JP5847152B2 - 内燃機関 - Google Patents
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Description
特許文献1に説明されるように、そのようなポンプは、クランク軸に連動して作動するメカニカルポンプを用いることが考えられるが、内燃機関に設ける場合には、負圧空間となる密閉クランク室と、吸入エアを排出する正圧空間を構成する密閉された別室とを接続するように設ける必要がある。
その対策として、クランク軸から直接、動力を取り出すことが考えられるが、負圧空間と正圧空間の間で密閉空間を確保しながら動力をポンプに伝達できる構造が求められる。
特許請求の範囲および本明細書の説明における前後左右上下等の向きは、本実施形態の内燃機関を搭載した車両の向きに従うものとする。本実施形態において車両は鞍乗型車両であり、具体的には自動二輪車である。
図中矢印FRは車両前方を、LHは車両左方を、RHは車両右方を、UPは車両上方を、それぞれ示す。
内燃機関3の前方にはラジエータ33が配置されている。
本内燃機関3は、水冷4ストロークサイクル直列4気筒内燃機関であり、クランク軸6を車幅方向(左右方向)に指向させ、4つ気筒を車幅方向に並べて配列させて車体フレーム2に横置きに搭載される。
上側ケース30Aの前方上部にやや前傾してシリンダブロック40、シリンダヘッド41が順次重ねられ、図示しないスタッドボルトにより一体に締結され、シリンダヘッド41の上にはシリンダヘッドカバー42が被せられ、下側ケース30Bの下にはオイルパン43が取り付けられる。
内側2つのスロットルボディ34、34の間には、電動モータ37aによりスロットルバルブを駆動するスロットルバルブ駆動機構37が設けられている。
吸気カム軸47の右端部にはカムチェーン被動スプロケット49が取付けられ、クランク軸6の右端側に取り付けられたカムチェーン駆動スプロケット50との間に巻き掛けられたカムチェーン51を介して、クランク軸の1/2の回転速度で吸気カム軸47が回転駆動される。
したがって、排気カム軸48は、クランク軸6により駆動される吸気カム軸47と連動して、互いに反対方向に同じ回転速度で回転する。
内燃機関3は、4つのシリンダ(本発明における「気筒」)52を直列に配列して一体に成形された直列4気筒であるので、クランク軸6は5つのジャーナル部6aを有し、上側ケース30Aの5つの上ジャーナル壁71A1〜71A5と、下側ケース30Bの5つの下ジャーナル壁71B1〜71B5とによりクランク軸6は回転自在に支持される。
クランク軸6の隣合うジャーナル部6aの間には、左右をウエブ部6bに挟まれて、クランクピン6cが一体に形成されている。
上側ケース30Aに締結されたシリンダブロック40の4つのシリンダ52には、ピストン55が往復摺動可能に嵌合され、ピストン55はコンロッド55aを介してクランク軸6のクランクピン6cに連結される。
各吸気弁57および各排気弁58は、シリンダヘッド41に回転可能に軸支される上述の吸気カム軸47および排気カム軸48により、クランク軸6の回転に同期して開閉駆動される。
シリンダブロック40とシリンダヘッド41の右端部には、カムチェーン51を配設するためのカムチェーン室44が形成されている。なお、図3、図4においては、カムチェーン室44の右側面を覆う壁部が切り欠かれて図示されている。
ただし、図3中概ねVI−VI矢視による断面を示す斜視図である図6に示されるように、左から2つ目の下ジャーナル壁71B2から最右側の下ジャーナル壁71B5までの各下ジャーナル壁の下部には、隔壁73近くに連通孔74が設けられ、4つのクランク室70とカムチェーン室44とが連通されている。
クランク軸6と平行に配置され、中心線Yのみ示す各ポンプ共通のポンプ軸101の、ミッション室80の左側壁83Lを貫通した左端には、冷却用のウォータポンプ104が取付けられるとともに、ミッション室80内に位置する右端にはポンプ受動ギヤ106が取付けられている。
そのため、各クランク室70内でのピストン55の昇降によるポンピングロスを抑制することができる。
すなわち、クランク軸6で発生した駆動力を取り出すためのプライマリドライブギヤ6fが、クランク軸6におけるクランク室70の内部の位置に設けられている。
図5においては、メイン軸81がその軸受と変速ギヤ群とともに抜き出された状態が示される。図示しないカウンタ軸82も同様に変速ギヤ群を備え、互いに対となる変速ギヤどうしを噛合しており、軸にスプライン嵌合しシフタとなる変速ギヤの変速操作機構による移動によって変速がなされる。
クラッチ装置9にはプライマリドリブンギヤ91が同芯に一体的に備えられており、プライマリドリブンギヤ91はクランク軸6の右側から数えて2番目のウエブ部6bに形成されたプライマリドライブギヤ6fと噛合して1次減速機構を構成している。
したがって、プライマリドライブギヤ6fとプライマリドリブンギヤ91とが噛み合う空間を通してクランク室70とクラッチ室90が連通されており、内燃機関3が運転されてスカベンジポンプ100が作動し、各クランク室70が負圧空間となると、クラッチ室90も負圧空間となる。
クランク室70とクラッチ室90が連通して負圧空間が拡大されたので、スカベンジポンプ100はプライマリドライブギヤ6fよりも軸方向外側に位置する最も右側のシリンダ52におけるエアも吸入排出して、例外なくすべてのシリンダ52においてポンピングロスが低減される。
なお、クランク軸6の回転動力は、クランク軸6側のプライマリドライブギヤ6f、クラッチ装置9側のプライマリドリブンギヤ91を介してクラッチ装置9に伝達されるが、クラッチ装置9は、変速機8のギヤ切換え中にはクランク軸6の回転動力を切断して変速機8に伝達せず、変速機8のギヤ切換えが終了するとともに回転動力を接続して、クランク軸6の回転動力を変速機8に伝達するように構成されている。
前述のように、カウンタ軸82は、内燃機関3の出力軸31でもあり、クランクケース30のケース左側壁30Lを左側方に貫通して、すなわちミッション室80の左側壁83Lの外部に突出し、その左端部に駆動スプロケット32が嵌着され、後輪13の従動スプロケット14との間に駆動チェーン15が掛け渡され2次減速機構が構成され、2次減速機構を介して動力が後輪13に伝達される(図1参照)。
図3に示されるように、プライマリドライブギヤ6fにおけるプライマリドリブンギヤ91との噛み合い部91aの下方に、スカベンジポンプ100のポンプ軸101に回転駆動力を伝達するためのポンプ駆動アイドルギヤ105とプライマリドライブギヤ6fとの噛み合い部105aが位置している。
そのため、プライマリドリブンギヤ91とポンプ駆動アイドルギヤ105とは、プライマリドライブギヤ6fとの噛み合い部91a、105aを上下にずらして位置させ、コンパクトな軸配置となっている。
被動アイドルギヤ部105cは、最も右側のクランク室70内の下部であり、且つクラッチ室90の下部に配置されて、プライマリドライブギヤ6aに噛み合い、駆動アイドルギヤ部105dはミッション室80内に配置されて、スカベンジポンプ100のポンプ軸101の右端部に取り付けられたポンプ受動ギヤ106と噛み合っている。
図7において、ポンプ軸101は一転鎖線で中心線Yのみが示され、ポンプ受動ギヤ106は切り欠かれた一部のみが示されるが、ポンプ軸101は、フィードポンプ103、ウォータポンプ104等のポンプ軸でもある。
また、クランクケース30のケース右側壁30Rをなす最も右側の上下ジャーナル壁71A5,71B5から右方へ突出したクランク軸6の右端部6eには、上述のカムチェーン駆動スプロケット50が取付けられるほか、さらに先端側に隣接して一方向クラッチ62を介してクランク軸従動ギヤ63が取付けられている。
また、下側クランクケース30Bの外側前部には、クランク軸6と軸芯を平行に配してスタータモータ(本発明における「内燃機関の始動装置」)61が取り付けられ、クラッチカバー部材76がクランクケース30の前部側面まで延在したクラッチ室90内の前部には、スタータモータ61からの動力をクランク軸6に伝達するスタータアイドルギヤ65が配置されている。
したがって、始動時のスタータモータ61の回転は、スピンドルギヤ61a、スタータアイドルギヤ65の大ギヤ部65a、小ギヤ部65b、クランク軸従動ギヤ63、一方向クラッチ62を介してクランク軸6に伝達され、内燃機関3が運転された後のクランク軸6回転は、一方向クラッチ62によりスタータモータ61には伝達されない。
そのため、スタータアイドルギヤ65を支持するスタータアイドル軸64の一対の支持部79の両方が、クランクケース30の立設壁75Rの底面75Raに立設配置されたことにより、スタータアイドル軸64が両持ちにより強固に支持され、一方の支持部79がクラッチカバー部材76側に跨らないので、スタータアイドル軸64の組み付け作業が容易となっている。
なお、スタータアイドルギヤ65が、スタータアイドル軸64に固定するように取付けられ、スタータアイドル軸64が、一対の支持部79に回転自在に支持されてもよい。
そのため、プライマリドライブギヤ6fにおけるプライマリドリブンギヤ91およびポンプ駆動アイドルギヤ105との噛み合い位置91a、105aが、プライマリドリブンギヤ91とポンプ駆動アイドルギヤ105とで上下に並べて配置されたことで、相互の空き空間を利用してコンパクトな軸配置を可能にして、ひいては内燃機関3の小型化が可能となる。
そのため、プライマリドライブギヤ6fとプライマリドリブンギヤ91とが噛み合う空間を通してクランク室70とクラッチ室90が連通して負圧空間が拡大されたので、プライマリドライブギヤ6fよりも軸方向外側に位置するシリンダ52におけるエアも吸入排出されて、例外なくすべてのシリンダ52においてポンピングロスを低減できる。
すなわち、ポンプ駆動アイドルギヤ105の被動アイドルギヤ部105cを避ける凹部収容室78をクラッチ室90の下壁に形成して、凹部収容室78に対応して下壁面92が膨出するようにクラッチ室90を形成したので、ポンプ駆動アイドルギヤ105を包含するクラッチ室90の全体としての大型化を回避して、内燃機関3の大型化を抑制した。
そのため、スタータアイドル軸64を両持ちにより強固に支持でき、一方の支持部79がクラッチカバー部材76側に跨らないので、スタータアイドル軸64の組み付け作業を容易に行なうことができる。
例えば、本発明の内燃機関は、車載用に限らず定置型を含め多様な内燃機関であっても請求項1の要件を備える内燃機関であればよい。
また、各機器の左右の配置は、説明の便宜上、図示のものに特定して記載したが、上記実施形態に示すものと左右逆となる配置のものであってもよく、本発明に含まれる。
Claims (8)
- 複数の気筒(52)を直列に配列した多気筒式の内燃機関(3)であって、
同内燃機関(3)のクランクケース(30)は、クランク軸(6)を回転自在に軸支する密閉されたクランク室(70)と、同クランク室(70)とは別に隔壁(73,73a)により同クランク室(70)から隔離された補機室(80)とを構成し、
前記クランク室(70)内のエアを吸引して前記補機室(80)に排出するスカベンジポンプ(100)が、前記補機室(80)内に配置され、前記クランク室(70)が負圧クランク室に構成される内燃機関において、
前記クランク軸(6)で発生した駆動力を取り出すためのプライマリドライブギヤ(6f)が、同クランク軸(6)における前記クランク室(70)の内部の位置に設けられ、
前記スカベンジポンプ(100)を前記プライマリドライブギヤ(6f)により駆動させるポンプ駆動アイドルギヤ(105)が、前記クランク室(70)内に配置されて前記プライマリドライブギヤ(6f)に噛み合う被動アイドルギヤ部(105c)と、前記補機室(80)内に配置されて前記スカベンジポンプ(100)のポンプ受動ギヤ(106)に噛み合う駆動アイドルギヤ部(105d)と、前記被動アイドルギヤ部(105c)と駆動アイドルギヤ部(105d)とが両端に取り付けられるアイドル軸部(105b)とを備え、
前記隔壁(73a)に貫通して設けられた軸受孔(77)に、前記アイドル軸部(105b)が、前記被動アイドルギヤ部(105c)と駆動アイドルギヤ部(105d)との間で直接支持されたことを特徴とする内燃機関。 - 前記隔壁(73a)は、前記軸受孔(77)の周囲が厚肉に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
- 前記軸受孔(77)の前記アイドル軸部(105b)との摺動面が、前記内燃機関(3)を循環する潤滑オイルにより満たされることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関。
- 前記クランク軸(6)は、前記クランクケース(30)の上側ケース(30A)と下側ケース(30B)の結合面(30a)に支持され、クラッチ装置(9)が軸端に取り付けられる変速機軸(81)が、前記結合面(30a)から上方に離反した位置に配置され、
前記ポンプ駆動アイドルギヤ(105)は、前記プライマリドライブギヤ(6f)におけるプライマリドリブンギヤ(91)との噛み合い部(91a)の下方に位置して同プライマリドライブギヤ(6f)と噛み合うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の内燃機関。 - 前記プライマリドライブギヤ(6f)が、前記クランク軸(6)において軸方向最外方に位置するシリンダ(52)に対応したクランクピン部(6c)よりも内側に設けられて、
前記プライマリドライブギヤ(6f)と噛み合う前記プライマリドリブンギヤ(91)が一体化された前記クラッチ装置(9)を収容するクラッチ室(90)を有し、
前記プライマリドライブギヤ(6f)とプライマリドリブンギヤ(91)とが噛み合う空間を通して前記クランク室(70)と前記クラッチ室(90)が連通されたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の内燃機関。 - 前記ポンプ駆動アイドルギヤ(105)は、前記クランク室(70)側に配置される被動アイドルギヤ部(105c)が、前記補機室(80)側に配置される駆動アイドルギヤ部(105d)に比べて外径を大きく設定され、前記ポンプ駆動アイドルギヤ(105)を避ける凹部収容室(78)が前記クラッチ室(90)の下壁に形成されて、同凹部収容室(78)に対応して同クラッチ室(90)の下壁面(92)が膨出されたことを特徴とする請求項5に記載の内燃機関。
- 前記凹部収容室(78)が、前記クラッチ室(90)の最低部に設けられたことを特徴とする請求項6に記載の内燃機関。
- 前記クラッチ室(90)の外壁をなすクラッチカバー部材(76)が、前記クランクケース(30)の側壁(30R)に環状に立設された立設壁(75R)に取り付けられることにより、前記クランクケース(30)の側壁(30R)と立設壁(75R)と前記クラッチカバー部材(76)との間にクラッチ室(90)が構成され、
前記クラッチ室(90)には、前記内燃機関(3)の始動装置(61)からの動力を前記クランク軸(6)に伝達するスタータアイドルギヤ(65)が配置され、
同スタータアイドルギヤ(65)を支持するスタータアイドル軸(64)の両端を支持する一対の支持部(79)の何れもが、前記クランクケース(30)の立設壁(75R)の底面(75Ra)に立設配置されたことを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれか一項に記載の内燃機関。
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