JP5843463B2 - 繊維状物 - Google Patents

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Description

本発明は、セルロース繊維及び導電性ポリマーを含有し、高い導電性を有する繊維状物に関する。
従来、有限な資源である石油由来のプラスチック材料が多用されていたが、近年、環境に対する負荷の少ない技術が脚光を浴びるようになり、斯かる技術背景の下、天然に多量に存在するバイオマスであるセルロース繊維を使った材料が注目され、これに関して種々の改良技術が提案されている。
例えば特許文献1には、セルロース繊維等の植物繊維を備える第一成分とポリアニリン等の合成導電性重合体からなる第二成分とを含む、導電性を有する繊維組成物の製造方法が記載されている。特許文献1に記載の技術によれば、導電性重合体に対応する単量体と該重合体のドーピング薬剤としての有機スルホン酸とを水溶液中で反応させて錯体又は塩を形成し、該錯体又は塩を繊維に浸透させた後、重合反応を可能にする触媒又は酸化剤を添加して該単量体を該繊維中で重合(現場重合)させることにより、該単量体の重合体(導電性重合体)が該繊維の表面及び内部にしっかりと付着するようになり、該繊維を用いた湿式抄紙において、繊維ウェブの形成前に該重合体が実質的に水で洗い流されないようになるとされている。
また本出願人は、先に、平均繊維径200nm以下のセルロース繊維を含み且つ該セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2mmol/gである、ガスバリア用材料を提案した(特許文献2)。このセルロース繊維は、木材パルプ等の天然セルロース繊維をTEMPO触媒の下で酸化処理し、得られた酸化物の分散液をミキサー等で微細化処理することにより得られるもので、従来のナノファイバーと呼ばれる繊維よりも更に微小な繊維径をもつ微細セルロース繊維である。尚、特許文献2には、この微細セルロース繊維やその製造中間体(前記酸化物)を導電性材料に用いることやそのための工夫は記載されていない。
特表2006−522233号公報 特開2009−57552号公報
特許文献1に記載の技術を利用して得られる繊維組成物は、通常の木材パルプ(機械パルプ、化学パルプ)に導電性重合体が付着してなるものであるところ、該繊維組成物の使用時において、木材パルプから導電性重合体が脱落する不都合が十分に防止されているとは言い難く、導電性材料としての機能を安定的に奏し得ないおそれがあった。
従って本発明の課題は、セルロース繊維と導電性ポリマーとを含有する繊維状物であって、導電性ポリマーの脱落が生じ難く、導電性材料として有用な繊維状物を提供することにある。
本発明者らは、特許文献2に記載の微細セルロース繊維(セルロースナノファイバー)を用いた新規な導電性材料について種々検討した結果、該微細セルロース繊維あるいはその製造中間体であるセルロース繊維の酸化物、即ち、セルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜3mmol/gであるセルロース繊維(酸化セルロース繊維)に、導電性ポリマーが付着した構造を有する繊維状物が、高い導電性を有し且つ該導電性ポリマーの脱落が生じ難いものであることを知見した。
本発明は、前記知見に基づきなされたもので、カルボキシル基含有量0.1〜3mmol/gのセルロース繊維と導電性ポリマーとを含む繊維状物、及び該繊維状物を含む成形体を提供することにより、前記課題を解決したものである。
また本発明は、前記繊維状物の製造方法であって、(i)前記セルロース繊維に酸化剤を吸着させて繊維中間体を得る工程、及び(ii)前記繊維中間体とモノマーとを混合し、該繊維中間体にて該モノマーを重合させて前記導電性ポリマーを得る工程を有する、繊維状物の製造方法を提供することにより、前記課題を解決したものである。
また本発明は、前記繊維状物の製造方法であって、(i)前記セルロース繊維に酸化剤を吸着させて繊維中間体を得る工程、(ii)前記繊維中間体を洗浄する工程、及び(iii)前記繊維中間体とモノマーとを混合し、該繊維中間体にて該モノマーを重合させて前記導電性ポリマーを得る工程を有する、繊維状物の製造方法を提供することにより、前記課題を解決したものである。
本発明の繊維状物及びこれを含む成形体は、導電性ポリマーの脱落が生じ難く、導電性材料として有用である。また、本発明の繊維状物の製造方法は、本発明の繊維状物を安定的に提供することができる。
本発明の繊維状物は、(1)カルボキシル基含有量0.1〜3mmol/gのセルロース繊維と、(2)導電性ポリマーとの2成分を必須成分と含んでいる。本発明においては、繊維状物にこれら2成分が含有されていれば良く、その含有形態は特に制限されず、繊維状物が所定の導電性を有しうる範囲で適宜の含有形態を選択することができる。本発明の繊維状物におけるこれら2成分の好ましい含有形態は、セルロース繊維に導電性ポリマーが付着した形態である。以下に各成分について詳細に説明する。
本発明に係るセルロース繊維は、カルボキシル基含有量(該セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量)が0.1〜3mmol/g、好ましくは0.4〜1.8mmol/g、更に好ましくは0.6〜1.5mmol/gである。本発明の繊維状物は、カルボキシル基含有量が斯かる範囲にあるセルロース繊維を原料として製造され、その結果として、該セルロース繊維を含んで構成されている。カルボキシル基含有量は下記測定方法により測定される。
<カルボキシル基含有量の測定方法>
乾燥質量0.5gのセルロース繊維を100mlビーカーにとり、イオン交換水を加えて全体で55mlとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mlを加えて分散液を調製し、セルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5〜3に調整し、自動滴定装置(AUT−50、東亜ディーケーケー(株)製)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定し、pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次指揮により、セルロース繊維のカルボキシル基含有量を算出する。
カルボキシル基含有量(mmol/g)=水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)/セルロース繊維の質量(0.5g)
本発明に係るセルロース繊維、即ち、カルボキシル基含有量が0.1〜3mmol/gであるセルロース繊維は、ナノサイズの繊維径をもったセルロース繊維である、セルロースナノファイバーであっても良い。以下、本明細書における「本発明に係るセルロース繊維」という用語には、特に断らない限り、セルロースナノファイバーも含まれる。本発明に係るセルロースナノファイバーの平均繊維径は、好ましくは200nm以下、更に好ましくは50nm以下、特に好ましくは10〜1nmである。平均繊維径は下記測定方法により測定される。
<平均繊維径の測定方法>
固形分濃度で0.0001質量%のセルロース繊維に水を加えて分散液を調製し、該分散液を、マイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(NanoNaVi IIe, SPA400,エスアイアイナノテクノロジー(株)製、プローブは 同社製 SI−DF40Alを使用)を用いて、該観察試料中のセルロース繊維の繊維高さを測定する。セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、セルロース繊維を5本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。一般に高等植物から調製されるセルロースナノファイバーの最小単位は36×36の分子鎖がほぼ正方形の形でパッキングされていることから、前記原子間力顕微鏡画像で分析できる高さを繊維の径と見なすことができる。
前記カルボキシル基含有量は、セルロースナノファイバーを安定的に得る上でも重要な要素である。即ち、天然セルロースの生合成の過程においては、通常、ミクロフィブリルと呼ばれるナノファイバーがまず形成され、これらが多束化して高次な固体構造を構築しているところ、本発明で用いるセルロースナノファイバーは、後述するように、これを原理的に利用して得られるものであり、天然由来のセルロース固体原料においてミクロフィブリル間の強い凝集力の原動となっている表面間の水素結合を弱めるために、その一部を酸化し、カルボキシル基に変換することによって得られる。従って、セルロースに存在するカルボキシル基の量の総和(カルボキシル基含有量)が多い方が、より微小な繊維径として安定に存在することができ、また水中においては、電気的な反発力が生じることにより、ミクロフィブリルが凝集を維持せずにばらばらになろうとする傾向が高まり、ナノファイバーの分散安定性がより増大する。前記カルボキシル基含有量が0.1mmol/g未満では、繊維径200nm以下という微小な繊維径をもつセルロースナノファイバーとして得られ難くなり、また、水等の極性溶媒中における分散安定性が低下するおそれがある。
本発明の繊維状物は、カルボキシル基含有量が0.1〜3mmol/gの範囲にあるセルロース繊維を含んでいることに起因して、熱分解開始温度が、天然セルロース繊維〔カルボキシル基含有量が前記範囲の下限値(0.1mmol/g)未満のセルロース繊維〕に比して低い。本発明の繊維状物の熱分解開始温度は、好ましくは150〜250℃、更に好ましくは180〜230℃である。従って、該繊維状物に含まれるセルロース繊維がカルボキシル基含有量0.1〜3mmol/gであるかどうかは、熱分解開始温度を測定することでも判別できる。熱分解開始温度は、熱重量分析装置(例えば、セイコーインスツルメンツ(株)製のTG/DTA6300等)を使用して、下記熱重量分析条件下で繊維状物を熱分解させ、該繊維状物の熱分解開始温度を測定することで測定できる。熱重量分析条件:約10mgの繊維状物を窒素流下において、以下の設定温度で熱重量分析を行う。30℃から500℃まで昇温(速度40℃/分)、500℃で30分保持、500℃から30℃まで降温(速度40℃/分)。
本発明に係るセルロース繊維は、平均アスペクト比(繊維長/繊維径)が、好ましくは10〜1000、更に好ましくは10〜500、特に好ましくは100〜350である。平均アスペクト比が斯かる範囲にあるセルロース繊維を本発明の繊維状物の材料として用いることで、後述する方法によって得られる該繊維状物と成形可能な高分子材料とを含む成形体において、少ない該繊維状物の含有率でも高い導電性が奏される。平均アスペクト比は下記測定方法により測定される。
<平均アスペクト比の測定方法>
平均アスペクト比は、セルロース繊維に水を加えて調製した分散液(セルロース繊維の質量濃度0.005〜0.04質量%)の粘度から算出する。分散液の粘度は、レオメーター(MCR、DG42(二重円筒)、PHYSICA社製)を用いて20℃で測定する。分散液のセルロース繊維の質量濃度と分散液の水に対する比粘度との関係から、下記式(1)によりセルロース繊維のアスペクト比を逆算し、これを平均アスペクト比とする。下記式(1)は、The Theory of Polymer Dynamics,M.DOI and D.F.EDWARDS,CLARENDON PRESS・OXFORD,1986,P312に記載の剛直棒状分子の粘度式(8.138)と、Lb2×ρ=M/NAの関係〔式中、Lは繊維長、bは繊維幅(セルロース繊維断面は正方形とする)、ρはセルロース繊維の濃度(kg/m3)、Mは分子量、NAはアボガドロ数を表す〕から導出される。尚、粘度式(8.138)において、剛直棒状分子=セルロース繊維とした。また、下記式(1)中、ηSPは比粘度、πは円周率、lnは自然対数、Pはアスペクト比(L/b)、γ=0.8、ρSは分散媒の密度(kg/m3)、ρ0はセルロース結晶の密度(kg/m3)、Cはセルロースの質量濃度(C=ρ/ρS)を表す。
Figure 0005843463
本発明に係るセルロース繊維(カルボキシル基含有量0.1〜3mmol/gのセルロース繊維)は、天然セルロース繊維を酸化することにより製造することができるものであり、酸化セルロース繊維である。具体的には、先ず、水中に天然セルロース繊維を分散させたスラリーを調製する。スラリーは、原料となる天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して約10〜1000倍量(質量基準)の水を加え、ミキサー等で処理することにより得られる。天然セルロース繊維としては、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。天然セルロース繊維は、叩解等の表面積を高める処理が施されていても良い。
次に、水中においてN−オキシル化合物を酸化触媒として天然セルロース繊維を酸化処理する。セルロースの酸化触媒として使用可能なN−オキシル化合物としては、例えば、TEMPO、4−アセトアミド−TEMPO、4−カルボキシ−TEMPO、4−フォスフォノオキシ−TEMPO等を用いることができる。これらN−オキシル化合物の添加は触媒量で十分であり、通常、原料として用いた天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して0.1〜10質量%となる範囲である。
前記天然セルロース繊維の酸化処理においては、酸化剤(例えば、次亜ハロゲン酸又はその塩、亜ハロゲン酸又はその塩、過ハロゲン酸又はその塩、過酸化水素、過有機酸等)と、共酸化剤(例えば、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属)とを併用する。酸化剤としては、特に、次亜塩素酸ナトリウムや次亜臭素酸ナトリウム等のアルカリ金属次亜ハロゲン酸塩が好ましい。酸化剤の使用量は、通常、原料として用いた天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して約1〜100質量%となる範囲である。また、共酸化剤の使用量は、通常、原料として用いた天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して約1〜30質量%となる範囲である。
また、前記天然セルロース繊維の酸化処理においては、酸化反応を効率良く進行させる観点から、反応液(前記スラリー)のpHは9〜12の範囲で維持されることが望ましい。また、酸化処理の温度(前記スラリーの温度)は、1〜50℃において任意であるが、室温で反応可能であり、特に温度制御は必要としない。また、反応時間は1〜240分間が望ましい。
前記天然セルロース繊維の酸化処理後、精製処理を実施し、未反応の酸化剤や各種副生成物等の、前記スラリー中に含まれる酸化セルロース繊維及び水以外の不純物を除去する。この精製処理は、例えば水洗とろ過を繰り返す精製法によって実施することができ、その際に用いる精製装置は特に制限されない。こうして、目的とする酸化セルロース繊維(カルボキシル基含有量0.1〜3mmol/gのセルロース繊維)が得られる。酸化セルロース繊維の形態は特に制限されず、例えば乾燥した繊維状や粉末状にすることができる。酸化セルロース繊維は、前記酸化処理により天然セルロース繊維におけるセルロース構成単位のC6位の水酸基がアルデヒド基を経由してカルボキシル基へと選択的に酸化されており、前記酸化処理の出発物質である天然セルロース繊維に比して、カルボキシル基含有量が増加している。
本発明では、セルロース繊維として、このような天然セルロース繊維の酸化処理によって得られた酸化セルロース繊維をそのまま用いることもできるが、前述したように、ナノサイズの繊維径をもった(平均繊維径が好ましくは200nm以下である)セルロースナノファイバーを用いることもできる。セルロースナノファイバーは、前記酸化セルロース繊維を原料として次の方法により製造することができるものであり、酸化セルロース繊維の一種である。即ち、本発明で用いるセルロースナノファイバーは、天然セルロース繊維を酸化して酸化セルロース繊維を得る酸化反応工程、及び該酸化セルロース繊維を微細化処理する微細化工程を含む製造方法により得ることができる。前記酸化反応工程は、前記酸化処理と同じであり、通常、前記精製処理を含む。
前記微細化工程では、天然セルロース繊維の前記酸化処理及び前記精製処理によって得られた酸化セルロース繊維を、水等の溶媒中に分散させてこれに微細化処理を施す。酸化セルロース繊維は斯かる微細化工程を経ることにより、平均繊維径及び平均アスペクト比がそれぞれ前記範囲にあるセルロースナノファイバーとされる。
前記微細化処理において、分散媒としての溶媒は通常は水が好ましいが、水以外にも目的に応じて水に可溶な有機溶媒(アルコール類、エーテル類、ケトン類等)を使用しても良く、これらの混合物も好適に使用できる。また、微細化処理で使用する分散機としては、例えば、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等を用いることができる。また、微細化処理における酸化セルロース繊維の固形分濃度は50質量%以下が好ましい。該固形分濃度が50質量%を超えると、分散に極めて高いエネルギーを必要とするため好ましくない。
前記微細化工程後に得られるセルロースナノファイバーの形態としては、必要に応じ、固形分濃度を調整した懸濁液状、あるいは乾燥処理した粉末状(但し、セルロース繊維が凝集した粉末状であり、セルロース粒子を意味するものではない)とすることもできる。尚、懸濁液状にする場合、分散媒として水のみを使用しても良く、水と他の有機溶媒(例えば、エタノール等のアルコール類)や界面活性剤、酸、塩基等との混合溶媒を使用しても良い。
このような天然セルロース繊維の酸化処理及び微細化処理により、セルロース構成単位のC6位の水酸基がアルデヒド基を経由してカルボキシル基へと選択的に酸化され、前記カルボキシル基含有量が0.1〜3mmol/gのセルロースからなる、平均繊維径が好ましくは200nm以下の微細化された高結晶性セルロース繊維(セルロースナノファイバー)を得ることができる。この高結晶性セルロース繊維は、セルロースI型結晶構造を有している。これは、本発明で用いるセルロースナノファイバーが、I型結晶構造を有する天然由来のセルロース固体原料が表面酸化され微細化された繊維であることを意味する。即ち、天然セルロース繊維は、その生合成の過程において生産されるミクロフィブリルと呼ばれる微細な繊維が多束化して高次な固体構造を構築しており、そのミクロフィブリル間の強い凝集力(表面間の水素結合)を、前記酸化処理によるアルデヒド基あるいはカルボキシル基の導入によって弱め、更に前記微細化処理を経ることで、セルロースナノファイバーが得られる。そして、前記酸化処理の条件を調整することにより、前記カルボキシル基含有量を所定範囲内にて増減させ、極性を変化させたり、該カルボキシル基の静電反発や前記微細化処理により、セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長、平均アスペクト比等を制御することができる。
本発明の繊維状物は、カルボキシル基含有量0.1〜3mmol/gのセルロース繊維(酸化セルロース繊維)に加えて、導電性ポリマーを含んでいる。本発明の繊維状物において、導電性ポリマーは、好ましくは、酸化セルロース繊維に付着しており、導電性ポリマーと酸化セルロース繊維とが一体となっている。後述する本発明の繊維状物の製造方法によれば、酸化セルロース繊維(セルロースナノファイバー)の表面に導電性ポリマーが均一に付着した形態の繊維状物が安定的に得られる。
本発明に係る導電性ポリマーとしては、導電性を有する高分子材料として公知のものを特に制限なく用いることができ、例えば、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリチオフェン等が挙げられ、これらの1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特に、セルロース繊維への付着性の観点から、ポリピロール及びポリアニリンからなる群から選択される1種以上が好ましい。
本発明の繊維状物における導電性ポリマーの含有量は、好ましくは10〜90質量%、更に好ましくは30〜80質量%である。本発明の繊維状物は、特に実用上十分な導電性(帯電防止性)を発揮しうる観点から、その表面抵抗率が104〜108Ω/□(又はΩ/sq.、以後Ω/□と表記する)、とりわけ105Ω/□未満のレベルにあることが好ましい。表面抵抗率が同値であれば、導電性ポリマーの含有量は低い方が好ましく、表面抵抗率を前記範囲にする観点から、導電性ポリマーの含有量は前記範囲にあることが好ましい。導電性ポリマーの含有量は、後述する繊維状物の製造前後の重量変化や、熱重量分析による熱分解温度の違いを利用して算出できる。繊維状物の表面抵抗率は、後述する方法によって測定され、該繊維状物を含む本発明の成形体の表面抵抗率と等しい。
本発明の繊維状物は、前述した酸化セルロース繊維及び導電性ポリマーに加えて、好ましくは鉄イオンを含んでおり、該鉄イオンは、本発明の繊維状物において該酸化セルロース繊維のカルボキシル基に吸着している。より具体的には、後述する本発明の繊維状物の製造方法においては、酸化セルロース上で(酸化セルロースの表面及び/又は内部で)モノマーを重合させて導電性ポリマーを得る工程を実施し且つ該工程に先立ち、該酸化セルロース繊維に酸化剤を吸着させて繊維中間体を得る工程を実施しており、この酸化剤として鉄イオン(第二鉄イオン:Fe3+)が好ましく用いられるところ、斯かる製造方法によって得られる繊維状物においては、前記繊維中間体を得る工程において酸化セルロース繊維のセルロース構成単位のC6位のカルボキシル基に第二鉄イオンが吸着することにより、該C6位がCOO- Fe3+となっている。鉄イオンの吸着量は、例えば蛍光X線分析、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)等の元素分析によって測定される。
本発明の繊維状物は、例えば次のようにして製造することができる。本実施態様の製造方法は、(i)カルボキシル基含有量0.1〜3mmol/gのセルロース繊維(酸化セルロース繊維)に酸化剤を吸着させて繊維中間体を得る工程、及び(ii)前記繊維中間体とモノマーとを混合し、該繊維中間体にて該モノマーを重合させて導電性ポリマーを得る工程を有する。
本実施態様の前記(i)の工程においては、先ず、水中に酸化セルロース繊維(あるいはセルロースナノファイバー)を分散させたスラリーを調製する。スラリーは、原料となる酸化セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して約10〜1000倍量(質量基準)の水を加え、攪拌することにより得られる。次に、このスラリーに酸化剤を添加し、混合攪拌する。酸化剤としては、例えば、第二鉄イオン(Fe3+)、二クロム酸イオン、ヨウ素酸、過硫酸イオン等の酸化剤を用いることができ、従って、水中でこれらのイオンを形成する化合物を用いることができる。例えば、水中で3価の鉄イオン(第二鉄イオン)を形成する塩化第二鉄(FeCl3)は、酸化剤として本発明で好ましく用いられる。酸化セルロース繊維のスラリー(水分散液)に酸化剤としての塩化第二鉄を添加すると、塩化第二鉄由来の第二鉄イオン(Fe3+)が、酸化セルロース繊維のセルロース構成単位のC6位のカルボキシル基(COONa)におけるナトリウムイオン(Na+)とイオン交換され、該C6位にCOO- Fe3+として吸着される。こうして、酸化セルロース繊維に酸化剤が吸着してなる、繊維中間体が得られる。
本実施態様の前記(i)の工程において、酸化剤の添加量は、酸化セルロース繊維100質量部に対して、好ましくは10〜2000質量部、更に好ましくは50〜1000質量部である。
続いて、本実施態様の前記(ii)の工程においては、前記繊維中間体のスラリーに、導電性ポリマーに対応するモノマー(例えば導電性ポリマーがポリピロールであればピロール)及びドープ剤を添加し、常温下、スターラー等で混合攪拌する。モノマー及びドープ剤のスラリーへの添加順序は特に制限されず、これらを同時に添加しても良い。モノマー及びドープ剤をスラリーに添加することによって、該モノマーの重合反応が開始される。重合反応時間は、モノマーの種類等にもよるが、通常0.5〜24時間程度である。重合反応中は、スラリーを攪拌しておくことが好ましい。
ドープ剤は、例えばポリピロールのような、二重結合と単結合とが交互に並んだ共役構造を有する導電性高分子に対し、電荷のキャリアとして働くことで、繊維状物に高い導電性を付与するために用いられるものである。ドープ剤としては、モノマーとしてピロールを用いる場合、有機スルホン酸、例えば、2−ナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等を用いることができる。
本実施態様の前記(ii)の工程において、モノマーの添加量は、最終的に得られる繊維状物における導電性ポリマーの含有量が前記範囲となるように調整することが好ましい。また、ドープ剤の添加量は、モノマー100質量部に対して、好ましくは10〜200質量部、更に好ましくは50〜100質量部である。
前記(ii)の工程では、導電性ポリマーに対応するモノマーに、前記(i)の工程で得られた繊維中間体(酸化剤が吸着された酸化セルロース繊維)を反応場とする、いわゆるインサイト重合(現場重合)させ、その結果として、該繊維中間体に付着した導電性ポリマーを得る。例えば、酸化剤として第二鉄イオン(塩化第二鉄)、モノマーとしてピロール、ドープ剤として2−ナフタレンスルホン酸をそれぞれ用いた場合、前記(ii)の工程では、繊維中間体のセルロース構成単位のC6位における、第二鉄イオンが吸着したカルボキシル基を反応場として、該繊維中間体の表面及び/又は内部にてピロールの重合反応が起こり、これにより該繊維中間体に付着した導電性ポリマーとしてのポリピロールが生成される。こうして生成されたポリピロールは、繊維中間体の表面に均一に付着しており、該表面にポリピロールの薄膜が形成される。
前記重合反応の終了後、前記スラリー中の沈殿物を十分な量のイオン交換水で洗浄することで、目的とする繊維状物が得られる。繊維状物の形態は特に制限されず、例えば乾燥した繊維状や粉末状にすることができる。
繊維状物は、洗浄後の繊維状物が水に分散した分散液の形態として用いることもできる。その際、導電性高分子の多くは疎水性であるため、界面活性剤等を用いて適宜分散処理を施しても構わない。例えば、洗浄後の繊維状物をイオン交換水で0.2質量%とし、ドデシル硫酸ナトリウム及びポリビニルピロリドンを加えた後に、超音波分散機等で処理を行うことで、分散性の高い繊維状物の分散液が得られる。
本発明の繊維状物の製造方法は、前記実施態様に制限されない。例えば、前記実施態様において、前記(i)の工程後で前記(ii)の工程前に、前記(i)の工程で得られた繊維中間体(セルロース構成単位のC6位のカルボキシル基に酸化剤が吸着した酸化セルロース繊維)を洗浄する工程を実施しても良い。より具体的には、前記(i)の工程で得られた繊維中間体のスラリー(水分散液)を、ろ過や遠心分離といった固液分離法により、酸化剤が吸着した酸化セルロース繊維と酸化剤が溶解した水とに分離・洗浄する。酸化剤が吸着した酸化セルロース繊維を洗浄した後、これを再度水に分散させ、その後前記(ii)の工程において導電性ポリマーの重合を行う。この洗浄工程を実施することで、酸化剤は繊維表面又は内部に吸着したもののみ存在し、反応溶媒である水の中には酸化剤が存在しなくなるので、前記導電性ポリマーの重合は繊維表面又は内部でのみ進行する。このような繊維中間体の洗浄工程を実施することによって、得られた繊維状物は導電性ポリマーの脱落が生じ難いという効果が奏される。同時に、溶媒中で重合した導電性ポリマーのみの組成物(すなわち、セルロース繊維に付着していない導電性ポリマー)が少ないため、モノマー添加量に対する該繊維状物の製造効率が高く、反応後の排水の汚染を低減できるという効果が付随する。
以上のようにして得られる本発明の繊維状物は、導電性ポリマーが付着する基材として機能するセルロース繊維(セルロースナノファイバー)が、カルボキシル基含有量0.1〜3mmol/gのセルロース繊維(酸化セルロース繊維)であるため、導電性ポリマーがセルロース繊維の表面に均一に付着し、そのため、特許文献1に記載の繊維組成物の如き、天然セルロース繊維(カルボキシル基含有量が0.1mmol/g未満のセルロース繊維)及び導電性ポリマーを含む従来の導電性繊維状物に比して、導電性ポリマーの脱落率が低い。より具体的には、本発明の繊維状物は、下記方法によって測定される導電性ポリマーの脱落率が、好ましくは50%以下、更に好ましくは30%以下であり、導電性ポリマーの脱落が生じ難い。
<導電性ポリマーの脱落率の測定方法>
測定対象の繊維(繊維状物)に対して導電性ポリマーの脱落処理を施し、該脱落処理前後の該繊維の重量から、下記式により脱落率(%)を算出する。脱落処理は次のようにして実施する。約0.05gの繊維(繊維状物)を該繊維の800倍量の水に添加してスラリーを得、ミキサー((株)日本精機製作所製、商品名:EXCEL HOMOGENIZER)を用いて該スラリーを5000rpmで1分間攪拌した後、該繊維をガラスフィルター(孔径16μm)でろ過し、続けて100gのイオン交換水でろ過する。該繊維を乾燥させた後、該繊維の重量(脱落処理後の繊維の乾燥重量)を測定する。
導電性ポリマーの脱落率(%)={(脱落処理前の繊維の乾燥重量−脱落処理後の繊維の乾燥重量)/脱落処理前の繊維の乾燥重量}×100
また前述したように、本発明の繊維状物における導電性ポリマーの含有量は、繊維状物の製造前後の重量変化や、フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)、熱重量分析による熱分解温度の違いを利用して算出することができ、具体的には例えば、繊維状物の製造前後の固形分重量変化から、次のようにして導電性ポリマーの含有量を算出することができる。即ち、前記(i)の工程で使用した前記酸化セルロース繊維の固形分重量をA(g)、前記(ii)の工程後イオン交換水で洗浄して得られた繊維状物の固形分重量をB(g)とした場合、導電性ポリマーの含有量C(%)は次式によって算出される。C={(B−A)/B}×100
ところで、導電性ポリマーがセルロース繊維表面の一部に偏在した場合、非導電性であるセルロースが露出するために、導電性ポリマー含有量あたりの導電性が低くなるが、本発明の繊維状物は、導電性ポリマーがセルロース繊維の表面に均一に付着して構成されていることに起因して、導電性ポリマー含有量あたりの導電性が高く、従って、導電性ポリマー含有量あたりの表面抵抗率が低い。より具体的には、本発明の繊維状物は、導電性ポリマー含有量あたりの表面抵抗率が、好ましくは108Ω/□以下、更に好ましくは104〜106Ω/□である。
繊維状物の表面抵抗率及び導電性ポリマー含有量あたりの表面抵抗率は、それぞれ、次のようにして測定・算出される。繊維状物の表面抵抗率については、測定対象の繊維状物を後述する方法(溶融混練法、キャスト法、湿式抄紙法、含浸法等)で任意の形状に成形して成形体を得、表面抵抗計(ADVANTEST社製、R8340A、200Vで測定)を用いて、該成形体の表面抵抗率D(Ω/□)を測定し、その測定値を当該繊維状物の表面抵抗率とする。また、導電性ポリマー含有量あたりの表面抵抗率は、測定対象の繊維状物(前記成形体)中の導電性ポリマーの含有量C(%)を用いて次式により算出される。導電性ポリマー含有量あたりの表面抵抗率=D×C/100
本発明の繊維状物は、導電性ポリマーの脱落が生じ難く、導電性材料として有用であり、例えば、電磁波シールド材、帯電防止剤、電池電極材料、タッチパネル電極膜等に好適である。また、本発明の繊維状物は、セルロース繊維の表面に導電性ポリマーが付着した構成をとることで、ポリピロール等の導電性ポリマーを単独で用いた(繊維を併用しない)導電性材料に比して、シート化や立体化が容易で成形性に優れており、また、セルロース繊維が骨材として機能するため、強度的にも優れている。また、特に、セルロース繊維としてセルロースナノファイバーを用いた場合には、そうして得られた本発明の繊維状物を、透明な樹脂と混合した場合に、該樹脂の透明性を維持しつつ、該樹脂に実用上十分な導電性(帯電防止性)を付与することが可能である。
次に、本発明の成形体について説明する。本発明の成形体は、前述した本発明の繊維状物を含んでいるもので、該繊維状物のみから構成されていても良く、あるいは該繊維状物に加えて更に、成形可能な高分子材料を含んで構成されていても良い。
本発明の成形体が、前述した本発明の繊維状物のみから構成される場合(成形可能な高分子材料を含んでいない場合)、該成形体は、公知のキャスト法や湿式抄紙法により、フィルムやシート等の薄状物に成形することができる。キャスト法を利用した場合、例えば、溶媒中に繊維状物を分散又は溶解させた流動物を、基材上に流延塗布し、溶媒を除去して膜を得、該膜に熱プレスをかけることにより、目的とする薄膜状(フィルム状)の成形体が得られる。また、湿式抄紙法では、先ず、繊維状物のスラリー(水分散液)を調製し、常法に従って該スラリーを湿式抄紙機の網の上に流して薄く平にすることで、湿潤状態のシート状成形体(湿潤ウエブ)を形成し、この湿潤ウエブに、必要に応じ脱水処理を施した後、乾燥処理を施すことにより、目的とする薄膜状(シート状)の成形体が得られる。キャスト法は、本発明の繊維状物を構成する酸化セルロース繊維がセルロースナノファイバーである場合に特に好適であり、湿式抄紙法は、該酸化セルロース繊維がセルロースナノファイバーではない場合に特に好適である。
本発明の成形体において、本発明の繊維材料と併用される「成形可能な高分子材料」は、高分子材料単独あるいは高分子材料と他の材料との混合物に必要な加工を施して得られた、所定形状の物体が、その所定形状を一定時間以上保持し得る場合の、その高分子材料を意味する。例えば、通常のプラスチック成形に使用可能な化石資源由来の樹脂は、「成形可能な高分子材料」に含まれる。成形可能な高分子材料は、必要な加工(高分子材料をその本来の形態とは異なる形態にするための処理)を経て所定形状の物体とすることができるものであり、具体的には、熱可塑性を有するもの、熱硬化性を有するもの、有機溶媒に溶解するもの、有機溶媒に分散するもの、水に溶解するもの、水に分散するもの等が挙げられる。成形可能な高分子材料を用いることで、本発明の成形体は、フィルムやシート等の薄状物あるいは箱やボトル等の立体容器、情報家電の筐体、自動車等のボディ等に成形することができる。
本発明で用いる成形可能な高分子材料(以下、単に、高分子材料ともいう)としては、a)バイオマス由来の高分子及びb)合成高分子が挙げられる。バイオマス由来の高分子は、生物から得られる有機性高分子で化石資源を除いたものであり、本発明に係るセルロース繊維(酸化セルロース繊維)と同様に生分解性を有するものも含まれる。バイオマス由来の高分子として好ましいものとして、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシブタン酸)、バイオポリエチレン、バイオポリプロピレン、バイオポリエチレンテレフタレート、バイオポリカーボネート等の熱可塑性のものが挙げられる。
前記バイオマス由来の高分子としては、前記のPLA等以外に、多糖類を用いることもできる。多糖類としては、パルプが挙げられ、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;麻、竹、藁、ケナフ等の非木材パルプ;コットンリンター、コットンリント等の綿系パルプ等が挙げられる。また、本発明で使用可能なパルプ以外の多糖類としては、例えば、レーヨン等の再生セルロース、デンプン、キチン、キトサン、三酢酸セルロース(TAC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の多糖類、多糖類誘導体等が挙げられる。これらの多糖類は、何れも非熱可塑性である。
また、本発明で用いる合成高分子(成形可能な高分子材料)は、化石資源から得られる有機性高分子であり、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ナイロン樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の成形体における成形可能な高分子材料の含有量は、成形体に高い機械的強度及び導電性を付与する観点から、成形体の全質量に対して、好ましくは40〜99.99質量%、更に好ましくは80〜99質量%である。
本発明の成形体が、前述した本発明の繊維状物及び成形可能な高分子材料の両成分を含んで構成される場合、その構成は、1)繊維状物を主体とする層(繊維状物の含有量が1質量%以上の層)と高分子材料を主体とする層(高分子材料の含有量が99質量%以上の層)とが積層された多層構造であっても良く、あるいは2)繊維状物と高分子材料とが成形体全体に略均一に分散した構造(両成分が何れも実質的に偏在しておらず、繊維材料を主体とする層や高分子材料を主体とする層を有していない構造)であっても良い。
本発明の成形体は、必要に応じ、前述した2成分(繊維状物、高分子材料)以外の他の成分、例えば、ガラスやコンクリートに代表される、粘土鉱物、無機物、金属物等の無機材料を含んでいても良い。
本発明の成形体は任意の形状に成形可能であり、例えばフィルムやシート等の薄状物、直方体や立方体等のブロック状その他の立体形状として提供される。
本発明の成形体が、繊維状物及び成形可能な高分子材料の両成分を含んで構成される場合、該成形体は、例えば、繊維状物と高分子材料とを混合して均一混合物を得た後、該均一混合物を任意の形状に成形することによって製造することができる。
本発明の成形体の原料として用いる繊維状物の形態としては、繊維状物と共に併用される高分子材料や混錬に用いる装置等を考慮し、粉末状(但し、繊維状物が凝集した粉末状であり、球形の粒子状物を意味するものではない)、懸濁液状などから任意に選択できる。
前記粉末状の繊維状物としては、例えば、繊維状物の水分散液をそのまま乾燥させた乾燥物;該乾燥物を機械処理で粉末化したもの;該凝集物の未乾燥物;繊維状物の水分散液を公知のスプレードライ法により粉末化したもの;繊維状物の水分散液を公知のフリーズドライ法により粉末化したもの等が挙げられる。前記スプレードライ法は、繊維状物の水分散液を気中で噴霧し乾燥させる方法である。
また、前記懸濁液状の繊維状物としては、繊維状物の水分散液をそのまま使用することもできるし、あるいは前記粉末状の繊維状物を任意の媒体に分散させたものを使用することもできる。前記媒体は、混合される高分子材料や後述する混合、成形の方法によって適宜選択することができる。例えば、高分子材料としてポリビニルアルコール(PVA)を用い且つ後述するキャスト法によって成形体を製造する場合、前記媒体として水やアルコールを用いることができる。
繊維状物と共に本発明で併用される高分子材料が、バイオマス由来の高分子のうち熱可塑性のもの(例えばポリ乳酸)、あるいは合成高分子である場合には、例えば、加熱されて溶融状態の高分子材料に繊維状物を添加し、該高分子材料が溶融状態を維持しているうちにこれらを混錬し、こうして得られた均一混合物を成形する方法(以下、溶融混錬法ともいう)により、本発明の成形体を製造することができる。その場合、混練装置としては、例えば単軸軸混練押出機、二軸混練押出機、加圧ニーダー等の公知の装置が使用できる。例えば、高分子材料としてポリ乳酸の如き熱可塑性樹脂を用いる場合、前記粉末状の繊維状物を、溶融状態の該熱可塑性樹脂中に添加した後、二軸混錬機を用いて該粉末状の繊維状物を該熱可塑性樹脂中に均一分散させて樹脂ペレットを得、該樹脂ペレットを加熱圧縮することにより、シート状の成形体が得られる。あるいは、公知のプラスチック成形法、具体的には射出成形、注形成形、押出成形、ブロー成形、延伸成形、発泡成形等を利用して、ブロック状その他の立体形状を有する成形体を得ることができる。
また、溶融混錬法以外の成形体の製造方法として、キャスト法が挙げられる。キャスト法は、溶媒中に繊維状物及び高分子材料を分散又は溶解させた混合流動物を、基材上に流延塗布し、溶媒を除去して膜を得、該膜に熱プレスをかけて、薄膜状の成形体を得る方法である。例えば、有機溶媒中に溶解させた高分子材料に、前記粉末状の繊維状物を添加し混合流動物を得、該混合流動物からキャスト法によって成形体の膜状あるいはシート状物を得ることができる。キャスト法は、高分子材料の種類を問わず、前述したバイオマス由来の高分子及び合成高分子の全てに幅広く適用することができる。
キャスト法において、基材上に流延塗布された混合流動物から溶媒を除去する方法としては、例えば、基材として液透過性基材(例えば、厚み方向に貫通する液透過孔を多数有する多孔性基材)を用いる方法が挙げられる。この方法では、混合流動物を液透過性基材上に塗布することにより、該混合流動物中の溶媒は多孔性基材を透過して除去され、固形分(繊維状物及び高分子材料)は多孔性基材上にこし取られる。また、別の溶媒除去法として、混合流動物を基材上に流延塗布した後、該混合流動物を自然乾燥又は熱風乾燥等の乾燥法により乾燥する方法が挙げられる。また、キャスト法において、溶媒除去後に得られた膜に対して実施する熱プレスは、例えば、金属板を用いた押圧式、ロータリー式等公知の装置を用いて行うことができる。
また、本発明の成形体は、湿式抄紙法により製造することもできる。湿式抄紙法は、繊維状物と共に本発明で併用される高分子材料が、バイオマス由来の高分子の一種である多糖類(例えばパルプ等の非熱可塑性のもの)である場合に特に有効である。湿式抄紙法では、先ず、繊維状物と高分子材料(多糖類)とを均一混合させたスラリーを得、常法に従って該スラリーを湿式抄紙機の網の上に流して薄く平にすることで、湿潤状態のシート状成形体(湿潤ウエブ)を形成する。この湿潤ウエブに、必要に応じ脱水処理を施した後、乾燥処理を施すことにより、シート状の成形体が得られる。
湿式抄紙法において、前記湿潤ウエブの脱水・乾燥処理は、例えば、通常の湿式抄紙法における抄紙工程のプレスパート及びドライヤーパートを利用して行うことができる。具体的には、先ず、プレスパートにおいて、湿潤ウエブに必要に応じフェルト(毛布)を当てて上下から圧縮することで、該ウエブ中の水分を搾り取り、次いで、ドライヤーパートにおいて、乾燥手段を用いて、脱水処理がなされた湿潤繊維ウエブを乾燥する。こうして、シート状の成形体が得られる。乾燥手段に特に制限は無く、ヤンキードライヤーやエアースルードライヤー等を用いることができる。また、湿式抄紙機は、例えば、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、オントップ抄紙機、ハイブリッド抄紙機、丸網抄紙機等を用いることができる。尚、湿式抄紙法は、シート状の成形体の製造のみならず、所望の立体形状の成形体の製造にも利用可能である。
また、本発明の成形体は、含浸法により製造することもできる。即ち、本発明の成形体は、前述した本発明の繊維状物を主体とする繊維集合体に、高分子材料を含む液を含浸して得られたものであっても良い。この繊維集合体は、高分子材料(繊維状物を構成する導電性ポリマーを除く)を実質的に含有していない、シート状又は所望の立体形状の繊維集合体であり、例えば公知の湿式抄紙法あるいはパルプモールド成形法により製造することができる。含浸法を利用した成形体の製造方法においては、前記繊維集合体を高分子材料を含む液に浸し、該繊維集合体の内部にまで該液を浸透させる。高分子材料を含む液は、高分子材料を水等の適当な溶媒に分散又は溶解させて得られる。前記繊維集合体を高分子材料を含む液に浸した後、該繊維集合体を自然乾燥又は熱風乾燥等の乾燥法により乾燥することにより、所望の形状の成形体が得られる。
また、本発明によれば、透明性の高い成形体を提供することが可能である。特に、高分子材料としてポリビニルアルコールを用いた場合には、比較的少量(含有量5質量%以下)の繊維状物で高い導電性及び機械的強度を発現させることができるため、ポリビニルアルコールが本来有する高い透明性を損なわずに、実用上十分な導電性及び機械的強度を有する成形体が得られる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
〔酸化セルロース繊維の製造方法〕
原料となる天然セルロース繊維として針葉樹晒しクラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ製、CSF650ml)を用い、酸化触媒としてTEMPO(ALDRICH製、Free radical、98%製)を用い、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬工業(株)、Cl:5%製)を用い、共酸化剤として臭化ナトリウム(和光純薬工業(株)製)を用いた。天然セルロース繊維100gにイオン交換水9900gを加えて十分に攪拌してスラリーを得、該スラリーに、TEMPOを対パルプ1.25質量%、臭化ナトリウムを対パルプ12.5質量%、次亜塩素酸ナトリウムを対パルプ28.4質量%、それぞれこの順で添加し、更にpHスタッドを用い、0.5Mの水酸化ナトリウムの滴下にてスラリーのpHを10.5に保持し、温度20〜0℃で天然セルロース繊維の酸化処理を行った。120分間の酸化時間で水酸化ナトリウムの滴下を停止し、酸化処理後の天然セルロース繊維をイオン交換水にて十分に洗浄し、脱水処理を行った。こうして、カルボキシル基含有量1.2mmol/gの酸化セルロース繊維を得た。
〔セルロースナノファイバーの製造方法〕
前記〔酸化セルロース繊維の製造方法〕で得られた酸化セルロース繊維10g(固形分換算)とイオン交換水990gとを、ミキサー(大阪ケミケル(株)製、Vita-mix-Blender ABSOLUTE)にて120分間攪拌した(即ち微細化処理時間120分間)。こうして、平均繊維径4nm、カルボキシル基含有量1.2mmol/gのセルロースナノファイバーの懸濁液(固形分濃度1.0質量%)を得た。
〔実施例1〕
前記〔セルロースナノファイバーの製造方法〕で得られたセルロースナノファイバーを用い、酸化剤として塩化第二鉄を用い、導電性ポリマーに対応するモノマーとしてピロールを用い、ドープ剤として2−ナフタレンスルホン酸を用い、前述した本発明の繊維状物の製造方法に準じた方法で繊維状物を製造した。より具体的には、イオン交換水で0.2質量%に希釈したセルロースナノファイバー分散液500gに、100gのイオン交換水に溶解した塩化第二鉄10gを加えて30分攪拌した後、更に、100gのイオン交換水に分散したピロール10.9gと100gのイオン交換水に溶解した2−ナフタレンスルホン酸10.9gとを添加し、常温で12時間攪拌した。反応終了後、繊維状物を含む分散液50gずつをコニカルチューブに入れ、遠心機(ユニバーサル冷却遠心機5922、久保田商事製)を用い10,000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離後のコニカルチューブにイオン交換水40gを加えて、再度遠心分離で洗浄した後、繊維状物を回収した。こうして得られた繊維状物の重量から導電性ポリマーの含有量を算出した。更に、得られた繊維状物のみからキャスト法により成形体を製造した。より具体的には、イオン交換水40gに繊維状物0.2gを加えて攪拌した。また別容器で0.2gのドデシル硫酸ナトリウムと0.3gのポリビニルピロリドンとを水100gに溶解した。この溶液0.2gを繊維状物の分散液に添加した後、該分散液を超音波ホモジナイザーで30秒間処理し、次いで、該分散液をポリスチレン製シャーレ(φ90mm)に注ぎ、室温環境下で2週間静置して乾燥した。こうして得られた薄膜状の成形体を実施例1のサンプルとした。
〔実施例2〕
重合反応時間を4時間とした以外は実施例1と同様にして繊維状物を製造し、該繊維状物を用いてキャスト法により薄膜状の成形体を製造し、これを実施例2のサンプルとした。
〔実施例3〕
重合反応時間を1時間とした以外は実施例1と同様にして繊維状物を製造し、該繊維状物を用いてキャスト法により薄膜状の成形体を製造し、これを実施例3のサンプルとした。
〔実施例4〕
繊維中間体を洗浄する工程を実施した以外は実施例1と同様にして繊維状物を製造した。具体的には、実施例1と同様に、セルロースナノファイバー分散液に塩化第二鉄を添加して30分攪拌後、その分散液を50gずつコニカルチューブに入れ、遠心機(ユニバーサル冷却遠心機5922、久保田商事製)を用い10,000rpmで10分間遠心分離して、溶媒中に含まれる酸化剤を除去した。回収した繊維中間体に500gのイオン交換水を加えた。その後は、実施例1と同様に酸化剤、ドープ剤を加えて繊維状物を得た。そして、実施例1と同様にして、得られた繊維状物を用いてキャスト法により薄膜状の成形体を製造し、これを実施例4のサンプルとした。
〔実施例5〕
セルロースナノファイバーに代えて前記〔酸化セルロース繊維の製造方法〕で得られた酸化セルロース繊維を用いた以外は実施例1と同様にして繊維状物を製造した。得られた繊維状物を用いて湿式抄紙法により薄膜状の成形体を製造し、これを実施例5のサンプルとした。実施例5の湿式抄紙法による成形体の製造は、より具体的には、繊維状物0.4gを40gのイオン交換水に分散してスラリーを得。該スラリーをガラスフィルター(SHIBATA、25GP100)を用いて減圧ろ過し、湿潤ウエブを得た。この湿潤ウエブを恒温槽で10分間乾燥して、繊維状物の薄膜状の成形体を製造した。
〔実施例6〕
繊維中間体を洗浄する工程を実施した以外は実施例5と同様にして繊維状物を製造し、該繊維状物を用いて湿式抄紙法により薄膜状の成形体を製造し、これを実施例6のサンプルとした。
〔実施例7〕
実施例2の繊維状物、及び成形可能な高分子材料として合成高分子であるポリビニルアルコール(クラレ製、PVA403)を用い、下記方法により薄膜状の成形体を製造し、これを実施例7のサンプルとした。より具体的には、実施例2で成形体を得るのに使用した分散液に、1%のPVA403水溶液を1g加えて攪拌し、この分散液を、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面にバーコーターを用いて、湿潤膜厚100μmになるように塗布して塗膜を形成した。この塗膜を2時間室温で乾燥させ、目的とする薄膜状の成形体を得た。成形体に含まれる繊維状物の含有量は、仕込み量に基づいて計算したところ、5%であった。
〔実施例8〕
繊維状物の含有量を10質量%とした以外は実施例7と同様にして薄膜状の成形体を製造し、これを実施例8のサンプルとした。
〔比較例1〕
前記〔セルロースナノファイバーの製造方法〕で得られたセルロースナノファイバーをそのまま繊維状物として用いた以外は実施例1と同様にしてキャスト法により薄膜状の成形体を製造し、これを比較例1のサンプルとした。
〔比較例2〕
前記〔酸化セルロース繊維の製造方法〕で得られた酸化セルロース繊維をそのまま繊維状物として用いた以外は実施例5と同様にして湿式抄紙法により薄膜状の成形体を製造し、これを比較例2のサンプルとした。
〔比較例3〕
セルロースナノファイバーに代えてカルボキシル基含有量が0.1mmol/g未満の天然セルロース繊維(針葉樹晒しクラフトパルプ、フレッチャー チャレンジ カナダ製、CSF650ml)を用いた以外は実施例1と同様にして繊維状物を製造し、該繊維状物を用いて実施例5と同様の湿式抄紙法により薄膜状の成形体を製造し、これを比較例3のサンプルとした。
〔比較例4〕
セルロースナノファイバーに代えてカルボキシル基含有量が0.1mmol/g未満の天然セルロース繊維(針葉樹晒しクラフトパルプ、フレッチャー チャレンジ カナダ製、CSF650ml)を用いた以外は実施例4と同様にして繊維状物を製造し、該繊維状物を用いて実施例5と同様の湿式抄紙法により薄膜状の成形体を製造し、これを比較例4のサンプルとした。
〔比較例5〕
セルロース繊維を用いずに以下の手順で導電性ポリマー粒子を製造した。具体的には、イオン交換水500gに、100gのイオン交換水の溶解した塩化第二鉄10gを加えて30分攪拌した後、更に、100gのイオン交換水の溶解したピロール10.9gと100gのイオン交換水の溶解した2−ナフタレンスルホン酸10.9gとを添加し、更に、ポリビニルピロリドン0.5gを加えて常温で12時間攪拌した。反応後は直径約20nmの粒子のエマルション状の分散液が得られた。こうして得られた分散液から実施例1と同様にキャスト法により薄膜状の成形体を得ようとしたが、強度不足で成形不能であった。
〔比較例6〕
繊維状物を用いなかった(繊維状物の含有量を0質量%とした)以外は実施例7と同様にして薄膜状の成形体を製造し、これを比較例6のサンプルとした。
〔評価〕
実施例及び比較例のサンプル(成形体)について、表面抵抗率及び導電性ポリマー含有量あたりの表面抵抗率をそれぞれ前記方法により測定・算出した。また、各サンプルの原料となる繊維状物に関して、カルボキシル基含有量、平均繊維径、導電性ポリマーの脱落率をそれぞれ前記方法により測定した。これらの結果を下記表1及び表2に示す。
Figure 0005843463
Figure 0005843463
表1に示す結果から明らかなように、カルボキシル基含有量0.1〜3mmol/gのセルロース繊維と導電性ポリマーとを含む本発明の繊維状物から製造された、実施例1〜6の成形体は、何れも表面抵抗率が107(Ω/□)以下であり、導電性ポリマーを含まない比較例1、及びカルボキシル基含有量が0.1mmol/g未満のセルロース繊維を用いた比較例3に比べて高い導電性を示した。特にセルロースナノファイバーを用いた実施例1及び2は導電性が高かった。実施例1と実施例4との比較、もしくは実施例5と実施例6との比較から明らかなように、繊維中間体の洗浄工程を経ると、導電性ポリマーの含有量が減少するため導電性は低下するが、導電性ポリマーの脱落率を低下させることができた。これはセルロース繊維表面で重合された導電性ポリマーが多く、物理的に捕捉されているだけの導電性ポリマーが少ないことによるものと推察される。比較例3は、カルボキシル基含有量が0.1mmol/g未満のセルロース繊維を用いているため、物理的に捕捉されているだけの導電性ポリマーによって導電性は発現しているが、実施例5及び6に比べて導電性ポリマーの脱落率が高い。また、比較例4もカルボキシル基含有量が0.1mmol/g未満のセルロース繊維を用いていることに起因して、繊維中間体の洗浄工程によって酸化剤が全て洗浄されるため、導電性ポリマーはほとんど重合されなかった。また、セルロース繊維を含まない比較例5では成形不能で成形体が得られなかったことから、セルロース繊維が導電性ポリマーの骨材としても有効であることが分かる。
表2に示す結果から明らかなように、カルボキシル基含有量0.1〜3mmol/gのセルロース繊維と導電性ポリマーとを含む本発明の繊維状物及び高分子材料としてのPVAを含む、実施例7及び8の成形体は、繊維状物を含まずPVA単体からなる比較例6に比べて高い導電性を示した。この結果から、本発明の繊維状物が成形用樹脂への導電性フィラーとして機能していることが分かる。

Claims (8)

  1. カルボキシル基含有量0.1〜3mmol/gのセルロース繊維と導電性ポリマーとを含む繊維状物であって、
    前記セルロース繊維に酸化剤吸着さ状態で、前記導電性ポリマーに対応するモノマーを混合し重合させる工程を経て得られる繊維状物。
  2. 前記セルロース繊維がセルロースナノファイバーである請求項1記載の繊維状物。
  3. 前記導電性ポリマーが、ポリピロール及びポリアニリンからなる群から選択される1種以上である請求項1又は2記載の繊維状物。
  4. 前記導電性ポリマーの含有量が10〜90質量%である請求項1〜3の何れか一項に記載の繊維状物。
  5. 前記セルロース繊維のカルボキシル基に鉄イオンが吸着している請求項1〜4の何れか一項に記載の繊維状物。
  6. 請求項1〜5の何れか一項に記載の繊維状物を含む成形体。
  7. 請求項1記載の繊維状物の製造方法であって、(i)前記セルロース繊維に酸化剤を吸着させて繊維中間体を得る工程、及び(ii)前記繊維中間体とモノマーとを混合し、該繊維中間体にて該モノマーを重合させて前記導電性ポリマーを得る工程を有する、繊維状物の製造方法。
  8. 請求項1記載の繊維状物の製造方法であって、(i)前記セルロース繊維に酸化剤を吸着させて繊維中間体を得る工程、(ii)前記繊維中間体を洗浄する工程、及び(iii)前記繊維中間体とモノマーとを混合し、該繊維中間体にて該モノマーを重合させて前記導電性ポリマーを得る工程を有する、繊維状物の製造方法。
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