JP5867265B2 - 光学素子、光学モジュール、照明装置、投射装置および投射型映像表示装置 - Google Patents

光学素子、光学モジュール、照明装置、投射装置および投射型映像表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、入射したコヒーレント光を回折する光学素子に係り、とりわけ、入射したコヒーレント光に起因する光学素子の温度上昇を抑制することができる光学素子に関する。また本発明は、光学素子を備えた光学モジュール、照明装置、投射装置および投射型映像表示装置に関する。
スクリーン上に光を投射して映像表示を行う投射型映像表示装置は、いわゆる「光学式プロジェクタ」と呼ばれている市販品を含めて、様々な方式のものが提案されている。このような投射型映像表示装置の基本原理は、液晶マイクロディスプレイやDMD(デジタルマイクロミラーデバイス:Digital Micromirror Device)などの空間光変調器を利用して、元になる二次元画像を生成し、この二次元画像を投射光学系を利用してスクリーン上に拡大投影するというものである。例えば、高圧水銀ランプなどの白色光源を用いて液晶ディスプレイ等の空間光変調器を照明し、得られた変調画像をレンズでスクリーン上に拡大投影する光学式プロジェクタが知られている。
ところでDMDなどの空間光変調器においては、全ての光が利用されるわけではなく、一部の光は空間光変調器や光学素子によって熱として吸収される。このような発熱は、高い光束密度を有する光が用いられる場合により顕著になる。
光の吸収に起因する発熱が生じる場合であっても、空間光変調器の特性や信頼性が劣化することを防ぐため、様々な方法が提案されている。例えば特許文献1において、DMDなどの空間光変調器のうち光が入射する面とは反対側の面に設けられ、空間光変調器における発熱を吸熱する受熱部と、受熱部を冷却する冷却手段と、空間光変調器を保持する保持金具と、空間光変調器および保持金具に貼り付けられる熱伝導シートと、熱伝導シートの熱を放出するための熱拡散板および冷却部と、を備えた冷却装置が提案されている。
ところで、高圧水銀ランプなどの高輝度放電ランプは、寿命が比較的短く、光学式プロジェクタなどに利用した場合、頻繁にランプ交換を行う必要がある。また、各原色成分の光を取り出すために、ダイクロイックミラーなどの比較的大型な光学系を利用する必要があるため、装置全体が大型化するという難点がある。このような問題に対処するため、レーザ光源などのコヒーレント光源を用いる方式も提案されている。たとえば、産業上で広く利用されている半導体レーザは、高圧水銀ランプなどの高輝度放電ランプに比べて極めて長寿命である。また、単一波長の光を生成可能な光源であるため、ダイクロイックミラーなどの分光装置が不要になり、装置全体を小型化できるという利点も有する。
その一方で、レーザ光などのコヒーレント光源を用いる方式には、スペックルの発生といった新たな問題が生じている。スペックル(speckle)は、レーザ光などのコヒーレント光を散乱面に照射したときに現れる斑点状の模様であり、スクリーン上に発生すると斑点状の輝度ムラである明るさのムラとして観察され、観察者に対して生理的な悪影響を及ぼす要因になる。コヒーレント光を用いた場合にスペックルが発生する理由は、スクリーンなどの散乱反射面の各部で反射したコヒーレント光が、その極めて高い可干渉性ゆえに、互いに干渉し合うことによって生じるものとされている。たとえば、文献「Speckle Phenomena in Optics, Joseph W. Goodman, Roberts & Co., 2006」には、スペックルの発生についての詳細な理論的考察がなされている。
このように、コヒーレント光源を用いる方式では、スペックルの発生という固有の問題が生じるため、スペックルの発生を抑制するための技術が提案されている。例えば特許文献2には、空間光変調器を照明する照明装置として、ホログラム記録媒体と、ホログラム記録媒体上を走査するように、ホログラム記録媒体にコヒーレント光を照射する照射装置と、を備えた照明装置が提案されている。特許文献2においては、このような照明装置を用いて空間光変調器を照明することにより、ホログラム記録媒体から空間光変調器上の個々の点に到達する回折光の入射角度を時間とともに変化させることができる。これによって、スペックルを低減することが可能となる。
ホログラム記録媒体の干渉縞が記録される記録層は、一般に、ガラスなどの支持体上に感光性組成物を塗布することにより形成される。また記録層の上には、特許文献3に記載されているように、ガラスやフィルムなどが保護部材として設けられる。
特開2011−170013号公報 特許第4816819号公報 特開平6−301322号公報
Speckle Phenomena in Optics, Joseph W. Goodman, Roberts & Co., 2006
ホログラム記録媒体を支持するガラスや、ホログラム記録媒体を保護するガラスやフィルムなどの部材は通常、高い放熱特性を有する部材ではない。従って、ホログラム記録媒体に対して高い光束密度を有する光が照射されると、光が照射された領域の温度が高くなり、この結果、ホログラム記録媒体における光の回折特性が影響を受けてしまうことが考えられる。
本発明は、このような課題を効果的に解決し得る光学素子、光学モジュール、照明装置、投射装置および投射型映像表示装置を提供することを目的とする。
本発明による光学素子は、
コヒーレント光を回折する光学素子において、
コヒーレント光を回折するホログラム記録媒体と、
前記ホログラム記録媒体のコヒーレント光が入射する側とコヒーレント光が入射する側とは反対側の少なくとも一方に配置された透明部材と、を備え、
前記透明部材の内部に、前記ホログラム記録媒体を冷却するための冷媒が流動する冷媒流路が設けられている。
本発明による光学素子において、
前記冷媒はコヒーレント光を透過してもよい。
本発明による光学素子において、
前記冷媒は、フッ素系液体、フッ素系不活性液体、シリコーンオイル、有機溶媒、液状脂肪酸、アルコールおよび水の何れかを含んでもよい。
本発明による光学モジュールは、
コヒーレント光を回折する光学素子と、
冷媒循環装置と、を備え
前記光学素子は、コヒーレント光を回折するホログラム記録媒体と、前記ホログラム記録媒体のコヒーレント光が入射する側とコヒーレント光が入射する側とは反対側の少なくとも一方に配置された透明部材と、を有し、
前記透明部材の内部に、前記ホログラム記録媒体を冷却するための冷媒が流動する冷媒流路が設けられており、
前記冷媒循環装置は、前記透明部材の前記冷媒流路を経由して前記冷媒を循環させると共に、前記冷媒を冷却する。
本発明による照明装置は、
入射するコヒーレント光を回折する光学素子と、冷媒循環装置と、を有する光学モジュールと、
前記光学モジュールの前記光学素子にコヒーレント光を照射する照射装置と、を備え、
前記光学素子は、コヒーレント光を回折するホログラム記録媒体と、前記ホログラム記録媒体のコヒーレント光が入射する側とコヒーレント光が入射する側とは反対側の少なくとも一方に配置された透明部材と、を有し、
前記透明部材の内部に、前記ホログラム記録媒体を冷却するための冷媒が流動する冷媒流路が設けられており、
前記冷媒循環装置は、前記透明部材の前記冷媒流路を経由して前記冷媒を循環させると共に、前記冷媒を冷却し、
前記照射装置は、コヒーレント光が前記光学素子の前記ホログラム記録媒体上を走査するように、前記光学素子に前記コヒーレント光を照射し、
任意の瞬間に前記照射装置によってコヒーレント光を照射されている前記光学素子の前記ホログラム記録媒体上の領域は、前記ホログラム記録媒体の一部である。
本発明による照明装置において、前記照射装置から前記光学素子の前記ホログラム記録媒体の各位置に入射した前記コヒーレント光が、それぞれ、前記ホログラム記録媒体で回折されて少なくとも一部分において互いに重なり合う領域を照明するように、前記冷媒と前記透明部材の屈折率が設定されていると共に前記照射装置および前記光学素子が配置されていてもよい。
本発明による投射装置は、
照明装置と、
前記照明装置からのコヒーレント光によって照明される位置に配置された空間光変調器と、を備え、
前記照明装置は、コヒーレント光を回折する光学素子と、冷媒循環装置と、を有する光学モジュールと、前記光学モジュールの前記光学素子にコヒーレント光を照射する照射装置と、を備え、
前記光学素子は、コヒーレント光を回折するホログラム記録媒体と、前記ホログラム記録媒体のコヒーレント光が入射する側とコヒーレント光が入射する側とは反対側の少なくとも一方に配置された透明部材と、を有し、
前記透明部材の内部に、前記ホログラム記録媒体を冷却するための冷媒が流動する冷媒流路が設けられており、
前記冷媒循環装置は、前記透明部材の前記冷媒流路を経由して前記冷媒を循環させると共に、前記冷媒を冷却し、
前記照射装置は、コヒーレント光が前記光学素子の前記ホログラム記録媒体上を走査するように、前記光学素子に前記コヒーレント光を照射し、
任意の瞬間に前記照射装置によってコヒーレント光を照射されている前記光学素子の前記ホログラム記録媒体上の領域は、前記ホログラム記録媒体の一部である。
本発明による第1の投射型映像表示装置は、
照明装置と、前記照明装置からのコヒーレント光によって照明される位置に配置された空間光変調器と、を有する投射装置と、
前記空間光変調器上に得られる変調画像を投影されるスクリーンと、を備え、
前記照明装置は、コヒーレント光を回折する光学素子と、冷媒循環装置と、を有する光学モジュールと、前記光学モジュールの前記光学素子にコヒーレント光を照射する照射装置と、を備え、
前記光学素子は、コヒーレント光を回折するホログラム記録媒体と、前記ホログラム記録媒体のコヒーレント光が入射する側とコヒーレント光が入射する側とは反対側の少なくとも一方に配置された透明部材と、を有し、
前記透明部材の内部に、前記ホログラム記録媒体を冷却するための冷媒が流動する冷媒流路が設けられており、
前記冷媒循環装置は、前記透明部材の前記冷媒流路を経由して前記冷媒を循環させると共に、前記冷媒を冷却し、
前記照射装置は、コヒーレント光が前記光学素子の前記ホログラム記録媒体上を走査するように、前記光学素子に前記コヒーレント光を照射し、
任意の瞬間に前記照射装置によってコヒーレント光を照射されている前記光学素子の前記ホログラム記録媒体上の領域は、前記ホログラム記録媒体の一部である。
本発明による第2の投射型映像表示装置は、
照明装置と、
前記照明装置からのコヒーレント光によって照明される位置に配置されたスクリーンと、を備え、
前記照明装置は、コヒーレント光を回折する光学素子と、冷媒循環装置と、を有する光学モジュールと、前記光学モジュールの前記光学素子にコヒーレント光を照射する照射装置と、を備え、
前記光学素子は、コヒーレント光を回折するホログラム記録媒体と、前記ホログラム記録媒体のコヒーレント光が入射する側とコヒーレント光が入射する側とは反対側の少なくとも一方に配置された透明部材と、を有し、
前記透明部材の内部に、前記ホログラム記録媒体を冷却するための冷媒が流動する冷媒流路が設けられており、
前記冷媒循環装置は、前記透明部材の前記冷媒流路を経由して前記冷媒を循環させると共に、前記冷媒を冷却し、
前記照射装置は、コヒーレント光が前記光学素子の前記ホログラム記録媒体上を走査するように、前記光学素子に前記コヒーレント光を照射し、
任意の瞬間に前記照射装置によってコヒーレント光を照射されている前記光学素子の前記ホログラム記録媒体上の領域は、前記ホログラム記録媒体の一部である。
本発明によれば、ホログラム記録媒体における発熱を適切に放出することができる。
図1は、本発明による一実施の形態のうちの基本形態を説明するための図であって、基本形態の一具体例としての照明装置、投射装置および投射型映像表示装置の概略構成を示す図である。 図2は、図1に示された照明装置を示す図である。 図3は、図2の照明装置の光学素子をなすホログラム記録媒体を作製するための露光方法を説明するための図である。 図4は、図3の露光方法を経て作製されたホログラム記録媒体の作用を説明するための図である。 図5は、図1に示された照明装置の作用を説明するための斜視図である。 図6は、光学素子の冷媒流入口側の側面図である。 図7は、第1の透明基板の他側を示す平面図である。 図8は、第1の透明基板の冷媒流路の一変形例を説明するための図であって、第1の透明基板の他側を示す平面図である。 図9は、光学素子の一変形例を説明するための図であって、光学素子を対応する被照明領域とともに示す平面図である。 図10は、本発明による一実施の形態のうちの基本形態を応用した応用形態を説明するための図であって、応用形態の一具体例としての照明装置、投射装置および投射型映像表示装置の概略構成を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1〜図10は、本発明の一実施の形態に係る光学素子、照明装置、投射装置および投射型映像表示装置、並びに、その変形例を説明するための図である。このうち、図1〜図7を参照して、一実施の形態に係る光学素子、照明装置、投射装置および投射型映像表示装置について説明する。その後、図8〜図10を適宜参照しながら、一実施の形態に係る光学素子、照明装置、投射装置および投射型映像表示装置に対する変形の一例について説明する。
〔構成〕
まず、コヒーレント光を投射する照明装置および投射装置を含み且つスペックルを目立たなくさせることができる投射型映像表示装置の構成を、主として図1〜図7を参照して説明する。
図1に示す投射型映像表示装置10は、スクリーン15と、コヒーレント光からなる映像光を投射する投射装置20と、を有している。投射装置20は、仮想面上に位置する被照明領域LZをコヒーレント光で照明する照明装置40と、被照明領域LZと重なる位置に配置され照明装置40によってコヒーレント光で照明される空間光変調器30と、空間光変調器30からのコヒーレント光をスクリーン15に投射する投射光学系25と、を有している。
空間光変調器30としては、例えば、透過型の液晶マイクロディスプレイを用いることができる。この場合、照明装置40によって面状に照明される空間光変調器30が、画素毎にコヒーレント光を選択して透過させることにより、空間光変調器30をなすディスプレイの画面上に変調画像が形成されるようになる。こうして得られた変調画像(映像光)は、投射光学系25によって、等倍で或いは変倍されてスクリーン15へ投射される。これにより、変調画像がスクリーン15上に等倍で或いは変倍(通常、拡大)されて表示され、観察者は当該画像を観察することができる。
なお、空間光変調器30としては、反射型のマイクロディスプレイを用いることも可能である。この場合、空間光変調器30での反射光によって変調画像が形成され、空間光変調器30へ照明装置40からコヒーレント光が照射される面と、空間光変調器30から変調画像をなす映像光が進みでる面が同一の面となる。このような反射光を利用する場合、空間光変調器30としてDMD(Digital Micromirror Device)などのMEMS素子を用いることも可能である。
また、空間光変調器30の入射面は、照明装置40によってコヒーレント光を照射される被照明領域LZと同一の形状および大きさであることが好ましい。この場合、照明装置40からのコヒーレント光を、スクリーン15への映像の表示に高い利用効率で利用することができるからである。
スクリーン15は、透過型スクリーンとして構成されていてもよいし、反射型スクリーンとして構成されていてもよい。スクリーン15が反射型スクリーンとして構成されている場合には、観察者は、スクリーン15で反射されるコヒーレント光によって表示される映像を、スクリーン15に関して投射装置20と同じ側から観察することになる。一方、スクリーン15が透過型スクリーンとして構成されている場合、観察者は、スクリーン15を透過したコヒーレント光によって表示される映像を、スクリーン15に関して投射装置20とは反対の側から観察することになる。
ところで、スクリーン15に投射されたコヒーレント光は、拡散され、観察者に映像として認識されるようになる。この際、スクリーン上に投射されたコヒーレント光は拡散によって干渉し、スペックルを生じさせることになる。ただし、ここで説明する投射型映像表示装置10では、以下に説明する照明装置40が、時間的に角度変化するコヒーレント光で、空間光変調器30が重ねられている被照明領域LZを照明するようになっている。より具体的には、以下に説明する照明装置40は、コヒーレント光からなる拡散光で被照明領域LZを照明するが、この拡散光の入射角度が経時的に変化していく。この結果、スクリーン15上でのコヒーレント光の拡散パターンも時間的に変化するようになり、コヒーレント光の拡散で生じるスペックルが時間的に重畳されて目立たなくなる。以下、このような照明装置40について、さらに詳細に説明する。
図1および図2に示された照明装置40は、入射したコヒーレント光を回折してコヒーレント光の進行方向を被照明領域LZへ向ける光学素子50を含む光学モジュール70と、光学素子50へコヒーレント光を照射する照射装置60と、を有している。光学モジュール70は、さらに、冷媒循環装置(チラー)71と、冷媒循環チューブ72〜75と、を含む。
なお光学素子50および光学素子50の各構成要素に関する以下の説明において、「一側」は、照射装置60からのコヒーレント光が入射する側を意味しており、「他側」は、一側の反対側を意味している。図1において、光学素子50の一側の面が符号50aで示されており、また光学素子50の他側の面が符号50bで示されている。
光学素子50は、光拡散素子乃至光拡散要素として機能するホログラム記録媒体55、とりわけ、散乱板6の像5を再生し得るホログラム記録媒体55を含んでいる。図示する例では、光学素子50は、光学素子50の一側の面50aを構成する透明部材51と、コヒーレント光を回折するホログラム記録媒体55と、接着層52と、光学素子50の他側の面50bを構成する透明部材53とを有する。透明部材51は、ホログラム記録媒体55のコヒーレント光が入射する側、即ち一側に配置されている。透明部材53は、接着層52を介して、ホログラム記録媒体55のコヒーレント光が入射する側とは反対側、即ち他側に配置されている。なお「ホログラム記録媒体」とは、ホログラムが記録されている媒体のことである。
詳細には後述するが、透明部材51,53の内部に、ホログラム記録媒体55を冷却するための冷媒が流動する冷媒流路が設けられている。そして、冷媒循環装置71は、冷媒循環チューブ72,74、透明部材51,53の冷媒流入口511,531、透明部材51,53内部の冷媒流路、冷媒流出口512,532、および、冷媒循環チューブ73,75をこの順に経由して冷媒を循環させると共に、冷媒を冷却する。
透明部材51及び冷媒は、十分な透光性を有する材料から構成されている。このため、一側から光学素子50に入射する光の大半は、透明部材51及び冷媒を透過してホログラム記録媒体55に到達する。
光学素子50のホログラム記録媒体55は、照射装置60から照射されるコヒーレント光を再生照明光Laとして受けて、当該コヒーレント光を高効率で回折することができる。とりわけ、ホログラム記録媒体55は、その各位置、言い換えると、その各点とも呼ばれるべき各微小領域に入射するコヒーレント光を回折することによって、散乱板6の像5を再生することができるようになっている。
一方、照射装置60は、ホログラム記録媒体55のコヒーレント光が、光学素子50のホログラム記録媒体55上を走査するようにして、光学素子50へコヒーレント光を照射する。したがって、任意の瞬間に、照射装置60によってコヒーレント光を照射されているホログラム記録媒体55上の領域は、ホログラム記録媒体55の表面全域の一部分となっており、とりわけ図示する例では、点と呼ばれるべき微小領域となっている。
そして、照射装置60から照射されてホログラム記録媒体55上を走査するコヒーレント光は、ホログラム記録媒体55上の各位置(各点または各領域(以下、同じ))に、当該ホログラム記録媒体55の回折条件を満たすような入射角度で、入射するようになっている。照射装置60からホログラム記録媒体55の各位置に入射したコヒーレント光は、それぞれ、ホログラム記録媒体55で回折されて少なくとも一部分において互いに重なり合う領域を照明する。とりわけここで説明する形態では、照射装置60からホログラム記録媒体55の各位置に入射したコヒーレント光は、それぞれ、ホログラム記録媒体55で回折されて同一の被照明領域LZを照明するようになっている。より詳細には、図2に示すように、照射装置60からホログラム記録媒体55の各位置に入射したコヒーレント光が、それぞれ、被照明領域LZに重ねて散乱板6の像5を再生するようになっている。すなわち、照射装置60からホログラム記録媒体55の各位置に入射したコヒーレント光は、それぞれ、光学素子50で拡散されて(拡げられて)、同一の被照明領域LZに入射するようになる。なお、図2および以降で説明する図4,5では、ホログラム記録媒体55の機能の説明を明確化するために、光学素子50の各構成要素のうちホログラム記録媒体55以外の構成要素は記載を省略している。
このようなコヒーレント光の回折作用を可能にするホログラム記録媒体55として、図示する例では、フォトポリマーを用いた反射型の体積型ホログラムが用いられている。このホログラム記録媒体55は、図3に示すように、実物の散乱板6からの散乱光を物体光Loとして用いて作製されている。図3には、ホログラム記録媒体55をなすようになる感光性を有したホログラム感光材料58に、互いに干渉性を有したコヒーレント光からなる参照光Lrと物体光Loとが露光されている状態が、示されている。
参照光Lrは、例えば、特定波長域のレーザ光を発振するレーザ光源からのレーザ光が用いられており、レンズからなる集光素子7を透過してホログラム感光材料58に入射する。図3に示す例では、参照光Lrをなすようになるレーザ光が、集光素子7の光軸と平行な平行光束として、集光素子7へ入射する。参照光Lrは、集光素子7を透過することによって、それまでの平行光束から収束光束に整形(変換)され、ホログラム感光材料58へ入射する。この際、収束光束Lrの焦点位置FPは、ホログラム感光材料58を越えた位置にある。すなわち、ホログラム感光材料58は、集光素子7と、集光素子7によって集光された収束光束Lrの焦点位置FPと、の間に配置されている。
次に、物体光Loは、たとえばオパールガラスからなる散乱板6からの散乱光として、ホログラム感光材料58に入射する。ここでは作製されるべきホログラム記録媒体55が反射型なので、物体光Loは、参照光Lrとは反対側の面からホログラム感光材料58へ入射する。物体光Loは、参照光Lrと干渉性を有している必要がある。したがって、例えば、同一のレーザ光源から発振されたレーザ光を分割して、分割された一方を上述の参照光Lrとして利用し、他方を物体光Loとして使用することができる。
図3に示す例では、散乱板6の板面への法線方向と平行な平行光束が、散乱板6へ入射して散乱され、そして、散乱板6を透過した散乱光が物体光Loとしてホログラム感光材料58へ入射している。この方法によれば、通常安価に入手可能な等方散乱板を散乱板6として用いた場合に、散乱板6からの物体光Loが、ホログラム感光材料58に概ね均一な光量分布で入射することが可能となる。またこの方法によれば、散乱板6による散乱の度合いにも依存するが、ホログラム感光材料58の各位置に、散乱板6の出射面6aの全域から概ね均一な光量で参照光Lrが入射しやすくなる。このような場合には、得られたホログラム記録媒体55の各位置に入射した光が、それぞれ、散乱板6の像5を同様の明るさで再生すること、および、再生された散乱板6の像5が概ね均一な明るさで観察されることが実現され得る。
以上のようにして、参照光Lrおよび物体光Loがホログラム記録材料58に露光されると、参照光Lrおよび物体光Loが干渉してなる干渉縞が生成され、この光の干渉縞が、何らかのパターン(体積型ホログラムでは、一例として、屈折率変調パターン)として、ホログラム記録材料58に記録される。その後、ホログラム感光材料58の種類に対応した適切な後処理が施され、ホログラム記録媒体55が得られる。
図4には、図3の露光工程を経て得られたホログラム記録媒体55の回折作用(再生作用)が示されている。図4に示すように、図3のホログラム感光材料58から形成されたホログラム記録媒体55は、露光工程で用いられたレーザ光と同一波長の光であって、露光工程における参照光Lrの光路を逆向きに進む光によって、そのブラッグ条件が満たされるようになる。すなわち、図4に示すように、露光工程時におけるホログラム感光材料58に対する焦点FPの相対位置(図3参照)と同一の位置関係をなすようにしてホログラム記録媒体55に対して位置する基準点SPから発散し、露光工程時における参照光Lrと同一の波長を有する発散光束は、再生照明光Laとして、ホログラム記録媒体55に回折され、露光工程時におけるホログラム感光材料58に対する散乱板6の相対位置(図3参照)と同一の位置関係をなすようになるホログラム記録媒体55に対する特定の位置に、散乱板6の再生像5を生成する。
この際、散乱板6の再生像5を生成する再生光(再生照明光Laをホログラム記録媒体55で回折してなる光)Lbは、露光工程時に散乱板6からホログラム感光材料58へ向かって進んでいた物体光Loの光路を逆向きに進む光として散乱板6の像5の各点を再生する。そして、上述したように、また図3に示すように、露光工程時に散乱板6の出射面6aの各位置から出射する散乱光Loが、それぞれ、ホログラム感光材料58の概ね全領域に入射するように拡散している(拡がっている)。すなわち、ホログラム感光材料58上の各位置には、散乱板6の出射面6aの全領域からの物体光Loが入射し、結果として、出射面6a全体の情報がホログラム記録媒体55の各位置にそれぞれ記録されている。このため、図4に示された、再生照明光Laとして機能する基準点SPからの発散光束をなす各光は、それぞれ単独で、ホログラム記録媒体55の各位置に入射して互いに同一の輪郭を有した散乱板6の像5を、互いに同一の位置(被照明領域LZ)に再生することができる。
一方、このようなホログラム記録媒体55からなる光学素子50にコヒーレント光を照射する照射装置60は、次のように構成され得る。図1および図2に示された例において、照射装置60は、特定波長域のコヒーレント光を生成するレーザ光源61aと、レーザ光源61aからのコヒーレント光の光路を変化させる走査デバイス65と、を有している。走査デバイス65は、コヒーレント光の光路を経時的に変化させ、コヒーレント光の光学素子50への入射位置を変化させる。この結果、走査デバイス65で進行方向を変化させられるコヒーレント光が、光学素子50のホログラム記録媒体55の入射面上を走査するようになる。
図2に示された例では、走査デバイス65は、一つの軸線RA1を中心として回動可能な反射面66aを有した反射デバイス66を含んでいる。より具体的に説明すると、反射デバイス66は、一つの軸線RA1を中心として回動可能な反射面66aとしてのミラーを有したミラーデバイスとして、構成されている。そして、図2および図5に示すように、このミラーデバイス66は、ミラー66aの配向を変化させることによって、レーザ光源61aからのコヒーレント光の光路を変化させるようになっている。この際、図2に示すように、ミラーデバイス66は、概ね、基準点SPにおいてレーザ光源61aからコヒーレント光を受けるようになっている。このため、ミラーデバイス66で進行方向を最終調整されたコヒーレント光は、基準点SPからの発散光束の一光線をなし得る再生照明光La(図4参照)として、光学素子50のホログラム記録媒体55へ入射し得る。結果として、照射装置60からのコヒーレント光がホログラム記録媒体55上を走査するようになり、且つ、ホログラム記録媒体55上の各位置に入射したコヒーレント光が同一の輪郭を有した散乱板6の像5を同一の位置(被照明領域LZ)に再生するようになる。
なお、図2に示されたミラーデバイス66は、一つの軸線RA1に沿ってミラー66aを回動させるように、構成されている。図5は、図2に示された照明装置40の構成を斜視図として示している。図5に示された例では、ミラー66aの回動軸線RA1は、ホログラム記録媒体55の板面上に定義されたXY座標系(つまり、XY平面がホログラム記録媒体55の板面と平行となるXY座標系)のY軸と、平行に延びている。そして、ミラー66aが、ホログラム記録媒体55の板面上に定義されたXY座標系のY軸と平行な軸線RA1を中心として回動するため、照射装置60からのコヒーレント光の光学素子50への入射点IPは、ホログラム記録媒体55の板面上に定義されたXY座標系のX軸と平行な方向に往復動するようになる。すなわち、図5に示された例では、照射装置60は、コヒーレント光がホログラム記録媒体55上を直線経路に沿って走査するように、光学素子50にコヒーレント光を照射する。
このような照射装置60からホログラム記録媒体55の各位置に入射したコヒーレント光は、それぞれ、同一の被照明領域LZの全域をコヒーレント光で照明するが、当該被照明領域LZを照明するコヒーレント光の照明方向は互いに異なる。そして、コヒーレント光が入射するホログラム記録媒体55上の位置が経時的に変化するため、図1に矢印A1で示すように、被照明領域LZへのコヒーレント光の入射方向も経時的に変化する。結果として、空間光変調器30の透過光によって形成された映像の各画素をなす光が、図1に矢印A2で示すように経時的に光路を変化させながら、スクリーン15の特定の位置に投射されるようになる。このため、人間の目には、相関の無いコヒーレント光の散乱パターンが多重化されて観察されることになる。したがって、各散乱パターンに対応して生成されたスペックルが重ねられ平均化されて、観察者に観察されることになる。これにより、スクリーン15に表示されている映像を観察する観察者に対して、スペックルを極めて効果的に目立たなくさせることができる。
ところで、光学素子50のホログラム記録媒体55へ入射するコヒーレント光の波長は、図3の露光工程(記録工程)で用いた光の波長と厳密に一致させる必要はなく、露光工程で用いた光の波長から多少ずれていても被照明領域LZに像5を実質的に再生することができる。そもそも、実際上の問題として、ホログラム記録媒体55を作成する際、ホログラム感光材料58が収縮する場合があり、このような場合には、むしろ、ホログラム感光材料58の収縮を考慮して、ホログラム記録媒体55を作製する際、コヒーレント光の入射角度が調整されていた方が良い。このような点から、コヒーレント光源61aで生成するコヒーレント光の波長は、図3の露光工程(記録工程)で用いた光の波長と厳密に一致させる必要はなく、ほぼ同一となっていればよい。
同様に、光学素子50のホログラム記録媒体55へ入射するコヒーレント光の進行方向も、基準点SPからの発散光束に含まれる一光線と厳密に同一の経路を取っていなくとも、被照明領域LZに像5を実質的に再生することができる。実際に、図2および図5に示す例では、走査デバイス65をなすミラーデバイス66のミラー(反射面)66aは、必然的に、その回動軸線RA1からずれる。したがって、基準点SPを通過しない回動軸線RA1を中心としてミラー66aを回動させた場合、ホログラム記録媒体55へ入射する光は、基準点SPからの発散光束をなす一光線とはならないことがある。しかしながら、実際には、図示された構成の照射装置60からのコヒーレント光によって、被照明領域LZに重ねて像5を実質的に再生することができる。
また、前述のように、コヒーレント光は透明媒体51及びその内部の冷媒を透過してホログラム記録媒体55へ入射することになる。そのため、透明媒体51と冷媒の屈折率が異なる場合、ホログラム記録媒体55へ入射する光は、基準点SPからの発散光束をなす一光線とはならない。しかしながら、実際には、透明媒体51と冷媒の屈折率が同等であれば、図示された構成の照射装置60からのコヒーレント光によって、被照明領域LZに重ねて像5を実質的に再生することができる。即ち、ホログラム記録媒体55の各位置に入射したコヒーレント光が、それぞれ、ホログラム記録媒体55で回折されて少なくとも一部分において互いに重なり合う領域を照明するように、透明部材51と冷媒の屈折率が設定されていればよい。
ところで上述のように、本実施の形態において、任意の瞬間に、照射装置60によってコヒーレント光を照射されているホログラム記録媒体55上の領域(位置)は、ホログラム記録媒体55の一部分となっている。また上述のように、各瞬間にホログラム記録媒体55上の各位置に入射したコヒーレント光によって、同一の輪郭を有した散乱板6の像5が同一の位置(被照明領域LZ)に再生される。従って本実施の形態においては、平均的には、各瞬間に散乱板6の像5全域を再生するために必要とされる光のエネルギーが、各瞬間にホログラム記録媒体55上の各位置に入射したコヒーレント光のエネルギーによって得られることになる。従って本実施の形態においては、各瞬間にホログラム記録媒体55の全域にコヒーレント光が照射される場合に比べて、ホログラム記録媒体55に照射されるコヒーレント光の光束密度が高くなっている。
ホログラム記録媒体55に入射したコヒーレント光は、大部分は回折され、その他の部分はホログラム記録媒体55を透過したりホログラム記録媒体55によって熱として吸収されたりする。ここで、ホログラム記録媒体55に照射されるコヒーレント光の光束密度が高い場合、ホログラム記録媒体55の各領域において熱として吸収されるコヒーレント光のエネルギーも大きくなる。ここで本実施の形態においては、ホログラム記録媒体55の一側及び他側に、内部を冷媒が流動する透明部材51,53を配置することにより、ホログラム記録媒体55の温度上昇を抑制することができる。以下、透明部材51,53を備えた光学素子50の構造について、図6および図7を参照して詳細に説明する。
図6は、図1に示された光学素子50の冷媒流入口511,531側の側面図である。上述の特許文献3に記載されているように、ホログラム記録媒体を有する一般的な光学素子において、ホログラム記録媒体の両側には、ガラスなどの支持体や、ガラスやフィルムなどからなる保護部材が配置されている。一方、本実施の形態においては、図6に示すように、ホログラム記録媒体55の一側には、透明部材51が配置されていると共に、ホログラム記録媒体55の他側には、接着層52を介して透明部材53が配置されている。これらの透明部材51,53は、内部にホログラム記録媒体55を冷却するための冷媒が流動するよう構成されている。このような透明部材51,53を設けることにより、ホログラム記録媒体55において発生する熱を適切に外部に放出することができ、これによって、入射光に起因する発熱によってホログラム記録媒体55の温度が上昇することを抑制することができる。
図6に示すように、透明部材51は、一側の第1の透明基板51aと、他側の第2の透明基板51bとを有する。第1の透明基板51a及び第2の透明基板51bは、例えば、ガラスや樹脂材料などから構成されている。第1の透明基板51aは、第2の透明基板51bと接する他側の面に、後述する形状の冷媒流路が設けられている。冷媒流路は、冷媒流入口511及び冷媒流出口512を有している。冷媒流入口511は、第1の透明基板51aの側面51a1に開口して、冷媒流出口512は、第1の透明基板51aの側面51a1と対向する側面に開口している。
同様に、透明部材53は、他側の第1の透明基板53aと、一側の第2の透明基板53bとを有する。本実施の形態では、透明部材51と透明部材53は、対称な構造を有しているため、透明部材53の詳細な説明は省略する。
図7は、第1の透明基板51aの他側を示す平面図である。図7に示すように、長方形状の第1の透明基板51aの他側には、長方形状の溝構造(凹部)から構成される冷媒流路513が設けられている。前述のように、冷媒流路513は、同様に溝構造から構成される冷媒流入口511及び冷媒流出口512を有し、冷媒流入口511は第1の透明基板51aの側面51a1に開口し、冷媒流出口512は側面51a1と対向する側面51a2に開口している。第1の透明基板51aの端部、即ち冷媒流路513が設けられていない部分には、冷媒流入口511及び冷媒流出口512の部分を除き、凸状の枠部分514,514が設けられている。
各部の寸法は、ホログラム記録媒体55の寸法、ホログラム記録媒体55において想定される発熱、および、ホログラム記録媒体55の耐熱特性などに応じて適宜設定される。例えば、第1の透明基板51aの長辺方向の長さL1は50mmであり、短辺方向の幅W1は30mmである。冷媒流路513の長辺方向の長さL2は44mmであり、短辺方向の幅W2は24mmである。このような寸法の場合、第1の透明基板51aの大部分に冷媒流路513が形成されているため、第1の透明基板51aとほぼ同じ寸法のホログラム記録媒体55の一側の面を効率的に冷却できる。また、例えば、冷媒流入口511及び冷媒流出口512の幅W3は、5mmである。また、第1の透明基板51aの厚さは、5mm以上であり、冷媒流路513の深さは、(第1の透明基板51aの厚さ−1mm)以下であることが好ましい。例えば、第1の透明基板51aの厚さは6mmであり、冷媒流路513の深さは4mmである。
枠部分514の他側の表面には、変形しやすい材料からなるシール部515が設けられている。第1の透明基板51aの枠部分514,514の他側の表面を第2の透明基板51bの一側に接着剤などを用いて接合することで、内部に冷媒流路513が設けられた透明部材51が形成される。第1の透明基板51aと第2の透明基板51bの接合面にシール部515が存在することにより、この接合面から透明部材51の外部に冷媒が漏れにくくなる。
前述したように、図1に示す冷媒循環装置71は、冷媒循環チューブ72,74、透明部材51,53の冷媒流入口511,531、冷媒流路513、冷媒流出口512,532、および、冷媒循環チューブ73,75をこの順に経由して冷媒を循環させると共に、冷媒を冷却する。これにより、ホログラム記録媒体55で発生した熱は、冷媒流路内の冷却された冷媒に移動する。
冷媒は、コヒーレント光を透過する液体からなる。また、前述のように、冷媒は、第1及び第2の透明基板51a,51b,53a,53bの屈折率と同等の屈折率を有していることが好ましい。一例として、冷媒は、フッ素系液体、フッ素系不活性液体、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル、有機溶媒、カーギル標準屈折液、液状脂肪酸、水およびアルコール等の何れかを含む。上記有機溶媒は、イソオクタン、シクロへキサン、トルエン、2.4-ジクロロトルエン、ジベンジルエーテルおよび1-ブロモナフタレンなどの何れかを含む。
また、冷媒の流量は、ホログラム記録媒体55にコヒーレント光が照射されている間に冷媒の温度が安定するように、即ち、ホログラム記録媒体55の温度が上昇し過ぎないように、適宜設定すればよい。
上述の第1及び第2の透明基板51a,53aの溝構造を作製する方法が特に限られることはなく、フォトリソグラフィーやエッチングなど、公知の方法が適宜用いられ得る。
なお、本実施の形態の場合、反射型のホログラム記録媒体55の裏面側に配置された透明部材53は、コヒーレント光が透過する必要はないため、透明でなくてもよい。
上述してきた本実施の形態によれば、次の利点を享受することができる。
上述のように、コヒーレント光は、ホログラム記録媒体55上を走査するようにして、光学素子50に照射される。従って、ホログラム記録媒体55はコヒーレント光のエネルギーによって発熱するようになる。特に、投射型映像表示装置10におけるスクリーン15、つまり、照明装置40における被照明領域LZは十分に明るいことが好ましいので、高い光束密度を有するコヒーレント光が用いられる。これにより、ホログラム記録媒体55の発熱量が増加する。ここで、本実施の形態によれば、ホログラム記録媒体55の一側及び他側に、内部を冷媒が流動する透明部材51,53が設けられている。そして、透明部材51,53の冷媒流路を経由して冷媒を循環させるようにしている。このため、ホログラム記録媒体55において発生した熱を適切に外部に放出することができる。
これに対して、このような透明部材51,53が設けられていない場合、以下のような問題が発生し得る。即ち、継続的な発熱によってホログラム記録媒体55が徐々に劣化していき、やがて損傷する可能性がある。また、継続的な発熱によってホログラム記録媒体55が徐々に膨張あるいは収縮して干渉縞が変化したり、分子の拡散移動が起こり干渉縞のコントラストが低下する可能性もあり、これによりホログラム記録媒体55で回折された光が被照明領域LZ以外に拡散することで、輝度や精度が低下していく可能性がある。このように、熱によってホログラム記録媒体55の耐久性が低下する可能性がある。本実施の形態によれば、これらの不具合を効果的に防止することができ、ホログラム記録媒体55の耐久性を向上させることができる。
従って、照明装置40、投射装置20及び投射型映像表示装置10においても、このような透明部材51,53を有する光学素子50を備えていることにより、各装置における輝度や精度の劣化を防止すると共に各装置の耐久性を向上させることができる。
〔変形例〕
図1〜7に例示された一具体例に基づいて説明してきた本実施の形態に対して、種々の変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明で用いる図面では、上述した本実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いており、重複する説明を省略する。
(透明部材)
ホログラム記録媒体55において想定される発熱や、ホログラム記録媒体55の耐熱特性などに応じて、透明部材51,53は、ホログラム記録媒体55の一側と他側の何れか一方に配置されてもよい。この場合、透明部材が設けられない側には、ガラスやフィルムなどからなる保護部材が配置されればよい。
(冷媒流路)
冷媒流路513の形状は、冷媒がスムースに循環し、且つ、ホログラム記録媒体55のコヒーレント光が照射される部分を中心にホログラム記録媒体55の全体を冷却可能な形状であれば、上述した実施の形態に限られない。例えば、次の様な形状でもよい。
図8は、第1の透明基板51aの冷媒流路513の一変形例を説明するための図であって、第1の透明基板51aの他側を示す平面図である。図8に示すように、溝構造(凹部)から構成される冷媒流路513は蛇行している。つまり、図8の第1の透明基板51aは、図7に示した第1の透明基板51aに凸状の区画部分516A〜516Dを設けて冷媒流路513が蛇行するように構成したものである。図示する例では、側面51a1側の枠部分514から、対向する側面51a2側の枠部分514の手前まで、区画部分516Bと区画部分516Dが延在している。側面51a2側の枠部分514から、対向する側面51a1側の枠部分514の手前まで、区画部分516Aと区画部分516Cが延在している。区画部分516Aと区画部分516Cは、区画部分516Bと区画部分516Dに対して互い違いに配置されている。
前述のように、各部の寸法は、ホログラム記録媒体55の寸法、ホログラム記録媒体55において想定される発熱、および、ホログラム記録媒体55の耐熱特性などに応じて適宜設定される。例えば、冷媒流入口511及び冷媒流出口512の幅W4が4mmである点が、図7の構造と異なり、他の長さL1,L2や幅W1,W2は、図7の構造と同一でもよい。このような構成でも、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
(照明装置)
図9に示すように、光学素子50が、重ならないようにして並べて配置された複数のホログラム記録媒体55−1,55−2,・・・を含んでいても良い。図9に示された各ホログラム記録媒体55−1,55−2,・・・は、それぞれ短冊状に形成され、その長手方向と直交する方向に、隙間無く並べて配列されている。また、各ホログラム記録媒体55−1,55−2,・・・は、互いに同一の仮想面上に位置している。各ホログラム記録媒体55−1,55−2,・・・は、それぞれ、重ならないようにして並べて配置された被照明領域LZ−1,LZ−2,・・・に散乱板6の像5を生成する、言い換えると、被照明領域LZ−1,LZ−2,・・・にコヒーレント光を照明するようになっている。各被照明領域LZ−1,LZ−2,・・・は、一方向に延びる細長い領域(線状とも呼ばれるような領域)として形成され、その長手方向と直交する方向に、隙間無く並べて配列されている。また、各被照明領域LZ−1,LZ−2,・・・は、互いに同一の仮想面上に位置している。
図9に示された例では、次のようにして、被照明領域LZ−1,LZ−2,・・・を照明するようにしてもよい。まず、照射装置60は、コヒーレント光が第1のホログラム記録媒体55−1の長手方向(前記一方向)に沿った経路を繰り返し走査するように、光学素子50の第1のホログラム記録媒体55−1へ当該コヒーレント光を照射する。第1のホログラム記録媒体55−1の各位置に入射したコヒーレント光は、それぞれ、第1の照明領域LZ−1に重ねて線状あるいは細長状の散乱板6の像5を再生し、当該第1の照明領域LZ−1をコヒーレント光で照明するようになる。所定の時間が経過すると、照射装置60は、第1のホログラム記録媒体55−1に隣接する第2のホログラム記録媒体55−2上にコヒーレント光を照射し、第1の被照明領域LZ−1に代えて、第1の被照明領域LZ−1に隣接する第2の被照明領域LZ−2をコヒーレント光で照明する。以下、順に各ホログラム記録媒体にコヒーレント光を照射して、当該ホログラム記録媒体に対応する被照明領域をコヒーレント光で照明していく。このような方法によれば、照明装置を移動させることなく、二次元的な像情報を読み取ることが可能となる。また本変形例においても、各ホログラム記録媒体55−1,55−2,・・・の一側及び他側に透明部材51,53を設けることにより、各ホログラム記録媒体55−1,55−2,・・・において発生した熱を適切に外部に放出することができる。
(投射型映像表示装置)
また、ホログラム記録媒体55が、空間光変調器30の入射面に対応した形状を有した平面状の散乱板6を用いて、干渉露光法により作製される例を示したが、これに限られず、ホログラム記録媒体55が、何らかのパターンを有した散乱板を用いて、干渉露光法により作製されてもよい。この場合、ホログラム記録媒体55によって、何らかのパターンを持った散乱板の像が再生されるようになる。言い換えると、ホログラム記録媒体55を有する光学素子50は、何らかのパターンを持った被照明領域LZを照明するようになる。この光学素子50を用いる場合、空間光変調器30を、さらには投射光学系25をも上述の本実施の形態における投射型映像表示装置10から省き、スクリーン15を被照明領域LZと重なる位置に配置することによって、スクリーン15上にホログラム記録媒体55に記録された何らかのパターンを表示することが可能となる。この表示装置においても、コヒーレント光がホログラム記録媒体55上を走査するように、照射装置60が光学素子50にコヒーレント光を照射することによって、スクリーン15上でのスペックルを目立たなくさせることができる。
(光学素子のホログラム記録媒体)
上述した形態において、光学素子50の反射型のホログラム記録媒体55が、フォトポリマーを用いた体積型ホログラム55からなる例を示したが、これに限られない。既に説明したように、光学素子50は複数のホログラム記録媒体55を含んでいてもよい。また、光学素子50は、銀塩材料を含む感光媒体を利用して記録するタイプの体積型ホログラムを含んでもよい。さらに、光学素子50は、透過型の体積型ホログラム記録媒体を含んでいてもよいし、レリーフ型(エンボス型)のホログラム記録媒体を含んでいてもよい。
ただし、レリーフ(エンボス)型ホログラムは、表面の凹凸構造によってホログラム干渉縞の記録が行われる。しかしながら、このレリーフ型ホログラムの場合、表面の凹凸構造による散乱が、新たなスペックル生成要因となる可能性があり、この点において体積型ホログラムの方が好ましい。体積型ホログラムでは、媒体内部の屈折率変調パターン(屈折率分布)としてホログラム干渉縞の記録が行われるため、表面の凹凸構造による散乱による影響を受けることはない。
もっとも、体積型ホログラムでも、銀塩材料を含む感光媒体を利用して記録するタイプのものは、銀塩粒子による散乱が新たなスペックル生成要因となる可能性がある。この点において、ホログラム記録媒体55としては、フォトポリマーを用いた体積型ホログラムの方が好ましい。
また、図3に示す露光工程では、いわゆるフレネルタイプのホログラム記録媒体が作成されることになるが、レンズを用いた記録を行うことにより得られるフーリエ変換タイプのホログラム記録媒体を作成してもかまわない。ただ、フーリエ変換タイプのホログラム記録媒体を用いる場合には、像再生時にもレンズを使用してもよい。
また、ホログラム記録媒体55に形成されるべき縞状パターン(屈折率変調パターンや凹凸パターン)は、現実の物体光Loおよび参照光Lrを用いることなく、予定した再生照明光Laの波長や入射方向、並びに、再生されるべき像の形状や位置等に基づき計算機を用いて設計されてもよい。このようにして得られたホログラム記録媒体55は、計算機合成ホログラムとも呼ばれる。また上述した変形例のように波長域の互いに異なる複数のコヒーレント光が照射装置60から照射される場合には、計算機合成ホログラムとしてのホログラム記録媒体55は、各波長域のコヒーレント光にそれぞれ対応して設けられた複数の領域に平面的に区分けされ、各波長域のコヒーレント光は対応する領域で回折されて像を再生するようにしてもよい。
(変形例の組み合わせ)
なお、以上において上述した基本形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
<応用形態>
〔応用形態の構成および応用形態の作用〕
次に、上述してきた基本形態を応用してなる応用形態について、図10に例示された照明装置40、投射装置20および投射型映像表示装置10を参照しながら、説明する。以下の説明では、上述の基本形態に追加される点についてのみ説明し、上述の基本形態と同様に構成され得るその他の部分については、図10において上述の基本形態と同様の符号を付して、重複説明を省略する。
上述した基本形態において、照射装置60は、コヒーレント光を生成する単一の光源61aのみを有する例を示した。単一の光源61aから生成されるコヒーレント光は、レーザ光に代表されるように、典型的には、狭波長帯域の光であって単色光となる。また、実質的に使用可能な光源、すなわち、安価に入手することができ且つ十分な出力を有した光源から発生されるコヒーレント光は、特定の波長(域)の光に限定される。すなわち、種々の色の光を、単一の光源からの光で表示することはできない。その一方で、今日における多くの場合、単一の光源では表示することのできない所望の色や、複数の色、典型的にはフルカラーで、被照明領域を照明する或いは映像を表示することが望まれている。図10に示された形態は、このような点を考慮して、上述の基本形態を応用したものである。
応用形態では、照射装置60が、互いに異なる波長域の複数のコヒーレント光を合成してなる合成光SLを光学素子50に照射するようになっている。図10に示された例では、照射装置60は、第1波長域の第1コヒーレント光Laと、第1波長域とは異なる第2波長域の第2コヒーレント光Lbと、第1波長域および第2波長域の両方と異なる第3波長域の第3コヒーレント光Lcと、を合成してなる合成光SLを照射する。とりわけ以下においては、第1波長域が第1の原色成分(例えば、赤色成分)に対応し、第2波長域が第2の原色成分(例えば、緑色成分)に対応し、且つ、第3波長域が第3の原色成分(例えば、青色成分)に対応して、照射装置60が、第1〜第3の原色成分の加法混色によって、白色光を照射する例について、説明する。
図10に示す例において、照射装置60は、上述した走査デバイス65と、合成光SLを生成する光源機構61と、を有している。光源機構61は、各コヒーレント光の波長域に対応した波長域のコヒーレント光をそれぞれ発振する複数の光源61a,61b,61cと、複数の光源61a,61b,61cからのコヒーレント光を合成する合成デバイス62と、を有している。光源機構61には、複数の光源として、第1波長域の第1コヒーレント光Laを発振する第1光源61aと、第2波長域の第2コヒーレント光Lbを発振する第2光源61bと、第3波長域の第3コヒーレント光Lcを発振する第3光源61cと、が設けられている。一方、合成デバイス62として、二つの光を合成する種々の部材、部品、装置等を用いることができる。図示する例においては、クロスダイクロックプリズム等と比較して安価で小型であるといった利点を有するハーフミラーが、合成デバイス62として用いられている。
図10に示す例において、光学素子50は、合成光を回折して被照明領域LZを照明する反射型の体積型ホログラムからなるホログラム記録媒体55を含んでいる。ただし、反射型の体積型ホログラムは、強い波長選択性を有している。このため、図示された光学素子50のホログラム記録媒体55は、各波長域のコヒーレント光にそれぞれ対応して設けられた第1〜第3ホログラム要素55a,55b,55cを含んでいる。第1ホログラム要素55aは、第1波長域の第1コヒーレント光Laに対応して設けられ、第2ホログラム要素55bは、第2波長域の第2コヒーレント光Lbに対応して設けられ、第3ホログラム要素55cは、第3波長域の第3コヒーレント光Lcに対応して設けられている。
第1〜第3ホログラム要素55a,55b,55cの各々は、散乱板6の像5を再生することができる。とりわけ、第1ホログラム要素55aが第1波長域の第1コヒーレント光Laを再生照明光として回折することによって、第2ホログラム要素55bが第2波長域の第2コヒーレント光Lbを再生照明光として回折することによって、さらに、第3ホログラム要素55cが第3波長域の第3コヒーレント光Lcを再生照明光として回折することによって、互いに同一の散乱板6の像5が再生され得るようになっている。
なお、各波長域のコヒーレント光用のホログラム要素55a,55b,55cは、例えば、図3および図4を参照しながら既に説明した方法において、露光用の光(参照光Lrおよび物体光Lo)として、対応する波長域のコヒーレント光を用いることにより、作製され得る。
図10に示すように、ホログラム記録媒体55の第1〜第3ホログラム要素55a,55b,55cは互いに積層されている。そして、上述した基本形態と同様に、照射装置60が合成光SLを光学素子50に照射した場合には、合成光SLがホログラム記録媒体55上を走査する。この結果、合成光SLのうちの少なくとも第1コヒーレント光Laが第1ホログラム要素55a上を走査し、合成光SLのうちの少なくとも第2コヒーレント光Lbが第2ホログラム要素55b上を走査し、合成光SLのうちの少なくとも第3コヒーレント光Lcが第3ホログラム要素55c上を走査するようになる。そして、照射装置60からホログラム記録媒体55の各位置に入射した合成光SLの第1コヒーレント光Laが、それぞれ、被照明領域LZに重ねて像5を再生し、照射装置60からホログラム記録媒体55の各位置に入射した合成光SLの第2コヒーレント光Lbが、それぞれ、前記被照明領域LZに重ねて像5を再生し、且つ、照射装置60からホログラム記録媒体55の各位置に入射した合成光SLの第3コヒーレント光Lcが、それぞれ、前記被照明領域LZに重ねて像5を再生するように、光学素子50および照射装置60が位置決めされている。
図10に示された応用形態では、照射装置60からの合成光SLが光学素子50に入射すると、合成光をなす各波長域のコヒーレント光(第1〜第3コヒーレント光)La,Lb,Lcによって、それぞれ、被照明領域LZに重ねて散乱板6の像5が再生されるようになる。結果として、被照明領域LZは、第1〜第3コヒーレント光La,Lb,Lcの加法混色によって得られる色に照明されることになる。すなわち、本例では、照明装置60は、白色光で被照明領域LZを照明することになる。
そして、投射装置20または透過型映像表示装置10において、空間光変調器30が、例えばカラーフィルタを含んでおり、各波長域のコヒーレント光La,Lb,Lc毎に変調画像の形成が可能である場合には、複数色で映像を表示すること、更にはフルカラーで映像を表示することが可能となる。また、空間光変調域がカラーフィルタを含んでいなくとも、照射装置60が各波長域のコヒーレント光La,Lb,Lcを時分割で、すなわち、コヒーレント光La,Lb,Lcを細かい時間単位で順繰りに照射し、且つ、空間光変調器30が、照射されている波長域のコヒーレント光に対応した変調画像を形成するように時分割で作動するようにしてもよい。このような例においても、時分割動作が人間の目で検出不可能な程度に高速であれば、人間に目で観察した場合に、複数色で映像が表示されること、更にはフルカラーで映像が表示されることを可能にすることができる。
また、図10に示された応用形態によれば、上述した基本形態と同様に、光学素子50のホログラム要素55a,55b,55cで回折された各コヒーレント光La,Lb,Lcの被照明領域LZの各位置への入射方向は、連続的に変化する。これにともなって、投射装置20から投射される第1〜第3コヒーレント光La,Lb,Lcからなる映像光のスクリーン15上の各位置への入射方向も、連続的に変化する。このため、基本形態で既に説明したように、無相関なスペックルパターンが重畳されて平均化され、結果として、観察者の目によって観察されるスペックルを目立たなくさせることができる。
加えて、図10に示された形態では、第1〜第3コヒーレント光La,Lb,Lcが、同時に被照明領域LZを照明し、また、同時にスクリーン15に投射されるようになる。この第1〜第3コヒーレント光La,Lb,Lcは、互いに異なる光源61a,61b,61cで生成され、このため、互いに干渉性を有していない。すなわち、各コヒーレント光La,Lb,Lcに起因するスペックルパターンは無相関であり、この無相関なスペックルパターンがスクリーン15で重畳されて平均化される。このため、図10に示された応用形態では、スペックルパターンを更に目立たなくさせることができる。
また図10に示された応用形態においても、第1〜第3ホログラム要素55a,55b,55cを含むホログラム記録媒体55の一側及び他側には透明部材51,53が設けられている。また、冷媒循環装置71は、透明部材51,53の冷媒流路を経由して冷媒を循環させると共に、冷媒を冷却するようになっている。このため、ホログラム記録媒体55の第1〜第3ホログラム要素55a,55b,55cにおいて発生した熱を適切に外部に放出することができる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
第2の透明基板51bとして、厚さ1mmの青板ガラスを準備した。次に、第2の透明基板51bの他側の面上にホログラム感光材料58を設けた。ホログラム感光材料58としては、上述の特許文献3に記載されている、体積ホログラム記録用感光性組成物を用いた。次に、ホログラム感光材料58に向けて物体光および参照光を照射し、これによって、第2の透明基板51b上にホログラム記録媒体55を形成した。
また、第1の透明基板51a,53aとして、厚さ6mmの青板ガラスを準備した。次に、第1の透明基板51a,53aの表面に、上述の図7の溝構造、即ち冷媒流路513を形成した。
次に、第2の透明基板53bとして、厚さ1mmの青板ガラスを準備した。次に、第2の透明基板51b上に形成されたホログラム記録媒体55と、第2の透明基板53bとを、NOA61から構成された接着層52を用いて接着した。
そして、NOA61を用いて、第2の透明基板51bと第1の透明基板51aとを接合すると共に、第2の透明基板53bと第1の透明基板53aとを接合した。
このようにして、透明部材51、ホログラム記録媒体55および透明部材53を備えた光学素子50を作製した。なおNOA61は、アクリル系UV硬化性樹脂を含む接着剤であり、1.56の屈折率を有している。接着層52の厚みは50μmとなっていた。
上述のようにして作製された光学素子50の冷媒流路に、冷媒循環装置71を用いて、冷媒としてメチルフェニルシリコーンオイル(屈折率:1.49)を循環させた。
次に、常温下において、光学素子50のホログラム記録媒体55上の一領域に、1.6W/mmの光束密度を有するレーザ光を1時間にわたって照射した。この際、レーザ光のビーム径は約1mmであった。
レーザ光を1時間にわたって照射した後の光学素子50を、サーモグラフィーを用いて観察した。その結果、光学素子50上の各領域の最大温度は約30℃となっていた。また光学素子50に、他の領域に比べて顕著に温度が高くなっている領域、いわゆるヒートスポットは観察されなかった。なおサーモグラフィー観察のための装置としては、NEC AVIO赤外線テクノロジー社製のサーモギアG100を用いた。
(実施例2)
冷媒としてメチルフェニルシリコーンオイルに代えてカーギル標準屈折液(屈折率:1.52)を用いたこと以外は、実施例1の場合と同様にして、光学素子50のホログラム記録媒体55上の一領域にレーザ光を照射した。その後、サーモグラフィーを用いて光学素子50を観察した。結果、光学素子50上の各領域の最大温度は約30℃となっていた。また、ヒートスポットは観察されなかった。
(実施例3)
冷媒としてメチルフェニルシリコーンオイルに代えてトルエン(屈折率:1.49)を用いたこと以外は、実施例1の場合と同様にして、光学素子50のホログラム記録媒体55上の一領域にレーザ光を照射した。その後、サーモグラフィーを用いて光学素子50を観察した。結果、光学素子50上の各領域の最大温度は約30℃となっていた。また、ヒートスポットは観察されなかった。
(実施例4)
第1の透明基板51a,53aとして、図8の溝構造を有する透明基板を用いたこと以外は、実施例1の場合と同様にして、光学素子50のホログラム記録媒体55上の一領域にレーザ光を照射した。その後、サーモグラフィーを用いて光学素子50を観察した。結果、光学素子50上の各領域の最大温度は約30℃となっていた。また、ヒートスポットは観察されなかった。
(比較例1)
第1の透明基板51a,53aを配置しないこと以外は、実施例1の場合と同様にして、ホログラム記録媒体55を含む光学素子を作製した。そして、冷媒を用いずに、実施例1の場合と同様にして、作製された光学素子のホログラム記録媒体55上の一領域にレーザ光を照射した。その後、サーモグラフィーを用いて光学素子を観察した。その結果、光学素子に、他の領域に比べて顕著に温度が高くなっている領域、いわゆるヒートスポットが観察された。ヒートスポットの温度は約50℃であった。つまり、ホログラム記録媒体55の表面に熱分布が顕著に生じていた。
実施例1〜4と比較例1との比較から明らかなように、第1の透明基板51a,53aを配置することで構成された冷媒流路513を経由して冷媒を循環させることにより、ホログラム記録媒体55の温度上昇を抑制することができた。また、ホログラム記録媒体55上にヒートスポットが生成されることを防ぐことができた。
5 像
6 散乱板
10 投射型映像表示装置
15 スクリーン
20 投射装置
25 投射光学系
30 空間光変調器
40 照明装置
50 光学素子
50a 一側の面
50b 他側の面
51,53 透明部材
51a,53a 第1の透明基板
51b,53b 第2の透明基板
511,531 冷媒流入口
512,532 冷媒流出口
513 冷媒流路
52 接着層
55 ホログラム記録媒体
58 ホログラム感光材料
60 照射装置
61a 光源
65 走査デバイス
66 ミラーデバイス(反射デバイス)
66a ミラー(反射面)
70 光学モジュール
71 冷媒循環装置
72〜75 冷媒循環チューブ
LZ 被照明領域

Claims (9)

  1. コヒーレント光を回折する光学素子において、
    コヒーレント光を回折するホログラム記録媒体と、
    前記ホログラム記録媒体のコヒーレント光が入射する側とコヒーレント光が入射する側とは反対側の少なくとも一方に配置された透明部材と、を備え、
    前記透明部材の内部に、前記ホログラム記録媒体を冷却するための冷媒が流動する冷媒流路が設けられている、光学素子。
  2. 前記冷媒はコヒーレント光を透過する、請求項1の光学素子。
  3. 前記冷媒は、フッ素系液体、フッ素系不活性液体、シリコーンオイル、有機溶媒、液状脂肪酸、アルコールおよび水の何れかを含む、請求項2の光学素子。
  4. コヒーレント光を回折する光学素子と、
    冷媒循環装置と、を備え
    前記光学素子は、コヒーレント光を回折するホログラム記録媒体と、前記ホログラム記録媒体のコヒーレント光が入射する側とコヒーレント光が入射する側とは反対側の少なくとも一方に配置された透明部材と、を有し、
    前記透明部材の内部に、前記ホログラム記録媒体を冷却するための冷媒が流動する冷媒流路が設けられており、
    前記冷媒循環装置は、前記透明部材の前記冷媒流路を経由して前記冷媒を循環させると共に、前記冷媒を冷却する、光学モジュール。
  5. コヒーレント光を回折する光学素子と、冷媒循環装置と、を有する光学モジュールと、
    前記光学モジュールの前記光学素子にコヒーレント光を照射する照射装置と、を備え、
    前記光学素子は、コヒーレント光を回折するホログラム記録媒体と、前記ホログラム記録媒体のコヒーレント光が入射する側とコヒーレント光が入射する側とは反対側の少なくとも一方に配置された透明部材と、を有し、
    前記透明部材の内部に、前記ホログラム記録媒体を冷却するための冷媒が流動する冷媒流路が設けられており、
    前記冷媒循環装置は、前記透明部材の前記冷媒流路を経由して前記冷媒を循環させると共に、前記冷媒を冷却し、
    前記照射装置は、コヒーレント光が前記光学素子の前記ホログラム記録媒体上を走査するように、前記光学素子に前記コヒーレント光を照射し、
    任意の瞬間に前記照射装置によってコヒーレント光を照射されている前記光学素子の前記ホログラム記録媒体上の領域は、前記ホログラム記録媒体の一部である、照明装置。
  6. 前記照射装置から前記光学素子の前記ホログラム記録媒体の各位置に入射した前記コヒーレント光が、それぞれ、前記ホログラム記録媒体で回折されて少なくとも一部分において互いに重なり合う領域を照明するように、前記冷媒と前記透明部材の屈折率が設定されていると共に前記照射装置および前記光学素子が配置されている、請求項5の照明装置。
  7. 照明装置と、
    前記照明装置からのコヒーレント光によって照明される位置に配置された空間光変調器と、を備え、
    前記照明装置は、コヒーレント光を回折する光学素子と、冷媒循環装置と、を有する光学モジュールと、前記光学モジュールの前記光学素子にコヒーレント光を照射する照射装置と、を備え、
    前記光学素子は、コヒーレント光を回折するホログラム記録媒体と、前記ホログラム記録媒体のコヒーレント光が入射する側とコヒーレント光が入射する側とは反対側の少なくとも一方に配置された透明部材と、を有し、
    前記透明部材の内部に、前記ホログラム記録媒体を冷却するための冷媒が流動する冷媒流路が設けられており、
    前記冷媒循環装置は、前記透明部材の前記冷媒流路を経由して前記冷媒を循環させると共に、前記冷媒を冷却し、
    前記照射装置は、コヒーレント光が前記光学素子の前記ホログラム記録媒体上を走査するように、前記光学素子に前記コヒーレント光を照射し、
    任意の瞬間に前記照射装置によってコヒーレント光を照射されている前記光学素子の前記ホログラム記録媒体上の領域は、前記ホログラム記録媒体の一部である、投射装置。
  8. 照明装置と、前記照明装置からのコヒーレント光によって照明される位置に配置された空間光変調器と、を有する投射装置と、
    前記空間光変調器上に得られる変調画像を投影されるスクリーンと、を備え、
    前記照明装置は、コヒーレント光を回折する光学素子と、冷媒循環装置と、を有する光学モジュールと、前記光学モジュールの前記光学素子にコヒーレント光を照射する照射装置と、を備え、
    前記光学素子は、コヒーレント光を回折するホログラム記録媒体と、前記ホログラム記録媒体のコヒーレント光が入射する側とコヒーレント光が入射する側とは反対側の少なくとも一方に配置された透明部材と、を有し、
    前記透明部材の内部に、前記ホログラム記録媒体を冷却するための冷媒が流動する冷媒流路が設けられており、
    前記冷媒循環装置は、前記透明部材の前記冷媒流路を経由して前記冷媒を循環させると共に、前記冷媒を冷却し、
    前記照射装置は、コヒーレント光が前記光学素子の前記ホログラム記録媒体上を走査するように、前記光学素子に前記コヒーレント光を照射し、
    任意の瞬間に前記照射装置によってコヒーレント光を照射されている前記光学素子の前記ホログラム記録媒体上の領域は、前記ホログラム記録媒体の一部である、投射型映像表示装置。
  9. 照明装置と、
    前記照明装置からのコヒーレント光によって照明される位置に配置されたスクリーンと、を備え、
    前記照明装置は、コヒーレント光を回折する光学素子と、冷媒循環装置と、を有する光学モジュールと、前記光学モジュールの前記光学素子にコヒーレント光を照射する照射装置と、を備え、
    前記光学素子は、コヒーレント光を回折するホログラム記録媒体と、前記ホログラム記録媒体のコヒーレント光が入射する側とコヒーレント光が入射する側とは反対側の少なくとも一方に配置された透明部材と、を有し、
    前記透明部材の内部に、前記ホログラム記録媒体を冷却するための冷媒が流動する冷媒流路が設けられており、
    前記冷媒循環装置は、前記透明部材の前記冷媒流路を経由して前記冷媒を循環させると共に、前記冷媒を冷却し、
    前記照射装置は、コヒーレント光が前記光学素子の前記ホログラム記録媒体上を走査するように、前記光学素子に前記コヒーレント光を照射し、
    任意の瞬間に前記照射装置によってコヒーレント光を照射されている前記光学素子の前記ホログラム記録媒体上の領域は、前記ホログラム記録媒体の一部である、投射型映像表示装置。
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