以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る車両用冷暖房装置のシステム構成を表す図である。この車両用冷暖房装置は、電気自動車の冷暖房装置として具体化されたものである。
車両用冷暖房装置1は、圧縮機2、補助凝縮器3、室外熱交換器5、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。車両用冷暖房装置1は、冷媒としての代替フロン(HFO−1234yf)が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式の冷暖房装置として構成されている。
圧縮機2、室外熱交換器5およびアキュムレータ8は、車室外(エンジンルーム)に設けられている。一方、車室内には空気の熱交換が行われるダクトが設けられ、そのダクトにおける空気の流れ方向上流側に蒸発器7が配設され、下流側に補助凝縮器3が配設されている。補助凝縮器3は、室内凝縮器として構成されている。
車両用冷暖房装置1は、冷房運転時と暖房運転時とで複数の冷媒循環通路を切り替えるように運転される。この冷凍サイクルは、補助凝縮器3と室外熱交換器5とが凝縮器として並列に動作可能に構成され、また、蒸発器7と室外熱交換器5とが蒸発器として並列に動作可能に構成されている。この冷凍サイクルでは、冷房運転時に冷媒が循環する第1冷媒循環通路、暖房運転時に冷媒が循環する第2冷媒循環通路、除湿運転時に冷媒が循環する第3冷媒循環通路が形成される。
第1冷媒循環通路は、圧縮機2→室外熱交換器5→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第2冷媒循環通路は、圧縮機2→補助凝縮器3→室外熱交換器5→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第3冷媒循環通路は、圧縮機2→補助凝縮器3→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。室外熱交換器5を流れる冷媒の流れは、第1冷媒循環通路と第2冷媒循環通路とで逆方向となっている。
具体的には、圧縮機2の吐出室につながる通路が分岐し、その一方である第1通路21が室外熱交換器5の一方の出入口につながり、他方である第2通路22が補助凝縮器3の入口につながっている。室外熱交換器5の他方の出入口は第3通路23を介して蒸発器7の入口に接続され、蒸発器7の出口は第4通路24(戻り通路)を介してアキュムレータ8の入口に接続されている。第1通路21、第3通路23および第4通路24により第1冷媒循環通路が形成される。
第1通路21は室外熱交換器5の近傍でバイパス通路26に分岐し、バイパス通路26はアキュムレータ8の入口に接続されている。また、第2通路22は中間部においてバイパス通路27に分岐し、バイパス通路27は室外熱交換器5の他方の出入口に接続されている。補助凝縮器3の出口には第5通路25が接続されている。第5通路25は、その下流側にて第1分岐通路28と第2分岐通路29とに分岐しており、それぞれ第3通路23に接続されている。第2通路22、第5通路25(第1分岐通路28)、第3通路23およびバイパス通路26により第2冷媒循環通路が形成される。一方、第2通路22、第5通路25(第2分岐通路29)、第3通路23および第4通路24により第3冷媒循環通路が形成される。
第1分岐通路28と第2分岐通路29との分岐点、第1分岐通路28と第3通路23との合流点、および第2分岐通路29と第3通路23との合流点を含むように第1制御弁4が設けられている。第1通路21とバイパス通路26との分岐点には第2制御弁6が設けられている。さらに、第2通路22とバイパス通路27との分岐点には第3制御弁9が設けられている。
圧縮機2は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成され、図示しないバッテリからの供給電流により駆動され、モータの回転数に応じて冷媒の吐出容量が変化する。
補助凝縮器3は、室外熱交換器5とは別に冷媒を放熱させる補助的な凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧の冷媒が補助凝縮器3を通過する際に放熱する。車室内に導入された空気は、補助凝縮器3を通過する過程で温められる。すなわち、ダクトに取り込まれて蒸発器7にて冷却および除湿された空気のうち、図示しないエアミックスドアにて振り分けられた空気が補助凝縮器3を通過することにより適度に加熱される。補助凝縮器3を通過した空気と迂回した空気とが補助凝縮器3の下流側にて混合されて目標の温度に調整される。
室外熱交換器5は、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。室外熱交換器5が蒸発器として機能する際には、膨張装置(後述の差圧弁32)の通過により低温・低圧となった冷媒が、室外熱交換器5を通過する際に蒸発する。
蒸発器7は、車室内に配置され、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。すなわち、膨張装置(後述の差圧弁31,開閉弁33)の通過により低温・低圧となった冷媒は、蒸発器7を通過する際に蒸発する。車室内に導入された空気は、その蒸発潜熱によって冷却され、除湿される。このとき冷却・除湿された空気は、補助凝縮器3の通過過程で加熱される。
アキュムレータ8は、蒸発器から送出された冷媒を気液分離して溜めておく装置であり、液相部と気相部とを有する。このため、仮に蒸発器7から想定以上の液冷媒が導出されたとしても、その液冷媒を液相部に溜めおくことができ、気相部の冷媒を圧縮機2に導出することができる。
第1制御弁4は、共用のボディに差圧弁31(「第1の差圧弁」として機能する),差圧弁32(「第2の差圧弁」として機能する),開閉弁33(「制御弁」として機能する)を収容する複合弁として構成されている。差圧弁31は、第3通路23における第1分岐通路28との合流点と第2分岐通路29との合流点との間に設けられている。差圧弁32は第1分岐通路28に設けられ、開閉弁33は第2分岐通路29に設けられている。差圧弁31,32および開閉弁33は、いずれもオリフィス機能を有し、膨張装置として機能する。共用のボディには、開閉弁33を駆動するアクチュエータが組み付けられている。本実施形態では、そのアクチュエータとしてソレノイドを用いるが、ステッピングモータなどの電動機を用いてもよい。第1制御弁4の具体的構成については後述する。
第2制御弁6は、共用のボディに比例弁34,35を収容する複合弁として構成されている。比例弁34,35は共用のアクチュエータにて駆動される。比例弁34は大口径の弁であり、第1通路21の開度を調整する。比例弁35は大口径の弁であり、バイパス通路26の開度を調整する。本実施形態では、第2制御弁6として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。第2制御弁6の具体的構成については後述する。
第3制御弁9は、共用のボディに比例弁37,36とを収容し、それらを1つのアクチュエータにて駆動する複合弁として構成されている。比例弁37は大口径の弁であり、第2通路22の開度を調整する。比例弁38は小口径の弁であり、バイパス通路27の開度を調整する。本実施形態では、第3制御弁9として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。第3制御弁9の具体的構成については後述する。
以上のように構成された車両用冷暖房装置1は、図示しない制御部により制御される。制御部は、車両の乗員によりセットされた室温を実現するために各アクチュエータの制御量を演算し、各アクチュエータの駆動回路に制御信号を出力する。制御部は、車室内外の温度、蒸発器7の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて各制御弁の制御量(弁開度や開閉状態)を決定し、その制御量が実現されるようアクチュエータに電流を供給する。制御部は、各制御弁の制御量が実現されるよう制御パルス信号を出力する。このような制御により、圧縮機2は、その吸入室を介して吸入圧力Psの冷媒を導入し、これを圧縮して吐出圧力Pdの冷媒として吐出する。なお、本実施形態ではこのような制御を実現するために、補助凝縮器3の出口、室外熱交換器5の出入口、蒸発器7の入口と出口のそれぞれの温度を検出するための複数の温度センサが設置されている。
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図2は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は通常冷房運転時の状態を示し、(B)は特定暖房運転時の状態を示し、(C)は通常暖房運転時の状態を示し、(C)は除霜運転時の状態を示している。なお、「特定暖房運転」は、暖房運転において除湿の機能を高めた運転状態である。
図2(A)に示すように、通常冷房運転時においては、第2制御弁6において比例弁34が開弁状態とされ、比例弁35が閉弁状態とされる。また、第3制御弁9において比例弁37,38がいずれも閉弁状態とされる。さらに、第1制御弁4において開閉弁33が閉弁状態とされる。その結果、差圧弁31が開弁状態となる一方、差圧弁32が閉弁状態となり、第1冷媒循環通路のみが開放される。このため、圧縮機2から吐出冷媒は室外熱交換器5および蒸発器7に導かれる。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室外熱交換器5を経ることで凝縮され、差圧弁31の後述するオリフィスにて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器7に導入される。蒸発器7の入口に導入された冷媒は、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。蒸発器7から導出された冷媒はアキュムレータ8に導入される。
図2(B)に示すように、特定暖房運転時においては、第2制御弁6において比例弁34が閉弁状態とされ、比例弁35が開弁状態とされる。また、第3制御弁9において比例弁37が開弁状態とされ、比例弁38が閉弁状態とされる。さらに、第1制御弁4において開閉弁33が開弁状態とされる。その結果、差圧弁31が閉弁状態となる一方、差圧弁32が開弁状態となり、第2冷媒循環通路および第3冷媒循環通路が開放される。第1冷媒循環通路は遮断される。このため、補助凝縮器3から導出された冷媒は、一方で室外熱交換器5に導かれ、他方で蒸発器7に導かれる。このとき、差圧弁32および開閉弁33が膨張装置として機能する。室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、補助凝縮器3を経て凝縮される。補助凝縮器3から導出された冷媒は、一方で差圧弁32の後述するオリフィスにて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、室外熱交換器5を通過する際に蒸発される。室外熱交換器5から導出された冷媒は、比例弁35を経てアキュムレータ8に導入される。また、補助凝縮器3から導出された冷媒は、他方で開閉弁33の後述する絞り通路にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器7を通過する際に蒸発される。蒸発器7から導出された冷媒はアキュムレータ8に導入される。
図2(C)に示すように、通常暖房運転時においては、第2制御弁6において比例弁34が閉弁状態とされ、比例弁35が開弁状態とされる。また、第3制御弁9において比例弁37が開弁状態とされ、比例弁38が閉弁状態とされる。さらに、第1制御弁4において開閉弁33が閉弁状態とされる。その結果、差圧弁31が閉弁状態となる一方、差圧弁32が開弁状態となる。それにより、第2冷媒循環通路のみが開放される。このため、補助凝縮器3から導出された冷媒は第3通路23を介して室外熱交換器5に導かれる。このとき、差圧弁32が膨張装置として機能する。なお、蒸発器7には冷媒が供給されないため、蒸発器7は実質的に機能しなくなり、室外熱交換器5のみが蒸発器として機能するようになる。
ところで、車両が極寒の環境下におかれた場合などには、室外熱交換器5が凍結して空調制御の制御性を低下させてしまうことも想定される。このため、制御部は、外部情報に基づいて適宜除霜運転を実行する。すなわち、図2(D)に示すように、除霜運転時においては、第2制御弁6において比例弁34が閉弁状態とされ、比例弁35が開弁状態とされる。また、第3制御弁9において比例弁37が閉弁状態とされ、比例弁38が開弁状態とされる。さらに、第1制御弁4において開閉弁33が閉弁状態とされる。その結果、差圧弁31,32はいずれも閉弁状態となる。なお、除霜運転時において室外熱交換器5と外部の空気との熱交換を抑制するために、室外熱交換器5に外気(風)が当たることを抑制するシャッタ等を設けてもよい。このとき、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒が、比例弁38を通過して室外熱交換器5に供給され、比例弁35およびアキュムレータ8を経由して圧縮機2に戻る。その結果、ホットガスが室外熱交換器5に供給され続ける状態となり、除霜を確実に実行することが可能となる。
次に、本実施形態の制御弁の具体的構成について説明する。
図3は、第1制御弁4の構成を表す断面図である。第1制御弁4は、ソレノイド駆動式の電磁弁として構成され、共用のボディ50に差圧弁31,32および開閉弁33を組み付けて構成されている。ボディ50の上端開口部には、段付円筒状のガイド部材51を介してソレノイド52が取り付けられている。ガイド部材51は、ソレノイド52のスリーブも兼ねており、ボディ50の上端開口部にシール部材(Oリング)を介して螺合固定されている。ソレノイド52は、開閉弁33のアクチュエータとして機能する。
ボディ50の一方の側部には導入ポート54が設けられ、他方の側部には導出ポート56が設けられている。ボディ50の下部には導入出ポート58が設けられている。導入ポート54は第5通路25に連通する。導出ポート56は、第3通路23における差圧弁31の下流側に連通する。導入出ポート58は、第3通路23における差圧弁31の上流側に連通する。
開閉弁33は、ボディ50に主弁60とパイロット弁62とを同軸状に収容して構成される。ボディ50には、導入ポート54と導出ポート56とをつなぐ主通路(「第3通路」に該当する)が設けられ、その主通路に小口径の主弁孔64が設けられている。そして、主弁孔64の上流側開口端部により主弁座66が形成されている。主弁孔64の上流側の圧力室65には段付円筒状の主弁体68が配設されている。主弁体68は、ガイド部材51の内周面に摺動可能に支持されている。
主弁体68の上半部中央には、段付円筒状の弾性体(例えばゴム)からなる弁座形成部材70が嵌着されている。一方、主弁体68の下半部中央には、段付円筒状の弾性体(例えばゴム)からなる弁部材72が嵌着されている。そして、弁座形成部材70と弁部材72により上端を挟持されるように円筒状の通路形成部材74(「間隙通路形成部」に該当する)が設けられている。弁座形成部材70の内方にパイロット弁孔78が形成され、その上端開口端部に副弁座80が形成されている。弁部材72が主弁座66に着脱して主弁60を開閉する。通路形成部材74は、主弁孔64を軸線方向に貫通し、パイロット弁孔78を主弁孔64の下流側に連通させるパイロット通路82を形成する。また、通路形成部材74は、主弁孔64との間に絞り通路84を形成し、主弁60の開弁時に主弁孔64を流れる冷媒の流量を規制するとともに、その冷媒を減圧膨張させる。
主弁体68は、主弁孔64の上流側の圧力室65を高圧室86と背圧室88とに区画する。背圧室88はパイロット通路82に連通する。主弁体68の周縁部近傍には小断面のリーク通路90が形成され、高圧室86と背圧室88とを連通させている。リーク通路90はパイロット通路82よりも断面が相当小さく設定されている。背圧室88には、パイロット弁体92が配設されている。パイロット弁体92は、ソレノイド52の後述するプランジャに一体形成され、副弁座80に着脱してパイロット弁62を開閉する。
以上の構成において、導入ポート54と導出ポート56とを主弁60(主弁孔64)を介してつなぐ通路が開閉弁33における「主通路」を構成し、導入ポート54と導出ポート56とをリーク通路90,背圧室88およびパイロット弁62(パイロット通路82)を介してつなぐ通路が開閉弁33における「副通路」を構成する。高圧室86の圧力Phは、リーク通路90を経ることで背圧室88にて中間圧力Pp1となる一方、主弁60またはパイロット弁62を経て減圧されて圧力Polとなる。中間圧力Pp1は、パイロット弁62の開閉状態によって変化する。
一方、ソレノイド52は、ガイド部材51に連設された円筒状のスリーブ94を有する。スリーブ94の上端部にはコア96が固定されている。スリーブ94の内方にはプランジャ98が摺動可能に収容され、コア96と軸線方向に対向配置されている。スリーブ94およびコア96の外周部にはボビン100が設けられ、そのボビン100に電磁コイル102が巻回されている。ボビン100を保護するようにケース104が設けられている。ケース104は、環状のシール部材105を介してボディ50に組み付けられている。
プランジャ98は円柱状をなし、その下端面中央に円錐状のパイロット弁体92が突設されている。すなわち、パイロット弁体92はプランジャ98と一体的に動作する。コア96は円柱状をなし、その下端面中央に弾性体(例えばゴム)からなる干渉部材106が嵌着されている。干渉部材106は、ソレノイド52が駆動されてコア96にプランジャ98が吸引されたときの衝撃を吸収する。干渉部材106とプランジャ98との間には、プランジャ98をパイロット弁62の閉弁方向に付勢するスプリング108(「付勢部材」に該当する)が介装されている。
差圧弁31は、導入出ポート58と導出ポート56とをつなぐ通路(「第1通路」に該当する)を開閉する。すなわち、ボディ50には、導入出ポート58と導出ポート56とをつなぐ通路に小口径の弁孔110(「第1弁孔」に該当する)が設けられている。そして、弁孔110の下流側開口端部により弁座112が形成されている。そして、弁孔110に下流側から接離して差圧弁31を開閉するように弁体114(「第1弁体」に該当する)が設けられている。
差圧弁31は、その前後差圧が設定値(第1の設定値)以上になると開弁する逆止弁として機能するとともに、その開弁時の冷媒流量を制限するオリフィスとしても機能する。すなわち、ボディ50における弁孔110の下流側には、円筒状のガイド部材120が圧入されている。ガイド部材120の内方にはガイド孔122が形成されている。弁孔110とガイド部材120との間には中間圧力室124が形成されている。
弁体114は、弁体部116とオリフィス部118とが一体に形成されたものであり、そのオリフィス部118がガイド孔122を貫通するように配置され、ガイド部材120に摺動可能に支持されている。弁体部116は、中間圧力室124に配置され、オリフィス部118の上流側に連設されている。弁体部116には、弾性体(例えばゴム)からなる弁部材が嵌着されている。弁体114は、この弁部材が弁座112に着脱することにより差圧弁31を開閉する。
オリフィス部118は、その上流側端部が中間圧力室124にて開口し、下流側開口端部が導出ポート56に連通している。すなわち、オリフィス部118の内部には、中間圧力室124と導出ポート56とを連通する小断面のオリフィス通路126が形成されている。図示のように、オリフィス通路126は、弁体114の開閉方向に延びるように形成されている。オリフィス部118は、上流側開口部の近傍にて外径がやや拡径されており、その拡径部がガイド部材120に係止されることにより、下流側への変位が規制される。弁体部116とガイド部材120との間には、弁体114を閉弁方向に付勢するスプリング128(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
このような構成により、導入出ポート58から導入された圧力Polは、弁部を経て減圧されることで中間圧力室124にて中間圧力Pp2となり、さらにオリフィス通路126を経て減圧されることでPeとなる。ただし、弁孔110の内径Aとガイド孔122の内径Bとが等しくされているため、弁体114に作用する中間圧力Pp2の影響はキャンセルされる。すなわち、差圧弁31は、その前後差圧(Pol−Pe)が設定値(第1の設定値)以上になると開弁する一方、その前後差圧が設定値に満たない状態において冷媒の逆流を防止する逆止弁として機能する。この設定値は、スプリング128の荷重により設定されている。
差圧弁32は、導入ポート54と導入出ポート58とをつなぐ通路(「第2通路」に該当する)を開閉する。すなわち、ボディ50には、導入ポート54と導入出ポート58とをつなぐ通路に小口径の弁孔130(「第2弁孔」に該当する)が設けられている。そして、弁孔130の下流側開口端部により弁座132が形成されている。そして、弁孔130に下流側から接離して差圧弁32を開閉するように弁体134(「第2弁体」に該当する)が設けられている。
差圧弁32は、その前後差圧が設定値(第2の設定値)以上になると開弁する逆止弁として機能するとともに、その開弁時の冷媒流量を制限するオリフィスとしても機能する。本実施形態においては、差圧弁32が差圧弁31と同様の構成を有し、設定値も同じ値が設定されるが、変形例においてはこれらを互いに異ならせてもよい。すなわち、ボディ50における弁孔130の下流側にはガイド部材120が圧入されている。弁体134は、弁体部116とオリフィス部118とが一体に形成されたものである。弁体134は、その弁部材が弁座132に着脱することにより差圧弁32を開閉する。
導入ポート54から導入された圧力Phは、弁部を経て減圧されることで中間圧力室124にて中間圧力Pp3となり、さらにオリフィス通路126を経て減圧されることでPolとなる。ただし、弁孔130の内径Aとガイド孔122の内径Bとが等しくされているため、弁体134に作用する中間圧力Pp3の影響はキャンセルされる。すなわち、差圧弁32は、その前後差圧(Ph−Pol)が設定値(第2の設定値)以上になると開弁する一方、その前後差圧が設定値に満たない状態において冷媒の逆流を防止する逆止弁として機能する。この設定値は、スプリング128の荷重により設定されている。
次に、第1制御弁4の動作について説明する。
図4および図5は、第1制御弁4の動作状態を表す説明図である。図4は、ソレノイド52がオン(通電状態)にされた状態を表している(図2(B)に対応)。図5は、ソレノイド52がオフ(非通電状態)にされ、差圧弁32の前後差圧が設定値(第2の設定値)よりも大きい状態を表している(図2(C)に対応)。なお、既に説明した図3は、ソレノイド52がオフにされ、差圧弁31の前後差圧が設定値(第1の設定値)よりも大きい状態を表している(図2(A)に対応)。図中の太線矢印は冷媒の流れを示している。
図2(A)に示したように、比例弁37が閉弁され、比例弁34が開弁された状態でソレノイド52がオフにされると、第1制御弁4においては差圧弁31のみが開弁し、膨張装置として機能する。すなわち、図3に示すように、ソレノイド力が作用しないため、スプリング108の付勢力によりパイロット弁体92が副弁座80に着座し、パイロット弁62が閉弁状態となる。このとき、背圧室88には上流側からリーク通路90を介して冷媒が導入されるため、中間圧力Pp1は、上流側の圧力Phに等しくなる。
このとき、差圧弁31の前後差圧(Pol−Pe)が第1の設定値よりも大きくなり、弁体114がスプリング128の付勢力に抗して開弁方向に動作し、差圧弁31が開弁状態となる。その結果、導入出ポート58を介して導入された冷媒は、弁孔110およびオリフィス通路126を通過することにより減圧膨張され、導出ポート56を介して下流側へ導出される。このとき、弁体部116が弁座112から離間するとともに、オリフィス通路126内に差圧が発生する。
すなわち、弁体114が弁座112に着座した状態においては、オリフィス通路126の内部にはその全長にわたって下流側の圧力Peが作用していたところ、弁体114が弁座112から離間を開始すると同時にオリフィス通路126の上流部に上流側の圧力Polが作用するようになる。オリフィス通路126の圧力損失もあることから、その上流端から下流端に向けて圧力勾配が形成され、オリフィス通路126の内部を通過する冷媒により弁体114に開弁方向の流体摩擦が作用するようになる。この結果、弁体114の開弁開始と同時にその開弁が促進され、弁体114が速やかに図示のような全開状態に落ち着くことができる。その結果、弁体114が微小開度に留まることを防止でき、オリフィスとしての機能(オリフィスに設定された特性)を良好に発揮することができる。
なお、このときは導入ポート54側の圧力Phが導入出ポート58側の圧力Polよりも低いため、差圧弁32は逆止弁として機能し、閉弁状態を維持する。
一方、図2(B)に示したように、比例弁34が閉弁され、比例弁37が開弁された状態でソレノイド52がオンにされると、第1制御弁4において開閉弁33および差圧弁32が開弁し、膨張装置として機能する。差圧弁31は閉弁状態となる。すなわち、図4に示すように、ソレノイド力が作用するため、スプリング108の付勢力に抗してパイロット弁体92が副弁座80からリフトし、パイロット弁62が開弁状態となる。
このとき、背圧室88には下流側からパイロット通路82を介して冷媒が導入されるため、中間圧力Pp1は、下流側の圧力Peにほぼ等しくなる。すなわち、中間圧力Pp1が低下するため、主弁体68が上流側の圧力Phと中間圧力Pp1との差圧(Ph−Pp1)の影響を受けて開弁する。その結果、導入ポート54を介して導入された冷媒は、絞り通路84を通過することにより減圧膨張され、導出ポート56を介して下流側へ導出される。
またこのとき、差圧弁32の前後差圧(Ph−Pol)が第2の設定値よりも大きくなり、弁体114がスプリング128の付勢力に抗して開弁方向に動作し、差圧弁32が開弁状態となる。その結果、導入ポート54を介して導入された冷媒は、弁孔130およびオリフィス通路126を通過することにより減圧膨張され、導入出ポート58を介して下流側へ導出される。このとき、弁体部116が弁座132から離間するとともに、オリフィス通路126内に差圧が発生する。
すなわち、弁体114が弁座132に着座した状態においては、オリフィス通路126の内部にはその全長にわたって下流側の圧力Polが作用していたところ、弁体114が弁座132から離間を開始すると同時にオリフィス通路126の上流部に上流側の圧力Phが作用するようになる。オリフィス通路126の圧力損失もあることから、その上流端から下流端に向けて圧力勾配が形成され、オリフィス通路126の内部を通過する冷媒により弁体114に開弁方向の流体摩擦が作用するようになる。この結果、弁体114の開弁開始と同時にその開弁が促進され、弁体114が速やかに図示のような全開状態に落ち着くことができる。その結果、弁体114が微小開度に留まることを防止でき、オリフィスとしての機能(オリフィスに設定された特性)を良好に発揮することができる。
なおこのとき、導入出ポート58側の圧力Polと導出ポート56側の圧力Peとの差圧、つまり差圧弁31の前後差圧は第1の設定値に満たないため、差圧弁31は逆止弁として機能し、閉弁状態を維持する。
また、図2(C)に示したように、比例弁34が閉弁され、比例弁37が開弁された状態でソレノイド52がオフにされると、第1制御弁4においては差圧弁32のみが開弁し、膨張装置として機能する。すなわち、図5に示すように、ソレノイド力が作用しないため、パイロット弁62が閉弁状態となる。このとき、背圧室88の中間圧力Pp1は、上流側の圧力Phに等しくなる。
このとき、差圧弁32の前後差圧(Ph−Pol)が第2の設定値よりも大きくなり、差圧弁32が開弁状態となる。その結果、導入ポート54を介して導入された冷媒は、弁孔130およびオリフィス通路126を通過することにより減圧膨張され、導入出ポート58を介して下流側へ導出される。なお、このときの差圧弁32の動作は、図4に示した場合と同様である。一方、導入出ポート58側の圧力Polと導出ポート56側の圧力Peとの差圧、つまり差圧弁31の前後差圧は第1の設定値に満たないため、差圧弁31は逆止弁として機能し、閉弁状態を維持する。
図6は、第2制御弁6の構成を表す断面図である。第2制御弁6は、ステッピングモータ駆動式の電動弁として構成され、弁本体140とモータユニット142とを組み付けて構成されている。弁本体140は、有底筒状のボディ144に大口径の比例弁34,35を同軸状に収容して構成されている。
ボディ144の一方の側部には導入ポート146と導出ポート148が設けられ、他方の側部には導入出ポート150が設けられている。ボディ144の上方から順に導出ポート148、導入出ポート150、導入ポート146が配置されている。導入ポート146は圧縮機2の吐出室に連通し、導出ポート148は第1通路21を介して室外熱交換器5の一方の出入口に連通し、導入出ポート150はバイパス通路26に連通する。
ボディ144の上半部には、円筒状の区画部材151が配設されている。区画部材151は、シール部材を介してボディ144に同心状に組み付けられている。区画部材151の下部の内径が縮径されて弁孔154が形成され、その下端開口端縁により弁座156が形成されている。区画部材151における導出ポート148との対向面には、内外を連通する連通孔が設けられている。区画部材151の下端開口部は導入出ポート150に連通している。
ボディ144の中央部には、円筒状の区画部材153が配設されている。区画部材153は、シール部材を介してボディ144に同心状に組み付けられている。区画部材153の下部の内径が縮径されて弁孔155が形成され、その下端開口端縁により弁座157が形成されている。区画部材153における導入出ポート150との対向面には、内外を連通する連通孔が設けられている。区画部材153の下端開口部は導入ポート146に連通している。
ボディ144の上端部には、段付円筒状の区画部材158が配設されている。区画部材158は、弁本体140の内部とモータユニット142の内部とを区画する。区画部材158の上端中央部には、円ボス状の軸受部159が設けられている。軸受部159の外周面は滑り軸受として機能する。区画部材158の内方にはガイド孔160が形成されている。また、ボディ144の底部には、円ボス状のガイド部162が突設され、その内方にガイド孔164が形成されている。弁孔154,155およびガイド孔160,164は、モータユニット142の軸線に沿って同軸状に配置されている。
ボディ144の内方には、弁体166、弁体168、弁作動体200、伝達ロッド202が同軸状に配設されている。弁体166は、その上方に縮径部を介して区画部204が連設されている。区画部204は、その外周面にシール用のOリング205が嵌着されており、ガイド孔160に摺動可能に支持されている。区画部204と区画部材158との間には背圧室206が形成される。弁体166は、その下端部の外周面にリング状の弾性体(例えばゴム)が嵌着されており、その弾性体が弁座156に着脱して比例弁35を開閉する。
弁体166の内周面には雌ねじ部が設けられている。弁作動体200は、その外周面に雄ねじ部が形成され、弁体166の雌ねじ部に螺合している。伝達ロッド202は、その上半部が弁体166に内挿され、その上端部にて弁作動体200に連結されている。伝達ロッド202と弁体166との間に所定のクリアランスが存在するため、弁孔154の上流側の圧力Pogがそのクリアランスを介して背圧室206に導入される。区画部材153と弁体166との間には、弁体166を閉弁方向に付勢するスプリング208(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
弁体168は、伝達ロッド202の下端部に同軸状に固定されている。弁体168は、下方に延出する段付円筒状の区画部210を有する。区画部210は、その外周面にシール用のOリング212が嵌着されており、ガイド孔164に摺動可能に支持されている。弁体168の上端部には内外を連通する連通孔214が設けられており、弁孔155の下流側の圧力Ppが弁体168の内方にも導入される。弁体168は、その上端部の外周面にリング状の弾性体(例えばゴム)が嵌着されており、その弾性体が弁座157に着脱して比例弁34を開閉する。ボディ144の底部と弁体168との間には、弁体168を閉弁方向に付勢するスプリング209(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
弁作動体200は、段付円筒状をなし、その外周部に雄ねじ部が形成されている。雄ねじ部は、軸受部159の雌ねじ部に螺合する。弁作動体200の上端部には半径方向外向きに延出する複数(本実施形態では4つ)の脚部152が設けられており、モータユニット142のロータに嵌合している。弁作動体200は、モータユニット142の回転駆動力を受けて回転し、その回転力を並進力に変換する。すなわち、弁作動体200が回転すると、ねじ機構(「作動変換機構」として機能する)によって弁作動体200が軸線方向に変位し、弁体166,168を軸線方向(比例弁34,35の開閉方向)に駆動する。
本実施形態においては、弁孔154の有効径Aとガイド孔160の有効径Bとが等しく設定されている。また、弁孔155の有効径Cとガイド孔164の有効径Dとが等しく設定されている。このため、弁体166,168に作用する冷媒圧力の影響がキャンセルされる。
一方、モータユニット142は、ロータ172とステータ173とを含むステッピングモータとして構成されている。モータユニット142は、有底円筒状のスリーブ170の内方にロータ172を回転自在に支持するようにして構成されている。スリーブ170の外周には、励磁コイル171を収容したステータ173が設けられている。スリーブ170は、その下端開口部がボディ144に組み付けられており、ボディ144とともに第2制御弁6のボディを構成する。
ロータ172は、円筒状に形成された回転軸174と、その回転軸174の外周に配設されたマグネット176を備える。本実施形態では、マグネット176は24極に磁化されている。回転軸174の内方にはモータユニット142のほぼ全長にわたる内部空間が形成されている。回転軸174の内周面の特定箇所には、軸線に平行に延びるガイド部178が設けられている。ガイド部178は、後述する回転ストッパと係合するための突部を形成するものであり、軸線に平行に延びる一つの突条により構成されている。
回転軸174の下端部はやや縮径され、その内周面に軸線に平行に延びる4つのガイド部180が設けられている。ガイド部180は、軸線に平行に延びる一対の突条により構成され、回転軸174の内周面に90度おきに設けられている。この4つのガイド部180には、上述した弁作動体200の4つの脚部152が嵌合し、ロータ172と弁作動体200とが一体に回転できるようになっている。ただし、弁作動体200は、ロータ172に対する回転方向の相対変位は規制されるものの、そのガイド部180にそった軸線方向の変位は許容される。すなわち、弁作動体200は、ロータ172とともに回転しつつ各弁体の開閉方向に駆動される。
ロータ172の内方には、その軸線に沿って長尺状のシャフト182が配設されている。シャフト182は、その上端部がスリーブ170の底部中央に圧入されることにより片持ち状に固定され、ガイド部178に平行に内部空間に延在している。シャフト182は、弁作動体200と同一軸線上に配置されている。シャフト182には、そのほぼ全長にわたって延在する螺旋状のガイド部184が設けられている。ガイド部184は、コイル状の部材からなり、シャフト182の外面に嵌着されている。ガイド部184の上端部は折り返されて係止部186となっている。
ガイド部184には、螺旋状の回転ストッパ188が回転可能に係合している。回転ストッパ188は、ガイド部184に係合する螺旋状の係合部190と、回転軸174に支持される動力伝達部192とを有する。係合部190は一巻きコイルの形状をなし、その下端部に半径方向外向きに延出する動力伝達部192が連設されている。動力伝達部192の先端部がガイド部178に係合している。すなわち、動力伝達部192は、ガイド部178の一つの突条に当接して係止される。このため、回転ストッパ188は、回転軸174により回転方向の相対変位は規制されるが、ガイド部178に摺動しつつその軸線方向の変位が許容される。
すなわち、回転ストッパ188は、ロータ172と一体に回転し、その係合部190がガイド部184にそってガイドされることで、軸線方向に駆動される。ただし、回転ストッパ188の軸線方向の駆動範囲はガイド部178の両端に形成された係止部により規制される。同図には、回転ストッパ188が中間位置にある状態が示されている。回転ストッパ188が上方へ変位して係止部186に係止されると、その位置が上死点となる。回転ストッパ188が下方へ変位すると、その下死点にて係止される。
ロータ172は、その上端部がスリーブ170に回転自在に支持され、下端部が軸受部159に回転自在に支持されている。具体的には、回転軸174の上端開口部を封止するように有底円筒状の端部部材194が設けられている。そして、その端部部材194の中央に設けられた円筒軸196の部分が、スリーブ170の底部に突設された円ボス部に支持されている。すなわち、軸受部159が一端側の軸受部となり、スリーブ170における円筒軸196との摺動部が他端側の軸受部となっている。
なお、本実施形態においては、弁体166の摺動力(ガイド部204におけるOリング205とガイド孔160との摺動力)および弁体168の摺動力(ガイド部210におけるOリング212とガイド孔164との摺動力)の双方が、それぞれスプリング208の設定荷重とスプリング209の設定荷重との和よりも小さくなるように設定されている。また、弁体166の摺動力とスプリング208の設定荷重との和が、弁体168の摺動力とスプリング209の設定荷重との和とほぼ等しくなるように設定されている。例えば、弁体166の摺動力が1000g重、弁体168の摺動力が800g重となる場合、スプリング208の設定荷重を500g重に設定し、スプリング209の設定荷重を700g重に設定する。それにより、モータユニット142にて発生させる最大駆動力を抑えられるようにしている。
以上のように構成された第2制御弁6は、モータユニット142の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。すなわち、第1制御弁4の流量制御において、車両用冷暖房装置の図示しない制御部は、設定開度に応じたステッピングモータの駆動ステップ数を演算し、励磁コイル171に駆動電流(駆動パルス)を供給する。それによりロータ172が回転し、弁作動体200が回転駆動されて比例弁34,35の開閉状態および開度が調整される。一方、回転ストッパ188がガイド部184にそって駆動されることにより、各弁体の動作範囲が規制される。
以上のように構成された第2制御弁6は、次のように動作する。同図は、比例弁34が開弁状態とされ,比例弁35が閉弁状態とされる場合を示している。第2制御弁6は、例えば図2(A)に示した冷房運転時においてこのような状態をとる。図示の状態からロータ172が一方向に回転駆動されると、弁体168が閉弁方向に変位する。弁体168の変位量を調整することにより、比例弁34の開度を調整できる。
暖房運転時や除霜運転時においては、比例弁34が閉弁され、比例弁35が開弁される。すなわち、比例弁34を閉弁させた状態からロータ172がさらに同方向に回転駆動されることにより、ねじ機構により弁体166が開弁方向に移動させられる。
図7は、第3制御弁9の構成を表す断面図である。第3制御弁9は、ステッピングモータ駆動式の電動弁として構成され、弁本体240とモータユニット142とを組み付けて構成されている。なお、モータユニット142の構成については、第2制御弁6と同様であるため、同一の符号を付してその説明を省略する。
弁本体240は、有底筒状のボディ242に大口径の比例弁37と小口径の比例弁38とを同軸状に収容して構成される。ボディ242の一方の側部には導入ポート244が設けられ、他方の側部には上下に第1導出ポート246、第2導出ポート248が設けられている。導入ポート244は第2通路22を介して圧縮機2の吐出室に連通し、第1導出ポート246は第2通路22を介して補助凝縮器3の入口に連通し、第2導出ポート248はバイパス通路27を介して室外熱交換器5の他方の出入口に連通する。
ボディ242の上半部には、有底円筒状の区画部材250が配設されている。区画部材250は、その下端部の外周面にそれぞれ設けられたシール部材を介してボディ242に同心状に組み付けられている。区画部材250の下端部に弁孔252が形成され、その弁孔252の下端開口端縁により弁座254が形成されている。区画部材250における第1導出ポート246との対向面には、内外を連通する連通孔が設けられている。
ボディ242の内方には、大径の弁体260、小径の弁体262、および弁作動体200が同軸状に配設されている。弁体260が上流側から弁孔252に接離して比例弁37の開度を調整する。弁体260の外周面にはリング状の弾性体(例えばゴム)からなる弁部材が嵌着されており、その弁部材が弁座254に着座することにより、比例弁37を完全に閉じることが可能になる。
一方、ボディ242の下半部には、小円筒状のガイド部材264が配設されている。ガイド部材264は、導入ポート244と第2導出ポート248とをつなぐ通路の中央部に弁体260と同軸状に設けられ、その下半部がボディ242に圧入されている。ガイド部材264は、その上半部の内周面がガイド孔266を形成し、その下端部が弁孔268を形成している。また、弁孔268の上端開口端縁により弁座270が形成されている。ガイド部材264における導入ポート244との対向面には、内外を連通する連通孔が設けられている。図示のように、弁孔252および弁孔268の上流側に導入ポート244に連通する共通の高圧室272が形成され、弁孔252の下流側には第1導出ポート246に連通する低圧室274が形成され、弁孔268の下流側には第2導出ポート248に連通する低圧室276が形成されている。
弁体260は、縮径部を介してガイド部280が連設されている。すなわち、弁体260とガイド部280とが縮径部を介して一体化された段付円筒状の「弁駆動体」を構成している。ガイド部280は、低圧室274に配置されている。そして、ガイド部280がガイド孔160(正確には、ガイド孔160の下端部に嵌着されたOリング161)に摺動可能に支持されることにより、弁体260の開閉方向への安定した動作が確保されている。ガイド部280と区画部材158との間には背圧室206が形成される。また、弁体260とガイド部280とを貫通する連通路282が形成され、高圧室272と背圧室206とを連通させている。これにより、背圧室206には常に、導入ポート244から導入される上流側の圧力Pdが満たされる。
本実施形態においては、弁孔252の有効径Aとガイド孔160の有効径Bとが等しく設定されているため(弁体260の有効受圧面積とガイド部280の有効受圧面積とが実質的に等しくされているため)、弁体260に作用する冷媒圧力の影響はキャンセルされる。
弁体260の内方には長尺状の伝達ロッド284(「伝達部材」として機能する)が同軸状に挿通され、その伝達ロッド284の下端部に弁体262が作動連結可能に配設されている。伝達ロッド284の上端部は弁作動体200の底部を貫通し、その先端部が外方に加締められて係止部286となっている。すなわち、伝達ロッド284は、その上端部が弁作動体200の底部に支持されている。伝達ロッド284の下端部は半径方向外向きに突出した係止部288となっている。伝達ロッド284の上部と弁作動体200との間には、ばね受け290が挟まれるように固定されている。そして、ガイド部280の上端部とばね受け290との間にスプリング292(「付勢部材」として機能する)が介装されている。すなわち、弁体260と伝達ロッド284とは軸線方向に相対変位可能となっているが、通常はスプリング292によりばね受け290がガイド部280に係止されるよう軸線方向に付勢され、図示のように突っ張った状態を維持する。
弁体262は、段付円柱状をなし、弁体260の下方に同軸状に配設されている。弁体262は、ガイド部材264に摺動可能に挿通され、その先端部が弁孔268に対向配置されいる。弁体262は、いわゆるニードル弁体として構成され、その尖った先端部が弁孔268に挿抜される。そして、弁体262が弁座270に着脱することにより比例弁38が開閉される。
弁体262の上半部は円筒状の収容部となっており、伝達ロッド284の係止部288を軸線方向に相対変位可能に収容している。一方、弁体262の上端開口部が内方にやや加締められた係止部294となっており、係止部288の離脱を防止している。弁体260と弁体262との間には、弁体262を閉弁方向に付勢するスプリング296(「第2の付勢部材」として機能する)が介装されている。すなわち、弁体262と伝達ロッド284とはその収容部の長さだけ軸線方向に相対変位可能となっているが、通常はスプリング296により係止部294と係止部288とが係合する方向に付勢され、図示のように突っ張った状態を維持する。本実施形態においては、スプリング296の荷重がスプリング292の荷重よりも相当小さくなるように設定されている。例えば、図示の状態におけるスプリング292の荷重が600g重、スプリング296の荷重が100g重程度となるように設定される。一方、スプリング292の荷重とスプリング296の荷重との合力が、ガイド部280のOリング161における摺動抵抗(弁駆動体の摺動力:例えば600g重)よりも大きくなるように設定されている。なお、変形例においては、スプリング292の荷重を700g重とするなど、弁駆動体の摺動力よりも大きく設定してもよい。
以上のように構成された第3制御弁9は、モータユニット142の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ駆動式の制御弁として機能する。具体的には、大口径制御を実行する場合、図示の状態からロータ172が一方向に回転駆動(正転)されることにより、ロータ172とともに回転する弁作動体200がねじ機構によって下降する。このとき、弁作動体200がばね受け290を介してガイド部280と一体となった状態でこれを押し下げるようにして弁体260を開弁方向に変位させる。弁体260は、全閉状態と全開位置との間の範囲で駆動され、比例弁37の開度が調整される。このとき、モータユニット142の駆動力としては、Oリング161の摺動力(摺動抵抗)とスプリング296の付勢力(反力)との合力に打ち勝つだけの大きさがあれば足りる。
すなわち、伝達ロッド284と弁体262との作動連結が解除され、伝達ロッド284が弁体260とともに変位可能であるため、スプリング292の付勢力は反力として作用しない。このため、モータユニット142は、荷重の小さいスプリング296の付勢力(例えば最大200g重)とOリング161の摺動力(例えば600g)との合力に打ち勝つだけの駆動力を発生すればよい。なお、弁体262の係止部294と伝達ロッド284の係止部288との係合状態が解除されるため、弁体262と弁座270との間に過度な押圧力が作用することもない。
逆に、比例弁37を開弁状態から閉弁状態に戻す場合には、ロータ172を他方向に回転駆動(逆転)させる。その場合、スプリング292の付勢力とスプリング296の付勢力との合力がOリング161の摺動力よりも大きいため、弁体260は弁作動体200との作動連結が維持されたまま一体となって閉弁方向に押し上げられる。このとき、スプリング296の付勢力がモータユニット142の駆動力と同方向に作用する。すなわち、モータユニット142の駆動力としては、Oリング161の摺動力(例えば600g重)とスプリング296の付勢力(100〜200g重)との差分(400〜500g重)に打ち勝つだけの大きさがあれば足りる。
また、小口径制御を実行する場合、図示の状態からロータ172が他方向に回転駆動(逆転)されることにより弁体262が開弁方向に変位し、比例弁38が開弁状態となる。すなわち、ロータ172とともに回転する弁作動体200がねじ機構によって上昇し、係止部286を吊り上げるようにして伝達ロッド284および弁体262を開弁方向に変位させる。弁体262は、全閉状態と全開位置との間の範囲で駆動され、比例弁38の開度が調整される。このとき、モータユニット142の駆動力としては、スプリング292の付勢力(反力)とスプリング296の付勢力(反力)の合力に打ち勝つだけの大きさがあれば足りる。
すなわち、伝達ロッド284と弁体260との作動連結が解除され、伝達ロッド284が弁体262と一体に変位するため、背圧室206の摺動力は反力として作用しない。このため、モータユニット142は、スプリング292の付勢力(例えば最大700g重)とスプリング296の付勢力(例えば最大150g重)との合力に打ち勝つだけの駆動力を発生すればよい。なお、伝達ロッド284と弁体260との係合状態が解除されるため、弁体260と弁座254との間に過度な押圧力が作用することもない。
逆に、比例弁38を開弁状態から閉弁状態に戻す場合には、ロータ172を一方向に回転駆動(正転)させる。その場合、スプリング292の付勢力とスプリング296の付勢力との合力が閉弁方向に作用するため、モータユニット142の駆動力に対する反力は作用しない。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、第1制御弁の構成が第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図8は、第2実施形態に係る第1制御弁の構成を表す断面図である。
第1制御弁304は、共用のボディ350に差圧弁31,32および開閉弁333を組み付けて構成されている。すなわち、本実施形態においては、開閉弁の構成が第1実施形態と異なる。ボディ350には、差圧弁31のオリフィス部118と平行となるようオリフィス374が設けられている。オリフィス374は、内部に絞り通路84を形成し、その一端部が主弁孔64の下流側に圧入されており、他端開口部が導出ポート56に連通している。パイロット通路82は、主弁体368の外側に主弁孔64と軸線をずらすように形成されている。
ガイド部材51の内方には、複数の通路が形成された通路形成部材355が固定されている。通路形成部材355の上端部中央には弁座形成部材370が設けられ、その軸線に沿ってパイロット弁孔78が形成されている。パイロット弁孔78は、パイロット通路82と連通している。また、通路形成部材355には、パイロット弁孔78と平行な連通路365が形成されている。連通路365は、パイロット弁体92が配置された圧力室と背圧室88とを連通する。
開閉弁333は、主弁360とパイロット弁362を含む。主弁体368は、ボディ350の上部に摺動可能に支持され、その中央に設けられた弁部材72が主弁座66に着脱して主弁360を開閉する。主弁体368と通路形成部材355との間には、主弁体368を閉弁方向に付勢するスプリング376(「付勢部材」に該当する)が介装されている。以上のように構成された第1制御弁304は、第1実施形態の第1制御弁4と同様に機能することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
上記実施形態では、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車に適用した例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車に提供することが可能であることは言うまでもない。上記実施形態では、圧縮機2として電動圧縮機を採用した例を示したが、エンジンの回転を利用して容量可変を行う可変容量圧縮機を採用することもできる。
上記実施形態においては、補助凝縮器として室内凝縮器を設ける例を示した。変形例においては、補助凝縮器を室外熱交換器とは別に設けられる熱交換器として構成してもよい。その熱交換器は、例えば車室外に配置され、冷却水(ブラインなどでもよい)を利用して熱交換を行うものでもよい。例えば図1における第1制御弁4と第3制御弁9との間に熱交換器を設ける一方、車室内に温水ヒータ等の放熱器を配置し、これら熱交換器と放熱器とを冷却水の循環回路にて接続してもよい。より具体的には、車室内のダクトにおける蒸発器7の下流側に温水ヒータを設け、補助凝縮器と温水ヒータとの間には、冷凍サイクルとは別の温水循環路を設けてもよい。補助凝縮器は、冷凍サイクルを流れる冷媒と、温水循環路を流れる冷却水との熱交換を行う。温水循環路には、その冷却水を循環させるためのポンプや、補助的に駆動されるPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータなどを設けてもよい。このようにすれば、圧縮機2から第1制御弁4へ向かう高温の冷媒と、循環回路を循環する冷却水との間で熱交換を行うことができる。このような構成においても、圧縮機2から吐出された冷媒を熱交換器により凝縮させて循環させることが可能となる。
上記実施形態では、上記冷凍サイクルを電気自動車の冷暖房装置に適用する例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を搭載したハイブリッド式の自動車の冷暖房装置に適用することが可能であることは言うまでもない。さらに、車両以外の冷暖房装置に適用することも可能である。