次に、作業車両の実施の一形態であるトラクタ1について説明する。なお、本発明に係る作業車両はトラクタ1に限るものではなく、その他の農業車両、建設車両、産業車両等であっても良い。
まず、図1を用いてトラクタ1の全体構成について説明する。
トラクタ1においては、機体フレーム2が長手方向を前後方向として配置され、その前部でフロントアクスルを介して、左右一対の前輪5・5に支持されるとともに、その後部でリアアクスルを介して左右一対の後輪6・6に支持される。機体フレーム2の前部にはエンジン3が設けられ、ボンネット8によって覆われている。機体フレーム2の後部にはトラクタ1の動力伝達機構の一部を収納するトランスミッションケース4が設けられている。
そして、エンジン3の動力が前記動力伝達機構で変速されたあと、フロントアクスルを経て左右一対の前輪5・5に伝達可能とされるとともに、リアアクスルを経て左右一対の後輪6・6に伝達可能とされる。エンジン3の動力が伝達されることによって、左右一対の前輪5・5および左右一対の後輪6・6が回転駆動され、トラクタ1の走行が行われる。
また、エンジン3の動力が前記動力伝達機構で変速されたあと、機体フレーム2に対して装着された、図示しない耕耘装置等の作業機にも伝達可能とされる。さらに、エンジン3の動力によって駆動される、図示しない油圧ポンプにより圧送される作動油を、機体フレーム2に対して装着された、図示しないフロントローダ等の作業機に供給可能とされる。このようにして、エンジン3の動力が伝達されることによって、種々の作業機が駆動される。
機体フレーム2の前後中途部から後部にかけては、作業者が搭乗してトラクタ1を操作するための運転操作部70が設けられ、キャビン7によって覆われる。
次に、図2を用いてトラクタ1の動力伝達機構について説明する。
トラクタ1は、動力伝達機構として、主変速機構10、前後進切替機構20、副変速機構30、後輪差動機構40、前輪駆動切替機構50、前輪差動機構60等を具備する。動力伝達機構の一部は、トランスミッションケース4に収納される。
主変速機構10は、入力される動力を無段階に変速した後に出力するものである。主変速機構10は、主変速入力軸11、主変速出力軸12、無段変速機13、主変速出力ギア14、主変速出力ギア15等を具備する。
エンジン3の動力は、フライホイール3a等を介して入力軸としての主変速入力軸11に伝達される。主変速入力軸11に伝達された動力は、油圧−機械式の無段変速機13である無段変速機13により変速され、出力軸としての主変速出力軸12から出力される。無段変速機13の入出力比は、当該無段変速機13が有するアクチュエータとしての電磁比例弁13a(図5参照)を作動させ、図示しない油圧シリンダ等のアクチュエータにより当該無段変速機13が有する図示しない可変容量型の油圧ポンプの斜板角度を変更することで変更可能である。主変速出力軸12には主変速出力ギア14及び主変速出力ギア15が固設され、当該主変速出力ギア14及び主変速出力ギア15から動力を取り出すことが可能である。
なお、本実施形態において、無段変速機13の入出力比とは、主変速入力軸11の回転数に対する主変速出力軸12の回転数の比((主変速出力軸12の回転数)/(主変速入力軸11の回転数))をいうものとする。すなわち、主変速入力軸11の回転数が一定の場合において、入出力比が大きくなるように変更すると、主変速出力軸12の回転数が大きくなる。また、入出力比を零に変更すると、主変速出力軸12の回転数は零となる。
前後進切替機構20は、トラクタ1の走行方向を前進又は後進に切り替えるものである。前後進切替機構20は、走行カウンタ軸21、前進ギア22、後進ギア23、逆転ギア24、前進クラッチ25、後進クラッチ26等を具備する。
主変速入力軸11と平行に配置される走行カウンタ軸21上には、前進ギア22及び後進ギア23が回動可能に支持される。主変速出力軸12から出力される動力は、主変速出力ギア14を介して前進ギア22に伝達される。また、主変速出力軸12から出力される動力は、主変速出力ギア15及び逆転ギア24を介して後進ギア23に伝達される。よって、前進ギア22と後進ギア23とは互いに逆方向に回転する。
前進クラッチ25が作動した場合、前進ギア22と走行カウンタ軸21とが連動連結され、前進ギア22に伝達された動力が走行カウンタ軸21へと伝達される。後進クラッチ26が作動した場合、後進ギア23と走行カウンタ軸21とが連動連結され、後進ギア23に伝達された動力が走行カウンタ軸21へと伝達される。また、前進クラッチ25及び後進クラッチ26のいずれもが作動しない場合、主変速出力軸12からの動力は走行カウンタ軸21へ伝達されない。
このようにして、前進クラッチ25及び後進クラッチ26の作動を切り替えることで、主変速出力軸12から走行カウンタ軸21へと伝達される動力の回転方向を切り替えることができ、ひいてはトラクタ1の走行方向を前進又は後進に切り替えることができる。
副変速機構30は、入力される動力を高速又は低速に変速した後に出力するものである。副変速機構30は、大径ギア31、小径ギア32、副変速出力軸33、高速ギア34、低速ギア35、副変速シフタ36等を具備する。
走行カウンタ軸21上には、大径ギア31及び小径ギア32が固設される。また、走行カウンタ軸21と平行に配置される副変速出力軸33には、高速ギア34及び低速ギア35が回動可能に支持される。走行カウンタ軸21から出力される動力は、大径ギア31を介して高速ギア34に伝達される。また、走行カウンタ軸21から出力される動力は、小径ギア32を介して低速ギア35に伝達される。
副変速出力軸33上(高速ギア34と低速ギア35との間)には、副変速シフタ36がスプライン嵌合される。副変速シフタ36を一方向にスライドさせた場合、高速ギア34と副変速出力軸33とが連動連結され、高速ギア34に伝達された動力が副変速出力軸33へと伝達される。副変速シフタ36を他方向にスライドさせた場合、低速ギア35と副変速出力軸33とが連動連結され、低速ギア35に伝達された動力が副変速出力軸33へと伝達される。また、副変速シフタ36が高速ギア34及び低速ギア35と副変速出力軸33とを連動連結しない場合、走行カウンタ軸21からの動力は副変速出力軸33へ伝達されない。
大径ギア31から高速ギア34へと伝達される動力の減速比は、小径ギア32から低速ギア35へと伝達される動力の減速比よりも小さく設定される。したがって、高速ギア34を介して副変速出力軸33が駆動される場合、低速ギア35を介して副変速出力軸33が駆動される場合よりも高速で当該副変速出力軸33が回転する。
このようにして、副変速シフタ36をスライドさせることで、走行カウンタ軸21から副変速出力軸33へと伝達される動力を変更することができ、ひいてはトラクタ1の走行速度を高速又は低速に切り替えることができる。
後輪差動機構40は、入力される動力を左右に分配して出力するものである。後輪差動機構40は、ベベルギア41、差動ギア機構42、差動出力軸43、後車軸44等を具備する。
副変速出力軸33の動力は、当該副変速出力軸33の後端部から一対のベベルギア41を介して差動ギア機構42に伝達される。差動ギア機構42は、左右の後輪6・6に加わる負荷の差に応じて左右の差動出力軸43・43に動力を分配する。差動出力軸43に伝達された動力は、種々の歯車を介して後車軸44に伝達され、当該後車軸44に固定された後輪6が回転する。
前輪駆動切替機構50は、前輪5・5へ動力を伝達する状態と伝達しない状態とを切り替えるものである。前輪駆動切替機構50は、ギア51、前輪入力軸52、ギア53、前輪駆動ギア54、前輪出力軸55、前輪従動ギア56、前輪駆動クラッチ57等を具備する。
副変速出力軸33の前端部には、ギア51が固設される。また、副変速出力軸33と平行に配置される前輪入力軸52には、ギア51と歯合するギア53、及び前輪駆動ギア54が固設される。さらに、前輪入力軸52と平行に配置される前輪出力軸55には、前輪従動ギア56が回動可能に支持される。副変速出力軸33から出力される動力は、ギア51、ギア53、前輪入力軸52、及び前輪駆動ギア54を介して前輪従動ギア56に伝達される。
前輪駆動クラッチ57が作動した場合、前輪従動ギア56と前輪出力軸55とが連動連結され、前輪従動ギア56に伝達された動力が前輪出力軸55へと伝達される。前輪駆動クラッチ57が作動しない場合、前輪従動ギア56に伝達された動力は前輪出力軸55へ伝達されない。
このようにして、前輪駆動クラッチ57の作動を切り替えることで、動力が副変速出力軸33から前輪出力軸55へと伝達される状態と伝達されない状態とを切り替えることができ、ひいてはトラクタ1の前輪5・5及び後輪6・6を駆動する4輪駆動状態と、前輪5・5を駆動せず後輪6・6のみを駆動する2輪駆動状態とを切り替えることができる。
前輪差動機構60は、入力される動力を左右に分配して出力するものである。前輪差動機構60は、ベベルギア61、差動ギア機構62、差動出力軸63、前車軸64等を具備する。
前輪出力軸55の動力は、一対のベベルギア61を介して差動ギア機構62に伝達される。差動ギア機構62は、左右の前輪5・5に加わる負荷の差に応じて左右の差動出力軸63・63に動力を分配する。差動出力軸63に伝達された動力は、種々の歯車及び軸を介して前車軸64に伝達され、当該前車軸64に固定された前輪5が回転する。
次に、図3を用いて運転操作部70について説明する。
運転操作部70は、操向ハンドル71、座席72、アクセルレバー73、前進ペダル74、後進ペダル75、ブレーキペダル76、クラッチペダル77、副変速レバー78、デフロックペダル79、前輪駆動切替レバー80、ミッドPTOレバー81、オプションPTOレバー82、最高速度設定ダイヤル83、モーションダイヤル84、PTOスイッチ85、油圧レバー86、ローダレバー87、油圧3連レバー88、パーキングレバー(不図示)、キースイッチ89、パネルスイッチ90、メータパネル91等を具備する。
操向ハンドル71は運転操作部70の前部に配置される。操向ハンドル71は、回動操作量に応じて左右一対の前輪5・5の操舵角を変更し、トラクタ1を操舵するためのものである。
座席72は操向ハンドル71の後方に配置され、作業者が着座するためのものである。
アクセルレバー73は操向ハンドル71の略右側方に配置される。アクセルレバー73は、回動操作量に応じてエンジン3の回転数を調節するためのものである。
変速操作具である前進ペダル74は、座席72の右前下方に配置される。前進ペダル74は、踏み込み操作量に応じて前進クラッチ25の入り切り、並びに無段変速機13の入出力比の変更を行うためのものである。
変速操作具である後進ペダル75は前進ペダル74の右側方に配置される。後進ペダル75は、踏み込み操作量に応じて後進クラッチ26の入り切り、並びに無段変速機13の入出力比の変更を行うためのものである。
制動操作具であるブレーキペダル76は前進ペダル74の左側方に配置される。ブレーキペダル76は、踏み込み操作量に応じて後輪6・6に制動力を付与するためのものである。
クラッチペダル77は座席72の左前下方に配置される。クラッチペダル77は、踏み込み操作されることによりエンジン3から前輪5・5及び後輪6・6への動力の伝達を遮断するものである。クラッチペダル77が操作された場合における動力の伝達を遮断する方法としては、
(1)無段変速機13が有する電磁比例弁13aを作動させ、図示しない油圧シリンダ等のアクチュエータにより当該無段変速機13が有する図示しない可変容量型の油圧ポンプの斜板角度を変更させ、中立位置(主変速出力軸12の回転数が零になる位置)にする方法、
(2)前進クラッチ25及び後進クラッチ26をともに作動させない方法、
(3)別途クラッチ機構を設けて動力を遮断する方法、等があるが、本発明は当該方法を限定するものではない。
副変速レバー78は座席72の左方に配置される。副変速レバー78は、操作位置に応じて副変速機構30の副変速シフタ36の位置を変更するものである。
なお、本実施形態においては、説明の便宜上、副変速レバー78は操作されず、ある操作位置(副変速シフタ36を一方向(高速)又は他方向(低速)にスライドさせた状態)にあるものとする。
デフロックペダル79は座席72の左下方に配置される。デフロックペダル79は、踏み込み操作されることにより後輪差動機構40の差動機能を停止させ、後輪6・6を同じ回転数で回転させるものである。
前輪駆動切替レバー80はデフロックペダル79の左方に配置される。前輪駆動切替レバー80は、操作されることにより前輪駆動クラッチ57の動作を切り替えるものである。
ミッドPTOレバー81は座席72の左方に配置される。ミッドPTOレバー81は、前輪5・5と後輪6・6との間に配設されるモア等の作業機へ動力を伝達するためにトランスミッションケース4の下部に突設される図示しないミッドPTO出力軸の動作を切り替えるためのものである。
オプションPTOレバー82は座席72の左方に配置される。オプションPTOレバー82は、オプションとして取り付け可能な図示しないオプションPTO出力軸の動作を切り替えるためのものである。
最高速度設定ダイヤル83は座席72の右方に配置される。最高速度設定ダイヤル83は、前進ペダル74及び後進ペダル75の操作量に対応する無段変速機13の入出力比の値を任意に変更するためのものである。最高速度設定ダイヤル83を操作することにより、例えば前進ペダル74を最大限踏み込んだ時のトラクタ1の最高速度を変更することができ、作業内容に合わせて最適な最高速度を設定することができる。
モーションダイヤル84は座席72の右方に配置される。変化率設定手段としてのモーションダイヤル84は、無段変速機13の入出力比を変更する際における、当該入出力比の変化率を任意に変更するためのものである。
PTOスイッチ85は座席72の右方に配置される。PTOスイッチ85は、トランスミッションケース4から後方に向けて突設される図示しないPTO出力軸の動作を切り替える(図示しないPTOクラッチの入り切りを行う)ためのものである。
油圧レバー86は座席72の右方に配置される。油圧レバー86は、トランスミッションケース4の上部に設けられる図示しない油圧昇降装置を昇降操作するためのものである。
ローダレバー87は座席72の右方に配置される。ローダレバー87は、トラクタ1の機体フレーム2に装着されるフロントローダを操作するためのものである。
油圧3連レバー88は座席72の右方に配置される。油圧3連レバー88は、トラクタ1に設けられる図示しない外部油圧取り出し口から高圧の作動油を取り出し可能とするためのものである。
図示しないパーキングレバーは座席72の前方かつ操向ハンドル71の下方に配置される。パーキングレバーは、ブレーキペダル76を踏み込み操作した状態で操作されることにより、当該ブレーキペダル76を踏み込んだ位置で維持するためのものである。これによって、作業者がブレーキペダル76を踏み込み続けなくても、ブレーキペダル76が常時作動した状態で維持される。
キースイッチ89は走行ハンドルの右下方に配置される。キースイッチ89は、トラクタ1の電装品に電流を供給するとともにエンジン3を始動させる「入」操作と、トラクタ1の電装品に供給する電流を遮断するとともにエンジン3を停止させる「切」操作と、が可能である。
パネルスイッチ90は操向ハンドル71の左方に配置される。図4(a)に示すように、パネルスイッチ90は、オートクルーズスイッチ90a、セットスイッチ90b、レジュームスイッチ90c、及びアンチストールスイッチ90dを具備する。
オートクルーズスイッチ90aは、前進ペダル74の踏み込み操作をし続けることなく無段変速機13の入出力比を一定に維持するオートクルーズ制御を開始又は終了するためのものである。
セットスイッチ90bは、オートクルーズ制御において、一定に維持する入出力比の値を記憶するとともに、無段変速機13の入出力比を前記記憶した入出力比に維持するためのものである。
レジュームスイッチ90cは、すでに記憶された入出力比の値を読み出すためのものである。
アンチストールスイッチ90dは、エンジン3のストールの発生を抑止するためのアンチストール制御を開始又は終了するためのものである。
図3に示すように、メータパネル91は操向ハンドル71の前方に配置される。メータパネル91は、エンジン3の回転数、燃料の残量、その他警告等を表示するためのものである。図4(b)に示すように、メータパネル91は、オートクルーズランプ91a、セットランプ91b、アンチストールランプ91c等を具備する。
次に、図5を用いてトラクタ1の制御構成について説明する。
制御装置100はトラクタ1の任意の位置に具備される。制御装置100は、中央処理装置、記憶装置等により構成される。
制御装置100は、前進ペダル74及び後進ペダル75、より詳細には前進ペダル74及び後進ペダル75の操作量を検出する変速操作具操作量検出手段であるポテンショメータ等のセンサに接続される。制御装置100は、前進ペダル74及び後進ペダル75の操作量を検出信号として受信することができる。
制御装置100は、最高速度設定ダイヤル83に接続される。制御装置100は、最高速度設定ダイヤル83の操作量を検出信号として受信することができる。
制御装置100は、モーションダイヤル84に接続される。制御装置100は、モーションダイヤル84の操作量を検出信号として受信することができる。
制御装置100は、エンジン3の実際の回転数(以下、単に「実エンジン回転数」と記す)Nを検出するためのエンジン回転数検出手段101に接続される。制御装置100は、実エンジン回転数Nを検出信号として受信することができる。
制御装置100は、アクセルレバー73、より詳細にはアクセルレバー73の操作量を検出するポテンショメータ等のセンサに接続される。制御装置100は、アクセルレバー73の操作量を検出信号として受信する。
制御装置100は、ブレーキペダル76の操作の有無を検出するための制動操作検出手段である、ブレーキ操作検出手段102に接続される。制御装置100は、ブレーキペダル76の操作の有無を検出信号として受信することができる。
制御装置100は、クラッチペダル77の操作の有無を検出するためのクラッチ操作検出手段103に接続される。制御装置100は、クラッチペダル77の操作の有無を検出信号として受信することができる。
制御装置100は、図示しないパーキングレバーの操作の有無を検出するためのパーキング操作検出手段104に接続される。制御装置100は、前記パーキングレバーの操作の有無を検出信号として受信することができる。
制御装置100は、後輪6・6の回転数を検出するための回転数検出手段105に接続される。回転数検出手段105は、主変速機構10及び副変速機構30により変速された後の軸(例えば、副変速出力軸33や差動出力軸43等)の回転数を検出可能な位置に配置される。制御装置100は、前記軸の回転数を検出信号として受信し、当該回転数を用いて無段変速機13の実際の入出力比(実入出力比)を算出することができる。
制御装置100は、アンチストールスイッチ90dに接続される。制御装置100は、アンチストールスイッチ90dの操作の有無を検出信号として受信することができる。
制御装置100は、オートクルーズスイッチ90aに接続される。制御装置100は、オートクルーズスイッチ90aの操作の有無を検出信号として受信することができる。
制御装置100は、セットスイッチ90bに接続される。制御装置100は、セットスイッチ90bの操作の有無を検出信号として受信することができる。
制御装置100は、レジュームスイッチ90cに接続される。制御装置100は、レジュームスイッチ90cの操作の有無を検出信号として受信することができる。
制御装置100は、副変速レバー78、より詳細には副変速レバー78の回動位置を検出するポテンショメータ等のセンサに接続される。制御装置100は、副変速レバー78の回動位置を検出信号として受信することができる。
制御装置100は、メータパネル91に接続される。制御装置100は、メータパネル91のオートクルーズランプ91a、セットランプ91b、及びアンチストールランプ91cを点灯させることができる。
制御装置100は、無段変速機13の電磁比例弁13aに接続される。制御装置100は、電磁比例弁13aの動作を制御し、ひいては無段変速機13の入出力比を変更することができる。
制御装置100は、前進クラッチ25、より詳細には前進クラッチ25の作動を切り替えるための電磁弁に接続される。制御装置100は、前記電磁弁の作動を制御し、ひいては前進クラッチ25の作動を制御することができる。
制御装置100は、後進クラッチ26、より詳細には後進クラッチ26の作動を切り替えるための電磁弁に接続される。制御装置100は、前記電磁弁の作動を制御し、ひいては後進クラッチ26の作動を制御することができる。
以下では、以上の如く構成されたトラクタ1における、基本的な動作態様について説明する。
アクセルレバー73が操作された場合、当該アクセルレバー73と連動してエンジン3の調速装置が操作される。これによって、アクセルレバー73の操作位置と対応する位置に前記調速装置が操作され、実エンジン回転数Nを変更することができる。
前進ペダル74が操作された場合、制御装置100は前進ペダル74の操作量に基づいて、目標となる無段変速機13の入出力比(以下、単に「目標入出力比」と記す)を算出する。制御装置100は、前進クラッチ25を作動させるとともに、無段変速機13の入出力比が前記目標入出力比となるように電磁比例弁13aの動作を制御する。このように、前進ペダル74を操作し、目標入出力比を変更することで、トラクタ1を任意の速度で前進させることができる。
後進ペダル75が操作された場合、制御装置100は後進ペダル75の操作量に基づいて、目標入出力比を算出する。制御装置100は、後進クラッチ26を作動させるとともに、無段変速機13の入出力比が前記目標入出力比となるように電磁比例弁13aの動作を制御する。このように、後進ペダル75を操作し、目標入出力比を変更することで、トラクタ1を任意の速度で後進させることができる。
また、制御装置100は、無段変速機13の入出力比が変化率β(単位時間あたりの入出力比の変化量がβ)で変化するように、電磁比例弁13aの動作を制御する。当該変化率βは、後述する制御により変更可能である。例えば、図6に示すように、目標入出力比が一定である場合、変化率βが大きい場合(図6中のLf参照)は変化率βが小さい場合(図6中のLs参照)に比べて入出力比の変化の傾きが大きく、入出力比は短時間で目標入出力比に達する。
以下では、図6から図11までを用いて、モーションダイヤル84の操作に基づく無段変速機13の入出力比の変化率βの制御(以下、単に「モーション制御」と記す)について説明する。
まず、図6から図10までを用いて、モーション制御の制御態様について説明する。
図7に示すように、ステップS101において、制御装置100は、モーションダイヤル84の操作量、及びエンジン回転数検出手段101により検出される実エンジン回転数Nを、検出信号として受信する。制御装置100は、ステップS101の処理を行った後、ステップS102に移行する。
ステップS102において、制御装置100は、モーションダイヤル84の操作量に基づいて、変化率βの初期設定値である初期変化率βd(図6参照)を補正して記憶する。より詳細には、制御装置100は、まずモーションダイヤル84の操作量に基づいて係数Cmを算出する。係数Cmは、予め制御装置100に記憶されるモーションダイヤル84の操作量と係数Cmの値との関係を示すマップに基づいて算出される。当該マップにおいて、係数Cmはモーションダイヤル84の操作量に比例するように設定される。次に、制御装置100は、初期変化率βdに算出した係数Cmを乗じ、補正した変化率(以下、単に「第一補正変化率」と記す)βfを算出する。最後に、制御装置100は、算出した第一補正変化率βfを記憶する。
ここで、制御装置100が、無段変速機13の入出力比が第一補正変化率βfで変化するように電磁比例弁13aの動作を制御した場合を想定する。
トラクタ1の速度は、実エンジン回転数Nと無段変速機13の入出力比とで決まる。このため、前進ペダル74及び後進ペダル75の操作量に基づく目標入出力比が一定である場合、実エンジン回転数Nが高いほど、トラクタ1の目標となる速度(以下、単に「目標速度」と記す)は大きくなる。例えば、図8(a)に示すように、実エンジン回転数Nが高い場合(エンジン3が定格回転している場合等)(図8(a)中のL1参照)の目標速度をV1、実エンジン回転数Nが低い場合(エンジン3がアイドリング回転している場合等)(図8(a)中のL2参照)の目標速度をV2とする。
図8(b)に示すように、無段変速機13の入出力比を、第一補正変化率βfで一定の目標入出力比まで変化させるのに必要な時間をt1とする。この場合、図8(a)に示すように、トラクタ1の速度を、実エンジン回転数Nが高い場合の目標速度V1、及び実エンジン回転数Nが低い場合の目標速度V2まで変化させるのに必要な時間もt1となる。すなわち、実エンジン回転数Nが高い場合の加速度α1(=V1/t1)は、実エンジン回転数Nが低い場合の加速度α2(=V2/t1)よりも大きくなる。
このように、モーションダイヤル84の操作量に基づいて算出された第一補正変化率βfで無段変速機13の入出力比を変化させた場合、実エンジン回転数Nの値によってトラクタ1の加速度αが異なってしまう。よって、トラクタ1を運転する作業者が、モーションダイヤル84をある一定量操作した状態であっても、実エンジン回転数Nの値によって作業者が体感するトラクタ1の加速度αが異なってしまい、操作フィーリングが悪化してしまう。そこで、制御装置100は、以下で述べるステップS103の処理によって、モーションダイヤル84をある一定量操作した場合のトラクタ1の加速度αを、実エンジン回転数Nによらず一定になるようにする。
図7に示すように、制御装置100は、ステップS102の処理を行った後、ステップS103に移行する。
ステップS103において、制御装置100は、実エンジン回転数Nに基づいて、ステップS102において記憶した第一補正変化率βfを補正して記憶する。より詳細には、制御装置100は、まず実エンジン回転数Nに基づいて係数Ceを算出する。係数Ceは、予め制御装置100に記憶される、実エンジン回転数Nと係数Ceの値との関係を示すマップに基づいて算出される。当該マップにおいて、係数Ceは実エンジン回転数Nに反比例するように設定される。次に、制御装置100は、第一補正変化率βfに算出した係数Ceを乗じ、目標変化率である補正した変化率(以下、単に「第二補正変化率」と記す)βsを算出する。最後に、制御装置100は、すでに記憶されている第一補正変化率βfに代えて、算出した第二補正変化率βsを記憶(更新)する。制御装置100は、ステップS103の処理を行った後、ステップS104に移行する。
ステップS104において、制御装置100は、ブレーキペダル76が操作されたか否かを判断する。制御装置100は、ブレーキペダル76が操作されていると判断した場合、ステップS105に移行する。制御装置100は、ブレーキペダル76が操作されていないと判断した場合、ステップS106に移行する。
ステップS105において、制御装置100は、ステップS103において記憶した第二補正変化率βsを変更する。より詳細には、制御装置100は、まず実エンジン回転数Nに基づいて係数Cbを算出する。係数Cbは、予め制御装置100に記憶される実エンジン回転数Nと係数Cbの値との関係を示すマップに基づいて算出される。当該マップにおいて、係数Cbは実エンジン回転数Nに反比例するように設定される。次に、制御装置100は、初期変化率βdに算出した係数Cbを乗じ、制動時目標変化率である補正した変化率(以下、単に「制動時変化率」と記す)βbを算出する。この算出された制動時変化率βbは、実エンジン回転数N及びモーションダイヤル84の操作量にかかわらず、トラクタ1の負の加速度α(減速時の速度の傾き)が一定となるような値である。最後に、制御装置100は、すでに記憶されている第二補正変化率βsに代えて、算出した制動時変化率βbを記憶(更新)する。制御装置100は、ステップS105の処理を行った後、ステップS106に移行する。
ステップS106において、制御装置100は、無段変速機13の入出力比が記憶した変化率β(第二補正変化率βs又は制動時変化率βb)で変化するように、電磁比例弁13aの動作を制御する。すなわち、ブレーキペダル76が操作されていない場合は第二補正変化率βs(ステップS103参照)で、ブレーキペダル76が操作された場合は制動時変化率βb(ステップS105参照)で、電磁比例弁13aの動作を制御する。制御装置100は、無段変速機13の入出力比が当該変化率βで目標入出力比まで変化するように、電磁比例弁13aの動作を制御する。
ここで、図9から図10までを用いて、制御装置100が、無段変速機13の入出力比が、第二補正変化率βsで変化するように電磁比例弁13aの動作を制御した場合について説明する。
まず、図9を用いて、前進ペダル74及び後進ペダル75の操作量に基づく目標入出力比が一定である場合について説明する。
実エンジン回転数Nが高い場合(例えば、エンジン3が定格回転している場合等)(図9中のL3参照)にステップS103で算出された第二補正変化率βsをβ3、実エンジン回転数Nが低い場合(例えば、エンジン3がアイドリング回転している場合等)(図9中のL4参照)にステップS103で算出された第二補正変化率βsをβ4とする。また、無段変速機13の入出力比を、第二補正変化率β3で一定の目標入出力比まで変化させるのに必要な時間をt3、第二補正変化率β4で一定の目標入出力比まで変化させるのに必要な時間をt4とする。ここで、図9(b)に示すように、第二補正変化率βsは、実エンジン回転数Nに反比例する係数Ceを用いて算出されているため、第二補正変化率β3は第二補正変化率β4よりも小さく、時間t3は時間t4よりも大きくなる。
この場合、図9(a)に示すように、トラクタ1の速度を、実エンジン回転数Nが高い場合の目標速度V3まで変化させるのに必要な時間はt3、実エンジン回転数Nが低い場合の目標速度V4まで変化させるのに必要な時間はt4となる。そして、実エンジン回転数Nが高い場合の加速度α3(=V3/t3)は、実エンジン回転数Nが低い場合の加速度α4(=V4/t4)と同一の値になる。
次に、図10を用いて、実エンジン回転数N及び目標入出力比により定まるトラクタ1の目標速度が一定である場合について説明する。
実エンジン回転数Nが高い場合(例えば、エンジン3が定格回転している場合等)(図10中のL5参照)にステップS103で算出された第二補正変化率βsをβ5、実エンジン回転数Nが低い場合(例えば、エンジン3がアイドリング回転している場合等)(図10中のL6参照)にステップS103で算出された第二補正変化率βsをβ6とする。図10(b)に示すように、トラクタ1の目標速度が一定であるため、実エンジン回転数Nが高い場合の目標入出力比F5は、実エンジン回転数Nが低い場合の目標入出力比F6よりも小さくなる。
また、無段変速機13の入出力比を、第二補正変化率β5で目標入出力比F5まで変化させるのに必要な時間をt5、第二補正変化率β6で目標入出力比F6まで変化させるのに必要な時間をt6とする。ここで、第二補正変化率βsは、実エンジン回転数Nに反比例する係数Ceを用いて算出されているため、第二補正変化率β5は第二補正変化率β6よりも小さく、時間t5及び時間t6は同一の値になる。この場合、図10(a)に示すように、トラクタ1の速度を一定の目標速度V5まで変化させるのに必要な時間は、実エンジン回転数Nが高い場合及び低い場合のいずれもt5(=t6)となる。すなわち、実エンジン回転数Nが高い場合及び低い場合の加速度αは同一の値α5(=V5/t5)になる。
このように、実エンジン回転数Nに基づいて補正した第二補正変化率βsで無段変速機13の入出力比を変化させることで、実エンジン回転数Nの値によらず、トラクタ1の加速度αをモーションダイヤル84の操作量に対応する値に設定することができる。これによって、トラクタ1を運転する作業者は、モーションダイヤル84を一定量操作することでトラクタ1の加速度αを一定の値に設定することができる。
また、制御装置100が、無段変速機13の入出力比を、制動時変化率βb(図7のステップS105参照)で変化するように電磁比例弁13aの動作を制御した場合について説明する。
この場合、制動時変化率βbは、実エンジン回転数Nに反比例する係数Cbを用いて算出されている。このため、上記の第二補正変化率βsの場合と同様に、実エンジン回転数Nの値にかかわらず、トラクタ1の加速度αは一定の値になる。さらに、制動時変化率βbは、初期変化率βdを用いて算出されている。このため、モーションダイヤル84の操作量にかかわらず、トラクタ1の加速度αは一定の値になる。すなわち、制動時変化率βbは実エンジン回転数N及びモーションダイヤル84の操作量にかかわらず一定の値となり、当該制動時変化率βbで電磁比例弁13aを制御した場合のトラクタ1の加速度αも一定の値になる。
このように、実エンジン回転数Nに基づいて補正した制動時変化率βbで無段変速機13の入出力比を変化させることで、実エンジン回転数N及びモーションダイヤル84の操作量によらず、ブレーキペダル76操作時のトラクタ1の加速度αを一定の値にすることができる。
次に、図7及び図11を用いて、モーション制御における無段変速機13の入出力比の変化の様子について説明する。具体的には、モーションダイヤル84によって変化率β(単位時間あたりの入出力比の変化量がβ)を小さい値に設定した場合(図6中のLs参照)と、大きい値に設定した場合(図6中のLf参照)と、を比較して説明する。なお、本説明における変化率βとは、詳細には図7のステップS103で算出され、制御装置100に記憶される第二補正変化率βsのことをいう。また、以下では説明の便宜上、実エンジン回転数Nはいずれの場合も同一であるものとする。
まず、モーションダイヤル84によって変化率βを小さい値に設定した場合について説明する。図11(a)に示すように、前進ペダル74が操作されていない状態(図11(a)のT0)から当該前進ペダル74が操作されると、制御装置100はモーションダイヤル84の操作量及び実エンジン回転数N等に基づいて、第二補正変化率βsを算出する(図7のステップS101からステップS103参照)。次に、制御装置100は、無段変速機13の入出力比を、目標入出力比に向かって算出した第二補正変化率βsで変化させる(図7のステップS106参照)。これによって、トラクタ1の速度は目標速度に向かって第二補正変化率βsに対応する加速度αで変化する(図11(a)のT0からT1)。トラクタ1が目標速度で走行している状態から前進ペダル74の操作をやめた(前進ペダル74から足を離し、前進ペダル74が初期位置に戻った)場合、目標入出力比は零(目標となる主変速出力軸12の回転数が零、つまり、トラクタ1の速度が零になる値)になる。制御装置100は無段変速機13の入出力比を、目標入出力比(零)に向かって算出した第二補正変化率βsで変化させる(図7のステップS106参照)。これによって、トラクタ1の速度は目標速度(零)に向かって第二補正変化率βsに対応する加速度αで変化する(図11(a)のT2からT3)。さらに、制御装置100は、無段変速機13の入出力比を目標入出力比(零)に向かって第二補正変化率βsで変化させている際に、ブレーキペダル76が操作された場合、実エンジン回転数Nに基づいて、制動時変化率βbを算出する(図7のステップS105参照)。次に、制御装置100は、無段変速機13の入出力比を、目標入出力比(零)に向かって算出した制動時変化率βbで変化させる(図7のステップS106参照)。これによって、トラクタ1の速度は目標速度(零)に向かって制動時変化率βbに対応する加速度(負の加速度)αで変化する(図11(a)のT3からT4)。
次に、モーションダイヤル84によって変化率βを大きい値に設定した場合について説明する。図11(b)に示すように、前進ペダル74が操作されていない状態(図11(b)のT0)から当該前進ペダル74が操作されると、制御装置100はモーションダイヤル84の操作量及び実エンジン回転数N等に基づいて、第二補正変化率βsを算出する(図7のステップS101からステップS103参照)。この場合、モーションダイヤル84によって変化率βを大きい値に設定しているため、モーションダイヤル84によって変化率βを小さい値に設定している場合に比べて算出される第二補正変化率βsの値は大きくなる。次に、制御装置100は、無段変速機13の入出力比を、目標入出力比に向かって算出した第二補正変化率βsで変化させる(図7のステップS106参照)。これによって、トラクタ1の速度は目標速度に向かって第二補正変化率βsに対応する加速度αで変化する(図11(b)のT0からT1)。この場合、モーションダイヤル84によって変化率βを小さい値に設定している場合に比べて加速度αの値は大きくなる。すなわち、モーションダイヤル84によって変化率βを小さい値に設定している場合(図11(a)参照)に比べて、トラクタ1の速度が目標速度に達するまでの時間が短くなる。トラクタ1が目標速度で走行している状態から前進ペダル74の操作をやめた(前進ペダル74から足を離し、前進ペダル74が初期位置に戻った)場合、目標入出力比は零(目標となる主変速出力軸12の回転数が零、つまり、トラクタ1の速度が零になる値)になる。制御装置100は無段変速機13の入出力比を、目標入出力比(零)に向かって算出した第二補正変化率βsで変化させる(図7のステップS106参照)。これによって、トラクタ1の速度は目標速度(零)に向かって第二補正変化率βsに対応する加速度(負の加速度)αで変化する(図11(b)のT2からT3)。この場合も、モーションダイヤル84によって変化率βを小さい値に設定している場合に比べて加速度αの値は大きくなる。すなわち、モーションダイヤル84によって変化率βを小さい値に設定している場合(図11(a)参照)に比べて、トラクタ1の速度が目標速度に達するまでの時間が短くなる。さらに、制御装置100は、無段変速機13の入出力比を目標入出力比(零)に向かって第二補正変化率βsで変化させている際に、ブレーキペダル76が操作された場合、実エンジン回転数Nに基づいて、制動時変化率βbを算出する(図7のステップS105参照)。次に、制御装置100は、無段変速機13の入出力比を、目標入出力比(零)に向かって算出した制動時変化率βbで変化させる(図7のステップS106参照)。これによって、トラクタ1の速度は目標速度(零)に向かって制動時変化率βbに対応する加速度αで変化する(図11(b)のT3からT4)。この場合、制動時変化率βbはモーションダイヤル84の操作量及び実エンジン回転数Nにかかわらず一定の値になるため、当該制動時変化率βbはモーションダイヤル84によって変化率βを小さい値に設定している場合(図11(a)参照)と同一の値になる。
以上の如く、本実施形態に係るトラクタ1は、エンジン3と、エンジン3の回転数を検出するエンジン回転数検出手段101と、主変速入力軸11(入力軸)の回転数に対する主変速出力軸12(出力軸)の回転数の比である入出力比を変更するための電磁比例弁13a(アクチュエータ)を備える無段変速機13と、無段変速機13の入出力比を変更操作するための前進ペダル74及び後進ペダル75(変速操作具)と、無段変速機13の入出力比の変化率βを設定するためのモーションダイヤル84(変化率設定手段)と、前進ペダル74及び後進ペダル75の操作量を検出する変速操作具操作量検出手段と、前記変速操作具操作量検出手段により検出される前進ペダル74及び後進ペダル75の操作量に基づいて目標入出力比を算出し、エンジン回転数検出手段101により検出される実エンジン回転数N(エンジン3の回転数)及びモーションダイヤル84の操作量に基づいて第二補正変化率βs(目標変化率)を算出し、無段変速機13の入出力比が目標入出力比に向かって第二補正変化率βsで変化するように電磁比例弁13aを制御する制御装置100と、を具備するものである。このように構成することにより、第二補正変化率βsを実エンジン回転数N及びモーションダイヤル84の操作量に基づいて算出し、実エンジン回転数Nにかかわらず、モーションダイヤル84の操作量に応じた加速度αでトラクタ1を加減速させることで、実エンジン回転数Nによるトラクタ1の加速度αの変化を防止することができる。これによって、作業者はトラクタ1の加減速に違和感を覚えることなく変速することができる。
また、本実施形態に係るトラクタ1は、制動操作するためのブレーキペダル76(制動操作具)と、ブレーキペダル76が操作されたことを検出するブレーキ操作検出手段102(制動操作検出手段)と、を具備し、制御装置100は、ブレーキペダル76が操作された場合、エンジン回転数検出手段101により検出される実エンジン回転数Nに基づいて制動時変化率βb(制動時目標変化率)を算出し、第二補正変化率βsにかかわらず、無段変速機13の入出力比が目標入出力比に向かって制動時変化率βbで変化するように電磁比例弁13aを制御するものである。このように構成することにより、制動時変化率βbを実エンジン回転数Nに基づいて算出し、モーションダイヤル84の操作にかかわらず、所定の加速度αでトラクタ1を加減速させることで、トラクタ1の制動時には常に所定の加速度αで当該トラクタ1を減速させることができ、作業者はトラクタ1の制動時の加減速に違和感を覚えることなく変速することができる。
以下では、図12及び図13を用いて、前進ペダル74及び後進ペダル75の踏み込み操作量と、無段変速機13の目標入出力比と、の関係について説明する。
前述の如く、制御装置100は、前進ペダル74及び後進ペダル75の操作量に基づいて、無段変速機13の目標入出力比を算出する。この場合、制御装置100は、予め記憶される図12に示すようなマップを用いて当該目標入出力比を算出する。以下では、当該マップにおける、前進ペダル74の操作量の増加に対する目標入出力比の増加の態様について説明する。
図12に示すように、前進ペダル74の操作量が零の場合(前進ペダル74から足を離し、前進ペダル74が初期位置にある場合)、すなわち前進ペダル74が中立位置にある場合、目標入出力比は零に設定される。この場合、トラクタ1は前進しない。
前進ペダル74の操作量が零からX1までは、目標入出力比は零に設定される。この範囲で前進ペダル74が操作されても、トラクタ1は前進しない。すなわち、この範囲では、前進ペダル74の操作量に対して目標入出力比の不感帯(あそび)が設けられる。
前進ペダル74の操作量がX1からX2まで(間隔dX)増加すると、目標入出力比は零からF1まで、前進ペダル74の操作量に対して直線的に増加する。この場合の目標入出力比の増加率はF1/dXとなる。
前進ペダル74の操作量がX2からX3まで(間隔dX)増加すると、目標入出力比はF1からF2まで、前進ペダル74の操作量に対して直線的に増加する。この場合の目標入出力比の増加率は(F2−F1)/dXとなる。また、この場合の増加率(F2−F1)/dXは、前進ペダル74の操作量がX1からX2までの場合の増加率F1/dXよりも大きくなるように設定される。
前進ペダル74の操作量がX3からX4まで(間隔dX)増加すると、目標入出力比はF2からF3まで、前進ペダル74の操作量に対して直線的に増加する。この場合の目標入出力比の増加率は(F3−F2)/dXとなる。また、この場合の増加率(F3−F2)/dXは、前進ペダル74の操作量がX2からX3までの場合の増加率(F2−F1)/dXよりも大きくなるように設定される。
前進ペダル74の操作量がX4からX5(最大操作量)まで(間隔dX)増加すると、目標入出力比はF3からF4(最大入出力比)まで、前進ペダル74の操作量に対して直線的に増加する。この場合の目標入出力比の増加率は(F4−F3)/dXとなる。また、この場合の増加率(F4−F3)/dXは、前進ペダル74の操作量がX3からX2までの場合の増加率(F3−F2)/dXよりも大きくなるように設定される。
このように、当該マップ(図12)においては、前進ペダル74の操作量が増加するにつれて、目標入出力比の増加率が大きくなるように設定される。従って、前進ペダル74の操作量が小さい範囲では、前進ペダル74を一定量操作してもトラクタ1の速度の増加は小さく、前進ペダル74の操作量が大きい範囲では、前進ペダル74を一定量操作した際のトラクタ1の速度の増加が大きくなる。これによって、トラクタ1を車庫に格納する等のために低速で走行させる場合(前進ペダル74の操作量が小さい範囲)は、トラクタ1の速度の増加は小さく、前進ペダル74を操作することによる速度の微調整を容易に行うことができる。一方、トラクタ1を路上走行やモア等を用いた作業を行う等のために高速で走行させる場合(前進ペダル74の操作量が大きい範囲)は、トラクタ1の速度の微調整の必要性は低い。この場合は、トラクタ1の速度の増加は大きく、トラクタ1の操作性を向上させることができる。
また、本実施形態では、前進ペダル74の操作量を、X1からX5までを等間隔(dX)に4等分し、それぞれの間で目標入出力比が直線的に増加するものとした。しかし、その構成はこれに限るものではなく、X1からX5までを5等分以上に分割することで、前進ペダル74に対する目標入出力比の増加の態様をさらに細かく設定することが可能である。また、分割する数を多くすることで、目標入出力比をさらに滑らかに増加させることが可能であり、操作性を向上させることができる。
後進ペダル75を操作した場合の目標入出力比についても、前進ペダル74を操作した場合の目標入出力比の増加の態様と略同一である。すなわち、後進ペダル75の操作量が増加するにつれて、目標入出力比の増加率が大きくなるように設定される。従って、後進ペダル75の操作量が小さい範囲では、後進ペダル75を一定量操作してもトラクタ1の速度の増加は小さく、後進ペダル75の操作量が大きい範囲では、後進ペダル75を一定量操作した際のトラクタ1の速度の増加が大きくなる。
以下では、図13を用いて、前述のマップ(図12参照)を用いた目標入出力比の算出方法について説明する。
ステップS111において、制御装置100は、前進ペダル74又は後進ペダル75の操作量を読み取り、予め記憶されるマップ(図12参照)を用いて、最大入出力比に対する目標入出力比の割合を算出する。制御装置100は、ステップS111の処理を行った後、ステップS112に移行する。
ステップS112において、制御装置100は、前進ペダル74又は後進ペダル75の操作量に対応する目標入出力比を算出する。より詳細には、最大入出力比にステップS111において算出した割合を乗じて、当該操作量に対応する目標入出力比を算出する。
制御装置100は、無段変速機13の入出力比が上記方法(図13のステップS111及びステップS112)によって算出された目標入出力比となるように電磁比例弁13aの動作を制御する。
なお、前進ペダル74及び後進ペダル75の最大操作量に対応する最大入出力比の値は、最高速度設定ダイヤル83により任意に変更することができる。