JP5821207B2 - ハードコートフィルム及びハードコートフィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明は以下の〔1〕〜〔19〕を要旨とする。
前記工程(B)が、前記塗布層の表面部分を、前記塗布層の前記表面部分以外の部分及び前記基材よりも高温に加熱して硬化させる工程(b1)を含み、
前記工程(b1)における前記塗布層の最大加熱温度Th1と、前記熱可塑性樹脂のビカット軟化温度Tsとの差Th1−Tsが−20℃より大きい、ハードコートフィルムの製造方法。
〔2〕 前記工程(B)において、前記ハードコート層の前記表面部分の体積収縮率が、前記ハードコート層の前記表面部分以外の部分の体積収縮率よりも大きい、〔1〕記載のハードコートフィルムの製造方法。
〔3〕 前記工程(B)における前記ハードコート層の表面の体積収縮率が10%〜50%である、〔1〕又は〔2〕記載のハードコートフィルムの製造方法。
〔4〕 前記工程(B)が、前記工程(b1)で前記塗布層の表面部分を加熱する温度よりも低い温度で前記塗布層の前記表面部分以外の部分を加熱する工程(b2)を含む、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
〔5〕 前記工程(b1)における加熱を、フラッシュランプアニーリング装置を用いて行う、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
〔6〕 前記塗布層の表面部分が、前記塗布層の表面から前記塗布層の厚みの2/3以下までの部分である、〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
〔7〕 前記ハードコート層が単層である、〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
〔8〕 前記熱可塑性樹脂のビカット軟化温度が135℃以下である、〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
〔9〕 前記硬化性材料が活性エネルギー線により硬化しうる、〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
〔10〕 前記工程(A)を行う前に比べた、前記工程(B)で前記ハードコート層を得た後における前記基材のヘイズの上昇度が0.5%以下である、〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
〔11〕 前記熱可塑性樹脂が、脂環式構造含有重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロースエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる1種類以上の樹脂である、〔1〕〜〔10〕のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
〔12〕 〔1〕〜〔11〕のいずれか一項に記載の製造方法で製造されたハードコートフィルム。
〔13〕 前記ハードコート層の表面の硬度がH以上である、〔12〕記載のハードコートフィルム。
〔14〕 前記ハードコートフィルムのカール高さが20mm以下である、〔12〕又は〔13〕記載のハードコートフィルム。
〔15〕 ハードコート層の厚みが30μm以下である、〔12〕〜〔14〕のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
〔16〕 基材の硬度がB以下である、〔12〕〜〔15〕のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
〔17〕 前記基材が位相差を有する、〔12〕〜〔16〕のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
〔18〕 前記基材が斜め延伸されたものである、〔17〕記載のハードコートフィルム。
〔19〕 基材と、前記基材の表面に樹脂により形成された単層のハードコート層とを備え、
前記ハードコート層の前記基板とは反対側の表面部分の硬度が、前記ハードコート層の前記基材との界面部分の硬度よりも大きい、ハードコートフィルム。
本発明のハードコートフィルムは、表面硬度が高く、且つ、カールを抑制できる。
本発明のハードコートフィルムの製造方法(以下、適宜「本発明の製造方法」という。)は、熱可塑性樹脂からなる基材の表面に、熱により硬化しうる硬化性材料を塗布して塗布層を形成する工程(A)と、塗布層を硬化させてハードコート層を得る工程(B)と、を有する。
本発明のハードコートフィルムの製造方法では、熱可塑性樹脂からなる基材の表面に、熱により硬化しうる硬化性材料を塗布して塗布層を形成する工程(A)を行う。
基材は、熱可塑性樹脂により形成されたフィルムである。この際、熱可塑性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性樹脂の種類は、ハードコートフィルムに求められる光学特性に応じて適切な樹脂を選択することが好ましい。中でも、非晶性樹脂が好ましく、延伸加工性及び寸法安定性に優れることから、脂環式構造含有重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロースエステル樹脂及びアクリル樹脂が好ましい。
脂環式構造含有重合体樹脂は、脂環式構造含有重合体を含む樹脂である。この際、脂環式構造含有重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネートを含む樹脂である。この際、ポリカーボネートは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
セルロースエステル樹脂は、セルロースエステルを含む樹脂である。この際、セルロースエステルは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
アクリル樹脂は、アクリル重合体を含む樹脂である。この際、アクリル重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgは、通常90℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上である。ガラス転移温度Tgをこのように高くすることにより、高温環境における基材の配向緩和を防止して耐久性を向上させることができる。ただし、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgが過度に高いと延伸処理が困難になる可能性があるので、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgは通常300℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。
基材は、1層だけを有する単層のフィルムであってもよく、2層以上の層を有する複層のフィルムであってもよい。
基材の硬度は、H以下が好ましく、B以下が好ましく、2B以下がより好ましい。基材の硬度がこのように低くても、ハードコート層の表面部分の硬度が高いので、本発明のハードコートフィルムの表面硬度を高くすることができる。また、基材の硬度が低いと従来のハードコートフィルムではカールが生じ易かったが、本発明のハードコートフィルムはこのように硬度が低い基材を用いた場合でもカールを抑制できる。したがって、硬度が低い基材を使用することは、本発明の利点を有効に活用する観点から、好ましい。
なお、前記の硬度は、JIS−5600−5−4に準じて500g荷重で測定した鉛筆硬度である。
基材の製造方法としては、単層の基材の製造方法の例を挙げると、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。中でも、溶剤を使用しない溶融押出法は、残留揮発成分量を効率よく低減させることができ、地球環境や作業環境の観点、及び製造効率に優れる観点から好ましい。溶融押出法としては、ダイスを用いるインフレーション法などが挙げられるが、生産性や厚さ精度に優れる点でTダイを用いる方法が好ましい。
延伸時の温度は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgを基準として、好ましくは(Tg−30℃)以上、より好ましくは(Tg−10℃)以上であり、好ましくは(Tg+60℃)以下、より好ましくは(Tg+50℃)以下である。なお、基材が複層フィルムである場合、層によって熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgが異なることがありえる。その場合には、好ましくはガラス転移温度Tgが最も低い層を形成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgを基準として、延伸時の温度を設定する。
硬化性材料としては、熱により硬化しうる材料を用いる。また、硬化性材料には、硬化後に所望の硬度となりうること、ハードコートフィルムの用途に応じた透明性を有すること、などが求められる。さらに、基材の表面への塗布を容易に行う観点から、通常、硬化性材料は塗布以前においては液状の材料として用意される。硬化性材料としては、例えば、熱硬化性樹脂を用いる。
活性エネルギー線により硬化しうる硬化性材料の例を挙げると、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、光硬化性アクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂などが挙げられる。なお、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
微粒子は、有機微粒子でもよく、無機微粒子でもよく、有機微粒子と無機微粒子とを組み合わせて用いてもよい。微粒子の材料の例を挙げると、シリカ、チタニア(酸化チタン)、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化セリウム、五酸化アンチモン、二酸化チタン、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、リンをドープした酸化スズ(PTO)、亜鉛をドープした酸化インジウム(IZO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)等が挙げられる。これらの中でも、シリカは基材との密着性及び透明性のバランスに優れるので、屈折率を調整するための成分として適している。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
工程(A)では、基材の表面に、硬化性材料を塗布して塗布層を形成する。塗布方法は特に限定されず、公知の塗布法を採用することができる。具体的な塗布法としては、例えば、ワイヤーバーコート法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スライドコート法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。
工程(A)で基材の表面に硬化性材料の塗布層を形成した後で、前記塗布層を硬化させてハードコート層を得る工程(B)を行う。工程(B)は、塗布層の表面部分を、塗布層の表面部分以外の部分及び基材よりも高温に加熱して硬化させる工程(b1)を含む。また、工程(B)は、工程(b1)で塗布層の表面部分を加熱する温度よりも低い温度で、塗布層の表面部分以外の部分を加熱する工程(b2)を含んでいてもよい。
工程(b1)では、塗布層の表面部分を、塗布層の表面部分以外の部分及び基材よりも高温に加熱する。これにより、塗布層が硬化してハードコート層が得られる。
また、塗布層の表面部分は硬化した分だけ収縮するので、ハードコート層の表面部分には大きな収縮力が生じる。しかし、工程(b1)では塗布層の表面部分以外の部分は、塗布層の表面部分ほど高温にならないので、大きな収縮力は生じない。
このようにして、ハードコート層の表面の硬度を高くしながらも、ハードコート層全体としてはハードコートフィルムをカールさせるほど大きな収縮力が生じないようにできるので、ハードコートフィルムのカールの抑制と、高い表面硬度とを両立することが可能となっている。
工程(B)は、工程(b1)で塗布層の表面部分を加熱する温度よりも低い温度で、塗布層の表面部分以外の部分を加熱する工程(b2)を含むことが好ましい。これにより、塗布層の表面部分以外の部分を硬化させることができる。
工程(b1)のように塗布層の表面部分を選択的に高温に加熱する加熱装置としては、例えば、フラッシュランプアニーリング装置やエキシマレーザーアニーリング装置が挙げられ、なかでもフラッシュランプアニーリング装置を用いることが好ましい。フラッシュランプアニーリング装置はフィルムに光を照射して当該光によってフィルムを加熱する装置である。フラッシュランプアニーリング装置では光の照射時間をミリ秒ないしマイクロ秒のような短時間にすることができるので、フィルムの表面の近傍の薄い部分を選択的に加熱することが可能である。特に、光の照射時間及び照射強度などを調整することで、加熱する部分の厚みを容易に制御できるので、工程(b1)に使用する加熱装置として適している。なお、光の照射回数は、1回でもよく、2回以上でもよい。
図2に示すように、フラッシュランプアニーリング装置20は、光源であるフラッシュランプ110及び反射材120を備えたフラッシュランプユニット100を備える。また、フラッシュランプ110は、反射材120及びカバー130を備える筐体140内に収納されていて、フラッシュランプ110が発した光Lは、直接又は反射材120に反射されてからカバー130を透過して基材200の表面210に形成された塗布層220に当たり、塗布層220の表面部分のみが加熱されるようになっている。
硬化性材料として活性エネルギー線により硬化しうるものを用いる場合、必要に応じて、塗布層に活性エネルギー線を照射して塗布層を硬化させてもよい。これにより、塗布層の硬化を速やかに進めることができるので、ハードコートフィルムの製造効率を向上させることができる。
上述したように、工程(B)において塗布層を硬化させることにより、基材の表面にハードコート層が形成される。この際、工程(b1)における加熱によって塗布層の表面部分は大きく収縮するが、塗布層の表面部分以外の部分は塗布層の表面部分ほどは収縮しない。したがって、工程(B)におけるハードコート層の表面部分の体積収縮率は、ハードコート層の表面部分以外の部分の体積収縮率よりも大きくなる。
体積収縮率(%)=100×(硬化後の密度−硬化前の密度)/硬化後の密度
なお、前記のヘイズは、例えば、市販されているヘイズメーターを用いて、JIS K−7136に準拠して測定する。また、前記のヘイズの上昇度とは、ハードコート層を得た後での基材のヘイズと、工程(A)を行う前の基材のヘイズとの差である。
本発明の製造方法では、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述した工程(A)及び工程(B)以外にも、任意の工程を行ってもよい。
例えば、ハードコートフィルムに、基材及びハードコート層以外の層を設ける工程を行ってもよい。具体例を挙げると、ハードコートフィルムの表面に低屈折率層を設ける工程を行い、ハードコートフィルムに反射防止機能を備えさせてもよい。
また、例えば、基材のハードコート層が形成された表面とは反対側の表面に、工程(A)及び工程(B)と同様にしてハードコート層を形成する工程を行ってもよい。ただし、通常は、本発明のハードコートフィルムでは基材の一方の面だけにハードコート層を形成する。基材の一方の面だけにハードコート層を備える従来のハードコートフィルムがカールし易かったことを考えれば、本発明のハードコートフィルムには一方の面だけにハードコート層を形成する方が、カールの抑制という本発明の利点を顕著に発揮できるためである。
以上のように、本発明の製造方法によれば、基材と、基材の表面に形成されたハードコート層とを備えるハードコートフィルムが得られる。
導電層の厚みは、例えばITOで導電層を形成する場合、通常10nm以上、好ましくは15nm以上であり、通常150nm以下、より好ましくは70nm以下である。
本発明のハードコートフィルムは、例えば、液晶表示装置の構成部材として使用でき、特にタッチパネル機能を有する液晶表示装置に用いて好適である。また、導光層を備えるハードコートフィルムは、例えば抵抗膜方式のタッチパネルの上部電極又は下部電極として用いてもよい。
1.ビカット軟化温度の評価
JIS K7206に準じてヒートディストーションテスター(東洋精機社製)を用いて測定した。
JIS−5600−5−4に準じて500g荷重で測定した。具体的には、ハードコート層上に45°の角度で鉛筆を置き、鉛筆の上から500gの荷重を掛けて5mm程度引っかき、傷の付き具合を確認した。
ハードコートフィルムとは別に、ハードコートフィルムの製造に使用した塗布層と同じ材料で形成されたサンプルを用意した。そのサンプルを、ハードコートフィルムの製造方法と同様の温度に加熱して硬化させ、比重計(マイクロメトリックス社製)を用いて密度を測定し、以下の式から体積収縮率を算出した。
体積収縮率(%)=100×(硬化後の密度−硬化前の密度)/硬化後の密度
ハードコートフィルムを10cm×10cmの大きさに切り出した。切り出したフィルムを温度20℃、湿度50%の条件でハードコート層が上向きになるように平坦な面に置き、60分後のそのフィルムのカール性を、以下の基準で評価した。ここで、以下の基準において「カール高さ」とは、フィルムがカールした場合にカールの四隅が平坦な面から浮き上がる高さのことをいう。
A:全くカールが認められず良好。
B:わずかにカールが認められるが、カール高さ20mm以下。
C:明らかにカールが認められ、カール高さが30mmを超える。
スチールウール#0000に荷重0.025MPaをかけた状態で、ハードコートフィルムのハードコート層の表面を10往復させ、往復させた後の表面状態を目視で観測し、下記の基準で評価した。
また各実施例および比較例において、ハードコート液の塗布前にコロナ処理を施さない以外は同様にしてハードコート層を設けたサンプルを用意した。そのサンプルのハードコート層の表面を、粘着剤を塗布したガラス板上に貼り付け、次いで基材を剥離または研磨して除去し、ハードコート層の基材との界面部分を露出させた。この表面について上記と同様にして耐擦傷性試験を行い、下記の基準で評価した。
A:傷が認められない。
B:スジ傷が3本以上7本以下ある。
C:スジ傷が8本以上ある。
ウレタンアクリレートオリゴマー(日本合成化学工業社製「UV−1700B」)100部に、シリカ粒子(CIKナノテック社製、数平均粒径30nm)18部と、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製「IRGACURE184」)5部とを加え、攪拌機を用いて攪拌することにより、硬化性材料としてハードコート液Aを得た。
100℃で5時間乾燥したノルボルネン系樹脂(日本ゼオン社製「ZEONOR1060」、ガラス転移温度100℃、ビカット軟化温度101℃)のペレットを用いて、押出成形により、基材として厚さ40μmの未延伸フィルムAを得た。
得られた未延伸フィルムAの片面にコロナ処理を施し、次いでハードコート液Aを塗布して、厚み11μmの塗布層を形成した。こうして得られた、未延伸フィルムA及び塗布層を有するフィルムを、光学フィルムAと呼ぶ。
得られた光学フィルムAの全体を80℃で加熱しつつ、同時に光学フィルムAの塗布層の表面から厚み5μmまでの表面部分を、加熱装置(DTF社製、フラッシュランプアニーリング装置)により120℃で加熱し、更に紫外線照射して塗布層を硬化させてハードコート層を形成した。これにより、基材とハードコート層とを備えるハードコートフィルムAを得た。評価結果を表1に示す。
また、別途、光学フィルムAの全体の加熱温度である80℃における塗布層の体積収縮率、及び、塗布層の表面部分の加熱温度である120℃における塗布層の体積収縮率を、上述した要領で測定した。その結果、80℃における体積収縮率は11%、120℃における体積収縮率は14%であった。
実施例1の未延伸フィルムAと同様の未延伸フィルムBを製造し、この未延伸フィルムBを配向角が45°になるように斜め延伸機により斜め延伸して、厚み30μmの位相差フィルムBを得た。なお、「配向角」とは、未延伸フィルムBの幅方向に対して遅相軸がなす角度を意味する。
得られた位相差フィルムBの片面にコロナ処理を施し、次いでハードコート液Aを塗布して、厚み5μmの塗布層を形成した。こうして得られた、位相差フィルムB及び塗布層を有するフィルムを、光学フィルムBと呼ぶ。
得られた光学フィルムBの全体を80℃で加熱しつつ、同時に光学フィルムBの塗布層の表面から厚み2μmまでの表面部分を、加熱装置(DTF社製、フラッシュランプアニーリング装置)により120℃で加熱し、更に紫外線照射して塗布層を硬化させてハードコート層を形成した。これにより、基材とハードコート層とを備えるハードコートフィルムBを得た。評価結果を表1に示す。
ノルボルネン系樹脂の代わりにアクリル樹脂(住友化学社製「スミペックスHT55Z」、ガラス転移温度95℃、ビカット軟化温度104℃)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムCを得た。評価結果を表1に示す。
ノルボルネン系樹脂の代わりにポリカーボネート樹脂(旭化成社製「ワンダーライトPC110」、ガラス転移温度148℃、ビカット軟化温度130℃)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、ハードコートフィルムCを得た。評価結果を表1に示す。
加熱装置(DTF社製、フラッシュランプアニーリング装置)による加熱を行わなかったこと以外は実施例2と同様にして、ハードコートフィルムaを得た。評価結果を表1に示す。
加熱装置(DTF社製、フラッシュランプアニーリング装置)による加熱を行わなかったこと、及び、光学フィルム全体の加熱温度を80℃から120℃に変更したこと以外は実施例2と同様にして、ハードコートフィルムbを得た。評価結果を表1に示す。
表1から分かるように、実施例1〜4では表面硬度が高く、且つ、カール性が小さいハードコートフィルムを製造できた。これにより、本発明によってハードコート層の硬度を高くすることと、ハードコートフィルムのカールを抑制することとの両立が可能となることが確認された。また、実施例1及び2においては、ハードコート層の表面の耐擦傷性の方が、ハードコート層の基材との界面の耐擦傷性よりも高いことから、ハードコート層の表面の硬度がハードコート層の基材との界面の硬度よりも大きいことが確認された。
これに対し、比較例1のハードコートフィルムaはカール性は小さいが、表面硬度が低い。これは、ハードコート層の硬化が十分ではないため、ハードコート層の表面硬度が低くなっているためと考えられる。
また、比較例2のハードコートフィルムbは表面硬度は高いが、カール性が大きい。これは、ハードコート層全体が硬化したことによりハードコート層に大きな収縮力が生じ、この収縮力によってハードコートフィルムbがカールしたためと考えられる。
11 基材の表面
12 塗布層
13 塗布層の表面部分
14 塗布層の表面部分以外の部分
15 塗布層の表面
20 フラッシュランプアニーリング装置
100 フラッシュランプユニット
110 フラッシュランプ
120 反射材
130 カバー
140 筐体
200 基材
210 基材の表面
220 塗布層
300 プレヒーティングユニット
310 ヒーター
320 基部
330 カバー
340 筐体
350 通路
Claims (10)
- 熱可塑性樹脂のフィルムからなる厚み10μm以上250μm以下の基材の表面に、熱により硬化しうる硬化性材料を塗布して塗布層を形成する工程(A)と、前記塗布層を硬化させてハードコート層を得る工程(B)とを有し、
前記工程(B)が、前記塗布層の表面部分を、前記塗布層の前記表面部分以外の部分及び前記基材よりも高温に加熱して硬化させる工程(b1)を含み、
前記工程(b1)において、前記塗布層の前記表面部分を、前記塗布層の表面部分以外の部分よりも、前記ハードコート層の前記基板とは反対側の表面部分の硬度が前記ハードコート層の前記基材との界面部分の硬度よりも大きくなる程度に高温に加熱し、
前記塗布層の表面部分が、前記塗布層の表面から前記塗布層の厚みの2/3以下までの部分であり、
前記工程(b1)における前記塗布層の最大加熱温度Th1と、前記熱可塑性樹脂のビカット軟化温度Tsとの差Th1−Tsが−20℃より大きい、ハードコートフィルムの製造方法。 - 前記工程(B)において、前記ハードコート層の前記表面部分の体積収縮率が、前記ハードコート層の前記表面部分以外の部分の体積収縮率よりも大きい、請求項1記載のハードコートフィルムの製造方法。
- 前記工程(B)における前記ハードコート層の表面の体積収縮率が10%〜50%である、請求項1又は2記載のハードコートフィルムの製造方法。
- 前記工程(B)が、前記工程(b1)で前記塗布層の表面部分を加熱する温度よりも低い温度で前記塗布層の前記表面部分以外の部分を加熱する工程(b2)を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
- 前記工程(b1)における加熱を、フラッシュランプアニーリング装置を用いて行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
- 前記ハードコート層が単層である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂のビカット軟化温度が135℃以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
- 前記硬化性材料が活性エネルギー線により硬化しうる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
- 前記工程(A)を行う前に比べた、前記工程(B)で前記ハードコート層を得た後における前記基材のヘイズの上昇度が0.5%以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂が、脂環式構造含有重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロースエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる1種類以上の樹脂である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のハードコートフィルムの製造方法。
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