JP5847625B2 - 撚りコードの有限要素モデル作成方法、有限要素モデル作成プログラム並びに有限要素モデル作成装置 - Google Patents

撚りコードの有限要素モデル作成方法、有限要素モデル作成プログラム並びに有限要素モデル作成装置 Download PDF

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本発明は、コンピュータにより撚りコードの有限要素モデルを作成する撚りコードの有限要素モデル作成方法、有限要素モデル作成プログラム並びに有限要素モデル作成装置に関する。
従来から、伝動ベルトなどのベルトにおいて、金属、ガラス、その他高分子材料の繊維材料を撚った撚りコードを心線として、ゴムその他の高分子材料を補強している。そして、ベルトに用いられる撚りコードは、主に長手方向への「引張」、ベルト屈曲による「曲げ」、プーリへの噛み込み時の「径方向への圧縮」の三つの変形を受ける。そのため、有限要素法による構造解析の際には、これらの変形に対して適切な剛性を有する有限要素モデルを用いる必要がある。
ここで、ベルトに用いられる撚りコードは、引張剛性に対して曲げ剛性は低い(即ち、引張に強く曲げやすい)。また、Vベルトがプーリに食い込むときにはベルトが幅方向に圧縮されるが、このとき内部の心線(撚りコード)も心線径方向に圧縮され、この径方向の圧縮剛性は、曲げ剛性よりも更に低い。このように、心線の各変形形態における剛性は、大きな方から順に、「引張剛性」>「曲げ剛性」>「径方向圧縮剛性」となるが、これらはそれぞれ2桁程度ずつの大きな違いとなる。そのため、有限要素モデルの構築には工夫が必要となる。
そして、撚りコードを円柱状または多角形柱状で扱って有限要素モデルを作成する技術が開発されている。例えば、特許文献1に示す技術では、撚りコードをソリッド要素のみで有限要素モデルを作成しており、特許文献2に示す技術では、ソリッド要素に加えて長手方向にトラスやビームなどの補強要素を追加配置することにより有限要素モデルを作成しており、特許文献3に示す技術では、ソリッド要素の材料物性を異方性として、各方向の剛性を独立して調整することにより有限要素モデルを作成している。
しかしながら、従来の有限要素モデルでは、「引張剛性」、「曲げ剛性」、「径方向圧縮剛性」の3つの全ての剛性を正確に表すことが出来なかった。例えば、特許文献1に示すソリッド要素のみの有限要素モデルでは、等方性材料とすると剛性は上記3つの内、ただ一つにしか合わせられない。また、特許文献2に示すトラス要素を加えた有限要素モデルでも、長手方向の「引張剛性」と、「曲げ剛性」または「径方向圧縮剛性」のどちらか一方、つまり2つの剛性にしか合わせられない。更に、特許文献3に示す異方性の材料物性を用いれば3つの剛性に合わせられる可能性があるが、異方性材料物性の調整は難しく、従来技術においても、異方性物性を利用して3つの剛性に合わせた事例はない上に、簡易的な有限要素法解析ソフトウェアでは、異方性物性の設定が出来ない場合があり、汎用性に欠ける。従って、例示した特許文献1〜3のいずれも、上記3つの剛性を全て合わせることに関して言及しておらず、また、特許文献1〜3の技術を組み合わせても上記3つの剛性を全て合わせることは出来ない。
特開2004−102424号公報 特開2006−164113号公報 特開2007−34728号公報
そこで、コンピュータにより、「引張剛性」、「曲げ剛性」、「径方向圧縮剛性」の3つの剛性全てが目標値(試験で測定された値や、コードの設計段階で設定された値など)に合致する撚りコードの有限要素法モデルを作成することができる撚りコードの有限要素モデル作成方法、有限要素モデル作成プログラム並びに有限要素モデル作成装置を提供するものである。
本発明に係る撚りコードの有限要素モデル作成方法は、コンピュータにおいて撚りコードの有限要素モデルを作成する撚りコードの有限要素モデル作成方法であって、コンピュータにより実行される処理が、撚りコードを同心円状の2層で分け、最も外側の中空円柱を外部材、当該外部材の内側の中実円柱又は中空円柱を内部材として、ソリッド要素でモデル化して有限要素モデルを作成する工程と、前記撚りコードの長手方向の引張剛性、前記撚りコードの屈曲に伴う曲げ剛性、及び、前記撚りコードの径方向圧縮剛性を目標値に合わせるように、予め設定した理論式及び近似式に基づいて、前記有限要素モデルの前記外部材の物性値、前記内部材の物性値、及び、前記内部材の直径を設定する工程と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る撚りコードの有限要素モデル作成プログラムは、撚りコードの有限要素モデルを作成する撚りコードの有限要素モデル作成プログラムであって、撚りコードを同心円状の2層で分け、最も外側の中空円柱を外部材、当該外部材の内側の中実円柱又は中空円柱を内部材として、ソリッド要素でモデル化して有限要素モデルを作成する工程と、前記撚りコードの長手方向の引張剛性、前記撚りコードの屈曲に伴う曲げ剛性、及び、前記撚りコードの径方向圧縮剛性を目標値に合わせるように、予め設定した理論式及び近似式に基づいて、前記有限要素モデルの前記外部材の物性値、前記内部材の物性値、及び、前記内部材の直径を設定する工程と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
本発明に係る撚りコードの有限要素モデル作成装置は、コンピュータ上に実装され、撚りコードの有限要素モデルを作成する撚りコードの有限要素モデル作成装置であって、撚りコードを同心円状の2層で分け、最も外側の中空円柱を外部材、当該外部材の内側の中実円柱又は中空円柱を内部材として、ソリッド要素でモデル化して有限要素モデルを作成する手段と、前記撚りコードの長手方向の引張剛性、前記撚りコードの屈曲に伴う曲げ剛性、及び、前記撚りコードの径方向圧縮剛性を目標値に合わせるように、予め設定した理論式及び近似式に基づいて、前記有限要素モデルの前記外部材の物性値、前記内部材の物性値、及び、前記内部材の直径を設定する手段と、を備えることを特徴とする。
これによると、撚りコードを同心円状に2層に分け、外側の中空円柱を外部材、内側の中空円柱または中実円柱を内部材とし、外部材と内部材とは異なる寸法と物性値の異なる材料とする有限要素モデルとし、予め設定した理論式及び近似式に基づいて、外部材の物性値(線形弾性問題においては、ヤング率とポアソン比)、内部材の物性値、内部材の直径(即ち、内部材と外部材の境界となる円筒面の直径)の3つ(なお、外部材の直径は、即ち撚りコードの直径となるため、その値に固定されて変更することはできない。)を適切に設定することにより、撚りコードの長手方向の引張剛性、屈曲に伴う曲げ剛性、及び、径方向圧縮剛性の3つの剛性を、全て同時に目標値(試験で測定された撚りコードの実際の値や、撚りコードの設計段階で設定された値など)に合わせることができ、実際の値に実用上問題のないレベルで合わせることができる。
即ち、撚りコードの3つの変形モード(引張、曲げ、径方向圧縮)についての試験から物性値を同定し、また、有限要素モデルの寸法を決めるためには、変形モードごとに下記の2つの理論式が必要となる。
1.試験(撚りコード寸法、外力、変位の各データ)から、剛性を計算する式。
2.有限要素モデル寸法、物性値(ヤング率等)の物性データから、剛性を計算する式。
つまり、試験から式1で計算された3つの剛性の値を基準(目標値)として、それに合うように有限要素モデル寸法、物性値とを合わせこむことにより、3つの剛性のすべてに合致する有限要素モデルを構築することができる。
また、本発明に係る撚りコードの有限要素モデル作成方法、有限要素モデル作成プログラム並びに有限要素モデル作成装置は、前記物性値は、線形等方性弾性材料、線形異方性弾性材料、超弾性材料、或いは、塑性材料を用いて良い。
これによると、外部材の物性値及び内部材の物性値は、基本は線形等方性弾性材料(ヤング率とポアソン比)だが、それ以外にも、線形異方性弾性材料、超弾性材料、或いは、塑性材料を用いることにより、線形等方性弾性以外の材料挙動を表現できるという利点がある。
また、本発明に係る撚りコードの有限要素モデル作成方法、有限要素モデル作成プログラム並びに有限要素モデル作成装置は、前記撚りコードを同心円状の3層以上で分けて良い。
これによると、撚りコードを同心円状に3層以上に分け、最も外側の中空円柱を外部材、内側の中空円柱または中実円柱を内部材とし、外部材と複数の内部材とは異なる寸法と物性値の異なる材料とする有限要素モデルとすることにより、調整の自由度が増えるという利点がある。
また、本発明に係る撚りコードの有限要素モデル作成方法、有限要素モデル作成プログラム並びに有限要素モデル作成装置は、前記有限要素モデルは、ソリッド要素に、トラス要素又はビーム要素を組み合わせてモデル化して良い。
これによると、ソリッド要素にトラス要素(曲げ剛性を有しない棒要素)またはビーム要素(曲げ剛性を有する棒要素)を組み合わせることにより、調整の自由度が増えるという利点がある。
尚、本発明に係る撚りコードの有限要素モデル作成プログラムは、リムーバブル型記録媒体やハードディスクなどの固定型記録媒体に記録して配布可能である他、有線又は無線の電気通信手段によってインターネットなどの通信ネットワークを介して配布可能である。
本発明の撚りコードの有限要素モデル作成方法、有限要素モデル作成プログラム並びに有限要素モデル作成装置は、撚りコードを同心円状に2層に分け、外側の中空円柱を外部材、内側の中空円柱または中実円柱を内部材とし、外部材と内部材とは異なる寸法と物性値の異なる材料とする有限要素モデルとし、予め設定した理論式及び近似式に基づいて、外部材の物性値(線形弾性問題においては、ヤング率とポアソン比)、内部材の物性値、内部材の直径(即ち、内部材と外部材の境界となる円筒面の直径)の3つを適切に設定することにより、撚りコードの長手方向の引張剛性、屈曲に伴う曲げ剛性、及び、径方向圧縮剛性の3つの剛性を、全て同時に目標値(試験で測定された撚りコードの実際の値や、撚りコードの設計段階で設定された値など)に合わせることができ、実際の値に実用上問題のないレベルで合わせることができる。
本実施形態に係る撚りコードの有限要素モデル作成方法の処理の手順を示すフローチャート図である。 本実施形態に係る撚りコードの有限要素モデル作成装置の機能構成を示すブロック図である。 本実施形態に係る撚りコードの有限要素モデルとして、撚りコードを外部材と内部材に分けた状態を示す図である。 本実施形態に係る撚りコードの引張剛性を示す図である。 本実施形態に係る撚りコードの曲げ剛性を示す図である。 本実施形態に係る撚りコードの径方向圧縮剛性を示す図である。 本実施形態に係る撚りコードの径方向圧縮剛性の近似式を導出するための有限要素法解析モデルを示す図である。 本実施形態に係る撚りコードの径方向圧縮剛性の有限要素法解析結果を示す図である。 本実施形態に係る撚りコードの径方向圧縮剛性と外部材と内部材の直径の比率との関係を示す図である。 本実施形態に係る撚りコードの有限要素モデルを示す図である。 本実施形態に係る撚りコードの有限要素モデルを有限要素法解析する際に変形させる3通りの方法であり、(a)引張、(b)曲げ、(c)径方向圧縮である。 本実施例で用いるアラミド心線の曲げ剛性を求める試験を示す図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る撚りコードの有限要素モデル作成方法、有限要素モデル作成プログラム並びに有限要素モデル作成装置を実施するための形態について、具体的な一例に即して説明する。尚、以下に説明するものは、例示したものにすぎず、本発明に係る撚りコードの有限要素モデル作成方法、有限要素モデル作成プログラム並びに有限要素モデル作成装置の適用限界を示すものではない。すなわち、本発明に係る撚りコードの有限要素モデル作成方法、有限要素モデル作成プログラム並びに有限要素モデル作成装置は、下記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいてさまざまな変更が可能なものである。
まず、本実施形態に係る撚りコードの有限要素モデル作成方法について、図1に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る撚りコードの有限要素モデル作成方法の処理の手順を示すフローチャート図である。
尚、以下で説明する本実施形態に係る撚りコードの有限要素モデル作成方法の処理は、計算機においても同様に、撚りコードの有限要素モデル作成プログラムとしてCPUにより読み出して実行することができる。また、この撚りコードの有限要素モデル作成プログラムは、リムーバブルな記憶媒体に記録しておくことにより、様々な計算機の記憶装置にインストールすることが可能である。
図1に示すように、コンピュータにおいて、図3に示す撚りコード3の有限要素モデルに基づいて、外部材1の物性値及び寸法値(即ち直径)、内部材2の物性値及び寸法値(即ち直径)の初期値を設定する(ステップS1)。ここで、本実施形態に係る撚りコードの有限要素モデルについて、図3に基づいて、説明する。図3は、本実施形態に係る撚りコードの有限要素モデルとして、撚りコードを外部材と内部材に分けた状態を示す図である。本実施形態に係る撚りコード3は、図3に示すように、同心円状の2層の円柱として、ソリッド要素で有限要素モデルとし、外側の中空円柱部を外部材1、内側の中実円柱部を内部材2と称する。そして、外部材1と内部材2とは物性値の異なる材料とする。また、本実施形態に係る撚りコード3の外部材1の物性値、内部材2の物性値は、線形等方性弾性材料であるヤング率とポアソン比とする。また、外部材1の直径は、固定値であり、撚りコードの直径と等しくなる。ここで、固定条件として、外部材1の直径以外にも、外部材1あるいは内部材2の物性値の一部を固定値として設定しても良い。尚、このステップにおいて、撚りコード3の外部材1の物性値、内部材2の物性値、ならびに、内部材2の直径の初期値は、設定しなくても良い。
次に、引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性の目標値を設定する(ステップS2)。目標値は、実際の撚りコードの各剛性を試験により測定した値や、撚りコードの設計段階で設定された値等である。試験では、撚りコードを心線としたベルトを用いてもよい。
そして、撚りコード3の外部材1の物性値、内部材2の物性値、ならびに、内部材2の直径の値を変量する(ステップS3)。変量条件として、固定された外部材1の直径に対する内部材2の直径の複数種類の比率や、外部材1の物性値に対する内部材2の物性値の複数種類の比率で設定する。ここで、固定された外部材1の直径に対する内部材2の直径の複数種類の比率は、0.2以上0.7以下であることが好ましい。固定された外部材1の直径に対する内部材2の直径の複数種類の比率が0.2より小さいと有限要素メッシュが細かくなりすぎ、解析効率が低下するからである。また、固定された外部材1の直径に対する内部材2の直径の複数種類の比率が0.7より大きいと、後述する径方向圧縮剛性の近似式の範囲外となるからである。
次に、予め設定した理論式及び近似式に基づいて、引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性を計算する(ステップS4)。
ここで、本実施形態に係る撚りコードの物性データに基づいて、本実施形態に係る撚りコードの引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性を計算するために、予め設定した理論式及び近似式の定義について、図4〜図6に基づいて、以下で説明する。図4は、本実施形態に係る撚りコードの引張剛性を示す図である。図5は、本実施形態に係る撚りコードの曲げ剛性を示す図である。図6は、本実施形態に係る撚りコードの径方向圧縮剛性を示す図である。尚、後述するが、撚りコードの物性データから撚りコードの引張剛性及び曲げ剛性を計算するための式は、理論式で表現でき、撚りコードの物性データから撚りコードの径方向圧縮剛性を計算するための式は、近似式で表現する。
また、図3に示す本実施形態に係る撚りコードの有限要素モデルについて、外部材1のヤング率をE、ポアソン比をνとし、内部材2のヤング率をE、ポアソン比をνとする。
[撚りコードの引張剛性]
撚りコードの引張剛性に関しては、図4に示すとおり、元の長さがLの撚りコード3を長手方向にFの力で引っ張り、長さがLになったとする。また、外部材1の断面積をA、内部材2の断面積をAとする。
まず、試験から剛性を計算する式を検討する。元の長さがLの撚りコード3を長手方向にFの力で引っ張り、長さがLになったときの工学ひずみをεとすると、εは下記の通りとなる。
ε=(L−L)/L 式(1.1)
このときの引張剛性をK とすると、Kは、「単位ひずみを生じさせる力」となり、数1に示す式(1.2)となる。単位は、力の単位(SI単位系では[N])となる。
次に、物性データから剛性を計算する式を検討する。撚りコード3全体に作用する力Fを、外部材1が受け持つ力Fと、内部材2が受け持つ力Fに分けて考え、応力とひずみの式「σ=E・ε」、応力の定義「σ=F/A」を考慮すると、力Fは、数2に示す式(1.3)となる。
したがって、式(1.3)を式(1.2)に代入すると、引張剛性Kについて、数3に示す式(1.4)が得られ、物性値(E)と寸法(A)から剛性が計算できる。尚、Dは外部材1の径であり、定数となる。
[撚りコードの曲げ剛性]
撚りコードの曲げ剛性に関しては、図5に示すとおり、元が直線状の撚りコードを、力のモーメントMで屈曲させ、撚りコード中心軸の曲率半径がRになったとする。また、外部材1の断面2次モーメントをI、内部材2の断面2次モーメントをIとする。
まず、試験から剛性を計算する式を検討する。このとき、曲げ剛性をKとすると、試験結果からKは下記の式(2.1)にて求められる。単位は、力の単位×長さの単位×長さの単位(SI単位系では、[N・m])となる。
=M・R 式(2.1)
次に、物性データから剛性を計算する式を検討する。撚りコード3全体の曲げ剛性Kは、外部材1の曲げ剛性KB1と、内部材2の曲げ剛性KB2の和になり、曲げ剛性は、ヤング率Eと断面2次モーメントIの積であることから、全体の曲げ剛性は、下記の数4に示す式(2.2)となる。尚、数4に示す式(2.2)では、円断面の断面2次モーメントの式「I=πD/64」を用いている。
[撚りコードの径方向圧縮剛性]
撚りコードの径方向圧縮剛性に関しては、材料力学上の定義はないが、実用上の定義として、下記の通り定めるものとする。図6に示すとおり、撚りコードを径方向に剛体板で挟み、径方向に、撚りコードの単位長さあたりFの力で圧縮する。これで元の撚りコード直径DがDになったとする。ここで、単位長さとは、撚りコードの長さであって、図6の垂直方向の長さとなる。
まず、試験から剛性を計算する式を検討する。径方向に、撚りコードの単位長さあたりFの力で圧縮し、撚りコード直径DがDになった際の、径方向のひずみεを下式の通り定義する。尚、圧縮変化なので、本来のひずみの定義ならば、εは負の値となるが、以後の計算を単純化するため、圧縮時に正の値になるようにしている。
ε=(D−D)/D 式(3.1)
このときの径方向圧縮剛性をKとして、Kを下式で定義する。この剛性は、「撚りコードの単位長さあたりの、径方向圧縮剛性」として定義される。単位は、力の単位(SI単位系では[N])となる。
=F/ε=FD/(D−D) 式(3.2)
次に、物性データから剛性を計算する式を検討する。図6の変形状態については、力Fとひずみεの関係式を理論で導くことが難しい。従って、有限要素法解析を用いて近似式を求める。即ち、図6の変形状態を有限要素法解析で模擬し、力Fと径方向ひずみεから径方向剛性Kを求める。そして、外部材1・内部材2の物性や寸法を変量して解析し、その結果から規則性を見つけ出して、近似式として一般化する。
図7に径方向圧縮剛性の近似式を導出するための有限要素法解析モデルを示す。
また、有限要素法解析の解析方法等は以下の通りとした。
・形状と荷重の対称性から、1/4円モデルとした。
・要素は平面ひずみ要素を用い、厚みは、単位厚み(1mm)とした。
・剛体面と心線間の摩擦は無し(摩擦無し接触)とした。
・材料物性は線形弾性材料とした(ヤング率とポアソン比で定義)。
・接触を含むため、大変形オプションはONにした。
また、有限要素法解析の条件として、下記の通りとした。
<固定条件>
・外部材1直径: 2mm(半径1mm)
・外部材1ヤング率: 1.0 [MPa]
・径方向ひずみ: 0.1(10%)
<変量条件>
内部材2の直径とヤング率を、外部材1に対する比率で表して変量した。
・内部材2直径/外部材1直径(D/D):0,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7(0.7以上は、外部材の潰れが大きく、計算出来なかった)
・内部材2ヤング率/外部材1ヤング率(E/E):1,2,5,10,20,50,100,1000,10000
以上の条件で、有限要素法解析を行い、解析結果に基づいて、撚りコードの単位長さあたりの径方向圧縮剛性(K)を計算し、横軸にE/E、縦軸にKを取って、D/D毎にプロットしたグラフを、図8に示す(図8の横軸は対数目盛になっている)。図8は、本実施形態に係る撚りコードの径方向圧縮剛性の有限要素法解析結果を示す図である。
図8を見ると、E/Eが約50以上の領域においては、Kの変化がほとんど無いことが分かる。つまり、内部材2が外部材1よりも50倍以上大きいヤング率なら、その値はいくらであってもKには影響しないということになる。内部材は主に引張剛性を調整する役割を持っているため、通常は外部材よりも数桁大きなヤング率になる。そのため、「50倍以上大きい」という制約条件はあまり問題がなく、それによってEがKに対して無関係になる(独立性が高まる)。従って、E/Eは近似式に含めないことにする。
次に、径方向圧縮剛性の近似式を導出する。図9は、本実施形態に係る撚りコードの径方向圧縮剛性と外部材と内部材の直径の比率との関係を示す図である。図9は、E/E=10000の値を用い、D/DとKの関係をプロットし、エクセルのグラフ機能で2次式近似した結果である。この図9から、D=2[mm]、E=1.0[MPa]の時の径方向圧縮剛性は数5で示す式(3.3)で近似出来る。
これまでは外部材1の径(D)とヤング率(E)を固定していたが、次に任意のD、Eについて考える。まず、ヤング率Eについては、E/Eが固定されている場合、EがA倍になれば、EもA倍になるので、有限要素モデル全体のヤング率が一斉にA倍となる。従って、径方向圧縮剛性Kも単純にA倍すれば良い。上述の式(3.3)はE=1.0[MPa]の場合の式なので、任意のEの場合はE倍すればよい。次にDだが、D/Dが固定されていると、DがA倍になるとDもA倍になるので、モデル全体が相似形でA倍に拡大されることになる(平面ひずみ要素の厚みは、単位厚みのまま)。したがって、径方向圧縮剛性もA倍となる。上述の式(3.3)はD=2[mm]の場合の式なので、任意のDの場合は(D/2)倍すれば良い。
以上から、任意のE、E、D、Dに対する径方向圧縮剛性Kの近似式は、数6で示す下記の式(3.4)の通りとなる。尚、式(3.4)において、Kの単位:N、Eの単位:MPa、 D及びDの単位:mmである。
そして、計算された引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性の値が目標値と所定の誤差の範囲内で一致したかどうかを判断する(ステップS5)。ここで、目標値に対する計算された値と目標値との差の比率を誤差とし、所定の誤差として許容できる範囲(例えば、±5%の範囲など)を予め設定する。
そして、計算された引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性の値が目標値と所定の誤差の範囲内で一致していないと判断された場合(ステップS5:NO)、ステップS3に戻る。
一方、計算された引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性の値が目標値と所定の誤差の範囲内で一致していると判断された場合(ステップS5:YES)、ステップS4で算出された撚りコード3の外部材1の物性値、内部材2の物性値、ならびに、内部材2の直径の値を出力する(ステップS6)。尚、計算された引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性の値が目標値と所定の誤差の範囲内で一致している場合が複数ある際には、計算された引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性の値と目標値との誤差がもっとも小さい外部材1の物性値、内部材2の物性値、ならびに、内部材2の直径の値を出力する。
以上により、撚りコードの長手方向の引張剛性、屈曲に伴う曲げ剛性、及び、径方向圧縮剛性の3つの剛性を全て同時に目標値に合わせた撚りコードの有限要素モデルが作成される。
次に、本実施形態に係る撚りコードの有限要素モデル作成装置について、図2に基づいて説明する。図2は、本実施形態に係る撚りコードの有限要素モデル作成装置のブロック図である。撚りコードの有限要素モデル作成装置10は、演算部と、記憶部と、入力部と、出力部と、から構成されて、コンピュータ上に実装される。ここで、図2に示されている撚りコードの有限要素モデル作成装置10の各部(演算部、記憶部、入力部、及び、出力部)は、例えば汎用のパーソナルコンピュータ等の計算機によって構成されている。かかる計算機には、CPU、ROM、RAM、ハードディスク、CD−ROMの駆動装置などのハードウェアが収納されており、ハードディスクには、プログラム(このプログラムは、リムーバブルな記憶媒体に記録しておくことにより、様々なコンピュータにインストールすることが可能である)を含む各種のソフトウェアが記録されている。そして、これらのハードウェアおよびソフトウェアが組み合わされることによって、上述の各部が構築されている。
撚りコードの有限要素モデル作成装置10は、外部材の物性値、内部材の物性値及び内部材の直径の初期値11と、引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性の目標値12と、外部材の物性値、内部材の物性値及び内部材の直径の変量部21と、理論式・近似式による引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性計算部22と、引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性比較部23と、引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性出力部24とを備える。
外部材の物性値、内部材の物性値及び内部材の直径の初期値11は、図3に示す撚りコード3の有限要素モデルに基づいて、外部材1の物性値及び寸法値(即ち直径)、内部材2の物性値及び寸法値(即ち直径)の初期値が、入力部やネットワークを介して入力されて記憶するためのものである。なお、外部材の物性値、内部材の物性値及び内部材の直径の初期値11の作用は、上述した撚りコードの有限要素モデル作成方法のステップS1の処理と同じであり、詳細な説明を省略する。
引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性の目標値12は、引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性の目標値が、入力部やネットワークを介して入力されて記憶するためのものである。なお、引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性の目標値12の作用は、上述した撚りコードの有限要素モデル作成方法のステップS2の処理と同じであり、詳細な説明を省略する。
外部材の物性値、内部材の物性値及び内部材の直径の変量部21は、撚りコード3の外部材1の物性値、内部材2の物性値、ならびに、内部材2の直径の値を変量するためのものである。なお、外部材の物性値、内部材の物性値及び内部材の直径の変量部21の作用は、上述した撚りコードの有限要素モデル作成方法のステップS3の処理と同じであり、詳細な説明を省略する。
理論式・近似式による引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性計算部22は、予め設定した理論式及び近似式に基づいて、引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性を計算するためのものである。なお、有限要素法による引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性計算部22の作用は、上述した撚りコードの有限要素モデル作成方法のステップS4の処理と同じであり、詳細な説明を省略する。
引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性比較部23は、計算された引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性の値が目標値と所定の誤差の範囲内で一致したかどうかを判断するためのものである。引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性比較部23で一致したと判断しなかった場合は、その結果が、外部材の物性値、内部材の物性値及び内部材の直径の変量部21に出力される。なお、引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性比較部23の作用は、上述した撚りコードの有限要素モデル作成方法のステップS5の処理と同じであり、詳細な説明を省略する。
引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性出力部24は、引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性比較部23で一致したと判断した場合、その結果が入力され、引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性計算部22の有限要素法で計算された撚りコード3の外部材1の物性値、内部材2の物性値、ならびに、内部材2の直径の値を出力するためのものである。なお、引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性出力部24の作用は、上述した撚りコードの有限要素モデル作成方法のステップS6の処理と同じであり、詳細な説明を省略する。
尚、以上で説明した本実施形態の撚りコードの有限要素モデル作成方法、有限要素モデル作成プログラム並びに有限要素モデル作成装置を適用して作成された撚りコード3の有限要素モデルの物性値・寸法値(撚りコード3の外部材1の物性値、内部材2の物性値、ならびに、内部材2の直径の値)を用いて、実際に有限要素法解析を行い、効果を検証してもよい。
より詳細には、図10に示すように、撚りコード3の有限要素モデルは、形状及び荷重条件の対象性により、径方向に半分の半円状としており、対称面は面内に拘束する。また、撚りコード長手方向の所定の長さの領域をモデル化し、切断面は面内に拘束する。本実施形態に係る撚りコードの有限要素モデルとして、6面体1次要素(ソリッド要素)を用い、最中心部の要素は形状の都合上、5面体に縮退する。また、解析オプションとして、大変形非線形オプションのみONとし、アップデートラグランジュ法による非線形解析を行う。これは、径方向圧縮条件にて剛体と撚りコードの接触が発生するので、これを考慮する必要があるためである。材料は線形等方性弾性材料とする。
そして、この撚りコードの有限要素モデルについて、図11に示すとおりの3通りの変形をさせる有限要素法解析を実施した。3通りの変形とは、図11(a)に示す引張、図11(b)に示す曲げ、図11(c)に示す径方向圧縮の3通りである。この3通りの変形において、対称条件による対称面、および長手方向の切断面は、「常に平面を保つが、面内での変形は許容する」という拘束を与える。また、図11(a)に示す引張、図11(b)に示す曲げ、図11(c)に示す径方向圧縮の各変形に対する個別の条件として、引張ひずみ、曲率半径、径方向ひずみを設定する。
上記の条件の元、有限要素法解析ソフトでシミュレーションすることにより、撚りコード3に生じる上記3通りの変形の挙動を解析し、得られた変形状態から、上述の式(1.4)(2.2)(3.4)を用いて、引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性の各剛性を計算する。そして、解析された引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性の各剛性と目標値との誤差に基づいて、実用になる範囲で撚りコード3の3つの剛性を考慮した有限要素解析ができることを確認する。
このように、本実施形態の撚りコードの有限要素モデル作成方法、有限要素モデル作成プログラム並びに有限要素モデル作成装置は、撚りコードを同心円状に2層以上に分け、最も外側の中空円柱を外部材、内側の中空円柱または中実円柱を内部材とし、外部材と内部材とは物性値の異なる材料とする有限要素モデルとし、予め設定した理論式及び近似式に基づいて、外部材の物性値(線形弾性問題においては、ヤング率とポアソン比)、内部材の物性値、内部材の直径(即ち、内部材と外部材の境界となる円筒面の直径)の3つを適切に設定することにより、撚りコードの長手方向の引張剛性、屈曲に伴う曲げ剛性、及び、径方向圧縮剛性の3つの剛性を、全て同時に目標値(試験で測定された撚りコードの実際の値や、撚りコードの設計段階で設定された値など)に合わせることができ、実際の値に実用上問題のないレベルで合わせることができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいてさまざまな変更が可能なものである。
また、上記実施形態では、撚りコードを同心円状に2層の円柱に分けて有限要素モデルを作成したが、同心円状に3層以上の円柱に分けて有限要素モデルを作成してもよい。その場合は、予め設定される理論式・近似式を、最も外側にある外部材の物性値、外部材の内側にある2つ以上の内部材の物性値及び直径から、撚りコードの長手方向の引張剛性、屈曲に伴う曲げ剛性、及び、径方向圧縮剛性の3つの剛性を求められるように設定する。これにより、調整の自由度を増やすことができる。
また、上記実施形態では、ソリッド要素により有限要素モデルを作成したが、ソリッド要素にトラス要素(曲げ剛性を有しない棒要素)またはビーム要素(曲げ剛性を有する棒要素)を組み合わせて有限要素モデルを作成してもよい。その場合は、ソリッド要素の物性値に加えて、組み合わせるトラス要素またはビーム要素の断面積や断面形状などの形状特性、及び、物性値を設定し、更にトラス要素またはビーム要素を追加した場合の撚りコードの長手方向の引張剛性、屈曲に伴う曲げ剛性、及び、径方向圧縮剛性についての理論式・近似式を新たに作成する。このように、調整できる形状特性や物性値の数を増やすことによって、調整の自由度を増やすことができる。
更に、上記実施形態に係る撚りコード3の外部材1の物性値、内部材2の物性値は、線形等方性弾性材料であるヤング率とポアソン比としているが、それに限らない。例えば、ヤング率とポアソン比以外の線形等方性弾性材料を用いてもよいし、線形異方性弾性材料、超弾性材料、或いは、塑性材料を用いることができる。その場合は、撚りコードの長手方向の引張剛性、屈曲に伴う曲げ剛性、及び、径方向圧縮剛性の3つの剛性を、外部材の物性値、内部材の物性値、内部材の直径から求めるための予め設定される理論式・近似式を、ヤング率とポアソン比以外の線形等方性弾性材料、線形異方性弾性材料、超弾性材料、或いは、塑性材料に基づいて設定する。これにより、ヤング率とポアソン比で定義される線形等方性弾性材料以外の材料挙動を表現できるという利点がある。
次に、上述した本実施形態の撚りコードの有限要素モデル作成方法、有限要素モデル作成プログラム並びに有限要素モデル作成装置を適用した具体的な実施例について、以下に説明する。以下では、本実施形態の撚りコードの有限要素モデル作成方法(図1参照)を適用した具体的な実施例に基づいて説明し、本実施形態の撚りコードの有限要素モデル作成プログラム及び有限要素作成装置についての説明は同様であり省略する。上述した本実施形態の撚りコードの有限要素モデル作成方法、有限要素モデル作成プログラム並びに有限要素モデル作成装置をアラミド心線に適用した実施例について説明する。
まず、コンピュータにおいて、図3に示す撚りコード3の有限要素モデルに基づいて、外部材1の物性値及び直径、内部材2の物性値及び直径の初期値を設定する(ステップS1)。ここで、本実施例において、アラミド心線の外部材1の物性値、内部材2の物性値は、線形等方性弾性材料(ヤング率とポアソン比で定義)とする。また、外部材1の直径Dは、1.19[mm](固定値)とする。そして、物性値については、ヤング率のみ調整の対象とし、外部材1及び内部材2のポアソン比は0.3で固定した。また、内部材2のヤング率と直径は、それぞれ外部材のヤング率と直径に対する比率で表すものとする。
次に、引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性の目標値を設定する(ステップS2)。ここで、本実施例において、目標値は、平均径(外部材1の直径)Dが1.19[mm]の実際のベルト用のアラミド心線の各剛性を試験により測定した値とする。このアラミド心線は、既に引張剛性と曲げ剛性の測定値が求められている。引張剛性は、処理ロープS−S(応力−歪み曲線)から0〜2%間の線形近似値を用いて導出している。また曲げ剛性は、オルゼン式曲げ試験機にて図12に示す本実施例で用いるアラミド心線をゴムに挟んだ試料で測定(試験片の一端をチャックに固定し、所定の曲げ角度に屈曲した時に、他端に加わる曲げモーメントとその曲げ角度から曲げ剛性を算出する)し、ゴムの曲げ剛性を減算して心線の曲げ剛性を求めている。
引張剛性 K:31187.27[N]
曲げ剛性 K:115.171[N・mm
径方向圧縮剛性については、心線単体で図6の変形モードとなる試験は実施していない。そこで代替データとして、径方向の弾性率から、上述の撚りコードの径方向圧縮剛性の近似式を求める際に説明した有限要素解析を用いて径方向圧縮剛性を計算した。アラミド心線の径方向弾性率は20[MPa]であり、有限要素解析による径方向剛性K(心線長さ1mmあたり)は下記の通りとなった。
=8.24[N]
まとめると、本実施例で用いられるアラミド心線の各変形モード試験における剛性は下記の通りとなった。
引張剛性 K:31187.27[N]
曲げ剛性 K:115.171[N・mm
径方向圧縮剛性 K:8.24[N](心線長さ1mmあたり)
そして、撚りコード3の外部材1の物性値、内部材2の物性値、ならびに、内部材2の直径の値を変量し(ステップS3)、予め設定した理論式及び近似式に基づいて、引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性を計算し(ステップS4)、計算された引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性の値が目標値と所定の誤差の範囲内で一致したかと判断されるまで(ステップS5)、ステップS3からの処理を繰り返す。
本実施例においては、上記ステップS2でまとめた3つの変形モードの剛性に全て合致するよう、2層ソリッド要素モデルの外部材・内部材の直径とヤング率を合わせ込む。尚、本実施例においては、エクセルのソルバー機能を用いた。外部材の直径(D)は、心線外径(1.19[mm])として固定されているため、合わせ込む変数は内部材直径(D)、外部材ヤング率(E)、内部材ヤング率(E)の3つである。これら3つの変数から、各変形モードの剛性が、上述した理論式および近似式によって計算される。
そして、目標値と調整結果の差(残差)から、(残差/目標値)を計算している。それを各変形モードで合算し、それが最小値となるようにする。
また、制約条件として、「内部材の直径/外部材の直径」を、0.2より大きく、0.7より小さくしている。さらに、径方向圧縮剛性の近似式の成立条件である、「E/E>50」も制約条件として入れている。この条件でのエクセルソルバー実行により、本実施例におけるアラミド心線の外部材1のヤング率、内部材2のヤング率、ならびに、内部材2の直径の値が下記のように出力される。
外部材ヤング率 E:18.60[MPa]
内部材ヤング率 E:616517[MPa]
内部材直径 D:0.248[mm]
尚、算出された本実施例におけるアラミド心線の調整結果による、各変形モード剛性の推測値は下記の表1の通りである。表1では、引張剛性で誤差が若干大きめだが、良好に調整できていることがわかる。
ここで、上記実施例で有限要素モデルの物性値・寸法値(E,E,D)を用いて、実際に有限要素法解析を行い、効果を検証した。図10にベルト用の撚りコードの有限要素モデルを示す。有限要素モデルは、形状及び荷重条件の対称性により、径方向に半分の半円状としており、対称面は面内に拘束した。また、撚りコード長手方向の長さは0.5mmの領域を有限要素モデル化し、切断面は面内に拘束した。有限要素は、6面体1次要素(ソリッド要素)を用いたが、最中心部の要素は形状の都合上、5面体に縮退させた。材料物性は線形等方性弾性とした。ヤング率は上記実施例で得られたとおりであり、ポアソン比は外部材、内部材共に0.3である。寸法は、上記実施例で算出された下記の通りである。
外部材ヤング率 E:18.60[MPa]
内部材ヤング率 E:616517[MPa]
内部材直径 D:0.248[mm]
この有限要素モデルについて、図11に示すとおりの3通りの変形をさせる有限要素法解析を実施した。これらは(a)引張、(b)曲げ、(c)径方向圧縮の3通りである。この3通りにおいて、対称条件による対称面、および長手方向の切断面は、「常に平面を保つが、面内での変形は許容する」という拘束を与えた。
また、個別の条件は下記の通りである。
(a)引張 :引張ひずみ 0.02
(b)曲げ : 曲率半径 50mm
(c)径方向圧縮 :径方向ひずみ 0.1
計算環境は下記の通りである。
・計算機:SGI社製、Altix XE500
・CPU:Intel社製 Xeon5570×2個
・メモリ:12GB
・OS:SuSE Linux(登録商標)10
・有限要素解析ソフトウェア:MSC社製 「Marc2010.2」
・解析オプション
大変形非線形オプションのみONとして、アップデートラグランジュ法による非線形解析を行った。これは、径方向圧縮条件にて剛体と撚りコードの接触が発生するので、これを考慮する必要があるためである。材料は線形等方性弾性材料である。
上記の条件の元、有限要素法解析ソフトでシミュレーションすることにより、撚りコード3に生じる上記3通りの変形の挙動を解析し、得られた変形状態から、上述の式(1.4)(2.2)(3.4)を用いて、引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性の各剛性(K、K、K)を計算した。ステップS4で計算された各剛性K、K、Kの結果とステップS2で設定された目標値との比較を以下の表2に示す。
表2に示すように、曲げ剛性の誤差がやや大きい(有限要素法の結果の方が多き)が、実用になる範囲で、撚りコードの3つの剛性を考慮した有限要素法解析ができることが確認できた。
1 外部材
2 内部材
3 撚りコード
10 撚りコードの有限要素モデル作成装置
11 外部材の物性値、内部材の物性値及び内部材の直径の初期値
12 引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性の目標値
21 外部材の物性値、内部材の物性値及び内部材の直径変量部
22 理論式・近似式による引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性計算部
23 引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性比較部
24 引張剛性、曲げ剛性及び径方向圧縮剛性出力部

Claims (12)

  1. コンピュータにおいて撚りコードの有限要素モデルを作成する撚りコードの有限要素モデル作成方法であって、
    コンピュータにより実行される処理が、
    撚りコードを同心円状の2層で分け、最も外側の中空円柱を外部材、当該外部材の内側の中実円柱又は中空円柱を内部材として、ソリッド要素でモデル化して有限要素モデルを作成する工程と、
    前記撚りコードの長手方向の引張剛性、前記撚りコードの屈曲に伴う曲げ剛性、及び、前記撚りコードの径方向圧縮剛性を目標値に合わせるように、予め設定した理論式及び近似式に基づいて、前記有限要素モデルの前記外部材の物性値、前記内部材の物性値、及び、前記内部材の直径を設定する工程と、
    を備えることを特徴とする撚りコードの有限要素モデル作成方法。
  2. 前記物性値は、線形等方性弾性材料、線形異方性弾性材料、超弾性材料、或いは、塑性材料を用いることを特徴とする請求項1に記載の撚りコードの有限要素モデル作成方法。
  3. 前記撚りコードを同心円状の3層以上で分けることを特徴とする請求項1または2に記載の撚りコードの有限要素モデル作成方法。
  4. 前記有限要素モデルは、ソリッド要素に、トラス要素又はビーム要素を組み合わせてモデル化することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の撚りコードの有限要素モデル作成方法。
  5. 撚りコードの有限要素モデルを作成する撚りコードの有限要素モデル作成プログラムであって、
    撚りコードを同心円状の2層で分け、最も外側の中空円柱を外部材、当該外部材の内側の中実円柱又は中空円柱を内部材として、ソリッド要素でモデル化して有限要素モデルを作成する工程と、
    前記撚りコードの長手方向の引張剛性、前記撚りコードの屈曲に伴う曲げ剛性、及び、前記撚りコードの径方向圧縮剛性を目標値に合わせるように、予め設定した理論式及び近似式に基づいて、前記有限要素モデルの前記外部材の物性値、前記内部材の物性値、及び、前記内部材の直径を設定する工程と、
    をコンピュータに実行させることを特徴とする撚りコードの有限要素モデル作成プログラム。
  6. 前記物性値は、線形等方性弾性材料、線形異方性弾性材料、超弾性材料、或いは、塑性材料を用いることを特徴とする請求項5に記載の撚りコードの有限要素モデル作成プログラム。
  7. 前記撚りコードを同心円状の3層以上で分けることを特徴とする請求項5または6に記載の撚りコードの有限要素モデル作成プログラム。
  8. 前記有限要素モデルは、ソリッド要素に、トラス要素又はビーム要素を組み合わせてモデル化することを特徴とする請求項5〜のいずれか一項に記載の撚りコードの有限要素モデル作成プログラム。
  9. コンピュータ上に実装され、撚りコードの有限要素モデルを作成する撚りコードの有限要素モデル作成装置であって、
    撚りコードを同心円状の2層で分け、最も外側の中空円柱を外部材、当該外部材の内側の中実円柱又は中空円柱を内部材として、ソリッド要素でモデル化して有限要素モデルを作成する手段と、
    前記撚りコードの長手方向の引張剛性、前記撚りコードの屈曲に伴う曲げ剛性、及び、前記撚りコードの径方向圧縮剛性を目標値に合わせるように、予め設定した理論式及び近似式に基づいて、前記有限要素モデルの前記外部材の物性値、前記内部材の物性値、及び、前記内部材の直径を設定する手段と、
    を備えることを特徴とする撚りコードの有限要素モデル作成装置。
  10. 前記物性値は、線形等方性弾性材料、線形異方性弾性材料、超弾性材料、或いは、塑性材料を用いることを特徴とする請求項9に記載の撚りコードの有限要素モデル作成装置。
  11. 前記撚りコードを同心円状の3層以上で分けることを特徴とする請求項9または10に記載の撚りコードの有限要素モデル作成装置。
  12. 前記有限要素モデルは、ソリッド要素に、トラス要素又はビーム要素を組み合わせてモデル化することを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の撚りコードの有限要素モデル作成装置。
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