JP5885291B2 - 熱可塑性樹脂組成物及び成形体 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物及び成形体 Download PDF

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びそれを用いた成形体に関する。さらに詳しくは、アシル化リグノフェノールを用いることにより難燃性、流動性及び環境性能に優れ、かつ着色の抑制、熱安定性、耐湿熱性、及び成形外観にも優れる熱可塑性樹脂組成物及びそれを用いた成形体に関する。
近年、環境保護の観点からバイオマス材料が注目されており、代表的なバイオマス材料としてポリ乳酸が挙げられる。しかし、バイオマス材料は、一般的に石油系の汎用プラスチックに比べて機械的強度が低く、また耐熱性も劣るため、その用途は非常に狭い範囲に制限され、例えば、ポリ乳酸に芳香族ポリカーボネート樹脂等の石油系ポリマーを配合したポリマーアロイとして使用しても、機能を付与することは困難であった。
一方、先に本発明者らは、バイオマス材料として、木質系リグニンから誘導されるリグノフェノールに注目し、ポリカーボネート樹脂又はポリ乳酸を配合したポリカーボネート樹脂に、特定構造を有するリグノフェノールを配合することにより、環境性能に優れるとともに、高い流動性及び高い耐衝撃性を有し、難燃性及び耐熱性に優れるポリカーボネート樹脂組成物を見出している(例えば、特許文献1又は2参照)。しかしながら、リグノフェノールを配合することにより、上記高機能化は図れるが、熱安定性が低く、高温での加工には不具合があり、褐色に着色してしまう問題点があった。さらに、高温の耐湿熱特性が低く、家電製品や事務機器の筐体及び部品に要求される特性を十分満足することができず用途が限られてしまう問題点があった。
また、特許文献1及び2には、リグノフェノールの水酸基をアシル基で保護することができる開示があるものの、具体的な効果については記載がなく、さらに、アシル化したリグノフェノールを、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート/ポリ乳酸等の熱可塑性樹脂に配合した場合、及び樹脂組成物とした場合についても記載がない。
特開2010−150424号公報 特開2010−202712号公報
本発明は、リグノフェノールを熱可塑性樹脂に配合することによる難燃性及び高流動性等の高機能化を保持したまま、成形時の着色を抑制するとともに、熱安定性、耐湿熱性、及び成形外観に優れた熱可塑性樹脂組成物及びそれを用いた成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、バイオマス材料であるリグノフェノールをアシル化したアシル化リグノフェノールを用いることにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、下記の熱可塑性樹脂組成物及びそれを用いた成形体に関する。
1.(A)成分及び(B)成分の合計量に対し、(A)熱可塑性樹脂を99〜50質量%及び(B)下記一般式(I)で表される構造を有するリグノフェノールをアシル化することによって得られるアシル化リグノフェノールを1〜50質量%含む熱可塑性樹脂組成物。
〔式中、R1及びR4はアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキル基又はフェノキシ基を示し、R2はヒドロキシアリール基又はアルキル置換ヒドロキシアリール基を示し、R3はヒドロキシアルキル基、アルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基又は−OR5(R5は水素原子、アルキル基又はアリール基を示す)を示し、水素原子以外のR1〜R5はそれぞれ置換基を有していてもよく、p及びqは0〜4の整数を示す。ただし、pが2以上である場合、複数のR1はそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、また、qが2以上である場合、複数のR4はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。〕
2.前記(B)成分のアシル化率が25%以上である、前記1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
3.前記(B)成分が、前記一般式(I)で表される構造を有するリグノフェノールをアルカリ処理した後、アシル化することによって得られるアシル化リグノフェノールである、前記1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
4.前記(A)成分が、ポリカーボネート樹脂又はポリカーボネート樹脂とその他の熱可塑性樹脂との混合物である、前記1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
5.前記1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形体。
本発明によれば、リグノフェノールをアシル化したアシル化リグノフェノールを用いることにより、リグノフェノールが付与する難燃性及び流動性を保持したまま、成形時の着色を抑制でき、熱安定性、耐湿熱性及び成形外観に優れた熱可塑性樹脂組成物、及びそれを用いた成形体を提供することができる。
さらに、アシル化リグノフェノールは、上記特性を樹脂組成物に付与することができるため、様々な種類の熱可塑性樹脂に配合することで、上記特性を必要とする用途に拡大することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分の合計量に対し、(A)熱可塑性樹脂を99〜50質量%及び(B)前記一般式(I)で表される構造を有するリグノフェノールをアシル化することによって得られるアシル化リグノフェノールを1〜50質量%含む。
[(A)熱可塑性樹脂]
本発明において(A)熱可塑性樹脂としては、特に制限がなく種々の熱可塑性樹脂を用いることができるが、(B)成分であるアシル化リグノフェノールとの親和性の観点から、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、エラストマー等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性樹脂の中でもポリカーボネート樹脂を用いることにより、ポリカーボネート樹脂が有する優れた耐衝撃性及び耐熱性等を樹脂組成物に付与することができる点から、(A)熱可塑性樹脂として、ポリカーボネート樹脂又はポリカーボネート樹脂とその他の熱可塑性樹脂との混合物を用いることが好ましい。
(ポリカーボネート樹脂)
(A)熱可塑性樹脂としてのポリカーボネート樹脂は、芳香族ポリカーボネート樹脂であっても脂肪族ポリカーボネート樹脂であってもよいが、(B)成分との親和性の観点及び耐衝撃性と耐熱性の観点から芳香族ポリカーボネート樹脂を用いることがより好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、通常、二価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造される芳香族ポリカーボネート樹脂を用いることができる。芳香族ポリカーボネート樹脂は、他の熱可塑性樹脂に比べて、耐熱性、難燃性及び耐衝撃性が良好であるため樹脂組成物の主成分とすることができる。
二価フェノールとしては、4,4’−ジヒドロキシジフェニル;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、及び2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕等のビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等を挙げることができる。なかでも、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、特にビスフェノールAが好ましい。二価フェノールとしては、これらの二価フェノールの一種を用いたホモポリマーでも、二種以上を用いたコポリマーであってもよい。さらに、多官能性芳香族化合物を二価フェノールと併用して得られる熱可塑性ランダム分岐ポリカーボネート樹脂であってもよい。
カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、ハロホーメート、炭酸エステル等が挙げられ、具体的にはホスゲン、二価フェノールのジハロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等が挙げられる。
本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂の製造においては、必要に応じて末端停止剤を用いることができ、例えば、下記一般式(II)で表される一価フェノール化合物が挙げられる。
上記一般式(II)中、R6は炭素数1〜35のアルキル基を示し、aは0〜5の整数を示す。
一般式(II)で表される一価フェノール化合物としてはパラ置換体が好ましい。一価フェノール化合物の具体例としては、フェノール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、p−ノニルフェノール、及びp−tert−アミルフェノール等を挙げることができる。これらの一価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂は、分岐構造を有していてもよい。分岐構造を導入するためには分岐剤を用いればよく、例えば1,1,1−トリス(4−ヒドキシフェニル)エタン;α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン;1−〔α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α’,α’−ビス(4”−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン;フロログルシン、トリメリット酸、及びイサチンビス(o−クレゾール)等の官能基を三個以上有する化合物等を用いることができる。
本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、樹脂組成物の物性面から、10,000〜40,000であることが好ましく、13,000〜30,000であることがより好ましい。
また、本発明において、芳香族ポリカーボネート樹脂として、芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体であるか又は芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含むものを用いる場合、難燃性及び低温における耐衝撃性をさらに向上することができる。該共重合体を構成するポリオルガノシロキサンは、ポリジメチルシロキサンであることが難燃性の点からより好ましい。
ポリカーボネート樹脂は単独で用いてもよく、ポリカーボネート樹脂、好ましくは芳香族ポリカーボネート樹脂とその他の熱可塑性樹脂とから構成される混合物として用いてもよい。具体的には、ポリカーボネート樹脂の機械的強度(耐衝撃性、耐熱性等)を維持できる観点から、ポリカーボネート樹脂50〜100質量%及びその他の熱可塑性樹脂50〜0質量%として用いることが好ましく、ポリカーボネート樹脂60〜100質量%及びその他の熱可塑性樹脂40〜0質量%として用いることがより好ましい。
ポリカーボネート樹脂、好ましくは芳香族ポリカーボネート樹脂と混合して用いられるその他の熱可塑性樹脂としては、特に制限なく熱可塑性樹脂の中から任意に選択されるが、ポリカーボネート樹脂との相溶性の観点からポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を含む共重合体等)、スチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等が好ましい。
(スチレン系樹脂)
(A)熱可塑性樹脂としてのスチレン系樹脂は、例えば、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(m−メチルスチレン)、ポリ(p−tert−ブチルスチレン)、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリ(m−クロロスチレン)、ポリ(p−フルオロスチレン)、水素化ポリスチレン及びこれらの構造単位を含む共重合体等が挙げられる。これらスチレン系樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(ポリエステル樹脂)
(A)熱可塑性樹脂としてのポリエステル樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、テレフタル酸と1,3−ブロパンジオール或いは1,4−ブロパンジオールとの共重合体、テレフタル酸とイソフタル酸との共重合体、ポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を含む共重合体等が挙げられる。これらポリエステル樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(ポリアミド樹脂)
(A)熱可塑性樹脂としてのポリアミド樹脂は、例えば、ラクタムの開環重合体、ジアミンと二塩基酸との重縮合体、ω−アミノ酸の重縮合体等が挙げられる。これらポリアミド樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(ポリオレフィン樹脂)
(A)熱可塑性樹脂としてのポリオレフィン樹脂は、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等の単独重合体及びこれらの共重合体等が挙げられ、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。これらポリオレフィン樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(エラストマー)
(A)熱可塑性樹脂としてのエラストマーは、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、スチレン−(1−ブテン)−スチレントリブロック共重合体(SBS)、スチレン−(エチレン/1−ブテン)−スチレントリブロック共重合体(SEBS)、ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(ABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MBS)等が挙げられる。これらエラストマーは、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(含有割合)
本発明において、(A)熱可塑性樹脂の含有割合は、(A)成分及び(B)成分の合計量に対し、99〜50質量%であり、好ましくは98〜60質量%であり、より好ましくは95〜70質量%である。(A)熱可塑性樹脂の上記含有割合が、50質量%未満では耐衝撃性、難燃性、耐熱性の低下が著しくなり、また、99質量%を超えると(B)成分を含有することによって得られる効果を十分発揮させることができない。
[(B)アシル化リグノフェノール]
本発明において(B)アシル化リグノフェノールは、下記一般式(I)で表される構造を有するリグノフェノールをアシル化することによって得られる。
詳しくは後述するがリグノフェノールは、原料となるリグノセルロースをフェノール等のフェノール類を用いてフェノール置換体とした後に、酸で加水分解することにより抽出することができる。すなわち、本発明においてリグノフェノールとは、リグノセルロースをフェノールで置換して抽出した置換体、さらにリグノセルロースをフェノール以外のフェノール類で置換して抽出した置換体を含む。
一般式(I)中、R1及びR4はアルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜10のアリール基であり、具体的にはフェニル基等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基であり、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アラルキル基(好ましくは炭素数12〜20のアラルキル基であり、具体的にはベンジル基等)又はフェノキシ基を示す。
2は、ヒドロキシアリール基(好ましくは炭素数6〜14のヒドロキシアリール基であり、具体的には2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基等)又はアルキル置換ヒドロキシアリール基(好ましくは炭素数7〜18のヒドロキシアリール基であり、具体的には2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル基、3−ヒドロキシ−5−メチルフェニル基、4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル基等)を示し、R3はヒドロキシアルキル基(好ましくは炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基であり、具体的にはヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜10のアリール基であり、具体的にはフェニル基等)、アルキル置換アリール基(好ましくは炭素数1〜10のアルキル基で置換されたアリール基であり、具体的にはトルイル基、キシリル基等)又は−OR5(R5は水素原子、アルキル基、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基、好ましくは炭素数6〜10のアリール基を示す)を示す。
水素原子以外のR1〜R5はそれぞれ置換基を有していてもよく、p及びqはそれぞれ独立に0〜4の整数を示す。
ただし、pが2以上である場合、複数のR1はそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、また、qが2以上である場合、複数のR4はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
本発明において上記一般式(I)で表される構造は、天然由来の構造が好ましい。
天然由来構造の場合、上記一般式(I)中のR1及びR4は樹種によって決まり、R1及びR4で示される置換基はメトキシ基であって、p及びqがそれぞれ1又は2の構造、あるいはR1及びR4で示される置換基の一方又は両方を有さない構造が存在する。
例えば、一般に針葉樹はメトキシ基が1つの3−置換体であり、広葉樹・草本類はメトキシ基が1つの3−置換体と、メトキシ基が2つの3,5−置換体とが1:1で存在する。また、いずれの樹種も幼樹の場合、メトキシ基である上記置換基を一部有さない構造が含まれることがある。
3は、天然由来構造においてヒドロキシメチル基である。
2は、原料となるリグノセルロースがフェノール類で置換された基を示しており、ヒドロキシアリール基(好ましくは炭素数6〜14のヒドロキシアリール基であり、具体的には2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基等)又はアルキル置換ヒドロキシアリール基(好ましくは炭素数7〜18のヒドロキシアリール基であり、具体的には2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル基、3−ヒドロキシ−5−メチルフェニル基、4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル基等)を示す。
本発明において、R2の構造を制御することにより、(B)成分としてのバリエーションを増やすことができる。
上記一般式(I)で示されるリグノフェノールの重量平均分子量は、ポリスチレン換算で1,000〜200,000であることが好ましく、より好ましくは3,000〜100,000である。そして、上記一般式(I)で示されるリグノフェノールの両末端基はフェノール性水酸基であることが望ましい。
また、本発明において上記一般式(I)で表される具体的な構造としては、例えば下記式(III)で表すリグノクレゾール構造が挙げられる。
(リグノフェノール)
リグノフェノールとは、材木や紙(例えば新聞紙)等に含まれるリグニンから誘導される化合物であり、リグニンは、例えば木の細胞骨格を形成する炭水化物の隙間に充填されている、細胞間の接着物質として働くものである。リグニンの構造は非常に複雑であり、そのまま使用することは困難であるため、リグノフェノールに変換して用いることが有用である。
(リグノフェノールの製造方法)
リグノフェノールは、リグニンとセルロースが絡み合ったリグノセルロースに、フェノール類を添加してフェノール置換体とした後、濃酸との界面反応でフェノール化して、リグノフェノールと炭水化物とに分離することにより得ることができる。
リグノセルロースとしては、木質化した材料、主として木材である各種材料、例えば、木粉、チップ、廃材及び端材等、並びに新聞紙及びボール紙等を挙げることができる。また用いる木材としては、針葉樹や広葉樹等任意の種類のものを使用するこができる。さらに、各種草本植物、それに関連する試料、例えば、農産廃棄物等も使用できる。
これらの材料を用いてリグノフェノールを分離する際、分離過程において加熱及び加圧しないで得られたものが好ましく用いられる。
フェノール類としては、1価のフェノール誘導体、2価のフェノール誘導体又は3価のフェノール誘導体等を用いることができる。1価のフェノール誘導体の具体例としては、フェノール、ナフトール、アントロール、アントロキノンオール等が挙げられ、それぞれ1以上の置換基を有していてもよい。2価のフェノール誘導体の具体例としては、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等が挙げられ、それぞれ1以上の置換基を有していてもよい。3価のフェノール誘導体の具体例としては、ピロガロール等が挙げられ、1以上の置換基を有していてもよい。
上記フェノール誘導体が有していてもよい置換基の種類は特に限定されず、任意の置換基を有していてもよいが、好ましくは電子吸引性の基(ハロゲン原子等)以外の基であり、例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、及びアリール基(フェニル基等)等が挙げられる。また、フェノール誘導体上のフェノール性水酸基の2つあるオルト位のうちの少なくとも片方は無置換であることが好ましい。フェノール誘導体の特に好ましい例は、クレゾール、特にm−クレゾール又はp−クレゾールである。
酸としては、セルロースに対する膨潤性を有する酸が好ましい。酸の具体例としては、例えば濃度65質量%以上の硫酸(例えば、72質量%の硫酸)、85質量%以上のリン酸、38質量%以上の塩酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、及びギ酸等を挙げることができる。
上記のようにして得られたリグノフェノールの抽出分離方法としては、例えば、次の2種類の方法が挙げられる。
第1の方法は、特許第2895087号公報に記載されている方法である。具体的には、木粉等のリグノセルロースに液状のフェノール誘導体を浸透させることによりリグニンをフェノール誘導体に溶媒和させ、次に濃酸を添加してリグノセルロースを溶解させる。このとき、リグニン基本構成単位の側鎖α位のカチオンが、フェノール誘導体により攻撃され、ベンジル位にフェノール誘導体が導入されたリグノフェノールがフェノール誘導体相に生成される。そして、フェノール誘導体相からリグノフェノールを抽出する方法である。
フェノール誘導体相からのリグノフェノールの抽出は、フェノール誘導体相を、大過剰のエチルエーテルに加えて得た沈殿物を集めて、アセトンに溶解する。アセトン不溶部を遠心分離により除去し、アセトン可溶部を濃縮する。このアセトン可溶部を、大過剰のエチルエーテルに滴下し、沈殿区分を集める。この沈殿区分から溶媒を留去した後、乾燥処理し、乾燥物としてリグノフェノールを得る。なお、粗リグノフェノールは、フェノール誘導体相を単に減圧蒸留により除去することで得られる。また、アセトン可溶部を、そのままリグノフェノール溶液として、誘導体化処理(アルカリ処理)に用いることもできる。
第2の方法は、特開2001−64494号公報に記載されている方法である。具体的には、リグノセルロースに、固体状あるいは液体状のフェノール誘導体を溶解した溶媒を浸透させた後、溶媒を留去する(フェノール誘導体の収着工程)。次に、このリグノセルロースに濃酸を添加してセルロース成分を溶解させ、第1の方法と同様リグノフェノールがフェノール誘導体相に生成され、リグノフェノールを抽出する方法である。
リグノフェノールの抽出は、第1の方法と同様にして行うことができる。あるいは、他の抽出方法として、濃酸処理後の全反応液を過剰の水中に投入し、不溶区分を遠心分離にて集め、脱酸後、乾燥する。この乾燥物にアセトンあるいはアルコールを加えてリグノフェノールを抽出する。さらに、この可溶区分を第1の方法と同様に、過剰のエチルエーテル等に滴下して、リグノフェノールを不溶区分として得る方法である。
これら第1又は第2の2種類の方法においては、第2の方法が、なかでも特に後者の抽出方法、すなわち、リグノフェノールをアセトンあるいはアルコールにて抽出分離する方法が、フェノール誘導体の使用量が少なくてすむため経済的である。また、この方法が、少量のフェノール誘導体で、多くのリグノセルロースを処理できるため、リグノフェノールの大量合成に適している。
上記方法で得られたリグノフェノールは、一般的には以下のような特徴を有する。ただし、本発明で用いるリグノフェノールの特徴は以下のものに限定されることはない。
(1)重量平均分子量は約1,000〜200,000程度である。
(2)分子内に共役系をほとんど有さず、その色調は極めて淡色である。
(3)針葉樹由来のもので約170℃、広葉樹由来のもので約130℃に融点を有する。
(4)側鎖α位へのフェノール誘導体の選択的グラフティングの結果、フェノール性水酸基量が非常に多く、高いフェノール特性が付与されたリグニン誘導体である。
(5)リグニン構成単位の芳香核と側鎖α位にグラフティングされたフェノール誘導体の芳香核とでジフェニルメタン型構造を形成し、自己縮合は抑制されている。
(6)メタノール、エタノール、アセトン、ジオキサン、ピリジン、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(ジメチルホルムアミド)等各種溶媒に容易に溶解する。
また、本発明において、上記方法で得られたリグノフェノールは、さらにアルカリ処理することにより誘導体化してから、アシル化反応に用いることができる。
天然リグニンより相分離プロセスにより得られたリグノフェノールは、その活性炭素のα位がフェノール誘導体でブロックされているので、総体として安定である。しかし、アルカリ性条件下ではそのフェノール性水酸基は容易に解離し、生じたフェノキシドイオンは立体的に可能な場合には隣接炭素のβ位を攻撃する。これによりβ位のアリールエーテル結合は開裂し、リグノフェノールは低分子化され、さらに導入フェノール核にあったフェノール性水酸基がリグニン母体へと移動する。したがって、アルカリ処理されたリグノフェノールはアルカリ処理する前のリグノフェノールよりも疎水性が向上することが期待される。
このときγ位の炭素に存在するアルコキシドイオンあるいはリグニン芳香核のカルバニオンがβ位を攻撃することも期待されるが、これはフェノキシドイオンに比べはるかに高いエネルギーを必要とする。したがって、緩和なアルカリ性条件下では導入フェノール核のフェノール性水酸基の隣接基効果が優先的に発現し、より厳しい条件下ではさらなる反応が起こり、いったんエーテル化されたクレゾール核のフェノール性水酸基が再生し、これによりリグノフェノールはさらに低分子化されるとともに水酸基が増えることにより親水性が上がることが期待される。
さらに、上記のとおり、アルカリ処理によりリグノフェノールの水酸基が増えることで、後のアシル化反応によって、リグノフェノール中にアシル基をより多く導入することができる。
(アシル化)
上記方法により得られるリグノフェノール及びアルカリ処理したリグノフェノールは、側鎖α位へ導入したフェノール誘導体にフェノール性水酸基を有しており、さらにアルコール性水酸基を有し得る。本発明において、上記フェノール性水酸基の水素原子、さらに場合によってアルコール性水酸基の水素原子を、疎水性のアシル基で置換しアシル化リグノフェノールとする。
リグノフェノール及びアルカリ処理したリグノフェノールのアシル化は、カルボン酸、無水カルボン酸、混合無水カルボン酸等のアシル化剤を反応させればよく、アシル化反応の際、塩基を用いてもよい。アシル化剤の使用量は、リグノフェノール及びアルカリ処理したリグノフェノールの水酸基価に対し、目的とするアシル化率に応じて決定すればよい。
アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾイル基等が挙げられ、好ましくはアセチル基である。
本発明において、上記アシル化反応により得られるアシル化リグノフェノールのアシル化率は、好ましくは25%以上である。アシル化率が25%以上であれば熱可塑性樹脂組成物の成形時における着色低減効果を十分に発揮させることができる。
さらに、アシル化リグノフェノールのアシル化率は、アルカリ処理を行ったリグノフェノールであれば、より好ましくは40%以上であり、また、アルカリ処理を行わないリグノフェノールであれば、より好ましくは40%以上であり、さらに好ましくは60%以上である。
本発明においてアシル化率は、アシル化リグノフェノールをフーリエ変換赤外分光法〔FT−IR(KBr法)〕により測定し算出した値である。
より具体的な分析法としては、アシル化する水酸基に相当する赤外吸収スペクトル(3400cm-1付近)のピーク高さ(吸光度)が、アシル化反応前に対して5%以下であるアシル化リグノフェノールをアシル化率100%とし、該アシル化率100%リグノフェノールのエステル部分構造に相当する赤外吸収スペクトル(1750cm-1付近)のピーク高さを基準とする。そして、アシル化率を分析するアシル化リグノフェノールを、基準とするアシル化率100%リグノフェノールと同濃度で測定し、基準と同じエステル部分構造に相当する赤外吸収スペクトルの高さから、以下の式より算出した値をアシル化率とする。
アシル化率(%)=[(分析するアシル化リグノフェノールのエステル部分構造に相当するピーク高さ)/(基準のピーク高さ)]×100
なお、アシル化前のリグノフェノール及びアルカリ処理リグノフェノールはいずれも、1750cm-1付近の吸光度はゼロである。
(含有割合)
本発明において、(B)アシル化リグノフェノールの含有割合は、(A)成分及び(B)成分の合計量に対し、1〜50質量%であり、好ましくは2〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%である。(B)熱可塑性樹脂の上記含有割合が、1質量%未満では流動性及び難燃性向上の効果が得られなく、また、50質量%を超えると耐衝撃性、難燃性、耐熱性の低下が著しくなる。
[添加剤成分]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分とともに、添加剤成分を必要により添加含有させることができる。例えば、フェノール系、リン系、イオウ系酸化防止剤、帯電防止剤、ポリアミドポリエーテルブロック共重合体(永久帯電防止性能付与)、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の光安定剤(耐候剤)、抗菌剤、相溶化剤、着色剤(染料、顔料)等が挙げられる。添加剤成分の配合量は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の特性が損なわれない範囲であれば特に制限はない。
[混練・成形]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記の(A)成分及び(B)成分を前記割合で、さらに必要に応じて用いられる添加剤成分を配合し、混練することにより得られる。このときの配合及び混練は、通常用いられている機器、例えばリボンブレンダー、ドラムタンブラー等で予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、及びコニーダ等を用いる方法で行うことができる。
混練の際の加熱温度は、熱可塑性樹脂の種類により通常200〜350℃の範囲で適宜選択されるが、熱可塑性樹脂としてポカーボネート樹脂を用いる場合は240〜300℃の範囲で選択される。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記の溶融混練成形機、あるいは、得られたペレットを原料として、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法、及び発泡成形法等により各種成形品を製造することができる。特に、上記溶融混練方法により、ペレット状の成形原料を製造し、次いでこのペレットを用いて、射出成形あるいは射出圧縮成形による射出成形品の製造に好適に用いることができる。
本発明は、また前述した本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形体をも提供する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形体、好ましくは射出成形体(射出圧縮を含む)は、複写機、ファックス、テレビ、ラジオ、テープレコーダー、ビデオデッキ、パソコン、プリンター、電話機、情報端末機、冷蔵庫、電子レンジ等のOA機器、家庭電化製品、電気・電子機器のハウジングや各種部品等に用いられる。
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
各例で得られた樹脂組成物の性能試験は、次のとおり行った。
(1)メルトインデックス(MI):流動性
測定条件樹脂温260℃、荷重2.16kgにおいて、ASTM規格D−1238に準拠し測定した。
(2)アイゾット衝撃強度(IZOD):耐衝撃性
厚さ1/8インチの試験片を用いて、ASTM規格D−256に準拠し、測定温度23℃にて測定した。
(3)酸素指数(LOI):難燃性
ASTM規格D−2863に準拠し測定した。酸素指数とは、試験片が燃焼を維持するのに必要な最低酸素濃度を空気中の容量%で示した値である。
(4)熱変形温度(荷重たわみ温度):耐熱性
ASTM規格D−648に準拠し、荷重1.8MPaで測定した。熱変形温度は、耐熱性の目安を示すものである。
(5)イエローインデックス(YI):着色性
13ショット目以降の成形体を5枚作製し、日本電色工業株式会社製の分光測色計Σ90で測定面積30φ、C2光源の透過法で測定しその平均値を求めた。成形体の着色性を示すものである。
(6)耐湿熱性
耐湿熱性は、60℃、湿度95%の環境下に300時間、平板状試験片(80mm×80mm×1mm)を放置した後、目視により表面変形の有無を判定した。
○は、表面の変形が認められない。
×は、表面のふくれ、変形が認められる。
(7)成形外観
成形外観は、成形温度260℃で射出成形した平板状試験片(80mm×80mm×1mm)を目視によりシルバー発生の有無を判定した。
○は、シルバーの発生が認められない。
×は、シルバーの発生が認められる。
(8)透明性
成形体を目視により観察し透明性を判定した。
○は、透明。
△は、透明性があるが霞が有る。
×は、不透明。
また、各例で用いた各成分は次のとおりである。
(A)熱可塑性樹脂
(1)ポリカーボネート樹脂:芳香族ポリカーボネート樹脂〔(商品名)タフロンA1700、出光興産株式会社製、粘度平均分子量=17,800〕
(2)ポリ乳酸:〔(商品名)レイシアH100、三井化学株式会社製〕
(B)アシル化リグノフェノール
(1)アセチル化リグノフェノール(アルカリ処理有り、フェノール類:p−クレゾール)
アセチル化リグノフェノールの製造工程を下記[製造例1]に示す。なお、リグノフェノール抽出工程及びアルカリ処理工程について、より具体的には特開2001−64494号公報の実施例1〜2と同様に行った。
[製造例1]
〈リグノフェノール抽出工程〉
ブナの木粉をp−クレゾールを含むアセトン溶液に浸漬して、木粉にp−クレゾールを収着させた。収着後の木粉に72質量%の硫酸を添加し激しく攪拌した。攪拌停止後浄水を加え放置し、上澄みをデカンテーションする操作を6回繰り返して酸と過剰のp−クレゾールを取り除いた。容器内の沈殿物を乾燥し、これにアセトンを加え、前述の式(III)構造を有するリグノフェノールを抽出した後、アセトンを留去した。
〈アルカリ処理工程〉
上記リグノフェノールを0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液に溶解させた後、加温して1時間反応させた。その後、冷却、酸性化して析出した沈殿物を遠心分離機によって回収し、脱イオン水で洗浄、乾燥することにより、アルカリ処理を行ったリグノフェノールを得た。アルカリ処理したリグノフェノールの水酸基価をJIS K 0070−1992に準拠し測定した。
〈アセチル化工程〉
上記で得られたアルカリ処理リグノフェノール5gを、ピリジン50mLに磁気攪拌下常温で溶解させ、リグノフェノール(200g/molC6C3)の水酸基あたり14モル当量相当(50mL)の無水酢酸を磁気攪拌下注入した。アセチル基の導入率が異なる試料は投入無水酢酸量を14〜0.2当量の間で振って調製した。
注入後、25℃、暗所にて静置し、24時間経過後、反応混合液を氷浴中の800mLのイオン交換水に磁気攪拌下投入した。遠心分離(7000rpm、3℃、10分)を1回行い、沈殿を冷水500mLで洗浄後、2回目の遠心分離を行い、得られた沈殿を凍結乾燥してアシル化率100%、90%、85%、30%のアセチル化リグノフェノール(固体)をそれぞれ得た。
なお、上記アシル化率は、FT−IR(機種名:FTIR8400、株式会社島津製作所製)を用い前述の方法により算出した。
(2)アセチル化リグノフェノール(アルカリ処理なし、フェノール類:p−クレゾール)
上記[製造例1]において、アルカリ処理工程を行わず、リグノフェノールを抽出した後アセチル化工程を行い、アシル化率100%、50%のアセチル化リグノフェノールをそれぞれ得た。
(リグノフェノール)
上記[製造例1]におけるリグノフェノール抽出工程で得られたリグノフェノールを用いた。
[実施例1〜10及び比較例1〜3]
表1に示す割合(質量部)で上記各成分を配合し、押出機(機種名:VS40、田辺プラスチック機械株式会社製)に供給し、240℃で溶融混練し、ペレット化した。なお、すべての実施例及び比較例において、フェノール系酸化防止剤としてイルガノックス1076(BASF社製)0.2質量部及びリン系酸化防止剤としてアデカスタブC(株式会社ADEKA製)0.1質量部をそれぞれ配合した。得られたペレットを、120℃で12時間乾燥させ後、射出成形機(型式:IS100N、東芝機械株式会社製)シリンダー温度260℃、金型温度80℃の条件で射出成形して試験片を得た。得られた試験片を用いて性能を上記性能試験によって評価し、その結果を表1に示した。
[参考例1]
(B)成分及びリグノフェノールを用いず、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂を用いた以外は、上記実施例及び比較例と同様にして試験片を得、得られた試験片について性能を上記性能試験によって評価し、その結果を表1に示した。
表1より次のことが分った。
(1)実施例1〜9と比較例1〜2とから、(B)アシル化リグノフェノールを含有することにより、樹脂組成物の着色を抑制することができ、流動性、耐衝撃強度、難燃性、熱安定性、耐湿熱性、成形外観及び透明性が改善又は保持されることがわかる。
(2)(A)熱可塑性樹脂として芳香族ポリカーボネート樹脂/ポリ乳酸アロイを用いた実施例10と比較例3とから、(B)アシル化リグノフェノールを含有することにより、樹脂組成物の着色を抑制することができ、流動性、耐衝撃強度、難燃性、熱安定性、耐湿熱性及び成形外観が改善又は保持されることがわかる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、環境にやさしいバイオマス原料であるリグノフェノールをアシル化して使用することにより、リグノフェノールを用いた際に生じる成形加工時の着色を防止できるとともに、優れた難燃性及び耐熱性を有するものである。そして、成形外観や耐湿熱性にも優れる。さらに、アシル化リグノフェノールを使うことで、二酸化炭素排出量削減や化石原料低減等環境対応に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することができるので、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、これらの特性を必要とする分野、とりわけ電子・電気機器、情報・通信機器、OA機器や、自動車分野、建材分野等に好適に使用することができる。

Claims (5)

  1. (A)成分及び(B)成分の合計量に対し、(A)熱可塑性樹脂を99〜50質量%及び(B)下記一般式(I)で表される構造を有するリグノフェノールをアセチル化することによって得られるアセチル化リグノフェノールを1〜50質量%含む熱可塑性樹脂組成物。
    〔式中、R1及びR4はアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキル基又はフェノキシ基を示し、R2はヒドロキシアリール基又はアルキル置換ヒドロキシアリール基を示し、R3はヒドロキシアルキル基、アルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基又は−OR5(R5は水素原子、アルキル基又はアリール基を示す)を示し、水素原子以外のR1〜R5はそれぞれ置換基を有していてもよく、p及びqは0〜4の整数を示す。ただし、pが2以上である場合、複数のR1はそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、また、qが2以上である場合、複数のR4はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。〕
  2. 前記(B)成分のアセチル化率が25%以上である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記(B)成分が、アルカリ処理した前記一般式(I)で表される構造を有するリグノフェノールを、アセチル化することによって得られるアセチル化リグノフェノールである、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記(A)成分が、ポリカーボネート樹脂又はポリカーボネート樹脂とその他の熱可塑性樹脂との混合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形体。
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