上述した袋体を芯材に取り付けるにあたっては、チューブ状に形成された袋体に芯材を挿通した上、該袋体の両端を絞って芯材に固定するが、加圧注入されたグラウト材が袋体の両端と芯材との間から漏出すると、袋体を膨張させることができず、結果として補強材挿入孔を押し拡げることができなくなる。
そのため、従来においては、鋼製の拘束バンドや番線で袋体の端部周縁近傍を芯材にしっかりと縛り付けることで、両者の水密性を確保していた(特許文献2)。
しかしながら、袋体の押し拡げ作用による地山への定着力を高めるべく、袋体内のグラウト圧を大きくすると、袋体の内圧上昇に伴って、袋体の端部周縁近傍を縛っていた拘束バンドや番線が緩み、結束箇所が芯材の材軸方向にずれたり、袋体が損傷したりするおそれがあるという問題を生じていた。
かかる問題は、緩みが生じた箇所や損傷箇所からグラウト材が漏出し、注入圧が低下して袋体を予定通りに膨張させることができないという事態を招く。
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、袋体の内圧が大きくなっても袋体端部からのグラウト材の漏出を防止可能な袋体固定具及びそれを用いた地山補強材を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る袋体固定具は請求項1に記載したように、チューブ状に形成された袋体の端部を該袋体に挿通配置された芯材に固定することでグラウト材が注入される内部空間が前記袋体に形成されるようになっている袋体固定具において、
筒状壁及びその内側に設けられた芯材挿通壁からなり該芯材挿通壁に前記芯材が挿通される芯材挿通孔が形成された第1の狭着部材と、該第1の狭着部材よりも前記袋体に近い側に配置され筒状壁及びその内側に設けられた芯材挿通壁からなり該芯材挿通壁に前記芯材が挿通される芯材挿通孔が形成された第2の狭着部材と、前記第1の狭着部材及び前記第2の狭着部材の間に配置された状態で前記芯材が挿通され前記袋体の端部周縁が内側に挿通される環状部材と、前記第1の狭着部材及び前記第2の狭着部材をそれらの芯材挿通孔に前記芯材が挿通された状態でかつその材軸に沿って相対的に引寄せ自在な引寄せ機構とを備え、前記第1の狭着部材、前記第2の狭着部材及び前記環状部材を、該第1の狭着部材の筒状壁と前記環状部材の一端及び該環状部材の他端と前記第2の狭着部材の筒状壁が前記袋体の端部周縁を介してそれぞれ互いに当接されるように構成するとともに、前記筒状壁及び前記芯材挿通壁で囲まれた空間をパテ状接着剤が充填される充填空間としたものである。
また、本発明に係る袋体固定具は、前記引寄せ機構を、前記第1の狭着部材及び前記第2の狭着部材の一方から延びる雄ネジと、該雄ネジに螺合され前記第1の狭着部材及び前記第2の狭着部材の他方に配置又は形成される雌ネジとで構成したものである。
また、本発明に係る袋体固定具は、前記雄ネジをボルトで構成して該ボルトが挿通されるボルト挿通孔を前記第1の狭着部材及び前記第2の狭着部材のいずれか一方の筒状壁に形成するとともに、前記ボルトがねじ込まれる雌ネジ孔を前記雌ネジとして他方の筒状壁に形成したものである。
また、本発明に係る袋体固定具は、前記各芯材挿通壁を前記各筒状壁の一端にそれぞれ設けるとともに、該各筒状壁の他端を前記環状部材との当接部位としたものである。
また、本発明に係る袋体固定具は、前記袋体の端部周縁における折返し部を前記環状部材の外周面に当接された状態で該環状部材に巻き付けることができるように構成された拘束バンドを備えたものである。
また、本発明に係る袋体固定具は、グラウト注入パイプが挿通されるパイプ挿通孔を前記芯材挿通壁に設けたものである。
また、本発明に係る地山補強材は請求項7に記載したように、請求項1乃至請求項6のいずれか一記載の袋体固定具が固定対象とする前記芯材をPC鋼より線としたものである。
また、本発明に係る地山補強材は、前記PC鋼より線のうち、前記第1の狭着部材から延びる先端露出部分を芯材被覆用キャップで被覆したものである。
本発明に係る袋体固定具を用いて袋体の端部を芯材に固定するには、まず、第1の狭着部材及び第2の狭着部材のうち、いずれか一方、例えば第2の狭着部材を構成する芯材挿通壁に形成された芯材挿通孔に芯材を挿通する。
このとき、他方の部材、上述の例では第1の狭着部材や、該第1の狭着部材と第2の狭着部材との間に配置される環状部材については、第2の狭着部材とともに予め芯材に挿通しておいてもよいし、後工程との関係で問題がなければ、第2の狭着部材を芯材に固着した後で芯材に挿通するようにしてもよい。また、袋体の両端を本発明に係る袋体固定具でそれぞれ芯材に固定する場合には、一組目の第1の狭着部材、第2の狭着部材及び環状部材と二組目の第1の狭着部材、第2の狭着部材及び環状部材をまとめて芯材に挿通するようにしてもよいし、芯材への挿通に支障がないのであれば、以下に述べる一組目の固定作業が終わってから、二組目の第1の狭着部材、第2の狭着部材及び環状部材を芯材に挿通するようにしてもよい。
次に、第1の狭着部材及び第2の狭着部材のうち、芯材が挿通された狭着部材、上述の例では第2の狭着部材を芯材の所定箇所に位置決めした後、その筒状壁及び芯材挿通壁で囲まれた空間を充填空間としてパテ状接着剤を充填する。
パテ状接着剤は、硬化した後、上述の例で言えば第2の狭着部材が芯材に強固に固着されるように、芯材の周囲に埋め込む。
次に、第1の狭着部材及び第2の狭着部材のうちの一方、上記の例で言えば第2の狭着部材の材軸が芯材の材軸と平行になるように必要に応じて適宜仮固定し、かかる状態で第2の狭着部材を静置してパテ状接着剤を硬化させる。
次に、袋体の端部周縁を環状部材の内側に挿通する。かかる作業中は、必要に応じて第1の狭着部材及び第2の狭着部材のうちの他方を一方からあるいは環状部材から適宜退避させておくことができる。
次に、第1の狭着部材及び第2の狭着部材のうちの他方、例えば第1の狭着部材の筒状壁及び芯材挿通壁で囲まれた空間を充填空間としてパテ状接着剤を充填する。パテ状接着剤は、引寄せ作業後の硬化過程で上記の例で言えば第1の狭着部材が芯材に強固に固着されるように、芯材の周囲に埋め込む。
次に、かかるパテ状接着剤が硬化するまでの間に引寄せ機構を用いて第1の狭着部材及び第2の狭着部材を相対的に引き寄せる。
このようにすると、第1の狭着部材及び第2の狭着部材のうちの一方、例えば第2の狭着部材がパテ状接着剤を介して芯材に先行固着されており、それらのうちの他方、例えば第1の狭着部材についてはパテ状接着剤が未だ硬化していないため、上記の例で言えば、第1の狭着部材が第2の狭着部材を反力体として該第2の狭着部材の側に引き寄せられ、第1の狭着部材の筒状壁と環状部材の一端、及び環状部材の他端と第2の狭着部材の筒状壁は、袋体の端部周縁を介してそれぞれ互いに当接する。
次に、第1の狭着部材及び第2の狭着部材のうちの他方、例えば第1の狭着部材に充填されたパテ状接着剤が硬化するまで静置する。
このようにして組み立てられた地山補強材は、地山に形成された補強材挿入孔に挿入された後、袋体の周面が補強材挿入孔に当接されるように該袋体の内部空間にグラウト材が注入されるとともに、そのときのグラウト材の内圧によって袋体が膨張するが、本発明に係る袋体固定具及びそれを用いた地山補強材においては、袋体の端部周縁は、第2の狭着部材の側から環状部材の内側を経て第1の狭着部材の側に延びており、あるいは折り返された状態で第1の狭着部材の側から環状部材の内側を経て第2の狭着部材の側に延びているとともに、第1の狭着部材及び第2の狭着部材は、引寄せ機構を介して互いに引き寄せてある。
そのため、袋体の端部周縁は、第1の狭着部材の筒状壁と環状部材の一端、及び環状部材の他端と第2の狭着部材の筒状壁の間にそれぞれ狭着されることとなり、かくして袋体の端部は、これら第1の狭着部材、第2の狭着部材及び環状部材を介して芯材にしっかりと固定される。
また、第2の狭着部材によって環状部材が常に第1の狭着部材に押し付けられた状態となるため、袋体の内圧がゼロ又は小さい場合であっても、袋体の端部と芯材との固定が緩むおそれがなくなり、かくしてグラウト注入開始前後におけるグラウト材の漏出が未然に防止される。
また、袋体の端部周縁が第2の狭着部材の側から環状部材の内側を経て第1の狭着部材の側に延びる配置とした場合においては、上述したグラウト材の注入による袋体の内圧上昇によって該袋体が膨張したとき、袋体の端部周縁が拡がって環状部材が外側に移動しようとするが、第1の狭着部材がパテ状接着剤を介して芯材に固着されているので、環状部材は、第1の狭着部材から反力を受ける形でその移動が制限される。
したがって、袋体の端部周縁は、環状部材と第1の狭着部材との間にさらに強固に狭着されることとなり、かくして袋体の内圧上昇によって該袋体の端部と芯材との固定が外れ、あるいはそれに起因して袋体の端部が損傷し、それらが原因でグラウト材が漏出するおそれがなくなる。
パテ状接着剤は、エポキシパテや金属パテといった造形可能な接着剤、すなわち硬化前であれば形状を自由に整えることができるものであれば、例えば市販の接着剤から任意に選択することが可能である。
引寄せ機構は、第1の狭着部材及び第2の狭着部材を芯材の材軸に沿って相対的に引き寄せることができるのであれば、その構成は任意であるが、例えば、第1の狭着部材及び第2の狭着部材のいずれか一方から延びる雄ネジと、該雄ネジに螺合され第1の狭着部材及び第2の狭着部材の他方に配置又は形成される雌ネジとで構成することができる。
この場合、雄ネジを、その基端側が第1の狭着部材及び第2の狭着部材の一方に固着された構成とするとともに、該雄ネジが挿通される挿通孔を第1の狭着部材及び第2の狭着部材の他方に形成し、その先端に螺着されるナット部材で雌ネジを構成する、雄ネジを、第1の狭着部材及び第2の狭着部材の一方に設けられたボルト挿通孔に挿通されるボルトで構成するとともに、該ボルトが挿通されるボルト挿通孔を第1の狭着部材及び第2の狭着部材の他方に形成し、その先端に螺着されるナット部材で雌ネジを構成する、雄ネジを、第1の狭着部材及び第2の狭着部材の一方に形成されたボルト挿通孔に挿通可能なボルトで構成するとともに、該ボルトがねじ込まれる雌ネジ孔を第1の狭着部材及び第2の狭着部材の他方に形成してこれを雌ネジとするようにすれば、部材点数を少なくすることができる。
ここで、上述した挿通孔や雌ネジ孔は、芯材挿通壁に設けるようにしてもよいが、筒状壁の壁断面内に設けるようにすれば、筒状壁の内部空間に雄ネジが露出しなくなるため、筒状壁の内部空間をすべてパテ状接着剤の充填空間として利用することが可能となり、充填作業性が向上する。
第1の狭着部材や第2の狭着部材の芯材挿通壁は、該芯材挿通壁に形成された芯材挿通孔に芯材を挿通することで芯材に対する第1の狭着部材や第2の狭着部材の位置決めが可能となる限り、どのように構成するかは任意であり、筒状壁の一端に底部として設けてもよいし、筒状壁の中間位置に隔壁として設けて筒状壁の内部空間を仕切るようにしてもよい。なお、前者の場合、第1の狭着部材や第2の狭着部材は有底筒状部材となる。
第1の狭着部材や第2の狭着部材の筒状壁は、その内周面と芯材の周面との間にパテ状接着剤が充填される充填空間を形成することができるのであれば、その構成は任意であって、例えば円筒壁で形成することができる。
第1の狭着部材及び第2の狭着部材の配置構成は、それらの対向面が環状部材の一端及び他端とそれぞれ袋体の端部周縁を介して互いに当接できるように構成すればよいのであって、第1の狭着部材や第2の狭着部材の各芯材挿通壁が対向側にくるかその反対側にくるかは任意であるが、前記各芯材挿通壁を前記各筒状壁の一端にそれぞれ設けるとともに、該各筒状壁の他端を前記環状部材との当接部位としたならば、第1の狭着部材及び第2の狭着部材の各充填空間がそれらの間に拡がる空間を介して一体となるため、より多くのパテ状接着剤を用いることが可能となり、芯材への固着強度をさらに高めることができるとともに、第1の狭着部材及び第2の狭着部材を相対的に引き寄せる際、充填空間に充填したパテ状接着剤を芯材挿通壁で押し込むようにすることができるため、引寄せ時の作業性が向上する。
袋体の端部周縁が折り返された状態で第1の狭着部材の側から環状部材の内側を経て第2の狭着部材の側に延びる配置とする場合において、袋体の端部周縁における折返し部を環状部材の外周面に当接された状態で該環状部材に巻き付けることができるように構成された拘束バンドを備えるようにしたならば、上述したグラウト材の注入による袋体の内圧上昇によって該袋体が膨張したとき、拘束バンドによって袋体の端部周縁と一体になった環状部材が該袋体の端部周縁とともに外側に移動しようとするが、第1の狭着部材がパテ状接着剤を介して芯材に固着されているので、環状部材は、第1の狭着部材から反力を受ける形でその移動が制限される。
したがって、袋体の端部周縁は、環状部材と第1の狭着部材との間にさらに強固に狭着されることとなり、かくして袋体の内圧上昇によって該袋体の端部と芯材との固定が外れ、あるいはそれに起因して袋体の端部が損傷し、それらが原因でグラウト材が漏出するおそれがなくなる。
本発明に係る袋体固定具は、袋体にグラウト材を注入するためのグラウト注入パイプを芯材と兼用する場合及び個別に設ける場合のいずれについても適用が可能であるが、後者の場合においては、グラウト注入パイプが挿通されるパイプ挿通孔を前記芯材挿通壁に設けた構成とすればよい。
本発明に係る袋体固定具を用いた地山補強材において、芯材とグラウト注入パイプとを個別に設ける場合には、芯材を特にPC鋼より線とすることが可能であり、かかる構成によれば、PC鋼より線の引張強度特性を十分に発揮させた地山補強が可能となる。
ここで、前記PC鋼より線のうち、前記第1の狭着部材から延びる先端露出部分を芯材被覆用キャップで被覆した構成とすれば、PC鋼より線の隙間からグラウト材が漏出するのを未然に防止することができる。
以下、本発明に係る袋体固定具及びそれを用いた地山補強材の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る袋体固定具を用いて組み立てた地山補強材の全体図及び配置図である。本実施形態に係る地山補強材1は同図(a)に示すように、チューブ状に形成された袋体3の両端部を該袋体に挿通配置されたPC鋼より線である芯材2に袋体固定具6,6を介してそれぞれ固定することにより、該袋体の内部に内部空間4が形成されるようになっているとともに、同図(b)に示すように、地山8に形成された補強材挿入孔7に挿入された状態で袋体3の内部空間4にグラウト材を注入することにより、該袋体を膨張させて補強材挿入孔7を押し拡げることができるようになっている。
袋体固定具6は図2及び図3に示すように、第1の狭着部材としての狭着部材11、第2の狭着部材としての狭着部材12、それらの間に配置される環状部材13及び引寄せ機構としての4本のボルト14で構成してある。
狭着部材11は、ほぼ円筒状をなす筒状壁15及びその一端の内側に設けられた芯材挿通壁としての底部16からなるとともに、該底部に芯材2が挿通される芯材挿通孔17を形成してあり、筒状壁15の壁断面には、該筒状壁の材軸に沿ってボルト14が挿通されるボルト挿通孔26を芯材挿通孔17を挟んで2本ずつ計4本形成してある。
狭着部材12は、ほぼ円筒状をなす筒状壁18及びその一端の内側に設けられた芯材挿通壁としての底部19からなるとともに、該底部に芯材2が挿通される芯材挿通孔20を形成してあり、筒状壁18の壁断面には、該筒状壁の材軸に沿ってボルト14の先端がねじ込まれる雌ネジ孔21を計4本形成してある。
環状部材13は、狭着部材11及び狭着部材12の間に配置された状態で芯材2が挿通されるようになっており、その一端周縁には、狭着部材11を構成する筒状壁15の他端周縁に形成されたテーパ状の当接面22に袋体3の端部周縁を介して当接されるテーパ状の当接面23を形成してあるとともに、他端周縁には、狭着部材12を構成する筒状壁18の他端周縁に形成されたテーパ状の当接面24に袋体3の端部周縁を介して当接されるテーパ状の当接面25を形成してある。
ボルト14は、狭着部材11及び狭着部材12がそれらの他端側、すなわちテーパ面22,24が形成された側を環状部材13を挟んだ形で互いに対向するように配置された状態において、狭着部材11のボルト挿通孔26に挿通された上、その先端が狭着部材12の雌ネジ孔21にねじ込まれることで、該狭着部材及び狭着部材を芯材2の材軸に沿って相対的に引き寄せることができるようになっている。
ここで、狭着部材11には、筒状壁15及び底部16で囲まれた内部空間のうち、芯材2が挿通されたときの該芯材の周面と筒状壁15の内周面との間にパテ状接着剤が充填される充填空間27を形成してあるとともに、狭着部材12には、筒状壁18及び底部19で囲まれた内部空間のうち、芯材2が挿通されたときの該芯材の周面と筒状壁18の内周面との間にパテ状接着剤が充填される充填空間28を形成してある。
本実施形態に係る袋体固定具6を用いて袋体3の端部を芯材2に固定するには、まず図4に示すように、袋体固定具6,6を、狭着部材11,11が互いに遠い側となる対称配置となるように、芯材2の先端、同図では左側から順次、一組ずつ該芯材に挿通する。なお、袋体固定具6,6の各固定手順は、対称配置であることに起因する相違を除き、両者同様であるので、以下、芯材2の先端に近い側の袋体固定具6についてのみ説明を行い、芯材2の先端から遠い側の袋体固定具6については説明を省略する。
次に、図5に示すように、狭着部材12を、底部19に形成された芯材挿通孔20に芯材2が挿通された状態で該芯材の所定箇所に位置決めし、しかる後、充填空間28にパテ状接着剤51を充填する。
パテ状接着剤は、硬化した後、狭着部材12が芯材2に強固に固着されるように、該芯材の周囲に均等に埋め込む。パテ状接着剤は例えば金属パテを使用することができる。
次に、狭着部材12の材軸が芯材2の材軸と平行になるように、必要に応じて適宜仮固定し、かかる状態で狭着部材12を静置してパテ状接着剤51を硬化させる。仮固定の方法としては例えば、図4の状態において、ボルト14を狭着部材11のボルト挿通孔26に挿通した上、その先端を狭着部材12の雌ネジ孔21に軽くねじ込む方法を採用することができる。
次に図6に示すように、袋体3をその端部周縁61が狭着部材12を包囲するように該袋体を位置決めした後、かかる状態から袋体3の端部周縁61を環状部材13の内側に挿通する。
かかる作業中、狭着部材11が袋体3の挿通作業の邪魔になるようであれば、該狭着部材を狭着部材12あるいは環状部材13から一時的に退避させておけばよい。
次に、狭着部材11の充填空間27にパテ状接着剤51を充填する。パテ状接着剤51は、後述する引寄せ作業後の硬化過程で、狭着部材11が芯材2に強固に固着されるように、芯材2の周囲に均等に埋め込む。
次に、パテ状接着剤51が硬化するまでの間に、図7に示すように、ボルト14を狭着部材11のボルト挿通孔26に挿通した上、環状部材13の内部空間を経て、該ボルトの先端を狭着部材12の雌ネジ孔21に到達させ、これを該雌ネジ孔にねじ込む。
このようにすると、狭着部材12がパテ状接着剤51を介して芯材2に先行固着されており、狭着部材11についてはパテ状接着剤51が未だ硬化していないため、狭着部材11は、同図矢印で示すように狭着部材12を反力体として該狭着部材の側に引き寄せられ、狭着部材11を構成する筒状壁15の他端周縁に形成されたテーパ状の当接面22と環状部材13の一端周縁に形成されたテーパ状の当接面23、及び狭着部材12を構成する筒状壁18の他端周縁に形成されたテーパ状の当接面24と環状部材13の他端周縁に形成されたテーパ状の当接面25は、袋体3の端部周縁61を介してそれぞれ互いに当接する。
次に、狭着部材22に充填されたパテ状接着剤51が硬化するまで静置する。
このようにして組み立てられた地山補強材1は、図1で説明した地山8に形成された補強材挿入孔7に挿入された後、袋体3の周面が補強材挿入孔7に当接されるように該袋体の内部空間4にグラウト材が注入されるとともに、そのときのグラウト材の内圧によって袋体3が膨張するが、袋体固定具6及びそれを用いた地山補強材1においては、袋体3の端部周縁61は、狭着部材12の周囲から環状部材13の内部空間を経て狭着部材11の周囲に延びているとともに、狭着部材12及び狭着部材11は、ボルト14を介して相対的に引き寄せてある。
そのため、袋体3の端部周縁61は、狭着部材11と環状部材13の一端との間、及び環状部材13の他端と狭着部材12との間にそれぞれ狭着される。
また、上述したグラウト材の注入による袋体3の内圧上昇によって該袋体がさらに膨張したとき、袋体3の端部周縁61が拡がろうとして環状部材13が外側、図7で言えば左方向に移動しようとするが、狭着部材11がパテ状接着剤を介して芯材2に固着されているので、環状部材13は、狭着部材11から反力を受ける形で、その移動が制限される。
一方、環状部材13は、狭着部材11,12に常に押し付けられた状態となるため、袋体3の内圧がゼロ又は小さい場合であっても、袋体3の端部と芯材2との固定が緩むおそれはない。
以上説明したように、本実施形態に係る袋体固定具6及びそれを用いた地山補強材1によれば、袋体3の端部周縁61が、狭着部材11と環状部材13の一端との間、及び環状部材13の他端と狭着部材12との間にそれぞれ狭着されるため、袋体3の端部は、狭着部材11、狭着部材12及び環状部材13を介して芯材2にしっかりと固定されることとなり、注入されたグラウト材が袋体3の外に漏出するおそれがなくなる。
また、グラウト材の注入による袋体3の内圧上昇によって該袋体がさらに膨張したとき、袋体3の端部周縁61が拡がろうとすることに起因する環状部材13の外側への移動(図7で言えば左方向への移動)が狭着部材11によって制限されるため、袋体3の端部周縁61は、環状部材13と狭着部材11との間にさらに強固に狭着されることとなり、かくして袋体3の内圧上昇によって該袋体の端部と芯材2との固定が外れ、あるいはそれに起因して袋体3の端部が損傷し、それらが原因でグラウト材が漏出するおそれがなくなる。
加えて、狭着部材12によって環状部材13が常に狭着部材11に押し付けられた状態となるため、袋体3の内圧がゼロ又は小さい場合であっても、袋体3の端部と芯材2との固定が緩むおそれがなくなり、かくしてグラウト注入開始前後におけるグラウト材の漏出を未然に防止することも可能となる。
また、本実施形態に係る袋体固定具6及びそれを用いた地山補強材1によれば、芯材挿通壁である底部16,19を筒状壁15,18の一端にそれぞれ設けるとともに、該各筒状壁の他端周縁に環状部材13と当接する当接面22,24を設けるようにしたので、狭着部材11及び狭着部材12の各充填空間27,28がそれらの間に拡がる空間を介して一体となる。
そのため、より多くのパテ状接着剤を用いることが可能となり、芯材2への固着強度をさらに高めることができるとともに、狭着部材11及び狭着部材12を相対的に引き寄せる際、充填空間27に充填したパテ状接着剤51を底部16で押し込むようにすることができるため、引寄せ時の作業性が向上する。
図8は、狭着部材11及び狭着部材12の各充填空間27,28の間に拡がる空間にもパテ状接着剤81を充填した様子を示したものであり、かかる充填形態においては、袋体3の端部周縁61背後にパテ状接着剤81が充填されることとなり、袋体3からのグラウト材の漏出をさらに確実に防止することも可能となる。
また、本実施形態に係る地山補強材1によれば、狭着部材11及び狭着部材12をパテ状接着剤51を介して芯材2に接着するようにしたので、PC鋼より線である芯材2の引張強度特性を十分に発揮させた地山補強が可能となる。
本実施形態では、図2で示したように狭着部材11の筒状壁15や狭着部材12の筒状壁18を、それらの他端開口が正面から見て楕円形状になるようにそれぞれ構成したが、パテ状接着剤51を充填する際に支障がないのであれば、楕円形状に代えて円筒形状としてもかまわない。
この場合、筒状壁15,18の内周面と芯材2の周面との間に拡がるパテ状接着剤の充填空間が小さくなるため、パテ状接着剤の使用量を節約することが可能となる。
また、本実施形態では、狭着部材12が袋体3に近い側となり、狭着部材11が袋体3から遠い側となるように芯材2に挿通配置したが、これらを逆に配置してもかまわない。なお、かかる変形例においては、狭着部材11と同一構成のものが第2の狭着部材、狭着部材12と同一構成のものが第1の狭着部材となる。
また、本実施形態では、袋体3の端部周縁61が、袋体3に近い側に配置された狭着部材12の側から環状部材13の内部空間を経て、袋体3から遠い側に配置された狭着部材11の側へと延びるように、該端部周縁を環状部材13に挿通するようにしたが、これに代えて図9に示すように、狭着部材11と同じ構成の狭着部材11aを第2の狭着部材として袋体3に近い側に、狭着部材12と同じ構成の狭着部材12aを第1の狭着部材として袋体3から遠い側にそれぞれ芯材2に挿通し、袋体3の端部周縁61が折り返された状態で狭着部材12aの側から環状部材13の内部空間を経て狭着部材11aの側へと延びるように、該端部周縁を環状部材13に挿通するようにしてもよい。
かかる構成においても、袋体3の端部周縁61が、狭着部材11aと環状部材13の一端との間、及び環状部材13の他端と狭着部材12aとの間にそれぞれ狭着されるとともに、それによってグラウト材の漏出が防止される点や、環状部材13が狭着部材11a,12aに常に押し付けられることによって、グラウト注入開始直後におけるグラウト材の漏出が防止される点は上述した実施形態と同様である。
加えて、かかる変形例によれば、グラウト材を注入したときの袋体3の膨張面を、芯材2の先端により近い場所まで延ばし、それによって地山8に形成された補強材挿入孔7に当接する袋体3の面積を増加させることが可能となり、かくして地山補強材1による補強作用を高めることができる。
なお、上記変形例においては、図5〜図7で説明した本実施形態の組立手順とは左右が逆になり、狭着部材11a、環状部材13及び狭着部材12aを心材2に順次挿通した後、狭着部材12aをパテ状接着剤で芯材2に先行固着し、次いで、袋体3を予め裏返した状態でその端部周縁61が狭着部材12aの側から狭着部材11aへと延びるように該端部周縁を環状部材13に挿通し、次いで、狭着部材11aを環状部材13に押し付け、かかる状態でボルト14で狭着部材11aを狭着部材12aに引き寄せ、最後に、裏返されている袋体3を元に戻すという手順になる。
ここで、図10に示すように、袋体3の端部周縁61における折返し部72を環状部材13の外周面に当接し、かかる状態で該折返し部を拘束バンド73で環状部材13に巻き付けるようにしたならば、上述したグラウト材の注入による袋体3の内圧上昇によって該袋体が膨張したとき、拘束バンド73によって袋体3の端部周縁61と一体になった環状部材13が該袋体の端部周縁とともに図10で言えば左方向に外側に移動しようとするが、狭着部材12aが芯材2に固着されているので、環状部材13は、狭着部材12aから反力を受ける形で、その移動が制限される。
したがって、袋体3の端部周縁61は、環状部材13と狭着部材12aとの間にさらに強固に狭着されることとなり、かくして上述の実施形態と同様、袋体3の内圧上昇によって該袋体の端部と芯材2との固定が外れ、あるいはそれに起因して袋体3の端部が損傷し、それらが原因でグラウト材が漏出するおそれがなくなる。
また、本実施形態では、袋体3に形成された内部空間4へのグラウト材注入について詳細に説明しなかったが、グラウト注入パイプが挿通されるパイプ挿通孔を芯材挿通壁に設けるようにしてもかまわない。
図11は、かかる変形例を芯材2の先端から遠い側の袋体固定具6bに適用した例を示したものであり、袋体固定具6bは、第1の狭着部材としての狭着部材11b、第2の狭着部材としての狭着部材12b、それらの間に配置される環状部材13及び引寄せ機構としての4本のボルト14で構成してある。
狭着部材11bは、ほぼ円筒状をなす筒状壁15及びその一端の内側に設けられた芯材挿通壁としての底部16からなるとともに、該底部に芯材2が挿通される芯材挿通孔17とグラウト注入パイプ81が挿通されるパイプ挿通孔83をそれぞれ形成してあり、筒状壁15の壁断面には、該筒状壁の材軸に沿ってボルト14が挿通されるボルト挿通孔26を芯材挿通孔17及びパイプ挿通孔83を挟んで2本ずつ計4本形成してある。
狭着部材12bは、ほぼ円筒状をなす筒状壁18及びその一端の内側に設けられた芯材挿通壁としての底部19からなるとともに、該底部に芯材2が挿通される芯材挿通孔20とグラウト注入パイプ81が挿通されるパイプ挿通孔82をそれぞれ形成してあり、筒状壁18の壁断面には、該筒状壁の材軸に沿ってボルト14の先端がねじ込まれる雌ネジ孔21を計4本形成してある。
以下、狭着部材11bの底部16には芯材挿通孔17及びパイプ挿通孔83を形成してあるとともに、狭着部材12bの底部19には芯材挿通孔20及びパイプ挿通孔82を形成してある点を除き、狭着部材11bが狭着部材11に、狭着部材12bが狭着部材12にそれぞれ対応するので、詳細な説明については省略する。
また、本実施形態では特に言及しなかったが、図12に示すように、芯材2のうち、狭着部材11から延びる先端露出部分に芯材被覆用キャップ101を被覆するようにしてもよい。
同図に示した芯材被覆用キャップ101は有底円筒状をなすとともに、その内面に形成された雌ネジ104を狭着部材11の一端に形成された雄ネジ102に螺合することにより、芯材2の先端露出部分を水密に覆うことができるようになっている。
芯材2は、複数本のPC鋼線を撚り合わせてなるものであって、かかるPC鋼線同士には隙間が形成されており、グラウト材の粘性その他の状況によっては、PC鋼線同士の隙間からグラウト材がわずかに漏出する懸念があるが、上述の変形例によれば、かかる場合であっても、グラウト材の漏出を完全に防止することが可能となる。