以下、本発明の実施の形態による減衰力調整式緩衝器を、車両用の減衰力調整式油圧緩衝器に適用した場合を例に挙げ、図1ないし図8に従って詳細に説明する。
図1において、円筒状のシリンダ1は、単筒型の減衰力調整式油圧緩衝器における外殻を形成し、シリンダ1の下端部はボトムキャップ2により閉塞されている。シリンダ1の上端側には、後述のピストンロッド7をガイドするロッドガイド3が設けられると共に、該ロッドガイド3を覆うようにアッパキャップ4、ばね受5等が取付けられている。このばね受5は、車両の懸架ばね(図示せず)を下側から支持するものである。
6はシリンダ1内に移動可能に嵌装されたピストンで、該ピストン6は、シリンダ1内をシリンダ室としてのロッド側油室Aとボトム側油室Bとの2室に画成している。ピストン6には、ロッド側油室Aとボトム側油室Bとを連通可能な油路6A,6Bがそれぞれ複数個、周方向に離間して形成され、これらの油路6A,6Bは、ピストン6の軸線に対して斜めに傾いた油穴により構成されている。油路6A,6Bは、シリンダ1内に封入された作動流体としての油液を、ロッド側油室Aとボトム側油室Bとの間で流通させる主通路を構成している。
図2に示すように、ピストン6の上側端面には、油路6Aの上側開口を取囲むように形成された環状凹部6Cと、該環状凹部6Cの径方向外側に位置し後述の縮み側減衰バルブ13(ディスクバルブ)が離着座する環状弁座6Dとが設けられている。ピストン6の下側端面には、油路6Bの下側開口を取囲むように形成された環状凹部6Eと、該環状凹部6Eの径方向外側に位置し後述の伸び側減衰バルブ14(ディスクバルブ)が離着座する環状弁座6Fとが設けられている。
7はシリンダ1内を軸方向に延びたピストンロッドで、このピストンロッド7は、下端側がシリンダ1内に挿入された筒状のロッド部材8と、該ロッド部材8の下部に筒状の継手部材9を介して連結された段付筒状のガイド部材10とを含んで構成されている。継手部材9は、ピストンロッド7の一部を構成し、後述のスプリング34に対するばね受を兼用している。
ピストンロッド7の下端側、即ち、ガイド部材10の下端側には、ピストン6がナット11等により締結された状態で取付けられている。ナット11は、ピストン6をガイド部材10に固定すると共に、ピストン6の上,下両面側に後述の縮み側減衰バルブ13,伸び側減衰バルブ14を着脱可能に締結している。一方、ピストンロッド7の上端側、即ち、ロッド部材8の上端側は、ロッドガイド3、アッパキャップ4等を介してシリンダ1の外部に突出している。
ガイド部材10は、上,下方向に延びる円筒状の側壁10Aからなる段付円筒状体として形成され、この側壁10Aの内周側は、後述のピン部材30が隙間をもって挿通されるピン挿通孔10Bと、該ピン挿通孔10Bの下側に位置して軸方向に延びピン挿通孔10Bよりも大径に形成されたシャッタ挿嵌穴10Cとなっている。さらに、ロッド部材8の内周側にも、ガイド部材10のピン挿通孔10Bと軸方向で連通するようにピン挿通孔(図示せず)が軸方向に貫通して設けられ、このピン挿通孔内にもピン部材30が隙間をもって挿通されている。
ガイド部材10のシャッタ挿嵌穴10Cは、その下端側がボトム側油室Bに常時連通する開口端10Dとなっている。このシャッタ挿嵌穴10C内には、後述のシャッタ部材23が回動可能に挿嵌して設けられている。シャッタ挿嵌穴10Cの上端は、ピン挿通孔10Bを介してロッド部材8側のピン挿通孔と上,下方向で連通し、ピン挿通孔10Bとシャッタ挿嵌穴10Cとは、ほぼ同軸に配置されている。
ピストンロッド7のガイド部材10は、後述する減衰力調整弁22の一部を構成している。ガイド部材10の側壁10Aには、シャッタ挿嵌穴10Cから径方向外向きに延びて貫通した複数のガイドポート10E,10F等がそれぞれ軸方向と周方向とに離間して設けられている。
これらのガイドポート10E,10F等のうち、上側に位置する各ガイドポート10Eは、後述するサブピストン15の凹陥部15G内と径方向で連通する位置に配置されている。即ち、各ガイドポート10Eは、側壁10Aの周方向に180度の間隔で、径方向で互いに対向する位置に形成された合計2個の径方向穴により構成されている。
一方、下側に位置する各ガイドポート10Fは、後述の中間室D内と筒形スペーサ19を介して径方向で連通する位置に配置されている。このガイドポート10Fについても、前述したガイドポート10Eと同様に、側壁10Aの周方向に180度の間隔で、径方向で互いに対向する位置に形成された合計2個の径方向穴により構成されている。さらに、ガイド部材10の上部外周には、後述のスペーサ18を軸方向に位置決めするための段部10Gが拡径して形成されている。
図1に示すように、シリンダ1内には、ピストン6とボトムキャップ2との間に位置してフリーピストン12が摺動可能に挿嵌されている。このフリーピストン12は、シリンダ1のボトム側に加圧ガスが封入されたガス室Cを画成している。ここで、フリーピストン12は、ピストンロッド7がシリンダ1内に進入したり、シリンダ1内から退出したりするときに、これに応じてガス室Cを縮小,拡張させるようにシリンダ1内を軸方向に摺動変位する。即ち、フリーピストン12は、ピストンロッド7の進入体積分を補償するようにガス室Cを拡,縮させるものである。
13はピストン6の上面側に設けられた縮小側減衰力発生機構(以下、縮み側減衰バルブ13という)で、図2に示すように、該縮み側減衰バルブ13は、シリンダ1のロッド側油室A内に位置してピストン6の上面側に固定状態で取付けられた複数枚のディスクバルブ等により構成されている。縮み側減衰バルブ13(ディスクバルブ)には、環状弁座6Dとの間に固定オリフィスを構成する小さな切欠き13Aが形成され、該切欠き13Aは、油路6A側の油液がロッド側油室Aに向けて流通するのを、縮み側減衰バルブ13の閉弁時にも許すものである。なお、切欠き13Aに替えて、環状弁座6D側に切欠き等からなる固定オリフィスを設ける構成としてもよい。
縮み側減衰バルブ13は、ピストンロッド7の縮小行程でピストン6がシリンダ1内を下向きに摺動変位するときに、ボトム側油室Bからピストン6の各油路6Aと環状凹部6Cを介してロッド側油室Aに向け流通する油液に抵抗力を与え、予め設定された縮み側の減衰力を発生するものである。
14はピストン6の下面側に設けられた伸長側減衰力発生機構(以下、伸び側減衰バルブ14という)で、該伸び側減衰バルブ14は、シリンダ1のボトム側油室B内に位置してピストン6の下面側に固定状態で取付けられた複数枚のディスクバルブ等により構成されている。伸び側減衰バルブ14(ディスクバルブ)には、環状弁座6Fとの間に固定オリフィスを構成する小さな切欠き14Aが形成され、該切欠き14Aは、油路6B側の油液がボトム側油室Bに向けて流通するのを、伸び側減衰バルブ14の閉弁時にも許すものである。なお、切欠き14Aに替えて、環状弁座6F側に切欠き等からなる固定オリフィスを設けてもよい。
伸び側減衰バルブ14は、ピストンロッド7の伸長行程でピストン6がシリンダ1内を上向きに摺動変位するときに、ロッド側油室Aからピストン6の各油路6Bと環状凹部6Eを介してボトム側油室Bに向け流通する油液に抵抗力を与え、予め設定された伸び側の減衰力を発生するものである。
15はロッド側油室A内に位置してピストンロッド7のガイド部材10に設けられたサブピストンである。このサブピストン15は、後述のキャップ部材20と筒形スペーサ19を介してピストン6の縮み側減衰バルブ13上に配設されている。サブピストン15は、その外径寸法がシリンダ1の内径よりも小さく形成され、シリンダ1内に非摺動状態(即ち、径方向に隙間をもった状態)で配置されている。
サブピストン15は、キャップ部材20との間に中間室Dを画成し、この中間室Dは、後述するバイパス通路21の一部を構成している。サブピストン15には、ロッド側油室Aと中間室Dとを連通可能な油路15A,15Bがそれぞれ複数個、周方向に離間して形成され、これらの油路15A,15Bは、サブピストン15の軸線に対して斜めに傾いた油穴により構成されている。油路15A,15Bは、ロッド側油室Aと中間室Dとの間で油液を流通させる通路(バイパス通路21の一部)を構成している。
サブピストン15の上側端面には、油路15Aの上側開口を取囲むように形成された環状凹部15Cと、該環状凹部15Cの径方向外側に位置し縮小側ディスクバルブ16が離着座する環状弁座15Dとが設けられている。サブピストン15の下側端面には、油路15Bの下側開口を取囲むように形成された環状凹部15Eと、該環状凹部15Eの径方向外側に位置し伸長側ディスクバルブ17が離着座する環状弁座15Fとが設けられている。
縮小側ディスクバルブ16と環状弁座15Dとの間には、縮小側ディスクバルブ16の閉弁時にも油液の流通を許す固定オリフィスとしての切欠き(図示せず)が設けられている。また、伸長側ディスクバルブ17と環状弁座15Fとの間にも、同様に固定オリフィスとしての切欠き(図示せず)が設けられている。
さらに、サブピストン15の内周側には、下面側が環状凹部15Eに連通して開口し、上面側が閉塞端となった環状の凹陥部15Gが設けられている。この凹陥部15Gは、ガイド部材10のガイドポート10Eを径方向外側から取囲むように形成され、ガイドポート10Eをサブピストン15の環状凹部15E、油路15Bに常時連通させるものである。
18はガイド部材10の段部10Gと縮小側ディスクバルブ16との間に設けられたスペーサで、該スペーサ18は、ガイド部材10の外周側に嵌合して設けられた環状体により構成されている。スペーサ18は、縮小側ディスクバルブ16を段部10Gとの間で挟持し、縮小側ディスクバルブ16の開,閉弁動作を安定させるものである。
19は伸長側ディスクバルブ17をサブピストン15の下面側に位置決めする筒形スペーサで、該筒形スペーサ19は、ガイド部材10の外周側に挿通して設けられた有蓋筒状体により構成されている。筒形スペーサ19は、サブピストン15の環状弁座15Fとの間で伸長側ディスクバルブ17を下側から挟持し、伸長側ディスクバルブ17の開,閉弁動作を安定させるものである。また、筒形スペーサ19には、連通穴としての切欠き19Aが周方向に間隔をもって複数個形成され、該各切欠き19Aは、中間室Dをガイド部材10の各ガイドポート10Fに常時連通させるものである。
20はサブピストン15との間に中間室Dを画成するキャップ部材である。このキャップ部材20は、下面側に位置してガイド部材10の外周側に挿通され縮み側減衰バルブ13と筒形スペーサ19との間に挟持された環状の底部20Aと、該底部20Aの外周側から拡開しつつ上向きに延びた傾斜筒部20Bと、該傾斜筒部20Bの外周側から上側に向けて延びた円筒状の筒状部20Cとにより構成されている。キャップ部材20は、筒状部20Cの上端側がサブピストン15の外周側に液密状態で嵌合され、これにより、サブピストン15との間に中間室Dを画成している。
キャップ部材20は、その外径寸法がシリンダ1の内径よりも小さく形成され、シリンダ1の内周面と隙間をもった状態で配置されている。そして、キャップ部材20は、ピストンロッド7のガイド部材10にサブピストン15、筒形スペーサ19等を介して固定され、これらのサブピストン15、筒形スペーサ19等と一緒にシリンダ1内を上,下方向に移動するものである。
21はピストンロッド7のガイド部材10とサブピストン15とに亘って形成されたバイパス通路である。このバイパス通路21は、サブピストン15の油路15A,15B、環状凹部15C,15E、凹陥部15G、ガイド部材10のシャッタ挿嵌穴10C、各ガイドポート10E,10F等により構成されている。これにより、バイパス通路21は、ピストン6の主通路、即ち、油路6A,6Bを迂回してロッド側油室Aとボトム側油室Bとの間を、後述のシャッタポート27,28等を介して連通させるものである。
22はバイパス通路21の通路面積を変えることにより減衰力を可変に調整する減衰力調整弁を示している。この減衰力調整弁22は、ピストンロッド7の一部を形成する前述のガイド部材10と、該ガイド部材10のシャッタ挿嵌穴10C内に回転可能に挿嵌されたシャッタ部材23と、該シャッタ部材23を回転操作するための後述のピン部材30とを含んで構成されている。
ここで、減衰力調整弁22を構成するシャッタ部材23の構成について、図3ないし図8を参照しつつ、詳細に述べる。
図3、図6、図7等に示すように、減衰力調整弁22のシャッタ部材23は、ガイド部材10のシャッタ挿嵌穴10C内に回転可能に挿嵌される円筒体からなる側壁24と、該側壁24の軸方向の上端部を閉塞した蓋部25と、該蓋部25から側壁24内に向けて軸方向に延びる小径な筒体からなるピン取付筒26とを含んで構成されている。
シャッタ部材23の側壁24は、その外周面24Aがガイド部材10のシャッタ挿嵌穴10C内に回転可能に摺接するものである。一方、側壁24の内側は、内周面24Bとなり、該内周面24Bの下端部は、ボトム側油室Bに連通する開口端24Cとなっている。
図5に示すように、側壁24は、一部を除いて厚さ寸法t1をもった厚肉部24Dとして形成されている。この厚肉部24Dの厚さ寸法t1は、シャッタ部材23が電動モータ等のアクチュエータ(図示せず)によって回動され、各所に油圧が作用する過酷な使用状態でも、十分な耐久性を維持できる厚さ寸法に設定されている。
一方、側壁24の一部は、厚さ寸法t2をもった薄肉部24Eとなっている。この薄肉部24Eは、後述の第2シャッタポート28に対応する周方向位置(周方向に180度の間隔をもった位置)に形成されている。これにより、薄肉部24Eは、第2シャッタポート28の内面28Dのうち、拡幅傾斜部28Bが低圧を受承する面積を小さくすることができる。
図4に示すように、シャッタ部材23の蓋部25には、例えば互いに向い合うように半円弧状の連通孔25Aが形成されている。この連通孔25Aは、油液の一部を後述のブッシュ31側に導くことにより、該ブッシュ31とピン部材30との間を潤滑状態、かつ液密状態に保つものである。これにより、ガイド部材10のピン挿通孔10Bとピン部材30との間は、ブッシュ31によりシールされるため、油液の漏洩が阻止されるものである。
図6、図7に示すように、ピン取付筒26の内周側は、ピン部材30の取付端部30Aが回止め状態で嵌合して取付けられる回止め孔26Aとなっている。図4に示すように、回止め孔26Aの奥部(下側)は、横断面で小判状の異形孔として形成されている。
ここで、シャッタ部材23の側壁24には、ガイド部材10の上側寄りに配置されたガイドポート10Eに対して連通,遮断される第1シャッタポート27と、ガイド部材10の下側寄りに配置されたガイドポート10Fに対して連通,遮断される第2シャッタポート28とが設けられている。
図6に示すように、第1シャッタポート27は、シャッタ部材23(側壁24)の周方向に180度の間隔で、互いに対向する位置に形成された径方向の貫通孔として構成されている。図3に示すように、第1シャッタポート27は、周方向の一方がスリット状の狭幅部27Aとなり、略中間部が拡幅円弧部27Bとなり、周方向の他方が狭幅部27Aよりも広幅な広幅部27Cとなっている。第1シャッタポート27は、周方向で幅寸法を変化させることにより、ガイド部材10のガイドポート10Eとの間に形成される通路の面積を変化させることができる。これにより、前記通路の面積に応じた減衰力を発生させることができ、回転位置によって減衰力を調整することができる。
第2シャッタポート28は、前述した第1シャッタポート27と同様に、シャッタ部材23の周方向に180度の間隔で、互いに対向する位置に形成された径方向の貫通孔として構成されている。この場合、第2シャッタポート28は、第1シャッタポート27よりも大きな開口面積に形成されている。図3、図7に示すように、第2シャッタポート28は、周方向の一方がスリット状の狭幅部28Aとなり、略中間部が拡幅傾斜部28Bとなり、周方向の他方が狭幅部28Aよりも広幅な広幅部28Cとなっている。
第2シャッタポート28は、周方向で幅寸法を変化させることにより、ガイド部材10のガイドポート10Fとの間に形成される通路の面積を変化させることができる。これにより、前記通路の面積に応じた減衰力を発生させることができ、回転位置によって減衰力を調整することができる。ここで、第2シャッタポート28は、狭幅部28Aと広幅部28Cとの幅寸法の差が大きいから、拡幅傾斜部28Bが軸方向に立上るように形成されている。従って、第2シャッタポート28は、第1シャッタポート27とほぼ同様に、周方向で幅寸法を変化させることにより、ガイド部材10のガイドポート10Fとの間に形成される通路の面積を変化させることができる。これにより、前記通路の面積に応じた減衰力を発生させることができ、回転位置によって減衰力を調整することができる。
ここで、ガイド部材10のガイドポート10Fと第2シャッタポート28との間に形成される通路の面積が大きいとき、即ち、ガイドポート10Fと広幅部28Cとが連通している状態では、この通路を油液が比較的に低速で流れるから、圧力が大きく変化することはない。
一方、ガイド部材10のガイドポート10Fと第2シャッタポート28との間に形成される通路の面積が小さいとき、即ち、ガイドポート10Fと狭幅部28Aとが連通している状態では、この通路を油液が高速で流れるから、この通路の付近では圧力が低下する。図8に示すように、このような状況で、軸方向に立上った拡幅傾斜部28Bが低圧領域に配置されると、拡幅傾斜部28Bに位置する内面28Dが低圧を受承し、周囲との圧力差でシャッタ部材23を時計回りに回転させることが考えられる。
しかし、本実施の形態では、第2シャッタポート28の位置を側壁24の薄肉部24Eとすることにより、第2シャッタポート28が低圧を受承する内面28Dの面積を小さくできるから、第2シャッタポート28に作用する流体力を小さくでき、シャッタ部材23の回転を抑制して位置決め精度を高めることができる。
側壁24の内周面24Bに設けられた凹陥部29は、第2シャッタポート28が形成される部位、即ち、側壁24の周方向に180度の間隔で、互いに対向する位置に形成されている。図5に示すように、この2つの凹陥部29は、例えば側壁24の軸線と平行な軸線をもった円弧面により内周面24Bを凹陥させることにより形成されている。各凹陥部29は、第2シャッタポート28の拡幅傾斜部28Bの付近で側壁24の厚さが最も薄くなる(厚さ寸法t2となる)ように配置されている。
さらに、各凹陥部29(側壁24の薄肉部24E)は、第2シャッタポート28から側壁24の開口端24Cまで延びて形成されている。これにより、シャッタ部材23を成形加工を用いて製造する場合でも、開口端24Cから成形型(中子)を抜取ることができ、側壁24に各凹陥部29を設けることができる。
ここで、第2シャッタポート28は、ガイド部材10のガイドポート10Fとの間に油液が流通する通路を形成している。この場合、ガイド部材10に対してシャッタ部材23を任意の位置に回転させることにより、狭幅部28A、拡幅傾斜部28B、広幅部28Cの位置に応じて通路の面積を変化させる。図8に示すように、ガイドポート10Fの位置に第2シャッタポート28の狭幅部28Aから拡幅傾斜部28Bまでを配置した場合、ガイドポート10Fが第2シャッタポート28により絞られるから、このときの通路の面積は小さくなっている。従って、油液は、矢示Eで示すように前記通路内を高速で流通することになる。
このように、ガイドポート10Fと第2シャッタポート28との間の通路を油液が高速で流通した場合、この通路の付近の圧力が低下し、通路の内面、即ち、第2シャッタポート28の内面28Dに作用する。このときに、シャッタ部材23の軸方向に立上るように延びた拡幅傾斜部28Bの位置の内面28Dにも、低圧が作用するから、この低圧による流体力は、シャッタ部材23を通路を小さくする方向、即ち、矢示F方向に回転しようとする。
しかし、第2シャッタポート28の拡幅傾斜部28Bの位置は、側壁24の内周面24B側に凹陥部29を形成することにより、小さな厚さ寸法t2をもった薄肉部24Eとしている。これにより、第2シャッタポート28の内面28Dのうち、低圧が作用する拡幅傾斜部28Bの位置の内面28Dは、薄肉部24Eによって面積が小さく形成されている。従って、低圧による流体力がシャッタ部材23を矢示F方向に回転しようとする力を小さく抑えることができ、シャッタ部材23を所定の回転位置に固定することができる。
減衰力調整弁22のピン部材30は、シャッタ部材23を回転操作するために、ロッド部材8、ガイド部材10のピン挿通孔10B内に挿通して設けられている。ピン部材30の下端部は、シャッタ部材23に回止め状態で固定して取付けられる取付端部30Aとなり、この取付端部30Aは、その横断面形状を小判状に形成することにより、シャッタ部材23のピン取付筒26内に形成された回止め孔26Aに回止め状態で取付けられている。一方、ピン部材30の上端側は、電動モータ等のアクチュエータ(図示せず)に接続されている。
このように構成された減衰力調整弁22は、ロッド部材8の突出端側(軸方向の上側)に設けられたアクチュエータによって、ピン部材30を介してシャッタ部材23をシャッタ挿嵌穴10C内で回動させる。これにより、シャッタ部材23の第1シャッタポート27がガイド部材10のガイドポート10Eに対して連通,遮断される。同時に、シャッタ部材23の第2シャッタポート28がガイド部材10のガイドポート10Fに対して連通,遮断される。このとき、減衰力調整弁22は、前記シャッタポート27,28等による通路面積に応じた減衰力を発生させるものである。
図2に示すように、ガイド部材10とピン部材30との間には、シール部材を兼用したブッシュ31が設けられ、このブッシュ31は、シャッタ挿嵌穴10C内でシャッタ部材23の蓋部25にワッシャ32を介して当接する位置に配置されている。ブッシュ31は、ガイド部材10内でピン部材30を回動可能に支持し、ピン部材30とシャッタ部材23との円滑な回動操作を補償するものである。
ガイド部材10のシャッタ挿嵌穴10C内には、シャッタ部材23の下側に位置して筒体33が設けられている。筒体33は、シャッタ部材23の上側に設けたワッシャ32(ブッシュ31)との間でシャッタ部材23を軸方向に位置決めする位置決め部材を構成している。
図1に示すように、ピストンロッド7のロッド部材8には、継手部材9との間にスプリング34を挟んでリバウンドストッパ35が設けられている。このリバウンドストッパ35は、緩衝ゴム36と一緒にロッド部材8の外周面に沿って移動可能に設けられている。即ち、ピストンロッド7が大きく伸長するときには、リバウンドストッパ35が緩衝ゴム36を介してロッドガイド3の下面に当接すると共に、スプリング34が圧縮方向に撓み変形し、このときの衝撃を緩衝するようになっている。
本実施の形態による減衰力調整式油圧緩衝器は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
減衰力調整式油圧緩衝器を車両に実装するときには、ロッド部材8の上端側が車両の車体側に取付けられ、ボトムキャップ2に設けた取付アイ37(図1参照)側が車輪側に取付けられる。車両の走行時には、路面の凹凸等により上,下方向の振動が発生すると、ピストンロッド7がシリンダ1から伸長、縮小するように変位し、縮み側減衰バルブ13、伸び側減衰バルブ14および減衰力調整弁22等により減衰力を発生することができ、車両の振動を緩衝することができる。
即ち、ピストンロッド7の縮小行程では、ピストンロッド7がシリンダ1内へと進入し、ボトム側油室B内がロッド側油室Aよりも高圧になるので、ボトム側油室B内の油液がピストン6の油路6Aから環状凹部6C、縮み側減衰バルブ13(切欠き13A)を介してロッド側油室A内に流通する。また、ボトム側油室Bからバイパス通路21(ガイド部材10のシャッタ挿嵌穴10C内)に流入した油液は、例えばシャッタ部材23の第2シャッタポート28、ガイド部材10のガイドポート10F、筒形スペーサ19の切欠き19Aを介してキャップ部材20内の中間室Dに流入し、サブピストン15の油路15Aから環状凹部15C、縮小側ディスクバルブ16(切欠きを含む)を介してロッド側油室A内に流通する。
一方、ピストンロッド7の伸長行程では、ピストン6がシリンダ1内で上向きに摺動変位し、ロッド側油室Aがボトム側油室B内よりも高圧になるので、ロッド側油室A内の油液がピストン6の油路6Bから環状凹部6E、伸び側減衰バルブ14(切欠き14A)を介してボトム側油室B内に流通する。また、ロッド側油室Aからサブピストン15の油路15B、環状凹部15E、凹陥部15G(即ち、バイパス通路21)内に流通した油液は、ガイド部材10のガイドポート10E、シャッタ部材23の第1シャッタポート27を介してシャッタ挿嵌穴10C内に流入し、開口端10D側からボトム側油室B内に流通する。
ここで、減衰力調整弁22のシャッタ部材23を回動操作して第1シャッタポート27をガイド部材10のガイドポート10Eに連通させた場合、第1シャッタポート27を流通する油液により、その通路面積に応じた減衰力を発生することができる。
ところで、ピストンロッド7が急激に伸長したときには、ガイド部材10のガイドポート10Eとシャッタ部材23の第1シャッタポート27とにより形成される通路だけでは油液を流通しきれなくなる。この場合には、ロッド側油室Aの油液は、サブピストン15の伸長側ディスクバルブ17を開弁させて中間室Dに流入し、筒形スペーサ19の切欠き19A、ガイド部材10のガイドポート10F、シャッタ部材23の第2シャッタポート28を介してシャッタ挿嵌穴10C内に流入し、開口端10D側からボトム側油室B内に流通する。
このように、ガイド部材10のガイドポート10Fとシャッタ部材23の第2シャッタポート28とによって形成される通路を油液が流通するときには、勢いよく流通する。特に、図8に示すように、ガイドポート10Fの位置に第2シャッタポート28の狭幅部28Aから拡幅傾斜部28Bまでを配置した場合、ガイドポート10Fが第2シャッタポート28により絞られるから、このときの通路の面積は小さく、油液は、前記通路内を矢示E方向に高速で流通する。
通路を油液が高速で流通した場合、この通路の付近の圧力が低下するから、通路の内面、即ち、第2シャッタポート28の内面28Dに低圧による流体力が作用する。この場合、拡幅傾斜部28Bの位置の内面28Dに低圧が作用すると、この低圧による流体力は、シャッタ部材23を通路が小さくなる方向、即ち、矢示F方向に回転しようとする。このために、アクチュエータによるシャッタ部材23の位置決め制御の精度が悪くなってしまう。
然るに、本実施の形態によれば、シャッタ部材23の側壁24のうち、第2シャッタポート28が形成される部位の肉厚を、他の部位の肉厚よりも薄く形成している。具体的には、側壁24の内周面24Bのうち、第2シャッタポート28が形成される部位に凹陥部29を形成し、この部分だけ内周面24Bを外径側に凹陥させることにより、周囲の厚肉部24D(厚さ寸法t1)よりも薄い薄肉部24E(厚さ寸法t2)を形成する構成としている。
従って、第2シャッタポート28の拡幅傾斜部28Bの位置では、薄肉部24Eとすることにより、この位置での内面28Dの面積を小さくすることができる。これにより、低圧による流体力がシャッタ部材23を矢示F方向に回転しようとする力を小さく抑えることができる。
この結果、減衰力を調整するためのシャッタ部材23を、制御状況に応じて所定の回転位置に固定することができるから、シャッタ部材23の位置決め制御の精度を向上することができる。しかも、シャッタ部材23は、側壁24の一部だけを薄肉部24Eとし、大部分を厚肉部24Dとしているから、十分な強度を維持することができる。
また、シャッタ部材23の側壁24の内周面24Bを凹陥するように凹陥部29を設けることにより、この位置に肉厚の薄い薄肉部24Eを形成する構成としている。これにより、ガイド部材10のガイドポート10Fとシャッタ部材23の第2シャッタポート28とを密着するように配置でき、油液を円滑に流通させることができる。
さらに、シャッタ部材23の側壁24の一部を薄くしてなる薄肉部24Eと凹陥部29とは、側壁24の開口端24Cに達するように軸方向に延びて形成している。これにより、シャッタ部材23を成形加工を用いて製造する場合でも、開口端24Cから成形型(中子)を抜取ることができるから、この成形加工を用いてシャッタ部材23を安価に製造することができる。
なお、実施の形態では、ガイド部材10の側壁10Aにガイドポート10E,10Fをそれぞれ2個ずつ設け、これに対応して、シャッタ部材23の側壁24にシャッタポート27,28をそれぞれ2個ずつ設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、ガイドポート10E,10F、シャッタポート27,28を3個または4個以上設ける構成としてもよい。
また、実施の形態では、円筒状のシリンダ1を用いて単筒型の減衰力調整式油圧緩衝器における外殻を形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば外筒と内筒とからなる複筒型の減衰力調整式緩衝器に適用してもよいものである。
一方、実施の形態では、ロッド部材8の突出端側(軸方向の上側)にピン部材30を回動する電動モータ等のアクチュエータを設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、シリンダの内部(例えば、ピストンロッド内)に減衰力調整弁のピン部材を回動する電動モータ等のアクチュエータを設ける構成としてもよい。この場合には、車両に対する当該減衰力調整式緩衝器の搭載性を高めることができ、アクチュエータがエンジンルーム内に突出して装着されることがなく、省スペースかつ安全である。また、減衰力調整弁のピン部材は、必ずしも電動モータ等のアクチュエータを用いて回動操作する必要はなく、例えば手動操作によりピン部材を介してシャッタ部材を回動操作する構成としてもよい。
さらに、実施の形態では、自動車等の車両に設ける減衰力調整式緩衝器としての減衰力調整式油圧緩衝器を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、振動源となる種々の機械、建築物等に用いる減衰力調整式緩衝器にも適用することが可能である。
次に、上記実施の形態に含まれる発明について述べる。即ち、本発明では、シャッタ部材は、側壁の外周面がガイド部材内に回転可能に挿嵌される円筒体として形成し、前記側壁の内周面のうち、シャッタポートが形成される部位を外径側に凹陥させることにより肉厚を薄く形成する構成としている。これにより、ガイド部材のガイドポートとシャッタ部材のシャッタポートとを密着するように配置でき、ガイドポートとシャッタポートとによる通路で油液を円滑に流通させることができる。
また、本発明によると、シャッタ部材の側壁の一部を薄くしてなる薄肉部は、シャッタ部材の軸方向の開口端に達するように形成している。従って、シャッタ部材の内部から成形用の型(中子)を取出すことができるから、成形加工を用いてシャッタ部材を安価に製造することができる。