以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。本実施形態は、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車の冷暖房装置として具体化したものである。
車両用冷暖房装置1は、圧縮機2、室内凝縮器3、第1制御弁4、室外熱交換器5、第2制御弁6、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて順次接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。車両用冷暖房装置1は、冷媒としての代替フロン(HFC−134a)が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式の冷暖房装置として構成されている。なお、本実施形態においては、室外熱交換器5と第2制御弁6とをつなぐ通路と、蒸発器7とアキュムレータ8とをつなぐ通路とを接続するバイパス通路9が設けられ、そのバイパス通路9の上流側分岐点に切替弁11が配設されている。
車両用冷暖房装置1は、空気の熱交換が行われるダクト10を有し、そのダクト10における空気の流れ方向上流側から室内送風機12、蒸発器7、室内凝縮器3が配設されている。室内凝縮器3の上流側には、エアミックスドア14が回動自在に設けられ、室内凝縮器3を通過する風量と室内凝縮器3を迂回する風量との比率が調節される。また、室外熱交換器5に対向するように室外送風機16が配置されている。
圧縮機2は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成され、図示しないバッテリからの供給電流により駆動され、モータの回転数に応じて冷媒の吐出容量が変化する。この圧縮機2としては、レシプロ式、ロータリ式、スクロール式など、様々な形式の圧縮機を採用することができるが、電動圧縮機そのものは公知であるため、その説明については省略する。
室内凝縮器3は、車室内に設けられ、室外熱交換器5とは別に冷媒を放熱させる補助凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧の冷媒が室内凝縮器3を通過する際に放熱する。エアミックスドア14の開度に応じて振り分けられた空気は、室内凝縮器3を通過する過程でその熱交換が行われる。
第1制御弁4は、室内凝縮器3と室外熱交換器5とをつなぐ主通路の開度を調整する。第1制御弁4は、その主通路を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドを備え、供給電流の有無によって弁部を開閉する。また、主通路を第1制御弁4の前後で迂回するバイパス通路が設けられ、そのバイパス通路にオリフィス18が設けられている。オリフィス18の開口面積は、第1制御弁4の開弁時の開口面積よりも十分に小さいが、このように第1制御弁4と並列にオリフィス18が設けられることで、第1制御弁4の閉弁時においても所定流量の冷媒の流れが許容される。
室外熱交換器5は、車室外に配置され、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。室外送風機16は、吸い込み式の送風機であり、軸流ファンをモータにより回転駆動することにより外気を導入する。室外熱交換器5は、その外気と冷媒との間で熱交換をさせる。
第2制御弁6は、室外熱交換器5と蒸発器7とをつなぐ主通路の開度を調整する。第2制御弁6は、その主通路を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドを備え、供給電流値に応じて弁部の開度を調整する。第2制御弁6は、その前後差圧(第2制御弁6の上流側圧力と下流側圧力との差圧)が供給電流値に応じた一定の値(設定差圧)となるように動作する定差圧弁として機能可能に構成されている。すなわち、第2制御弁6の弁部は、特に設定差圧が小さい領域にある場合、前後差圧がソレノイドへの供給電流値に対応づけられた値となるよう自律的に動作する。ただし、第2制御弁6には、その閉弁時においても所定流量の冷媒の流れを許容するオリフィス20が設けられている。オリフィス20の開口面積は、第2制御弁6の全開時の開口面積よりも十分に小さい。なお、第2制御弁6の構造については後に詳述する。
蒸発器7は、車室内に配置され、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。すなわち、第2制御弁6の通過により低温・低圧となった冷媒は、蒸発器7を通過する際に蒸発する。ダクト10の上流側から導入された空気は、その蒸発潜熱によって冷却される。このとき冷却・除湿された空気は、エアミックスドア14の開度に応じて室内凝縮器3を通過するものと、室内凝縮器3を迂回するものとに振り分けられる。室内凝縮器3を通過する空気は、その通過過程で加熱される。室内凝縮器3を通過した空気と迂回した空気とが室内凝縮器3の下流側にて混合されて目標の温度に調整され、図示しない吹出口から車内に供給される。例えば、ベント吹出口、フット吹出口、デフ吹出口等から車室内所定場所に向かって吹き出される。
アキュムレータ8は、蒸発器から送出された冷媒を気液分離して溜めておく装置であり、液相部と気相部とを有する。このため、仮に蒸発器7から想定以上の液冷媒が導出されたとしても、その液冷媒を液相部に溜めおくことができ、気相部の冷媒を圧縮機2に導出することができる。その結果、圧縮機2の圧縮動作に支障をきたすこともない。一方、本実施形態では、その液相部の冷媒の一部を圧縮機2に供給できるようにされており、圧縮機2に必要量の潤滑オイルを戻すことができるようになっている。
切替弁11は、室外熱交換器5から導出された冷媒の流れを、蒸発器7へ導く通路または蒸発器7を迂回させる通路のいずれか一方に切り替える。本実施形態において、切替弁11は電磁駆動の三方弁からなり、特に外部温度が低くなり、蒸発器7の凍結が予測される状況下にある場合には、適宜、蒸発器7へつながる通路を遮断するとともに蒸発器7を迂回させるバイパス通路9を開放する。その間にダクト10を通過する空気により蒸発器7が温められ、凍結防止を図ることができる。なお、このような三方弁そのものについては公知のものを用いることができるため、その詳細な説明については省略する。
以上のように構成された車両用冷暖房装置1は、制御部100により制御される。制御部100は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、入出力インターフェース等を備える。制御部100には、車両用冷暖房装置1に設置された図示しない各種センサ・スイッチ類からの信号が入力される。制御部100は、車両の乗員によりセットされた室温を実現するために各アクチュエータの制御量を演算し、各アクチュエータの駆動回路に制御信号を出力する。図示の例では、制御部100は、第1制御弁4の開閉制御、第2制御弁6の開閉制御(開度調整制御)、切替弁11の開閉切替制御のほか、圧縮機2,室内送風機12,室外送風機16およびエアミックスドア14の駆動制御も実行する。
制御部100は、第2制御弁6の駆動回路に設定したデューティ比のパルス信号を出力するPWM出力部を有するが、その構成自体には公知のものが採用されるため、詳細な説明を省略する。制御部100は、特に暖房運転時において、車室内外の温度、蒸発器7の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて設定差圧を決定し、第2制御弁6の前後差圧(上流側と下流側との差圧)がその設定差圧となるよう通電制御を行う。言い換えれば、第2制御弁6の弁部が供給電流値に対応した前後差圧が得られるよう自律的に動作し、その開度を調整する。また、制御部100は、特に冷房運転時において、車室内外の温度、蒸発器7の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて設定流量を決定し、第2制御弁6の前後差圧に対して必要な弁開度が得られるよう通電制御を行う。言い換えれば、第2制御弁6の弁部が供給電流値に対応した弁開度が得られるよう自律的に動作する。
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図2は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は冷房運転時の状態を示し、(B)は暖房運転時の状態を示し、(C)は特定暖房運転時の状態を示している。なお、ここでいう「冷房運転」は、冷房機能が暖房機能よりも大きく機能する運転状態であり、「暖房運転」は、暖房機能が冷房機能よりも大きく機能する運転状態であり、「特定暖房運転」は、蒸発器7を実質的に機能させない暖房運転であり、外部環境等に応じて暖房運転時に適宜実行される。
各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示されている。その横軸がエンタルピーを表し、縦軸が各種圧力を表している。各図の下段には、冷凍サイクルの動作状態が示されている。図中の太線および矢印が冷媒の流れを示し、符号a〜fはモリエル線図のそれと対応している。また、図中の「×」は冷媒の流れが遮断されていることを示している。なお、同図の下段は図1に対応するが、エアミックスドア14等の図示を省略するなど便宜上簡略表記されている。
図2(A)に示すように、冷房運転時においては、第1制御弁4が開弁される一方、第2制御弁6は閉弁される。切替弁11は、バイパス通路9を遮断するとともに蒸発器7へつながる通路を開放する。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、第1制御弁4、室外熱交換器5、オリフィス20、蒸発器7、アキュムレータ8の順に経由するように循環して圧縮機2に戻る。室内凝縮器3から導出された冷媒の一部は、オリフィス18を通過するが、その流量は第1制御弁4を通過する流量に比べて相当少ない。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3および室外熱交換器5を経ることで凝縮され、オリフィス20にて断熱膨張され、冷温・低圧の液冷媒となって蒸発器7に導入される。そして、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却・除湿する。このとき、エアミックスドア14の開度が適度に調整され、その空気の温度調整が行われる。
一方、図2(B)に示すように、暖房運転時においては、第1制御弁4が閉弁される一方、第2制御弁6が開弁される。切替弁11は、バイパス通路9を遮断するとともに蒸発器7へつながる通路を開放する。このとき、エアミックスドア14は温度設定に応じた適切な開度となるよう駆動される。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、オリフィス18、室外熱交換器5、第2制御弁6、蒸発器7、アキュムレータ8の順に経由するように循環して圧縮機2に戻る。室外熱交換器5から導出された冷媒の一部は、オリフィス20を通過する。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され、オリフィス18にて断熱膨張され、室外熱交換器5にて蒸発され、さらに第2制御弁6およびオリフィス20にて断熱膨張され、冷温・低圧の液冷媒となって蒸発器7を通過する。すなわち、液冷媒は、室外熱交換器5および蒸発器7を通過する過程で順次蒸発するが、後段の蒸発器7における蒸発潜熱により車室内の空気が冷却され、除湿される。すなわち、蒸発器7によって冷却・除湿された空気は、室内凝縮器3を経由することで加熱され、適度に温められて車内に供給される。
図2(B)の上段に示すように、このとき室外熱交換器5および第2制御弁6の両蒸発器にて蒸発される比率が第2制御弁6の前後差圧ΔPにより制御される。図示のように、前後差圧ΔPが比較的大きく設定されると、実線部分にて示されるように、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に小さくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に大きくなる)。逆に、前後差圧ΔPが比較的小さく設定されると、点線部分にて示されるように、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に大きくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に小さくなる)。制御部100は、設定温度を実現する過程で蒸発器7における熱交換量を制御するが、その際、前後差圧ΔPを適切に設定することで、循環する冷媒を室外熱交換器5と蒸発器7とで蒸発させる比率を調整する。それにより、蒸発器7での蒸発量を確保することができ、除湿機能を確保することができる。
また、図2(C)に示すように、特定暖房運転時においては、暖房運転時と同様に第1制御弁4が閉弁される。このとき、冷媒通路がバイパス通路9に切り替えられる。すなわち、切替弁11は、蒸発器7へつながる通路を遮断するとともにバイパス通路9を開放させる。このため、冷媒は蒸発器7を通過せずに迂回する。それにより、一時的に蒸発器7に低温・低圧の液冷媒が供給されなくなるため、蒸発器7の温度が極低温となって凍結するのを抑制できる。このとき、ダクト10を通過する空気により蒸発器7が温められる。
本実施形態において、制御部100は、外気温が予め設定する極低温(例えば−10℃以下)となっている場合、図2(B)に示す暖房運転と図2(C)に示す特定暖房運転とを併用し、これらを交互に切り替えるように制御する。これにより、暖房運転により除湿性能を確保するとともに、特定暖房運転により蒸発器7の凍結を防止することができる。
次に、第2制御弁6の具体的構成について説明する。
図3は、第2制御弁の具体的構成を表す断面図である。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。
第2制御弁6は、その上流側と下流側との差圧が供給電流値に応じた差圧となるよう流体の流れを制御可能なパイロット作動式の制御弁として構成されている。第2制御弁6は、弁本体101とソレノイド102とを組み付けて構成される。
弁本体101は、有底円筒状のボディ103に主弁105とパイロット弁106とを同軸状に収容して構成される。ボディ103の一方の側部には、冷凍サイクルの上流側通路に連通する入口ポート110が設けられ、他方の側部には、冷凍サイクルの下流側通路に連通する出口ポート112が設けられている。ボディ103の内部中央には、半径方向内向きに延出した区画壁114が設けられている。区画壁114は、ボディ103内を高圧側の圧力室116と低圧側の圧力室118とに区画している。圧力室116は入口ポート110に連通し、圧力室118は出口ポート112に連通している。
区画壁114の環状の内周部により主弁孔120が形成され、その上流側開口端部により主弁座122が形成されている。圧力室116には段付円筒状の主弁体124が配設されている。主弁体124は、主弁座122に着脱して主弁105を開閉する。主弁体124は、円筒状の本体の下端部にて主弁座122に着脱する。その下端部からは下方に向けて複数の脚部126が延設されており(同図には1つのみ表示)、主弁孔120の内周面によって摺動可能に支持されている。
一方、主弁体124の上端部には半径方向外向きに延出するフランジ部128が設けられ、ボディ103の内周面に摺動可能に支持されている。フランジ部128の外周面にはシール用のOリング130が嵌着されている。フランジ部128は、圧力室116を高圧室132と背圧室134とに区画する。主弁体124の下端部の所定位置には、閉弁状態においても高圧室132と圧力室118とを連通させる連通溝136が設けられており、この連通溝136と主弁座122との間隙によりオリフィス20が形成される。既に述べたように、オリフィス20は、主弁105およびパイロット弁106が閉弁状態にあっても所定流量の冷媒の流れを許容する。また、フランジ部128には、高圧室132と背圧室134とを連通させるリーク通路138が設けられている。なお、高圧室132と圧力室118とを主弁105を介してつなぐ通路が第2制御弁6における「主通路」を構成し、高圧室132と圧力室118とをパイロット弁106を介してつなぐ通路が第2制御弁6における「副通路」を構成する。
主弁体124の内部中央には、半径方向内向きに延出した区画壁140が設けられている。区画壁140は、背圧室134と圧力室118とを区画しており、その環状の内周部の下部により副弁孔142が形成され、上部によりガイド孔144が形成されている。後述するパイロット弁体145が、制御状態に応じて副弁孔142に挿抜されてパイロット弁106を開閉する。パイロット弁体145は、ガイド孔144に摺動可能に支持され、軸線方向に安定に動作可能に構成されている。主弁体124におけるパイロット弁体145の上流側には、リーク通路138と副弁孔142とを連通させるパイロット通路147が形成されている。主弁体124の下端開口部には段付円筒状のアジャスト部材146(「区画壁」に該当する)が螺合されており、そのアジャスト部材146と主弁体124とに囲まれた空間が副弁室148を形成している。
パイロット弁体145は長尺状の本体を有し、副弁孔142を貫通するように配設されている。パイロット弁体145の下端部が、下方から副弁孔142に挿抜されてパイロット弁106を開閉する弁形成部を構成する。パイロット弁体145の上端部はソレノイド102に接続されている。パイロット弁体145とアジャスト部材146との間には、パイロット弁体145を閉弁方向に付勢するスプリング149が介装されている。アジャスト部材146の螺入量によりパイロット弁106の開弁圧力を調整することが可能になっている。
また、主弁体124の側部には切替弁150が設けられている。切替弁150は、段付円筒状のボディ152と段付円柱状の弁体154を有し、主弁体124に組み付けられている。すなわち、主弁体124における入口ポート110に対向する側部には、内外を連通する連通孔156が設けられ、ボディ152が圧入されている。連通孔156は、主弁体124の内方から外方へ拡径する段付形状をなしている。ボディ152は、その大径部に主弁体124と軸線を直交させるように固定される。
ボディ152の内部中央には、半径方向内向きに延出した区画壁158が設けられている。区画壁158は、ボディ152内をリーク通路138に連通する圧力室160と、副弁孔142に連通する圧力室162とに区画している。また、ボディ152の外周部近傍には、入口ポート110と圧力室160とを連通させる小断面のリーク通路164が形成されている。区画壁158の環状の内周部により弁孔166が形成され、その上流側開口端部により弁座167が形成されている。
弁体154は、弁座167に上流側から着脱して切替弁150を開閉する。弁体154における弁孔166の下流側にはガイド部168が設けられ、連通孔156の小径部に摺動可能に挿通されている。ガイド部168の外周面にはシール用のOリング163が嵌着されているため、その小径部を介した冷媒の漏洩は防止されている。ガイド部168と主弁体124との間には、弁体154を開弁方向に付勢するスプリング165(「付勢部材」として機能する)が介装されている。切替弁150は、主弁105の上流側と下流側との差圧が予め定める第1設定値(例えば0.2MPa)よりも大きくなると閉弁し、パイロット弁体145の動作にかかわらずパイロット通路147を遮断する。それにより、中間圧力Ppが上昇するため、主弁105を強制的に閉弁させることができる。なお、第1設定値は、暖房運転時に制御対象となる差圧領域と冷房運転時に制御対象となる差圧領域との間の差圧値として設定されている。
以上のような構成において、上流側の高圧室132の圧力P1(「上流側圧力P1」という)は、リーク通路138を通過することで背圧室134にて中間圧力Ppとなる一方、主弁105を経て減圧されて圧力P2(「下流側圧力P2」という)となる。中間圧力Ppは、パイロット弁106の開閉状態によって変化する。また、切替弁150の開閉によりパイロット通路147が開閉されるため、そのパイロット弁106の開閉による中間圧力Ppの減圧の程度を調整することが可能となっている。
一方、ソレノイド102は、ボディ103の上端開口部を封止するように取り付けられた有底円筒状のスリーブ170を有する。スリーブ170は、シール用のOリング169を介してボディ103に取り付けられている。スリーブ170内には、第1プランジャ171(「第1の可動鉄心」として機能する)および第2プランジャ172(「第2の可動鉄心」として機能する)が軸線方向に対向配置されるように収容されている。スリーブ170の外周部にはボビン173が設けられ、そのボビン173に電磁コイル174が巻回されている。そして、電磁コイル174を外部から覆うようにケース176が設けられている。スリーブ170は、ケース176を軸線方向に貫通している。電磁コイル174からは通電用のハーネス178が引き出されている。
第1プランジャ171は、円筒状をなし、その下端面が主弁体124の上面(フランジ部128の中央上面)に当接可能に配置されている。第1プランジャ171とソレノイド102との間には、第1プランジャ171を主弁体124の閉弁方向に付勢するスプリング175(「付勢部材」として機能する)が介装されている。パイロット弁体145は、第1プランジャ171をその軸線にそって貫通し、その上端が第2プランジャ172に当接している。
第2プランジャ172は、円柱状をなし、その下端面にてパイロット弁体145に当接してこれを支持する。第2プランジャ172とスリーブ170との間には、第2プランジャ172を介してパイロット弁体145を開弁方向に付勢するスプリング179が介装されている。すなわち、主弁体124は、第2プランジャ172と一体的に動作可能となっている。
以上のように構成された第2制御弁6は、上流側と下流側との差圧が供給電流値に応じた差圧となるよう流体の流れを制御可能なパイロット作動式の制御弁として機能する。以下、その動作について詳細に説明する。
図4および図5は、第2制御弁の動作状態を表す説明図である。図4は、ソレノイド102がオンにされた差圧制御状態において、切替弁150の前後差圧(P1−P2)が第1設定値よりも小さい状態を表している。図5は、ソレノイド102がオンにされた差圧制御状態において、前後差圧(P1−P2)が第1設定値よりも大きい状態を表している。なお、既に説明した図3は、ソレノイド102がオフにされた状態を表している。
ソレノイド102がオフにされた状態(非通電状態)では(図2(A)参照)、第2制御弁6は、差圧制御は行わず、膨張装置としてのみ機能する。すなわち図3に示すように、ソレノイド力が作用しないため、スプリング175によって主弁体124が閉弁方向に付勢され、主弁105が閉弁状態となる。一方、スプリング149によってパイロット弁体145が閉弁方向に付勢され、パイロット弁106も閉弁状態となる。このとき、背圧室134には上流側からリーク通路164,138を介して冷媒が導入されるため、中間圧力Ppは、上流側圧力P1に等しくなる。上流側から入口ポート110を介して導入された冷媒は、オリフィス20を介して減圧膨張され、出口ポート112を介して下流側へ導出される。
一方、ソレノイド102がオンにされた状態(通電状態)では(図2(B)参照)、第2制御弁6は、その上流側圧力P1と下流側圧力P2との差圧(P1−P2)が供給電流値に応じた設定差圧となるよう動作する定差圧弁として機能するとともに、膨張装置としても機能する。
すなわち、図4に示すように、ソレノイド力によって第1プランジャ171と第2プランジャ172との間に吸引力が作用するため、パイロット弁体145が主弁体124に対して相対的に開弁方向に変位し、パイロット弁106が開弁する。それにより、中間圧力Ppが低下するため、主弁体124が上流側圧力P1と中間圧力Ppとの差圧(P1−Pp)の影響を受けて開弁する。上流側から入口ポート110を介して導入された冷媒は、開弁された主弁105およびオリフィス20を介して減圧膨張され、出口ポート112を介して下流側へ導出される。また、その冷媒の一部は、リーク通路164,138を介して背圧室134に導入される。また、その冷媒の一部は、パイロット弁106を介して圧力室118に導出され、出口ポート112を介して下流側へ導出される。このとき、主弁105がスリーブ170に係止されるまでリフトする全開状態となっても、アジャスト部材146の下端開口部は、主弁座122よりも下流側に位置するようになる。このため、副弁室148には、下流側圧力P2が確実に供給される。
この差圧制御状態において、差圧(P1−P2)が設定差圧よりも小さくなると、中間圧力Ppと下流側圧力P2との差圧(Pp−P2)が小さくなるため、パイロット弁体145が閉弁方向に動作する。この結果、中間圧力Ppが上昇し、主弁体124が閉弁方向に動作して主弁105の開度を小さくする。その結果、差圧(P1−P2)が大きくなる方向に変化する。一方、差圧(P1−P2)が設定差圧よりも大きくなると、中間圧力Ppと下流側圧力P2との差圧(Pp−P2)が大きくなるため、パイロット弁体145が開弁方向に動作する。この結果、中間圧力Ppが低下し、主弁体124が開弁方向に動作して主弁105の開度を大きくする。その結果、差圧(P1−P2)が小さくなる方向に変化する。すなわち、パイロット弁106の動作により、差圧(P1−P2)が設定差圧となるよう主弁105の開度が調整される。
このような差圧制御状態において、差圧(P1−P2)が第1設定値よりも高くなると、図5に示すように、弁体154が閉弁方向に動作し、切替弁150が閉弁状態となる。それにより、パイロット通路147が遮断される。このため、図示のようにパイロット弁106が開弁状態にあっても背圧室134の圧力は開放されず、逆に、リーク通路164,138を介して導入される冷媒によって昇圧される。その結果、主弁体124が閉弁方向に動作して主弁105が閉弁状態となる。そして、差圧(P1−P2)が第1設定値よりも小さくなると、切替弁150が開弁するのでパイロット通路147が開放され、通常の差圧制御状態に戻るようになる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、第2制御弁の構造を除き、第1実施形態と同様である。このため、第1実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図6は、第2実施形態に係る第2制御弁の具体的構成を表す断面図である。
第2制御弁26は、弁本体201とソレノイド102とを組み付けて構成され、その上流側と下流側との差圧が供給電流値に応じた差圧となるよう流体の流れを制御可能なパイロット作動式の制御弁として構成されている。第2制御弁26は、第1実施形態の主弁体124とは異なる構造の主弁体224を有する。
弁本体201は、ボディ103に主弁205とパイロット弁206とを同軸状に収容して構成される。主弁体224の内方には、パイロット弁206および切替弁250の一部を構成する弁座形成部材260が配設されている。すなわち、本実施形態では後述のように、パイロット弁206が切替弁250としても機能する。弁座形成部材260は円筒状をなし、主弁体224の内方に形成されたガイド孔262にそって軸線方向に摺動可能に支持されている。弁座形成部材260の上死点は、主弁体224の上端中央部に設けられた係止部264に係止されることにより規制され、下死点は、アジャスト部材146の上端面に係止されることにより規制される。
弁座形成部材260の上端縁には、背圧室134と副弁室148とを連通させる連通溝266が設けられており、弁座形成部材260の内方には副弁孔142が形成されている。これにより、リーク通路138、連通溝266および副弁孔142をつなぐパイロット通路147が形成されている。弁座形成部材260の外周面には、シール用のOリング268が嵌着されており、弁座形成部材260と主弁体224との間隙を介した冷媒の漏洩を防止している。弁座形成部材260とアジャスト部材146との間には、弁座形成部材260を切替弁250の開弁方向に付勢するスプリング270が介装されている。
主弁体224の側部には、有底円筒状の栓体280が圧入されており、その栓体280の底部に高圧室132とパイロット通路147とを連通させるリーク通路164が設けられている。上流側圧力P1は、リーク通路164,138を通過することで背圧室134にて中間圧力Ppとなる一方、主弁205を経て減圧されて下流側圧力P2となる。中間圧力Ppは、パイロット弁206の開閉状態によって変化する。一方、弁座形成部材260の前後差圧が大きくなると、弁座形成部材260がスプリング270の付勢力に抗して押し下げられ、切替弁250(つまりパイロット弁206)が閉弁状態となる。その結果、中間圧力Ppが上昇して主弁体224が閉弁方向に動作し、主弁105が閉弁する。このような主弁105の閉弁状態においてもオリフィス20を介した所定流量の冷媒の流れは許容され、第2制御弁26が膨張装置として機能することができる。
図7および図8は、第2制御弁の動作状態を表す説明図である。図7は、ソレノイド102がオンにされた差圧制御状態において、差圧(P1−P2)が第1設定値よりも小さい状態を表している。図8は、ソレノイド102がオンにされた差圧制御状態において、差圧(P1−P2)が第1設定値よりも大きい状態を表している。なお、既に説明した図6は、ソレノイド102がオフにされた状態を表している。
ソレノイド102がオフにされた状態では、第2制御弁6は、差圧制御は行わず、膨張装置としてのみ機能する。すなわち図6に示すように主弁205が閉弁状態となるとともに、パイロット弁106も閉弁状態となる。このとき、背圧室134には上流側からリーク通路164,138を介して冷媒が導入されるため、中間圧力Ppは、上流側圧力P1に等しくなる。上流側から入口ポート110を介して導入された冷媒は、オリフィス20を介して減圧膨張され、出口ポート112を介して下流側へ導出される。
一方、ソレノイド102がオンにされた状態では、第2制御弁6は、その上流側圧力P1と下流側圧力P2との差圧(P1−P2)が供給電流値に応じた設定差圧となるよう動作する定差圧弁として機能するとともに、膨張装置としても機能する。図7に示すように、ソレノイド力によってパイロット弁106が開弁することにより、中間圧力Ppが低下するため、主弁体124が開弁する。上流側から入口ポート110を介して導入された冷媒は、開弁された主弁105およびオリフィス20を介して減圧膨張され、出口ポート112を介して下流側へ導出される。また、その冷媒の一部は、リーク通路164,138を介して背圧室134に導入される。また、その冷媒の一部は、パイロット弁206を介して圧力室118に導出され、出口ポート112を介して下流側へ導出される。
この差圧制御状態において、差圧(P1−P2)が設定差圧よりも小さくなると、中間圧力Ppと下流側圧力P2との差圧(Pp−P2)が小さくなるため、パイロット弁体145が閉弁方向に動作する。その結果、差圧(P1−P2)が大きくなる方向に変化する。一方、差圧(P1−P2)が設定差圧よりも大きくなると、中間圧力Ppと下流側圧力P2との差圧(Pp−P2)が大きくなるため、パイロット弁体145が開弁方向に動作する。その結果、差圧(P1−P2)が小さくなる方向に変化する。すなわち、パイロット弁206の動作により、差圧(P1−P2)が設定差圧となるよう主弁205の開度が調整される。
このような差圧制御状態において、差圧(P1−P2)が第1設定値よりも高くなると、図8に示すように、弁座形成部材260が閉弁方向に動作し、切替弁250(つまりパイロット弁206)が閉弁状態となる。それにより、パイロット通路147が遮断される。このため、図示のようにパイロット弁206が最下部に位置しても背圧室134の圧力は開放されず、逆に、リーク通路164,138を介して導入される冷媒によって昇圧される。その結果、主弁体124が閉弁方向に動作して主弁205が閉弁状態となる。そして、差圧(P1−P2)が第1設定値よりも小さくなると、切替弁250が開弁するのでパイロット通路147が開放され、通常の差圧制御状態に戻るようになる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、第2制御弁の構造を除き、第1実施形態と同様である。このため、第1実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図9は、第3実施形態に係る第2制御弁の具体的構成を表す断面図である。
第2制御弁36は、弁本体301とソレノイド302とを組み付けて構成され、その上流側と下流側との差圧が供給電流値に応じた差圧となるよう流体の流れを制御可能なパイロット作動式の制御弁として構成されている。第2制御弁36は、第1実施形態の主弁体124とは異なる構造の主弁体324を有する。
弁本体301は、ボディ103に主弁305とパイロット弁106とを同軸状に収容して構成される。主弁体324の下端部には、リング状の弁部材330が嵌着されている。主弁体324は、その弁部材330にて主弁座122に着脱し、主弁305を開閉する。弁部材330が弾性材(ゴム等)からなるため、主弁305の閉弁時に高いシール性を有する。主弁体324には、背圧室134とパイロット通路147とを連通させる通路として、第1実施形態のリーク通路138よりも通路断面が相当大きな連通路338が設けられている。なお、主弁体324の下端部には、第1実施形態や第2実施形態のようなオリフィス20は設けられていない。したがって、主弁305とパイロット弁106が閉弁状態にある場合、冷媒の流れが確実に遮断される。
一方、主弁体324の側部には切替弁350が設けられている。切替弁350は、有底円筒状の弁座形成部材352と段付円柱状の弁体354を有し、主弁体324に組み付けられている。すなわち、主弁体324における入口ポート110に対向する側部には、内外を連通する連通孔356が設けられ、その外側に弁座形成部材352が圧入されている。連通孔356は、主弁体124の内方から外方へ拡径する段付形状をなしている。弁座形成部材352は、連通孔356の大径部に主弁体324と軸線を直交させるように固定される。
弁座形成部材352の中央には弁孔358が形成され、その下流側開口端縁により弁座360が構成されている。また、弁座形成部材352の外周部近傍には、入口ポート110と背圧室134とを連通させるリーク通路164が形成されている。弁体354は、連通孔356の小径部に摺動可能に支持され、弁座360に下流側から着脱して切替弁350を開閉する。弁体354の長手方向中央部の外周面にはシール用のOリング362が嵌着されているため、連通孔356の小径部を介した冷媒の漏洩は防止されている。
弁体354と主弁体324との間には、弁体354を閉弁方向に付勢するスプリング364(「付勢部材」として機能する)が介装されている。切替弁150は、主弁105の上流側と下流側との差圧が第1設定値(例えば0.2MPa)よりも大きくなると開弁し、背圧室134への冷媒の導入口を拡大する。その結果、中間圧力Ppが速やかに高められるようになる。主弁体324の側部にはフィルタ370が設けられ、背圧室134等への異物の侵入を防止している。
以上のような構成において、上流側圧力P1は、リーク通路164,連通路338を通過することで背圧室134にて中間圧力Ppとなる一方、主弁305を経て減圧されて下流側圧力P2となる。中間圧力Ppは、パイロット弁106の開閉状態によって変化する。一方、弁体354の前後差圧(P1−P2)が大きくなると、弁体354がスプリング364の付勢力に抗して開弁方向に動作し、切替弁350が開弁状態となる。このときの切替弁350の開口面積がリーク通路164の通路断面よりも相当大きいため、パイロット弁106が開弁状態にあったとしても中間圧力Ppが速やかに上昇して主弁体324が閉弁方向に動作し、主弁305が閉弁する。
図10および図11は、第2制御弁の動作状態を表す説明図である。図10は、ソレノイド302がオンにされた差圧制御状態において、差圧(P1−P2)が第1設定値よりも小さい状態を表している。図11は、ソレノイド302がオンにされた差圧制御状態において、差圧(P1−P2)が第1設定値よりも大きい状態を表している。なお、既に説明した図9は、ソレノイド302がオフにされた状態を表している。
ソレノイド302がオフにされた状態では、第2制御弁6は、差圧制御は行わず、膨張装置としてのみ機能する。すなわち図9に示すように主弁305が閉弁状態となるとともに、パイロット弁106も閉弁状態となる。このとき、背圧室134には上流側からリーク通路164,138を介して冷媒が導入されるため、中間圧力Ppは、上流側圧力P1に等しくなる。
一方、ソレノイド302がオンにされた状態では、第2制御弁6は、その上流側圧力P1と下流側圧力P2との差圧(P1−P2)が供給電流値に応じた設定差圧となるよう動作する定差圧弁として機能するとともに、膨張装置としても機能する。図10に示すように、ソレノイド力によってパイロット弁106が開弁することにより、中間圧力Ppが低下するため、主弁体324が開弁する。上流側から入口ポート110を介して導入された冷媒は、開弁された主弁305を介して減圧膨張され、出口ポート112を介して下流側へ導出される。また、その冷媒の一部は、リーク通路164,138を介して背圧室134に導入される。また、その冷媒の一部は、パイロット弁106を介して圧力室118に導出され、出口ポート112を介して下流側へ導出される。
この差圧制御状態において、差圧(P1−P2)が設定差圧よりも小さくなると、パイロット弁体145が閉弁方向に動作する。その結果、差圧(P1−P2)が大きくなる方向に変化する。一方、差圧(P1−P2)が設定差圧よりも大きくなると、パイロット弁体145が開弁方向に動作する。その結果、差圧(P1−P2)が小さくなる方向に変化する。すなわち、パイロット弁106の動作により、差圧(P1−P2)が設定差圧となるよう主弁305の開度が調整される。
このような差圧制御状態において、差圧(P1−P2)がその設定差圧よりも高い予め設定した第1設定値よりも高くなると、図11に示すように、弁体354が開弁方向に動作し、切替弁350が開弁状態となる。それにより、中間圧力Ppが速やかに上昇して主弁体324が閉弁方向に動作し、主弁305が閉弁する。すなわち、図示のようにパイロット弁106が開弁状態にあり、パイロット通路147が開放されていても、切替弁350の開度が大きいために中間圧力Ppが低下し難く、その主弁305の閉弁状態を維持することができる。そして、差圧(P1−P2)が第1設定値よりも小さくなると、切替弁350が閉弁するのでパイロット通路147が通常どおりに機能し、通常の差圧制御状態に戻るようになる。
図12は、第2制御弁の開閉制御を示す説明図である。同図の横軸は、上流側圧力P1と下流側圧力P2との差圧(P1−P2)を示し、縦軸は弁開度(主弁305の開口面積とパイロット弁106の開口面積とを合わせた開度)を示している。同図には、ソレノイド302への供給電流値iが0A,0.2A,0.4Aおよび0.6Aの場合が例示されている。
上述した構成により、上流側圧力P1と下流側圧力P2との差圧(P1−P2)が第1設定値(本実施形態では0.2MPa)未満のときには、その差圧(P1−P2)が供給電流値iに応じた設定差圧となるよう主弁305の開度が調整される。この場合、パイロット弁106の開度は主弁305の開度に比べて無視できる。本実施形態では図示のように、供給電流値iが小さいほど設定差圧は大きくなる。一方、差圧(P1−P2)が第1設定値よりも高くなると、切替弁350が開弁するため、主弁305が閉弁状態となる。このとき、パイロット弁106は開弁状態となれるが、第1プランジャ171と第2プランジャ172との相対変位が規制されるため(図11参照)、その開度は制限される。このため、第2制御弁36は、差圧(P1−P2)が比較的大きい領域においては、流路断面がほぼ一定の膨張装置として機能する。すなわち、パイロット弁体145と副弁孔142との間隙により副通路を流れる冷媒を減圧膨張する膨張通路が形成される。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、第2制御弁および切替弁の構造を除き、第1実施形態や第3実施形態と同様である。このため、既に説明した実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図13は、第4実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。
車両用冷暖房装置41においては、図1に示した第2制御弁6に代わって第2制御弁46が設けられ、切替弁11に代わって切替弁47が設けられている。第2制御弁46が、後述のように全閉機能を有するため(つまりオリフィス20が設けられていない)、切替弁47は、蒸発器7へつながる通路を遮断する機能を必要としない。このため、切替弁47は、二方弁として構成されており、通電状態に応じてバイパス通路9を開閉する。なお、第2制御弁46の構造については後に詳述する。
図14は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は冷房運転時の状態を示し、(B)は暖房運転時の状態を示し、(C)は特定暖房運転時の状態を示している。図14(A)に示すように、冷房運転時においては、第1制御弁4が開弁される一方、第2制御弁46も小開度にて開弁される。切替弁47は、バイパス通路9を遮断する。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。第2制御弁46は、膨張装置として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3および室外熱交換器5を経ることで凝縮され、第2制御弁46にて断熱膨張され、冷温・低圧の液冷媒となって蒸発器7に導入される。そして、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却・除湿する。
一方、図14(B)に示すように、暖房運転時においては、第1制御弁4が閉弁される一方、第2制御弁6が開弁される。切替弁47は、バイパス通路9を遮断する。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。第2制御弁46は、定差圧弁として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され、オリフィス18にて断熱膨張され、室外熱交換器5にて蒸発され、さらに第2制御弁6を経て蒸発器7へ導入される。液冷媒は、室外熱交換器5および蒸発器7を通過する過程で順次蒸発するが、後段の蒸発器7における蒸発潜熱により車室内の空気が冷却され、除湿される。蒸発器7によって冷却・除湿された空気は、室内凝縮器3を経由することで加熱され、適度に温められて車内に供給される。
また、図14(C)に示すように、特定暖房運転時においては、暖房運転時と同様に第1制御弁4が閉弁される一方、第2制御弁46が閉弁される。このとき、切替弁47が開弁してバイパス通路9が開放される。このため、冷媒は蒸発器7を通過せずに迂回する。それにより、一時的に蒸発器7に低温・低圧の液冷媒が供給されなくなるため、蒸発器7の温度が極低温となって凍結するのが防止される。本実施形態においても、制御部100は、外気温が予め設定する極低温(例えば−10℃以下)となっている場合、図14(B)に示す暖房運転と図14(C)に示す特定暖房運転とを併用し、これらを交互に切り替えるように制御する。これにより、暖房運転により除湿性能を確保するとともに、特定暖房運転により蒸発器7の凍結を防止することができる。
図15は、第4実施形態に係る第2制御弁の具体的構成を表す断面図である。
第2制御弁46は、弁本体401とソレノイド402とを組み付けて構成され、その上流側と下流側との差圧が供給電流値に応じた差圧となるよう流体の流れを制御可能なパイロット作動式の制御弁として構成されている。
弁本体401は、ボディ103に主弁405とパイロット弁406とを同軸状に収容して構成される。主弁体424のフランジ部428からは上方に向けて複数の脚部430が延設されており(同図には1つのみ表示)、ソレノイド402の内部まで延出している。主弁体424の内部中央には、半径方向内向きに延出した区画壁432が設けられている。区画壁432は、背圧室134と圧力室118とを区画しており、その環状の内周部により副弁孔142が形成されている。副弁孔142の下流側開口端部により弁座434が形成され、上流側開口端部により弁座436が形成されている。
後述のように、パイロット弁体450が、制御状態に応じて弁座434または弁座436に着脱して副弁孔142を開閉する。主弁体424の下端開口部には有底円筒状のアジャスト部材440が圧入され、そのアジャスト部材440の下端開口部には有底円筒状のばね受け部材442が圧入されている。アジャスト部材440と主弁体424とに囲まれた空間が副弁室148を形成している。アジャスト部材440の圧入量によりパイロット弁406の開弁圧力を調整可能となっている。
パイロット弁体450は、ステンレス材からなる長尺状の本体を有し、副弁孔142を貫通するように配設されている。パイロット弁体450は、差圧弁として機能する差圧弁体452と開閉弁として機能する開閉弁体454とが本体に一体に設けられて構成されている。差圧弁体452は、パイロット弁体450における副弁孔142の下流側に設けられ、副弁室148に配置されている。差圧弁体452は、上方に向かって縮径するテーパ面にて弁座434に着脱する。差圧弁体452とアジャスト部材440との間には、差圧弁体452を閉弁方向(開閉弁体454の閉弁方向)に付勢するスプリング456が介装されている。また、パイロット弁体450は、差圧弁体452の下方に延出する連結部458を有し、アジャスト部材440の内方まで延出している。すなわち、アジャスト部材440の上底部中央にはガイド孔495(「第1の挿通孔」に該当する)が設けられ、連結部458の下半部を摺動可能に支持している。
一方、開閉弁体454は、背圧室134に配置されている。開閉弁体454は、リング状をなし、パイロット弁体450の本体に嵌着されている。開閉弁体454が弾性材(ゴム等)からなり、その閉弁時に高いシール性を有する(「シール部」としても機能する)。開閉弁体454は、差圧弁体452が弁座434から所定量リフトしたときに(つまり、パイロット弁406が所定開度となったときに)、図示のように弁座436に着座してパイロット弁406を閉じる。
主弁体424の側部には切替弁350が設けられている。弁座形成部材352に設けられたリーク通路164は、そのまま背圧室134に連通している。また、アジャスト部材440とばね受け部材442とに囲まれた閉空間を構成する区画室443には、均圧弁490(「差圧弁」として機能する)が設けられている。均圧弁490は、連結部458の下端開口部に接離してパイロット弁体450に一体化可能な弁座形成部材492を有する。また、主弁体424とアジャスト部材440との間には、副弁室148と圧力室118とを連通させる連通路498が形成され、それにより副弁室148に下流側圧力P2が満たされるようになっている。
弁座形成部材492は、段付円筒状をなし、その上端開口部を封止するように円板状の弁座部材494が加締接合されている。連結部458の内部には、背圧室134または副弁室148と区画室443とを連通させる連通路493が形成されている。弁座部材494は、シール性に優れる弾性体(例えばゴム)からなり、連結部458の下端開口部に着脱してその連通路493を開閉する。ばね受け部材442の底部には内外を連通させるガイド孔497(「第2の挿通孔」に該当する)が設けられている。弁座形成部材492は、下方に向けてそ外径が段階的に小さくなっており、その小径部が、ばね受け部材442のガイド孔497を摺動可能に貫通している。弁座形成部材492とばね受け部材442との間には、弁座形成部材492を閉弁方向に付勢するスプリング496が介装されている。
弁座形成部材492は、図示のように連結部458に一体化した状態においてパイロット弁体450の受圧面を構成する。すなわち、本実施形態においては、副弁孔142の内径(有効受圧径A)と、ガイド孔497の内径(有効受圧径C)とが等しく、ガイド孔495の内径(有効受圧径B)がそれより小さくなっている。その結果、均圧弁490が閉弁して弁座形成部材492と連結部458とが一体化した状態では、副弁室148および区画室443においてパイロット弁体450に作用する圧力の影響がキャンセルされる。
すなわち、パイロット弁体450は、有効受圧径Aで受ける中間圧力Ppと、有効受圧径Cで受ける下流側圧力P2との差圧(Pp−P2)を受けて動作するようになる。一方、均圧弁490が開弁して弁座形成部材492と連結部458とが分離した状態では、パイロット弁体450は、有効受圧径Aで受ける中間圧力Ppと、有効受圧径Bで受ける下流側圧力P2との差圧(Pp−P2)を受けて動作するようになる。
均圧弁490は、上流側圧力P1と下流側圧力P2との差圧(P1−P2)が第2設定値よりも大きくなると開弁し、連結部458と弁座形成部材492とを分離する。本実施形態では、この第2設定値として第1設定値よりも大きい値(例えば0.3MPa)が予め設定される。変形例においては、第2設定値の値を適宜設定してよく、例えば第1設定値と第2設定値とを等しくしてもよい。
一方、ソレノイド402のスリーブ170内には、第1プランジャ471および第2プランジャ472が軸線方向に対向配置されるように収容されている。第1プランジャ471の外周部には軸線方向に延びる複数のスリット480(同図にはその1つを表示)が設けられている。前述の主弁体124の脚部430は、このスリット480を介して上方に延出している。パイロット弁体450は、第1プランジャ471をその軸線にそって貫通し、その上端部が加締められることにより第1プランジャ471に固定されている。すなわち、パイロット弁体450は、第1プランジャ471と一体的に動作する。
第2プランジャ472は、円筒状をなし、その内部中央に隔壁482が設けられている。第2プランジャ472は、その下端面にて脚部430の上端面に当接してこれを支持する。第1プランジャ471と第2プランジャ472との間には、第1プランジャ471を介してパイロット弁体450を開弁方向(差圧弁体452の開弁方向であり、開閉弁体454の閉弁方向)に付勢するスプリング484(「付勢部材」に該当する)が介装されている。第2プランジャ472とスリーブ170との間には、第2プランジャ472を介して主弁体424を閉弁方向に付勢するスプリング179が介装されている。すなわち、主弁体424は、第2プランジャ472と一体的に動作可能となっている。
図16〜図18は、第2制御弁の動作状態を表す説明図である。図16は、ソレノイド302がオンにされた差圧制御状態において、差圧(P1−P2)が第1設定値よりも小さい状態を表している。図17は、ソレノイド302がオンにされた差圧制御状態において、差圧(P1−P2)が第1設定値よりも大きく、第2設定値よりも小さい状態を表している。図18は、ソレノイド302がオンにされた差圧制御状態において、差圧(P1−P2)が第2設定値よりも大きい状態を表している。なお、既に説明した図15は、ソレノイド302がオフにされた状態を表している。
ソレノイド402がオフにされた状態では、第2制御弁46は、閉弁状態となって実質的に機能しない。すなわち図15に示すように、主弁405が閉弁状態となるとともに、パイロット弁406も閉弁状態(開閉弁体454の閉弁状態)となる。このとき、背圧室134には上流側からリーク通路164を介して冷媒が導入されるため、中間圧力Ppは、上流側圧力P1に等しくなる。
一方、ソレノイド402がオンにされた状態では、第2制御弁46は、その上流側圧力P1と下流側圧力P2との差圧(P1−P2)が供給電流値に応じた設定差圧となるよう動作する定差圧弁として機能するとともに、膨張装置としても機能する。図16に示すように、ソレノイド力によってパイロット弁406が開弁することにより、中間圧力Ppが低下するため、主弁体124が開弁する。上流側から入口ポート110を介して導入された冷媒は、開弁された主弁405を介して減圧膨張され、出口ポート112を介して下流側へ導出される。また、その冷媒の一部は、リーク通路164を介して背圧室134に導入され、パイロット弁406を介して圧力室118に導出され、出口ポート112を介して下流側へ導出される。
この差圧制御状態において、差圧(P1−P2)が設定差圧よりも小さくなると、パイロット弁体450が閉弁方向(差圧弁体452の閉弁方向)に動作する。その結果、差圧(P1−P2)が大きくなる方向に変化する。一方、差圧(P1−P2)が設定差圧よりも大きくなると、パイロット弁体145が開弁方向(差圧弁体452の開弁方向)に動作する。その結果、差圧(P1−P2)が小さくなる方向に変化する。すなわち、パイロット弁106の動作により、差圧(P1−P2)が設定差圧となるよう主弁305の開度が調整される。
このような差圧制御状態において、差圧(P1−P2)がその設定差圧よりも高い第1設定値よりさらに高くなると、図17に示すように、弁体354が開弁方向に動作し、切替弁350が開弁状態となる。それにより、中間圧力Ppが速やかに上昇して主弁体324が閉弁方向に動作し、主弁405が閉弁する。すなわち、図示のようにパイロット弁406が開弁されていても、切替弁350の開度が大きいために中間圧力Ppが低下し難く、その主弁405の閉弁状態を維持することができる。そして、差圧(P1−P2)が第1設定値よりも小さくなると、切替弁350が閉弁するので通常の差圧制御状態に戻る。
一方、切替弁350が開弁した状態で差圧(P1−P2)がその第1設定値よりも高い第2設定値よりさらに高くなると、図18に示すように、弁座形成部材492が開弁方向に動作し、均圧弁490が開弁状態となる。このとき、均圧弁490の開弁開始とともに、高圧の中間圧力Ppが連通路493を介して区画室443へ導入されるため、弁座形成部材492に作用する差圧(Pp−P2)が大きくなる。また、弁座形成部材492そのものについては、連結部458に着脱する側の受圧面積が、圧力室118に露出する側の受圧面積よりも小さくなるように構成されている。このため、均圧弁490は速やかに開弁される。その後、差圧(P1−P2)が第2設定値よりも小さくなると均圧弁490は閉弁し、さらに第1設定値よりも小さくなると、切替弁350が閉弁する。
図19は、第2制御弁の開閉制御を示す説明図である。同図の横軸は、上流側圧力P1と下流側圧力P2との差圧(P1−P2)を示し、縦軸は弁開度(主弁405の開口面積とパイロット弁406の開口面積とを合わせた開度)を示している。同図には、ソレノイド402への供給電流値iが0A,0.2A,0.4A,0.5Aおよび0.6Aの場合が例示されている。
上述した構成により、上流側圧力P1と下流側圧力P2との差圧(P1−P2)が第1設定値(本実施形態では0.2MPa)未満のときには、その差圧(P1−P2)が供給電流値iに応じた設定差圧となるよう主弁405の開度が調整される。この場合、パイロット弁406の開度は主弁405の開度に比べて無視できる。本実施形態では図示のように、供給電流値iが小さいほど、設定差圧は大きくなる。一方、差圧(P1−P2)が第1設定値よりも高くなると、切替弁350が開弁するため、主弁405が閉弁状態となる。このとき、パイロット弁406が差圧(P1−P2)に応じてその開度を比較的緩やかに変化させる。そして、差圧(P1−P2)がさらに第2設定値(本実施形態では0.3MPa)よりも高くなると、切替弁350が開弁した状態でさらに均圧弁490が開弁する。このとき、パイロット弁406が差圧(P1−P2)に応じてその開度を変化させるが、そのときの差圧(P1−P2)に対する弁開度の増加勾配は、さらに緩やかになる。したがって、広い範囲の差圧にわたって弁開度を制御することが可能となる。パイロット弁406は、切替弁350が導入通路を拡大した際に、パイロット弁体450と副弁孔142との間隙により副通路を流れる冷媒を減圧膨張する膨張通路を形成する。
すなわち、本実施形態では、図15に示したように、副弁孔142の内径(有効受圧径A)よりもガイド孔495の内径(有効受圧径B)を小さくしたため、均圧弁490が開弁してパイロット弁体450と弁座形成部材492とが分離されると、パイロット弁体450の開弁方向の受圧面積が相対的に小さくなる。このため、パイロット弁体450が相対的に開弁し難くなる。つまり、パイロット弁体450の開弁感度が低下するため、弁開度の範囲に対して制御対象とできる差圧の範囲を大きくとることが可能となる。
つまり、制御対象とする差圧(P1−P2)の範囲を比較的大きくとることができ、そのときの弁開度を供給電流値iの設定により調整することができるようになる。なお、変形例においては、副弁孔142の内径(有効受圧径A)、ガイド孔495の内径(有効受圧径B)およびガイド孔497の内径(有効受圧径C)を等しく構成してもよい。このようにすれば、差圧(P1−P2)に対するパイロット弁406の開度をさらに緩やかにすることができる。差圧(P1−P2)の変化にかかわらず、弁開度を供給電流値iに応じてほぼ一定とすることも可能となり、第2制御弁46をいわゆる比例弁として機能させることができるようになる。
以上のような構成により、第2制御弁46は、差圧(P1−P2)およびその変化範囲が比較的小さい暖房運転時においては、差圧(P1−P2)を供給電流値iに応じた値に調整することができ、実質的に定差圧弁として機能することができる。また、差圧(P1−P2)の変化範囲が比較的大きくなる冷房運転時においては、供給電流値iの設定により弁開度を調整することができる。上述した有効受圧径A,B,Cを等しく構成すれば、供給電流値iに応じた弁開度を調整可能な比例弁として機能することもできる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
上記実施形態では、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車に適用した例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車に提供することが可能であることは言うまでもない。上記実施形態では、圧縮機2として電動圧縮機を採用した例を示したが、エンジンの回転を利用して容量可変を行う可変容量圧縮機を採用することもできる。