有することができる。好ましくは、(a−1)多価アルコールエステル系可塑剤、(a−2)多価カルボン酸エステル系可塑剤、(a−3)グリコレート系可塑剤、(a−4)フタル酸エステル系可塑剤、(a−5)脂肪酸エステル系可塑剤、(a−6)リン酸エステル系可塑剤等から選択される。
(a−1)多価アルコールエステル系可塑剤は下記一般式(3)で表される多価アルコールのエステル化合物である。
(式中、R1はn価の有機基、nは2以上の正の整数を表す)
好ましい多価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸などを用いることができる。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に、安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量300〜1500の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は一種類でもよいし、二種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
この他、トリメチロールプロパントリアセテート、ペンタエリスリトールテトラアセテートなども好ましく用いられる。特開2008−88292号に記載の一般式(I)で表されるエステル化合物(A)を使用することも好ましい。
(a−2)多価カルボン酸エステル化合物としては、2価以上、好ましくは2価〜20価の多価カルボン酸とアルコールのエステルよりなる。また、脂肪族多価カルボン酸は2〜20価であることが好ましく、芳香族多価カルボン酸、脂環式多価カルボン酸の場合は2価〜20価であることが好ましい。
多価カルボン酸は次の一般式(4)で表される。
(式中、R2は(m+n)価の有機基であり、mは2以上の正の整数であり、nは0以上の整数であり、COOH基はカルボキシル基であり、OH基はアルコール性またはフェノール性水酸基である。)
好ましい多価カルボン酸の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような2価以上の芳香族多価カルボン酸またはその誘導体、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマール酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸、酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸などを好ましく用いることができる。
多価カルボン酸エステル化合物に用いられるアルコールとしては公知のアルコール、フェノール類を用いることができる。例えば炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪族飽和アルコールを好ましく用いることができる。
炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。また、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコールまたはその誘導体、ベンジルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールまたはその誘導体なども好ましく用いることができ、フェノールとしては、フェノール、パラクレゾール、ジメチルフェノール等を単独または2種以上を併用して使用することができる。
特開2008−88292号に記載の一般式(II)で表されるエステル化合物(B)を使用することも好ましい。
多価カルボン酸エステル化合物の分子量は特に制限はないが、分子量300〜1000の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることがさらに好ましい。
多価カルボン酸エステルに用いられるアルコール類は一種類でも良いし、二種以上の混合であっても良い。
多価カルボン酸エステル化合物の酸価は1mgKOH/g以下であることが好ましく、0.2mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
酸価とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシル基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価はJIS K0070:1992に準拠して測定したものである。
(a−3)グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート等が挙げられる。
(a−4)フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
(a−5)脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
(a−6)リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
これらの可塑剤は、偏光板保護フィルムの全量100質量%に対して、0.1〜30質量%の量で含まれることが好ましく、特には、0.5〜10質量%の量で含まれることが好ましい。
〈紫外線吸収剤〉
本発明に係る偏光板保護フィルムは、紫外線吸収剤を含有することもできる。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下である。
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類があり、これらはいずれもBASFジャパン社製の市販品であり好ましく使用できる。
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、である。
この他、1,3,5トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。
本発明に係る偏光板保護フィルムは紫外線吸収剤を2種以上を含有することが好ましい。
また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶剤あるいはこれらの混合溶剤に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。
無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、偏光板保護フィルムの全量100質量%に対して、0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%がさらに好ましい。
〈酸化防止剤〉
酸化防止剤は劣化防止剤ともいわれる。高湿高温の状態に液晶画像表示装置などがおかれた場合には、偏光板保護フィルムの劣化が起こる場合がある。
酸化防止剤は、例えば、偏光板保護フィルム中の残留溶剤量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等により偏光板保護フィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、前記偏光板保護フィルム中に含有させるのが好ましい。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることができる。
特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
これらの酸化防止剤の含有量は、偏光板保護フィルムの全量100質量%に対して、1質量ppm〜1.0質量%が好ましく、10〜1000質量ppmがさらに好ましい。
〈微粒子〉
本発明に係る偏光板保護フィルムには、滑り性を付与するため、微粒子を添加することが好ましい。
添加される微粒子の平均一次粒子径としては、20nm以下が好ましく、さらに好ましくは5〜16nmであり、特に好ましくは5〜12nmである。
これらの微粒子は0.1〜5μmの粒径の二次粒子を形成してフィルムに含まれることが好ましく、好ましい平均二次粒子径は0.1〜2μmであり、さらに好ましくは0.2〜0.6μmである。これにより、フィルム表面に高さ0.1〜1.0μm程度の凹凸を形成し、これによってフィルム表面に適切な滑り性を与えることができる。
本発明に用いられる微粒子の平均一次粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、粒子径を測定しその平均値をもって、平均一次粒子径とする。
微粒子の見掛比重としては、70g/リットル以上が好ましく、さらに好ましくは、90〜200g/リットルであり、特に好ましくは、100〜200g/リットルである。見掛比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
一次粒子の平均粒子径が20nm以下、見掛比重が70g/リットル以上の二酸化珪素微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させることで得ることができる。また例えばアエロジル200V、アエロジルR972V(以上、日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、それらを使用することができる。
上記記載の見掛比重は二酸化珪素微粒子を一定量メスシリンダーに採り、この時の重さを測定し、下記式で算出したものである。
本発明に用いられる微粒子の分散液を調製する方法としては、例えば以下に示すような3種類が挙げられる。
《調製方法A》
溶剤と微粒子を攪拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液をドープ液に加えて攪拌する。
《調製方法B》
溶剤と微粒子を攪拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別に溶剤に少量のセルロースアシレートを加え、攪拌溶解する。これに前記微粒子分散液を加えて攪拌する。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
《調製方法C》
溶剤に少量のセルロースアシレートを加え、攪拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
調製方法Aは二酸化珪素微粒子の分散性に優れ、調製方法Cは二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい点で優れている。中でも、上記記載の調製方法Bは二酸化珪素微粒子の分散性と、二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい調製方法である。
《分散方法》
二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散する時の二酸化珪素の濃度は5質量%〜30質量%が好ましく、10質量%〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶剤としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
セルロースエステルに対する二酸化珪素微粒子の添加量はセルロースエステル100質量部に対して、二酸化珪素微粒子は0.01質量部〜5.0質量部が好ましく、0.05質量部〜1.0質量部が更に好ましく、0.1質量部〜0.5質量部が最も好ましい。添加量は多い方が、動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方が、凝集物が少なくなる。
分散機は通常の分散機が使用できる。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。二酸化珪素微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミルなどが挙げられる。
メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶剤を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。
高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.807MPa以上であることが好ましい。
さらに好ましくは19.613MPa以上である。またその際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。
上記のような高圧分散装置には、Microfluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)或いはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えば、イズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)製UHN−01等が挙げられる。
また、微粒子を含むドープを流延支持体に直接接するように流延することが、滑り性が高く、ヘイズが低いフィルムが得られるので好ましい。
また、流延後に剥離して乾燥されロール状に巻き取られた後、ハードコート層や反射防止層等の機能性薄膜が設けられてもよい。加工若しくは出荷されるまでの間、汚れや静電気によるゴミ付着等から製品を保護するために通常、包装加工がなされる。
この包装材料については、上記目的が果たせれば特に限定されないが、フィルムからの残留溶剤の揮発を妨げないものが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、紙、各種不織布等が挙げられる。繊維がメッシュクロス状になったものは、より好ましく用いられる。
<偏光板保護フィルムの物性>
偏光板保護フィルムの膜厚は、特に限定はされないが10〜200μmが用いられる。特に膜厚は10〜100μmであることが特に好ましい。さらに好ましくは20〜60μmである。
偏光板保護フィルムは、幅1〜4mのものが用いられる。特に幅1.4〜4mのものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.6〜3mである。4mを超えると搬送が困難となる。
本発明に係る偏光板保護フィルムの透湿度は、40℃、90%RHで300〜1800g/m2・24hが好ましく、さらに400〜1500g/m2・24hが好ましく、40〜1300g/m2・24hが特に好ましい。透湿度はJIS Z 0208に記載の方法に従い測定することができる。
本発明に係る偏光板保護フィルムの破断伸度は5〜80%であることが好ましく10〜50%であることがさらに好ましい。
本発明に係る偏光板保護フィルムの可視光透過率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることが更に好ましい。
本発明に係る偏光板保護フィルムのヘイズ(内部ヘイズ)は1%未満であることが好ましく0〜0.1%であることが特に好ましい。
本発明に係る偏光板保護フィルムの面内リターデーション値(Ro)および厚さ方向のリターデーション値(Rt)は、偏光子保護フィルムとして用いる場合には0≦Ro、Rt≦70nmであることが好ましい。より好ましくは0≦Ro≦30nmかつ0≦Rt≦50nmであリ、より好ましくは0≦Ro≦10nmかつ0≦Rt≦30nmである。
本発明に係る偏光板保護フィルムは位相差フィルムとして用いることが好ましく、その場合には、30≦Ro≦100nmかつ70≦Rt≦400nmであリ、より好ましくは35≦Ro≦65nmかつ90≦Rt≦180nmである。また、Rtの変動や分布の幅は±50%未満であることが好ましく、±30%未満であることが好ましく、±20%未満であることがより好ましい。±15%未満であることがさらに好ましく、±10%未満であることがいっそう好ましく、±5%未満であることがさらに好ましく、±1%未満であることが特に好ましい。最も好ましくはRtの変動がないことである。
なおリターデーション値Ro、Rtは以下の式によって求めることができる。
式中、dはフィルムの厚み(nm)、屈折率nx(フィルムの面内の最大の屈折率、遅相軸方向の屈折率ともいう)、ny(フィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率)、nz(厚み方向におけるフィルムの屈折率)である。リターデーション値(Ro)、(Rt)は自動複屈折率計を用いて測定することができる。例えば、KOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長590nmで求めることができる。
本発明の偏光板保護フィルムは、その表面に鹸化処理などの表面活性化処理を施されていないものであることが好ましい。
<接触角>
本発明に係る偏光板保護フィルムは、ビニルポリマー(B)を含むことで、親水性が付与され、表面の接触角が低減されうる。具体的には、本発明に係る偏光板保護フィルムの2つの主表面のうち、一方の純水接触角が10〜50°であることが好ましく、より好ましくは20〜30°である。偏光板保護フィルムの表面の純水接触角がかような範囲内の値であると、鹸化処理を施さなくとも表面が親水化された偏光板保護フィルムが提供される。このように純水接触角の小さい表面に対しては、鹸化処理を施すことなく水糊で偏光子と十分な接着性をもって接着させることができる。したがって、偏光板およびこれを用いた表示装置の製造における生産性が格段に向上しうる。
なお、偏光板保護フィルムの他方の主表面の純水接触角は小さくなくともよく、好ましくは、上述した比較的小さい純水接触角の値よりも20〜40°大きい値である。
なお、接触角の測定方法としては、接触角測定用液として純水を使用し、23℃、55%RHに調湿したクリーンルームで、測定対象となるフィルム表面にシリンジから純水を一滴乗せ、接触角測定器(FIBLO社製)を使用して滴下3秒後の角度を測定し、接触角とするものとする。
<偏光板保護フィルムの製造方法>
次に、本発明の偏光板保護フィルムの製造方法について説明する。
本発明に係る偏光板保護フィルムは溶液流延法で製造されたフィルムであっても溶融流延法で製造されたフィルムであっても好ましく用いることができる。ただし、溶液流延法によって製造することが好ましいことから、以下、溶液流延法によって本発明に係る偏光板保護フィルムを製造する方法について説明する。
溶液流延法において、本発明の偏光板保護フィルムの製造は、例えば、セルロースエステルおよび添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、さらに乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行われる。
まず、ドープを調製する工程について述べる。本工程では、セルロースエステル樹脂(A)、ビニルポリマー(B)、および溶剤を含有するドープを調製する。
ドープ中のセルロースエステル樹脂(A)およびビニルポリマー(B)の配合比は、製造されるフィルム中における互いの含有比率に応じて設定されうる。そして、これらの成分の合計配合量は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する合計配合量(濃度)としては、10〜35質量%が好ましく、さらに好ましくは、15〜25質量%である。
ドープで用いられる溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、セルロースエステル樹脂(A)の良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースエステルの溶解性の点で好ましい。
良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜99質量%であり、貧溶剤が1〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステル樹脂(A)を単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。
そのため、セルロースエステル樹脂(A)の平均酢化度(アセチル基置換度)によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いる時には、セルロースエステル樹脂(A)の酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶剤になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶剤となる。
本発明に用いられる良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられる。
また、本発明に用いられる貧溶剤は特に限定されないが、例えば、炭素原子数1〜5の脂肪族アルコールが挙げられる。当該脂肪族アルコールの使用量は、溶剤の全量100質量%に対して、好ましくは1〜30質量%であり、より好ましくは5〜20質量%である。貧溶剤の含有量が1質量%以上であれば、貧溶剤の使用によるメリットを十分にはっきさせることが可能となる。一方、貧溶剤の含有量が30質量%以下であれば、フィルムの白濁が防止されうる。
本形態の製造方法では、かような貧溶剤を用いることで、得られる偏光板保護フィルムの一方の主表面のみの親水性を高めることが可能となる。すなわち、かような貧溶剤を用いて溶液流延法によりフィルムを製造すると、製造中の乾燥工程において、残留した貧溶剤は支持体(流延ベルト)側に位置するフィルムの表面側に偏在する。なお、支持体(流延ベルト)側に位置するフィルムの表面を「B面」とも称し、これとは反対の側(空気と接して露出している側)のフィルムの表面を「A面」とも称する。
そして、ビニルポリマー(B)を構成するビニルモノマー(BII)由来の構成単位はlogP値が比較的小さいため親水性が高く、よって、B面側に偏在する貧溶剤と親和性が高い。したがって、ビニルポリマー(B)の構成単位のうちビニルモノマー(BII)由来の構成単位がB面側に偏析することとなる結果、B面側のフィルム表面が特異的に親水化されうるのである。このようにして、偏光板保護フィルムの2つの主表面の間で純水接触角に差をつけることができ、しかも、一方の主表面の純水接触角の絶対値も小さい値とすることが可能となるのである。
ドープの調製に用いられる溶剤としては、フィルム製膜工程で乾燥によりフィルムから除去された溶剤を回収し、これを再利用して用いることが好ましい。
回収溶剤中に、添加剤、例えば可塑剤、紫外線吸収剤、ポリマー、モノマー成分などが微量含有されていることもあるが、これらが含まれていても好ましく再利用することができるし、必要であれば精製して再利用することもできる。
上記記載のドープを調製するときの、セルロースエステル樹脂(A)およびビニルポリマー(B)の溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。
溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。
また、セルロースエステル樹脂(A)およびビニルポリマー(B)を貧溶剤と混合して湿潤あるいは膨潤させた後、さらに良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方が樹脂成分の溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。
好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃がさらに好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
もしくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶剤に樹脂成分を溶解させることができる。
次に、得られたドープを濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生し易いという問題がある。
このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材がさらに好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
濾過により、原料の樹脂成分に含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間に光学フィルム等を置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下であることが好ましい。
より好ましくは100個/cm2以下であり、更に好ましくは50個/m2以下であり、さらに好ましくは0〜10個/cm2以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。
好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることがさらに好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることがさらに好ましい。
続いて、ドープの流延について説明する。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤の沸点未満の温度で、温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
好ましい支持体温度は0〜55℃であり、25〜50℃がさらに好ましい。あるいは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶剤を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
偏光板保護フィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶剤量は10〜150質量%が好ましく、さらに好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
本発明においては、残留溶剤量は下記式で定義される。
式中、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
また、偏光板保護フィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、さらに乾燥し、残留溶剤量を1質量%以下にすることが好ましく、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールにウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
本発明の偏光板保護フィルムを作製するためには、ウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で幅方向(横方向)に延伸を行うことが特に好ましい。剥離張力は300N/m以下で剥離することが好ましい。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は40〜200℃で段階的に高くしていくことが好ましい。
偏光板保護フィルムに下記所望のリターデーション値Ro、Rtを付与するには、偏光板保護フィルムが本発明の構成をとり、さらに搬送張力の制御、延伸操作により屈折率制御を行うことが好ましい。
例えば、長手方向の張力を低くまたは高くすることでリターデーション値を変動させることが可能となる。
また、フィルムの長手方向(製膜方向)およびそれとフィルム面内で直交する方向、即ち幅手方向に対して、逐次または同時に2軸延伸もしくは1軸延伸することが好ましい。
互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的には流延方向に0.8〜1.5倍、幅方向に1.1〜2.5倍の範囲とすることが好ましく、流延方向に0.8〜1.0倍、幅方向に1.2〜2.0倍に範囲で行うことが好ましい。
延伸温度は120℃〜200℃が好ましく、さらに好ましくは150℃〜200℃であり、さらに好ましくは150℃を超えて190℃以下で延伸するのが好ましい。
延伸時のフィルム中の残留溶剤量は、フィルムの全量100質量%に対して、20〜0質量%が好ましく、さらに好ましくは15〜0質量%で延伸するのが好ましい。
具体的には155℃で残留溶剤量が11質量%で延伸する、または155℃で残留溶剤量が2質量%で延伸するのが好ましい。あるいは、160℃で残留溶剤量が11質量%で延伸するのが好ましく、または160℃で残留溶剤量が1質量%未満で延伸するのが好ましい。
ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。
また、所謂テンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
製膜工程のこれらの幅保持あるいは横方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
本発明の偏光板保護フィルムの遅相軸または進相軸がフィルム面内に存在し、製膜方向とのなす角をθ1とするとθ1は−1°以上+1°以下であることが好ましく、−0.5°以上+0.5°以下であることがより好ましく、−0.1°以上+0.1°以下であることがさらに好ましい。
このθ1は配向角として定義でき、θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器)を用いて行うことができる。θ1が各々上記関係を満たすことは、表示画像において高い輝度を得ること、光漏れを抑制または防止することに寄与でき、カラー液晶表示装置においては忠実な色再現を得ることに寄与できる。
<偏光板>
本発明の偏光板保護フィルムは、偏光板保護フィルムとして偏光板に、また該偏光板を用いた液晶表示装置に使用することができる。
本発明に係る偏光板は、上記本発明の偏光板保護フィルムを偏光板保護フィルムとして用いて、偏光子の少なくとも一方の面に貼合した偏光板であることが好ましい。本発明の液晶表示装置は、少なくとも一方の液晶セル面に、本発明に係る偏光板が、粘着層を介して貼り合わされたものであることが好ましい。
本発明の偏光板は一般的な方法で作製することができる。
まず、偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光子の膜厚は5〜30μmが好ましく、特に10〜20μmであることが好ましい。
また、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、けん化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。なかでも、熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子は、偏光性能および耐久性能に優れているうえに、色斑が少なく、大型液晶表示装置に特に好ましく用いられる。
偏光板を製造する際には、本発明の偏光板保護フィルムをヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。
この際、本発明に係る偏光板保護フィルムの2つの主表面の間で純水接触角の値が異なる場合(好ましくは、これらの差が20〜40°である場合)には、当該純水接触角の値が小さい方の主表面と、偏光子の一方の主表面とが貼合されることが好ましい。かような構成とすることで、偏光子と偏光板保護フィルムとを水糊を用いて貼合する際に、偏光板保護フィルムの表面に対する鹸化処理を省略することができるのである。
偏光子の他方の面には、同様に本発明に係る偏光板保護フィルムを用いてもよいし、また、他の偏光板保護フィルムを貼合することもできる。
例えば、市販の偏光板保護フィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UXW−RHA−C、KC8UXW−RHA−NC、KC4UXW−RHA−NC、以上コニカミノルタオプト(株)製)も好ましく用いられる。他の偏光板保護フィルムの場合は、あらかじめ鹸化処理等の表面活性化処理を行う必要がある。
液晶表示装置の表面側に用いられる偏光板保護フィルムには、防眩層あるいはクリアハードコート層のほか、反射防止層、帯電防止層、防汚層、バックコート層を有することが好ましい。
<液晶表示装置>
本発明により提供される偏光板は、液晶表示装置に用いることができる。すなわち、本発明のさらに他の形態によれば、本発明により提供される偏光板と、液晶セルの少なくとも一方の表面とが貼合されてなることを特徴とする液晶表示装置もまた、提供される。本形態に係る液晶表示装置は、本発明により提供される、優れた耐久性を有する偏光板保護フィルムを備えた偏光板を用いていることから、同様に耐久性に優れたものである。また、当該液晶表示装置を製造する際には、偏光板の製造時に偏光板保護フィルム表面の表面活性化処理が省略できることから、製造時の生産性の点でも優れたものである。
偏光板の偏光板保護フィルムの露出表面と、液晶セルの少なくとも一方の表面との貼合は、従来公知の手法により行われうる。場合によっては、接着層を介して貼合されてもよい。
液晶表示装置のモード(駆動方式)についても特に制限はなく、STN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPS、OCBなどの各種モード(駆動方式)の液晶表示装置が用いられうる。好ましくは、VA(MVA,PVA)型液晶表示装置である。これらの液晶表示装置に本発明により提供される偏光板を用いることで、特に30型以上の大画面の液晶表示装置であっても、環境変動が少なく、色ムラなど視認性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<セルロースエステルA1の合成>
セルロース100質量部に、硫酸16質量部、無水酢酸260質量部、酢酸420質量部をそれぞれ添加し、攪拌しながら室温から60℃まで60分かけて昇温し、15分間その温度を保持しながら酢化反応を行った。次に、酢酸マグネシウムおよび酢酸カルシウムの酢酸−水混合溶液を添加して硫酸を中和した後、反応系内に水蒸気を導入して、60℃で120分間維持して鹸化熟成処理を行った。その後、多量の水により洗浄を行い、さらに乾燥し、セルロースエステルA1を得た。
なお、得られたセルロースエステルA1は、アセチル基置換度が1.81であり、重量平均分子量(Mw)が100000であった。
<セルロースエステルA2〜A10の合成>
セルロースエステルのアセチル基置換度、および重量平均分子量(Mw)が下記の表1に記載のように変化するように、上記セルロースエステルA1の合成条件を適宜変更したこと以外は同様にして、セルロースエステルA2〜A10を合成した。
<ビニルポリマーの合成>
以下に、本発明に係るビニルポリマー(B)の合成例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
〔ビニルポリマー(ランダム共重合体)B1の合成例〕
窒素気流下にて、攪拌子、温度計、コンデンサを備えたガラスフラスコにテトラヒドロフラン71.1g、メチルメタクリレートモノマー26.4g、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートモノマー6.6g(オキシエチレン基の繰り返し数n=4)と、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2.61gを投入し、内容物を撹拌しながらオイルバスを用いて65℃まで昇温し、7時間加熱した。反終了後、重合液にTHF40gを入れて希釈し、過剰量のヘキサン中に滴下して生成物を沈殿させた。沈殿した生成物をろ別し、真空ポンプで減圧乾燥して白色のポリマー粉体(B1)30.1gを得た。得られたビニルポリマーB1の重量平均分子量(Mw)は、30000であった。
〔ビニルポリマーB2〜B13、B21〜22の合成〕
ビニルモノマーが下記の表2に記載のように変化するよう、上記ビニルポリマーB1の合成例の合成条件を適宜変更したこと以外は同様にして、ビニルポリマーB2〜B13、B21〜22をそれぞれ合成した。
〔ビニルポリマー(ブロック共重合体)の合成例B14〕
窒素気流下にて、攪拌子、温度計、コンデンサを備えたガラスフラスコにテトラヒドロフラン60.5g(0.99mol)、メチルメタクリレートモノマー15.3g、臭化第一銅0.19gを仕込んで攪拌を開始した。その後、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル0.20gをアセトニトリル2.41gに溶解させ投入し、内容物を撹拌しながらオイルバスを用いて65℃まで昇温し、30分間加熱した。反終了後、テトラヒドロフラン70.1g、塩化第一銅0.33g、ペンタメチルジエチレントリアミン0.23g、およびメトキシポリエチレングリコールメタクリレートモノマー15.3g(オキシエチレン基の繰り返し数n=9)を加えて重合を開始した。反終了後、重合液にTHF40gを入れて希釈し、過剰量のヘキサン中に滴下して生成物を沈殿させた。沈殿した生成物をろ別し、真空ポンプで減圧乾燥して白色のポリマー粉体(B14)25.5gを得た。得られたビニルポリマーB14の重量平均分子量(Mw)は、30000であった。
〔ビニルポリマーB15〜B20の合成〕
ビニルモノマーが下記の表2に記載のように変化するよう、上記ビニルポリマーB14の合成例の合成条件を適宜変更したこと以外は同様にして、ビニルポリマーB15〜B20を合成した。
<偏光板保護フィルムの作製>
〔偏光板保護フィルムNo1の作製〕
〈微粒子分散液〉
微粒子(アエロジル R812 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
〈微粒子添加液〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクにセルロースエステル(A1)を添加し、加熱して完全に溶解させた後、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。濾過後のセルロースエステル溶液を充分に攪拌しながら、ここに微粒子分散液をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
セルロースエステル(A1) 4質量部
微粒子分散液 11質量部
セルロースエステル(A1)を用い、下記組成の主ドープ液を調製した。
まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステル(A1)を攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、さらにビニルポリマー(B2)、加水分解防止剤(A)(化合物No3)、位相差調整剤(B−16)を添加、溶解させた。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
主ドープ液100質量部に微粒子添加液を2質量部加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分に混合し、次いでベルト流延装置を用い、幅2mのステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体上で、残留溶剤量が110%になるまで溶剤を蒸発させ、ステンレスバンド支持体から剥離した。剥離の際に張力をかけて縦(MD)延伸倍率が1.02倍となるように延伸し、次いで、テンターでウェブ両端部を把持し、幅手(TD)方向の延伸倍率が1.25倍となるように延伸した。延伸開始時の残留溶剤は30%であった。延伸後、その幅を維持したまま数秒間保持し、幅方向の張力を緩和させた後幅保持を解放し、更に125℃に設定された第3乾燥ゾーンで30分間搬送させて乾燥を行い、幅1.5m、かつ端部に幅1cm、高さ8μmのナーリングを有する膜厚40μmの本発明の偏光板保護フィルムNo1を作製した。
〈主ドープ液の組成〉
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 30質量部
セルロースエステル(A1) 90質量部
ビニルポリマー(B2) 10質量部
加水分解防止剤(A)(化合物No3) 7質量部
位相差調整剤(B−16) 6質量部
〔偏光板保護フィルムNo2〜No35の作製(ただしNo5、9、10を除く)〕
セルロースエステル樹脂(A)、ビニルポリマー(B)を下記の表3のように変更したこと以外は、上記偏光板保護フィルムNo1の作製と同様にして偏光板保護フィルムNo2〜No35(ただしNo5、9、10を除く)を作製した。
〔偏光板保護フィルムNo5、9、10の作製〕
(偏光板保護フィルムNo5の作製)
〈微粒子分散液〉
微粒子(アエロジル R812 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
〈微粒子添加液〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクにセルロースエステルA5を添加し、加熱して完全に溶解させた後、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。濾過後のセルロースエステル溶液を充分に攪拌しながら、ここに微粒子分散液をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
セルロースエステル(A5) 4質量部
微粒子分散液 11質量部
セルロースエステル(A5)を用い、下記組成の主ドープ液を調製した。
まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステル(A5)を攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、さらにビニルポリマー(B2)、エステル化合物、チヌビン928を添加、溶解させた。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
主ドープ液100質量部に微粒子添加液を2質量部加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分に混合し、次いでベルト流延装置を用い、幅2mのステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体上で、残留溶剤量が110%になるまで溶剤を蒸発させ、ステンレスバンド支持体から剥離した。剥離の際に張力をかけて縦(MD)延伸倍率が1.02倍となるように延伸し、次いで、テンターでウェブ両端部を把持し、幅手(TD)方向の延伸倍率が1.10倍となるように延伸した。延伸開始時の残留溶剤は30%であった。延伸後、その幅を維持したまま数秒間保持し、幅方向の張力を緩和させた後幅保持を解放し、更に125℃に設定された第3乾燥ゾーンで30分間搬送させて乾燥を行い、幅1.5m、かつ端部に幅1cm、高さ8μmのナーリングを有する膜厚40μmの本発明の偏光板保護フィルムNo5を作製した。
〈主ドープ液の組成〉
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 30質量部
セルロースエステル(A5) 90質量部
ビニルポリマー(B2) 10質量部
エステル化合物(化合物14−1) 10質量部
チヌビン928 1.8質量部
〔偏光板保護フィルムNo9、10の作製〕
セルロースエステル樹脂(A)、ビニルポリマー(B)を表3のように変更したこと以外は、上記偏光板保護フィルムNo5の作製と同様にして偏光板保護フィルムNo9、10を作製した。
<評価項目、評価方法>
上記で作製した偏光板保護フィルムを用い、以下の評価を行った。
(リターデーション)
上記で作製した偏光板保護フィルムのリターデーション値Ro、Rtを、以下の式によって求めた。
上記式において、dはフィルムの厚み(nm)、屈折率nx(遅相軸方向の屈折率)、ny(フィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率)、nz(厚み方向におけるフィルムの屈折率)である。また、リターデーション値(Ro)、(Rt)は自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長590nmで求めた。
(内部ヘイズ値)
上記で作製した偏光板保護フィルムを、23℃55%RHの環境にて5時間以上調湿した後、下記方法により内部ヘイズ値を評価した。
まず、フィルム以外の測定器具のブランクヘイズ1を測定する。
1.きれいにしたスライドガラスの上にグリセリンを一滴(0.05ml)たらす。このとき液滴に気泡が入らないように注意する。ガラスは見た目がきれいでも汚れていることがあるので必ず洗剤で洗浄したものを使用する(図1参照)。
2.その上にカバーガラスを乗せる。カバーガラスは押さえなくてもグリセリンは広がる。
3.ヘイズメーターにセットしブランクヘイズ1を測定する。
次いで以下の手順で、試料を含めたヘイズ2を測定する。
4.スライドガラス上にグリセリン(0.05mL)を滴下する(図1参照)。
5.その上に測定する試料フィルムを気泡が入らないように乗せる(図2参照)。
6.試料フィルム上にグリセリン(0.05ml)を滴下する(図3参照)。
7.その上にカバーガラスを載せる(図4参照)。
8.上記のように作成した積層体(上から、カバーガラス/グリセリン/試料フィルム/グリセリン/スライドガラス)をヘイズメーターにセットしヘイズ2を測定する。
9.(ヘイズ2)−(ヘイズ1)=(本発明の偏光板保護フィルムの内部ヘイズ)を算出する。
上記測定にて使用したガラス、グリセリンを以下の通りである。
ガラス:MICRO SLIDE GLASS S9213 MATSUNAMI
グリセリン: 関東化学製 鹿特級(純度>99.0%) 屈折率1.47
(純水接触角)
上記で作製した偏光板保護フィルムの2つの主表面の純水接触角を、それぞれ下記の測定条件により測定した。
測定装置:固液界面解析装置(DropMaster500、協和界面科学株式会社製)
測定方法:液滴法
環境 :温度23℃、55%RH
プローブ液体:水
具体的には、偏光板保護フィルムの測定したい面に上記液体をそれぞれ約30μL滴下して、図5に示す接触角θを測定した。なお、同様の測定を10回行い、その平均値を純水接触角の値とした。
<偏光板の作製>
上記で作製した偏光板保護フィルムNo1〜35を用い、下記方法により偏光板を作製した。
厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗・乾燥して偏光子を得た。
次いで、下記工程1〜5に従って、偏光子の一方の面に上記で作製した偏光板保護フィルムNo1〜35のいずれかを貼合し、裏面側にはコニカミノルタオプト(株)製コニカミノルタタックKC8UYを偏光板保護フィルムとして貼り合わせて偏光板を作製した。
工程1:コニカミノルタオプト(株)製コニカミノルタタックKC8UYを45℃の2モル/Lの水酸化カリウム溶液に30秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して表面を鹸化した偏光板保護フィルムを得た。
工程2:前記偏光子の両面に固形分2質量%のポリビニルアルコール接着を厚み2μmで塗布した。
工程3:工程1で処理した偏光板保護フィルムの上に工程2で処理した偏光子をのせ、さらに、本発明の偏光板保護フィルムをのせて配置した。
工程4:工程3で積層した偏光板保護フィルムNo1〜35と偏光子と偏光板保護フィルムを圧力20〜30N/cm2、搬送スピード約2m/分で貼合した。
工程5:60℃の乾燥機中で、工程4で作製した試料を90秒間乾燥し、偏光板を作製した。
<偏光板の評価>
(偏光子密着性)
上記で作製した偏光板を5cm×5cmの大きさの正方形に断裁し、23℃、55%RHの雰囲気下に24時間放置し、その後、本発明の偏光板保護フィルムの角の部分から偏光子とフィルムとの界面で剥がした。この作業を一種類のサンプルについて100枚の偏光板で行い、偏光子とフィルムの間で剥がれが見られた偏光板の枚数を数え、下記の評価基準に基づいて評価した。結果を下記の表4に示す。
◎:0〜2枚
○:3〜5枚
△:6〜20枚
×:21枚以上
偏光子密着性は○か◎の評価であることが好ましい。
(偏光板耐久性の評価)
上記で作製した偏光板を5cm×5cmの大きさの正方形に裁断し、60℃、90%RHの高温高湿雰囲気下に120時間保存後、ライトボックス上でクロスニコルとし、偏光度ムラを目視で観察して、下記の評価基準に基づいて評価した。結果を下記の表4に示す。
◎:偏光度ムラの発生なし
○:裸眼では偏光度ムラを認識できない
△:偏光度ムラとして見えるが、使用にあたって支障はない
×:表示品質上問題がある
表4に示す結果から、本発明によれば、鹸化処理をすることなく従来から用いられている水糊で偏光子と偏光板保護フィルムとを好適に接着することができる。これにより、耐久性に優れた偏光板およびこれを用いた表示装置が提供されうる。