以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、冷凍サイクル装置1は、冷媒を吸入して圧縮する圧縮機2、圧縮機2吐出冷媒を放熱させる放熱器3、放熱器3流出冷媒を減圧膨張させる膨張弁4、および、膨張弁4にて減圧された冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発器5を環状に接続したものである。
圧縮機2は、車両走行用駆動力を出力する駆動源であるエンジン10から回転駆動力を得て、圧縮機構を回転駆動させることで冷媒を吸入して圧縮する。なお、圧縮機構としては、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構、あるいは、外部からの制御信号によって吐出容量を調整可能に構成された可変容量型圧縮機構のいずれを採用してもよい。
さらに、エンジン10の回転駆動力は、エンジン10の回転駆動軸に連結されたエンジン側プーリ11、圧縮機2に連結されたプーリ一体型のクラッチ20、および、エンジン側プーリ11およびクラッチ20の外周に掛けられたVベルト12を介して、圧縮機2へ伝達される。
図1、図2に示すように、クラッチ20は、エンジン10からの回転駆動力によって回転する駆動側回転体を構成するプーリ30と、圧縮機2の軸2aに連結された従動側回転体を構成するアーマチャ40とを有し、このプーリ30とアーマチャ40とを連結あるいは切り離すことで、エンジン10から圧縮機2への回転駆動力の伝達を断続するものである。
つまり、クラッチ20がプーリ30とアーマチャ40とを連結すると、エンジン10の回転駆動力が圧縮機2に伝達されて、冷凍サイクル装置1が作動する。一方、クラッチ20がプーリ30とアーマチャ40とを切り離すと、エンジン10の回転駆動力が圧縮機2に伝達されることはなく、冷凍サイクル装置1も作動しない。なお、クラッチ20は、冷凍サイクル装置1の各種構成機器の作動を制御する空調制御装置6から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
次に、クラッチ20について詳述する。なお、以下の説明では、圧縮機2およびクラッチ20の回転中心を回転軸といい、その回転軸に対して垂直な方向を回転軸垂直方向という。
図2〜図4に示すように、クラッチ20は、駆動側回転体を構成するプーリ30、従動側回転体を構成するアーマチャ40、および、プーリ30とアーマチャ40とを連結させる吸引磁力を発生させる永久磁石51等を有するステータ50を備えている。
まず、プーリ30は、回転軸に対して同軸上に配置された円筒状の外側円筒部31、この外側円筒部31の内周側に配置されるとともに回転軸に対して同軸上に配置された円筒状の内側円筒部32、並びに、外側円筒部31および内側円筒部32における回転軸方向一端側同士を結ぶように回転軸垂直方向に広がるとともに、中央部にその表裏を貫通する円形状の貫通穴が形成された円板状の端面部33を有している。
つまり、プーリ30は二重円筒構造で構成され、その軸方向断面形状は、図2に示すように、回転軸に対して線対称に位置付けられる2つのコの字形状となり、外側円筒部31の内周面、内側円筒部32の外周面および端面部33の内側面によって、円筒状空間が形成される。
外側円筒部31、内側円筒部32、および、端面部33は、いずれも磁性材(例えば、鉄)にて一体的に形成され、後述する吸引用磁気回路MCaおよび非吸引用磁気回路MCbの一部を構成する。外側円筒部31の外周側には、Vベルト12が掛けられるV溝(具体的には、ポリV溝)が形成されている。内側円筒部32の内周側には、ボールベアリング34の外側レースが固定されている。
ボールベアリング34は、圧縮機2の外殻を形成するハウジングに対して、プーリ30を回転自在に固定するものである。そのため、ボールベアリング34の内側レースは、圧縮機2のハウジングに設けられたハウジングボス部2bに固定されている。なお、ハウジングボス部2bは、回転軸方向に延びる円筒状に形成されている。
端面部33には、軸方向に沿って見たときに径方向に2列に並んだ円弧状の複数のスリット穴33a、33bが形成されている。このスリット穴33a、33bは、端面部33の表裏を貫通している。また、端面部33の外側面は、プーリ30とアーマチャ40が連結された際に、アーマチャ40と接触する摩擦面を形成している。
そこで、本実施形態では、端面部33の表面の一部に、端面部33の摩擦係数を増加させるための摩擦部材35を配置している。この摩擦部材35は、非磁性材で形成されており、具体的には、アルミナを樹脂で固めたものや、金属粉末(例えば、アルミニウム粉末)の焼結材を採用できる。
アーマチャ40は、磁性材(例えば、鉄)にて形成され、吸引用磁気回路MCaの一部を構成する。より詳細には、アーマチャ40は、回転軸垂直方向に広がるとともに、中央部にその表裏を貫通する貫通穴が形成された円板状部材である。このアーマチャ40の回転中心は、回転軸に対して同軸上に配置されている。
アーマチャ40には、プーリ30の端面部33と同様に、軸方向に沿って見たときに円弧状の複数のスリット穴40aが形成されている。このスリット穴40aは、端面部33の径方向内側のスリット穴33aと端面部33の径方向外側のスリット穴33bとの間に位置付けられている。すなわち、アーマチャ40のスリット穴40aは、端面部33の径方向内側のスリット穴33aの外周側であって、かつ、端面部33の径方向外側のスリット穴33bの内周側に位置付けられている。
また、アーマチャ40の一端側の平面は、プーリ30の端面部33に対向しており、プーリ30とアーマチャ40が連結された際に、プーリ30と接触する摩擦面を形成している。
さらに、アーマチャ40の他端側の平面には、リベット41によって略円板状の板バネ42が連結されている。また、板バネ42は、リベット43によって後述するハブ44と連結されている。なお、板バネ42およびハブ44は、アーマチャ40と圧縮機2の軸2aとを連結する連結部材を構成している。
ハブ44に設けられた雌ねじと圧縮機2の軸2aに設けられた雄ねじとを螺合させて、ハブ44と圧縮機2の軸2aが締結されている。なお、ハブ44と圧縮機2の軸2aとの締結には、スプラインやセレーション或いはキーおよびボルトなどの締結手段を用いてもよい。
また、板バネ42は、アーマチャ40に対してプーリ30から離れる方向に弾性力を作用させる。この弾性力により、プーリ30とアーマチャ40が切り離された状態では、板バネ42に連結されたアーマチャ40の一端側の平面とプーリ30の端面部33の外側面との間に予め定めた所定間隔の隙間が形成される。なお、板バネ42の代わりにゴム製の部材を用いて、アーマチャ40とハブ44を連結してもよい。
これにより、アーマチャ40、板バネ42、ハブ44、圧縮機2の軸2aが連結され、プーリ30とアーマチャ40が連結されると、アーマチャ40、板バネ42、ハブ44、圧縮機2の軸2aがプーリ30とともに回転する。
ステータ50は、吸引磁力を発生させる複数の永久磁石51、変位することによって永久磁石51が吸引磁力を発生させる吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗を増減させる可動体52、可動体52を変位させる可動体変位手段としての第1、第2電磁コイル53、54、吸引用磁気回路MCaおよび非吸引用磁気回路MCbの一部を構成するヨーク55、可動体52の可動範囲を規制するストッパ56、および、第1、第2電磁コイル53、54やストッパ56の固定部材としてのステータハウジング57を有して構成される。
ステータハウジング57は、磁性材(例えば、鉄)にて形成され、吸引用磁気回路MCaおよび非吸引用磁気回路MCbの一部を構成する。このステータハウジング57は、圧縮機2のハウジングにスナップリング等の固定手段によって固定されている。
また、ステータハウジング57は、回転軸垂直方向に広がるとともに、中央部にその表裏を貫通する貫通穴が形成された円板状のステータハウジング板部57a、および、ステータハウジング板部57aにおける内周側端部からプーリ30の端面部33側に向かって回転軸方向に延びる円筒状のステータハウジングボス部57bを有している。
ステータハウジングボス部57bは、プーリ30の内側円筒部32の外周側に配置され、ステータハウジングボス部57bとプーリ30の内側円筒部32との間には隙間が設けられている。
永久磁石51は、円筒状の磁石を複数個(本例では8個)に分割した扇面形状の磁石分割体にて構成され、その磁石分割体は回転軸の周りに円環状に配置されている。この永久磁石51の磁極は回転軸垂直方向に向いている。なお、永久磁石51の材料として、ネオジウム(ネオジム)やサマリウムコバルトを採用することができる。因みに、磁石分割体は、分割されていない1つの磁石構成体よりも、容易に製造することができる。
ヨーク55は、磁性材(例えば、鉄)からなり、回転軸方向に延びる円筒状に形成され、永久磁石51の外周側に配置されている。
第1電磁コイル53は、回転軸方向に延びる円筒状に形成され、永久磁石51およびヨーク55における回転軸方向一端側に隣接し、且つ、ハウジングボス部2bの外周側に配置されている。より詳細には、第1電磁コイル53は、永久磁石51およびヨーク55よりも圧縮機2側(すなわち、プーリ30の端面部33の反対側)に配置されるとともに、ステータハウジングボス部57bに嵌合固定されている。
第1電磁コイル53は、例えば樹脂成形されたスプール531に、銅やアルミニウム製のコイル線532が複列・複層に巻きつけられており、電力を供給されることによって磁束を発生し磁界を形成する。
スプール531は、永久磁石51およびヨーク55に隣接して配置され、回転軸垂直方向に広がるとともに、中央部にその表裏を貫通する円形状の貫通穴が形成された円板状の第1板部531a、この第1板部531aよりも圧縮機2側(すなわち、プーリ30の端面部33の反対側)に配置され、回転軸垂直方向に広がるとともに、中央部にその表裏を貫通する円形状の貫通穴が形成された円板状の第2板部531b、第1板部531aおよび第2板部531bにおける内周側端部同士を結ぶように回転軸方向に延びる円筒状の連結板部531c、並びに、第1板部531aにおける内周側端部から永久磁石51およびヨーク55側に向かって回転軸方向に延びる棒状の突起部531dを有している。この突起部531dは、回転軸の周りに等間隔に複数個(本例では8個)配置されている。
そして、第1板部531a、第2板部531b、および連結板部531cによって形成された円筒状空間に、コイル線532が配置されている。なお、第1板部531a、第2板部531b、および連結板部531cは、本発明のスプール本体部を構成している。
また、突起部531dの外周側にヨーク55を嵌合することにより、ヨーク55が突起部531dに保持されている。このように、永久磁石51よりも寸法精度や形状精度を出しやすいスプール531にてヨーク55を保持することにより、回転軸に対するヨーク55の外周面の振れを小さくすることができる。
さらに、回転軸の周りに隣接する突起部531d間に永久磁石51を挟持することにより、永久磁石51が突起部531dに保持および位置決めされている。そして、これにより、永久磁石51の回転を防止することができ、ひいては永久磁石51の摩耗を低減することができる。
第2電磁コイル54は、回転軸方向に延びる円筒状に形成され、永久磁石51およびヨーク55における回転軸方向他端側に隣接し、且つ、ハウジングボス部2bの外周側に配置されている。より詳細には、第2電磁コイル54は、永久磁石51およびヨーク55よりもプーリ30の端面部33側に配置されるとともに、ステータハウジングボス部57bに嵌合固定されている。
第2電磁コイル54の基本的構成は、第1電磁コイル53における突起部531dに相当するものを備えていない点を除き、第1電磁コイル53と同様である。
すなわち、スプール541は、永久磁石51およびヨーク55に隣接して配置され、回転軸垂直方向に広がるとともに、中央部にその表裏を貫通する円形状の貫通穴が形成された円板状の第1板部541a、この第1板部541aよりもプーリ30の端面部33側に配置され、回転軸垂直方向に広がるとともに、中央部にその表裏を貫通する円形状の貫通穴が形成された円板状の第2板部541b、並びに、第1板部541aおよび第2板部541bにおける内周側端部同士を結ぶように回転軸方向に延びる円筒状の連結板部541cを有している。
そして、第1板部541a、第2板部541b、および連結板部541cによって形成された円筒状空間に、コイル線542が配置されている。なお、第1板部541a、第2板部541b、および連結板部541cは、本発明のスプール本体部を構成している。
第1、第2電磁コイル53、54は、同一の巻き線を2つに分割したものであり、一方に通電することにより他方にも同時に通電される。
可動体52は、磁性材(例えば、鉄)よりなり、回転軸方向に延びる円筒状に形成され、第1、第2電磁コイル53、54およびヨーク55の外周側に配置されている。より詳細には、可動体52は、ヨーク55に摺動自在に嵌合されるとともに、第1、第2電磁コイル53、54との間には隙間が設けられている。
また、可動体52は、軸方向に沿って見たときに、プーリ30の端面部33の径方向内側のスリット穴33aおよび径方向外側のスリット穴33bの双方の外側に位置付けられている。
さらに、可動体52の回転軸方向の全長は、第1電磁コイル53における圧縮機2側の端部から第2電磁コイル54におけるプーリ30の端面部33側の端部までの回転軸方向長さよりも短く設定されている。これにより、可動体52が、プーリ30の端面部33側に移動すると、永久磁石51がプーリ30の端面部33の反対側に形成する磁気回路の磁気抵抗を増加させる空隙(エアギャップ)が形成される。
逆に、可動体52が、プーリ30の端面部33の反対側に移動すると、永久磁石51がプーリ30の端面部33側に形成する磁気回路の磁気抵抗を増加させる空隙(エアギャップ)が形成される。
ストッパ56は、磁性材(例えば、鉄)よりなり、ステータハウジング57に接合されている。そして、ストッパ56とステータハウジング57とによって円筒状空間が形成され、その空間に、永久磁石51、可動体52、第1、第2電磁コイル53、54、およびヨーク55が収容されている。
また、ストッパ56は、回転軸垂直方向に広がるとともに、中央部にその表裏を貫通する貫通穴が形成された円板状のストッパ板部56a、および、ストッパ板部56aにおける外周側端部から圧縮機2側に向かって回転軸方向に延びる円筒状のストッパ円筒部56bを有している。
ストッパ板部56aは、可動体52や第2電磁コイル54よりもプーリ30の端面部33側に配置され、ストッパ板部56aとプーリ30の端面部33との間には隙間が設けられている。そして、可動体52がストッパ板部56aに当接することによって、可動体52の可動範囲が規制されるようになっている。
ストッパ円筒部56bは、可動体52の外周側に配置され、ストッパ円筒部56bとプーリ30の外側円筒部31との間には隙間が設けられるとともに、ストッパ円筒部56bと可動体52との間にも隙間Sが設けられている。
次に、図5に基づいて、上記構成における本実施形態のクラッチ20の作動を説明する。なお、図5では、図示の明確化のため、可動体52以外の断面ハッチングを省略している。
まず、図5(a)に示すように、プーリ30とアーマチャ40が連結された状態では、可動体52が、プーリ30の端面部33側に移動している。
このとき、永久磁石51の磁束は、ヨーク55、可動体52、外側円筒部31、アーマチャ40、端面部33、アーマチャ40、内側円筒部32、ステータハウジングボス部57bの順に通過し、図5(a)の太実線に示す磁気回路が形成される。
そして、この図5(a)の太実線に示す磁気回路の磁気抵抗が、可動体52がステータハウジング板部57a側(すなわち、圧縮機2側)に移動しているときよりも減少して、この磁気回路によって生じる磁力が増加する。
さらに、図5(a)の太実線に示す磁気回路によって生じる磁力は、プーリ30とアーマチャ40とを連結させる吸引磁力となっている。従って、図5(a)の太実線に示す磁気回路は、本実施形態における吸引用磁気回路MCaである。また、可動体52が、プーリ30の端面部33側に移動している際には、可動体52とステータハウジング板部57aとの間に空隙(エアギャップ)が形成される。
この空隙は、図5(a)の細破線に示すような、永久磁石51によって形成されるヨーク55、可動体52、ステータハウジング板部57a、ステータハウジングボス部57bの順に磁束が通過する磁気回路の磁気抵抗を増加させ、この磁気回路によって生じる磁力を減少させる。
なお、図5(a)の細破線に示す磁気回路によって生じる磁力は、プーリ30とアーマチャ40とを連結させる吸引力として機能しない。従って、図5(a)の細破線に示す磁気回路は、本実施形態における吸引用磁気回路MCaとは異なる非吸引用磁気回路MCbである。
さらに、可動体52が、プーリ30の端面部33側に移動している際には、吸引用磁気回路MCaの磁束量が増加しているので、可動体52の位置は、プーリ30の端面部33側に維持される。
また、本実施形態では、板バネ42がプーリ30とアーマチャ40とを離す方向に作用させる弾性力が、可動体52がプーリ30の端面部33側に移動している際の吸引磁力よりも小さくなるように設定されている。従って、第1、第2電磁コイル53、54に電力を供給しなくても、プーリ30とアーマチャ40が連結された状態が維持される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力が圧縮機2へ伝達される。
次に、連結された状態のプーリ30とアーマチャ40とを切り離す際には、車両用空調装置の空調制御装置6が、図5(b)に示すように、第1、第2電磁コイル53、54に対して電力を供給する。より詳細には、第1、第2電磁コイル53、54が発生する磁束により、吸引用磁気回路MCaを通過する磁束量を減少させるとともに、非吸引用磁気回路MCbを通過する磁束量を増加させるように、電流の流れ向きを設定する。
これにより、図5(b)の細実線で示す吸引用磁気回路MCaによって生じる吸引磁力よりも、図5(b)の太破線で示す非吸引用磁気回路MCbによって生じる磁力が強くなり、可動体52がステータハウジング板部57a側へ移動する。この移動に伴って、プーリ30とアーマチャ40が連結されているときよりも、非吸引用磁気回路MCbの磁気抵抗が減少して、非吸引用磁気回路MCbを通過する磁束量がさらに増加する。その結果、可動体52の位置は、ステータハウジング板部57a側に維持される。
また、可動体52がステータハウジング板部57a側に移動すると、可動体52とプーリ30の端面部33との間に空隙(エアギャップ)が形成される。この空隙によって、プーリ30とアーマチャ40が連結されているときよりも、吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗が増加するので、吸引磁力が減少する。その結果、板バネ42による弾性力が吸引磁力を上回り、プーリ30とアーマチャ40が切り離される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力が圧縮機2へ伝達されなくなる。
次に、図5(c)に示すように、可動体52がステータハウジング板部57a側に移動している際には、可動体52がプーリ30の端面部33側に移動しているときよりも非吸引用磁気回路MCbの磁束量が増加しているので、可動体52の位置は、ステータハウジング板部57a側に維持される。
さらに、可動体52がステータハウジング板部57a側に移動している際の吸引磁力は、板バネ42による弾性力よりも小さいので、第1、第2電磁コイル53、54に電力を供給しなくても、プーリ30とアーマチャ40が切り離された状態が維持される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力は圧縮機2へ伝達されない。
次に、切り離された状態のプーリ30とアーマチャ40とを連結する際には、空調制御装置6が、図5(d)に示すように、第1、第2電磁コイル53、54に対して電力を供給する。より具体的には、第1、第2電磁コイル53、54が発生する磁束により、吸引用磁気回路MCaを通過する磁束量を増加させるとともに、非吸引用磁気回路MCbを通過する磁束量を減少させるように、電流の流れ向きを設定する。
これにより、非吸引用磁気回路MCbによって生じる磁力よりも、吸引用磁気回路MCaによって生じる吸引磁力が強くなり、可動体52がプーリ30の端面部33側へ移動する。
この移動に伴って、プーリ30とアーマチャ40が切り離されているときよりも、吸引用磁気回路MCaの磁気抵抗が減少して、吸引用磁気回路MCaの磁束量がさらに増加する。その結果、吸引磁力が板バネ42による弾性力を上回り、プーリ30とアーマチャ40が連結される。すなわち、エンジン10からの回転駆動力が圧縮機2へ伝達される。
本実施形態よると、スプール531にてヨーク55を保持しているため、回転軸に対するヨーク55の外周面の振れを小さくすることができる。したがって、ストッパ円筒部56bと可動体52との間の隙間Sを小さくして、クラッチ伝達トルクを増加させることができる。
また、スプール531にて永久磁石51を保持しているため、永久磁石51の回転を防止することができ、ひいては永久磁石51の摩耗を低減することができる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図6に示すように、永久磁石51は、分割されていない円筒状の1つの磁石構成体よりなる。より詳細には、永久磁石51の外周面に、回転軸の周りに等間隔に、複数個(本例では8個)の半円状の切欠部511が形成されている。
そして、スプール531に設けられた半円状の突起部531dが切欠部511に挿入されることにより、永久磁石51が突起部531dに保持および位置決めされている。
本実施形態よると、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、永久磁石51は分割されていないため、第1実施形態のように永久磁石51が分割されたものよりも、組み付けが容易である。
さらに、永久磁石51は分割されていないため、第1実施形態のように永久磁石51が分割されたものよりも、永久磁石51の実容積を大きくすることができ、その結果、磁束発生量が大きくなってクラッチ伝達トルクを増加させることができる。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図7に示すように、ヨーク55は、回転軸方向に延びる円筒状に形成されて永久磁石51の外周側に配置されるヨーク本体部551、および、ヨーク本体部551における外周側端部で且つ回転軸方向両端部から回転軸方向に延びる円筒状のヨークフランジ部552を備えている。
そして、ヨークフランジ部552の内周側に、第1電磁コイル53の第1板部531aおよび第2電磁コイル54の第1板部541aを嵌合することにより、ヨーク55がスプール531、541に保持されている。
スプール531の突起部531dは廃止されており、永久磁石51はステータハウジングボス部57bに嵌合固定されている。このように、突起部531dを廃止することにより、スプール531を容易に製造することができる。
本実施形態よると、スプール531にてヨーク55を保持しているため、第1実施形態と同様に、クラッチ伝達トルクを増加させることができる。
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図8に示すように、ヨーク55は、回転軸方向に延びる円筒状に形成されて永久磁石51の外周側に配置されるヨーク本体部551、および、ヨーク本体部551における外周側端部で且つ回転軸方向両端部から回転軸方向に延びる円筒状のヨークフランジ部552を備えている。
また、ヨークフランジ部552は、回転軸方向に延びる複数の板状の突起部553と、突起部553間に形成される溝部554とによって構成され、突起部553と溝部554はヨークフランジ部552の周方向に沿って交互に設けられている。
さらに、図示しないが、第1電磁コイル53の第1板部531aの外周部および第2電磁コイル54の第1板部541aの外周部には、突起部553が挿入される溝部、および、溝部554間に挿入される突起部が、第1板部531a、541aの周方向に沿って交互に設けられる。
そして、ヨークフランジ部552の突起部553および溝部554と第1板部531a、541aの突起部および溝部とを嵌合することにより、ヨーク55がスプール531、541に保持される。
スプール531の突起部531dは廃止されており、永久磁石51はステータハウジングボス部57bに嵌合固定される。このように、突起部531dを廃止することにより、スプール531を容易に製造することができる。
本実施形態よると、スプール531にてヨーク55を保持しているため、第1実施形態と同様に、クラッチ伝達トルクを増加させることができる。
(他の実施形態)
上記各実施形態では、可動体52をヨーク55に摺動自在に嵌合させるとともに、ストッパ円筒部56bと可動体52との間に隙間Sを設けたが、可動体52をストッパ円筒部56bに摺動自在に嵌合させるともに、ヨーク55と可動体52との間に隙間を設けるようにしてもよい。
この場合においても、回転軸に対するヨーク55の外周面の振れを小さくすることができるため、ヨーク55と可動体52との間の隙間を小さくして、クラッチ伝達トルクを増加させることができる。
また、上記各実施形態では、ストッパ56はストッパ板部56aおよびストッパ円筒部56bを備えているが、ストッパ56はストッパ板部56aのみで構成(すなわち、ストッパ円筒部56bを廃止)してもよい。
この場合においても、回転軸に対するヨーク55の外周面の振れを小さくすることができるため、プーリ30の外側円筒部31と可動体52との間の隙間を小さくして、クラッチ伝達トルクを増加させることができる。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。
また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。
また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。