JP5901907B2 - 冷却ファン - Google Patents
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Description
ところで、このような冷却ファンにおいては、各ブレードがファンの回転方向に対して傾斜するように形成されている。そして、冷却ファンが回転すると、各ブレードの回転方向の前方に臨む側の面の近傍が正圧になる一方、後方に臨む側の面の近傍が負圧になる。
このため、ばたつきの抑制とブレードの肉薄化の両立を図った冷却ファンとして、複数のブレードの径方向外側の端部の近傍を円筒状のリング部材によって連結したものが案出されている(例えば、特許文献1参照)。
請求項1に係る発明は、回転駆動源に動力伝達可能に連結されるボス部と、前記ボス部と一体的に、且つこのボス部から径方向外側に向かって突出形成された複数のブレードと、前記複数のブレードの径方向外側の端部領域を環状に連結するリング部材と、を備え、前記複数のブレードは、延出端側が回転方向の前方に向かって湾曲する前進翼型とされ、さらに、回転方向の前方側の縁部は前記延出端に近づくにつれて前方側への膨出量が大きくなる膨出領域を備え、前記リング部材のエア吐き出し側の軸方向の端部には、前記ブレードの回転方向の後部領域に対応する箇所に、エア吐き出し側の軸方向の端部の一般面より軸方向外側に向かって延出した壁部が設けられ、前記リング部材のエア吸い込み側の軸方向の端部における各前記ブレードの前記膨出領域の間で、かつ前記壁部と軸方向で重なる位置に、エア流入溝を設けたことを特徴とするものである。
(冷却ファン)
以下、この発明の第1実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。
図1は、この第1実施形態に係る冷却ファン1を正面から見た図であり、図2は、冷却ファン1のファン本体10を示す斜視図、図3は、図1のA−A線に沿う断面図である。
冷却ファン1は、自動車のラジエータに用いられる軸流ファンであり、図示しないエンジンや電動モータ等の回転駆動源によって回転駆動されるファン本体10と、ファン本体10の外周側を覆ってラジエータに対するエアの導入効率を高めるためのシュラウド11と、を備えている。
なお、この第1実施形態では、リング部材14のエア吸い込み側の軸方向の端部の一般面14aがブレード13の軸方向の一端とほぼ同高さに形成されているが、一般面14aはブレード13の軸方向の一端と異なる高さであっても良い。
なお、この第1実施形態では、リング部材14のエア吐き出し側の軸方向の端部の一般面14bについてもブレード13の軸方向の他端とほぼ同高さに形成されているが、一般面14bはブレード13の軸方向の他端と異なる高さであっても良い。
また、この第1実施形態の場合、エア流入溝16と肉抜き溝17は同深さに設定されている。ただし、エア流入溝16と肉抜き溝17の深さは必ずしも同じである必要はない。
さらに、壁部42は、円周方向の両側面が肉抜き溝17の円周方向側面の延長線上に位置するように傾斜しており、全体として先細りの台形状に形成されている。
ファン本体10は、ポリプロピレン等の樹脂材により成形された樹脂成形品であって、上下型内に樹脂材を充填することで形成されている。上型には、樹脂材を注入するためのゲート41(図1における2点鎖線参照)が複数個所(例えば、本第1実施形態では7箇所)設けられている。ゲート41の形成位置を、より詳述すると、図1に示すように、ボス部12の筒底面部成形部位であって、複数のブレード13が一体的に設けられる根元部に位置している。
このように、冷却ファン1のファン本体10は、各隣接するブレード13の間のリング部材14の中央付近に樹脂同志の結合部位(ウェルド)Wを有するものとして成形される(図2における2点鎖線参照)。
次に、図3、図4に基づいて、冷却ファン1のファン本体10を回転駆動した際のエアの挙動について説明する。図4は、冷却ファン1のファン本体10の模式的な側面図である。
図3、図4に示すように、この冷却ファン1のファン本体10が回転駆動されると、図3に矢印で示すように、シュラウド11の導風孔30の主に前方側からエアがブレード13間のスペースに吸い込まれ、そのエアがファン本体10の後方側に配置された図示しないラジエータに供給される。
しかしながら、リング部材14の所定の位置に壁部42が形成されているので、ブレード13から吐き出されたエアが壁部42に邪魔されてリング部材14よりも径方向外側に流れにくくなる。
したがって、この冷却ファン1においては、エアの流速がリング部材14部分で急激に増速されることによる騒音の発生を未然に防止することができる。
また、この冷却ファン1の場合、シュラウド11の外周側から流入したエアが、充分なエア通過面積を確保されたエア流入溝16部分を通過して最短距離をもってブレード13間に吸い入れられるため、エアの流通抵抗が少なく、その分ファン効率の充分な向上を望むことができる。
特に、この第1実施形態の場合、エア流入溝16と肉抜き溝17の深さが同じ深さに設定され、リング部材14の軸方向の肉厚が円周方向のほぼ全域で均等になっているため、リング部材14の円周方向の重量バランスはさらに良好となっている。
また、壁部42は、全ブレード13の回転方向(図1、図2における矢印R方向)の後部領域と、各々の後部領域に対応する位置に形成されている肉抜き溝17との間に配置されている。このように、肉抜き溝17が形成されているリング部材14であっても、肉抜き溝17と共存して壁部42をレイアウトすることが可能になり、設計の自由度を高めることができる。
図4においては、hは、肉抜き溝17からリング部材14のエア吸い込み側の軸方向の端部の一般面14aに至る間の高さを示す。また、壁部42の高さHとは、エア流入溝16から壁部42の先端に至る間の軸方向の高さをいうものとする。そして、壁部42の高さを1.2hの場合と1.3hの場合とで変化させ、そのときのファン騒音を壁部42が無い場合(現行h)の騒音と比較した。
同図から明らかなように、壁部42の高さが1.2h〜1.3hの範囲に設定されているとき、壁部42が無い場合と比較してファン騒音が良好に低減されるという結果が得られた。
したがって、壁部42の高さHは、肉抜き溝17からリング部材14のエア吸い込み側の軸方向の端部の一般面14aに至る間の高さhに対し、1.2h〜1.3hの範囲に設定されていることが望ましい。
図2、図4を用いて説明すると、ファン本体10が矢印Rの方向に回転したとき、ブレード13の回転方向の後方側は、通過するエアを正圧面側に向かって流すための応力(正圧面側へ吸引される力)によって、図中下方向(正圧面側)に応力を受けることになる。これに対し、ブレード13の回転方向の前方側はエアを切ってブレード13間に流入させることから図中上方向(負圧面側)に応力を受ける。
つまり、ブレード13の回転方向の前方側と後方側とでは、受ける応力の向きが異なり、ブレード13全体として、捻られる応力が発生することになる。そして、この応力は各ブレード13の間を連結しているリング部材14に対して、その中央付近に集中する。
このような事情に鑑みると、ファン本体10の回転駆動時に、リング部材14に加わる応力がリング部材14の樹脂同志の結合部位Wに集中しないようにファン本体10の強度を増す必要がある。このため、使用する樹脂材自体を結合強度の強い高品位のものとしたり、リング部材14の厚みを増したり、軸方向長さを長くすることも考えられる。
一般的に、物体に作用する応力は、その物体に形状の変化点(屈曲点)等がある場合、この変化点側に分散する傾向がある。ここで、本第1実施形態では、リング部材14のエア吸い込み側にエア流入溝16を設けると共に、エア吐き出し側に肉抜き溝17を設けている。このため、上記課題に対して、作用する応力を各溝16,17の変化点C付近(図2参照)に分散させることができる。よって、製造コストを増大させることなく、ファン本体10の強度を確保することができる。
次に、この発明の第2実施形態を図6〜図9に基づいて説明する。尚、第1実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する(以下の実施形態についても同様)。
図6は、この第2実施形態の冷却ファン201のファン本体210を示す斜視図、図7は、図6のB−B線に沿う断面図である。
すなわち、壁部43は、リング部材14に対して角度θだけ斜め外側に傾斜した状態で設けられている。このため、リング部材14は、エア吐き出し側に向かって末広がり状に形成され、エア吸い込み側からエア吐き出し側に向かうに従い、徐々に開口面積が大きくなる。
同図に示すように、上述のような構成において、冷却ファン201のファン本体210が回転駆動されると、冷却ファン201のエア吸い込み側(図8における紙面奥側)からエアがブレード13間のスペースに吸い込まれ、そのエアがファン本体210のエア吐き出し側(図8における紙面手前側)へと抜けていく。このとき、リング部材14の開口面積がエア吐き出し側に向かって徐々に大きくなるので、吐き出されるエアの流速がリング部材14のエア吐き出し側で遅くなる。これにより、冷却ファン201によるエア圧力を増大させることができる。
ここで、リング部材14と壁部43との間の角度θは、15度〜30度の範囲に設定されていることが望ましい。より詳しく、図9に基づいて説明する。
図9は、壁部43の角度θを変化させてファン効率を調べた実験結果のグラフである。
同図に示すように、角度θが15度〜30度の範囲に設定されている場合、従来や壁部43が無い場合(波型リング)と比較してファン効率が向上していることが確認できる。
次に、この発明の第3実施形態を図10に基づいて説明する。
図10は、この第3実施形態の冷却ファン301のファン本体310を示す斜視図である。
同図に示すように、この第3実施形態のファン本体310と、第1実施形態のファン本体10との相違点は、第1実施形態のリング部材14は、ブレード13の径方向外側の端部より径方向内側にオフセットした位置を環状に連結した状態になっているのに対し、第3実施形態のリング部材14は、ブレード13の径方向外側の端部を環状に連結した状態になっている点にある。
また、冷却ファン301全体の直径のサイズアップを抑制することができると共に、製造コストを低減することができる。
次に、この発明の参考例を図11に基づいて説明する。
図11は、この参考例の冷却ファン401のファン本体410を示す斜視図である。
同図に示すように、この参考例のファン本体410と、第3実施形態のファン本体310との相違点は、第3実施形態のリング部材14には、エア流入溝16、及び肉抜き溝17が形成されているのに対し、参考例のリング部材414には、エア流入溝16、及び肉抜き溝17が形成されておらず、壁部45のみが形成されている点にある。
このように構成した場合であっても、ブレード13から吐き出されたエアが壁部45に邪魔されてリング部材14よりも径方向外側に流れにくくなる。このため、確実に冷却ファン401の騒音を低減することができる。
例えば、上記の実施形態は、冷却ファンをラジエータの冷却に用いているが、本発明に係る冷却ファンは、ラジエータ冷却用に限定されるものではなく、その他の機器を冷却するものであってもよい。
12…ボス部
13…ブレード
13a…膨出領域
14,414…リング部材
14a,14b…一般面
16…エア流入溝
17…肉抜き溝
42,43,44,45…壁部
Claims (8)
- 回転駆動源に動力伝達可能に連結されるボス部と、
前記ボス部と一体的に、且つこのボス部から径方向外側に向かって突出形成された複数のブレードと、
前記複数のブレードの径方向外側の端部領域を環状に連結するリング部材と、を備え、
前記複数のブレードは、延出端側が回転方向の前方に向かって湾曲する前進翼型とされ、さらに、回転方向の前方側の縁部は前記延出端に近づくにつれて前方側への膨出量が大きくなる膨出領域を備え、
前記リング部材のエア吐き出し側の軸方向の端部には、前記ブレードの回転方向の後部領域に対応する箇所に、エア吐き出し側の軸方向の端部の一般面より軸方向外側に向かって延出した壁部が設けられ、
前記リング部材のエア吸い込み側の軸方向の端部における各前記ブレードの前記膨出領域の間で、かつ前記壁部と軸方向で重なる位置に、エア流入溝を設けたことを特徴とする冷却ファン。 - 前記壁部は、前記リング部材におけるエア吐き出し側の軸方向の端部の一般面を基点に屈曲延出されていることを特徴とする請求項1に記載の冷却ファン。
- 前記リング部材と前記壁部との間の角度は、15度〜30度の範囲に設定されていることを特徴とする請求項2記載の冷却ファン。
- 前記壁部は、前記リング部材上の全ブレードの回転方向の前部領域と、隣接するブレードの回転方向の後部領域の間に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の冷却ファン。
- 前記リング部材のエア吐き出し側の軸方向の端部には、前記エア流入溝と円周方向でずれるように、肉抜き溝が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の冷却ファン。
- 前記肉抜き溝から前記リング部材のエア吸い込み側の軸方向の端部の一般面に至る間の高さをhとしたとき、
前記エア流入溝から前記壁部の先端に至る間の高さは、1.2h〜1.3hの範囲に設定されていることを特徴とする請求項5に記載の冷却ファン。 - 前記壁部は、前記リング部材上の全ブレードの回転方向の後部領域と、各々の後部領域に対応する位置に形成されている前記肉抜き溝との間に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の冷却ファン。
- 前記複数のブレードとリング部材の連結位置は、前記ブレードの径方向外側の端部から径方向内側にオフセットした位置に設定されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の冷却ファン。
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