JP5822253B2 - 金属含有液の処理方法 - Google Patents
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Description
また、重金属を含有する水溶液とアミノ酸を固定化した高分子成型体とを接触させて重金属イオンを除去する方法があり、高分子成型体にアミノ酸を固定化する手段として放射線グラフト重合を利用する方法、高分子成型体として短繊維、長繊維、その集合体である織布、不織布、あるいはその加工品を利用する方法(特許文献2参照)等が提案されている。
EDTAを導入した絹繊維等の高分子素材は、金属イオンを効率的に吸着する特性に着目すると、重金属イオン等を含む水溶液から有害金属を吸着して除去する素材として利用することが可能であると考えられる。
また、前記金属含有液は、CuとCdとZnとを含有し、前記吸着工程において、前記高分子吸着材にCuを選択的に吸着させることを特徴とする。
また、前記金属含有液は、CuとCdとPbとを含有し、前記吸着工程において、前記高分子吸着材にCuとPbを選択的に吸着させることを特徴とする。
なお、本明細書において、金属含有液とは、金属イオンを含む水溶液のみならず有機溶媒をも含む意である。
また、前記吸着工程の後工程として、金属イオンを吸着した高分子吸着材を金属含有液から取り出し、高分子吸着材に硝酸、酢酸、塩酸、硫酸のいずれかを接触させて高分子吸着材に吸着された金属イオンを脱離させる脱離工程を備えることにより、金属イオンを選択的に濃縮したり回収させたり、あるいは高分子吸着材をリサイクルして使用することができる。
これら絹糸、羊毛からなる高分子素材をEDTA2塩基酸無水物により化学加工することによって、金属イオンの配位基となるEDTAが導入された高分子吸着材が得られる。
絹タンパク質繊維から絹フィブロイン水溶液を調製するための原料としては、家蚕又は野蚕由来の繭糸もしくは生糸が用いられる。家蚕生糸を炭酸ナトリウム等のアルカリ水溶液で煮沸し、繭糸もしくは生糸表面にある膠状の接着物質、セリシンを除去して調製できる絹フィブロイン繊維を中性塩で溶解し、セルロース製の透析膜で十分透析することにより純粋な絹フィブロイン水溶液を調製できる。この絹フィブロイン水溶液をポリエチレン膜等の基質膜上で乾燥固化させると透明な絹フィブロイン膜ができる。更に、絹フィブロイン水溶液にメタノール、あるいはエタノールを微量に添加し、あるいは酢酸、塩酸、硫酸のいずれかを微量に添加して絹フィブロイン分子を凝集させた後、乾燥固化することで多孔質体、ブロック状あるいはゲル状物を製造できる。本願発明では、上記記載の絹フィブロイン膜、多孔質体、ブロック状物およびゲル状物も高分子吸着材として同様に利用できる。
絹タンパク質繊維は臭化リチウムの濃厚溶液で溶解できる。これをセルロース透析膜に入れて純水と置換することで絹フィブロイン水溶液が調製できる。この水溶液は、混合水溶液の蒸発速度や調製条件を変えることによって、膜状にも、多孔質体状にも、ブロック状にも、粉末状にも、ゲル状その他にも形成できる。
まず、EDTA2塩基酸無水物をジメチルスルホキシドあるいは、N,.N'-ジメチルホルムアミド等の有機溶媒に溶解させ、タンパク質繊維をこの溶液系に浸漬させ、60−80℃の温度で1時間−5時間反応させるとよい。タンパク質繊維に導入できるEDTA量はEDTA2塩基酸無水物濃度、反応温度、あるいは反応時間の組み合わせで制御できる。反応温度が低い場合には反応時間を長めに設定する必要があるし、反応温度が高すぎると反応が早すぎるためEDTA導入量が制御しにくい。またEDTA2塩基酸無水物による化学加工による加工率は、吸着材のアルギニン、ヒスチジン、リジン等の塩基性アミノ酸が反応拠点であるため素材に含まれる反応拠点の量により決まる。羊毛には家蚕絹糸よりも反応拠点が多く含まれるため、EDTA2塩基酸無水物による好ましい化学加工の反応条件は、同一濃度のEDTA2塩基酸無水物を用いる場合では、家蚕絹糸では75℃、2−4時間、羊毛では75℃、1−2時間である。
3種類の金属イオン(Pb、Cd、Zn)を同時に含む精製水溶液(混合金属イオン水溶液という)に、未加工の絹糸(B-cont)と、EDTA 2塩基酸無水物を用いて化学加工した絹糸(B-EDTA)(加工率10.4%)を浸漬し、未加工の絹糸と、化学加工した絹糸に吸着される金属イオン量をICP分析により測定した。
金属イオン(Pb、Cd、Zn)のイオン濃度を3mMに調整し3種類の金属イオンを同時に含む混合金属イオン水溶液のpHを1N硝酸とアンモニア水を用いて2.5、4.0、5.5に調整した。
試料に吸着された金属イオンの含量は、金属イオンを吸着した絹糸に69%硝酸を入れ、150℃にセットしたホットプレート式加熱装置で絹糸を完全に加水分解(酸処理ともいう)した後、上澄み液に含まれる金属イオン量をICP分析により計測して算出した。
表1と表2の測定結果を比較して特徴的な点は、Pb、Cd、Znが単独で存在する金属イオン水溶液ではEDTAを導入した絹糸は、いずれもB-contと比較して金属イオンを吸着する作用が増大するのに対して、Pb、Cd、Znを同時に含む混合金属イオン水溶液の場合は、CdとZnの吸着量が、これらを単独で含む金属イオン水溶液にくらべて大きく抑制され減少する一方、Pbについては効率的な吸着が維持されていること、いいかえればPbが他の金属イオンの吸着を阻害しながらPbが選択的に吸着されている点である。
3種の金属イオン(Cu、Cd、Zn)を同時に各3mM含む混合金属イオン水溶液に、未加工の絹糸(B-cont)と、EDTAを導入した絹糸(B-EDTA)を浸漬して試料に吸着された金属イオン量を測定した。なお、混合金属イオン水溶液のpHは5.5であった。以降の実施例で金属イオン水溶液あるいは混合金属イオン水溶液のpH表示が無い場合はpH5.5で吸着実験を行ったことを意味する。
10mLの混合金属イオン水溶液に、20mgの絹糸を浸漬させ、室温で振とうして試料に金属イオンを吸着させた。混合金属イオン水溶液から試料を取り出し、脱液率(pick up ratio) が約220 %になるように脱液した後、ホットプレート式加熱装置を用いて69%硝酸を約6ml添加し、150℃で約5時間、試料を完全に酸分解した。その後、試料液を適宜希釈して、ICP分析で定量し、吸着量を算出した。表3は混合金属イオン水溶液のpHが5.5の測定結果である。表3の上段は、金属イオンの吸着量を(mg/g)単位で表したもの、下段は(mmol/g)で表示したものである。
表3と表2とを比較すると、Cu、Cd、Znを同時に含む混合金属イオン水溶液の場合(表3)は、Cd、Znの吸着量が、これらを単独で含む金属イオン水溶液の場合(表2)と比較して抑制される一方、Cuについては、Cuを単独で含む金属イオン水溶液の場合と同程度の吸着量が得られ、Cuの吸着が抑制されずに、Cuが選択的に吸着されていることがわかる。
3種の金属イオン(Cu、Cd、Pb)を同時に各3mM含む混合金属イオン水溶液に、未加工の絹糸(B-cont)と、EDTAを導入した絹糸(B-EDTA)を浸漬してそれぞれの試料に吸着された金属イオン量を測定した。測定方法及び測定条件は上述した例と同様である。
表4に、混合金属イオン水溶液のpHを5.5とした場合の金属イオンの吸着量を示す。表4の上段は、金属イオンの吸着量を(mg/g)単位で表し、下段は(mmol/g)で表している。
なお、CuとPbの吸着量をモル数で比較すると、CuはPbの約2倍吸着しており、CuがPbよりも効率的に吸着される傾向がみられる。
上述した複数種の金属イオンを同時に含む混合金属イオン水溶液に未加工の絹糸(B-cont)と、EDTAを導入した絹糸(B-EDTA)を浸漬して金属イオンの吸着量を測定した実験から、EDTAを導入した絹糸(B-EDTA)は未加工の絹糸(B-cont)にくらべて金属イオンを吸着する作用に優れていること、また、EDTAを導入した絹糸(B-EDTA)は、混合金属イオン水溶液に含まれている金属イオンのうち特定の金属イオンを選択的に吸着する作用を有することがわかる。たとえば、Pb、Cd、Znを含む溶液ではPbが選択的に吸着され、Cu、Cd、Znを含む溶液ではCuが選択的に吸着され、Cu、Cd、Pbを含む溶液ではCuとPbとが選択的に吸着される。EDTAを導入した絹糸(B-EDTA)が特定の金属イオンを選択的に吸着する作用は、後述の羊毛の実施例でも明らかなようにEDTAを導入した羊毛(W-EDTA)でも同様に適用可能であり、かつ上記実施例で用いた金属に限らず、他の金属についても適用可能である。
このように、金属含有液から特定の金属イオンを吸着して取り出すことができれば、金属含有液から有害金属を除去して無害化する処理や、特定の金属を回収して再利用するといった処理を効率的に行うことができ、廃液の処理等に有効に利用することができる。
金属イオンを吸着したB-EDTAから金属イオンを脱離させる処理には、上記記載のとおり硝酸、塩酸、酢酸等の酸が用いられる。0.07M の硝酸と塩酸水溶液のpHは、それぞれ1.03, 1.53であり、0.8 Mの硝酸と塩酸水溶液のpHは、それぞれ0.19, 0.53であることが新たに検証されている。酸として使用できる硝酸あるいは塩酸水溶液のpHは0.1〜2.0であり、好ましくは0.19〜1.5である。酸水溶液のpHが0.1以下であると繊維が加水分解して脆弱化するおそれがある。したがって、酸のpHおよび酸が繊維に接触する時間、酸の濃度を適宜調節することにより、金属イオンを吸着したB-EDTAから脱離する金属イオン量を制御でき、その結果、B-EDTAを繰り返して使用することが可能となる。
このように、EDTAを導入した絹糸は、廃液等の金属含有液から金属を除去する方法に有効に利用することができる。
3種類の金属イオン(Pb、Cd、Zn)を同時に含む混合金属イオン水溶液、すなわち各金属イオンを3mMずつ含む10mLの混合溶液を作製し、その混合金属イオン水溶液のpHを2.5、4.0、5.5に調整した混合金属イオン水溶液に、20mgの羊毛(W-cont)、及び20mgのEDTAを導入した加工率31.4%の羊毛(W-EDTA)を、20〜25℃で浸漬させ、羊毛(W-EDTA)に金属イオンを吸着させた。金属イオンを吸着させた羊毛試料を69%硝酸に入れ、150℃にセットしたホットプレート式加熱装置で試料を完全に加水分解した後、上澄みに含まれる金属イオン量をICP分析により計測して試料に吸着された金属イオン量を算出した。得られた結果が表6である。
表6と表7とを比較すると、Pb、Cd、Znを同時に含む混合金属イオン水溶液に羊毛(W-EDTA)を浸漬させると、同一pHの金属イオン水溶液において、金属イオンを単独で含む金属イオン水溶液に浸漬させた場合に比べて、羊毛(W-EDTA)には、CdとZnが吸着し難くなり、吸着量が低く抑えられ、一方、Pbが選択的に多量に吸着される機能が付与されていることがわかる。この作用は、前述したEDTAを導入した絹糸(B-EDTA)を使用した場合とまったく同様である。
その結果、Pb、Cd、Znの混合金属イオン水溶液に使用したW-EDTAの金属イオンの脱離率は、Pb:50.2[94.9]%、Cd:41.6[82.0]%、Zn:59.4[92.6]%([ ]は0.8M硝酸使用)、Pb、Cd、Znを単独で含む金属イオン水溶液に使用したW-EDTAの金属イオンの脱離率は、Pb:59.3[90.0]%、Cd:52.9[86.2]%、Zn:52.3[91.5]%であった。
り導入されたものであり、金属含有液に浸漬して該金属含有液に含まれる特定の金属イオンを選択的に吸着する作用を有する。
B-EDTAからの金属イオンの脱離率は、硝酸濃度が0.28M、浸漬時間30分でほぼ100%程度となり、試料にいったん吸着した金属イオンはすべて脱離する。硝酸濃度が低濃度の0.07Mであると、B-EDTAからの金属イオン脱離率はB-Contより低い値となり、脱離しない金属イオンが繊維に残ることが示唆された。低濃度の硝酸(0.07M)を処理試料に接触する際、接触時間が15分では金属イオンの脱離率は70%程度であるが、60分となると90%の金属イオンが脱離する。
硝酸(0.1M)を接触する際、接触時間が15分以上では、金属イオンの脱離率は80%以上となる。上記実験結果は、いったん吸着した金属イオンの脱離率は、硝酸の濃度、硝酸との接触時間を調整することで変化させることが可能であることを意味する。
上述した測定において使用した金属イオン水溶液は、精製水を溶媒として金属イオンを溶解したものである。本発明に係る高分子吸着材を、河川水中などにおける実際の場面において、金属イオンの吸着に応用するには、河川水などはKCl, NaF, LiCl, NaCl等の多種類の塩類ならびにMg, Na, Sr,
Li, Al, Fe, Mn 等の多種類の塩を含むから、多種類の金属イオンが同時に含まれる条件下における吸着挙動を考慮する必要がある。そこで、以下に、精製水を溶媒とした場合と人工海水(和光純薬工業株式会社製、商品名 ダイゴ人工海水 SP、カタログ番号395−01343)を溶媒とした場合について、未加工の絹糸(B-cont)と、EDTAを導入した絹糸(B-EDTA)による金属イオンの吸着挙動がどのようになるかを実験した結果について説明する。
人工海水は多種の微量な無機物や塩類や金属イオンを含むから、この実験結果は、多種の金属イオンが同時に存在する場合に、B-contはそれらの金属イオンの存在によってPb、Cd、Znの吸着量が左右され本来吸着すべき金属イオンの吸着が妨げられるのに対して、B-EDTAはPb、Cd、Znの吸着作用が大きく抑制されることはないことを示している。このことは、本願発明の高分子吸着材が、多くの塩類や金属イオンを同時に含む工業廃水、河川水に適応する上で極めて有用であることを示唆する。
このように、本発明に係る高分子吸着材は、実験室レベルでも、また河川や工業廃水に含まれる金属イオンの吸着においても簡便にかつ効率よく利用できるという特徴がある。
また、上記測定とは別に、家蚕由来のシルク膜、あるいは羊毛からなるケラチン膜を水不溶化処理した後、EDTA2塩基酸無水物で化学加工した2種類の試料膜を、上記例と同様に精製水と人工海水を用いたPb、Cd、Znを同時に含む混合金属イオン水溶液にそれぞれ浸漬して金属イオンを吸着させ、試料膜に吸着した金属イオン量を測定したところ、表10と同様の結果が得られた。
Claims (6)
- 複数種の金属イオンを含有する金属含有液から特定の金属イオンを選択的に除去する金属含有液の処理方法であって、
高分子素材をEDTA2塩基酸無水物を含む有機溶媒中で化学加工を行うことにより、金属イオンの配位基となるEDTAが前記高分子素材に化学結合して導入された高分子吸着材を、金属含有液に浸漬し、該金属含有液に含まれる特定の金属イオンを前記高分子吸着材に吸着させる吸着工程を備え、
前記金属含有液は、PbとCdとZnとを含有し、
前記吸着工程において、前記高分子吸着材にPbを選択的に吸着させることを特徴とする金属含有液の処理方法。 - 複数種の金属イオンを含有する金属含有液から特定の金属イオンを選択的に除去する金属含有液の処理方法であって、
高分子素材をEDTA2塩基酸無水物を含む有機溶媒中で化学加工を行うことにより、金属イオンの配位基となるEDTAが前記高分子素材に化学結合して導入された高分子吸着材を、金属含有液に浸漬し、該金属含有液に含まれる特定の金属イオンを前記高分子吸着材に吸着させる吸着工程を備え、
前記金属含有液は、CuとCdとZnとを含有し、
前記吸着工程において、前記高分子吸着材にCuを選択的に吸着させることを特徴とする金属含有液の処理方法。 - 複数種の金属イオンを含有する金属含有液から特定の金属イオンを選択的に除去する金属含有液の処理方法であって、
高分子素材をEDTA2塩基酸無水物を含む有機溶媒中で化学加工を行うことにより、金属イオンの配位基となるEDTAが前記高分子素材に化学結合して導入された高分子吸着材を、金属含有液に浸漬し、該金属含有液に含まれる特定の金属イオンを前記高分子吸着材に吸着させる吸着工程を備え、
前記金属含有液は、CuとCdとPbとを含有し、
前記吸着工程において、前記高分子吸着材にCuとPbを選択的に吸着させることを特徴とすとする金属含有液の処理方法。 - 前記吸着工程の後工程として、金属イオンを吸着した高分子吸着材を金属含有液から取り出し、高分子吸着材に硝酸、酢酸、塩酸、硫酸のいずれかを接触させて高分子吸着材に吸着された金属イオンを脱離させる脱離工程を備える請求項1〜3のいずれか一項記載の金属含有液の処理方法。
- 絹糸あるいは絹製品を高分子素材とする高分子吸着材を使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の金属含有液の処理方法。
- 羊毛あるいは羊毛製品を高分子素材とする高分子吸着材を使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の金属含有液の処理方法。
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