JP5918628B2 - ビニル系重合体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ビニル系重合体の製造方法、およびハロゲン、金属錯体を除去する為の精製方法に関する。
ビニル系重合体の精密合成法としてリビング重合法が一般的に知られている。リビング重合は分子量、分子量分布のコントロールが可能であるというだけでなく、末端構造が明確な重合体が得られる。従って、リビング重合は重合体末端に官能基を導入する有効な方法の一つとして挙げられる。最近、ラジカル重合においても、リビング重合が可能な重合系が見いだされ、リビングラジカル重合の研究が活発に行われている。リビングラジカル重合を利用することにより分子量分布の狭いビニル系重合体が得られる。リビングラジカル重合の例として有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒とする重合系が挙げられる。
しかしながら、リビングラジカル重合で製造されるビニル系重合体にはハロゲンや重合触媒である遷移金属錯体が残存するため、重合体の着色、物性面への影響が生ずる。例えば、リビングラジカル重合法を利用して製造された末端にアルケニル基を有するビニル系重合体とヒドリシリル基を有する化合物とのヒドロシリル化反応によって、シリル基を有するビニル系重合体を合成する場合、ハロゲン、残存触媒等がヒドロシリル化反応の触媒毒として働くため、これらが多く残存しているとヒドロシリル化反応が阻害され、高価なヒドロシリル化触媒が多く必要になるという問題が生じる。よって実用上、重合反応を行った後は、重合体からハロゲン、残存触媒を取り除く必要がある。
脱ハロゲン化の方法としては、たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3には、ハロゲン含有ビニル系重合体を加熱する事で脱ハロゲン化を行う方法などがあげられている。また特許文献4には、ハロゲン含有ビニル系重合体をオキシアニオン化合物により処理する事で脱ハロゲン化を行う方法が記載されている。しかしながら、特許文献1、特許文献2、特許文献3の方法においては、脱ハロゲン化を行う際の吸着剤、酸素ラジカル捕捉剤または炭素ラジカル捕捉剤等の添加物が必要であったり、脱ハロゲン化時に極性溶剤から低極性溶剤に溶剤置換が必要となるため、高コスト化、生産性の低下が問題となっている。特許文献4の方法においては、オキシアニオン化合物が必要であるため、ハロゲン、残存触媒に加え、オキシアニオン化合物の除去が必要となり、精製の負荷が増える。また、特許文献5には、ハロゲン、残存触媒を水に抽出し、除去する方法も報告されているが、特許文献5で開示された方法では操作工程が多く、また脱ハロゲン化工程での操作時間が長いため、生産性や、重合体の着色が問題となっている。
特開2005−015577号公報 特開2003−327620号公報 WO2006/093283号公報 特開2000−344831号公報 特開2011−231235号公報
本発明は、ビニル系重合体中のハロゲンおよび金属錯体を経済的かつ効率的に除去可能なビニル系重合体の製造方法を提供するものである。
本発明者は、リビングラジカル重合により得られるハロゲン基を有するビニル系重合体を、極性溶媒に溶解して加熱を行うことによって、ビニル系重合体中のハロゲンおよび金属錯体を効率良く除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、リビングラジカル重合によって得られたハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)を加熱することによって、脱ハロゲン化を行なうビニル系重合体(ロ)の製造方法であって、ハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)を極性溶剤中で加熱することを特徴とするビニル系重合体の製造方法に関する。
極性溶剤がアルコールである事が好ましく、炭素数が6以下のアルコールである事がより好ましい。
極性溶剤に溶解したハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)の溶液中での含有率が1wt%以上、90wt%以下である事が好ましい。
ハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)の加熱温度が100℃以上250℃以下である事が好ましい。
ハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)が分子内に少なくとも1個のアルケニル基を有するものである事が好ましい。
アルケニル基がハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)の分子鎖末端に存在することが好ましい。
ハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)を極性溶剤中で加熱した後、得られたビニル系重合体(ロ)とハロゲン化合物の混合溶液を吸着剤または水に接触させることによってハロゲン化合物を除去することが好ましい。
吸着剤が活性炭又は無機系吸着剤である事が好ましい。
水が純水又は塩を含む水である事が好ましい。
水に含まれる塩が硫酸ナトリウムである事が好ましい。
リビングラジカル重合の重合触媒である遷移金属錯体の中心金属が周期律表第8族、9族、10族、または11族元素である事が好ましく、鉄、ニッケル、ルテニウム又は銅である事がより好ましく、銅である事がさらに好ましい。
上記に記載の製造方法によって得られる分子内に少なくとも1個のアルケニル基を有するビニル系重合体と、架橋性シリル基とヒドロシリル基を併せ持つシラン化合物とを、反応させて得られる架橋性シリル基を有するビニル系重合体の製造方法に関する。
上記に記載の製造方法により得られる分子内に少なくとも1個のアルケニル基を有するビニル系重合体とヒドロシリル基を有するシラン化合物とを含有するヒドロシリル化反応性組成物に関する。
リビングラジカル重合により製造されたハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)を極性溶剤中で加熱する工程を経るハロゲン基を有するビニル系重合体からハロゲンを除去する方法に関する。
リビングラジカル重合により製造された、重合触媒残渣を含有する、ハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)を極性溶剤中で加熱した後、得られたビニル系重合体(ロ)とハロゲン化合物の混合溶液を吸着剤または水に接触させて、ハロゲン化合物と重合触媒を同時に除去する精製方法に関する。
本発明のビニル系重合体の製造方法によれば、重合に用いた金属錯体およびハロゲンの含有量が著しく低減したヒドロシリル化反応性組成物用ビニル系重合体を容易に得ることができ、無溶剤での脱ハロゲン化に比べ、プロセスの簡略化や、ポリマーへの着色の低減、脱ハロゲン化に要する時間も短縮することが可能である。その結果、生産性を向上させつつ設備コストの面で有利な生産工程を提供することができ、その工業的価値は非常に大きい。
本発明は、リビングラジカル重合によって得られたハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)を加熱することによって、脱ハロゲン化を行なうビニル系重合体(ロ)の製造方法であって、ハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)を極性溶剤中で加熱することを特徴とするビニル系重合体の製造方法である。
<<リビングラジカル重合>>
まず始めにリビングラジカル重合について詳述する。リビングラジカル重合としては、特に限定されないが、例えば遷移金属錯体を触媒としてビニル系単量体を重合する方法が挙げられ、現在、原子移動ラジカル重合;Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP(J.Am.Chem.Soc.1995,117,5614、Macromolecules.1995,28,1721)と、Sigle Electron Transfer Polymerization:SET−LRP(J.Am.Chem.Soc.2006,128,14156、JPSChem 2007,45,1607)の二通りの解釈が考えられている。
ATRPは、例えば遷移金属錯体として銅錯体を用いた場合では、1価銅錯体が重合体末端のハロゲンを引き抜いてラジカルを発生させて2価銅錯体になる。2価銅錯体は重合末端のラジカルに対してハロゲンを戻して1価銅錯体になる。これらの平衡からなるリビングラジカル重合がATRPである。
一方、SET−LRPは、遷移金属錯体として銅錯体を用いた場合、0価の金属銅あるいは銅錯体が重合体末端のハロゲンを引き抜いてラジカルを発生させて2価銅錯体になる。2価銅錯体は重合末端のラジカルに対してハロゲンを戻して0価銅錯体になる。1価銅錯体は不均化して0価と2価の銅錯体になる。これら平衡からなるリビングラジカル重合がSET−LRPである。
また、還元剤を用いて重合遅延、停止の原因となる高酸化遷移金属錯体を減らすことで、遷移金属錯体が少ない低触媒条件であっても速やかに、高反応率まで重合反応を進行させることができるActivators Regenerated by Electron Transfer:ARGET(Macromolecules.2006,39,39)がATRPの改良処方として報告されている。
本発明のリビングラジカル重合としては、上記ATRP、SET−LRP、ARGET等の、触媒に遷移金属又は遷移金属化合物と配位子を用いたリビングラジカル重合が好ましい。
以下に遷移金属又は遷移金属化合物と配位子を用いたリビングラジカル重合について述べる。
<重合触媒>
重合触媒としては、中心金属が周期律表第8族、9族、10族、または11族元素である遷移金属錯体であることが好ましく、中心金属が鉄、ニッケル、ルテニウム又は銅であることがより好ましく、銅であることがさらに好ましい。銅としては、金属銅又は銅化合物、及び配位子から成る銅錯体が用いられる。本発明ではこの配位子に多座アミン(A)を用いることが好ましい。
(金属銅または銅化合物)
金属銅は、粉末銅、銅箔等の銅単体である。
銅化合物は、塩化物、臭素化物、ヨウ素化物、シアン化物、酸化物、水酸化物、酢酸化物、硫酸化物、硝酸化物等が例として挙げられるが、それらに限定されるものではない。
銅原子は電子状態によって0価、1価、2価の価数をとりうるが、価数は限定されるものではない。
銅原子の重量はビニル系単量体の仕込み総重量に対して、5〜4000ppmが好ましく、銅量を減量できればそれを除くことが容易になり、さらに遷移金属量に付随して多座アミン(A)の量も減るため、5〜100ppmがより好ましく、5〜50ppmがさらに好ましく、5〜30ppmが特に好ましい。しかし、5ppm未満の場合、分子量分布の狭い重合体を得るためには極めて長い時間をかけて重合を進める必要があるため好ましくない。
金属銅および銅化合物は固体であるため、反応系に仕込むのが困難である。そこで予め溶媒および多座アミン(A)と混合させて、溶解した溶液状態で仕込むことが好ましい。その点0価銅よりは1価、および2価銅の方が、1価銅よりは2価銅の方が各種溶剤に溶解しやすくより好ましい。
(多座アミン(A))
配位子として使用される多座アミンを以下に例示するが、これらに限られるものではない。
二座配位の多座アミン:2,2−ビピリジン、4,4’−ジ−(5−ノニル)−2,2’−ビピリジン、N−(n−プロピル)ピリジルメタンイミン、N−(n−オクチル)ピリジルメタンイミン
三座配位の多座アミン:N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、N−プロピル−N,N−ジ(2−ピリジルメチル)アミン
四座配位の多座アミン:ヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン、N,N−ビス(2−ジメチルアミノエチル)−N,N’−ジメチルエチレンジアミン、2,5,9,12−テトラメチル−2,5,9,12−テトラアザテトラデカン、2,6,9,13−テトラメチル−2,6,9,13−テトラアザテトラデカン、4,11−ジメチル−1,4,8,11−テトラアザビシクロヘキサデカン、N’,N’’−ジメチル−N’,N’’−ビス((ピリジン−2−イル)メチル)エタン−1,2−ジアミン、トリス[(2−ピリジル)メチル]アミン、2,5,8,12−テトラメチル−2,5,8,12−テトラアザテトラデカン
五座配位の多座アミン:N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’’,N’’’’−ヘプタメチルテトラエチレンテトラミン
六座配位の多座アミン:N,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジルメチル)エチレンジアミン
ポリアミン:ポリエチレンイミンなどが挙がられる。
しかし、遷移金属原子の総重量がビニル系単量体の仕込み総重量に対して30ppm以下の低濃度触媒条件下で、十分な反応速度で重合を進行させ、分子量分布の狭い重合体を得るためには、一般式(1)あるいは一般式(4)で表される多座アミン(A)が好ましい。他の多座アミンでは長時間かけて重合したときには分子量分布の狭い重合体を得ることも可能だが、短時間で重合を進めたときには重合体の分子量分布が広がるため、好ましくない。
Figure 0005918628
(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、一般式(2)または一般式(3)を表す。
Figure 0005918628
(式中、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
Figure 0005918628
(式中、R8、R9、R10、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。))
Figure 0005918628
(式中、R18、R19、R20およびR21は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。R13、R14、R15、R16およびR17は、それぞれ独立して、一般式(2)または一般式(3)を表す。nは0以上の整数を表す。)
他の多座アミンでは長時間かけて重合したときには分子量分布の狭い重合体を得ることも可能だが、短時間で重合を進めたときには重合体の分子量分布が広がるため、好ましくない。
数ある多座アミンの中でも特に一般式(1)および一般式(4)で示される特定の多座アミン(A)は工業的に入手が困難であるため、使用量に制約がある。即ち、多座アミン(A)の使用量はビニル系単量体の総仕込みに対して、物質量にして7mmol%以下が好ましく、4mmol%以下がより好ましく、2mmol%以下がさらに好ましく、1mmol%以下が特に好ましい。また、銅原子の総量に対して150mol%以下が好ましく、120mol%以下がより好ましく、110mol%以下がさらに好ましく、100mol%以下が特に好ましい。
<塩基(B)>
本発明のリビングラジカル重合には、重合系中に存在する酸あるいは発生する酸を中和し、酸の蓄積を防ぐために塩基(B)を添加しても良い。本発明者らは、塩基(B)を添加することによって、酸が反応制御に有用な多座アミン(A)をアンモニウム塩化して銅錯体の構造を崩し、結果的に課題としている十分な重合速度、高いモノマー転化率での重合、且つ分子量分布の狭い重合体を得ることを達成できなくするのを防いでいると推測している。実際、銅触媒が大量に存在する系ではあるが、酸の蓄積が重合速度低下の原因となることがこれまでに報告されている(特開2007−148507公報)。しかし、分子量分布が広がるという記載はなく、また上記報告例では本発明に比べて、100倍もの銅量と多座アミンを用いているため反応系はほぼ別ものとなっているといえる。事実、100倍もの銅、多座アミンを用いた系では塩基の併用がなくとも、課題である短時間で高モノマー転化率、且つ分子量分布の狭い重合体を得ることは可能である。本発明はリビングラジカル重合の工業的利用を強く意識したものであり、工業化の場合には各種原料を精製することなく使用し、さらに溶媒および未反応モノマーは数十回もリサイクルして利用されるため、分解等により重合系中に酸が混入してくる可能性は非常に高い。特にATRPの場合、ハロゲン化物の開始剤およびハロゲン化銅を用いるために、原料中には少なからずハロゲン化水素が混入している。また還元剤にアスコルビン酸のような水素化物還元剤を用いる場合には、銅錯体の還元に伴いハロゲン化水素が発生するため、塩基(B)の併用はより効果的である。
塩基(B)はブレンステッドの塩基の定義に当てはまる、プロトンを受け入れる性質を持つ化合物、あるいはルイスの塩基の定義に当てはまる、非共有電子対を持っていてそれを授与することができ配位結合をつくる性質を有する化合物であれば良く、下に例示するがそれに限定されるものではない。
モノアミン系:モノアミンは1分子中に上記で定義される塩基として作用する部位が1つしかない化合物を示し、以下に例示するがそれに限定されるものではない。メチルアミン、アニリン、リシン等の一級アミン、ジメチルアミン、ピペリジン等の二級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の三級アミン、ピリジン、ピロール等の芳香族系、およびアンモニアが挙げられる。
ポリアミン系:エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン等のジアミン、ジエチレントリアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン等のトリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミン等のテトラミン、ポリエチレンイミン等が上げられる。
無機塩基:無機塩基は周期表の一族と二族の単体あるいは化合物を示し、下記に例示するがそれに限定されるものではない。リチウム、ナトリウム、カルシウム等の周期表の一族と二族の単体。ナトリウムメトキシド、カリウムエトキシド、メチルリチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、フェノキシナトリウム、フェノキシカリウム、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム等の周期表の一族と二族の化合物。水酸化アンモニウム弱酸と強塩基の塩などが挙げられる。
これらは、単独で用いても良いし、複数を併用しても構わない。
また、塩基(B)は、直接反応系に添加してもよいし、反応系中で発生させてもよい。
これらの中でも多座アミン(A)は入手が困難であるため、塩基(B)には一般式(1)あるいは一般式(4)で示される多座アミン(A)以外の塩基が好ましい。例示するならば、モノアミン、無機塩基および一般式(5)で表されるアミンが挙げられるが、これらに限ったものではない。
Figure 0005918628
(式中、R24、R25、R27およびR28は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。R22、R23、R26、R29およびR30は、それぞれ独立して、一般式(2)または一般式(3)を表す。lは0以上の整数を表す。mは0以上の整数を表す。)
塩基(B)に一般式(5)で表されるアミンを用いる場合、銅原子の物質量に対して、多座アミン(A)の物質量が十分でないと、銅と多座アミン(A)からなる錯体の純度が低下し、重合体の分子量分布が広がる。よって塩基(B)に一般式(5)で表されるアミンを用いる場合には、多座アミン(A)の使用量は系中に存在する遷移金属原子に対して、80〜150mol%が好ましく、90〜120mol%がより好ましく、95〜110mol%がさらに好ましく、100mol%が特に好ましい。一方、一般式(5)以外の塩基(B)、具体的にはモノアミンおよび無機塩基を用いる場合には、その配位性の低さから塩基と銅の錯体が重合制御に影響を与えることはない。分子量の狭い重合体が得られる。よって塩基(B)にモノアミンおよび無機塩基を用いる場合には、銅原子の物質量に対して、多座アミン(A)の物質量が満たなくても良い。
また一般式(5)で表されるアミンとして塩基(B)を用いた場合、その沸点の高さ、あるいはその重合体および有機溶媒との親和性の高さから、脱揮あるいは油水分離等で除くことが困難になる。そのため、塩基(B)は一般式(5)で表されるアミンよりも沸点の低いモノアミン、あるいは親水性の無機塩基がより好ましい。
塩基(B)は多座アミン(A)を酸から保護するために用いられているため、その塩基性は多座アミン(A)と同程度、あるいはより強い方が好ましく、言い換えるならば塩基(B)の塩基解離定数(pKb)は多座アミン(A)のpKb以下であることが好ましい。
塩基(B)は反応開始前に全量を一括で仕込んでも良いし、反応中に徐々に追加していっても良い。
金属銅または銅化合物に対して多座アミン(A)および塩基(B)を加える順番については特に限定されないが、塩基(B)が一般式(5)で表されるアミンを用いる場合には金属銅または銅化合物に対して多座アミン(A)、塩基(B)の順で混合することが好ましい。順番が逆になると狭い分子量分布の重合体を得ることができなくなる。これは一般式(5)で示される塩基(B)が銅と錯体を形成してしまい、有効な多座アミン(A)と銅から形成される錯体の純度を低下させるためである。一方、一般式(5)以外の塩基、具体的にはモノアミン、あるいは無機塩基を用いた場合は、その配位性の低さから錯体を形成しにくいため、多座アミン(A)と塩基(B)の混合順序は制限されない。
塩基の溶解性によってその効果が低減するので、重合溶媒に溶解しにくい塩基を用いる場合は、予め良溶媒で溶解させて、溶液で添加することが好ましい。
塩基(B)の量について、多座アミン(A)を保護するために、多座アミンに対して過剰量添加されていることが好ましい。
<還元剤(C)>
銅錯体を触媒とするリビングラジカル重合において、還元剤を併用することで、過剰な配位子が必要となるものの、活性が向上することが見出されている(ARGET ATRP)。このARGET ATRPは重合中にラジカル同士のカップリング等で生じた、反応遅延・停止の原因となる高酸化遷移金属錯体を還元して減少させることで活性が向上すると考えられており、通常数百〜数千ppm必要な遷移金属触媒を数十〜数百ppmまで減らすことを可能にしている。本発明においても還元剤(C)を添加しても良い。
本発明で用いる還元剤を以下に例示するが、これらの還元剤は限定されるものではない。
(銅錯体を還元する際に酸を発生させない還元剤)
金属。具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属類;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属類;アルミニウム;亜鉛等の典型金属;銅、ニッケル、ルテニウム、鉄等の遷移金属等が挙げられる。またこれらの金属は水銀との合金(アマルガム)の状態であってもよい。
金属化合物。典型金属又は遷移金属の塩や典型元素との塩、さらに一酸化炭素、オレフィン、含窒素化合物、含酸素化合物、含リン化合物、含硫黄化合物等が配位した錯体等が挙げられる。具体的には、金属とアンモニア/アミンとの化合物、三塩化チタン、チタンアルコキシド、塩化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、塩化鉄、塩化銅、臭化銅、塩化スズ、酢酸亜鉛、水酸化亜鉛、Ni(CO)4、Co2CO8等のカルボニル錯体、[Ni(cod)2]、[RuCl2(cod)]、[PtCl2(cod)]等のオレフィン錯体(ただしcodはシクロオクタジエンを表す)、[RhCl(P(C6533]、[RuCl2(P(C6532]、[PtCl2(P(C6532]等のホスフィン錯体等が挙げられる。
有機スズ化合物。具体例としては、オクチル酸スズ、2−エチルヘキシル酸スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズメルカプチド、ジブチルスズチオカルボキシレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズチオカルボキシレート等が挙げられる。
リン又はリン化合物。具体的には、リン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、ヘキサメチルホスフォラストリアミド、ヘキサエチルホスフォラストリアミド等が挙げられる。
硫黄又は硫黄化合物。具体的には、硫黄、ロンガリット類、ハイドロサルファイト類、二酸化チオ尿素等が挙げられる。ロンガリットとは、スルホキシル酸塩のホルムアルデヒド誘導体であり、MSO2・CH2O(MはNa又はZnを示す)で表される。具体的には、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート、亜鉛ホルムアルデヒドスルホキシレート等が挙げられる。ハイドロサルファイトとは、次亜硫酸ナトリウム及び次亜硫酸ナトリウムのホルムアルデヒド誘導体の総称である。
(銅錯体を還元する際に酸を発生させる還元剤(水素化物還元剤))
金属水素化物。具体例としては、水素化ナトリウム;水素化ゲルマニウム;水素化タングステン;水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化アルミニウムリチウム、水素アルミニウムナトリウム、水素化トリエトキシアルミニウムナトリウム、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム等のアルミニウム水素化物;水素化トリフェニルスズ、水素化トリ−n−ブチルスズ、水素化ジフェニルスズ、水素化ジ−n−ブチルスズ、水素化トリエチルスズ、水素化トリメチルスズ等の有機スズ水素化物等が挙げられる。
ケイ素水素化物。具体例としては、トリクロロシラン、トリメチルシラン、トリエチルシラン、ジフェニルシラン、フェニルシラン、ポリメチルヒドロシロキサン等が挙げられる。
ホウ素水素化物。具体的には、ボラン、ジボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリメトキシホウ酸ナトリウム、硫化水素化ホウ素ナトリウム、シアン化水素化ホウ素ナトリウム、シアン化水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリ−s−ブチルホウ素リチウム、水素化トリ−t−ブチルホウ素リチウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素亜鉛、水素化ホウ素テトラ−n−ブチルアンモニウム等が挙げられる。
窒素水素化合物。具体的には、ヒドラジン、ジイミド等が挙げられる。
リン又はリン化合物。具体的には、ホスフィン、ジアザホスホレン等が挙げられる。
硫黄又は硫黄化合物。具体的には硫化水素等が挙げられる。
水素。
還元作用を示す有機化合物。具体的には、アルコール、アルデヒド、フェノール類及び有機酸化合物等が挙げられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ギ酸等が挙げられる。フェノール類としては、フェノール、ハイドロキノン、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール等が挙げられる。有機酸化合物としては、クエン酸、シュウ酸、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、アスコルビン酸エステル等が挙げられる。
中でも、銅錯体を還元した際に酸を発生させる水素化物還元剤は、塩基(B)を併用しない場合、重合速度の低下と重合制御の悪化による分子量分布の広がりを招くため、塩基(B)の併用がより効果的である。これは発生した酸が遷移金属錯体を形成する多座アミンをアンモニウム塩化させ、錯体構造を崩すためと推測する。
還元剤(C)の還元力が強いほど重合も速く進めることが可能になる。即ち、アミンを還元剤として用いている例(US2009/0156771号)は還元能力が低すぎるために十分な反応速度ではない。そのため、アミンよりも還元能力が高い、つまり電子を供与しやすい還元剤が好ましい。中でも金属、有機スズ化合物、アスコルビン酸、アスコルビン酸エステル、アスコルビン酸塩、およびヒドラジン、は還元力が強く、より好ましい。
また、工業化を考えると重合後、還元剤(C)も重合体から取り除く必要があるため、酸化物が揮発除去しやすいヒドラジン、シュウ酸等、油水分離によって除去しやすい水素化ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、クエン酸、シュウ酸、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、およびアスコルビン酸エステル等が好ましい。
よって、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、アスコルビン酸エステル、およびヒドラジンがより好ましく、中でもアスコルビン酸、アスコルビン酸塩、およびアスコルビン酸エステルが特に好ましい。
これら還元剤(C)は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもかまわない。
また、還元剤(C)は、直接反応系に添加してもよいし、反応系中で発生させてもよい。後者には、電解還元も含まれる。電解還元では陰極で生じた電子が直ちに、あるいは一度溶媒和した後、還元作用を示すことが知られている。つまり、還元剤(C)が電気分解により生じるものも用いることができる。
還元剤(C)の添加量が少なすぎる場合は十分な重合活性が期待できない点で好ましくなく、多すぎる場合には得られた重合体からの除去が困難になる点で好ましくない。即ち(メタ)アクリレート単量体の仕込み総量に対して10〜100000ppmが好ましく、10〜10000ppmがより好ましく、10〜1000ppmが更に好ましく、10〜500ppmが特に好ましい。
また、還元剤(C)が常温で固体である場合、良溶媒に溶解させた溶液として添加した方がより効果を発揮できるために好ましい。
ARGET ATRPの機構からわかるように、還元剤(C)を一度に過剰量添加するとラジカルを制御するための2価銅錯体が不足し、カップリング等によって分子量分布が広がる。そのため、還元剤(C)は重合の進行に伴い少量ずつ添加すること、具体的には銅錯体に対して、10〜1000mol%/Hrで添加することが好ましく、20〜700mol%/Hrで添加することがより好ましく、30〜500mol%/Hrで添加するのが特に好ましい。
金属銅または銅化合物に対して塩基(B)と還元剤(C)を加える順番については特に限定されないが、還元剤(C)に水素化物還元剤を用いた場合、還元剤(C)、塩基(B)の順で遷移金属原子と混合させたときには、重合速度の低下し重合体の分子量分布が広がるため、塩基(B)、還元剤(C)の順、あるいは同時に混合させることが好ましい。これは還元剤(C)が遷移金属原子を還元させた際にハロゲン化水素を発生させ、多座アミン(A)がアンモニウム塩化させるためと推測する。一方、水素化物還元剤以外の塩基を用いる場合には、還元に際して酸が発生しないため、その順序は制限されない。ただし、ここで言う「同時」とはおおよそ同じタイミングで混合させることを示しており、厳密なものではない。特に還元剤(C)にアスコルビン酸を用いたときには、予め塩基(B)と混合させることで有機溶媒への溶解性が向上し、操作性が向上するため、塩基(B)と還元剤(C)を同時に添加させることが好ましい。
また還元剤(C)に水素化物還元剤を用いた場合、添加された還元剤(C)が遷移金属原子を還元させた際にハロゲン化水素を発生させるため、還元剤(C)により移動する電子に対して、常に100mol%以上の塩基(B)の量が好ましく、150mol%以上がより好ましく、200mol%以上がよりに好ましく、300mol%以上がさらに好ましい。ただし、塩基(B)に一般式(5)で表されるアミンを用いる場合には、塩基(B)およびその酸塩を除くことが困難になるため、重合体の色を著しく悪化させる。そのため大過剰量に添加するのは好ましくなく、具体的には(メタ)アクリル系単量体の総量に対して2重量%以下が好ましく、1重量%以下がより好ましく、0.5重量%以下がさらに好ましく、0.1重量%以下が特に好ましい。しかし、塩基(B)にモノアミン、あるいは無機塩基を用いた場合には、真空脱揮、あるいは油水分離による抽出が可能であるため、過剰に使用することに制限がなくなる。
<ビニル系単量体>
本発明のリビングラジカル重合に用いるビニル系単量体は、ラジカル重合で使用される従来公知な単量体であり、例示するならば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。なかでも、生成物の物性等から、スチレン系モノマー及び、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルモノマー等の(メタ)アクリル酸系モノマーが好ましい。より好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルモノマーであり、特に好ましくはアクリル酸エステルモノマーであり、更に好ましくは、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−メトキシエチルである。なお上記表現形式で例えば(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/あるいはメタクリル酸を表す。
<開始剤>
本発明のリビングラジカル重合に用いる重合開始剤は、反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物が好ましい。例えば、α位にハロゲンを有するカルボニル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物、あるいはハロゲン化スルホニル化合物等が例示され、具体的には、
65−CH2X、C65−C(H)(X)CH3、C65−C(X)(CH32
(ただし、上の化学式中、C65はフェニル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
31−C(H)(X)−CO232、R31−C(CH3)(X)−CO232、R31−C(H)(X)−C(O)R32、R31−C(CH3)(X)−C(O)R32
(式中、R31、R32は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
31−C64−SO2
(式中、R31は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)等が挙げられる。
また、2つ以上の開始点を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤として使用してもよい。
単量体と開始剤量の比を調整することにより、所望の重合体分子量に設定することができることがリビングラジカル重合の特徴である。
<溶媒>
溶媒について以下に例示するが、このリビングラジカル重合法を用いる場合、特に限定されるものではない。
高極性非プロトン性溶媒:ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン等
カーボネート系溶媒:エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等
アルコール系溶媒:メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等
ニトリル系溶媒:アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等
ケトン系溶媒:アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等
エーテル系溶媒:ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等
ハロゲン化炭化系溶媒:塩化メチレン、クロロホルム等
エステル系溶媒:酢酸エチル、酢酸ブチル等
炭化水素系溶媒:ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、デカン、ベンゼン、トルエン等
あるいはイオン性液体、水等が挙げられる。
また超臨界流体を用いてもよい。
上記溶媒は単独又は2種以上を混合して用いることができる。
さらに、遷移金属あるいは遷移金属化合物、多座アミン(A)、塩基(B)、還元剤(C)、ビニル系単量体および開始剤が反応系中で均一になっていることが、反応制御、重合反応速度、仕込みやすさおよびスケールアップリスクの点でより好ましいため、それらを溶解させる溶媒を選択することが好ましい。例えば、還元剤にアスコルビン酸を用いる場合、その溶解性がその還元力に大きく影響を及ぼすことから、アスコルビン酸又はその塩、エステルを溶解できる溶媒、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン等の高極性非プロトン性溶媒、および水が好ましい。またこれらを他の溶媒と混合させてアスコルビン酸の溶解性を向上させることも有用である。
<<ハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)について>>
次に本発明におけるハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)について詳述する。
ハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)は特に限定されないが、有機ハロゲン化物を開始剤としたビニル系単量体のリビングラジカル重合により製造されるものである。このようなビニル系単量体としては特に限定されず、既に例示されたものを用いることができる。本発明においては、これらの好ましいモノマーを他のモノマーと共重合、更にはブロック共重合させても構わなく、その際は、これらの好ましいモノマーが重量比で40%以上含まれていることが好ましい。
ハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)の分子量分布、すなわち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mn)と数平均分子量(Mw)の比は、1.1〜1.8であるが、好ましくは1.1〜1.7であり、より好ましくは1.1〜1.5であり、さらに好ましくは1.1〜1.3である。本発明のGPC測定においては、通常、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにて行い、数平均分子量等はポリスチレン換算で求めることができる。
ハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)の数平均分子量は特に制限はないが、500〜1000000の範囲が好ましく、1000〜500000の範囲がより好ましく、3000〜300000の範囲がさらに好ましく、5000〜300000が特に好ましい。
本発明の製造方法で得られるハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)の主鎖は直鎖状でもよいし、枝分かれがあってもよい。
本発明の脱ハロゲン化は、ハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)の重合後すぐに行ってもよいが、重合後のハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)の分子内に反応性官能基を付けてから行ってもよい。分子内に反応性官能基を有する場合には側鎖又は分子鎖末端のいずれに存在していてもよいが、分子鎖末端に存在することが好ましい。反応性官能基としては特に限定されないが、例えばアルケニル基、水酸基、アミノ基、架橋性シリル基、重合性炭素−炭素二重結合基等が挙げられるが、少なくとも1個のアルケニル基を有するものが好ましい。
さらに、官能基の導入方法としては、特に限定されず、様々な方法が利用される。例えば下記方法等が例示される。
(1)官能基を有するビニル系モノマーを、リビングラジカル重合条件下で、所定のビニル系単量体と共重合させる方法、
(2)官能基を有するラジカル重合性の低いオレフィン化合物を、ビニル系重合体の末端ハロゲン基にリビングラジカル重合条件下で反応させる方法、
反応性官能基を一段階もしくは数段階で別の適当な官能基へ変換することもできる。例えば本発明においても水酸基等の反応性官能基を変換することにより少なくとも1個のアルケニル基を有するビニル系重合体が合成される。
その中でも、ヒドロシリル化を行なう場合は(2)の方法で末端にアルケニル基を有するビニル系重合体を得る事が好ましい。以下(2)の方法について説明する。ビニル系単量体のリビングラジカル重合により得られるビニル系重合体に重合性の低いアルケニル基を少なくとも2個有する化合物(以下、「ジエン系化合物」という。)を反応させることを特徴とする。
ジエン系化合物の少なくとも2つのアルケニル基は互いに同一又は異なっていてもよい。アルケニル基としては末端アルケニル基[CH2=C(R)−R';Rは水素又は炭素数1〜20の有機基、R'は炭素数1〜20の有機基であり、RとR'は互いに結合して環状構造を有していてもよい。]又は内部アルケニル基[R'−C(R)=C(R)−R';Rは水素又は炭素数1〜20の有機基、R'は炭素数1〜20の有機基であり、二つのR(若しくは二つのR')は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。二つのRと二つのR'の二つの置換基のうちいずれか二つが互いに結合して環状構造を有していてもよい。]のいずれでもよいが、末端アルケニル基がより好ましい。Rは水素又は炭素数1〜20の有機基であるが、炭素数1〜20の有機基としては炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリ−ル基、炭素数7〜20のアラルキル基が好ましい。これらの中でもRとしては水素又はメチル基が特に好ましい。
また、ジエン系化合物のアルケニル基のうち、少なくとも2つのアルケニル基が共役していてもよい。
ジエン系化合物の具体例としては例えば、イソプレン、ピペリレン、ブタジエン、ミルセン、1、5−ヘキサジエン、1、7−オクタジエン、1、9−デカジエン、4−ビニル−1−シクロヘキセン等が挙げられるが、1、5−ヘキサジエン、1、7−オクタジエン、1、9−デカジエンが好ましい。
<<脱ハロゲン化工程>>
重合によって得られたハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)は、ヒドロシリル化反応の触媒毒として働くハロゲンを含んでいるため、後工程でヒドロシリル化反応を行う場合等には、ビニル系重合体からハロゲンを分離する必要がある。本発明ではハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)を極性溶媒に溶解し、加熱することにより、脱ハロゲン化を行う。本脱ハロゲン化を行うことで、脱ハロゲン化前の精製や溶媒置換が不要となりプロセスの簡略化が可能となったり、また、ポリマーへの着色の低減、脱ハロゲン化に要する時間の短縮等の効果も期待できる。
極性溶媒としては、たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノールなどのアルコール系溶剤:アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒:アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;塩化メチル、1,2−ジクロロエタン、酢酸、ニトロベンゼン、フェノール等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この中で好ましい溶剤は、アルコール系溶剤である。操作面から炭素数6以下のアルコールが好ましく、さらに好ましくはn−ブタノールである。
上記溶剤の使用量は、特に限定されない。通常はハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)が1wt%以上、90wt%以下の範囲になるように溶剤を添加する事が好ましく、経済性と操作面からハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)が30wt%以上、90wt%以下の範囲となるのが好ましい。
本発明の精製操作の処理温度は特に限定されない。処理時間の短縮のためにはより高温の方が好ましいが、高温にしすぎるとビニル系重合体の分解が起こるため、ビニル系重合体の分解が顕著に起こらない温度領域でビニル系重合体を加熱処理することが好ましい。具体的には100℃以上250℃以下が好ましく、経済性と操作面から120℃以上250℃以下がより好ましく、140℃以上250℃以下が更に好ましく、170℃以上240℃以下が特に好ましい。
さらに、上記加熱処理は加圧下で行うのが好ましい。
脱ハロゲン化の時間は、1時間以上であれば何時間でも良いが、生産面から1時間以上15時間以下である事が好ましい。
<<精製工程>>
脱ハロゲン化工程によって得られた、ビニル系重合体(ロ)とハロゲン化合物および金属錯体を含む混合物からハロゲン化合物および金属錯体を除去する方法として、例えば以下の2つの方法が好ましい。
(a)吸着精製法:吸着剤にハロゲンおよび金属錯体を吸着させて、不純物の除去を行なう。
(b)水精製法:水にハロゲンおよび金属錯体を抽出させて、不純物の除去を行なう。
以下(a)(b)について詳しく説明する。
(a)吸着精製法
吸着精製法とは、脱ハロゲン化工程によって得られた、ビニル系重合体(ロ)とハロゲン化合物および金属錯体を含む混合物から吸着剤によってハロゲン化合物および金属錯体を除去する方法である。
本発明では、吸着剤として、合成ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、酸化マグネシウムのような無機系吸着剤または活性炭を用いるのが好ましい。
無機系吸着剤の代表的なものとして、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素等を主成分とする単独もしくはこれらを組み合わせたものがある。例えば二酸化珪素;酸化マグネシウム;シリカゲル;シリカ・アルミナ、アルミニウムシリケート;活性アルミナ;酸性白土、活性白土等の粘土系吸着剤;珪酸アルミニウムナトリウム等の含水アルミノ珪酸塩鉱物群で総称されるゼオライト系吸着剤;ドーソナイト類化合物;ハイドロタルサイト類化合物が例示される。これらの中でも特にアルミニウムシリケート、ハイドロタルサイト類化合物が好ましい。
アルミニウムシリケートとはケイ酸のケイ素の一部がアルミニウムに置換されたもので、軽石、フライアッシュ、カオリン、ベントナイト、活性白土、珪藻土等が知られている。この中でも、合成のアルミニウムシリケートは比表面積も大きく吸着能力が高い。合成アルミニウムシリケートとしてはキョーワード700シリーズ(協和化学製)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
ハイドロタルサイト類化合物とは、2価の金属(Mg2+,Mn2+,Fe2+,Co2+,Ni2+,Cu2+,Zn2+等)と3価の金属(Al3+,Fe3+,Cr3+,Co3+,In3+等)の含水水酸化物又は前記水酸化物の水酸基の一部をハロゲンイオン,NO3 -,CO3 2-,SO4 2-,Fe(CN)6 3-,CH3CO2 -,シュウ酸イオン、サリチル酸イオン等の陰イオンに交換したものである。これらのうち2価の金属がMg2+、3価の金属がAl3+であって水酸基の一部をCO3 2-に交換したハイドロタルサイトものが好ましく、例えば合成品としてはキョーワード500シリーズ、キョーワード1000シリーズ(いずれも協和化学(株)製)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、上記ハイドロタルサイト類を焼成して得られる吸着剤も好適に使用される。そのなかでも2価の金属がMg2+、3価の金属がAl3+であるハイドロタルサイト類を焼成して得られるMgO−AlO3系固溶体が好ましく、例えばキョーワード2000(協和化学(株)製)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。本発明においてはハイドロタルサイト類の焼成品についてもハイドロタルサイト類として分類する。以上に例示した吸着剤は単体で用いても、また複数を混合して用いてもよい。また、吸着剤の使用量は、通常、重合体100重量部に対して0.1〜10重量部であるが、経済性と操作面から0.1〜5重量部であることが好ましい。
活性炭としては、大部分が炭素質の炭であり、例えば木材、褐炭、泥炭などを活性化剤として塩化亜鉛やリン酸などで処理して乾留するか、あるいは木炭などを水蒸気で活性化し、粉状あるいは粒状であれば、いずれも使用することができるが、これらに限定されるわけではない。
精製工程は脱ハロゲン化工程の後に実施されればよく、脱ハロゲン化工程と精製工程の間に別の処理がなされてもよいが、脱ハロゲン化工程に引き続いて精製工程が実施されることが好ましい。精製工程は、ビニル系重合体中に存在する固液分離法により分離除去することによって行うのが好ましい。固液分離方法としては特に限定されず、濾過法、沈降法等の一般的な分離方法が利用される。
濾過法としては例えばヌッチェ等による減圧濾過方法、フィルタープレス方式等の加圧濾過方法等が例示される。不溶成分の量が少なく、濾過性がよい場合にはカートリッジフィルター、バッグフィルター等による簡易濾過、砂濾過等が簡便である。
沈降法としては静置分離法、デカンター、分離盤型遠心沈降機等による遠心沈降法等が例示される。濾過と沈降を組み合わせた方法としては例えば、バスケット型遠心濾過機等による遠心濾過法、水平盤式濾過機等の沈降濾過法等が例示される。濾過法においては、不溶成分の粒子系、量に応じて濾過助剤を使用してもよい。濾過助剤としては特に限定されないが、珪藻土等の一般的なものが使用されてよい。
ビニル系重合体の粘度が高く、固液分離の操作性が悪くなる場合には溶剤で希釈してもよい。希釈溶剤としては特に限定されない。溶剤の極性を調整するために2種以上の溶剤を混合して使用してもよい。ビニル系重合体若しくはその混合物を加温して固液分離処理を行ってもよい。
無機系吸着剤とビニル系重合体又は重合体溶液の固液接触には様々な実施態様が可能であるが、撹拌混合と固液分離を回分操作で行う回分式のほか、吸着剤を容器に充填し重合体溶液を通液する固定層方式、吸着剤の移動層に液を通じる移動層式、吸着剤を液で流動化して吸着を行う流動層式等も利用できる。さらに必要に応じて撹拌による混合分散に加えて、容器の振とう、超音波の利用など、分散効率を向上させる諸操作を取り入れることができる。重合体又は重合体溶液を吸着剤に接触させた後、濾過、遠心分離、沈降分離等の方法で吸着剤を除去し、必要に応じて希釈、水洗を加え、目的とする清澄なビニル系重合体を得る。
(b)水精製法
水精製法とは、脱ハロゲン化工程によって得られた、ビニル系重合体(ロ)とハロゲン化合物および金属錯体を含む混合物から水によってハロゲン化合物および金属錯体を除去する方法である。
水精製法を用いる場合、非水溶性溶剤と塩成分を含む水溶液を用いることが好ましい。
非水溶性溶剤としては、たとえばn−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの飽和炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソールなどの芳香族炭化水素系溶剤;塩化メチレン、四塩化炭素、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミルなどのエステル系溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノールなどのアルコール系溶剤などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この中で好ましい溶剤は、アルコール系溶剤である。中でも炭素数4以上のアルコールが好ましく、さらに好ましくはn−ブタノールである。
上記溶剤の使用量は、特に限定されない。通常はビニル系重合体が5wt%〜90wt%の範囲になるように溶剤を添加する事が好ましく、経済性と操作面からビニル系重合体が10〜50wt%の範囲となるのが好ましい。
使用する水については、重合体の汚染防止を考慮すること以外に選択条件はない。50μm以下のフィルターを通した水が好ましく、イオン交換樹脂で処理した純水がより好ましい。
本発明では重合体溶液中の金属錯体を除去する為、水に塩成分を混合させることが好ましい。水に溶解する塩成分の例は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、フタル酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウムおよびメタクリル酸ナトリウムである。これらのナトリウム塩はカリウム塩もしくはアンモニウム塩でもよい。この中では、入手が容易であり、中性塩で廃水処理における負荷の低い、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムが好ましく、硫酸ナトリウムがより好ましい。
水に加える塩成分の含有量は特に限定されないが、完全に溶解している必要があるため、それぞれ塩成分の溶解度に対応して添加量を調整することが好ましい。塩成分と水の混合水溶液と重合体溶液とを混合した後の分離性を促進するためには、塩成分の添加量を0.1〜15wt%にすることが好ましく、廃水処理の負荷を低減するために0.1〜10wt%にすることが好ましい。
酸を溶解した水溶液と重合体溶液を接触させる際の水の使用量は特に制限はないが、ビニル系重合体100重量部に対して水は10〜2000重量部の範囲が好ましい。さらに好ましくは経済性と操作面から、100〜300重量部であることが好ましい。
塩を溶解した水溶液と重合体溶液の液々接触には様々な実施態様が可能であるが、撹拌混合と液々分離を回分操作で行う回分式のほか、水と重合体を向流方式で容器に通液する抽出塔方式やスプレー塔方式等も利用できる。さらに必要に応じて撹拌による混合分散に加えて、容器の振とう、超音波の利用など、分散効率を向上させる諸操作を取り入れることができる。2相を混合させる駆動力を必要としない方法として、スプレー塔、充填塔、バッフル塔、多孔板抽出塔、オリフィス塔、スタティックミキサーなどのフローミキサーと呼ばれる方法などが挙げられる。また、駆動力を必要とする方法としては、脈動式充填塔、脈動式多孔板塔、振動板塔、ポドビルニアク抽出機やルウェスタ抽出機のような遠心式抽出装置が挙げられる。駆動力として撹拌方式を用いる装置は様々な方式があり、ミキサーセトラー抽出装置や、シャイベル塔、回転円板抽出塔、オルドシュー−ラシュトン塔、ARD塔などが上げられる。
水もしくは塩成分を溶解した水溶液と重合体溶液を接触させる際の温度としては特に限定されず、一般に0〜200℃であればよい。好ましくは20〜100℃であり、より好ましくは30〜80℃である。温度を高くすれば、重合体溶液の粘度が下がり分散する油滴が小さくなるため、水との接触面積が大きくなり、金属触媒の抽出が促進されるので好ましい。ただし高すぎるとビニル系重合体の品質が悪化する恐れがある。
上記接触を行う時間も特に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲内であればよい。重合体を溶解する非水溶性溶剤や酸、無機塩の種類を限定することにより、1分程度の混合攪拌により精製を完了する組み合わせもある。その他の組み合わせでも、通常、5〜300分程度で行うことができる。
水もしくは酸、塩成分を溶解した水溶液と重合体溶液との油水分離には、比重差を利用する遠心分離または静置分離、あるいは電気的性質の違いを利用する静電浄油などを利用することが出来る。上記油水分離を行う時間も特に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲内であればよい。通常、1〜300分程度で行うことが出来る。
上記の酸成分を溶解した水溶液と重合体溶液との接触および油水分離の回数は特に限定されず、一回でも数回行ってもかまわない。
上記の精製処理により、本発明の重合体における遷移金属成分の含有量を重合体1kgに対して1mg以下にすることができる。
以上において本発明にかかる方法は、リビングラジカル重合によるビニル系重合体の製造の際に、広範に適用することが出来る。
<<ヒドロシリル化反応>>
前述の精製処理を行った分子内に少なくとも1個のアルケニル基を有するビニル系重合体はヒドロシリル化反応に用いることができ、架橋させることによってゴム状の硬化物が得られる。
ヒドロシリル化反応を用いたゴム状の硬化物を得る方法としては、例えば以下の2点が挙げられる。
(I)分子内に少なくとも1個のアルケニル基を有するビニル系重合体とヒドロシリル基を有するシラン化合物を含有するヒドロシリル化反応性組成物を作製し、ヒドロシリル化反応を行うことによって、硬化物を得る方法。
(II)分子内に少なくとも1個のアルケニル基を有するビニル系重合体と、架橋性シリル基とヒドロシリル基を併せ持つシラン化合物とを、ヒドロシリル化反応させて架橋性シリル基を有するビニル系重合体を製造し、得られた架橋性シリル基を有するビニル系重合体を含有する組成物を作製し、架橋性シリル基同士を架橋させて硬化物を得る方法。
<(I)の方法>
(I)の方法に用いるヒドロシリル基含有化合物は、ヒドロシリル化反応により硬化物を与えるためには分子内に少なくとも1.1個のヒドロシリル基を有することが好ましい。このような分子内に少なくとも1.1個のヒドロシリル基を有する化合物としては特に限定されないが、例えば、一般式(22)または(23)で表される鎖状ポリシロキサン;
51 3SiO−[Si(R512O]a−[Si(H)(R52)O]b−[Si(R52)(R53)O]c−SiR51 3 (22)
HR51 2SiO−[Si(R512O]a−[Si(H)(R52)O]b−[Si(R52)(R53)O]c−SiR51 2H (23)
(式中、R51およびR52は炭素数1〜6のアルキル基、または、フェニル基、R53は炭素数1〜10のアルキル基またはアラルキル基を示す。aは0≦a≦100、bは2≦b≦100、cは0≦c≦100を満たす整数を示す。)
一般式(24)で表される環状シロキサン;
Figure 0005918628
(式中、R54およびR55は炭素数1〜6のアルキル基、または、フェニル基、R56は炭素数1〜10のアルキル基またはアラルキル基を示す。dは0≦d≦8、eは2≦e≦10、fは0≦f≦8の整数を表し、かつ3≦d+e+f≦10を満たす。)
等の化合物を用いることができる。
これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもかまわない。これらのシロキサンの中でも(メタ)アクリル系重合体との相溶性の観点から、フェニル基を有する下記一般式(25)、(26)で表される鎖状シロキサンや、一般式(27)、(28)で表される環状シロキサンが好ましい。
(CH33SiO−[Si(H)(CH3)O]g−[Si(C652O]h−Si(CH33 (25)
(CH33SiO−[Si(H)(CH3)O]g−[Si(CH3){CH2C(H)(R56)C65}O]h−Si(CH33 (26)
(式中、R56は水素またはメチル基を示す。gは2≦g≦100、hは0≦h≦100の整数を示す。C65はフェニル基を示す。)
Figure 0005918628
(式中、R57は水素、またはメチル基を示す。iは2≦i≦10、jは0≦j≦8、かつ3≦i+j≦10を満たす整数を示す。)
少なくとも1.1個のヒドロシリル基を有する化合物としてはさらに、分子中に2個以上のアルケニル基を有する低分子化合物に対し、一般式(22)から(28)に表されるヒドロシリル基含有化合物を、反応後にも一部のヒドロシリル基が残るようにして付加反応させて得られる化合物を用いることもできる。分子中に2個以上のアルケニル基を有する化合物としては、各種のものを用いることができる。例示するならば、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン等の炭化水素系化合物、O,O'−ジアリルビスフェノールA、3,3'−ジアリルビスフェノールA等のエーテル系化合物、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルトリメリテート、テトラアリルピロメリテート等のエステル系化合物、ジエチレングリコールジアリルカーボネート等のカーボネート系化合物が挙げられる。
上記一般式(22)から(28)に示した過剰量のヒドロシリル基含有化合物に対し、ヒドロシリル化触媒の存在下、上に挙げたアルケニル基含有化合物をゆっくり滴下することにより該化合物を得ることができる。このような化合物のうち、原料の入手容易性、過剰に用いたシロキサンの除去のしやすさ、さらにはビニル系重合体への相溶性を考慮して、下記のものが好ましい。
Figure 0005918628
分子内に少なくとも1個のアルケニル基を有するビニル系重合体とヒドロシリル基含有化合物は任意の割合で混合することができるが、硬化性の面から、アルケニル基とヒドロシリル基のモル比が5〜0.2の範囲にあることが好ましく、さらに、2.5〜0.4であることが特に好ましい。モル比が5以上になると硬化が不十分でべとつきのある強度の小さい硬化物しか得られず、また、0.2より小さいと、硬化後も硬化物中に活性なヒドロシリル基が大量に残るので、クラック、ボイドが発生し、均一で強度のある硬化物が得られない。
分子内に少なくとも1個のアルケニル基を有するビニル系重合体とヒドロシリル基含有化合物との硬化反応は、2成分を混合して加熱することにより進行するが、反応をより迅速に進めるために、ヒドロシリル化触媒を添加することができる。このようなヒドロシリル化触媒としては特に限定されず、例えば、有機過酸化物やアゾ化合物等のラジカル開始剤、および遷移金属触媒が挙げられる。
ラジカル開始剤としては特に限定されず、例えば、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α'−ビス(t−ブチルペルオキシ)イソプロピルベンゼンのようなジアルキルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、m−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドのようなジアシルペルオキシド、過安息香酸−t−ブチルのような過酸エステル、過ジ炭酸ジイソプロピル、過ジ炭酸ジ−2−エチルヘキシルのようなペルオキシジカーボネート、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンのようなペルオキシケタール等を挙げることができる。
また、遷移金属触媒としても特に限定されず、例えば、白金単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に白金固体を分散させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体、白金(0)−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh33,RhCl3,RuCl3,IrCl3,FeCl3,AlCl3,PdCl2・H2O,NiCl2,TiCl4等が挙げられる。これらの触媒は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもかまわない。触媒量としては特に制限はないが、(A)成分のアルケニル基1molに対し、10-1〜10-8molの範囲で用いるのが良く、好ましくは10-3〜10-6molの範囲で用いるのがよい。10-8molより少ないと硬化が十分に進行しない。またヒドロシリル化触媒は一般に高価で腐食性であり、また、水素ガスを大量に発生して硬化物が発泡してしまう場合があるので10-1mol以上用いないのが好ましい。
硬化温度については特に制限はないが、一般に0℃〜200℃、好ましくは30℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜150℃で硬化させるのがよい。これにより短時間で硬化性組成物を得ることができる。
<(II)の方法>
(II)の方法に用いる架橋性シリル基とヒドロシリル基を併せ持つシラン化合物としては特に制限はないが、代表的なものを示すと、一般式(29)で示される化合物が例示される。
H−[Si(R582-b(Y)bO]m−Si(R593-a(Y)a (29)
{式中、R58、R59は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、または(R')3SiO−(R'は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR'は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R58またはR59が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,または3を、また、bは0,1,または2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。}
加水分解性基としては、たとえば、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などの一般に使用されている基があげられる。これらのうちでは、アルコキシ基、アミド基、アミノオキシ基が好ましいが、加水分解性がマイルドで取り扱い易いという点から、アルコキシ基がとくに好ましい。
加水分解性基や水酸基は、1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、(a+Σb)は1〜5個の範囲が好ましい。加水分解性基や水酸基が架橋性シリル基中に2個以上結合する場合には、それらは同じであってもよいし、異なってもよい。架橋性シリル基を形成するケイ素原子は1個以上であるが、シロキサン結合などにより連結されたケイ素原子の場合には、20個以下であることが好ましい。
これらヒドロシラン化合物の中でも、特に一般式(30)
H−Si(R593-a(Y)a (30)
(式中、R59、Y、aは前記に同じ)
で示される架橋性基を有する化合物が入手容易な点から好ましい。
上述のヒドロシラン化合物と分子内に少なくとも1個のアルケニル基を有するビニル系重合体とをヒドロシリル化反応させることにより分子内に架橋性シリル基を有するビニル系重合体が得られる。
分子内に架橋性シリル基を有するビニル系重合体は架橋し、硬化物を与える。
架橋性シリル基を有するビニル系重合体を硬化させて成る硬化物にゴム的な性質が特に要求される場合には、ゴム弾性に大きな影響を与える架橋点間分子量が大きくとれるため、架橋性シリル基の少なくとも1個は分子鎖の末端にあることが好ましい。より好ましくは、全ての官能基を分子鎖末端に有するものである。
分子内にアルケニル基を有するビニル系重合体と架橋性シリル基とヒドロシリル基を併せ持つシラン化合物の割合は特に限定されないが、ヒドロシリル基がアルケニル基に対して当量以上であることが好ましい。
ヒドロシリル化反応をより迅速に進めるために、ヒドロシリル化触媒を添加することができる。このようなヒドロシリル化触媒としては既に例示したものが使用されてよい。
反応温度については特に制限はないが、一般に0℃〜200℃、好ましくは30℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜150℃である。
架橋性シリル基を有するビニル系重合体を含有する硬化性組成物を硬化させるにあたっては縮合触媒を使用してもしなくてもよい。縮合触媒としてはテトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジメトキシド、オクチル酸錫、ナフテン酸錫等の有機錫化合物;オクチル酸鉛、ブチルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、1,3−ジアザビシクロ(5,4,6)ウンデセン−7等のアミン系化合物あるいはそれらのカルボン酸塩;ラウリルアミンとオクチル酸錫の反応物あるいは混合物のようなアミン系化合物と有機錫化合物との反応物および混合物;過剰のポリアミンと多塩基酸から得られる低分子量ポリアミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物の反応生成物;アミノ基を有するシランカップリング剤、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等の公知のシラノール触媒1種または2種以上を必要に応じて用いればよい。使用量は末端に架橋性シリル基を有するビニル系重合体に対し、0〜10重量%で使用するのが好ましい。加水分解性基Yとしてアルコキシ基が使用される場合は、この重合体のみでは硬化速度が遅いので、硬化触媒を使用することが好ましい。
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
〔製造例1〕
アクリル酸n−ブチル100部、メタノール(MeOH)80容量部、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル1.76部、及びN,N,N’,N’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)955ppmを仕込み、窒素気流下55℃で撹拌した。これに、臭化銅(II)(CuBr2)107ppm(Cu量=30ppm)を純度96%のヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン(Me6TREN)109ppm(Cuに対して等量)、及びN,N−ジメチルアセトアミド0.54容量部で溶解させた溶液と、アスコルビン酸(VC)17ppmをメタノール0.12容量部で溶解させた溶液を別途準備し、それらを添加して反応を開始した。途中、アスコルビン酸をメタノールに溶解させた溶液を適宜添加しながら反応溶液の温度が50℃〜60℃となるように加熱攪拌を続けた。重合開始から160分後アクリル酸n−ブチルの反応率が92モル%に達したところで、1,7−オクタジエン、アスコルビン酸(VC)を添加して14時間撹拌を続け、反応容器内を減圧にし、揮発分を除去して[重合体1]を得た。このときの[重合体1]をGPC分析(システム:ウォーターズ(Waters)社製GPCシステム、カラム:昭和電工(株)製Shodex K−804(ポリスチレンゲル))を行ったところ、数平均分子量23400、分子量分布1.40はであった。
〔実施例1〕
製造例1で得られた[重合体1]400gと、n−ブタノール150gを加え、[重合体溶液1]を得た。3LSUS槽で、180℃に昇温し、3時間攪拌を行い、脱ハロゲン化を行った。攪拌停止後、[重合体溶液1]にn−ブタノール650gと0.1%硫酸ナトリウム水溶液1200gを加え、5分間攪拌を行った。攪拌停止後には速やかに油相と水相が分離され、20分間静置後、水相を回収した。4回繰り返した後に油相をロータリーエバポレータを用いて溶剤および水分を減圧留去し、アルケニル末端を有するビニル系重合体[重合体2]を得た。[重合体2]の色差を分光式色彩計SE−2000(日本電色工業社製)を用いて測定したところ、ΔE*は27であった。
300mlの四つ口フラスコに[重合体2]100gを仕込み、撹拌を行い、115℃で加熱減圧した。窒素で圧戻しをした後、窒素気流下でオルト蟻酸メチル0.851ml、0価白金の1、1、3、3−テトラメチル−1、3−ジビニルジシロキサン錯体のキシレン溶液0.011mlを添加し、混合した後に、DMS(ジメトキシメチルシラン)2.880mlを添加して、115℃で2、5時間加熱撹拌し、加熱脱揮することによりアルコキシシリル基を有するビニル系重合体を得た。NMR分析(日本電子(株)製JMN−LA400)にてビニル系重合体中アルケニル基を測定した所、残存率1%以下であった。
〔実施例2〕
製造例1で得られた[重合体1]400gと、n−ブタノール150gを加え、[重合体溶液2]を得た。3LSUS槽で、180℃に昇温し、3時間攪拌を行い、脱ハロゲン化を行った。[重合体溶液2]にn−ブタノール250gとKW500SH:8g、KW700SL:4g(共に協和化学(株)製)を加え、30分間攪拌を行った。攪拌停止後、[重合体溶液2]のろ過を行い、ロータリーエバポレータを用いて溶剤を減圧留去し、アルケニル末端を有するビニル系重合体[重合体3]を得た。[重合体3]の色差を分光式色彩計SE−2000(日本電色工業社製)を用いて測定したところ、ΔE*は28であった。
300mlの四つ口フラスコに[重合体3]100gを仕込み、撹拌を行い、115℃で加熱減圧した。窒素で圧戻しをした後、窒素気流下でオルト蟻酸メチル0.851ml、0価白金の1、1、3、3−テトラメチル−1、3−ジビニルジシロキサン錯体のキシレン溶液0.011mlを添加し、混合した後に、DMS(ジメトキシメチルシラン)2.880mlを添加して、115℃で2、5時間加熱撹拌し、加熱脱揮することによりアルコキシシリル基を有するビニル系重合体を得た。NMR分析(日本電子(株)製JMN−LA400)にてビニル系重合体中アルケニル基を測定した所、残存率1%以下であった。
〔比較例1〕
製造例1で得られた[重合体1]400gを3LSUS槽で、180℃に昇温し、3時間攪拌を行い、脱ハロゲン化を行い、[重合体4]を得た。攪拌停止後、[重合体4]にn−ブタノール800gと0.1%硫酸ナトリウム水溶液1200gを加え、5分間攪拌を行った。攪拌停止後には速やかに油相と水相が分離され、20分間静置後、水相を回収した。4回繰り返した後に油相をロータリーエバポレータを用いて溶剤および水分を減圧留去し、アルケニル末端を有するビニル系重合体[重合体5]を得た。[重合体5]の色差を分光式色彩計SE−2000(日本電色工業社製)を用いて測定したところ、ΔE*は99であった。
〔比較例2〕
製造例1で得られた[重合体1]400gを3LSUS槽で、180℃に昇温し、3時間攪拌を行い、脱ハロゲン化を行い、[重合体6]を得た。[重合体6]にn−ブタノール350gを加え[重合体溶液3]を得た。[重合体溶液3]にKW500SH:8g、KW700SL:4g(共に協和化学(株)製)を加え、30分間攪拌を行った。攪拌停止後、[重合体溶液3]のろ過を行い、ロータリーエバポレータを用いて溶剤を減圧留去し、アルケニル末端を有するビニル系重合体[重合体7]を得た。[重合体7]の色差を分光式色彩計SE−2000(日本電色工業社製)を用いて測定したところ、ΔE*は99であった。
〔比較例3〕
製造例1で得られた[重合体1]400gと、酢酸ブチル150gを加え、[重合体溶液4]を得た。3LSUS槽で、180℃に昇温し、3時間攪拌を行い、脱ハロゲン化を行った。[重合体溶液4]に酢酸ブチル250gとKW500SH:8g、KW700SL:4g(共に協和化学(株)製)を加え、30分間攪拌を行った。攪拌停止後、[重合体溶液4]のろ過を行い、ロータリーエバポレータを用いて溶剤を減圧留去し、アルケニル末端を有するビニル系重合体[重合体8]を得た。[重合体8]の色差を分光式色彩計SE−2000(日本電色工業社製)を用いて測定したところ、ΔE*は99であった。
〔比較例4〕
製造例1で得られた[重合体1]400gと、トルエン150gを加え、[重合体溶液5]を得た。3LSUS槽で、180℃に昇温し、3時間攪拌を行い、脱ハロゲン化を行った。[重合体溶液5]にトルエン250gとKW500SH:8g、KW700SL:4g(共に協和化学(株)製)を加え、30分間攪拌を行った。攪拌停止後、[重合体溶液5]のろ過を行い、ロータリーエバポレータを用いて溶剤を減圧留去し、アルケニル末端を有するビニル系重合体[重合体9]を得た。[重合体9]の色差を分光式色彩計SE−2000(日本電色工業社製)を用いて測定したところ、ΔE*は99であった。
〔比較例5〕
製造例1で得られた[重合体1]100gに、n−ブタノール200gを加え攪拌することで、[重合体溶液6]を得た。1Lのセパラブルフラスコ(攪拌機、およびジャケット付き)に洗浄水として0.1wt%硫酸水溶液を200g仕込み、45℃に昇温し、[重合体溶液6]を滴下していき、全量滴下後に5分間攪拌を行った。攪拌停止後には速やかに油相と水相が分離され、油相は淡黄色に、水相は青色に変化した。20分間静置後、油相を回収し、さらに水を200g仕込み、5分間攪拌を行った。攪拌停止後には速やかに油相と水相が分離され、20分間静置後、油相を回収した。油相をロータリーエバポレータを用いて溶剤および水分を減圧留去した。次に脱ハロゲン化工程として、スミライザーGSを0.1g添加し、180℃、8時間、真空条件化で撹拌を行なった。その後、精製工程として、n−ブタノール200g、純水200gを加え、45℃10分間混合し、20分間静置し、油相、水相の2相に分離させ、油相を回収した。この精製工程を2回繰り返した後、100℃、真空条件下で溶剤および水分を減圧留去し、アルケニル末端を有するビニル系重合体[重合体10]を得た。[重合体10]の色差を分光式色彩計SE−2000(日本電色工業社製)を用いて測定したところ、ΔE*は40であった。
300mlの四つ口フラスコに[重合体10]100gを仕込み、撹拌を行い、115℃で加熱減圧した。窒素で圧戻しをした後、窒素気流下でオルト蟻酸メチル0.851ml、0価白金の1、1、3、3−テトラメチル−1、3−ジビニルジシロキサン錯体のキシレン溶液0.011mlを添加し、混合した後に、DMS(ジメトキシメチルシラン)2.880mlを添加して、115℃で2、5時間加熱撹拌し、加熱脱揮することによりアルコキシシリル基を有するビニル系重合体を得た。NMR分析(日本電子(株)製JMN−LA400)にてビニル系重合体中アルケニル基を測定した所、残存率20%であった。
Figure 0005918628

Claims (15)

  1. リビングラジカル重合によって得られたハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)を加熱することによって、脱ハロゲン化を行なうビニル系重合体(ロ)の製造方法であって、
    ハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)を、アルコール系溶剤、加熱温度100℃以上250℃以下で加熱することを特徴とするビニル系重合体の製造方法。
  2. アルコール系溶剤の炭素数が6以下である請求項に記載のビニル系重合体の製造方法。
  3. アルコール系溶剤に溶解したハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)の溶液中での含有率が1wt%以上、90wt%以下である、請求項1又は2に記載のビニル系重合体の製造方法。
  4. ハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)が分子内に少なくとも1個のアルケニル基を有するものである請求項1〜のいずれか一項に記載のビニル系重合体の製造方法。
  5. アルケニル基がハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)の分子鎖末端に存在する請求項に記載のビニル系重合体の製造方法。
  6. ハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)を前記アルコール系溶剤中で加熱した後、得られたビニル系重合体(ロ)とハロゲン化合物の混合溶液を吸着剤または水に接触させることによってハロゲン化合物を除去する請求項1〜のいずれか一項に記載のビニル系重合体の製造方法。
  7. 吸着剤が活性炭又は無機系吸着剤である請求項に記載のビニル系重合体の製造方法。
  8. 水が純水又は塩を含む水である請求項6又は7に記載のビニル系重合体の製造方法。
  9. 水に含まれる塩が硫酸ナトリウムである請求項に記載のビニル系重合体の製造方法。
  10. リビングラジカル重合の重合触媒である遷移金属錯体の中心金属が周期律表第8族、9族、10族、または11族元素である請求項1〜のいずれか一項に記載のビニル系重合体の製造方法。
  11. 遷移金属錯体の中心金属が鉄、ニッケル、ルテニウム又は銅である請求項10に記載のビニル系重合体の製造方法。
  12. 遷移金属錯体の中心金属が銅である請求項11に記載のビニル系重合体の製造方法。
  13. 請求項12のいずれか一項に記載の製造方法によって得られる分子内に少なくとも1個のアルケニル基を有するビニル系重合体と、架橋性シリル基とヒドロシリル基を併せ持つシラン化合物とを、反応させて得られる架橋性シリル基を有するビニル系重合体の製造方法。
  14. リビングラジカル重合により製造されたハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)をアルコール系溶剤、加熱温度100℃以上250℃以下で加熱する工程を経るハロゲン基を有するビニル系重合体からハロゲンを除去する方法。
  15. リビングラジカル重合により製造された、重合触媒残渣を含有する、ハロゲン基を有するビニル系重合体(イ)をアルコール系溶剤、加熱温度100℃以上250℃以下で加熱した後、得られたビニル系重合体(ロ)とハロゲン化合物の混合溶液を吸着剤または水に接触させて、ハロゲン化合物と重合触媒を同時に除去する精製方法。
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