JP5903258B2 - シール体及びこれを用いた運動装置 - Google Patents
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Description
この種の運動装置においては、軸体の外周面やそのねじ部(以下、外周面と省略する)を介して、移動体の外部から内部へ塵埃等の異物が進入したり、移動体の内部から外部へ潤滑用のグリス(潤滑剤)が漏出したりすることで、軸体に対する移動体の移動が不安定になるおそれがある。そこで、移動体の異物除去性や潤滑剤保持性を確保する目的で、軸体の外周面をシールするシール体が、移動体に取り付けられている。
すなわち、従来のシール体のリップ部は、軸体の外周面に密着して弾性変形する際、シール本体部の中心軸方向のうち所望の方向に安定して曲がり難かった。具体的に、異物除去性を確保する目的の場合は、前記中心軸方向のうち移動体とは反対側へ向けてリップ部が曲げられることが好ましく、潤滑剤保持性を確保する目的の場合は、前記中心軸方向のうち移動体側へ向けてリップ部が曲げられることが好ましい。しかしながら、従来の構成では、リップ部が曲げられる向きをいずれかに安定させることは難しかった。
すなわち、本発明は、外周面にねじ部が形成された軸体に螺合するとともに、該軸体との相対回転により、該軸体の延在方向に移動可能な移動体に取り付けられて、前記軸体の外周面をシールするシール体であって、前記軸体を囲む環状をなし、弾性変形可能なシール本体部に、前記シール本体部の中心軸に直交する径方向の内側の端部に形成されたリップ部と、外力に対する変形量が前記リップ部とは異なる調整部と、が備えられ、前記中心軸を含む縦断面視で、前記リップ部は、前記中心軸方向の一方側を向き、該中心軸に対して垂直となるように延びる垂直面と、前記中心軸方向の他方側を向き、前記径方向の内側へ向かうに従い漸次前記一方側へ向かって延びる傾斜面と、を備え、前記調整部は、前記垂直面の前記径方向の外側に配置され、前記リップ部を前記径方向の内側に向けて付勢する付勢部材が設けられることを特徴としている。
また、本発明は、外周面にねじ部が形成された軸体に螺合するとともに、該軸体との相対回転により、該軸体の延在方向に移動可能な移動体に取り付けられて、前記軸体の外周面をシールするシール体であって、前記軸体を囲む環状をなし、弾性変形可能なシール本体部に、前記シール本体部の中心軸に直交する径方向の内側の端部に形成されたリップ部と、外力に対する変形量が前記リップ部とは異なる調整部と、が備えられ、前記中心軸を含む縦断面視で、前記リップ部は、前記中心軸方向の一方側を向き、該中心軸に対して垂直となるように延びる垂直面と、前記中心軸方向の他方側を向き、前記径方向の内側へ向かうに従い漸次前記一方側へ向かって延びる傾斜面と、を備え、前記調整部は、前記垂直面の前記径方向の外側に配置され、前記シール本体部には、前記リップ部の前記径方向の外側に、該リップ部より剛性が高い固定部が配設され、前記固定部は、前記リップ部の垂直面と傾斜面との交差部に対して、傾斜面側に配置されていることを特徴としている。
また、本発明は、軸体と、前記軸体の外周面に形成されたねじ部に螺合するとともに、該軸体との相対回転により、該軸体の延在方向に移動可能な移動体と、前記移動体に取り付けられて、前記軸体の外周面をシールするシール体と、を備えた運動装置であって、このシール体として、前述したシール体を用いたことを特徴としている。
以下、本発明の第1実施形態に係るシール体及びこれを用いた運動装置について、図面を参照して説明する。
また、特に図示しないが、ボールねじ1は、ナット3の後述する無限循環路に収容されるとともに、該ナット3とねじ軸2との間で転走されるボール(転動体)を備えている。
これらボールねじ用シール体10A、10Bは、各リップ部12の変形方向(後述する中心軸C方向への変形の向き)が、互いに異なって設定されている。
尚、図1及び図2において、ボールねじ用シール体10A、10Bには、シール本体部11を径方向外側から覆うようにシールカラーがそれぞれ配設されている。シールカラーは、筒状をなしているとともに、その軸方向を向く端面が、後述する固定部15(或いは他方側部分11bでもよい)に当接されている。
尚、シール本体部11の中心軸Cは、ねじ軸2の中心軸と同軸であり、本実施形態においては、シール本体部11の中心軸C方向に直交する方向を径方向といい、中心軸C回りに周回する方向を周方向という。
リップ部12においては、前記所定範囲の部分がねじ軸2のねじ部2aに摺接され、該所定範囲以外の他の部位がねじ軸2の外周面(ねじ部2a以外の部位)に摺接されて、該リップ部12の内周全体が、ねじ軸2の外周面及びそのねじ部2a(以下、外周面と省略)に摺接するようになっている。
本実施形態の調整部13は、シール本体部11に形成された中空溝状のスリット部を備えている。具体的に、調整部13のスリット部は、中心軸C方向の一方側に開口され、他方側に向けて窪まされているとともに、周方向に沿って延びる環状溝とされている。
尚、スリット部は、前記環状溝とされる代わりに、例えば円弧状溝とされて、シール本体部11に周方向に間隔をあけて複数形成されていても構わない。また、スリット部の内面において径方向に対向する溝壁同士が、例えば周方向に間隔をあけて部分的に連結されていたり、一方の溝壁から他方の溝壁に向けて突出する突起が形成されていたりしてもよい。
また、スリット部の溝幅(径方向に沿う長さ)は、該スリット部の内面において径方向に向かい合う溝壁同士が、後述する外力Fを受けて変形する際に互いに当接可能な程度とされている(図4(b)を参照)。
図4(b)に示されるように、ボールねじ用シール体10のリップ部12の交差部19に対して、径方向外側(図4(b)における上側)へ向かう分力と中心軸C方向の一方側(図4(b)における右側)へ向かう分力とが合成された外力Fが加えられた場合、リップ部12は、その交差部19が中心軸C方向の一方側へ向けて変位させられるように曲げられる。尚、このような外力Fは、例えばねじ軸2のねじ部2aにおいて中心軸C方向の一方側を向く内面部分に、リップ部12が当接する場合に生じる。
尚、図示の例では、調整部13において径方向に向かい合うスリット部の溝壁同士が、該調整部13の変形により互いに当接させられているとともに、それ以上の変形が抑制されている。
従って、ねじ軸2の外周面に対するリップ部12の締め代(具体的には、ねじ軸2の外周面やねじ部2a部分の外径に対して、リップ部12の内径を小さくする割合やその量)を小さく抑えることができ、材料費が削減される。また、垂直面16が形成されていることによって、締め代を精度よく安定して設定できるとともに、所望の面圧を安定して確保できる。
すなわち、本実施形態のように、リップ部12の変形量に対して、調整部13の変形量を大きく設定することで、外力Fを受けてリップ部12が一方側に向けて傾倒しやすくなるから、前述の一方側へ向けて曲げやすくする効果が顕著となる。また、このように調整部13が変形させられやすくなっていることで、リップ部12の面圧が周方向全体にバランスして、ねじ軸2に対して、該リップ部12全体を所定(一定)の圧力で接触させられる。従って、本実施形態のような接触式のシール構造であっても、リップ部12の面圧が周方向にばらついて部分的に高くなるようなことが防止されるとともに、発熱やトルク増大が抑えられる。
そして、固定部15が、リップ部12の垂直面16と傾斜面17との交差部19に対して、傾斜面17側に配置されているので、リップ部12がねじ軸2から外力Fを受けた際、固定部15によって剛性が確保された傾斜面17側とは反対の垂直面16側へ向けて(中心軸C方向の一方側へ向けて)、リップ部12が曲げられやすい。
次に、本発明の第2実施形態に係るボールねじ用シール体(シール体)30について、図面を参照して説明する。尚、前述の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図7(a)(b)〜図9(a)(b)に示されるように、このボールねじ用シール体30では、シール本体部11の調整部13をスリット部のみで形成する代わりに、該スリット部に、リップ部12とは変形量の異なる弾性材料を充填することにより、調整部13を形成している。
つまり、本実施形態の調整部13は、リップ部12とはヤング率の異なる材料で形成されている。
また、本実施形態の構成によれば、調整部13に用いる材料によって、該調整部13を所望の変形量に精度よく形成しやすい。よって、前述した効果がより安定して得られやすい。
すなわち、例えば、シール本体部11のリップ部12の変形量(外力Fを受けて変形する量)に対して、調整部13の変形量を小さく設定(調整部13を、リップ部12より弾性変形しにくい材料で形成)することが可能である。この場合、前述したリップ部12の面圧の確保が容易となる。
次に、本発明の第3実施形態に係るボールねじ用シール体(シール体)40について、図面を参照して説明する。尚、前述の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図10(a)(b)〜図12(a)(b)に示されるように、このボールねじ用シール体40では、調整部13をスリット部で形成する代わりに、該スリット部に対応する部位に、周りが壁面で囲まれた中空の室からなる空洞部を形成している。具体的に、この空洞部は、径方向(図10(a)における上下方向)に対向する平面状の一対の壁面と、中心軸C方向に対向する凹曲面状の一対の壁面とに囲まれるように形成されているとともに、周方向に延びる環状をなしている。
尚、調整部13における空洞部の一方側部分(薄肉部分)には、該薄肉部分を中心軸C方向に貫通する貫通孔又はスリットが、周方向に間隔をあけて複数形成されていてもよい。
Claims (6)
- 外周面にねじ部が形成された軸体に螺合するとともに、該軸体との相対回転により、該軸体の延在方向に移動可能な移動体に取り付けられて、前記軸体の外周面をシールするシール体であって、
前記軸体を囲む環状をなし、弾性変形可能なシール本体部に、
前記シール本体部の中心軸に直交する径方向の内側の端部に形成されたリップ部と、
外力に対する変形量が前記リップ部とは異なる調整部と、が備えられ、
前記中心軸を含む縦断面視で、前記リップ部は、
前記中心軸方向の一方側を向き、該中心軸に対して垂直となるように延びる垂直面と、
前記中心軸方向の他方側を向き、前記径方向の内側へ向かうに従い漸次前記一方側へ向かって延びる傾斜面と、を備え、
前記調整部は、前記垂直面の前記径方向の外側に配置され、
前記リップ部を前記径方向の内側に向けて付勢する付勢部材が設けられることを特徴とするシール体。 - 請求項1に記載のシール体であって、
前記シール本体部には、前記リップ部の前記径方向の外側に、該リップ部より剛性が高い固定部が配設され、
前記固定部は、前記リップ部の垂直面と傾斜面との交差部に対して、傾斜面側に配置されていることを特徴とするシール体。 - 外周面にねじ部が形成された軸体に螺合するとともに、該軸体との相対回転により、該軸体の延在方向に移動可能な移動体に取り付けられて、前記軸体の外周面をシールするシール体であって、
前記軸体を囲む環状をなし、弾性変形可能なシール本体部に、
前記シール本体部の中心軸に直交する径方向の内側の端部に形成されたリップ部と、
外力に対する変形量が前記リップ部とは異なる調整部と、が備えられ、
前記中心軸を含む縦断面視で、前記リップ部は、
前記中心軸方向の一方側を向き、該中心軸に対して垂直となるように延びる垂直面と、
前記中心軸方向の他方側を向き、前記径方向の内側へ向かうに従い漸次前記一方側へ向かって延びる傾斜面と、を備え、
前記調整部は、前記垂直面の前記径方向の外側に配置され、
前記シール本体部には、前記リップ部の前記径方向の外側に、該リップ部より剛性が高い固定部が配設され、
前記固定部は、前記リップ部の垂直面と傾斜面との交差部に対して、傾斜面側に配置されていることを特徴とするシール体。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載のシール体であって、
前記調整部は、前記シール本体部に形成されたスリット部及び空洞部の少なくともいずれかを備えることを特徴とするシール体。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載のシール体であって、
前記調整部は、前記リップ部とはヤング率の異なる材料で形成されていることを特徴とするシール体。 - 軸体と、
前記軸体の外周面に形成されたねじ部に螺合するとともに、該軸体との相対回転により、該軸体の延在方向に移動可能な移動体と、
前記移動体に取り付けられて、前記軸体の外周面をシールするシール体と、を備えた運動装置であって、
前記シール体として、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシール体を用いたことを特徴とする運動装置。
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