以下、本発明に係る放射線画像撮影システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下では、放射線画像撮影システムで用いられる放射線画像撮影装置として、シンチレーター等を備え、放射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置について説明するが、本発明は、シンチレーター等を介さずに放射線を放射線検出素子で直接検出する、いわゆる直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。
また、放射線画像撮影装置がいわゆる可搬型であり、それを撮影台50の装着部51(後述する図1参照)に装着して長尺撮影を行う場合について説明するが、放射線画像撮影装置が可搬型でなく、撮影台50と一体的に形成された、いわゆる専用機型の放射線画像撮影装置に対しても、本発明を適用することが可能である。
さらに、本実施形態では、長尺撮影を立位(患者が起立した状態)で行う場合について説明するが、臥位(患者が横臥した状態)で行う場合についても本発明を同様に適用することが可能である。
まず、本実施形態に係る放射線画像撮影システムの概略構成について説明する。本実施形態に係る放射線画像撮影システム100は、前述した特許文献8に記載されている放射線画像撮影システムをベースとして構成されている。しかし、この他にも、例えば前述した特許文献4から特許文献7に記載されている放射線画像撮影システムの構成とすることも可能であり、これらの場合にも本発明を適用することが可能である。
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影システムの概略構成を示す図である。本実施形態では、図1に示すように、放射線画像撮影システム100は、主に、放射線画像撮影装置1や撮影台50や覆い板ユニット60、放射線照射装置70、制御BOX80、コンソール90、アクセスポイント95等で構成されている。
本実施形態では、放射線画像撮影システム100は、図1に示すように、撮影室101aや前室(操作室等ともいう。)101bの内外に設けられるようになっており、撮影台50や放射線照射装置70の放射線源71、アクセスポイント95等は、撮影室101aの内部に設けられている。また、放射線照射装置70の操作部72や曝射ボタン73等は前室101bに設けられている。
また、図1では、制御BOX80やコンソール90等が前室101bの外に設けられている場合が示されているが、それらを前室101b内等に設けることも可能である。
放射線画像撮影装置1の構成等については後で説明する。放射線画像撮影装置1は、放射線照射装置70から照射され患者Hの身体の一部(すなわち被写体)を透過した放射線量に基づいて後述する放射線検出素子7ごとに画像データDを取得することができるようになっている。本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、撮影時には、撮影台50の装着部51に装着して用いられる。
本実施形態では、放射線照射装置70の放射線源71は、前述した特許文献8に記載の放射線画像撮影システムと同様に、照射する放射線の照射角度(すなわち照射範囲)が放射線画像撮影装置1の撮影可能領域範囲(すなわち放射線画像撮影装置1の後述する検出Pの範囲)よりも上下方向に大きくなるように放射線を照射させるようになっている(図1中の破線参照)。
これは、従来使用されていた放射線画像撮影用のフィルムの長尺やCR(Computed Radiography)カセッテの長尺に対応した照射装置であり、一回の照射で、複数のフィルム或いはCRプレートを同時に撮像せしめるための構成であるが、本実施例においては、当該型式の放射線照射装置70を引き続き使用しているため、上記のような構成になっている。
また、放射線照射装置70の放射線源71と、撮影台50の装着部51に装着された放射線画像撮影装置1との間には、放射線源71から照射された放射線の照射領域を制限するために覆い板ユニット60が設けられているが、覆い板ユニット60の構成等については、撮影台50の構成等とともに、後で説明する。
放射線照射装置70の操作部72では放射線源71から照射する放射線の照射範囲や照射する放射線の線量の設定等が行われる。また、曝射ボタン73を操作者が操作することにより、撮影台50上の患者Hに対して放射線の照射が開始されるようになっている。
図示を省略するが、曝射ボタン73が操作されると、それにより発生した信号によって放射線源71の回転陽極の回転が始まり、所定の回転数に到達して定常回転となった後に、フィラメントに高電圧が印加されることで放射線の照射が開始される。なお、曝射ボタン73を2段階で操作できるように構成し、1回目の半押し操作で回転陽極の回転を開始させるとともに放射線画像撮影装置1を省電力状態から撮影可能状態に遷移せしめ、続く2回目の全押し操作によってフィラメントに高電圧を印加してX線の照射を開始させるように構成してもよい。
本実施形態では、放射線照射装置70は、LAN(Local Area Network)等で構成されたネットワークN1を通じて制御BOX80に接続されており、制御BOX80は、さらにネットワークN1を通じて撮影台50やコンソール90にも接続されている。また、撮影台50や覆い板ユニット60もネットワークN1を介して制御BOX80やコンソール90に接続されている。
そして、制御BOX80は、撮影台50の装着部51に装着された放射線画像撮影装置1とコンソール90との間の通信を中継するとともに、コンソール90等から放射線照射装置70や覆い板ユニット60等に送信するLAN通信用の信号等を放射線照射装置70用の信号に変換する等の動作を行う図示しない変換器が内蔵されている。
コンソール90は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピューター等で構成されている。また、コンソール90には、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等を備えて構成される表示部91が設けられており、マウスやキーボード等の入力手段92が接続されている。また、コンソール90には、HDD(Hard Disk Drive)等で構成された図示しない記憶手段が接続され、或いは内蔵されている。
コンソール90の機能等については、後で説明する。なお、例えば、放射線技師等の操作者に携帯端末(図示省略)を携帯させ、下記のアクセスポイント95等を介して携帯端末とコンソール90とを通信可能とし、以下で説明するコンソール90上での操作を、携帯端末上で行うことができるように構成することも可能である。
コンソール90は、上記のネットワークN1のほか、イーサネット(登録商標)等の既存の回線で構成されたネットワークN2に接続されている。ネットワークN2には、撮影室101a内に設けられたアクセスポイント95が接続されており、また、図示を省略するが、HIS(Hospital Information System;病院情報システム)やRIS(Radiology Information System;放射線科情報システム)等の外部システムも接続されている。
[放射線画像撮影装置]
ここで、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の基本的な構成について説明する。図2は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の断面図であり、図3は、放射線画像撮影装置の基板の構成を示す平面図である。
放射線画像撮影装置1は、図2に示すように、カーボン板等で形成され、放射線が照射される側の面である放射線入射面Rを有する筐体2内に、シンチレーター3や基板4等で構成されるセンサーパネルSPが収納されて構成されている。また、図示を省略するが、本実施形態では、筐体2には、画像データD等を無線方式で送信する通信手段であるアンテナ装置41(後述する図4参照)が設けられている。
図2に示すように、筐体2内には、基台31が配置されており、基台31の放射線入射面R側に図示しない鉛の薄板等を介して基板4が設けられている。そして、基板4の放射線入射面R側には、照射された放射線を可視光等の光に変換するシンチレーター3がシンチレーター基板34上に設けられ、シンチレーター3が基板4側に対向する状態で設けられている。
また、基台31の放射線入射面R側とは反対側には、電子部品32等が配設されたPCB基板33やバッテリー24等が取り付けられている。このようにして、基台31や基板4等でセンサーパネルSPが形成されている。また、本実施形態では、センサーパネルSPと筐体2の側面との間に緩衝材35が設けられている。
本実施形態では、基板4はガラス基板で構成されており、図3に示すように、基板4のシンチレーター3に対向する面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。また、基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状(マトリクス状)に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた小領域rの全体、すなわち図3に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。本実施形態では、放射線検出素子7はフォトダイオードが用いられているが、例えばフォトトランジスター等を用いることも可能である。
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図4は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図である。
各放射線検出素子7の第1電極7aには、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8s(図4の「S」参照)が接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dおよびゲート電極8g(図4の「D」、「G」参照)は信号線6および走査線5にそれぞれ接続されている。
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15から走査線5を介してゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、ソース電極8sやドレイン電極8dを介して放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させる。また、走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内に電荷を蓄積させるようになっている。
また、本実施形態では、図3や図4に示すように、基板4上で1列の各放射線検出素子7ごとに1本の割合で各放射線検出素子7の第2電極7bにそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。そして、結線10は入出力端子11(パッドともいう。図3参照)を介してバイアス電源14(図4参照)に接続されており、バイアス電源14から結線10や各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極7bに逆バイアス電圧が印加されるようになっている。
一方、各走査線5は、それぞれ入出力端子11を介して走査駆動手段15のゲートドライバー15bにそれぞれ接続されている。走査駆動手段15では、配線15cを介して電源回路15aからゲートドライバー15bにオン電圧とオフ電圧が供給されるようになっており、ゲートドライバー15bで走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間でそれぞれ切り替えるようになっている。
また、各信号線6は、各入出力端子11を介して読み出しIC16内に内蔵された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。本実施形態では、読み出し回路17は、主に増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサー21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図4中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。
被写体を介して放射線画像撮影装置1に放射線が照射されて放射線画像撮影が行われると、各放射線検出素子7からの画像データDの取得処理が行われる。その際、各放射線検出素子7のTFT8にオン電圧が印加されてオン状態とされると、各放射線検出素子7内から信号線6に電荷がそれぞれ放出されて、各読み出し回路17の増幅回路18にそれぞれ流れ込む。
増幅回路18では、流れ込んだ電荷量に応じた電圧値が出力されるようになっている。相関二重サンプリング回路19では、各放射線検出素子7から電荷が流れ込む前後の増幅回路18からの出力値の増加分をアナログ値の画像データDとして下流側に出力する。そして、出力された各画像データDがアナログマルチプレクサー21を介してA/D変換器20に順次送信され、A/D変換器20でデジタル値の画像データDに順次変換されて記憶手段23に出力されて順次保存される。このようにして画像データDの取得処理が行われるようになっている。
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピューターや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。
そして、制御手段22は、走査駆動手段15や読み出し回路17を制御して上記のように画像データDの取得処理を行わせるなど、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作等を制御するようになっている。また、図4等に示すように、制御手段22には、SRAM(Static RAM)やSDRAM(Synchronous DRAM)等で構成される記憶手段23が接続されている。
また、本実施形態では、制御手段22には、走査駆動手段15や読み出し回路17、記憶手段23、バイアス電源14等の各機能部に必要な電力を供給するバッテリー24が接続されている。また、制御手段22には、前述したアンテナ装置41が接続されており、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、アンテナ装置41から、前述したアクセスポイント95(図1参照)を介して、コンソール90等の外部装置との間で無線方式で信号やデータ等の送受信を行うことができるようになっている。
また、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の筐体2の側面には、コネクター39が設けられており、図5に示すように、コネクター39に、ケーブルCaの先端に設けられたコネクターCを接続することにより、制御手段22は、コネクター39等を介してコンソール90等の外部装置との間で有線方式で信号やデータ等の送受信を行うことができるようにもなっている。
このように、本実施形態では、アンテナ装置41やコネクター39が通信手段として機能するようになっている。なお、図5において、37および38は放射線画像撮影装置1の電源スイッチおよび切替スイッチ、40は制御手段22の稼動状態等を示すインジケーターである。
なお、本実施形態では、ケーブルCaは撮影台50に設けられたケーブルであり、前述したネットワークN1に接続されている。そして、放射線画像撮影装置1が撮影台50の装着部51(図1参照)に装着される際に、放射線画像撮影装置1のコネクター39とケーブルCaのコネクターCとが接続され、ネットワークN1を介して有線方式で通信を行うようになっている。
しかし、このように有線方式で通信するように構成する代わりに、撮影台50の装着部51に装着された放射線画像撮影装置1からアンテナ装置41(図4参照)やアクセスポイント95(図1参照)を介して無線方式で通信するように構成することも可能である。
また、コネクター39にケーブルCaのコネクターCを接続した際に、コネクター39、Cを介して外部の商用電源や撮影台50の電源部から放射線画像撮影装置1に電力を供給するように構成することが可能である。そして、その際、放射線画像撮影装置1に内蔵されたバッテリー24(図4参照)から放射線画像撮影装置1内の各機能部への電力の供給を停止するように構成してもよい。
また、各装置等を結ぶネットワークを、本実施形態のように複数のネットワークN1、N2で分けて構成する必要はなく、各装置を1つのネットワークに接続して構成することも可能である。また、各装置を結ぶネットワークとして本実施形態のように複数のネットワークを用いる場合、いずれのネットワークにどの装置を接続するかは適宜決められる。
[本実施形態における長尺撮影の仕方等について]
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影システム100における長尺撮影の仕方や、長尺撮影における本発明特有の構成等について説明する。また、本実施形態に係る放射線画像撮影システム100の作用についてもあわせて説明する。
放射線技師等の操作者は、撮影台50の装着部51に放射線画像撮影装置1が装着されていなければ、撮影室101aに行き、図5に示したように、放射線画像撮影装置1のコネクター39に撮影台50に備えられたコネクターCを接続して、放射線画像撮影装置1を撮影台50の装着部51に装着する。
続いて、操作者は、コンソール90の所に移動し、コンソール90の入力手段92(図1参照)を操作して、ネットワークN1に接続されているHISやRISから、例えばその日に行う放射線画像撮影に関する撮影オーダー情報を入手する。
本実施形態では、撮影オーダー情報は、例えば図6に例示するように、患者情報としての「患者ID」P2、「患者氏名」P3、「性別」P4、「年齢」P5、「診療科」P6および撮影条件としての「撮影部位」P7、「撮影方向」P8等で構成されるようになっている。そして、撮影オーダーを受け付けた順に、各撮影オーダー情報に対して「撮影オーダーID」P1が自動的に割り当てられるようになっている。
コンソール90は、撮影オーダー情報を入手すると、表示部91に、図7に示すように、リスト形式で各撮影オーダー情報の一覧を選択画面H1上に表示するようになっている。
本実施形態では、選択画面H1には、各撮影オーダー情報の一覧を表示するための撮影オーダー情報表示欄h11が設けられており、撮影オーダー情報表示欄h11の左側には、これから撮影を行う予定の撮影オーダー情報を選択するための選択ボタンh12が設けられている。また、撮影オーダー情報表示欄h11の下側には、決定ボタンh13及び戻るボタンh14が設けられている。
そして、操作者は、選択ボタンh12をクリックして撮影オーダー情報を単数または複数選択し、決定ボタンh13をクリックする。なお、最初に一のオーダー情報を選択し、続いて当該オーダー情報と同一の患者に対する残る撮影オーダー情報全てを自動的に選択することができるように構成することも可能である。そして、決定ボタンh13がクリックされると、選択された撮影オーダー情報が、コンソール90の記憶手段に記憶されるとともに、前室101b内の放射線照射装置70の操作部72に送信される。
その際、例えば、図7の撮影オーダー情報の中から「A」という患者に関する4つの撮影オーダー情報が選択されたものとする。この場合、患者「A」に対する最初の撮影オーダー情報では、撮影部位P7として「全下肢」が指定されている。
本実施形態では、このように、撮影オーダー情報の撮影部位P7に「全下肢」が指定されていると、長尺撮影の一種である下肢全長撮影が行われるようになっている。また、図示を省略するが、撮影オーダー情報の撮影部位P7に「全脊椎」が指定されていると、長尺撮影の一種である全脊椎撮影が行われるようになっている。
すなわち、本実施形態では、コンソール90の入力手段92(図1参照)が、長尺撮影(すなわち上記の場合は下肢全長撮影)の対象となる被写体の領域(すなわち上記の場合は全下肢)を入力する入力手段として機能するようになっている。
一方、このようにして長尺撮影(下肢全長撮影、全脊椎撮影)を入力すると、本実施形態では、放射線技師等の操作者は、前室101b(図1参照)に移動して放射線照射装置70の操作部72を操作して、放射線源71から照射させる放射線の照射角度範囲を設定する。そして、撮影室101aに移動して、覆い板ユニット60の図示しないスキャン開始ボタンを操作する。
後述するように、本実施形態では、覆い板ユニット60は、独自の制御部64(後述する図9参照)を備えており、この制御部64が、被写体の領域(すなわち上記の場合は全下肢)および放射線画像撮影装置1における検出部Pの大きさ(この点については後で説明する。)に基づいて、長尺撮影における撮影回数を算出する算出手段として機能するようになっている。
なお、上記のように、コンソール90の表示部91の選択画面H1(図7参照)上で撮影部位P7に「全下肢」が指定されている撮影オーダー情報が選択されると、例えば図8に示すように、表示部91上に仮設定画面H2を表示して、放射線技師等の操作者が仮設定画面H2上で操作して撮影回数の仮設定を行うように構成することも可能である。
すなわち、後者の場合、選択画面H1(図7参照)上で撮影部位P7に「全下肢」が指定されている撮影オーダー情報が選択されると、コンソール90の表示部91上に、例えば図8に示すような仮設定画面H2が表示される。デフォルトの状態では、仮設定画面H2上には、例えば撮影回数が3回分のボタンアイコン(すなわち図中の「正面上」、「正面中」、「正面下」の3つのボタンアイコン)h21が表示される。
そして、この状態から、例えばボタンアイコンh21の1つを取り除く操作を行うと、ボタンアイコンh21が2つだけになり、それらの表示が「正面上」、「正面下」に切り替わる。すなわち、この場合、操作者により撮影回数を2回とする仮設定が行われたことになる。また、逆に、図8の状態から、例えばボタンアイコンh21を1つ付け加える操作を行うと、ボタンアイコンh21が4つになり、それらの表示が「正面1」〜「正面4」に切り替わる。すなわち、この場合、操作者により撮影回数を4回とする仮設定が行われたことになる。
なお、デフォルトとして表示されるアイコンh21の数は、放射線画像撮影装置1による長尺撮影のための移動方向の撮影可能領域寸法と患者の身長等を考慮して予め設定されている。例えば、半切サイズの放射線画像撮影装置1で移動方向が長辺方向(すなわち14×17インチのうちの17インチの方向)であれば、3回の撮影でほとんどの体形の患者をカバーすることが可能であるので、3個のアイコン設定となっている。
また、仮設定画面H2の右側には、撮影方向(撮影オーダー情報におけるP8参照)を変更するためのボタンアイコンh22が表示されている。そして、操作者がボタンアイコンh22をクリックするごとにボタンアイコンh22の表示が例えば「正面」、「側面」、「その他」と切り替わり、撮影方向を変更することができるようになっている。なお、撮影方向を切り替えるごとに、それにあわせてボタンアイコンh21の表示が「正面上」等から「側面上」等に切り替わる。
さらに、仮設定画面H2の下側には、撮影台50の装着部51に装着された放射線画像撮影装置1の向きを示すアイコンh23が表示されている。デフォルトの状態では、放射線画像撮影装置1の向きが縦向き(すなわち長辺の延在方向が上下方向を向く向き)に装着されていることとされており、「縦」のアイコンh23が「横」のアイコンh23より目立つように表示される状態になっている。
そして、例えば撮影台50の装着部51に装着された放射線画像撮影装置1の向きが横向きであるとして、操作者が「横」のアイコンh23をクリックすると、ボタンアイコンh21の数が増える。デフォルトの状態では、例えば撮影回数が5回分のボタンアイコンh21が表示される状態に切り替わる。放射線画像撮影装置1を横向きに装着した場合、縦向きに装着した場合よりも放射線画像撮影装置1の上下方向の長さが短くなるため、撮影をより多く行うことが必要になるためである。
そして、この場合も、操作者が上記のようにしてボタンアイコンh21の数を調整することで、撮影回数を仮設定することができる。以上のようにして、放射線技師等の操作者が仮設定画面H2を操作することにより、放射線照射装置70の操作部72で撮影回数の仮設定を行うことができるように構成することが可能である。
なお、先に撮影を行った他の操作者が、使用していた放射線画像撮影装置1を撮影台50の装着部51に装着したままの状態である場合には、既に装着されている放射線画像撮影装置1の向き(すなわち縦または横)に対応するアイコン類が表示された状態となるように連携制御される。そして、この状態から、例えば縦アイコン表示状態から横アイコンに変更されたような場合には、コンソール90は、撮影室101a内の放射線画像撮影装置1および覆い板ユニット60の後述する開口部Wの設定変更(すなわち縦向きか横向きかの設定の変更)が必要であることを音声等で操作者に告知する。
また、図6や図7では、図示を省略したが、本実施形態では、患者の身長や、長尺撮影の対象となる被写体の領域(すなわち下肢全長撮影の場合には全下肢の、全脊椎撮影の場合には全脊椎の床面からの高さの上限値および下限値)等の必要な情報が、予め撮影オーダー情報中に患者情報として指定されている。しかし、例えば上記の仮設定画面H2上で被写体の領域等の必要な情報を入力するように構成してもよい。
[覆い板ユニットや撮影台の構成等について]
以下、算出手段(本実施形態では覆い板ユニット60の制御部64)による長尺撮影における撮影回数の算出について、撮影台50や覆い板ユニット60(図1参照)の構成等を説明しながら簡単に説明する。
なお、以下で説明する長尺撮影における撮影回数の算出の方法は、前述した従来の放射線画像撮影システムでの長尺撮影における撮影回数の自動設定の方法と同じ要領で行われる。しかし、前述したように、従来の放射線画像撮影システムでは、算出した端数を含む撮影回数に基づいて自動的に整数値の撮影回数を設定していたが、本実施形態では、後で詳しく説明するように、算出された撮影回数を基とし、条件に応じて整数値の撮影回数を適宜設定することが可能とされている点で、従来の場合と異なっている。
図9は、撮影台50や覆い板ユニット60等の構成を示す概略図であり、図10は、覆い板ユニット60を図9に示すX方向からみた正面図である。覆い板ユニット60は、放射線源71から照射された放射線の照射領域を制限する覆い板61を備えて構成されている。そして、覆い板61は、台座62により床面に固定され覆い板61を昇降可能に支持するガイド軸63によって支持されており、駆動モーターM1(図10では図示省略)により上下方向(図9に示すZ方向)に移動することができるように構成されている。
また、駆動モーターM1には、覆い板ユニット60の前述した制御部64が接続されており、制御部64は、前述したように、本実施形態に係る放射線画像撮影システム100における算出手段として機能する。そして、駆動モーターM1を駆動させることにより、覆い板61を上下方向に移動させるようになっている。
覆い板61には所定サイズの寸法を有する開口W(図10参照)が設けられており、放射線源71から照射された放射線は覆い板61の開口Wを抜けて患者Hに照射される。そして、覆い板61をガイド軸63に沿って上下方向に移動させて開口Wの位置を上下方向に移動させることにより、X線の照射領域を移動させることができるようになっている。
そして、算出手段としての覆い板ユニット60の制御部64は、上記のように、撮影回数の算出のために図示しないスキャン開始ボタンが操作されると、駆動モーターM1を駆動させて覆い板61を上下方向に移動させて(すなわちスキャンさせて)、端数を含む撮影回数を算出するようになっている。
なお、開口Wの寸法は、放射線画像撮影装置1の移動方向の撮影可能領域サイズと、放射線画像撮影装置1と覆い板ユニット60と放射線源71との距離を含むそれらの配置レイアウトに対応した寸法に、自動、或いは手動で調整固定される。例えば、自動調整式の場合、撮影台50に装着された放射線画像撮影装置1の縦/横設置情報を撮影台50から直接、或いはコンソール90経由で取得し、或いは、放射線画像撮影装置1が装着されていない場合には、コンソール90における縦/横アイコン選択情報に基づいて、自動調整される。
なお、使用する放射線画像撮影装置1が17×17インチサイズや14×14インチサイズのように撮影可能領域が正方形の場合には、このような処理は不要であることは言うまでもない。もちろん、コンソール90上での縦横区分けも不要となる。
一方、撮影台50の装着部51(図9参照)は、放射線画像撮影装置1を装着するための装着口51aを備えている。そして、装着部51は、台座52により床面に固定され装着部51を昇降可能に支持するガイド軸53によって支持されており、駆動モーターM2によりガイド軸53に沿って上下方向に移動することができるように構成されている。
また、駆動モーターM2には、撮影台50の制御部54が接続されている。そして、撮影台50には、被写体である患者Hを支持する支持部55が、ガイド軸53に平行に配置されるように台座52から垂直に立設されている。
なお、放射線画像撮影装置1が装着部51に装着される際に、そのコネクター39(図5参照)にケーブルCaのコネクターCが接続された状態で装着されることは前述した通りである。そして、このように構成することで、有線方式で通信を行うことが可能となるほか、外部の商用電源や撮影台50の電源部から放射線画像撮影装置1に電力を供給することが可能となる。そのため、この場合は、放射線画像撮影装置1に内蔵されたバッテリー24(図4参照)から放射線画像撮影装置1内の各機能部への電力の供給が停止されることも前述した通りである。
通常の場合(すなわち前述した従来の放射線画像撮影システムの場合)、撮影台50の制御部54は、覆い板ユニット60の制御部64から、算出した撮影回数や覆い板61(および開口部W)の移動距離等の情報に基づいて、撮影台50の装着部51の移動回数や移動距離を算出する。そして、駆動モーターM2を駆動させることにより、装着部1およびそれに装着された放射線画像撮影装置1を上下方向に移動させるようになっている。
すなわち、本実施形態では、撮影台50の制御部54が、少なくとも長尺撮影における放射線画像撮影ごとの放射線画像撮影装置1の位置を調節する位置調節手段として機能するようになっている。
そして、通常の場合の長尺撮影では、撮影台50の制御部54は、例えば、撮影台50の駆動モーターM2を駆動させて装着部51を下降させ、放射線画像撮影装置1を長尺撮影における最も下側の位置に移動させる。また、覆い板ユニット60の制御部64は、駆動モーターM1を駆動させて覆い板61を下降させ、開口Wの位置を下降させて、放射線源71から照射された放射線が、最も下側に配置された放射線画像撮影装置1に対して照射される状態にする(図9のR1参照)。そして、長尺撮影における最初の撮影を行う。
続いて、撮影台50の制御部54は、同様に、駆動モーターM2を駆動させて装着部51を上昇させ、放射線画像撮影装置1を長尺撮影における中間の位置や最上段の位置に移動させる。また、覆い板ユニット60の制御部64は、駆動モーターM1を駆動させて覆い板61を上昇させ、開口Wの位置を上昇させて、放射線源71から照射された放射線が、長尺撮影における中間の位置や最上段の位置に配置された放射線画像撮影装置1に対して照射される状態にするようになっている(図9のR2、R3参照)。そして、長尺撮影における2回目や3回目の撮影を行うように構成される。
なお、前述したように、本実施形態では、放射線照射装置70の放射線源71は、前述した特許文献8に記載の放射線画像撮影システムと同様に、照射する放射線の照射角度が上下方向に大きくなるように放射線を照射させるようになっている(図1中の破線参照)。そのため、覆い板61の上下動に伴う開口Wの上下動によって、図9に示すように、放射線源71からの放射線の照射領域を変えることができるようになっている。
しかし、例えば照射する放射線の照射角度が上下方向により狭い放射線源を用い、放射線源を首振り動作させて照射方向を変えたり、或いは、放射線源自体を上下動させて、上下方向に移動して配置される放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射するように構成することも可能である。すなわち、前述した特許文献4から特許文献7等に記載されたように構成することも可能である。
以上が、放射線照射装置70の覆い板61や撮影台50の基本的な構成である。なお、前述したように、放射線技師等の操作者が、前室101bに移動し、放射線照射装置70の操作部72を操作して放射線源71から照射させる放射線の照射角度範囲を設定したり、撮影室101aに移動して覆い板ユニット60の開始ボタンを操作する代わりに、それらの操作を例えばコンソール90上で行うことができるように構成することも可能であり、それらの変形は適宜行われる。
[放射線照射装置の操作部での撮影回数の算出について]
このような構成の下で、算出手段としての覆い板ユニット60の制御部64は、本実施形態では、上記のようにスキャン開始ボタンが操作されると(或いは仮設定画面H2(図8参照)上で操作者による仮設定が行われると)、放射線源71に設定された照射領域に対応する放射線の照射野の上下方向の寸法をスキャン測定し、この測定結果に基づいて長尺撮影に向けて撮影回数を算出するようになっている。
具体的には、覆い板ユニット60の制御部64は、本実施形態では、撮影オーダー情報で指定されている長尺撮影の対象となる被写体の領域(すなわち下肢全長撮影の場合には全下肢の、全脊椎撮影の場合には全脊椎の床面からの高さの上限値および下限値)内、或いは患者の身長から割り出した被写体の領域内に放射線が照射されるように覆い板61(および開口部W)を上下方向に移動させてスキャンして、撮影回数を算出する。
前述したように、放射線画像撮影装置1では、検出部P(図3や図4)に各放射線検出素子7が二次元状に配列されていて実際に放射線画像を撮影できる領域である。そのため、覆い板ユニット60の制御部64は、図11に示すように、放射線画像撮影装置1の検出部Pの大きさと画像合成処理時に必要となる重複量を考慮して、上昇させる前の放射線画像撮影装置1の検出部Pの上端と上昇させた後の検出部Pの下端とが予め定められた所定の重複量ΔLをもって重なるようにして撮影回数を算出する。
そして、覆い板ユニット60の制御部64は、仮に長尺撮影の対象となる被写体の領域ROI(図11参照)の全領域を透過する放射線を想定した場合に、この放射線の全てを受光するためには、放射線画像撮影装置1を何回移動させることが必要か、すなわち被写体の領域ROIを長尺撮影するために放射線画像撮影が何回必要か(すなわち撮影回数)を算出するようになっている。
すなわち、前述したように、本実施形態では、覆い板ユニット60の制御部64が、被写体の領域ROIと放射線画像撮影装置1における検出部Pの大きさ(この場合は検出部Pの上下方向の長さ)と画像合成処理時に必要となる重複量とに基づいて、長尺撮影における撮影回数を算出する算出手段として機能するようになっている。
[撮影回数の設定の仕方について]
前述したように、従来の放射線画像撮影システムでは、算出手段である覆い板ユニット60の制御部64が算出した撮影回数が、例えば2.1回のように端数(この場合は0.1)がある場合には、この端数を切り上げて、撮影回数を3回とするように(すなわち1回の長尺撮影を行うために3回放射線を照射させるように)自動的に設定させていた。
すなわち、図11に示したような状況である場合には、撮影回数を2回ではなく自動的に3回に設定するように構成されていた。そのため、患者の病変部等の撮影されるべき部分が被写体の領域ROI(例えば患者の下肢全体)のうちの一部にのみ存在することが分かっている場合でも、上記のように端数を切り上げて撮影回数が増やされるため、患者に不要の放射線が照射され、患者の被曝線量が無駄に増加してしまうという問題を生じていた。
そのため、このような場合には、撮影回数を3回ではなく、2回に設定することができるように構成されていることが望ましい。
一方、算出した撮影回数が例えば2.8回のように端数(この場合は0.8)が大きいような場合に、無理に撮影回数を2回に制限してしまうと、撮影されるべき病変部等の部分が撮影されなくなる可能性が増大する。そのため、このような場合には、撮影回数を2回とするのではなく、寧ろ従来通り3回に設定することが望ましい。
そこで、本実施形態では、算出手段である覆い板ユニット60の制御部64から、算出した端数を含む撮影回数の情報をコンソール90に送信し、コンソール90が、長尺撮影における撮影回数として、算出した撮影回数(例えば2.1回や2.8回等)を基とし、条件に応じて整数値の撮影回数を設定するように構成されている。すなわち、本実施形態では、コンソール90が本発明における撮影回数設定手段として機能するようになっている。
そして、本実施形態では、上記の条件として、算出手段が算出した当該長尺撮影における撮影回数が上記のように整数部分のほかに端数を含む場合に、端数が定められた数値範囲内であるか否かを条件とするように構成されている。この場合、数値範囲としては、例えば0.1等の数値に適宜定められる。
そして、撮影回数設定手段としてのコンソール90は、算出手段が算出した当該長尺撮影における撮影回数が整数部分のほかに端数を含む場合において、端数が定められた数値範囲内(例えば0より大きく0.1以下)である場合は、撮影回数を、整数部分に対応する回数とする。例えば、算出された撮影回数が2.1回である場合には、撮影回数は2回として設定される。
また、撮影回数設定手段としてのコンソール90は、端数が定められた数値範囲を越える場合(例えば端数が0.1より大きい場合)は、撮影回数を、整数部分に1を加えた回数とする。例えば、算出された撮影回数が2.2回である場合には、撮影回数は3回として設定される。
本実施形態では、このようにして、撮影回数設定手段としてのコンソール90は、長尺撮影における撮影回数を、算出手段が算出した撮影回数における端数が定められた数値範囲内であるか否かに応じて、算出された撮影回数の整数部分、または、それに1を加えた整数値のいずれかの回数として設定するようになっている。
[撮影回数の設定の仕方の変形例について]
なお、上記のように、算出手段である覆い板ユニット60の制御部64が算出した撮影回数における端数が定められた数値範囲内であるとして、端数が切り捨てられて、撮影回数が設定されると、放射線技師等の操作者が被写体の領域ROI(図11参照)の全域を撮影しようと思っても、端数の例えば0.1回分に対応する被写体の領域ROIの一部(図11では例えば被写体の領域ROIの上端部分)が撮影できなくなる。
このような問題を解消するために、例えば、上記のようにして撮影回数の設定を行う前に、例えばコンソール90の表示部91上に、長尺撮影の対象となる被写体の領域ROIの一部が撮影できなくなる可能性があることを表示して報知し、操作者に、入力手段92を介して、被写体の領域ROIの一部が撮影できなくなることに対する許可或いは不可を入力するように構成することが可能である。
この場合、操作者により被写体の領域ROIの一部が撮影できなくなることに対して不可の入力がなされた場合には、従来のように端数を切り上げて撮影回数を設定し、被写体の領域ROIの一部が撮影できなくなることに対して許可の入力がなされた場合にのみ、本実施形態のように、条件に応じて端数を切り捨てたり切り上げたりして撮影回数を設定するように構成することが可能である。
また、例えば、上記のようにして撮影回数の設定を行う際に、算出手段が算出した当該長尺撮影における撮影回数に含まれる端数が定められた数値範囲内である場合、すなわち端数を切り捨てて撮影回数を設定する場合にのみ、例えばコンソール90の表示部91上に、長尺撮影の対象となる被写体の領域ROIの一部が撮影できなくなる可能性があることを表示して報知し、操作者に、入力手段92を介して、被写体の領域ROIの一部が撮影できなくなることに対する許可或いは不可を入力するように構成することが可能である。
この場合は、操作者により被写体の領域ROIの一部が撮影できなくなることに対して許可の入力がなされれば、本実施形態のように端数を切り捨てて撮影回数を設定し、不可の入力がなされた場合には、従来のように端数を切り上げて撮影回数を設定する。端数を切り上げて撮影回数を設定する場合には、上記の表示や操作者による入力は行われない。
なお、被写体の領域ROIの一部が撮影できなくなることに対して許可が与えられる場合、さらに、被写体の領域ROIの上端部或いは下端部のいずれを放棄するか、或いは、両方共に減縮するかを選択入力可能とすることも可能である。この場合、覆い板ユニット60の制御部64は、この選択入力結果に応じて、撮影開始位置を変更制御することとなる。
上記のいずれかの変形例を採用すれば、放射線技師等の操作者が被写体の領域ROIの全域を撮影したいのか一部のみを撮影すればよいのかに応じて、撮影回数を適宜変更して設定することが可能となり、操作者にとって本実施形態に係る放射線画像撮影システム100の使い勝手が良くなり、放射線画像撮影システム100の操作性を向上させることが可能となる。
また、算出手段が算出した当該長尺撮影における撮影回数が上記のように端数を含み、端数が定められた数値範囲内である場合、すなわち被写体の領域ROIの一部が撮影できなくなる場合には、上記のようにコンソール90の表示部91上にその旨を表示して報知し、操作者に、入力手段92を介して被写体の領域ROIを再設定するように報知するように構成することも可能である。この場合、コンソール90の表示部91が上記のように報知する報知手段として機能する。
この場合、操作者は、被写体の領域ROIにおける床面からの高さの上限値や下限値(或いはその両方)を再設定したり、前述した重複量ΔL(図11参照)を設定可能な範囲で可変させて(すなわち通常の場合よりも小さな量になるように)設定し直す等して、被写体の領域ROIを再設定する。そして、算出手段は、再設定された被写体の領域ROIに基づいて撮影回数を算出し直し、端数が定められた数値範囲を越えるまで(すなわち例えば2.1回が2.0回以下になるまで)上記の操作を繰り返すように構成される。
また、操作者は、被写体の領域ROIを再設定するように報知された場合でも、被写体の領域ROIを変更したくない場合もある。そこで、このような場合に、算出手段に対して、算出した撮影回数の整数部分に1を加えた回数とする(すなわち2.1回を3回とする)ように指示することができるように構成することが好ましい。
[長尺撮影の実施の仕方について]
本実施形態では、上記のようにして、撮影回数設定手段としてのコンソール90により長尺撮影における撮影回数が設定されると(或いは操作者により撮影回数が例えば2回から3回に変更されて設定されると)、覆い板ユニット60の制御部64は、撮影台50の制御部54にその設定された撮影回数を送信する。そして、位置調節手段としての撮影台50の制御部54は、設定された撮影回数に基づいて、長尺撮影における放射線画像撮影ごとの放射線画像撮影装置1の位置を調節するようになっている(図11参照)。
なお、上記のように、撮影回数の算出・設定処理において重複量ΔL(図11参照)を可変させて(すなわち通常の場合よりも小さな量になるように)撮影回数を設定した場合には、覆い板ユニット60の制御部64は、撮影台50の制御部54に可変された重複量ΔLの情報を送信する。そして、位置調節手段としての撮影台50の制御部54は、重複量ΔLが可変されて設定された重複量になるように、放射線画像撮影ごとの放射線画像撮影装置1の位置を調節するようになっている。
また、覆い板ユニット60の制御部64も、設定された撮影回数や可変された重複量ΔLに基づいて、長尺撮影における覆い板61の移動量を算出して、長尺撮影の各放射線画像撮影ごとに覆い板61を移動させ、開口部Wを適切に移動させて、上記のように撮影台50内で移動する放射線画像撮影装置1に対して適切に放射線が照射される状態にする。
そして、本実施形態では、位置調節手段としての撮影台50の制御部54や、覆い板ユニット60の制御部64が、上記のように撮影ごとに放射線画像撮影装置1や覆い板61(図9や図10等参照)の位置を調節しながら放射線源71から放射線を照射させることによって、長尺撮影における各放射線画像撮影を行うようになっている。
すなわち、具体的に言えば、例えば図11のような場合、まず、放射線画像撮影装置1を最下端の位置に配置し、その状態の放射線画像撮影装置1に放射線が照射されるように覆い板61を移動させて開口W(図10参照)の位置を調節し、その状態で放射線源71(図9等参照)から放射線を照射させて1回目の撮影を行う。
続いて、放射線画像撮影装置1を下から2番目の中段の位置に移動させ、重複量ΔLが設定された重複量になるようにして放射線画像撮影装置1を配置し、その状態の放射線画像撮影装置1に放射線が照射されるように覆い板61の開口Wの位置を調節し、その状態で放射線源71から放射線を照射させて2回目の撮影を行う。
長尺撮影の撮影回数が2回に設定されていればここまでだが、撮影回数が3回以上に設定されている場合には、さらに、放射線画像撮影装置1を上方の位置に移動させ、重複量ΔLが設定された重複量になるようにして放射線画像撮影装置1を配置し、その状態の放射線画像撮影装置1に放射線が照射されるように覆い板61の開口Wの位置を調節し、その状態で放射線源71から放射線を照射させて3回目以降の撮影を行う。このようにして長尺撮影における各放射線画像撮影を行うようになっている。
なお、長尺撮影を行う場合、図9や図11に示したように下肢全長撮影を行う場合の生殖器や、図示を省略した全脊椎撮影を行う場合の眼球等に対して、放射線が複数回照射されることは極力避けられるべきである。しかし、例えば図11に示した例では、生殖器やその近傍に、移動する前の放射線画像撮影装置1と移動した後の放射線画像撮影装置1との重複位置(図中の重複量ΔL参照)がある、そのため、生殖器付近に放射線が2回照射されてしまう可能性がある。
そこで、このような事態が生じることを回避するために、例えば、上記のような場合、重複位置が上下方向にずれるように、長尺撮影における放射線画像撮影ごとの放射線画像撮影装置1の移動量、或いは移動の結果としての上記の重複量ΔLを調節するように構成することが可能である。
すなわち、例えば図11に示した被写体の領域ROI(この場合は全下肢)を3回に分けて長尺撮影する場合には、例えば図12に示すように、図11に示した場合よりも放射線画像撮影装置1の上方への移動量を小さくし、重複量ΔLをそれぞれ大きくする。
このように制御すると、移動する前の放射線画像撮影装置1と移動した後の放射線画像撮影装置1との重複位置(図中の重複量ΔL参照)が図11に示した場合よりも下側の位置にずれる。そのため、患者の生殖器付近に放射線が2回照射されてしまうことを回避することが可能となる。
[放射線画像撮影装置からのデータの送信等について]
長尺撮影においては、上記のように、放射線画像撮影装置1が下方から上方に移動するごとに被写体を介して放射線画像撮影装置1に放射線が照射され、放射線画像撮影が行われる。そして、放射線画像撮影装置1では、放射線画像撮影ごとに、上記のようにして画像データDの取得処理が行われ、取得された画像データDが記憶手段23(図4参照)に保存されて蓄積される。
そして、本実施形態では、長尺撮影の終了後に、放射線画像撮影装置1は、各画像データDに重畳されている、いわゆる暗電流(暗電荷等ともいう。)に起因するオフセット分に相当するデータをオフセットデータOとして取得するオフセットデータOの取得処理を行う。このオフセットデータOの取得処理は、通常、画像データDの取得処理と同じ手順を踏んで行われるが、画像データDの取得処理とは異なり、オフセットデータOの取得処理では放射線画像撮影装置1に対して放射線は照射されない。
そして、放射線画像撮影装置1は、オフセットデータOの取得処理が終了すると、長尺撮影の各放射線画像撮影で取得された各画像データDとその後に取得されたオフセットデータOとをそれぞれ画像処理装置であるコンソール90に送信するようになっている。
また、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、画像データDやオフセットデータOの送信に先立って、取得した画像データDから所定の割合でプレビュー画像用データDtを抽出してコンソール90に送信するようになっている。以下、具体的に説明する。その際、例えば図13に示すように、放射線画像撮影装置1の検出部P(図3や図4参照)のn行、m列目の放射線検出素子7を放射線検出素子7(n,m)と表し、放射線検出素子7(n,m)から取得された画像データDをD(n,m)で表すものとする。
放射線画像撮影装置1の制御手段22は、取得された画像データD(n,m)の中から、例えば図中に斜線を付して示すように予め所定本数(図13の場合は4本)の走査線5の各ラインL1〜Lxごとに1本の割合で指定された走査線5に接続されている各放射線検出素子7から取得された画像データD(n,m)を抽出して、プレビュー画像用データDtとしてコンソール90に送信するようになっている。
なお、プレビュー画像用データDtの抽出の仕方は、これに限定されない。図示を省略するが、例えば、4×4画素すなわち4行4列の計16個の放射線検出素子7(n,m)から取得された16個の画像データD(n,m)の中から1個の割合で画像データDを抽出する等して、画像データDの中から画像データDを所定の割合で間引いてプレビュー画像用データDtを抽出するように構成することも可能である。
また、画像データDからのプレビュー画像用データDtの抽出処理およびコンソール90へのプレビュー画像用データDtの送信処理は、長尺撮影において、放射線画像撮影装置1を上方に移動させる最中に行うように構成してもよく(すなわち長尺撮影における各放射線画像撮影ごとに抽出、送信を行うように構成してもよく)、また、全ての放射線画像撮影が終了した後で抽出、送信を行うように構成することも可能である。なお、有線通信を行う場合には、放射線画像撮影装置1の次の撮影位置への移動途中(モーター等の駆動部への通電中)に上記通信を行っても、比較的ノイズは重畳し難いので好ましい。
さらに、前述したオフセットデータOの取得処理を、放射線画像撮影装置1を上方に移動させる最中に行うように構成することも可能である。
[画像処理装置における処理について]
本実施形態では、コンソール90(図1参照)が、長尺撮影におけるいて複数回の放射線画像撮影で放射線画像撮影装置1がそれぞれ取得した画像データDを、1枚の画像データに合成して1枚の長尺画像データDlongを生成する画像処理装置として機能するようになっている。なお、画像処理装置を、コンソール90とは別体の装置として構成することも可能である。
画像処理装置としてのコンソール90における長尺画像データDlongの生成処理について説明する前に、コンソール90におけるプレビュー画像の表示処理等について説明する。
コンソール90では、前述したように、選択画面H1上で長尺撮影を指定する撮影オーダー情報が選択されると(すなわち例えば図7では「全下肢」が指定されている撮影オーダー情報)が選択されると、或いは仮設定画面H2(図8参照)上で撮影回数が仮設定されたり放射線照射装置70の操作部72が設定した撮影回数の操作者による変更が行われる等すると、表示部91上の表示が図14に示すような長尺撮影用の画面H3に切り替わる。
なお、以下では、撮影回数が3回に設定された場合を例示して説明する。そのため、放射線画像撮影装置1から送信されてくる画像データDやプレビュー画像用データDtはそれぞれ3枚分になるが、撮影回数がn回の場合には、放射線画像撮影装置1から送信されてくる画像データDやプレビュー画像用データDtはそれぞれn枚分になる。
長尺撮影用の画面H3では、図14に示すように、例えば画面H3の左側の部分に、選択画面H1(図7参照)上で選択した各撮影オーダー情報に対応するアイコンIAが表示される。図14では、選択画面H1上で患者「A」に関する各撮影オーダー情報が選択された場合が示されており、各アイコンIAのうち上側の3つのアイコンIAlongが「全下肢」が指定された長尺撮影(すなわちこの場合は下肢全長撮影)に関する撮影オーダー情報に対応するアイコンである。
そして、「全下肢」が指定された長尺撮影における3回の放射線画像撮影がそれぞれ単独ではなく、3回の撮影が行われることで1回の長尺撮影に関する1個の撮影オーダー情報が完了することを表すために、上側の3つのアイコンIAlongが枠線で一括りにグループ化されて、現在撮影中であることを示すフォーカスされた状態で表示されるようになっている。また、それらの下側には、図7に示した選択画面H1における下側の3つのそれぞれ独立した(すなわち長尺撮影ではない通常の単独の撮影の)撮影オーダー情報に対応するアイコンIAがそれぞれ表示されている。
また、例えば長尺撮影用の画面H3の中央部分には、前述したように長尺撮影における各放射線画像撮影で取得された画像データDから抽出されたプレビュー画像用データDtに基づくプレビュー画像p_preや、画像データDおよびオフセットデータOに基づいて生成された放射線画像pを表示するための表示スペースSaが設けられている。
さらに、例えば長尺撮影用の画面H3の右側部分には、生成されたプレビュー画像p_preや放射線画像pのサムネイル画像ptを表示するためのサムネイル用表示スペースSbが設けられている。そして、放射線技師等の操作者が、このサムネイル用表示スペースSb上でのサムネイル画像ptを見ることで、処理が現在どこまで進んでいるかを容易に把握することができるようになっている。
なお、本実施形態では、コンソール90は、上記のようにして放射線画像撮影装置1から、画像データD等の送信に先立ってプレビュー画像用データDtが送信されてくると、プレビュー画像用データDtに基づいてプレビュー画像p_preを生成するようになっている。
その際、プレビュー画像p_preの生成処理においては、後述する長尺画像データDlongの生成処理のように、本来であれば、プレビュー画像用データDtからそれに対応するオフセットデータOを減算して、プレビュー画像用データDtから暗電流によるオフセット分が除去された真の画像データ(この場合は真のプレビュー画像用データDt*)を算出すべきである。
しかし、前述したように、放射線画像撮影装置1からコンソール90へのプレビュー画像用データDtの送信処理を、長尺撮影において放射線画像撮影装置1を上方に移動させる最中に行うように構成するなど、少なくともオフセットデータOの取得処理よりも前に行うように構成した場合、プレビュー画像用データDtがコンソール90に送信されてきた時点では、それに対応するオフセットデータOはまだ取得されていない。
そのため、1つの方法としては、オフセットデータOが減算処理されていない、いわば生の(raw)プレビュー画像用データDtに対して画像処理を行って、プレビュー画像p_preを生成するように構成することが可能である。
また、コンソール90で、予めプレビュー画像用データDtに対するオフセットデータOを作成しておき、放射線画像撮影装置1から送信されてきたプレビュー画像用データDtから、この予め作成されたオフセットデータOを減算して真のプレビュー画像用データDt*(正確には仮の真のプレビュー画像用データDt*)を算出し、この真のプレビュー画像用データDt*に対して画像処理を行ってプレビュー画像p_preを生成するように構成することも可能である。
さらに、同じ放射線画像撮影装置1を用いて、当該長尺撮影の前に行った別の放射線画像撮影の際に取得されたオフセットデータOを活用し、放射線画像撮影装置1から送信されてきたプレビュー画像用データDtからこのオフセットデータOを減算して真のプレビュー画像用データDt*(正確には仮の真のプレビュー画像用データDt*)を算出し、この真のプレビュー画像用データDt*に対して画像処理を行ってプレビュー画像p_preを生成するように構成することも可能である。
そして、放射線技師等の操作者は、例えば長尺撮影用の画面H3の中央部分に設けられた表示スペースSaに拡大して表示されたプレビュー画像p_preを見て、画像中に被写体が適切に撮影されているか否かを判定し、再撮影の要否を判断するようになっている。
すなわち、プレビュー画像p_preは、このように操作者が見て再撮影の要否を判断するための画像であり、最終的な放射線画像pとは異なるものであるため、精密な画像処理を行う必要はなく、上記のように、本来のオフセットデータOではないオフセットデータOを用いて処理したり、簡易な画像処理を施すことで十分有効に処理を行うことができる。
[画像処理装置における長尺画像データDlongの合成処理等について]
一方、画像処理装置としてのコンソール90は、長尺撮影における放射線画像撮影ごとの画像データDと、オフセットデータOとが送信されてくると、各放射線画像撮影ごとおよび各放射線検出素子7ごとに画像データDからオフセットデータOを減算して真の画像データD*を算出するようになっている。
そして、得られた撮影回数分の真の画像データD*を合成して、1枚の長尺画像データDlongを生成するようになっている。以下、画像処理装置としてのコンソール90における長尺画像データDlongの生成方法について簡単に説明する。なお、以下では真の画像データD*を単に画像データD*という。
画像処理装置としてのコンソール90は、図15(A)に示すように、長尺撮影における3回の放射線画像撮影についてそれぞれ画像データD*1〜D*3を生成すると、各画像データD*1〜D*3中の重複量ΔL(図11や図12参照)に対応する画像領域(以下、重複領域ΔLという。)における画像信号値に基づいて、各画像データD*1〜D*3間の位置合わせを行う。
具体的には、画像処理装置としてのコンソール90は、各画像データD*1〜D*3中のうち、下側の画像における上端部の重複領域ΔLで、画像データD*を図中横方向に見て行った場合のプロファイル(すなわち値の変化の傾向)を算出する。或いは、横方向に隣接する画像データD*同士の差分値のプロファイルを算出してもよい。
そして、画像処理装置としてのコンソール90は、当該重複領域ΔLと重複する上側の画像下端部の重複領域ΔLにおいて、同様に画像データD*のプロファイル或いは隣接する画像データD*同士の差分値のプロファイルを算出する。
そして、各重複領域ΔLにおいて、画像中における患者の身体の横方向の端部(すなわちいわゆるエッジ部)を検出する。そして、互いに重複する各重複領域ΔLにおいて、検出したエッジ部の位置が合うようにし、また、図中縦方向には各画像が前述した重複量ΔLだけ重複するようにして、隣接する画像データD*1〜D*3同士を位置合わせしながら合成する。このようにして、図15(B)に示すように、得られた撮影回数分の真の画像データD*が合成されて、1枚の長尺画像データDlongが生成される。
画像処理装置としてのコンソール90は、上記のようにして合成した1枚の長尺画像データDlongに対してゲイン補正や正規化処理、撮影部位や撮影条件に応じた階調処理等の種々の画像処理を行って、長尺撮影における1枚の放射線画像pを生成するようになっている。
そして、生成された放射線画像pを見た放射線技師等の操作者が「確定」ボタンB(図14参照)をクリックして確定させると、確定された放射線画像pが、当該長尺撮影を指定した撮影オーダー情報(すなわち上記の場合は図6の最上段の「全下肢」が指定された撮影オーダー情報)に対応付けられて長尺撮影が終了する。
[効果]
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影システム100によれば、撮影回数設定手段(本実施形態の場合はコンソール90)は、算出手段(本実施形態の場合は覆い板ユニット60の制御部64)が算出した長尺撮影における撮影回数が端数(例えば0.1)を含む場合、従来のシステムのように自動的に端数を切り上げて撮影回数を設定するのではなく、端数が定められた数値範囲内である場合は撮影回数を切り上げずに算出された撮影回数の整数部分に対応する回数の放射線画像撮影が行われるように撮影回数を設定する。
従来のシステムでは、算出された撮影回数に端数があれば、撮影回数を切り上げて、算出された撮影回数の整数部分に1を加えた回数に設定された。そのため、例えば患者の病変部等の撮影されるべき部分が被写体の領域ROI(例えば患者の下肢全体)のうちの一部にのみ存在するような場合であって、端数に対応して1回分増やされた放射線の照射部分には患者の病変部が存在しないにもかかわらず、放射線の照射回数が増やされる。そのため、患者に不要の放射線が照射され、患者の被曝線量が無駄に増加してしまった。
それに対し、上記のような場合、算出手段が算出した撮影回数に含まれる端数が、比較的小さな数値範囲内であれば、撮影回数を切り上げずに端数を切り捨てて、算出された撮影回数の整数部分に対応する回数に設定しても、その撮影回数で行われる各放射線画像撮影で、患者の病変部は十分に撮影される。
そのため、本実施形態に係る放射線画像撮影システム100のように、算出手段が算出した撮影回数に含まれる端数に適切な数値範囲を設け、算出された撮影回数に含まれる端数が数値範囲内にあるか否かに応じて、その端数を切り上げて撮影回数を増やすか否かを適切に設定することが可能となる。
そして、端数が数値範囲内であり、小さな値であれば、端数を切り捨て、撮影回数を増加させないようにすることで、患者に不要の放射線が照射されて患者の被曝線量が増加してしまうことを的確に防止することが可能となる。また、端数が数値範囲以上に大きい場合には、撮影回数を的確に切り上げて、患者の病変部を的確に撮影することが可能となる。
このように、本実施形態に係る放射線画像撮影システム100によれば、撮影回数設定手段は、長尺撮影を行う際に、適切な撮影回数の放射線画像撮影を行って、患者の病変部等の撮影されるべき対象を的確に長尺撮影することが可能となる。
[種々の変形例]
[変形例1]
なお、本実施形態のように、長尺撮影における放射線画像撮影の撮影回数を、従来のように予め3回等の決められた回数に設定せず、算出された撮影回数に含まれる端数の大きさ(すなわち定められた数値範囲)内か否かによって可変させる場合、例えば、以下のような問題が生じ得る。
長尺撮影では、通常、設定された撮影回数の放射線画像撮影が終了しないと長尺撮影が終了せず、他の放射線画像撮影(すなわち例えば図7に示した選択画面H1における下側の3つの独立した撮影オーダー情報に対応する単独の放射線画像撮影)に移ることができない。
そのような状況で、本実施形態のように長尺撮影における放射線画像撮影の撮影回数を可変とすると、撮影回数が例えば3回に設定されたにもかかわらず、放射線画像撮影システム100のいずれかの装置や手段において撮影回数が2回であると誤認してしまった場合には、当該装置や手段が3回目の放射線画像撮影のための動作を行われないために3回目の撮影を行うことができなくなる。そのため、長尺撮影を終了できず、結果的に、長尺撮影がいつまで経っても終了しないという事態が生じかねない。
また、放射線技師等の操作者が、従来の経験値に基づき3回の撮影となることを想定して、コンソール90上で撮影回数を3回と仮設定したものの、算出された撮影回数が2回であった場合には、再度コンソール90上で撮影回数を2回に設定し直す必要があり、面倒でもある。
そこで、本実施形態に係る放射線画像撮影システム100では、撮影回数を予め3回等に仮設定しておくのではなく、撮影回数が予め指定されていない状態としておく。そして、上記のようにして撮影回数が設定された時点で初めて、放射線画像撮影システム100の各装置や各手段に撮影回数が設定されるように構成することが好ましい。
そのため、例えば、図14に示したコンソール90の表示部91上の長尺撮影用の画面H3の例で言えば、撮影オーダー情報に対応するアイコンIAのうち長尺撮影に対応するアイコンIAlongを予め3つのアイコンIAを一括りの枠線でグループ化してフォーカス表示するのではなく、コンソール90は、長尺撮影に関する撮影オーダー情報が選択された時点では複数の放射線画像撮影が行われることを認識するのみとし、撮影回数設定手段として、算出された撮影回数に基づいて撮影回数を設定した時点で初めて、一括りの枠線でグループ化してフォーカス表示するアイコンIAlongの数を、設定された撮影回数に合わせて決定するように構成することが好ましい。
また、放射線画像p等のサムネイル画像ptを表示するためのサムネイル用表示スペースSbも予め3分割して表示するように構成するのではなく、上記のようにして撮影回数が設定された時点で初めて、サムネイル用表示スペースSbを分割する数が、設定された撮影回数に合わせて決定されるように構成することが好ましい。
[変形例2]
また、例えば長尺撮影中に患者が動くような場合がある。これは、例えば長尺撮影用の画面H3(図14参照)の表示スペースSaに表示されたプレビュー画像p_preが異常であったり、サムネイル用表示スペースSbに並んだ各プレビュー画像p_preや各放射線画像pのサムネイル画像のつながり方が異常であったりすることで、放射線技師等の操作者が判断することができる。
そして、このように長尺撮影中に患者が動く等して長尺撮影が異常になった場合には、長尺撮影における全ての放射線画像撮影を最初からやり直すように構成することが可能である。なお、この場合、例えば長尺撮影用の画面H3上に、図示しない「再撮影all」ボタンを設ける等して、長尺撮影における放射線画像撮影を全てやり直して再撮影を行うことを指示することができるように構成することが好ましい。
この場合、前述したように放射線技師等の操作者により「確定」ボタンB(図14参照)がクリックされていないので、当該長尺撮影で生成された放射線画像pは確定されておらず、当該長尺撮影は終了していない。そのため、この場合、取得された画像データDや算出された真の画像データD*、合成された長尺画像データDlong等のデータは全て削除され、最初の状態に戻って長尺撮影が再度行われる状態になる。
[変形例3]
上記の変形例3では、例えば長尺撮影中に患者が動いたような場合、取得された画像データD等を全て削除して、当該長尺撮影を最初からやり直す場合を示したが、例えば、長尺撮影における各放射線画像撮影のうちのいずれかの放射線画像撮影のみを再度行って新たな画像データDを取得すれば、全てをやり直さなくてもよい場合もある。
そこで、このように構成する場合には、例えば、長尺撮影用の画面H3上に、図示しない「再撮影」ボタンを設けておき、放射線技師等の操作者が「再撮影」ボタンをクリックした場合に、例えば何回目の放射線画像撮影をやり直すかを入力させるように構成することが可能である。また、例えば、操作者が「再撮影」ボタンをクリックし、サムネイル用表示スペースSb上に並んだ各画像のうち再撮影を行いたい画像をクリックすることで再撮影を行う放射線画像撮影を指示するように構成することも可能である。
この場合、上記のようにして指定された放射線画像撮影についてのみ、取得された画像データDや算出された真の画像データD*が削除される。また、長尺画像データDlongが合成されている場合には、長尺画像データDlongも削除される。そして、放射線画像撮影装置1や覆い板61が、指定された放射線画像撮影における位置に移動されて位置調節されて、当該放射線画像撮影が再度行われ、取得された画像データDに対する上記の処理が行われて、長尺画像データDlongが新たに合成される。
なお、この変形例3では、上記のように長尺撮影における全ての放射線画像撮影が終了し、長尺画像データDlongが合成される等した後ではなく、長尺撮影用の画面H3上にプレビュー画像p_pre(図14参照)が表示された時点で、再撮影が必要であると操作者が判断できる場合がある。
そのような場合に、例えば、長尺撮影用の画面H3上に表示されるプレビュー画像p_preをクリックしたり、サムネイル用表示スペースSb上に表示される当該プレビュー画像p_preのサムネイル画像をクリックすることで、より早急に長尺撮影における当該放射線画像撮影をやり直すように構成することも可能である。
[変形例4]
一方、例えば、長尺撮影を行っている間に患者が立っていられなくなる等して、長尺撮影自体が行えなくなる場合もある。そして、このような場合、上記のように設定された撮影回数の放射線画像撮影が行われないと当該長尺撮影が終了せず、いつまで経っても他の放射線画像撮影(すなわち例えば図7に示した選択画面H1における下側の3つの独立した撮影オーダー情報に対応する単独の放射線画像撮影)に移ることができないという事態に陥る。
そこで、このような場合には、長尺撮影を強制的に終了させることができるように構成されていることが望ましい。
長尺撮影を強制的に終了させる方法としては、例えば例えば、長尺撮影用の画面H3上に図示しない「中止」ボタンを設けておき、操作者が「中止」ボタンをクリックすることで長尺撮影を中止するように構成することが可能である。
この長尺撮影の「中止」の処理は、例えば、当該長尺撮影を一時的に中止する(すなわち後回しにする)レベルとするか、当該長尺撮影に関する撮影オーダー情報が選択画面H1で選択されなかった状態にする(撮影オーダーのリスト中には残す)レベルとするか、或いは、当該長尺撮影に関する撮影オーダー情報をそもそもHISにおける撮影オーダーのリストの中から削除してしまうレベルとするかは、種々に設定可能である。また、これらのいずれのレベルとするかを操作者に選択させるように構成することも可能である。
いずれの場合においても、操作者により例えば「中止」ボタンがクリックされて当該長尺撮影が中止されると、本実施形態では、コンソール90の表示部91上の表示が、長尺撮影用の画面H3(図14参照)から図16に示すような通常撮影用の画面H4に切り替わるようになっている。なお、図16では、長尺撮影が中止され、次の撮影オーダー情報(立位による胸部正面撮影)にフォーカス遷移した場合が示されている。長尺撮影が行われて終了した場合には、アイコンI1の部分に上記のようにして合成されて生成された放射線画像pが表示される。
図16に示すように、通常撮影用の画面H4には、選択画面H1(図7参照)で選択された各撮影オーダー情報に対応する各アイコンI(この場合は患者「A」に対応するアイコン)が表示される。また、画面H4の右側に表示されている照射条件の設定用の表示Ia上の各項目の「+」ボタンや「−」ボタンをクリックすると、放射線照射装置70の放射線源71の管電圧や管電流、照射時間等の照射条件を変更して設定することができるようになっている。
一方、本実施形態の通常撮影用の画面H4では、各アイコンI1〜I4は、何れか1つのアイコンI(図16の場合はアイコンI2)が目立つようにフォーカスされて表示されるようになっており、フォーカスされているアイコンIに対応する撮影オーダー情報に基づく撮影が行われるようになっている。そして、プレビュー画像p_preや生成された放射線画像pはフォーカスされているアイコンIの部分に表示されるようになっている。なお、アイコンIのフォーカス表示等については、本願出願人が先に提出した国際公開第2011/142157号パンフレットに詳しく説明されているので参照されたい。
また、本実施形態では、ある放射線画像撮影が終了(上記の中止の場合を含む。)すると、その時点における放射線画像撮影装置1や放射線源71等の現状から最も変化量が少ない状態(或いは放射線技師等の操作者の次の撮影に向けた作業量の少ない状態)で撮影を行うことができる放射線画像撮影に対応するアイコンIの位置にフォーカスが遷移するようになっている。
すなわち、例えば上記のようにして長尺撮影が終了した時点では、放射線画像撮影装置1は、放射線画像撮影装置1は撮影台50の装着部51(図1参照)に装着された状態で、図11や図12に示したいずれかの位置にある。本実施形態では、長尺撮影が中止されずに終了した場合には、放射線画像撮影装置1は図11や図12に示した最上段の位置にある。
そして、長尺撮影の終了後(中止された場合を含む。)に、放射線画像撮影装置1をそのまま上方に移動させれば、患者Aに対する「胸部正面」の放射線画像撮影を行うことができる。これは、放射線画像撮影装置1をさらに上昇させて「頚椎側面」の撮影を行ったり、当該放射線画像撮影装置1或いは別の放射線画像撮影装置1を臥位撮影用の撮影台(図示省略。図16のアイコンI4中のイメージ図参照)に装着して「腹部正面」の撮影を行う場合に比べて、長尺撮影の終了時点からの各装置等の変化量が最も少ない。
そこで、本実施形態では、コンソール90は、図16にアイコンI1で示される長尺撮影が終了或いは中止されると、その状態から最も少ない変化量で放射線画像撮影を行うことができる「胸部正面」の放射線画像撮影に対応するアイコンI2にフォーカスを遷移させる。
なお、本実施形態では、上記のようにコンソール90が自動的にフォーカスを遷移させて次の放射線画像撮影を設定するが、放射線技師等の操作者が、別の撮影オーダー情報に基づく撮影を行いたい場合には、その撮影オーダー情報に対応する他のアイコンIをクリックする等して操作することによって操作者がフォーカスを遷移させることができるようになっている。
また、本実施形態では、通常撮影用の画面H4の左側には、フォーカスして表示されているアイコンIに対応する撮影オーダー情報で指定された撮影部位が、操作者が一目で分かるように表した人体モデルIb上に表示されるようになっている。
[変形例5]
上記の変形例4では、長尺撮影用の撮影台50(図1参照)を用いて、例えば全下肢を撮影部位とした長尺撮影だけでなく、単独の撮影である「胸部正面」の撮影をも行う場合について説明した。しかし、病院等の施設によっては、長尺撮影用の撮影台50だけでなく、前述した臥位撮影用の撮影台や、立位撮影用の撮影台(図示省略。図16のアイコンI2、I3中のイメージ図参照)が備えられている場合も少なくない。
このように、施設内に種々の撮影台が存在するような状況で、図7の下側に示したように通常の単独の放射線画像撮影に対応する撮影オーダー情報と、複数回の放射線画像撮影を行って1回の撮影が完了する長尺撮影に対応する撮影オーダー情報とが選択されると、長尺撮影を構成する複数の放射線画像撮影で取得された各画像データD等の中に、別の単独の放射線画像撮影で取得された画像データD等が混入してしまう虞れがある。
そのため、本実施形態では、上記のように、長尺撮影用の画面H3(図14参照)において長尺撮影に関するアイコンIAlongが枠線で一括りにして表示したり、サムネイル用表示スペースSbを設けて長尺撮影以外の撮影で得られた画像データDが混入していないことを操作者が視認できるように構成している。
また、上記のように、変形例1では、設定された撮影回数に応じて長尺撮影用に一括りの枠線で表示するアイコンIAlongの数やサムネイル用表示スペースSbを分割する数を可変させる。これも、例えば、操作者が、設定された撮影回数が2回であるのに3回であると勘違いして、長尺撮影とは関係ない他の単独の撮影で取得された画像データD等を長尺画像データDlongに混入させてしまうことを防止することにもつながっている。
しかし、上記のように、病院等の施設内に種々の撮影台が存在するような状況では、長尺撮影を構成する複数の放射線画像撮影で取得された各画像データD等の中に、別の単独の放射線画像撮影で取得された画像データD等が混入してしまう虞れがより強くなる。まして、種々の撮影台が、同一の撮影室内に設けられているとは限らず、複数の撮影室に跨って設置されている場合もある。
このような場合には、変形例4で説明したコンソール90におけるアイコンのフォーカス機能を用いて整理しながら放射線画像撮影を行うことで、上記のような画像データDの混入の問題を回避することができる。
すなわち、例えば、放射線技師等の操作者は、図7に示したように、患者「A」に関する「全下肢」を撮影部位とする長尺撮影に関する撮影オーダー情報と、同じ患者「A」に関する3つの単独の放射線画像撮影に関する撮影オーダー情報とを選択したものとする。その際、上記の実施形態では、コンソール90の表示部91上の表示が、すぐに図14に示した長尺撮影用の画面H3や図8に示した仮設定画面H2に切り替わって長尺撮影を行う場合を示した。
しかし、ここで、上記のようにアイコンのフォーカス機能を作動させると、例えば放射線画像撮影装置1が長尺撮影用の撮影台50(図1参照)ではなく、それとは別の立位撮影用の撮影台に装着されていたとすると、放射線画像撮影装置1を立位撮影用の撮影台から取り出して長尺撮影用の撮影台50の装着部51に装着して長尺撮影を行うよりも、そのまま立位撮影用の撮影台を用いて、例えば「胸部正面」の撮影を行う方が、装置等の現状から最も少ない変化量で放射線画像撮影を行うことができる。
そのため、この場合は、操作者が選択画面H1上で例えば患者「A」に関する撮影オーダー情報を選択すると(図7参照)、コンソール90の表示部91上の表示は、長尺撮影用の画面H3(図14参照)や仮設定画面H2(図8参照)ではなく、図16に示した通常撮影用の画面H4に切り替わる。そして、長尺撮影ではなく、「胸部正面」の放射線画像撮影に対応するアイコンI2がフォーカスされて表示される。
すなわち、この状態では、次に行われる放射線画像撮影は、「胸部正面」の撮影が行われることを意味する。そして、この状態で放射線画像撮影が行われれば、患者「A」の「胸部正面」の放射線画像撮影が行われ、取得された画像データD等に基づいて放射線画像pが生成され、生成された放射線画像pが当該撮影オーダー情報に対応付けられて撮影が完了する。そのため、「胸部正面」の撮影で取得された画像データDが、長尺撮影で取得された画像データDや合成された長尺画像データDlongに混入することを的確に防止することが可能となる。
この場合、操作者がコンソール90を操作して表示部91上に長尺撮影用の画面H3(図14参照)や仮設定画面H2(図8参照)を表示させた場合には(すなわち長尺撮影を行うための操作を行った場合には)、「長尺撮影用の撮影台に放射線画像撮影装置を装着してください」等の表示を行ったり音声を発声する等して、操作者に告知するように構成することが望ましい。
[変形例6]
また、上記の実施形態や各変形例では、撮影室内に備えられた放射線画像撮影装置1は1機のみであることを前提として説明した。しかし、撮影室内に複数の放射線画像撮影装置1が備えられていたり持ち込まれたりする場合もある。
また、例えば、放射線照射装置70(図1参照)の放射線源71が、立位撮影用や臥位撮影用等の撮影台で共用されている場合がある。すなわち、例えば、撮影室内に長尺撮影用の撮影台50と立位撮影用の撮影台と臥位撮影用の撮影台が設けられている場合に、各撮影台に放射線源71がそれぞれ設けられているのではなく、例えば1つの放射線源71が設けられており、その位置や放射線の照射方向等を変えることで、共用して用いるように構成されている場合がある。
このような場合には、通常撮影用の画面H4(図16参照)で最初にフォーカスされるアイコンI、すなわち装置等の現状から最も少ない変化量で放射線画像撮影を行うことができる撮影オーダー情報に対応するアイコンIは、上記のような放射線画像撮影装置1が装着されている撮影台というよりも、寧ろ放射線照射装置70の放射線源71の位置や向きを変えずに、或いは放射線源71の位置や向きを変える変化量が最も少ない状態で撮影を行うことができる状態にある撮影オーダー情報に対応するアイコンIが選択される。
すなわち、例えば、長尺撮影用の撮影台50の装着部51と立位撮影用の撮影台のいずれにもそれぞれ放射線画像撮影装置1が装着されている場合、共用の放射線源71が立位撮影用の撮影台の方向を向いており、すぐに放射線を照射することができる状態にあるのであれば、長尺撮影を行うよりも立位撮影用の撮影台を用いた例えば「胸部正面」の撮影を行う方が、速やかに放射線画像撮影を行うことができる。
そのため、本実施形態のコンソール90では、このような場合、図16に示したように、長尺撮影に対応するアイコンI1よりも先に「胸部正面」を撮影する単独の撮影に対応するアイコンI2がフォーカスして表示される。
このように、撮影室内に複数の放射線画像撮影装置1が存在する場合でも、上記のようにアイコンIをフォーカスして撮影順を適切に設定して順番に撮影を行うことで、通常の単独の撮影で取得された画像データDが長尺撮影で取得された画像データDや合成された長尺画像データDlongに混入することを的確に防止することができる。
なお、この場合も、操作者がコンソール90を操作して長尺撮影を行うための操作を行った場合には、表示や音声等で長尺撮影用の撮影台50の装着部51に放射線画像撮影装置1を装着するように、操作者に告知するように構成することが望ましい。
また、上記のように撮影室内に複数の放射線画像撮影装置1が存在する場合、撮影に用いない放射線画像撮影装置1が撮影を行うことが可能な状態になっていると、撮影に用いられる他の放射線画像撮影装置1に対して照射された放射線が当該撮影に用いない放射線画像撮影装置1に届いてしまい、当該撮影に用いない放射線画像撮影装置1から異常な画像データDがコンソール90に送信される等して混乱を招く虞れがある。
そこで、上記のように撮影室内に複数の放射線画像撮影装置1が存在する場合には、例えばコンソール90から撮影に用いない放射線画像撮影装置1に対して、撮影を行うことができない省電力状態(すなわちいわゆるスリープ状態)に遷移するように信号を送るように構成することが望ましい。
[変形例7]
また、患者の重篤度によっては、一人の患者の撮影を二人の放射線技師で対応する場合がある。このような場合には、一人の放射線技師が撮影室101a内で患者に付き添い、もう一人の放射線技師が前室101bでコンソール90や放射線照射装置70の操作部72、曝射スイッチ73等の操作を行う役割分担とすることが多い。
この場合、撮影室101a内の覆い板ユニット60の操作と、前室101bにおけるコンソール90の操作をそれぞれ別人が行うので、両者の操作内容が異なる場合が想定される。すなわち、例えば、撮影室101a内の放射線技師は、患者が長尺撮影に耐えられない状態になったことを認識して直ちに撮影中止の判断を行うが、前室101bの放射線技師は、それに気付かずに撮影を継続する等の状況が生じ得る。
このような場合のように、両者が各装置に対して異なる内容の指示を入力、設定した場合には、放射線画像撮影システム100は、それ以降の動作には移行しないように構成することが好ましい。
この場合、撮影室101a内の放射線技師が患者に常時対峙しているので、撮影室101a内の放射線技師に例えば前述した携帯端末(図示省略)を携帯させ、撮影室101a内の放射線技師による携帯端末での指示を優先とし、当該携帯端末から撮影中止が入力された場合には、次の放射線画像撮影を即座に中止し、前室101b内の放射線技師が放射線を照射させようとしても照射できないように構成することが好ましい。
また、長尺撮影前に、長尺撮影において3回の放射線撮影を行うようにコンソール90で仮設定(図8参照)された後、撮影室101a内で覆い板ユニット60の制御部64により撮影回数が2.1回と算出された場合に、撮影室101a内の技師が携帯端末を通じて、例えば、被写体の領域ROIの上端部削除指示を入力し、この情報に基づき、コンソール90上に『被写体の領域ROIを狭めて2回撮影にするので、撮影回数を3回から2回に変更して下さい』等の主旨のメッセージを表示するように構成することも可能である。
このように構成すれば、コンソール90を操作する別の放射線技師が、グループ化されていた3回撮影を2回撮影に修正して、撮影状況に対応した正しい撮影回数の設定対応が可能となる。
また、本発明が上記の実施形態や変形例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
例えば、図9では、覆い板ユニット60の制御部64と撮影台50の制御部54との間で信号の送信等を直接行う場合を示したが、信号の送信等にコンソール90が介在するように構成することも可能であり、各装置や手段が本発明に係る機能を奏することが可能であれば、それらの構成は、上記の実施形態から適宜変更可能である。
また、長尺専用の撮影台50を設ける代わりに、例えば、胸部正面撮影等に用いられ昇降機能を有している既存の立位ブッキー装置(図示省略)を長尺撮影用に兼用するように構成されている場合にも、本発明を適用することが可能である。そして、この場合には、コンソール90経由で、或いはコンソール90および放射線照射装置70経由で、ブッキー装置に装着された放射線画像撮影装置1の上下方向の位置制御が行われることになる。