以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
本発明の一実施の形態に係る照明装置、投射装置および投射型映像表示装置は、基本的な構成として、スペックルを効果的に防止することを可能にする構成を有している。さらに、本発明の一実施の形態に係る照明装置、投射装置および投射型映像表示装置は、スペックルを効果的に防止し得る基本的構成に付加され得る構成であって、優れた直進性を有し且つそのエネルギ密度が高いといったコヒーレント光の特性に着目して当該コヒーレント光の光路を設計することによって、装置が安定して高品質を呈すること並びに装置が安全に使用されることを実現させ得る構成も有している。
以下の説明では、まず、図1〜図9に例示した照明装置および投射装置を含む投射型映像表示装置を参照して、スペックルを目立たなくさせるための構成、当該構成に基づいて奏され得る作用効果、および、当該構成の変形態様を、基本形態として説明する。次に、基本形態に付加され得る構成であって装置が安定して高品質を呈すること及び装置が安全に使用されることを可能にする構成、当該構成に基づいて奏され得る作用効果、および、当該構成の変形態様を、付加形態として説明する。
<基本形態>
〔基本形態の構成〕
まず、コヒーレント光を投射する照明装置および投射装置を含み且つスペックルを目立たなくさせることができる投射型映像表示装置の構成を、主として図1〜図9を参照して説明する。
図1に示す投射型映像表示装置10は、スクリーン15と、コヒーレント光からなる映像光を投射する投射装置20と、を有している。投射装置20は、仮想面上に位置する被照明領域LZをコヒーレント光で照明する照明装置40と、被照明領域LZと重なる位置に配置され照明装置40によってコヒーレント光で照明される空間光変調器30と、空間光変調器30からのコヒーレント光をスクリーン15に投射する投射光学系25と、を有している。
空間光変調器30としては、例えば、透過型の液晶マイクロディスプレイを用いることができる。この場合、照明装置40によって面状に照明される空間光変調器30が、画素毎にコヒーレント光を選択して透過させることにより、空間光変調器30をなすディスプレイの画面上に変調画像が形成されるようになる。こうして得られた変調画像(映像光)は、投射光学系25によって、等倍で或いは変倍されてスクリーン15へ投射される。これにより、変調画像がスクリーン15上に等倍で或いは変倍(通常、拡大)されて表示され、観察者は当該画像を観察することができる。
なお、空間光変調器30としては、反射型のマイクロディスプレイを用いることも可能である。この場合、空間光変調器30での反射光によって変調画像が形成され、空間光変調器30へ照明装置40からコヒーレント光が照射される面と、空間光変調器30から変調画像をなす映像光が進みでる面が同一の面となる。このような反射光を利用する場合、空間光変調器30としてDMD(Digital Micromirror Device)などのMEMS素子を用いることも可能である。上述した特許文献2に開示された装置では、DMDが空間光変調器として利用されている。
また、空間光変調器30の入射面は、照明装置40によってコヒーレント光を照射される被照明領域LZと同一の形状および大きさであることが好ましい。この場合、照明装置40からのコヒーレント光を、スクリーン15への映像の表示に高い利用効率で利用することができるからである。
スクリーン15は、透過型スクリーンとして構成されていてもよいし、反射型スクリーンとして構成されていてもよい。スクリーン15が反射型スクリーンとして構成されている場合には、観察者は、スクリーン15に関して投射装置20と同じ側から、スクリーン15で反射されるコヒーレント光によって表示される映像を観察することになる。一方、スクリーン15が透過型スクリーンとして構成されている場合、観察者は、スクリーン15に関して投射装置20とは反対の側から、スクリーン15を透過したコヒーレント光によって表示される映像を観察することになる。
ところで、スクリーン15に投射されたコヒーレント光は、拡散され、観察者に映像として認識されるようになる。この際、スクリーン上に投射されたコヒーレント光は拡散によって干渉し、スペックルを生じさせることになる。ただし、ここで説明する投射型映像表示装置10では、以下に説明する照明装置40が、時間的に角度変化するコヒーレント光で、空間光変調器30が重ねられている被照明領域LZを照明するようになっている。より具体的には、以下に説明する照明装置40は、コヒーレント光からなる拡散光で被照明領域LZを照明するが、この拡散光の入射角度が経時的に変化していく。この結果、スクリーン15上でのコヒーレント光の拡散パターンも時間的に変化するようになり、コヒーレント光の拡散で生じるスペックルが時間的に重畳されて目立たなくなる。以下、このような照明装置40について、さらに詳細に説明する。
図1および図2に示された照明装置40は、コヒーレント光の進行方向を被照明領域LZへ向ける光学素子50と、光学素子50へコヒーレント光を照射する照射装置60と、を有している。光学素子50は、散乱板6の像5を再生し得るホログラム記録媒体55を含んでいる。図示する例では、光学素子50はホログラム記録媒体55から形成されている。
図示する例で光学素子50をなしているホログラム記録媒体55は、照射装置60から照射されるコヒーレント光を再生照明光Laとして受けて、当該コヒーレント光を高効率で回折することができる。とりわけ、ホログラム記録媒体55は、その各位置、言い換えると、その各点とも呼ばれるべき各微小領域に入射するコヒーレント光を回折することによって、散乱板6の像5を再生することができるようになっている。
一方、照射装置60は、ホログラム記録媒体55のコヒーレント光が、光学素子50のホログラム記録媒体55上を走査するようにして、光学素子50へコヒーレント光を照射する。したがって、ある瞬間に、照射装置60によってコヒーレント光を照射されているホログラム記録媒体55上の領域は、ホログラム記録媒体55の表面の一部分であって、とりわけ図示する例では、点と呼ばれるべき微小領域となっている。
そして、照射装置60から照射されてホログラム記録媒体55上を走査するコヒーレント光は、ホログラム記録媒体55上の各位置(各点または各領域(以下、同じ))に、当該ホログラム記録媒体55の回折条件を満たすような入射角度で、入射するようになっている。とりわけ、図2に示すように、照射装置60からホログラム記録媒体55の各位置に入射したコヒーレント光が、それぞれ、被照明領域LZに重ねて散乱板6の像5を再生するようになっている。すなわち、照射装置60からホログラム記録媒体55の各位置に入射したコヒーレント光は、それぞれ、光学素子50で拡散されて(拡げられて)、被照明領域LZに入射するようになる。
このようなコヒーレント光の回折作用を可能にするホログラム記録媒体55として、図示する例では、フォトポリマーを用いた反射型の体積型ホログラムが用いられている。このホログラム記録媒体55は、図3に示すように、実物の散乱板6からの散乱光を物体光Loとして用いて作製されている。図3には、ホログラム記録媒体55をなすようになる感光性を有したホログラム感光材料58に、互いに干渉性を有したコヒーレント光からなる参照光Lrと物体光Loとが露光されている状態が、示されている。
参照光Lrは、例えば、特定波長域のレーザ光を発振するレーザ光源からのレーザ光が用いられており、レンズからなる集光素子7を透過してホログラム感光材料58に入射する。図3に示す例では、参照光Lrをなすようになるレーザ光が、集光素子7の光軸と平行な平行光束として、集光素子7へ入射する。参照光Lrは、集光素子7を透過することによって、それまでの平行光束から収束光束に整形(変換)され、ホログラム感光材料58へ入射する。この際、収束光束Lrの焦点位置FPは、ホログラム感光材料58を越えた位置にある。すなわち、ホログラム感光材料58は、集光素子7と、集光素子7によって集光された収束光束Lrの焦点位置FPと、の間に配置されている。
次に、物体光Loは、たとえばオパールガラスからなる散乱板6からの散乱光として、ホログラム感光材料58に入射する。ここでは作製されるべきホログラム記録媒体55が反射型なので、物体光Loは、参照光Lrとは反対側の面からホログラム感光材料58へ入射する。物体光Loは、参照光Lrと干渉性を有している必要がある。したがって、例えば、同一のレーザ光源から発振されたレーザ光を分割して、分割された一方を上述の参照光Lrとして利用し、他方を物体光Loとして使用することができる。
図3に示す例では、散乱板6の板面への法線方向と平行な平行光束が、散乱板6へ入射して散乱され、そして、散乱板6を透過した散乱光が物体光Loとしてホログラム感光材料58へ入射している。この方法によれば、通常安価に入手可能な等方散乱板を散乱板6として用いた場合に、散乱板6からの物体光Loが、ホログラム感光材料58に概ね均一な光量分布で入射することが可能となる。またこの方法によれば、散乱板6による散乱の度合いにも依存するが、ホログラム感光材料58の各位置に、散乱板6の出射面6aの全域から概ね均一な光量で参照光Lrが入射しやすくなる。このような場合には、得られたホログラム記録媒体55の各位置に入射した光が、それぞれ、散乱板6の像5を同様の明るさで再生すること、および、再生された散乱板6の像5が概ね均一な明るさで観察されることが実現され得る。
以上のようにして、参照光Lrおよび物体光Loがホログラム記録材料58に露光されると、参照光Lrおよび物体光Loが干渉してなる干渉縞が生成され、この光の干渉縞が、何らかのパターン(体積型ホログラムでは、一例として、屈折率変調パターン)として、ホログラム記録材料58に記録される。その後、ホログラム記録材料58の種類に対応した適切な後処理が施され、ホログラム記録材料55が得られる。
図4には、図3の露光工程を経て得られたホログラム記録媒体55の回折作用(再生作用)が示されている。図4に示すように、図3のホログラム感光材料58から形成されたホログラム記録媒体55は、露光工程で用いられたレーザ光と同一波長の光であって、露光工程における参照光Lrの光路を逆向きに進む光によって、そのブラッグ条件が満たされるようになる。すなわち、図4に示すように、露光工程時におけるホログラム感光材料58に対する焦点FPの相対位置(図3参照)と同一の位置関係をなすようにしてホログラム記録媒体55に対して位置する基準点SPから発散し、露光工程時における参照光Lrと同一の波長を有する発散光束は、再生照明光Laとして、ホログラム記録媒体55に回折され、露光工程時におけるホログラム感光材料58に対する散乱板6の相対位置(図3参照)と同一の位置関係をなすようになるホログラム記録媒体50に対する特定の位置に、散乱板6の再生像5を生成する。
この際、散乱板6の再生像5を生成する再生光(再生照明光Laをホログラム記録媒体55で回折してなる光)Lbは、露光工程時に散乱板6からホログラム感光材料58へ向かって進んでいた物体光Loの光路を逆向きに進む光として散乱板6の像5の各点を再生する。そして、上述したように、また図3に示すように、露光工程時に散乱板6の出射面6aの各位置から出射する散乱光Loが、それぞれ、ホログラム感光材料58の概ね全領域に入射するように拡散している(広がっている)。すなわち、ホログラム感光材料58上の各位置には、散乱板6の出射面6aの全領域からの物体光Loが入射し、結果として、出射面6a全体の情報がホログラム記録媒体55の各位置にそれぞれ記録されている。このため、図4に示された、再生照明光Laとして機能する基準点SPからの発散光束をなす各光は、それぞれ単独で、ホログラム記録媒体55の各位置に入射して互いに同一の輪郭を有した散乱板6の像5を、互いに同一の位置(被照明領域LZ)に再生することができる。
一方、このようなホログラム記録媒体55からなる光学素子50にコヒーレント光を照射する照射装置60は、次のように構成され得る。図1および図2に示された例において、照射装置60は、特定波長域のコヒーレント光を生成するレーザ光源61aと、レーザ光源61aからのコヒーレント光の進行方向を変化させる走査デバイス65と、を有している。走査デバイス65は、コヒーレント光の進行方向を経時的に変化させ、コヒーレント光の進行方向が一定とはならないよう種々の方向へ向ける。この結果、走査デバイス65で進行方向を変化させられるコヒーレント光が、光学素子50のホログラム記録媒体55の入射面上を走査するようになる。
とりわけ、図2に示された例では、走査デバイス65は、一つの軸線RA1を中心として回動可能な反射面66aを有した反射デバイス66を含んでいる。より具体的に説明すると、反射デバイス66は、一つの軸線RA1を中心として回動可能な反射面66aとしてのミラーを有したミラーデバイスとして、構成されている。そして、図2および図5に示すように、このミラーデバイス66は、ミラー66aの配向を変化させることによって、レーザ光源61aからのコヒーレント光の進行方向を変化させるようになっている。この際、図2に示すように、ミラーデバイス66は、概ね、基準点SPにおいてレーザ光源61aからコヒーレント光を受けるようになっている。このため、ミラーデバイス66で進行方向を最終調整されたコヒーレント光は、基準点SPからの発散光束の一光線をなし得る再生照明光La(図4参照)として、光学素子50のホログラム記録媒体55へ入射し得る。結果として、照射装置60からのコヒーレント光がホログラム記録媒体55上を走査するようになり、且つ、ホログラム記録媒体55上の各位置に入射したコヒーレント光が同一の輪郭を有した散乱板6の像5を同一の位置(被照明領域LZ)に再生するようになる。
なお、図2に示されたミラーデバイス66は、一つの軸線RA1に沿ってミラー66aを回動させるように、構成されている。図5は、図2に示された照明装置40の構成を斜視図として示している。図5に示された例では、ミラー66aの回動軸線RA1は、ホログラム記録媒体55の板面上に定義されたXY座標系(つまり、XY平面がホログラム記録媒体55の板面と平行となるXY座標系)のY軸と、平行に延びている。そして、ミラー66aが、ホログラム記録媒体55の板面上に定義されたXY座標系のY軸と平行な軸線RA1を中心として回動するため、照射装置60からのコヒーレント光の光学素子50への入射点IPは、ホログラム記録媒体55の板面上に定義されたXY座標系のX軸と平行な方向に往復動するようになる。すなわち、図5に示された例では、照射装置60は、コヒーレント光がホログラム記録媒体55上を直線経路に沿って走査するように、光学素子50にコヒーレント光を照射する。
なお、実際上の問題として、ホログラム記録媒体55を作成する際、ホログラム記録材料58が収縮する場合がある。このような場合、ホログラム記録材料58の収縮を考慮して、照射装置60から光学素子50に照射されるコヒーレント光の波長が調整されることが好ましい。したがって、コヒーレント光源61aで生成するコヒーレント光の波長は、図3の露光工程(記録工程)で用いた光の波長と厳密に一致させる必要はなく、ほぼ同一となっていてもよい。
また、同様の理由から、光学素子50のホログラム記録媒体55へ入射する光の進行方向も、基準点SPからの発散光束に含まれる一光線と厳密に同一の経路を取っていなくとも、被照明領域LZに像5を再生することができる。実際に、図2および図5に示す例では、走査デバイス65をなすミラーデバイス66のミラー(反射面)66aは、必然的に、その回動軸線RA1からずれる。したがって、基準点SPを通過しない回動軸線RA1を中心としてミラー66aを回動させた場合、ホログラム記録媒体55へ入射する光は、基準点SPからの発散光束をなす一光線とはならないことがある。しかしながら、実際には、図示された構成の照射装置60からのコヒーレント光によって、被照明領域LZに重ねて像5を実質的に再生することができる。
〔基本形態の作用効果〕
次に、以上の構成からなる照明装置40、投射装置20および投射型映像表示装置10の作用について説明する。
まず、照射装置60は、コヒーレント光が光学素子50のホログラム記録媒体55上を走査するようにして、光学素子50へコヒーレント光を照射する。具体的には、レーザ光源61aで一定方向に沿って進む特定波長のコヒーレント光が生成され、このコヒーレント光が走査デバイス65で進行方向を変えられる。走査デバイス65は、ホログラム記録媒体55上の各位置に、当該位置でのブラッグ条件を満たす入射角度で特定波長のコヒーレント光を入射させる。この結果、各位置に入射したコヒーレント光は、それぞれ、ホログラム記録媒体55での回折により、被照明領域LZに重ねて散乱板6の像5を再生する。すなわち、照射装置60からホログラム記録媒体55の各位置に入射したコヒーレント光は、それぞれ、光学素子50で拡散されて(拡げられて)、被照明領域LZの全域に入射するようになる。このようにして、照射装置60は、被照明領域LZをコヒーレント光で照明するようになる。
図1に示すように、投射装置20においては、照明装置40の被照明領域LZと重なる位置に空間光変調器30が配置されている。このため、空間光変調器30は、照明装置40によって面状に照明され、画素毎にコヒーレント光を選択して透過させることにより、映像を形成するようになる。この映像は、投射光学系25によってスクリーン15に投射される。スクリーン15に投射されたコヒーレント光は、拡散され、観察者に映像として認識されるようになる。ただし、この際、スクリーン上に投射されたコヒーレント光は拡散によって干渉し、スペックルを生じさせることになる。
しかしながら、ここで説明してきた基本形態における照明装置40によれば、次に説明するように、スペックルを極めて効果的に目立たなくさせることができる。
前掲の非特許文献1によれば、スペックルを目立たなくさせるには、偏光・位相・角度・時間といったパラメータを多重化し、モードを増やすことが有効であるとされている。ここでいうモードとは、互いに無相関なスペックルパターンのことである。例えば、複数のレーザ光源から同一のスクリーンに異なる方向からコヒーレント光を投射した場合、レーザ光源の数だけ、モードが存在することになる。また、同一のレーザ光源からのコヒーレント光を、時間を区切って異なる方向から、スクリーンに投射した場合、人間の目で分解不可能な時間の間にコヒーレント光の入射方向が変化した回数だけ、モードが存在することになる。そして、このモードが多数存在する場合には、光の干渉パターンが無相関に重ねられ平均化され、結果として、観察者の目によって観察されるスペックルが目立たなくなるものと考えられている。
上述した照射装置60では、コヒーレント光が、ホログラム記録媒体55上を走査するようにして、光学素子50に照射される。また、照射装置60からホログラム記録媒体55の各位置に入射したコヒーレント光は、それぞれ、同一の被照明領域LZの全域をコヒーレント光で照明するが、当該被照明領域LZを照明するコヒーレント光の照明方向は互いに異なる。そして、コヒーレント光が入射するホログラム記録媒体55上の位置が経時的に変化するため、被照明領域LZへのコヒーレント光の入射方向も経時的に変化する。
被照明領域LZを基準にして考えると、被照明領域LZ内の各位置には絶えずコヒーレント光が入射してくるが、その入射方向は、図1に矢印A1で示すように、常に変化し続けることになる。結果として、空間光変調器30の透過光によって形成された映像の各画素をなす光が、図1に矢印A2で示すように経時的に光路を変化させながら、スクリーン15の特定の位置に投射されるようになる。
なお、コヒーレント光はホログラム記録媒体55上を連続的に走査する。これにともなって、照射装置60から被照明領域LZへのコヒーレント光の入射方向も連続的に変化するとともに、投射装置20からスクリーン15へのコヒーレント光の入射方向も連続的に変化する。ここで、投射装置20からスクリーン15へのコヒーレント光の入射方向が僅か(例えば0.数°)だけ変化すれば、スクリーン15上に生じるスペックルのパターンも大きく変化し、無相関なスペックルパターンが十分に重畳されることになる。加えて、実際に市販されているMEMSミラーやポリゴンミラー等の走査デバイス65の周波数は通常数百Hz以上であり、数万Hzにも達する走査デバイス65も珍しくない。
以上のことから、上述してきた基本形態によれば、映像を表示しているスクリーン15上の各位置において時間的にコヒーレント光の入射方向が変化していき、且つ、この変化は、人間の目で分解不可能な速さであり、結果として、人間の目には、相関の無いコヒーレント光の散乱パターンが多重化されて観察されることになる。したがって、各散乱パターンに対応して生成されたスペックルが重ねられ平均化されて、観察者に観察されることになる。これにより、スクリーン15に表示されている映像を観察する観察者に対して、スペックルを極めて効果的に目立たなくさせることができる。
なお、人間によって観察される従来のスペックルには、スクリーン15上でのコヒーレント光の散乱を原因とするスクリーン側でのスペックルだけでなく、スクリーンに投射される前におけるコヒーレント光の散乱を原因とする投射装置側でのスペックルも発生し得る。この投射装置側で発生したスペックルパターンは、空間光変調器30を介してスクリーン15上に投射されることによって、観察者に認識され得るようにもなる。しかしながら、上述してきた基本形態によれば、コヒーレント光がホログラム記録媒体55上を連続的に走査し、そしてホログラム記録媒体55の各位置に入射したコヒーレント光が、それぞれ、空間光変調器30が重ねられた被照明領域LZの全域を照明するようになる。すなわち、ホログラム記録媒体55が、スペックルパターンを形成していたそれまでの波面とは別途の新たな波面を形成し、複雑且つ均一に、被照明領域LZ、さらには、空間光変調器30を介してスクリーン15を照明するようになる。このようなホログラム記録媒体55での新たな波面の形成により、投射装置側で発生するスペックルパターンは不可視化されることになる。
ところで、前掲の非特許文献1には、スクリーン上に生じたスペックルの程度を示すパラメータとして、スペックルコントラスト(単位%)という数値を用いる方法が提案されている。このスペックルコントラストは、本来は均一の輝度分布をとるべきテストパターン映像を表示した際に、スクリーン上に実際に生じる輝度のばらつきの標準偏差を、輝度の平均値で除した値として定義される量である。このスペックルコントラストの値が大きければ大きいほど、スクリーン上のスペックル発生程度が大きいことを意味し、観察者に対して、斑点状の輝度ムラ模様がより顕著に提示されていることを示す。
図1〜図5を参照しながら説明してきた基本形態の投射型映像表示装置10について、スペックルコントラストを測定したところ、3.0%となった(条件1)。また、上述の光学素子50として、反射型の体積型ホログラムに代えて、特定の再生照明光を受けた場合に散乱板6の像5を再生し得るように計算機を用いて設計された凹凸形状を有する計算機合成ホログラム(CGH)としてのレリーフ型ホログラムを用いた場合についてのスペックルコントラストは3.7%となった(条件2)。HDTV(高精細テレビ)の映像表示用途にて、観察者が肉眼観察した場合に輝度ムラ模様がほとんど認識できないレベルとして、スペックルコントラスト6.0%以下という基準(たとえば、WO/2001/081996号公報参照)が示されているが、上述してきた基本形態はこの基準を十分に満たしている。また、実際に肉眼観察したところ、視認され得る程度の輝度ムラ(明るさのムラ)は発生していなかった。
一方、レーザ光源からのレーザ光を平行光束に整形して空間光変調器30に入射させた場合、すなわち、図1に示された投射型映像表示装置10の空間光変調器30に、走査デバイス65や光学素子50を介さず、レーザ光源61aからのコヒーレント光を平行光束として入射させた場合、スペックルコントラストは20.7%となった(条件3)。この条件下では、肉眼観察により、斑点状の輝度ムラ模様がかなり顕著に観察された。
また、光源61aを緑色のLED(非コヒーレント光源)に交換し、このLED光源からの光を空間光変調器30に入射させた場合、すなわち、図1に示された投射型映像表示装置10の空間光変調器30に、走査デバイス65や光学素子50を介さず、LED光源からの非コヒーレント光を平行光束として入射させた場合、スペックルコントラストは4.0%となった(条件4)。この条件下では、肉眼観察で視認され得る程度の輝度ムラ(明るさのムラ)は発生していなかった。
条件1および条件2の結果が、条件3の結果よりも極めて良好であり、さらに、条件4の測定結果と比較しても良好となった。既に述べたとおり、スペックルの発生という問題は、実用上、レーザ光などのコヒーレント光源を用いた場合に生じる固有の問題であり、LEDなどの非コヒーレント光源を用いた装置では、考慮する必要のない問題である。加えて、条件1および条件2では、条件4と比較して、スペックル発生の原因となり得る光学素子50が追加されている。これらの点から、条件1および条件2によれば、スペックル不良に十分に対処することができたと言える。
加えて、上述してきた基本形態によれば、次の利点を享受することもできる。
上述してきた基本形態によれば、スペックルを目立たなくさせるための光学素子50が、照射装置60から照射されるコヒーレント光のビーム形態を整形および調整するための光学部材としても機能し得る。したがって、光学系を小型且つ簡易化することができる。
また、上述してきた基本形態によれば、ホログラム記録媒体55の各位置に入射するコヒーレント光が、互いに同一の位置に、散乱板6の像5を生成するとともに、当該像5に重ねて空間光変調器30が配置されている。このため、ホログラム記録媒体55で回折された光を、高効率で、映像形成のために利用することが可能となり、光源61aからの光の利用効率の面においても優れる。
〔基本形態への変形〕
図1〜5に例示された一具体例に基づいて説明してきた基本形態に対して、種々の変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いており、重複する説明を省略する。
(照明装置)
上述した形態によれば、スペックルを効果的に目立たなくさせることができる。ただし、この作用効果は、主として照明装置40に起因したものである。したがって、この照明装置40を種々の態様で有用に使用することができる。例えば、照明装置40を単なる照明として用いることができ、この場合、明るさのムラ(輝度ムラ、ちらつき)を目立たなくさせることができる。
また、上述した照明装置40をスキャナ(一例として、像読み取り装置)用の照明として用いてもよい。このような例においては、照明装置40の被照明領域LZ上にスキャンされるべき対象物を配置することにより、当該対象物上に生じるスペックルを目立たなくさせることができる。結果として、従来必要であった像補正手段等を不要にすることもできる。
照明装置40がスキャナに組み込まれる場合には、照明装置40による被照明領域LZが、上述した形態と同様に、面であってもよい。あるいは、照明装置40による被照明領域LZが一方向に延びる細長い領域(線状とも呼ばれるような領域)であってもよい。この場合、スキャナに組み込まれた照明装置40が、前記一方向と直交する方向に沿って、対象物に対して相対移動することにより、二次元的な像情報を読み取ることも可能となる。
またさらに、図6に示すように、光学素子50が、重ならないようにして並べて配置された複数のホログラム記録媒体55−1,55−2,・・・を含んでいても良い。図6に示された各ホログラム記録媒体55−1,55−2,・・・は、それぞれ短冊状に形成され、その長手方向と直交する方向に、隙間無く並べて配列されている。また、各ホログラム記録媒体55−1,55−2,・・・は、互いに同一の仮想面上に位置している。各ホログラム記録媒体55−1,55−2,・・・は、それぞれ、重ならないようにして並べて配置された被照明領域LZ−1,LZ−2,・・・に散乱板6の像5を生成する、言い換えると、被照明領域LZ−1,LZ−2,・・・にコヒーレント光を照明するようになっている。各被照明領域LZ−1,LZ−2,・・・は、一方向に延びる細長い領域(線状とも呼ばれるような領域)として形成され、その長手方向と直交する方向に、隙間無く並べて配列されている。また、各被照明領域LZ−1,LZ−2,・・・は、互いに同一の仮想面上に位置している。
図6に示された例では、次のようにして、被照明領域LZ−1,LZ−2,・・・を照明するようにしてもよい。まず、照射装置60は、コヒーレント光が第1のホログラム記録媒体55−1の長手方向(前記一方向)に沿った経路を繰り返し走査するように、光学素子50の第1のホログラム記録媒体55−1へ当該コヒーレント光を照射する。第1のホログラム記録媒体55−1の各位置に入射したコヒーレント光は、それぞれ、第1の照明領域LZ−1に重ねて線状あるいは細長状の散乱板6の像5を再生し、当該第1の照明領域LZ−1をコヒーレント光で照明するようになる。所定の時間が経過すると、照射装置60は、第1のホログラム記録媒体55−1に隣接する第2のホログラム記録媒体55−2上にコヒーレント光を照射し、第1の被照明領域LZ−1に代えて、第1の被照明領域LZ−1に隣接する第2の被照明領域LZ−2をコヒーレント光で照明する。以下、順に各ホログラム記録媒体にコヒーレント光を照射して、当該ホログラム記録媒体に対応する被照明領域をコヒーレント光で照明していく。このような方法によれば、照明装置を移動させることなく、二次元的な像情報を読み取ることが可能となる。
(空間光変調器、投射光学系、スクリーン)
上述した形態によれば、スペックルを効果的に目立たなくさせることができる。ただし、この作用効果は、主として照明装置40に起因したものである。そして、この照明装置40を、種々の既知な空間光変調器、投射光学系、スクリーン等と組み合わせても、スペックルを効果的に目立たなくさせることができる。この点から、空間光変調器、投射光学系、スクリーンは、例示したものに限られず、種々の既知な部材、部品、装置等を用いることができる。
(投射型映像表示装置)
また、ホログラム記録媒体55が、空間光変調器30の入射面に対応した形状を有した平面状の散乱板6を用いて、干渉露光法により作製される例を示したが、これに限られず、ホログラム記録媒体55が、何らかのパターンを有した散乱板を用いて、干渉露光法により作製されてもよい。この場合、ホログラム記録媒体55によって、何らかのパターンを持った散乱板の像が再生されるようになる。言い換えると、光学素子50(ホログラム記録媒体55)は、何らかのパターンを持った被照明領域LZを照明するようになる。この光学素子50を用いる場合、空間光変調器30を、さらには投射光学系25をも上述の基本形態から省き、スクリーン15を被照明領域LZと重なる位置に配置することによって、スクリーン15上にホログラム記録媒体55に記録された何らかのパターンを表示することが可能となる。この表示装置においても、コヒーレント光がホログラム記録媒体55上を走査するように、照射装置60が光学素子50にコヒーレント光を照射することによって、スクリーン15上でのスペックルを目立たなくさせることができる。
図7には、このような例の一例が開示されている。図示する例において、光学素子50は、第1〜第3のホログラム記録媒体55−1,55−2,55−3を含んでいる。第1〜第3のホログラム記録媒体55−1,55−2,55−3は、互いに重ならないように位置をずらして、光学素子50の入射面と平行な面上に配置されている。各ホログラム記録媒体55−1,55−2,55−3は、矢印の輪郭を有した像5を再生することができる、言い換えると、矢印の輪郭を有した被照明領域LZ−1,LZ−2,LZ−3をコヒーレント光で照明することができるようになっている。各ホログラム記録媒体55−1,55−2,55−3にそれぞれ対応した第1〜第3の被照明領域LZ−1,LZ−2,LZ−3は、同一の仮想面上に、互いに重ならないように配置されている。とりわけ図示する例では、各被照明領域LZ−1,LZ−2,LZ−3をなす矢印によって示される向きがすべて同一で、この向きに沿って第1〜第3被照明領域LZ−1,LZ−2,LZ−3が順に位置している。例えば、照射装置60からのコヒーレント光が第1ホログラム記録媒体55−1上を走査している場合には、最も後方に位置する第1の被照明領域LZ−1が照明される。一例として次に、図7に示すように、照射装置60からのコヒーレント光が第2ホログラム記録媒体55−2上を走査するようになり、真ん中に位置する第2の被照明領域LZ−2が照明される。その後、照射装置60からのコヒーレント光が第3ホログラム記録媒体55−3上を走査するようになると、最も前方に位置する第3の被照明領域LZ−3が照明される。
(照射装置)
上述した形態では、照射装置60が、レーザ光源61aと、走査デバイス65と、を有する例を示した。走査デバイス65は、コヒーレント光の進行方向を反射によって変化させる一軸回動型のミラーデバイス66からなる例を示したが、これに限られない。走査デバイス65は、図8に示すように、ミラーデバイス66のミラー(反射面66a)が、第1の回動軸線RA1だけでなく、第1の回動軸線RA1と交差する第2の回動軸線RA2を中心としても回動可能となっていてもよい。図8に示された例では、ミラー66aの第2の回動軸線RA2は、ホログラム記録媒体55の板面上に定義されたXY座標系のY軸と平行に延びる第1回動軸線RA1と、直交している。そして、ミラー66aが、第1軸線RA1および第2軸線RA2の両方を中心として回動可能なため、照射装置60からのコヒーレント光の光学素子50への入射点IPは、ホログラム記録媒体55の板面上で二次元方向に移動可能となる。このため、一例として図8に示されているように、コヒーレント光の光学素子50への入射点IPが円周上を移動するようにすることもできる。
また、走査デバイス65が、二以上のミラーデバイス66を含んでいてもよい。この場合、ミラーデバイス66のミラー66aが、単一の軸線を中心としてのみ回動可能であっても、照射装置60からのコヒーレント光の光学素子50への入射点IPを、ホログラム記録媒体55の板面上で二次元方向に移動させることができる。
なお、走査デバイス65に含まれるミラーデバイス66aの具体例としては、MEMSミラー、ポリゴンミラー等を挙げることができる。
また、走査デバイス65は、反射によってコヒーレント光の進行方向を変化させる反射デバイス(一例として、上述してきたミラーデバイス66)以外のデバイスを含んで構成されていてもよい。例えば、走査デバイス65が、屈折プリズムやレンズ等を含んでいていてもよい。
そもそも、走査デバイス65は必須ではなく、照射装置60の光源61aが、光学素子50に対して変位可能(移動、揺動、回転)に構成され、光源61aの光学素子に対する変位によって、光源61aから照射されたコヒーレント光がホログラム記録媒体55上を走査するようにしてもよい。
さらに、照射装置60の光源61aが、線状光線として整形されたレーザ光を発振する前提で説明してきたが、これに限られない。とりわけ、上述した形態では、光学素子50の各位置に照射されたコヒーレント光は、光学素子50によって、被照明領域LZの全域に入射するようになる光束に整形される。したがって、照射装置60の光源61aから光学素子50に照射されるコヒーレント光は精確に整形されていなくとも不都合は生じない。このため、光源61aから発生されるコヒーレント光は、発散光であってもよい。また、光源61aから発生されるコヒーレント光の断面形状は、円でなく、楕円等であってもよい。さらには、光源61aから発生されるコヒーレント光の横モードがマルチモードであってもよい。
なお、光源61aが発散光束を発生させる場合、コヒーレント光は、光学素子50のホログラム記録媒体55に入射する際に、点ではなくある程度の面積を持った領域に入射することになる。この場合、ホログラム記録媒体55で回折されて被照明領域LZの各位置に入射する光は、角度を多重化されることになる。言い換えると、各瞬間において、被照明領域LZの各位置には、或る程度の角度範囲の方向からコヒーレント光が入射する。このような角度の多重化によって、スペックルをさらに効果的に目立たなくさせることができる。
さらに、上述した形態において、照射装置60が、発散光束に含まれる一光線の光路をたどるようにして、コヒーレント光を光学素子50へ入射させる例を示したが、これに限られない。例えば、上述した形態において、走査デバイス65が、コヒーレント光の光路に沿ってミラーデバイス66の下流側に配置された集光レンズ67を、さらに含むようにしてもよい。この場合、図9に示すように、発散光束を構成する光線の光路を進むミラーデバイス66からの光が、集光レンズ67によって、一定の方向に進む光となる。すなわち、照射装置60は、平行光束を構成する光線の光路をたどるようにして、コヒーレント光を光学素子50へ入射させるようになる。このような例では、ホログラム記録媒体55を作製する際の露光工程において、参照光Lrとして、上述した収束光束に代えて、平行光束を用いることになる。このようなホログラム記録媒体55は、より簡単に作製および複製することができる。
上述した形態では、照射装置60が単一のレーザ光源61aのみを有する例を示したが、これに限られない。例えば、照射装置60が、同一波長域の光を発振する複数の光源を含んでいても良い。この場合、照明装置40は、被照明領域LZをより明るく照明することが可能となる。また、異なる固体のレーザ光源からのコヒーレント光は、互いに干渉性を有しない。したがって、散乱パターンの多重化がさらに進み、スペックルをさらに目立たなくさせることができる。
また、照射装置60が、異なる波長域のコヒーレント光を発生させる複数の光源を含んでいてもよい。この例によれば、単一レーザ光では表示することが困難な色を加法混色によって生成し、当該色で被照明領域LZを照明することができる。また、この場合、投射装置20または透過型映像表示装置10において、空間光変調器30が、例えばカラーフィルタを含んでおり、各波長域のコヒーレント光毎に変調画像の形成が可能である場合には、複数色で映像を表示することが可能となる。あるいは、空間光変調器30がカラーフィルタを含んでいなくとも、照射装置60が各波長域のコヒーレント光を時分割的に照射し、且つ、空間光変調器30が、照射されている波長域のコヒーレント光に対応した変調画像を形成するように時分割的に作動する場合にも、複数色で映像を表示することが可能となる。とりわけ、投射装置20または透過型映像表示装置10において、照射装置60が、赤色光に対応する波長域のコヒーレント光を発生する光源と、緑色光に対応する波長域のコヒーレント光を発生する光源と、青色光に対応する波長域のコヒーレント光を発生する光源と、を含んでいる場合には、フルカラーで映像を表示することが可能となる。
なお、光学素子50に含まれるホログラム記録媒体55は、波長選択性を有している。したがって、照射装置60が異なる波長域の光源を含んでいる場合には、ホログラム記録媒体55が、各光源で発生されるコヒーレント光の波長域にそれぞれ対応したホログラム要素を、積層した状態で、含むようにしてもよい。各波長域のコヒーレント光用のホログラム要素は、例えば、図3および図4を参照しながら既に説明した方法において、露光用の光(参照光Lrおよび物体光Lo)として、対応する波長域のコヒーレント光を用いることにより、作製され得る。また、各波長域のホログラム要素を積層してホログラム記録媒体55を作製することに代え、各波長域のコヒーレント光からなる物体光Loおよび参照光Lrを、それぞれ同時にホログラム感光材料58に露光して、単一のホログラム記録媒体55によって、複数の波長域の光をそれぞれ回折するようにしてもよい。
(光学素子)
上述した形態において、光学素子50が、フォトポリマーを用いた反射型の体積型ホログラム55からなる例を示したが、これに限られない。既に説明したように、光学素子50は複数のホログラム記録媒体55を含んでいてもよい。また、光学素子50は、銀塩材料を含む感光媒体を利用して記録するタイプの体積型ホログラムを含んでもよい。さらに、光学素子50は、透過型の体積型ホログラム記録媒体を含んでいてもよいし、レリーフ型(エンボス型)のホログラム記録媒体を含んでいてもよい。
ただし、レリーフ(エンボス)型ホログラムは、表面の凹凸構造によってホログラム干渉縞の記録が行われる。しかしながら、このレリーフ型ホログラムの場合、表面の凹凸構造による散乱が、新たなスペックル生成要因となる可能性があり、この点において体積型ホログラムの方が好ましい。体積型ホログラムでは、媒体内部の屈折率変調パターン(屈折率分布)としてホログラム干渉縞の記録が行われるため、表面の凹凸構造による散乱による影響を受けることはない。
もっとも、体積型ホログラムでも、銀塩材料を含む感光媒体を利用して記録するタイプのものは、銀塩粒子による散乱が新たなスペックル生成要因となる可能性がある。この点において、ホログラム記録媒体55としては、フォトポリマーを用いた体積型ホログラムの方が好ましい。
また、図3に示す露光工程では、いわゆるフレネルタイプのホログラム記録媒体が作成されることになるが、レンズを用いた記録を行うことにより得られるフーリエ変換タイプのホログラム記録媒体を作成してもかまわない。ただ、フーリエ変換タイプのホログラム記録媒体を用いる場合には、像再生時にもレンズを使用してもよい。
また、ホログラム記録媒体55に形成されるべき縞状パターン(屈折率変調パターンや凹凸パターン)は、現実の物体光Loおよび参照光Lrを用いることなく、予定した再生照明光Laの波長や入射方向、並びに、再生されるべき像の形状や位置等に基づき計算機を用いて設計されてもよい。このようにして得られたホログラム記録媒体55は、計算機合成ホログラムとも呼ばれる。また上述した変形例のように波長域の互いに異なる複数のコヒーレント光が照射装置60から照射される場合には、計算機合成ホログラムとしてのホログラム記録媒体55は、各波長域のコヒーレント光にそれぞれ対応して設けられた複数の領域に平面的に区分けされ、各波長域のコヒーレント光は対応する領域で回折されて像を再生するようにしてもよい。
さらに、上述した形態において、光学素子50が、各位置に照射されたコヒーレント光を拡げて、当該拡げたコヒーレント光を用いて被照明領域LZの全域を照明するホログラム記録媒体55を、有している例を示したが、これに限られない。光学素子50は、ホログラム記録媒体55に代えて或いはホログラム記録媒体55に加えて、各位置に照射されたコヒーレント光の進行方向を変化させるとともに拡散させて、被照明領域LZの全域をコヒーレント光で照明する光学要素としてのレンズアレイを有するようにしてもよい。このような具体例として、拡散機能を付与された全反射型または屈折型のフレネルレンズやフライアイレンズ等を挙げることができる。このような照明装置40においても、照射装置60が、レンズアレイ上をコヒーレント光が走査するようにして、光学素子50にコヒーレント光を照射するようにし、且つ、照射装置60から光学素子50の各位置に入射したコヒーレント光が、レンズアレイによって進行方向を変化させられて被照明領域LZを照明するよう、照射装置60および光学素子50を構成しておくことにより、スペックルを効果的に目立たなくさせることができる。
(照明方法)
上述した形態において、照射装置60が光学素子50上でコヒーレント光を一次元方向に走査可能とするように構成され、且つ、光学素子50のホログラム記録媒体55(またはレンズアレイ)が各位置に照射されたコヒーレント光を二次元方向に拡散するよう(拡げるように、発散させるように)に構成され、これにより、照明装置40が二次元的な被照明領域LZを照明する例を示した。ただし、既に説明してきたように、このような例に限定されることはなく、例えば、照射装置60が光学素子50上でコヒーレント光を二次元方向に走査可能とするように構成され、且つ、光学素子50のホログラム記録媒体55(またはレンズアレイ)が各位置に照射されたコヒーレント光を二次元方向に拡散するよう(拡げるように、発散させるように)に構成され、これにより、照明装置40が二次元的な被照明領域LZを照明してもよい(図8を参照しながら、既に説明した態様)。
また、既に言及しているように、照射装置60が光学素子50上でコヒーレント光を一次元方向に走査可能とするように構成され、且つ、光学素子50のホログラム記録媒体55(またはレンズアレイ)が各位置に照射されたコヒーレント光を一次元方向に拡散するよう(拡げるように、発散させるように)に構成され、これにより、照明装置40が一次元的な被照明領域LZを照明するようにしてもよい。この態様において、照射装置60によるコヒーレント光の走査方向と、光学素子のホログラム記録媒体55(またはレンズアレイ)の拡散方向(拡げる方向)と、が平行となるようにしてもよい。
さらに、照射装置60が光学素子50上でコヒーレント光を一次元方向または二次元方向に走査可能とするように構成され、且つ、光学素子50のホログラム記録媒体55(またはレンズアレイ)が各位置に照射されたコヒーレント光を一次元方向に拡散するよう(拡げるように、発散させるように)に構成されていてもよい。この態様において、既に説明したように、光学素子50が複数のホログラム記録媒体55(またはレンズアレイ)を有し、各ホログラム記録媒体55(またはレンズアレイ)に対応した被照明領域LZを順に照明していくことによって、照明装置40が二次元的な領域を照明するようにしてもよい。この際、各被照明領域LZが、人間の目では同時に照明されているかのような速度で、順に照明されていってもよいし、あるいは、人間の目でも順番に照明していると認識できるような遅い速度で、順に照明されていってもよい。
(変形例の組み合わせ)
なお、以上において上述した基本形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
<付加形態>
〔付加形態の構成および付加形態の作用〕
次に、上述してきた基本形態に付加され得る付加形態について、図10に例示された照明装置40、投射装置20および投射型映像表示装置10を参照しながら、説明する。以下の説明では、上述の基本形態に追加される点についてのみ説明し、その他の部分については、図10においても上述の基本形態と同様の符号を用いているように、上述の基本形態と同様にすることができる。
上述してきた基本形態では、コヒーレント光が光学素子50のホログラム記録媒体55上を走査するようにして、当該コヒーレント光が照射装置60から光学素子50へ照射され、且つ、光学素子50に含まれるホログラム記録媒体55の各位置に入射したコヒーレント光の一次光が、被照明領域LZに重なる一定の領域へ一定の散乱板6の像5を再生し、これにより、被照明領域LZをコヒーレント光で照明するとともに、当該コヒーレント光に起因したスペックルを目立たなくさせることができる。すなわち、照射装置60は、直接、被照明領域LZをコヒーレント光で照明するのではなく、光学素子50で進行方向を変更されたコヒーレント光で被照明領域LZを照明している。しかも、照射装置60は光学素子50の全面にコヒーレント光を面状に照射し続けるのではなく、光学素子50がコヒーレント光を発散光束のように拡げる。
ただし、照射装置60から光学素子50へ入射したコヒーレント光は、常にそのすべてが、期待された通りに発散光束(拡散光束)状に整形され且つその進行方向を変更されるわけではない。例えば、照射装置60から光学素子50へ入射したコヒーレント光の一部は、光学素子50の入射面で正反射(鏡面反射)し得る。また、光学素子50がホログラム記録媒体55を含む場合、照射装置60からのコヒーレント光の一部は、ホログラム記録媒体55で回折されることなく当該ホログラム記録媒体55を透過する(いわゆる、0次光)。このような光学素子50での正反射光ならびに光学素子50を透過する0次光が、被照明領域LZに入射してしまうと、周囲と比較して明るさ(輝度)が急激に上昇する異常領域(点状領域、線状領域、面状領域)が被照明領域LZ内に発生してしまう。
一方、図10に示された形態では、このような光学素子50での正反射光の光路ならびに光学素子50を透過する0次光の光路が被照明領域LZに対して調整されている。すなわち、付加形態は、基本形態に対して、コヒーレント光の光路を改善している。
具体的には、図10に示すように、照射装置60からホログラム記録媒体55の各位置に入射したコヒーレント光のうちの、ホログラム記録媒体55で回折されずにホログラム記録媒体55を透過する0次光L101の光路が、被照明領域LZからずれている。すなわち、照射装置60からホログラム記録媒体55の各位置に入射したコヒーレント光のうちの0次光L101が、直接、被照明領域LZに入射することはない。これにより、周囲と比較して明るさ(輝度)が急激に上昇する異常領域(点状領域、線状領域、面状領域)が被照明領域LZ内に発生してしまうことを防止して、明るさの面内分布を均一とすることができる。また、投射装置20および投射型映像表示装置10においては、予定した映像を高品質で表示することができる。さらに、照射装置60の光源としてエネルギ密度の高いレーザ光を発振するレーザ光源を利用する場合には、安全性の面でも非常に好ましい。
また、図10に示された例では、ホログラム記録媒体55を透過した後の0次光L101の光路上に、当該0次光L101を吸収する第1のビームストッパ41が設けられている。このため、光学素子50において期待された方向に進行方向を変化させられなかったコヒーレント光L101が、意図しない方向から被照明領域LZに入射することをより確実に防止することができる。加えて、エネルギ密度の高いレーザ光を発振するレーザ光源を照射装置60の光源として利用する場合には、0次光L101が常に一定の場所、例えば照明装置40の筐体の一部分に照射されることに起因して、当該照明装置の筐体等が損傷してしまうことを、効果的に抑制することができる。また、第1のビームストッパ41によってコヒーレント光の漏れ出しを安定して防止することができれば、照射装置60からのコヒーレント光の出力を高め、照明装置40において被照明領域LZを均一且つ明るく照明することができ、投射装置20および投射型映像表示装10においては輝度ムラの無い高品質の映像を明るく表示することができる。
とりわけ、図示する例では、第1のビームストッパ41は、ホログラム記録媒体55を透過した直後における0次光L101の光路上に配置されている。つまり、ホログラム記録媒体55を透過した後に更に反射や屈折等によって進行方向を変更する前の0次光L101の光路上に配置されている。反射や屈折等は少なからずコヒーレント光を分散させることにもなり得るため、図10に示された例での第1のビームストッパ41によれば、ホログラム記録媒体55を透過した0次光L101を極めて効果的に吸収し、0次光L101が意図せず漏れ出すことに起因した不具合の発生を、より効果的に抑制することができる。
なお、ビームストッパとしては、特に限定されることなく、広くコヒーレント光を吸収し得る部材を用いることができる。具体的には、黒色の光吸収性ゴム材料や無機酸化物(一例として、黒アルマイト処理したアルミニウム)等を用いることができる。
加えて、図10に示された例では、照射装置60からホログラム記録媒体55の各位置に向かうコヒーレント光のうちの、光学素子50の例えば平坦面からなる入射面をなす表面で正反射した正反射光L102の光路が、被照明領域LZからずれている。これによっても、被照明領域LZ内に明るさの面内ばらつき(輝度の面内ばらつき)が生じることを防止することができ、また、投射装置20および投射型映像表示装置10においては、予定した映像を高品質で表示することができる。さらに、照明装置40、投射装置20および投射型映像表示装置10をより安全に使用することも可能となる。
また、図10に示された例では、光学素子50の表面で正反射した正反射光L102の光路上に、当該正反射光L102を吸収する第2のビームストッパ42が設けられている。とりわけ、図示する例では、第2のビームストッパ42は、光学素子50の表面で正反射した直後における正反射光L102の光路上に配置されている。つまり、光学素子50の表面で正反射した後に更に反射や屈折等によって進行方向を変更する前の正反射光L102の光路上に配置されている。このため、図示された例での第2のビームストッパ42によれば、光学素子50の表面で正反射した正反射光L102を極めて効果的に吸収し、正反射光L102が意図せず漏れ出すことに起因した不具合の発生を、より効果的に抑制することができる。
さらに、図10に示された例では、照射装置60が、コヒーレント光を生成するレーザ光源61aと、レーザ光源61aからのコヒーレントなレーザ光の進行方向を変化させる走査デバイス65と、を有している。その一方で、光源61aからのコヒーレント光が走査デバイス65で進行方向を変化させられなかったと仮定した場合における走査デバイス65の位置を通過した後の仮定のコヒーレント光(直進光)L103の光路が、被照明領域LZからずれている。このような光路設計によれば、走査デバイス65の誤作動や走査デバイス65の破損等の何らかの理由によって、走査デバイス65で進行方向を変化させられ得なくなった光源61aからのコヒーレント光L103が、被照明領域LZに入射してしまうことを防止することができる。これにより、照明装置40において、被照明領域LZ内に明るさの面内ばらつき(輝度の面内ばらつき)が生じることを防止することができ、また、投射装置20および投射型映像表示装置10においては、予定した映像を高品質で表示することができる。さらに、照明装置40、投射装置20および投射型映像表示装置10をより安全に使用することも可能となる。
加えて、図10に示された例では、光源61aからのコヒーレント光が走査デバイス65で進行方向を変化させられなかったと仮定した場合における走査デバイス65の位置を通過した後の仮定のコヒーレント光(直進光)L103の光路上に、当該進行方向を変化させられなかったコヒーレント光L103を吸収する第3のビームストッパ43が設けられている。とりわけ、図示する例では、第3のビームストッパ43は、走査デバイス65の位置を通過した直後における当該コヒーレント光L103の光路上に配置されている。つまり、何らかの理由で走査デバイス65によって進行方向を変化させられなかった光L103が、走査デバイス65の位置を通過した後に反射や屈折等によって進行方向を変化させられる前の光路上に、第3のビームストッパ43が配置されている。このため、図示された例での第3のビームストッパ43によれば、何らかの理由で走査デバイス65によって進行方向を変化させられなかった光L103が意図せず漏れ出すことに起因した不具合の発生を、より効果的に抑制することができる。
〔付加形態への変形〕
図10に例示された一具体例を参照しながら説明してきた付加形態に対して、種々の変更を加えることが可能である。以下、変更(変形)の一例について説明する。
既に説明したように、光学素子50は、ホログラム記録媒体55に代えて或いはホログラム記録媒体55に加えて、各位置に照射されたコヒーレント光の進行方向を変化させるとともに拡散させて、被照明領域LZの全域へコヒーレント光を照明する光学要素としてのレンズアレイを有するようにしてもよい。レンズアレイを用いた場合には、ホログラム記録媒体55を用いた場合と同様に、本来意図していないにもかかわらず何らかの理由で、レンズアレイの入射面で正反射する光や、レンズアレイを透過する光が生じ得る。このような点も考慮して、光学素子50がレンズアレイを有する場合には、次のように構成してもよい。
レンズアレイを有した光学素子50が用いられる場合、光学素子50の各位置に向かうコヒーレント光のうちの光学素子50の例えば平坦面からなる入射面で正反射した正反射光の光路が被照明領域LZからずれていることが好ましい。この場合、図10を参照して既に説明した光学素子50がホログラム記録媒体55からなる場合と同様に、照明装置40において、被照明領域LZ内に明るさの面内ばらつきが生じることを防止することができるとともに、投射装置20および投射型映像表示装置10においては、予定した映像を輝度ムラの無い高品質で表示することができる。さらに、照明装置40、投射装置20および投射型映像表示装置10をより安全に使用することも可能となる。
加えて、光学素子50がレンズアレイを有する場合、光学素子50の各位置に向かうコヒーレント光のうちの光学素子50の入射面で正反射した正反射光の光路上に、ビームストッパが設けられていることが好ましい。とりわけ、このビームストッパが、図10に示された例と同様に、光学素子50の表面で正反射した直後における正反射光の光路上に、すなわち、光学素子50の表面で正反射した後に更に反射や屈折等によって進行方向を変更する前の光路上に、配置されていることが、さらに好ましい。図10を参照して既に説明した光学素子50がホログラム記録媒体55からなる場合と同様に、光学素子50の表面で正反射した正反射光を極めて効果的に吸収し、正反射光が意図せず漏れ出すことに起因した不具合の発生を効果的に抑制することができる。
また、レンズアレイを有した光学素子50が用いられる場合、光学素子50の各位置に向かうコヒーレント光のうちの光学素子50のレンズアレイを透過した透過光の光路が被照明領域LZからずれていることが好ましい。この場合、図10を参照して既に説明した光学素子50がホログラム記録媒体55からなる場合と同様に、照明装置40において、被照明領域LZ内に明るさの面内ばらつき(輝度の面内ばらつき)が生じることを防止することができるとともに、投射装置20および投射型映像表示装置10においては、予定した映像を輝度ムラの無い高品質で表示することができる。さらに、照明装置40、投射装置20および投射型映像表示装置10をより安全に使用することも可能となる。
なお、単位レンズの集合体として構成されたレンズアレイ上をコヒーレント光が走査する場合、隣り合う二つの単位レンズ間にコヒーレント光が入射することもある。この位置に入射した光は、本来意図した方向に進行方向を変更することができず、且つ、レンズアレイが屈折および反射のいずれによって光の進行方向を変化させることを意図されているかによらず、概ね直進する方向に透過する光(直進透過光)が多く存在するようになる。この点からすれば、レンズアレイを有した光学素子50が用いられる場合、照射装置60からのコヒーレント光が光学素子50で進行方向を変化させられなかったと仮定した場合における光学素子50の位置を通過した後の仮定のコヒーレント光(直進透過光)の光路が、被照明領域LZからずれていることが好ましい。このような光路設計によれば、光学素子50の破損や脱落等をも含めた何らかの理由で、光学素子50で予定したとおりに進行方向を変化させられなかった光が被照明領域LZに入射してしまうことを効果的に防止することができる。
加えて、光学素子50を透過した透過光の光路上に、ビームストッパが設けられていることが好ましい。とりわけ、このビームストッパが、光学素子50を通過した直後における光路上に、すなわち、光学素子50を通過した後に反射や屈折等によって進行方向を変化させられる前の光路上に配置されていることが好ましい。このようなビームストッパによれば、何らかの理由で光学素子50によって進行方向を変化させられなかった光が意図せず漏れ出すことに起因した不具合の発生を、効果的に抑制することができる。
また、照射装置60からのコヒーレント光が光学素子50で進行方向を変化させられなかったと仮定した場合における光学素子50の位置を通過した後の仮定のコヒーレント光(直進透過光)の光路上に、ビームストッパが設けられていてもよい。とりわけ、このビームストッパが、光学素子50の位置を通過した直後における光路上に、すなわち、光学素子50の位置を通過した後に反射や屈折等によって進行方向を変化させられる前の光路上に配置されていることが好ましい。このようなビームストッパによれば、何らかの理由で光学素子50によって進行方向を変化させられなかった光を効果的に吸収することができる。
さらに、レンズアレイを有した光学素子50が用いられる場合にも、図10に示された例と同様に、光源61aからのコヒーレント光が走査デバイス65で進行方向を変化させられなかったと仮定した場合における走査デバイス65の位置を通過した後の仮定のコヒーレント光(直進光)の光路が、被照明領域LZからずれていることが好ましい。この場合、上述したホログラム記録媒体55を有した光学素子50と同様に、被照明領域LZに入射してしまうことを防止することができる。これにより、照明装置40において、被照明領域LZ内に明るさの面内ばらつき(輝度の面内ばらつき)が生じることを防止することができ、また、投射装置20および投射型映像表示装置10においては、予定した映像を高品質で表示することができる。さらに、照明装置40、投射装置20および投射型映像表示装置10をより安全に使用することも可能となる。
加えて、図10に示された例と同様に、光源61aからのコヒーレント光が走査デバイス65で進行方向を変化させられなかったと仮定した場合における走査デバイス65の位置を通過した後の仮定のコヒーレント光(直進光)の光路上に、当該進行方向を変化させられなかったコヒーレント光を吸収するビームストッパが設けられていることが好ましい。とりわけ、このビームストッパが、走査デバイス65の位置を通過した直後における光路上に、すなわち、何らかの理由で走査デバイス65によって進行方向を変化させられなかったコヒーレント光が、走査デバイス65の位置を通過した後に反射や屈折等によって進行方向を変化させられる前の光路上に、設けられていること好ましい。このようなビームストッパによれば、上述したホログラム記録媒体55を有した光学素子50と同様に、何らかの理由で走査背バイス65によって進行方向を変化させられなかった光が意図せず漏れ出すことに起因した不具合の発生を、効果的に抑制することができる。