JP5879677B2 - ボールねじ - Google Patents
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Description
下記の特許文献1には、ボールねじのボール戻し経路が、ボールを循環チューブのタングに衝突させてナットの外部にすくい上げる構造であると、衝突の際にボール等に付着しているグリースの油分が飛散して、ねじ軸とナットの間から外部に微粒子として放出されるため、発塵の原因になることが記載されている。この原因をなくすために、ボールねじのボール戻し経路を、ナットの軸方向に延びる貫通穴(ボール戻し通路)と、これに連続するボール循環コマで形成し、ボール循環コマを、ボールがタングに衝突しない状態で循環できる形状にすることが記載されている。
下記の特許文献2には、ボールねじのナットに設けた給油孔に吸引配管を接続して、ナットの内部に発生した塵埃を吸引除去することが記載されている。また、ねじ軸にグリースプレーティング(潤滑剤含有溶液に浸漬後、乾燥することで潤滑剤被膜を形成する方法)を施すことで、潤滑剤からの発塵を抑制することが記載されている。
この発明の課題は、ナット内部に発生した塵埃を外部に極力出さないようにして、従来のボールねじよりも高い発塵低減効果を得ることである。
この発明のボールねじは、前記ナットの内部の塵埃が外部に出る経路が、前記ナットの軸方向両端にのみ設けられた構造を有することが好ましい。このナットの軸方向両端にはリング状の非接触シールが配置されているため、前記構造を有すると、ナットとねじ軸との隙間は、ねじ軸と非接触シールとの隙間のみになる。よって、吸引穴に吸引手段を接続してナット内部を吸引している間、ナット外部の空気が非接触シールとねじ軸との隙間を通ってナット内部に入り、ナット内部の空気が非接触シールとねじ軸との隙間を通って外部に向かうことを妨げる。
前記潤滑剤としては、ちょう度が300以下の低発塵性グリースを使用することが好ましい。
また、ナットの内部に潤滑剤を供給して慣らし運転をすることにより、非接触シールとねじ軸との隙間に潤滑剤を介在させると、ねじ軸と非接触シールとの間に微小な隙間ができる。よって、この発明のボールねじは、慣らし運転を行った後に使用することで吸引効率が向上する。
図1は、第1実施形態のボールねじを示す断面図である。
図1に示すように、このボールねじは、ナット1と、ねじ軸2と、ボール3と、リング状の非接触シール4と、循環チューブ50と、環状のスペーサ6で構成されている。ナット1の内周面に螺旋溝1aが形成され、ねじ軸2の外周面に螺旋溝2aが形成されている。ナット1の螺旋溝1aとねじ軸2の螺旋溝2aで形成される軌道の間に、ボール3が配置されている。ナット1の軸方向一端にはフランジ11が形成されている。
ナット1のフランジ11以外の部分の外周に、2本の循環チューブ50を配置するための平面部12が形成されている。この平面部12に、2本の循環チューブ50を取り付けるチューブ取付穴16が形成されている。チューブ取付穴16に、循環チューブ50の脚部が差し込まれている。また、循環チューブ50はナット1に対して、図示されないチューブ抑え金具で固定されている。
ナット1の軸方向両端に、スペーサ6と非接触シール4を取り付けるための凹部14が形成されている。ナット1の凹部14内に、軸方向内側から順に、スペーサ6、非接触シール5が配置され、これらが、図示されないボルトで凹部14の端面14aに固定されている。これにより、ナット1の軸方向両端に、非接触シール4とスペーサ6とねじ軸2とで囲まれた空間46が生じる。これらの空間46が、グリ−ス(潤滑剤)溜まり空間となる。スペーサ6はナット1と一体に形成されていてもよい。
ねじ軸2の螺旋溝2aの断面形状は、研削逃げ溝が形成されていない単純なゴシックアーク形状である。これに対応させて、非接触シール4の内周部の形状を、ねじ軸2と非接触シール4とで形成される円環状隙間が周方向全体でほぼ同じになるようにしてある。
ナット1の給脂穴8の取り付け穴81に、ちょう度が300以下の低発塵グリースの給脂配管の先端を取り付け、ナット1の吸引穴7の取り付け穴71に吸引配管の先端を取り付ける。そして、先ず、給脂穴8からナット1の内部に、内部空間の1/4程度となる量の低発塵グリースを供給することで、グリ−ス溜まり空間46にグリースを溜める。
次に、慣らし運転として、ナット1をねじ軸2に対してナット1の長さ分のストロークで数回相対移動させることで、グリース溜まり空間46のグリースを移動させて、非接触シール4とねじ軸2との隙間にグリースを介在させる。これにより、非接触シール4とねじ軸2との間に微小な(0.5mm以下の)円環状の隙間が形成される。
このようにして、ナット1の内部の塵埃が効率的に吸引除去される。グリース溜まり空間46を設けたことで、非接触シール4とねじ軸2との間に微小な円環状の隙間が形成されるため、吸引効率が特に高くなる。また、非接触シール4を用いているため、ねじ軸2との接触による発塵が防止される。
なお、長期間の使用により、吸引時にナット1の内部のグリースが吸引穴7から吸引配管に入ることが考えられるが、吸引配管にグリースを溜める部分を設けて、その部分から定期的にグリースを取り除くこと等により、長期間の使用でも吸引効率を低下させないようにすることができる。
この実施形態では、ナット1の軸方向両端の凹部14に、それぞれスペーサ6を介して2枚の非接触シール41,42を取り付けている。これにより、グリース溜まり空間46が非接触シール41,42の間に形成されている。これ以外の点は第1実施形態と同じである。
図3は、参考例のボールねじを示す断面図である。
第1および第2実施形態では、ナット1の吸引穴7とは異なる位置に給脂穴8が形成され、この給脂穴8からグリースを供給しているが、この参考例では、ナット1に給脂穴8を設けず、ねじ軸2にグリースプレーティングを施すことで潤滑を行っている。これにより、図3のボールねじは、シール4とねじ軸2との隙間がほぼ一定に保持されるとともに、吸引穴7にグリースが入らない。
ねじ軸2にグリースプレーティングを施すことに代えて、固体潤滑剤からなる被膜をねじ軸2の表面に形成することによっても、上記と同様の効果を得ることができる。前記被膜をなす固体潤滑剤としては、二硫化モリブデン、有機モリブデン化合物、軟質金属(例えば、金、銀、鉛)、および高分子材料(例えば、PTFE、ポリイミド)の少なくとも1種からなるものが挙げられる。
また、これらの実施形態のボールねじは、ボール戻し通路として循環チューブ50を用いているが、ナットに設けた軸方向に延びる貫通穴(ボール戻し通路)とエンドデフレクタとでボール戻し経路を形成してもよい。また、この発明は、ボール戻し経路がエンドキャップ式、コマ式であるボールねじにも適用できる。
1a ナットの螺旋溝
11 フランジ
12 循環チューブ配置用の平面部
13 ボール戻し通路をなす貫通穴
14 シール取り付け用の凹部
14a 凹部14の端面
16 チューブ取付穴
2 ねじ軸
2a ねじ軸の螺旋溝
3 ボール
4 非接触シール
41 非接触シール
42 非接触シール
46 グリース溜まり空間
50 循環チューブ
6 スペーサ
7 吸引穴
71 取り付け部
8 給脂穴
81 取り付け部
Claims (1)
- 内周面に螺旋溝が形成されたナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道の間に配置されたボールと、ボールを軌道の終点から始点に戻すボール戻し経路とを備え、前記軌道内をボールが転動することで前記ナットがねじ軸に対して相対移動するボールねじであって、
前記軌道と前記ボール戻し経路とで構成される循環回路を複数有し、
前記ナットの軸方向両端の内周面に設けた凹部に、リング状の非接触シールが配置され、前記凹部の前記非接触シールより軸方向内側に、環状のスペーサが前記非接触シールに接触状態で配置され、前記スペーサの内径は前記非接触シールの内径より大きく、
前記ナットを径方向に貫通する吸引穴が、前記ナットの軸方向中央部に形成され、
前記ナットには、その内部に潤滑剤を供給する給脂穴が形成され、
前記吸引穴が前記給脂穴とは別の位置に形成され、
前記ナットの軸方向両端の前記非接触シールよりも軸方向内側に、前記非接触シールと前記スペーサと前記ねじ軸とで囲まれた潤滑剤溜まり空間を有し、
前記給脂穴は、前記ナットの前記潤滑剤溜まり空間より軸方向内側に形成され、
前記潤滑剤溜まり空間は、前記給脂穴から前記ナットの内部に供給されたグリースを溜める空間であって、前記潤滑剤溜まり空間に溜まったグリースが、慣らし運転時に移動して前記非接触シールと前記ねじ軸との隙間に介在することにより、前記非接触シールと前記ねじ軸との間に微小な円環状の隙間が形成されることを特徴とするボールねじ。
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