JP5819294B2 - Al合金接合体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、Al(アルミニウム)合金を溶接によって接合するようにしたAl合金接合体の製造方法およびその関連技術に関する。
Al−Zn−Mg系のAl合金は、強度、加工性等に優れるため、構造材として多く用いられている。
このようなAl−Zn−Mg系Al合金製の部材どうしを溶接すると、溶接部が溶接熱により再溶体化して一旦軟化するが、その後の自然時効により強度が回復することが知られている。そこで、構造材の中でも、溶接が必要でかつ高強度が求められる部材としては、Al−Zn−Mg系合金が一般に用いられてきた。
また、一般的なAl−Zn−Mg系合金においては、例えば下記特許文献1〜3に示すように、焼入れ後、直ぐに人工時効するよりも、室温に24時間以上放置した後、人工時効した方が、引張強度および硬度が高くなり、応力腐食割れ性を向上させることが知られている。また、これらの人工時効条件についても、引張強度および硬度を向上させるために、80〜130℃で1〜16時間で一段目の時効処理を施した後、140〜190℃で2〜24時間で二段目の時効処理を行う、いわゆる二段時効の熱処理が施されている。
特開平2−70044号公報 特開昭57−158360号公報 特開昭51−10113号公報
近年、Al−Zn−Mg系合金が多く用いられている車両では運動性能および環境性能を向上させるために、軽量化が求められる上さらに、当該合金においては、溶接後の硬度回復性能を失うことなく、高い強度を確保できることが求められている。
その一方、Al合金の技術分野では、他の金属加工技術分野等と同様、生産性の向上が常に求められているが、Al−Zn−Mg系合金において、高強度および軽量化を図りつつ、生産性を向上させることは非常に困難である、という課題を抱えている。
すなわち、上記特許文献1〜3に示すように、従来のAl−Zn−Mg系合金において、十分な強度を確保するには、時効処理として、長時間で複雑な熱処理が必要であるため、生産性を向上させることが困難である、という課題があった。また熱処理の簡略化を図ろうとすると、十分な強度を得ることができず、増肉等による補強が必要となり、軽量化を図ることが困難である、という課題が発生する。
本発明の好ましい実施形態は、関連技術における上述した及び/又は他の問題点に鑑みてなされたものである。本発明の好ましい実施形態は、既存の方法及び/又は装置を著しく向上させることができるものである。
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、高強度で軽量なAl合金接合体を効率良く製造することができるAl合金接合体の製造方法およびその関連技術を提供することを目的とする。
本発明のその他の目的及び利点は、以下の好ましい実施形態から明らかであろう。
上記の目的を達成するため、本発明は、以下の構成を備えている。
[1]Fe:0.2〜0.35質量%、Cu:0.1〜0.4質量%、Mn:0.3〜0.6質量%、Mg:2.0〜2.5質量%、Zn:5.0〜5.5質量%、Zr:0.1〜0.2質量%、Ti:0.2質量%以下含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる合金組成を有するAl合金溶湯を得る工程と、
前記Al合金溶湯を、「最大鋳造速度(mm/min)≦−1.43×鋳造径(mm)+500」の条件を満たす鋳造速度で連続鋳造することによって、デンドライト2次アーム間隔(DAS)が40μm以下、かつ晶出物の平均粒径が8μm以下の組織を有するAl合金鋳塊を得る工程と、
前記Al合金鋳塊に対して、400〜600℃の温度で1時間以上保持する均質化処理を施すことによって、Al合金鋳造部材を得る工程と、
前記Al合金鋳造部材に対して、熱間鍛造を行ってAl合金鍛造部材を得る工程と、
前記Al合金鍛造部材に対して、溶体化処理を施す工程と、
前記溶体化処理後のAl合金鍛造部材に対して、一段時効処理を施す工程と、
前記一段時効処理後のAl合金鍛造部材を、Al合金製の接合部品と溶接してAl合金接合体を得る工程と、を含むことを特徴とするAl合金接合体の製造方法。
ここで本発明において、鋳造速度とは、モールドから鋳塊を引っ張り出す速度で、単位時間当たりの鋳塊の移動速度を測定することによって得られる。鋳造時には、停止している状態から、徐々に速度を上げ、鋳造が安定した状態で最大速度となる。本発明においては、この最大速度を最大鋳造速度と称するものである。
さらに本発明において、一段時効処理とは、比較的短時間での1回(1度)の時効処理を言う。本発明において、2回以上の時効処理を行う必要がなく、一段時効処理を行った後は、時効処理を行う必要がない。つまり本発明においては、鍛造部材に対し、一段時効処理を行った後は、二段目以降の時効処理を省略して、切削処理等の時効処理以外の次の処理を行うことができる。
なお本発明の一段時効処理は、1回の時効処理であり、一段目の時効処理と二段目の時効処理との2回の時効処理を行う二段時効処理とは異なる。
さらに本発明の一段時効処理は、比較的短時間のものであり、長時間で複雑な一段時効処理、例えば24時間以上の長時間で複雑な温度制御を行う一段時効処理とも異なる。
また本発明においては、溶体化処理後、一段時効処理を行う前に、室温放置処理等を行うようにしても良いし、溶体化処理後、室温放置処理等を行わずに直ちに一段時効処理を行うようにしても良い。
[2]前記一段時効処理を、130〜170℃の温度で、溶体化処理時間の1〜6倍の時間で行うようにした前項1に記載のAl合金接合体の製造方法。
[3]前記熱間鍛造を、鍛造素材温度が350〜500℃の温度で行うようにした前項1または2に記載のAl合金接合体の製造方法。
[4]前記溶体化処理を、400〜500℃の温度で行うようにした前項1〜3のいずれか1項に記載のAl合金接合体の製造方法。
[5]前記接合部品として、前記時効処理後のAl合金鍛造部材と同じ構成の部材を用いるようにした前項1〜4のいずれか1項に記載のAl合金接合体の製造方法。
[6]「Znの質量%」/(「Mgの質量%」−α×「Cuの質量%」)=3、かつ
α=1〜20の条件を満たすようにした前項1〜5のいずれか1項に記載のAl合金接合体の製造方法。
[7]前項1〜6のいずれか1項に記載のAl合金接合体の製造方法に用いられるAl合金接合体の製造装置であって、
前記Al合金鍛造部材としての被処理材を搬送するための搬送手段と、
前記溶体化処理を施す工程を実施するための溶体化用熱処理ゾーンと、
前記一段時効処理を施す工程を実施するための一段時効用熱処理ゾーンと、を備え、
前記搬送手段の搬送によって、被処理材を溶体化用熱処理ゾーンおよび前記一段時効用熱処理ゾーンに順次通過させることにより、被処理材に対し溶体化処理および一段時効処理を順次実施するようにしたことを特徴とするAl合金接合体の製造装置。
[8]前記溶体化用熱処理ゾーンおよび前記一段時効用熱処理ゾーン間に、水が貯留された焼き入れ処理用水槽を有する水槽ゾーンをさらに備え、
溶体化処理を行った後、一段時効処理を行う前に、被処理材を前記水槽ゾーンの水槽内を通過させて、焼き入れ処理を実施するようにした前項7に記載のAl合金接合体の製造装置。
[9]前記溶体化用熱処理ゾーンおよび前記一段時効用熱処理ゾーンが並列に、かつ被処理材の搬送方向が互いに逆向きに配置されるとともに、
前記溶体化用熱処理ゾーンの搬出側端部と、前記一段時効用熱処理ゾーンの搬入側端部とが対応して配置され、
前記溶体化用熱処理ゾーン、前記水槽ゾーンおよび前記一段時効用熱処理ゾーンを通過する被処理材が前記水槽ゾーンの周辺部で折り返して搬送されるようになっている前項8に記載のAl合金接合体の製造装置。
[10]Fe:0.2〜0.35質量%、Cu:0.1〜0.4質量%、Mn:0.3〜0.6質量%、Mg:2.0〜2.5質量%、Zn:5.0〜5.5質量%、Zr:0.1〜0.2質量%、Ti:0.2質量%以下含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる合金組成を有するAl合金溶湯を得る工程と、
前記Al合金溶湯を、「最大鋳造速度(mm/min)≦−1.43×鋳造径(mm)+500」の条件を満たす鋳造速度で連続鋳造することによって、デンドライト2次アーム間隔(DAS)が40μm以下、かつ晶出物の平均粒径が8μm以下の組織を有するAl合金鋳塊を得る工程と、
前記Al合金鋳塊に対して、400〜600℃の温度に1時間以上保持する均質化処理を施すことによって、Al合金鋳造部材を得る工程と、を含むことを特徴とする溶接用Al合金鋳造部材の製造方法。
[11]前記Al合金溶湯を準備するのに先立って、そのAl合金溶湯におけるFe、Cu、Mn、Mg、Zn、Zr、Tiの各含有量を仮設値に設定する第1準備工程と、
前記Al合金鋳造部材を鍛造加工して得られるAl合金鍛造部材における目標とする特性を設定する第2準備工程と、
前記仮設値を基にして得られた試作のAl合金溶湯に対し、前記Al合金鋳塊を得る工程に準拠した工程と、前記Al合金鋳造部材を得る工程に準拠した工程と、を順次行って、試作のAl合金鋳造部材を得るとともに、その試作のAl合金鋳造部材に対し、熱間鍛造を行って試作のAl合金鍛造部材を得る第3準備工程と、
試作のAl合金鍛造部材から求められた実際の特性を、前記目標とする特性と比較し、その比較結果を基に、前記仮設値を変更する第4準備工程と、を含み、
前記第3および第4準備工程を繰り返し行って、実際に使用するAl合金溶湯を準備するようにした前項10に記載のAl合金鋳造部材の製造方法。
[12]Fe:0.2〜0.35質量%、Cu:0.1〜0.4質量%、Mn:0.3〜0.6質量%、Mg:2.0〜2.5質量%、Zn:5.0〜5.5質量%、Zr:0.1〜0.2質量%、Ti:0.2質量%以下含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる合金組成を有するAl合金溶湯を得る工程と、
前記Al合金溶湯を、「最大鋳造速度(mm/min)≦−1.43×鋳造径(mm)+500」の条件を満たす鋳造速度で連続鋳造することによって、デンドライト2次アーム間隔(DAS)が40μm以下、かつ晶出物の平均粒径が8μm以下の組織を有するAl合金鋳塊を得る工程と、
前記Al合金鋳塊に対して、400〜600℃の温度に1時間以上保持する均質化処理を施すことによって、Al合金鋳造部材を得る工程と、
前記Al合金鋳造部材に対して、熱間鍛造を行ってAl合金鍛造部材を得る工程と、
前記Al合金鍛造部材に対して、溶体化処理を施す工程と、
溶体化処理後のAl合金鍛造部材に対して、一段時効処理を施す工程と、を含むことを特徴とする溶接用Al合金鍛造部材の製造方法。
[13]前記Al合金溶湯を準備するのに先立って、そのAl合金溶湯におけるFe、Cu、Mn、Mg、Zn、Zr、Tiの各含有量を仮設値に設定する第1準備工程と、
製造予定の前記Al合金鍛造部材における目標とする特性を設定する第2準備工程と、
前記仮設値を基にして得られた試作のAl合金溶湯に対し、前記Al合金鋳塊を得る工程に準拠した工程と、前記Al合金鋳造部材を得る工程に準拠した工程と、前記Al合金鍛造部材を得る工程に準拠した工程と、前記溶体化処理を施す工程に準拠した工程と、前記一段時効処理を施す工程に準拠した工程と、を順次行って、試作のAl合金鍛造部材を得る第3準備工程と、
試作のAl合金鍛造部材から求められた実際の特性を、前記目標とする特性と比較し、その比較結果を基に、前記仮設値を変更する第4準備工程と、を含み、
前記第3および第4準備工程を繰り返し行って、実際に使用するAl合金溶湯を準備するようにした前項12に記載の溶接用Al合金鍛造部材の製造方法。
[14]前記第2準備工程において、前記一時時効処理における目標とする時効時間を予め設定し、
前記第3準備工程において、実際の時効時間を測定し、
前記第4準備工程において、実際の時効時間を、前記目標とする時効時間と比較し、その比較結果を基に、前記仮設値を変更するようにした前項13に記載の溶接用Al合金鍛造部材の製造方法。
[15]複数のAl合金製の接合部品が溶接されて、接合部品間の溶接部に、溶接による肉盛り部が設けられるとともに、その肉盛り部の近傍に、溶接による熱の影響が及ぶ熱影響部が設けられたAl合金接合体であって、
前記複数の接合部品のうち、少なくとも1つ以上の接合部品が、Fe:0.2〜0.35質量%、Cu:0.1〜0.4質量%、Mn:0.3〜0.6質量%、Mg:2.0〜2.5質量%、Zn:5.0〜5.5質量%、Zr:0.1〜0.2質量%、Ti:0.2質量%以下含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる合金組成を有し、
前記熱影響部の硬度を「V」、溶接による熱の影響が及ばない部位の平均硬度を「V」として、「V/V≧0.8」の関係が成立するように構成されたことを特徴とするAl合金接合体。
発明[1]のAl合金接合体の製造方法によれば、溶接後の硬度回復性能を失わずに、強度が高く、所望の機械的特性および耐腐食性能を備えたAl合金鍛造製品を得ることができる。しかも、一段時効処理は、短時間で簡略化することができるため、上記所望の特性を備えたAl合金接合体を効率良く製造することができる。
さらに溶接部の硬度低下が少ないため、Al合金接合体の全域で耐えることができる荷重も大きくなり、Al合金接合体の重量を低減できて、軽量化を図ることができる。
ここで、本発明において「溶接後の硬度回復性能」とは、T6処理を行った母材のヴィッカース硬度に対する、溶接による熱影響部のヴィッカース硬度の低下率のことを示し、具体的には、この低下率が20%以下であるとき、溶接後の硬度回復性能が良好である、と判断している。
本発明において、「溶接後の硬度回復性能」は以下の関係式で定義することができる。
「溶接後の硬度回復性能」=(「母材のヴィッカース硬度」−「熱影響部のヴィッカース硬度」)/「母材のヴィッカース硬度」
さらに本発明では、引張強度が450MPa以上であったものを「強度が高い」と判断している。
なお、本発明において、ヴィッカース硬度は、JIS Z 2244に準拠するものである。さらに引張強度は、JIS Z 2201およびJIS Z 2241に準拠するものである。
発明[2]のAl合金接合体の製造方法によれば、時効処理を確実に行うことができるとともに、生産効率をより確実に向上させることができる。
発明[3]のAl合金接合体の製造方法によれば、鍛造加工を精度良く行うことができる。
発明[4]〜[6]のAl合金接合体の製造方法によれば、より一層機械的強度に優れたAl合金接合体を得ることができる。
発明[7]〜[9]のAl合金接合体の製造装置によれば、上記所望の特性を備えたAl合金接合体をより一層効率良く製造することができる。
発明[11]のAl合金鋳造部材の製造方法によれば、所望のAl合金溶湯を準備でき、高品質のAl合金鋳造部材を得ることができる。
発明[12]の溶接用Al合金鍛造部材の製造方法によれば、溶接用のAl合金製接合部品として最適なAl合金鍛造部材を製造することができる。
発明[13][14]の溶接用Al合金鍛造部材の製造方法によれば、所望のAl合金溶湯を準備でき、高品質のAl合金鍛造部材を得ることができる。
発明[15]のAl合金接合体は、溶接部の硬度低下が少ないため、所望の機械的特性および耐腐食性を確保しつつ、全体の重量を軽減することができる。
図1はこの発明の実施形態であるAl合金接合体の製造方法を説明するためのフローチャートである。 図2はAl合金における最大鋳造速度とDSAとの関係を示すグラフである。 図3は合金組成分析用のディスクサンプルを示す斜視図である。 図4AはAl合金製接合部品同士を溶接する直前の状態を示す断面図である。 図4BはAl合金製接合部品同士を溶接した直後の状態を示す断面図である。 図5はDASと時効時間との関係を示すグラフである。 図6は晶出部の平均粒径と伸びとの関係を示すグラフである。 図7はこの発明のAl合金接合体の製造装置の一例を示すブロック図である。 図8はこの発明のAl合金接合体の製造装置の他の例を示すブロック図である。
図1はこの発明の実施形態であるAl合金接合体の製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。
同図に示すように、所定の合金組成を有するAl合金溶湯を準備し、そのAl合金溶湯を用いて、所定の条件下で連続鋳造することによって、Al合金鋳塊を得る。続いてAl合金鋳塊に対して、均質化処理を施して、Al合金鋳造部材を得る。その後、Al合金鋳造部材に対して、熱間鍛造加工を施して、Al合金鍛造部材を得る。さらにそのAl合金鍛造部材に対し、溶体化処理を施した後、一段時効処理を施す。その後、時効処理(二段目以降の時効処理)を行わずに、一段時効処理後のAl合金鍛造部材どうしを溶接処理によって接合一体化して、本実施形態のAl合金製品をなすAl合金接合体を得るものである。
以下、本実施形態のAl合金接合体の製造方法について、製造手順に従って詳細に説明する。
本発明に用いられるAl鋳造素材としてのAl合金溶湯は、Feを0.2〜0.35質量%、Cuを0.1〜0.4質量%、Mnを0.3〜0.6質量%、Mgを2.0〜2.5質量%、Znを5.0〜5.5質量%、Zrを0.1〜0.2質量%、Tiを0.2質量%以下含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる合金組成を有している。
本発明における合金組成のうち、Feは、鋳造時の鋳塊割れや溶接時の溶接割れを抑制し、粗大再結晶を抑制する元素であり、本発明においては、Feの含有率(濃度)を0.2〜0.35質量%に調整する必要がある。好ましくはFeの含有率を0.30〜0.35質量%)に調整するのが良い。
Feの含有率が0.2質量%未満の場合には、上記の効果を十分に得ることができず、逆に0.35質量%を超える場合には、Al−Fe−Mn系の粗大晶出物が増加し、鍛造時の塑性加工性を阻害し、また、鍛造加工後の鍛造部材によって構成されるAl合金製品が最終的に車体等に組み付けられた際に、そのAl合金製品(組付部品)における伸性(延性)、靭性、疲労強度および衝撃特性が低下するおそれがあるので、望ましくない。
Cuは、アルミニウムマトリックスに固溶して、固溶体中の溶質の過飽和度を上げるだけではなく、Mgと共存することで、Al−Cu−Mg金属間化合物を析出させることで、強度を付与する元素である。
また、本発明において、Cuは、Mgと共存させ、Mgとの共存状態を制御することにより、Al合金における時効処理によるAl−Cu−Mg系金属間化合物の析出状態が微細緻密となるようにその析出の挙動を適切に変化させることができる。つまり、Cuは、従来施していた、80〜130℃で1〜16時間の一段目の時効処理を施した後に140〜190℃で2〜24時間の二段目の時効を行う二段時効処理によって得られていた機械的特性および耐腐食性能と同等の性能を、130〜170℃で比較的短時間で1回の時効処理(一段時効処理)を施すだけで得ることを可能とするために必要な元素である。ここで比較的短時間とは、例えば8〜12時間、好ましくは8時間程度である。
そのメカニズムは以下のように推定される。
すなわち、従来の通常のAl−Zn−Mg系合金においては、時効処理温度を高くしてしまうと、時効の初期にMg−Zn系金属間化合物がAlマトリックス内に粗大に析出してしまうために析出密度が粗くなってしまい、その後時効処理を継続しても析出密度が粗いままとなってしまう。このため、時効効果が充分に得られず、硬度の最大値が低くなってしまう。そこで、従来では、時効の初期の温度を低くして、Mg−Zn系金属間化合物をAlマトリックス内に微細に析出させ、その後の高温時効処理または長時間低温時効処理によって硬度上昇に寄与するサイズへと析出物を成長させることで、硬度の最大値を上昇させるようにしている。従って、時効処理としては、低温短時間と、高温短時間との2段階の時効処理もしくは、低温長時間の一段階の時効処理を用いざるを得なかった。従って、従来では、この時効処理に多大な時間と複雑な温度制御が必要となり、生産性の低下を来す要因となっていた。
これに対して、本発明では、Cuを特定の範囲で添加している。これにより、時効処理を高温で行っても、時効の初期段階で、Al−Cu−Mg系金属間化合物をAlマトリックス内に微細にかつ高密度で析出させることができ、その後、Zn−Mg系金属間化合物が、微細に析出したAl−Cu−Mg系金属間化合物の上に析出することとなる。その結果、強度に寄与するまでの大きさに成長したZn−Mg系金属間化合物がAlマトリックス内に微細かつ緻密に存在し、硬度の最大値を十分に上昇させることが可能となる。
本発明においては、Cuの含有率(濃度)を0.1〜0.4質量%に調整する必要があり、より好ましくは0.30〜0.40質量%に調整するのが良い。Cuの含有量が0.1質量%未満の場合には、上記の効果を十分に得ることができず、また、時効初期に生成させるAl−Cu−Mg系金属間化合物の量が少な過ぎるため、一段時効処理では強度向上効果を確実に得ることができず、二段時効処理が必要となるので望ましくない。逆にCuの含有率が0.4質量%を超える場合には、強度は向上するものの、耐応力腐食割れ性が著しく低下し、溶接割れを発生させる危険性が生じるので望ましくない。
本発明において、Mnは、粗大再結晶を抑制する元素である。本実施形態では、Mnの含有率(濃度)を0.3〜0.6質量%に調整する必要があり、好ましくは0.5〜0.6質量%に調整するのが良い。
Mnの含有率が0.3質量%未満の場合には、粗大再結晶の抑制効果が小さくなる。逆に、Mnの含有率が0.6質量%を超える場合には、Al−Fe−Mn系の粗大晶出物が増加して、鍛造時の塑性加工性を阻害してしまい、また、鍛造加工後のAl合金製品が、最終的に車体等に組み付けられた際に、そのAl合金製品(組付部品)における伸性、靭性、疲労強度が低下するおそれがあるので望ましくない。
Mgは、Znと共存することにより、MgZn金属間化合物(η相)を析出させて機械的強度を向上させる元素である。さらに、前述したように、Mgは、Cuと共存することで、時効初期におけるAl−Cu−Mg系金属間化合物の析出挙動を適切に変化させることができる。従って、Mgは、従来施していた、80〜130℃で1〜16時間の一段目の時効処理を施した後に140〜190℃で2〜24時間の二段目の時効処理を行う二段時効処理によって得られていた機械的特性および耐腐食性能と同等の性能を、130〜170℃で比較的短時間の1回の時効処理(一段時効処理)を施すだけで得ることを可能とするために必要な元素である。ここで比較的短時間とは、例えば8〜12時間、好ましくは8時間程度である。
本発明においては、Mgの含有率(濃度)を2.0〜2.5質量%に調整する必要があり、より好ましくは2.2〜2.5質量%に調整するのが良い。Mgの含有率が少な過ぎる場合には、上記の効果を十分に得ることが困難である。逆に多過ぎる場合には、応力腐食割れ性や焼入れ感受性が低下するので望ましくない。
Znは、上記したように、Mgと共存することにより、MgZn金属間化合物(η相)を析出させて機械的強度を向上させる元素である。
Znの含有量が、5.0質量%未満の場合には、十分な強度を得ることができず、5.5質量%を超える場合には、応力腐食割れ性が低下するので望ましくない。
従って、本発明においては、Znの含有率(濃度)を5.0〜5.5質量%に調整する必要があり、より好ましくは5.2〜5.5質量%に調整するのが良い。
本発明では、CuとMgとZnとが前述のような作用関係になるので、それらの含有量はそのような作用を発揮する上記所定の関係にあることが好ましい。
次にこの所定の関係を満たす際の条件について具体的に説明する。
(a)以下に説明するように、従来において、Al合金接合体に関して、生産効率の向上を図りつつ、硬度を向上させることは困難であった。
(a−1)まず、時効処理を施すには、対象物に一定量以上のエネルギーを付与することが必要である。そのエネルギー量は「温度×時間」に比例する。
(a−2)ここで、時効処理の効果としての硬度の向上を図るためには、Al−Zn−Mg系金属間化合物の析出が微細で緻密であることが必要である。またその析出量も一定量以上が必要である。
(a−3)一方、時効処理時間を短時間にして、生産効率を向上させることが望まれているが、そのためには処理温度を高温にすることになる。しかしながら、従来の技術では、処理温度を高温にすると、Al−Zn−Mg系金属間化合物の析出が粗くなってしまい、硬度の向上を図ることができなかった。
(b)そこで、本発明は、以下のように、生産効率の向上を図りつつ、硬度を向上させるようにしている。
(b−1)すなわち、処理温度が高温でも微細析出が進むAl−Cu―Mg系金属間化合物を析出させて、それを核にしてそれの上にAl−Zn−Mg系金属間化合物を析出させている。その結果、処理温度が高温でもAl−Zn−Mg系金属間化合物を微細に析出させることができる。
(b−2)ここで、「微細析出が進んでいるAl−Cu―Mg系金属間化合物の析出状態」とは、Al−Cu―Mg系金属間化合物が、母相と整合した状態で<100>方向のロッド状に形成された状態をいう。なおAl−Cu―Mg系金属間化合物が母相と整合した状態とは、母相を形成する原子と析出物を形成するAl−Cu―Mg系金属間化合物の原子とが、1対1の格子点対応をもって形成されている状態である。
(b−3)また「微細に析出したAl−Cu―Mg系金属間化合物を核にしてそれの上にZn−Mg系金属間化合物が析出した状態」とは、Zn−Mg系金属間化合物が上記(b−2)で析出したAl−Cu―Mg系金属間化合物の表面上に析出した状態のことで、塑性加工などによって移動する晶出物内の転位により晶出物がせん断されない大きさまで晶出物が成長し、母相と非整合の粒子を形成している状態をいう。なお非整合とは、母相を形成する原子と析出物を形成するZn−Mg系金属間化合物の原子とが1対1の格子点対応をしていない状態である。
(b−4)よって本発明では、既述したように、高温での時効処理ができるので、「温度×時間」における「時間」を短くすることができる。
(c)本発明では、上記(b−1)〜(b−3)の状態を実現するためには、Cu、Mg、Znの含有量が、「Zn量/(Mg量−αCu量)=3」の関係を満たす必要がある。ただしCu量=0.1〜0.4質量%、α=1〜20、好ましくは1.3〜6である。
(d)上記(c)に示す関係は、次のように説明することができる。
(d−1)Al−Cu―Mg系金属間化合物の微細析出に必要なCu量は、本発明では0.1〜0.4質量%である。一方、Al−Zn−Mg系金属間化合物を過不足なく析出させ、不要な晶出物を少なくし、合金の機械特性のひとつである伸びの低下を抑える点から、本発明ではZn:Mgの好ましい比率は、3:1である。
(d−2)しかし、前述したようにMgはCu共にAl−Cu―Mg系金属間化合物を形成する為、実際の合金に添加されるMg量と、Cu量との間で補正が必要となる。つまり上記したようにMg量−αCu量という補正が必要となる。本発明の合金では、α=1〜20とするのが好ましい。なお、αが1〜20の範囲内が好適であることは後の実施例からも明白である。
本発明において、Tiは、鋳造時の結晶粒の微細化を促進する元素であり、Bと一緒に添加することで、TiBを生成し、微細化が特に促進される。そこで、本発明のAl合金においては、Ti:Bを5:1の割合で添加することが望ましい。但し、TiBは大変硬質な粒子であるため、機械加工時のバイトの磨耗を促進する。本発明においては、Ti量としては、0.2質量%以下に調整する必要がある。
Zrは、粗大再結晶を抑制し、溶接部の結晶粒微細化を促進する元素であり、本発明においては、Zrの含有率(濃度)を0.1〜0.2質量%となるように調整する必要がある。
Zrの濃度が0.1質量%未満の場合には、上記の効果を十分に得ることが困難となる。またZrの濃度が0.2質量%を超える場合には、鋳造時の結晶粒微細化のために添加されるTiBのBと反応して、ZrBを生成し、結晶粒微細化を阻害してしまう。このため、TiBを大量に添加する必要が生じる。ところが、TiBおよびZrBは硬質粒子であるため、鍛造加工後の鍛造部材に対し切削加工を行うような場合に、その切削加工時のバイト寿命を短くしてしまうため、あまり大量の添加は望ましくない。従って、Zrの添加量(濃度)は、上記したように、0.1〜0.2質量%に調整する必要がある。
なお本発明において、より好ましくは、Tiの添加量を0.03〜0.05質量%、Zrの添加量を0.10〜0.15質量%に設定するのが良い。
本発明においては、以上の合金組成を有するAl合金溶湯を、連続鋳造することによってAl合金鋳塊を得るものである。
例えば本発明においては、上記の組成を有するAl合金溶湯の所望の組成(組成の適正値)は、以下の設計手順(ステップS1〜S9)によって得ることができる。
(1)ステップS1(第1準備工程:初期値設定)
本発明の製法に使用する予定(使用予定)のAl合金溶湯における製造条件の初期値(仮設値)を本発明の条件を満たす範囲内で適宜設定する。例えばFe=0.28質量%、Cu=0.25質量%、Mn=0.45質量%、Mg=2.25質量%、Zn=5.25質量%、Zr=0.15質量%、Ti=0.03質量%、α=3.5、とする。同様に、鋳造径および鋳造速度の初期値(仮設値)を、例えば50mm、380mm/minにそれぞれ設定する。発明において、このステップS1が、第1準備工程を構成している。
(2)ステップS2(第2準備工程:目標値設定)
製造する予定の時効後のAl合金鍛造部材に対して、目標とする特性および目標とする時効時間を設定する。特性とは、硬度、引張強度、0.2%耐力、伸び、応力腐食割れ特性、溶接後の硬度回復性、耐食性等であり、例えば顧客からの仕様に合わせて設定する。各特性の詳細については、後詳述する実施例等に記載されている。時効時間とは、時効後の硬度が最大値となるまでの時効処理時間であり、例えば6時間に設定する。
本明細書では、目標とする特性と目標とする時効時間とを含めたものを目標値と称する。本発明において、このステップS2が、第2準備工程を構成している。
(3)ステップS3(第3準備工程:試作品製造)
初期値を基にして得られた試作のAl合金溶湯を用いて、本発明に準拠した試作のAl合金鍛造部材(試作品)を製造する(試作品製造工程)。
すなわち試作のAl合金溶湯に対し、本発明のAl合金鋳塊を得る工程に準拠した工程と、Al合金鋳造部材を得る工程に準拠した工程と、本発明のAl合金鍛造部材を得る工程に準拠した工程と、本発明の溶体化処理を施す工程に準拠した工程と、本発明の一段時効処理を施す工程に準拠した工程と、を順次行って、試作のAl合金鍛造部材(試作品)を製造する。そしてその試作品について、実際の特性および実際の時効時間を測定する。特性および時効時間については、既述したとおりである。
本明細書では、実際の特性と実際の時効時間とを含めたものを実測値と称する。また、本発明においては、このステップS3が、第3準備工程を構成している。
(4)ステップS4(Zn量調整)
ステップS3で得られた試作品における実測値を、上記目標値と比較して、硬度、引張強度、0.2%耐力を向上したいときは、Znを、本発明の条件を満たす範囲内でプラス(増量)し、伸び、応力腐食割れ特性を向上したいときはマイナス(減量)し、Znの仮設値(初期値)を変更(再設定)する。プラス幅、マイナス幅は例えば0.1質量%とする。本発明においては、このZnの仮設値を変更する工程が、第4準備工程を構成している。
そして、実測値と目標値との差が例えば5%以内になるまで、このステップS4と、上記ステップS3とを繰り返し行う。こうして、Znの含有量を適正値に調整する。
(5)ステップS5(Mg量調整)
上記ステップS3またはS4で得られた試作品における実測値を、目標値と比較して、硬度、引張強度、0.2%耐力を向上したいときは、Mgを、本発明の条件を満たす範囲内でプラスし、伸び、応力腐食割れ特性を向上したいときはマイナスして、Mgの仮設値(初期値)を変更(再設定)する。プラス幅、マイナス幅は例えば0.1質量%とする。本発明においては、このMgの仮設値を変更する工程が、第4準備工程を構成している。
そして、実測値と目標値との差が例えば5%以内になるまで、このステップS5と、上記ステップS3とを繰り返し行う。こうして、Mgの含有量を適正値に調整する。
(6)ステップS6(Cu量調整)
上記ステップS3〜S5のいずれかで得られた試作品における実測値を、目標値と比較して、硬度、引張強度、0.2%耐力を向上したいときは、Cuを、本発明の条件を満たす範囲内で、プラスし、伸び、応力腐食割れ性、溶接後の硬度回復性を向上したいときはマイナスして、Cuの仮設値を変更する。プラス幅、マイナス幅は例えば0.1質量%とする。本発明においては、このCuの仮設値を変更する工程が、第4準備工程を構成している。
そして、実測値と目標値との差が例えば5%以内になるまで、このステップS6と、上記ステップS3とを繰り返し行う。こうして、Cuの含有量を適正値に調整する。
(7)ステップS7(補正値αの調整)
上記ステップS3〜S6のいずれかで得られた試作品における実測値を、目標値と比較して、溶接後の硬度回復性を向上したいときは、αを、本発明の条件を満たす範囲内でプラスし、時効時間を短縮したいときはマイナスして、αの仮設値を変更する。プラス幅、マイナス幅は例えばα×0.1とする。
そして、実測値と目標値との差が例えば5%以内になるまで、このステップS4と、上記ステップS3とを繰り返し行う。こうして、αを適正値に調整する。
(8)ステップS8(Mn及びZr量の調整)
上記ステップS3〜S7のいずれかで得られた試作品に対して、粗大再結晶を抑制することによる引張強度、0.2%耐力、伸びを向上したいときは、Mnを、本発明の条件を満たす範囲内でプラスし、鍛造加工時の塑性加工性を向上させ複雑形状の成形品の寸法精度を向上させたいときはマイナスして、Mnの仮設値を変更する。プラス幅、マイナス幅は例えば0.1質量%とする。本発明においては、このMnの仮設値を変更する工程が、第4準備工程を構成している。
そして、所望の特性が得られるまで、このステップS8と、上記ステップS3とを繰り返し行う。こうして、Mnの含有量を適正値に調整する。
更に、粗大再結晶を抑制することによる引張強度、0.2%耐力、伸びを向上したいときは、Zrを、本発明の条件を満たす範囲内でプラスし、鍛造加工時の塑性加工性を向上させ複雑形状の成形品の寸法精度を向上させたいときはマイナスして、Zrの仮設値を変更する。プラス幅、マイナス幅は例えば0.1質量%とする。本発明においては、このZrの仮設値を変更する工程が必要に応じて、第4準備工程の構成に含まれる。
そして、所望の特性が得られるまで、このステップS8と、上記ステップS3とを繰り返し行う。こうして、Zrの含有量を適正値に調整する。
(9)ステップS9(Fe量調整)
上記ステップS3〜S8のいずれかで得られた試作品に対して、粗大再結晶を抑制することによる引張強度、0.2%耐力、伸びを向上したいときは、Feを、本発明の条件を満たす範囲内でプラスし、耐食性を向上したいときは、マイナスして、Feの仮設値を変更する。プラス幅、マイナス幅は例えば0.1重量%とする。本発明においては、このFeの仮設値を変更する工程が、第4準備工程を構成している。
そして、所望の特性が得られるまで、このステップS9と、上記ステップS3とを繰り返し行う。こうして、Feの含有量を適正値に調整する。
(10)以上のステップS1〜S9によって、合金組成を決定することができる。または、全ての合金成分については、一緒に合わせて調整をすることもできるが、ステップS4〜S7を優先的に同時に実行することができる。
なお、鋳造部材の鍛造加工によって、鋳塊組織を微細化することによる鍛造成型性を向上したいときは、Tiを、本発明の条件を満たす範囲内でプラスし、機械加工性を向上したいときはマイナスして、Tiの仮設値を変更すれば良い。プラス幅、マイナス幅は例えば0.1重量%とする。
本発明において、連続鋳造法としては、従来より公知の連続鋳造法を用いることができる。例えばホットトップ垂直連続鋳造法、気体加圧式ホットトップ垂直連続鋳造法、水平連続鋳造法等の鋳造法を用いることができる。中でも特に、気体加圧式ホットトップ鋳造機を用いることが好ましい。
ここで本発明の合金組成では、連続鋳造時において、「[最大鋳造速度(mm/min)]≦−1.43×[鋳造径(mm)]+500」の条件を満足させる必要がある。
すなわち最大鋳造速度が速過ぎる場合には、後述のDASが粗くなり、さらに速度を上げると、鋳塊割れが発生し、好ましくない。また、理想的な組織を得るためには、鋳造速度を、鋳造径に対して反比例させる必要がある。このため、鋳造時に、上記したように[最大鋳造速度(mm/min)]が、「−1.43×[鋳造径(mm)]+500」以下となるように、鋳造速度を制御する必要がある。
ここで鋳造安定時の鋳造速度の下限値は、200mm/min以上とすることが鋳塊の表面欠陥を防ぐ点から好ましい。
なお、鋳造速度、最大鋳造速度については、上記[課題を解決するための手段]の欄で説明した通りである。
本発明においては、上記のAl合金鋳塊は、デンドライト2次アーム間隔(DAS)を40μm以下に調整する必要がある。
すなわちAl合金鋳塊におけるDASが40μmを超える場合、機械的強度が低下して、所望の強度が得られず、さらに塑性加工時の延性が低下するため、好ましくない。
従って、本発明においては、DASを上記したように、40μm以下にする必要があり、好ましくは35μm以下、より好ましくは20μm以下にするのが良い。
次に、本発明において、DASの大きさの制御方法について説明する。
Figure 0005819294
表1は最大鋳造速度とDASとの関係を示すものである。表1から判るように、最大鋳造速度とDASとの間には密接な関係があり、最大鋳造速度に基づいて、DASの大きさを制御することが可能である。
また図2は最大鋳造速度とDASとの関係をグラフ化したものであり、図中の○印はDASが40μm以下のものであり、×印はDASが40μmを超えるものである。さらに同グラフには「[最大鋳造速度(mm/min)]=−1.43×[鋳造径(mm)]+500」で表される直線を記載している。
同図に示すように、[最大鋳造速度(mm/min)]=−1.43×[鋳造径(mm)]+500の直線を境に、下側にDASが40μm以下のもの、上側に40μmを超えるものが配置されており、「[最大鋳造速度(mm/min)]≦−1.43×[鋳造径(mm)]+500」の関係を満足させることによって、上記したように、DASの大きさを40μm以下に抑えることができる。
なお本発明において、DASの測定は、軽金属学会発行の『軽金属(1988)、Vol.38、No.1、p45』に記載の『デンドライトアームスペーシング測定手法』に従って行うものである。
また本発明のAl合金鋳塊は、晶出物の平均粒径を8μm以下に調整する必要があり、好ましくは1μm以上に調整するのが良い。すなわち晶出物の平均粒径が8μm以下であれば、鍛造時の塑性加工性が良好となるので、鍛造割れの発生を抑えることができる。さらに、鍛造製品における伸性、靭性、疲労強度も良好なものとなるので、鍛造割れの発生を抑えることができる。
なお平均粒径は、従来の手法、例えば、以下の手順によって、結晶組織を顕微鏡で観察した画像から切片法によって求めることができる。
先ず、鍛造加工品の断面組織のミクロ写真を倍率100倍で撮影し、この写真上で任意に縦及び横の長さがそれぞれL1及びL2の直線を引く。次いで、L1及びL2の長さの直線上を交差する形で存在する粒界の数を数えてそれぞれn1及びn2とし、下記数式1にて平均粒径を求め、これをミクロ写真から求めた結晶粒の平均粒径とする。平均粒径の大きさは、L1及びL2の長さには依存しないで求めることができる。
平均粒径=(L1+L2)/(n1+n2)・・・数式1
なおこの発明において、晶出物とは、Al−Si系の晶出物、Al−Fe−Mn系の晶出物、Al−Cu−Mg系の晶出物が結晶粒界に粒状または片状に晶出したものを言う。
本発明においては、上記のAl合金鋳塊に対して均質化処理を行って、Al合金鋳造部材(溶接用Al合金鋳造部材)を得るものである。
本発明において、均質化処理は、400〜600℃、好ましくは430〜500℃の温度下で、1時間以上、好ましくは7時間程度保持する処理である。
この均質化処理の処理温度が低過ぎる場合には、溶質原子であるMg、Zn、Cu等の元素の拡散速度が遅くなるため、最終凝固部における溶質元素のミクロ偏析が残存することになり、鍛造時の塑性加工性を阻害するおそれがある。さらに処理時間が1時間未満の場合には、溶質原子が拡散に要する時間を確保できないため、処理温度が低いときと同様の弊害が生じるおそれがある。また処理温度が600℃より高いと、鋳塊が局部融解するおそれがあり、好ましくない。
なお、均質化処理においては、再結晶抑制に有効なZr金属間化合物の析出も同時平行にて進行する。Zr金属間化合物の析出は、400℃未満(好ましくは430℃未満)でも進行するが、長時間の処理が必要となり一段時効処理に適さず、また500℃を超えると、均一な析出とならない。従って、均質化処理においては、処理温度を430〜500℃に調整するのが望ましい。
以上のように得られた本発明のAl合金鋳造部材は、鍛造素材として鍛造荷重を低くすることが可能で、更には、塑性加工性が良好なので鍛造時の成形性に優れることから好適に用いられるものである。
すなわち上記Al合金鋳造部材を鍛造素材として、素材温度(予備加熱温度)350〜500℃の温度条件で、熱間鍛造することによって、Al合金鍛造部材を製造するものである。好ましくは素材温度を460℃以下に設定するのが良い。
なお、鍛造素材となる鋳造部材は、鍛造金型に投入する前に、機械加工(例えば切断加工、表層の切削加工)を行ったり、さらに必要に応じて塑性加工(例えば据え込み加工)を行うのが通例である。
また言うまでもなく、鍛造工程は複数回行うようにしても良い。
ここで、熱間鍛造時の素材温度が350℃より低い場合には、鍛造時の塑性加工性が悪化し、所望する形状の鍛造製品が得られないばかりか、金型の破損、鍛造製品の割れを生じる原因となる。また熱間鍛造時の温度が500℃よりも高い場合には、表面部におけるAl−Zn−Mg−Cu系晶出物の共晶融解が生じることにより、鍛造製品の表面付近に穴欠陥が生じたり、表層部に融点が低い金属の凝集が生じるおそれがある。従って本発明においては、熱間鍛造時の温度条件を、350〜500℃に調整するのが望ましい。
また本発明においては、上記のように得られたAl合金鍛造部材に対し、400〜500℃(好ましくは460℃)で溶体化処理としての熱処理を行うことによって、鍛造部材の機械的強度をより一層向上させることができる。具体的には例えば、溶体化処理によって鍛造部材を400〜500℃で2〜8時間保持した後に、焼き入れ処理によって25〜80℃の水に投入して急冷する。
この溶体化処理において、処理温度が400℃よりも低い場合、析出強化元素の固溶量が少なくなるため、その後の時効処理での析出量が少なくなり、十分な機械的強度が得られなくなるおそれがある。また処理温度が500℃よりも高い場合には、共晶融解により、鍛造製品の表面付近に穴欠陥および融点が低い金属の凝集が生じるおそれがある。
本発明においては、溶体化処理を施したAl合金鍛造部材に一段時効処理としての熱処理を施して熱処理済のAl合金鍛造部材(溶接用Al合金鍛造部材)を得るものである。
本発明において、一段時効の熱処理に用いる装置は、可能な限り昇温時間が短く、100〜300℃での温度誤差が少ないもの、例えば±3℃以内に制御できるものが良い。具体的には、熱風循環式電気炉、熱風循環式ガス炉等を例示することができる。温度条件は、例えば、室温(約25℃)から150℃まで、150℃/時間で昇温し、その後130〜170℃、好ましくは150±5℃で、8〜12時間、好ましくは10±0.5時間保持し、その後、150℃から室温(25℃)まで、30〜300℃/時間で降温する。
なお、昇温時間は、短い方が好ましい。すなわち、熱処理時間が短縮され、熱処理時間に起因する特性のバラツキが少なくなり、生産効率が高くなるからである。
本発明においては、上記の特性を有するAl合金鍛造部材を確実に得るために、一段時効処理は、温度条件を130〜170℃に設定し、所要時間を溶体化処理時間の1〜6倍に設定するのが良い。つまり、一段時効処理を、130〜170℃×[溶体化処理時間×(1〜6)]の条件で行うのが良い。
また本発明において、溶体化処理後、一段時効処理を行う前に、室温状態に放置する時間は、Al合金鍛造部材の特性に特に影響を及ぼすようなことはない。室温でもAl−Cu−Mg系析出物は先に析出するからである。従って、溶体化処理後の室温状態に放置する時間は、製品の生産工程の段取りに合わせて自由に設定することができる。例えば、溶体化処理を行った後、直ちに、一段時効処理を行っても良いし、溶体化処理後、長時間あるいは適当な時間、室温程度で放置してから、一段時効処理を行うようにしても良い。その結果、製造工程の条件設計の自由度が大きくなるので好ましい。
本発明においては、Al合金鋳塊におけるDASを40μm以下に調整する必要があり、晶出物の平均粒径を8μm以下に調整する必要がある。以下にその具体的な理由を説明する。
図5はDASと時効処理(一段時効処理)における時効時間との関係を示すグラフである。同グラフにおいて、時効時間とは、既述したように、時効後の硬度が最大となるまでの時間をいう。さらに同グラフにおける時効時間は、DASが33μmのサンプルの時効時間を100としたときの相対値で示している。また時効温度は160℃に設定され、晶出物の平均粒径は7μmに調整されている。
同グラフから明らかなように、DASが40μm以下の場合、時効時間が短縮される。
つまり本発明では、DASを40μm以下に調整しているため、時効時間を短縮でき、生産効率を向上させることができる。その理由は、本発明のようにDASが小さい場合、粒界を介して溶質原子が拡散する量が多く、一段時効処理を行っても、析出時の溶質原子の拡散速度が速くなるからである。その結果、時効時間が短縮される。
DASの値は、鋳塊の冷却速度で制御することができる。すなわちこの冷却速度が大きいとDASが小さくなり、冷却速度が小さくなるとDASが大きくなる。
参考までに、図5の基礎となる具体的な数値データ(基データ1〜4)を以下に示す。以下の基データにおいて、時効時間は既述した通り、基準値を100とした相対値で示している。また晶出物の平均粒径は全て7μmに調整されている。
基データ1:DAS=108μm 時効時間=600
基データ2:DAS=51μm 時効時間=300
基データ3:DAS=39μm 時効時間=150
基データ4:DAS=33μm 時効時間=100(基準値)
図6は晶出物の平均粒径と時効処理後(一段時効処理後)の伸びとの関係を示すグラフである。同グラフにおいて、伸びは、460℃×4Hrでの溶体化処理、水温65℃での水焼き入れ処理および160℃×8Hrでの時効処理を行った後に測定したものである。さらにこの伸びは、晶出物の平均粒径が12.4μmのサンプルの伸びを100としたときの相対値で示している。またDASは35μmに調整されている。
同グラフから明らかなように、晶出物の平均粒径が8μm以下の場合、伸びが大きくなっている。つまり本発明においては、晶出物の平均粒径を8μm以下に調整しているため、伸びが大きく機械的特性に優れた鍛造部材を得ることができる。
参考までに、図6の基礎となる具体的な数値データ(基データ11〜14)を以下に示す。以下の基データにおいて、伸びは既述した通り、基準値を100とした場合の相対値で示している。またDASは全て35μmに調整されている。
基データ11:晶出物=12.4 伸び=100(基準値)
基データ12:晶出物=8.0 伸び=150
基データ13:晶出物=6.8 伸び=250
基データ14:晶出物=6.5 伸び=300
なお、図5,6のグラフは、後述する実施例1において表1、図2を基にして、鋳造径、鋳造速度を変化させることにより、DAS、晶出物の大きさを調整したものである。
本発明において、溶体化処理および一段時効処理等の熱処理が施された熱処理済Al合金鍛造部材は、複数のAl合金製の接合部品が溶接一体化されて得られる高強度のAl合金接合体の接合部品として好適に採用することができる。
例えば図4Aに示すように、本発明によるAl合金鍛造部材11を、他に準備したAl合金製の接合部品(他の接合部品)12と溶接することにより、図4Bに示すように、Al合金接合体(Al合金溶接構造体)10に組み上げられる。
接合する他の接合部品12としては、水素ガス量が低減されたAl合金製のものであれば良く、同様の組成を有するAl合金製の接合部品であっても良い。例えば、他の接合部品12としては、本発明による熱処理済Al合金鍛造部材からなるもの、前述したAl合金鋳造部材を押出加工して得られたAl押出材からなるもの、前述したAl合金溶湯から得たAl鋳物からなるもの、アルミダイキャスト品からなるもの等を挙げることができる。中でも本発明による熱処理済Al合金鍛造部材からなるものを用いるが好ましい。すなわちこの場合には、本発明による熱処理済Al合金鍛造部材どうしを接合することになるため、互いの金属組織や金属組成が等しくなり、効率良く強固に溶接することができる。
さらに本発明に用いられる溶接方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、TIG溶接やMIG溶接等の溶接方法を好適に用いることができる。また接合面の突合せ方法は、突合せ継手、角継手、T継手、重ね継手等の種々の方法を用いることができる。
本発明の熱処理済Al合金鍛造部材は、Cuの添加量を0.1〜0.4質量%に抑えてあるので、焼入れ感受性が鈍感となっている。従って、溶接時に高温にAl合金鍛造部材の温度が上昇した後に、自然に冷却されるだけで、焼きが入り、その後放置しておくだけで自然時効されることにより、硬度が上昇する。このため、溶接後の硬度回復性能に優れ、十分な強度を有しているため、図4Aに示すように、当該Al合金鍛造部材を接合部品11,12として、突き合わせて溶接して、図4Bに示すようにAl合金接合体10を製作した際に、十分な硬度を確保することができる。
本発明ではCuを0.1〜0.4質量%としているので、本発明の一段時効を施すことができ、本発明の一段時効処理だからこそ熱影響がない部分と熱影響部の硬度差が少なくなる。その結果、Al合金接合体としての部材全体としての硬度回復性能が良くなっている。
すなわち同図に示すように、接合部品11,12どうしを溶接した場合、溶接部13における肉盛り部14は、溶接熱の悪影響によって硬度の低下を来したとしても、断面積が大きくなっているため、耐荷重が大きくて破断等の不具合が生じることはない。一方、肉盛り部14近傍の熱影響部15は、断面積に変化がなく、断面積が小さいため、溶接熱によって、焼きなまされると、硬度の低下を来し、破断等の不具合が生じるおそれがあるが、本発明のAl合金鍛造部材(接合部品)11,12は、溶接後の硬度回復性能に優れているため、熱影響部15は、溶接後、十分に硬度が回復し、所望の強度を確実に確保することができる。
具体的に本発明においては、Al合金溶接体15における熱影響部15の硬度が、溶接による熱影響のない他の部位16の平均硬度に対し、0.8以上の比率となり、十分な硬度を確保することができる。数値的に示すと、熱影響部15の硬度(ヴィッカース硬度)を「V」、熱影響のない他の部位16の硬度(ヴィッカース硬度)を「V」としたとき、 V/V≧0.8の関係式が成立するものである。
換言すると、「硬度回復性能」が優れている為、溶接部の硬度が溶接の影響を受けない母材部とほぼ同程度の硬度となり、その結果「V/V≧0.8」となる。
従って、本発明の製造方法によって得られるAl合金接合体(Al合金製品)は、Fe:0.2〜0.35質量%、Cu:0.1〜0.4質量%、Mn:0.3〜0.6質量%、Mg:2.0〜2.5質量%、Zn:5.0〜5.5質量%、Zr:0.1〜0.2質量%、Ti:0.2質量%以下含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる合金組成を有し、熱影響部15の硬度が、溶接による熱の影響が及ばない部位16の平均硬度に対し、0.8以上の比率となっている。
なお言うまでもなく、溶接による熱の悪影響を受けない部位(その他の部位16)は、溶接熱による硬度の低下を来すことがないので、十分な強度を維持することができる。
このように本発明の製造方法によって得られたAl合金接合体は、高強度なAl合金溶接構造用の部品として好適に使用することができる。
この高強度溶接造構用の部品としては、例えばゴルフクラブベッド、オートバイ用燃料タンク、オートバイ用フレーム、オートバイ用スイングアーム、四輪自動車用サブフレーム、四輪自動車用バンパービーム、四輪自動車用ステアリングコラムシャフト、鉄道車両用構造体に用いる部品等を挙げることができる。
参考までに、上記特許文献2(特開昭57−158360号公報)に開示される従来のAl−Zn−Mg系合金製の鍛造部材は、時効時間が最長で32時間(一段目16時間、二段目16時間の合計32時間)必要となる。一方、一般的な溶体化処理に要する時間は2〜8時間程度である。従って、溶体化処理と時効処理とを連続して処理するには、溶体化処理と時効処理との時間的なバランスをとる必要がある。例えば長時間の時間を要する時効処理用の時効処理炉を、短時間で処理できる溶体化処理用の溶体化処理炉の5倍も多く設置する必要があり、設備導入費用が増大するばかりか、設備の大型化を来たしてしまう。さらに生産計画を立てる上でも煩雑であり、生産効率が低下してしまう。
これに対し、本発明の製造方法を用いると、時効処理時間は最長でも12時間とすることができ、溶体化処理時間に対し大きく異ならない程度の時間に調整することができる。また、本発明では、単純な、一段の時効処理としている為、時効に用いる炉の温度制御に複雑なプログラムによる制御を行う必要がなく、単純な温度制御機能を有した加熱炉を利用することが出来る。具体的には、既述したように、時効処理時間は、溶体化処理時間の1〜6倍の時間となる(時効処理時間/溶体化処理時間=1〜6となる)。その結果、時効処理炉を溶体化処理炉に対しほぼ同数で同じ処理能力となるような生産設備を導入すれば良く、設備導入費用の削減および設備の小型コンパクト化を図ることができるとともに、生産計画も容易となり、より一層生産性を向上させることができる。
またこのように小型でコンパクトな設備で溶体化処理と時効処理を20時間以内に連続して行うことができるため、生産のリードタイムを短縮でき、製品在庫量の削減も可能となる。その上さらに、溶体化処理と時効処理を合わせた時間が20時間以内にできるため、例えば、溶体化処理および時効処理を自動化された炉で行うこととし、日中に被処理物(Al合金鍛造部材)を炉内にセットして処理運転を開始し夜間も処理運転を継続し、翌日の日中に被処理物を取り出し、次の被処理物をセットするという流れで効率良く生産をすることができる。
また、時効時間の短縮を図ることによって、時効処理に必要な燃料量を削減でき、近年大きな社会問題となっているCO排出削減にも十分貢献することができる。
さらに従来のAl−Zn−Mg系合金に比べて、高強度であることから、例えば、自動車部品に適用した場合、部品をより一層小型軽量化することができ、ひいては自動車の環境性能の向上および運動性能をより一層向上させることができる。
既述したように、本発明の鍛造部材としての被処理材では、単純な一段時効での処理が可能となった為、溶体化のために所定の温度に定常的に制御されたトンネル炉内、時効処理のために所定の温度に定常的に制御されたトンネル炉内を搬送手段により搬送する生産システム(製造装置)を用いることができる。
特に本発明においては、溶体化用炉と焼入れ用水槽と時効用炉とが搬送コンベア(ベルトコンベア、ローラーコンベアなど公知のコンベア)で連結された連続熱処理炉を用いるが、より好ましい。
次に本発明のAl合金接合体の製造装置としての連続熱処理炉の一例を図に沿って説明する。
図7は連続熱処理炉の一例を説明するためのブロック図である。同図に示すようにこの連続熱処理炉は、被処理材WとしてのAl合金鍛造部材の搬送経路の上流側から下流側に向けて、溶体化昇温ゾーン21、溶体化ゾーン22、水槽ゾーン23、時効昇温ゾーン24、時効ゾーン25および時効降温ゾーン26がこの順に配置されている。
溶体化昇温ゾーン(溶体化昇温用熱処理ゾーン)21は、被処理材Wを溶体化温度まで加熱するものでる。溶体化ゾーン(溶体化用熱処理ゾーン)22は、被処理材Wを溶体化温度に保持するものである。水槽ゾーン23は、被処理材Wを水中に浸漬して焼き入れ処理を施すものである。時効昇温ゾーン(時効昇温用熱処理ゾーン)24は、被処理材Wを時効温度まで加熱するものである。時効ゾーン(一段時効用熱処理ゾーン)25は、被処理材Wを時効温度に保持するものである。時効降温ゾーン(時効昇温用熱処理ゾーン)26は、被処理材Wを室温程度まで冷やすものである。
なお本実施形態においては、複数のゾーン21〜26のうち、水槽ゾーン23の除いたものを、熱処理ゾーンと称する。
各熱処理ゾーン21,22,24〜26は、例えば温度制御可能な加熱炉(熱処理炉)によって構成されている。各加熱炉は、それぞれ異なる温度で制御できるようになっている。
例えば各加熱炉が燃料の燃焼熱を利用した燃焼炉である場合には、各燃料炉(各熱処理ゾーン)ごとに燃焼用の燃料量が制御される。また、各加熱炉が電気炉である場合には、各加熱炉(各熱処理ゾーン)ごとに供給される電流量が制御される。
溶体化昇温ゾーン21の上流側から時効降温ゾーン26の下流側にかけて、各ゾーン21〜26を通過するように複数の搬送コンベア27…が設けられている。なお本実施形態では、この搬送コンベア27が、被処理材Wを搬送するための搬送手段を構成している。
水槽ゾーン23は、例えば水が貯留された水槽231を備えている。
水槽ゾーン23内における搬送コンベア27は、被処理材Wを水中に投入して引き上げることができるように投入コンベア271、水中搬送コンベア272および取出コンベア273を有している。
投入コンベア271は、上流側が水上に配置され、かつ下流側が水中に配置されるように傾斜している。水中搬送コンベア272は、上流側が投入コンベア271の下流側に対応して配置され、かつ全体が水中に埋没した状態で水平に配置されている。取出コンベア273は、上流側が水中搬送コンベア272の下流側に対応して水中に配置され、かつ下流側が水上に配置されるように傾斜している。
そして、コンベア27によって、溶体化ゾーン22から水槽ゾーン23に搬送された被処理材Wは、投入コンベア271によって水槽231内の水中に投入されて、水中搬送コンベア272に移載される。さらに被処理材Wは、水中搬送コンベア272によって水中を通過するように搬送されて、取出コンベア273に移載される。さらに被処理材Wは、取出コンベア273によって水中から引き出されるように搬送されて、コンベア27によって時効昇温ゾーン24に搬送される。
ここで、本発明においては、被処理材Wを水槽231内に投入する投入手段は、上記の投入コンベア271に限られるものではない。例えば投入コンベア271を水上で水平に配置して、投入コンベア271の下流側と水中搬送コンベア272との間に段差を設けておき、その段差を介して、投入コンベア271から水中搬送コンベア272に被処理材Wを移載するようにしても良い。さらにリフター等の投入手段を用いて、被処理材Wを水上から水中に移載するようにしても良い。この投入手段は、搬送手段を構成する。
さらに本発明においては、水槽内の水中搬送コンベア272から水上に被処理材Wを取り出す取出手段として、リフター等を用いるようにしても良い。この取出手段は、搬送手段を構成する。
また各搬送コンベア27は、ベルトコンベア、ローラーコンベアなど公知のコンベアによって構成されている。
そして搬送コンベア27上における溶体化昇温ゾーン21の上流側に載置された被処理材Wは、搬送コンベア27によって搬送されて、投入口211を介して、溶体化昇温ゾーン21内に導入され、各ゾーン21〜26を順次連続して通過し、排出口261を介して、時効降温ゾーン26の下流側まで搬送されるようになっている。
またゾーン21〜26の各間には、開閉自在な仕切扉28…が配置されており、コンベア27によってゾーン21〜26の各間を移動する際には、対応する仕切扉28が開放されて、隣り合うゾーン間を移動できるようになっている。
本実施形態において、各ゾーン21〜26の長さ(コンベア27による搬送距離)は、各ゾーン21〜26での必要な処理時間の長短に合わせて調節されており、コンベア27によって被処理材Wが一定速度で各ゾーン21〜26を連続して移動することにより、被処理材Wに対して各ゾーン21〜26による所定の処理が施されるようになっている。
また本実施形態の連続熱処理炉には、制御装置29が設けられている。そして、この制御手段29が、信号線291を介して、各熱処理ゾーン21,22,24〜26内の加熱するヒータ等の加熱駆動手段、コンベア27を回転駆動するモータ等の駆動手段、開閉扉28の開閉するモータ等の駆動手段の駆動をそれぞれ適宜制御して、被処理材Wに対し各ゾーン毎で所定の処理が行われるようになっている。
すなわちコンベア27によって溶体化昇温ゾーン21に導入された被処理材Wは、そのゾーン21を通過する間に、所定の溶体化温度まで加熱される。
さらに溶体化昇温ゾーン21から溶体化ゾーン22に導入された被処理材Wは、そのゾーン21を通過する間、溶体化処理温度に保持されて、溶体化処理が施される。
さらに溶体化ゾーン22から水槽ゾーン23に導入された被処理材Wは、水槽内の水中を通過することによって、焼き入れ処理が施される。
さらに水槽ゾーン23から時効昇温ゾーン24に導入された被処理材Wは、そのゾーン24を通過する間に、所定の時効温度まで加熱される。
さらに時効昇温ゾーン24から時効ゾーン25に導入された被処理材Wは、そのゾーン25を通過する間、時効温度に保持されて、時効処理が施される。
さらに時効ゾーン25から時効降温ゾーン26に導入された被処理材Wは、そのゾーン26を通過する間に、所定の温度(室温程度)まで冷やされる。
以上のように、上記一例の連続熱処理炉によれば、投入口211から投入した被処理材Wは、搬送コンベア27によって搬送されて、各ゾーン21〜26を順次通過して、溶体化処理や時効処理等の所定の熱処理や、焼き入れ処理が施されて、排出口261から排出される。このように溶体化処理、焼き入れ処理、時効処理を自動的に簡単に行うことができ、生産効率を向上させることができる。
またこのような連続熱処理炉を用いることで、バッチ式炉のように炉内温度の上昇や下降を繰り返すような面倒な操作が必要ない。従って、本実施形態連続熱処理炉においては、各ゾーンの炉内の温度状態を定常化することができ、より安定した温度を維持することがき、より一層品質を向上させることができる。
なお、上記図7に示す連続熱処理炉の一例においては、被処理材Wを溶体化温度まで加熱する溶体化昇温ゾーン21、被処理材Wを時効温度まで加熱する時効昇温ゾーン24、時効処理された被処理材Wを室温まで冷却する時効降温ゾーン26を設けるようにしているが、本発明においては、これらのゾーン21,24,26は必ずしも設ける必要はない。
もっとも、搬入された被処理材を溶体化温度まで加熱する際の温度制御が重要な場合は、溶体化処理ゾーンの前に溶体化昇温ゾーンを設けるのが好ましい。さらに時効温度まで加熱する際の温度制御が重要な場合は、時効ゾーンの前に時効昇温ゾーンを設けるのが好ましい。さらに時効温度から室温まで降温させる際の温度制御が重要な場合は、時効ゾーンの後に時効降温ゾーンを設けるのが好ましい。
また上記図7に示す連続熱処理炉では、複数のゾーン21〜26の各間に仕切扉28を設けるようにしているが、本発明において、仕切扉28は必ずしも設ける必要はない。もっとも、仕切扉を設けることによって、隣り合うゾーン間での温度干渉等を有効に防止できるため、複数のゾーンの各間に仕切扉を設けるのが好ましい。
ところで本発明のAl合金接合体としての被処理材Wでは、時効処理時間は溶体化処理時間に対し大きく異ならない程度の時間に調整することができる。具体的には、時効処理時間/溶体化処理時間=1〜6となる。
そこで、本発明においては、図8に示すような連続熱処理炉も採用することができる。この連続熱処理炉は、鍛造装置31と、溶接装置等の後工程装置32との間に配置されるものであり、溶体化ゾーン22と、水槽ゾーン23と、時効ゾーン25とを備えている。
鍛造装置31および後工程装置32間において、溶体化ゾーン22と、時効ゾーン25とは並列に配置されて、溶体化ゾーン22内で被処理材Wを搬送する搬送コンベア225と、時効ゾーン25内で被処理材Wを搬送する搬送コンベア255とが平行で逆向きとなるように配置されている。そして、溶体化ゾーン22の下流側と、時効ゾーン25の上流側とが対応して配置されるとともに、溶体化ゾーン22の上流側と、時効ゾーン25の下流側とが対応して配置されている。
また溶体化ゾーン22の下流側端部に対応して水槽ゾーン23の上流側(搬入口)が配置されるとともに、時効ゾーン25の上流側端部に対応して水槽ゾーン23の下流側(排出口)にが配置されている。これにより溶体化ゾーン22から水槽ゾーン23に搬入された被処理材Wがコンベア235によって水槽ゾーン23を通過して時効ゾーン25に搬入されるようになっている。このように溶体化ゾーン22を通った被処理材Wが、水槽ゾーン23の周辺で折り返されて(Uターンして)時効ゾーン25を通過するようになっている。
また水槽ゾーン23内のコンベア235は、上記図7に示す連続熱処理炉と同様に、被処理材Wを水槽内の水中に通過させることができるようになっている。
なお溶体化処理および時効処理の処理時間は異なっているため、溶体化ゾーン22および時効ゾーン25の各搬送コンベア225,255による搬送速度を同じ速度にすると、溶体化ゾーン22および時効ゾーン25の長さが異なってしまう。しかしながら、溶体化ゾーン22および時効ゾーン25の各搬送コンベア225,255による搬送速度等を調整することにより、溶体化ゾーン22と時効ゾーン25の長さを一致させることができる。
溶体化ゾーン22の上流側には、ターンテーブル226が配置されるとともに、そのターンテーブル226と鍛造装置31との間には搬送コンベア311が配置されている。従って鍛造装置31から搬出された被処理材Wは、搬送コンベア311によってターンテーブル226まで搬送され、そのターンテーブル226で回転して向きが調整された後、溶体化ゾーン22に搬入されるようになっている。
また時効ゾーン25の下流側には、ターンテーブル256が配置されるとともに、そのターンテーブル256と後工程装置32との間には搬送コンベア321が配置されている。従って、時効ゾーン25から搬出された被処理材Wは、ターンテーブル256で回転して向きが調整された後、搬送コンベア321によって後工程装置32に搬送されるようになっている。
なお図示は省略するが、各コンベアやターンテーブルの駆動や、各熱処理ゾーンの温度は、上記図7の連続熱処理炉と同様な制御装置によって制御されるようになっている。
この連続熱処理炉においては、鍛造装置31によって鍛造加工されたAl鍛造部材としての被処理材Wは、コンベア311およびターンテーブル226を介して溶体化ゾーン22に搬入され、溶体化ゾーン22を通過して溶体化処理が施される。
さらに溶体化ゾーン22から水槽ゾーン23に搬入された被処理材Wは、水槽内の水中を通過することによって、焼き入れ処理が施される。
さらに水槽ゾーン23から時効ゾーン25に導入された被処理材Wは、時効ゾーン25を通過して時効処理が施される。
時効処理が施された後、被処理材Wは、ターンテーブル256および搬送コンベア321によって後工程装置32に搬送されて、溶接処理等が施される。
以上のように、この連続熱処理炉においても、上記と同様、溶体化処理、焼き入れ処理、時効処理を自動的に連続して行うことができ、生産効率を向上させることができる。
さらにこの連続熱処理炉においては、溶体化ゾーン22および時効ゾーン25を並列に、かつ搬送方向を逆向きに配置して、溶体化ゾーン22を通った被処理材Wが水槽ゾーン23の周辺部分で折り返して時効ゾーン25を通過するようにしている。このため、溶体化ゾーン22の搬出口(水槽ゾーン23の搬入口)と、時効ゾーン25の搬入口(水槽ゾーン23の搬出口)とを、水槽ゾーン23の一側壁(同一壁面)に形成することができる。その結果、鍛造装置31と後工程装置(例えば溶接処理装置)32との間の任意の位置に、溶体化ゾーン22、時効ゾーン25等を配置することができる。従って設計の自由度が増して、各ゾーンが最適な位置に配置された生産システム(製造装置)を構築することができる。
また、溶体化処理、時効処理が不要な場合には、熱処理ゾーン22,25等の連続熱処理炉を工程コンベアから切り離すことにより鍛造装置から後工程装置(溶接処理装置)を直結することができる。その結果、鍛造装置から後工程装置(溶接処理装置)までの距離を短縮化した生産システムとすることができる。
なお図8に示す連続熱処理炉においても、上記図7に示す連続熱処理炉と同様に、必要に応じて、溶体化昇温ゾーン、時効昇温ゾーンおよび時効降温ゾーン等を設置するようにしても良く、さらに必要に応じて複数のゾーンの各間に仕切扉を設けるようにしても良い。
次に、本発明に関連した実施例および本発明の要旨を逸脱する比較例について詳細に説明する。
Figure 0005819294
表2Aに示すように、実施例1〜7および比較例1〜23の各サンプルを作製するために、各サンプルに対応する組成のAl合金を溶解し、フラックスによる脱ガス処理および介在物除去処理を行った後、TiとZrの反応による鋳塊の微細化不良を防止するために、鋳造直前の脱ガス処理炉にてTi−B微細化材を添加した。
こうして得られた各サンプルに対応するAl合金溶湯を金型に鋳込んで、図3に示すような形状のディスクサンプル3を採取し、JIS H 1305に記載の発光分光分析により分析した。
なおディスクサンプル3の各種サイズs1〜s6は次の通りである。すなわちs1が18mm、s2が30mm、s3が50mm、s4が35mm、s5が5mm、s6が5mmである。
分析の結果、表2Aに示す目標成分値の各サンプルが得られたことを確認した後、各サンプルに対応するAl合金溶湯に対し、気体加圧式ホットトップ鋳造機を用いて、連続鋳造を行い、各サンプルに対応するAl合金鋳造部材(鋳塊)を作製した。この鋳造時の鋳造条件としては、鋳造直前の溶湯温度が液相線温度(650℃)以上となるよう調整しながら、丸棒を連続鋳造した。
鋳造後のサンプルについては、溶剤除去性浸透探傷試験(カラーチェック)によりサンプル表面の割れの有無を確認した。
こうして得られた各サンプルに対応する鋳塊を、旋盤にて直径60mmになるように外周切削加工を実施した後、定尺に切断し、表2Aに示す条件で均質化処理を施した。均質化処理後のサンプルについては、目視にて表面状態を確認し、局部融解の有無を確認した。そして、均質化処理後の連続鋳造丸棒を80mmの長さで切断し、各サンプルに対応する鍛造素材を作製した。
この鍛造素材を、表2Aに示す条件で予備加熱した後、丸棒側面方向から厚さ35mmに据え込んだ。据込の前には、目視にて表面状態を確認し、局部融解の有無を確認した。また、据込の後には、溶剤除去性浸透探傷試験(カラーチェック)によりサンプル表面の割れの有無を確認した。その後の据込品(鍛造部材)に表2Aに示す溶体化温度で3時間保持した後、水焼入れし、その直後に、表2Aに示す条件で時効処理を施した。溶体化処理後のサンプルについては、目視にて表面状態を確認し、局部融解の有無を確認した。
また、溶体化処理後の各サンプルについて、比較のために、二段時効処理を施したものもあわせて準備した。すなわち溶体処理後の各サンプルに対し、110℃で6時間保持する一段目の時効処理を施し、続いて、150℃で8時間保持する二段目の時効処理を施すことにより、二段時効処理した各サンプルもあわせて準備した。
Figure 0005819294
また実施例1と同じ組成の鋳塊から得られたサンプルを実施例10〜12として、表2に示す条件で、均質化処理、溶体化処理および時効処理を施した。なお実施例10は、後述するように溶体化処理時間に対する時効処理時間の比を記載している点を除き、実施例1と同じである。
<評価>
Figure 0005819294
Figure 0005819294
表3A,3Bに示すように、得られたサンプルから、溶接部および母材部にて、JIS14B比例試験片を採取し、引張強度[MPa]を測定した。
なお、引張試験の結果については、450MPa以上のものを「良好」とした。
また、溶接時の熱影響部15(図4B参照)と、熱の影響を受けていない端の部位(その他の部位16)のビッカース硬度を測定し、溶接時の熱影響部15のビッカース硬度を、熱の影響を受けていない端の部分16のビッカース硬度で割った値(比率)が、0.8以上のものを熱影響部15の硬度回復性能が「良好」と判断し、0.8に満たなかったものを熱影響部15の硬度回復性能が「悪い(悪)」と判断した。
さらに、据込品(鍛造品サンプル)から、2mm×4.3mm×42.4mmの試験片を切り出し、4.3mm×42.4mmの面の中央部に、3点曲げ治具を用いて耐力の70%に相当する応力を負荷した。負荷の際には、試験片と治具との間は電気的に絶縁した。腐食液として、純水1リットル当り、酸化クロム(IV)36g、二クロム酸カリウム30g、塩化ナトリウム3gを溶解させ、95〜100℃に保持した溶液を準備した。応力を負荷した試験片をこの腐食液中に16時間浸漬した後に、試験片を外観観察し、割れが発生しているかどうかについて確認した。
また各サンプルにおいて、二段時効処理品に対する一段時効処理品の強度変化率を求めた。すなわち一段時効処理品の引張強度を「A」、二段時効処理品の引張強度を「B」としたとき、[(B−A)/B]×100=強度変化率[%]の計算式によって、二段時効処理品に対する一段時効処理品の強度変化率[%]を求めた。そしてこの強度変化率[%]が5%以内(好ましくは3%以内)の場合、強度差なし(良好である)と判定した。
<結果>
表3A,3Bに示すように、実施例1〜7、11,12については、本発明の要件を全て満たしているため、鋳塊割れ、溶接割れ、鍛造割れ、局部融解を生じず、引張強度および継手効率に優れており、一段時効処理品と二段時効処理品との間で強度差も少なく、一段時効で充分な強度が得られていることが分かる。また、応力腐食割れも発生しなかった。ここで「継手効率」とは、熱影響部の硬度回復性能と同じ意味である。なお、実施例10は、実施例1と実質的に同じ条件であるため、実施例1と同様の結果が得られることとなる。
また表3Bから明らかなように、実施例10〜12のものでは、溶体化処理時間に対する時効処理時間の比(時効処理時間/溶体化処理時間)が1〜6となっており、溶体化処理時間が溶体化処理時間に対し大きく異ならない程度になっている。
これに対し、比較例1では、Feの含有量が少な過ぎたため、鋳塊割れを生じていた。
比較例2では、Feの含有量が多過ぎたため、巨大金属間化合物が発生し、鍛造時に割れを生じた。
比較例3では、Cuの含有量が少な過ぎたため、時効の初期に、Al−Cu−Mg系金属間化合物をAlマトリックス内に微細に析出させることができず、二段時効品に対して、一段時効品では強度が著しく低下した。
比較例4では、Cuの含有量が僅かに少なく、Mgの含有量も少なかったため、比較例3と同様の理由で、一段時効品では優れた引張強度が得られず、二段時効品に対して、一段時効品では強度が著しく低下した。
比較例5では、Cuの含有量が多過ぎたため、耐食性が低下し、応力腐食割れが発生した。
比較例6では、Mnの含有量が少な過ぎたため、鍛造後の溶体化処理にて、粗大再結晶が発生し、引張強度が低下した。
比較例7では、Mnの含有量が多過ぎたため、巨大金属間化合物が発生し、鍛造時に割れを生じた。
比較例8では、Mgの含有量が少な過ぎたため、析出強化成分が少なく、引張強度が低下した。
比較例9では、Mgの含有量が多過ぎたため、溶接部の硬度を十分に回復させることができず、熱影響部の硬度回復性能が不十分であった。さらに耐食性も悪化し、応力腐食割れが発生した。
比較例10では、Znの含有量が少な過ぎたため、析出強化成分が少なく、引張強度が低下した。
比較例11では、Znの含有量が多過ぎたため、熱影響部の硬度回復性能が悪化した。さらに耐食性も悪化し、応力腐食割れが発生した。
比較例12では、Zrの含有量が少な過ぎたため、鍛造後の溶体化処理にて、粗大再結晶が発生し、引張強度が低下した。また、溶接部の結晶粒も粗くなり、溶接割れが発生した。
比較例13では、Zrの含有量が多過ぎたため、Ti−Bの鋳塊微細化効果が低下し、鋳塊割れを生じた。
比較例14では、均質化処理温度が低過ぎたため、ミクロ偏析が残存し、鍛造時に塑性変形抵抗が大きくなり、割れを生じた。
比較例15では、均質化処理温度が高過ぎたため、局部融解を生じた。
比較例16では、鍛造予備加熱温度が低過ぎたため、鍛造時に塑性変形抵抗が大きくなり、割れを生じた。
比較例17では、鍛造予備加熱温度が高過ぎたため、局部融解を生じた。
比較例18では、溶体化温度が低過ぎたため、十分に析出強化元素が固溶できず、析出量が減少し、引張強度が低下した。
比較例19では、溶体化温度が高過ぎたため、局部融解を生じた。
比較例20〜23では、時効処理条件が、本発明の要旨を逸脱して、不適当であったため、時効過多または時効不足となり、引張強度が低下した。
総評すると、本発明に関連した実施例1〜4のものでは、一段時効処理品および二段時効処理品間の強度差(強度変化率)が無く、一段時効処理にて、好ましい充分な強度(460MPa以上、より好ましくは500MPa以上)に到達し、かつ割れの生じない実用可能なものを得ることができた。
さらにこの実施例1〜4は、一段時効処理品および二段時効処理品間の強度差が無しであるため、二段目の時効処理が不要となり工程が簡単化されるだけでなく、熱処理(時効処理)の条件管理も容易になり、製品の熱処理に対する強度品質が安定しているということも示している。
一方、比較例3、4では、一段時効処理品および二段時効処理品間の強度差が大きく、かつ好ましい充分な強度を得るためには、二段時効処理が必要になった。その他の比較例では、一段時効処理で好ましい充分な強度となったが、割れが生じて実用不可能であったり、好ましい充分な強度を得ることができず、実用不可能であった。
Figure 0005819294
表4は実施例1〜7および比較例3,4において、「Zn量/(Mg量−αCu量)=3」の関係式を当てはめた際のαの値と、強度変化率とを示している。
表4に示すように、αが1.3〜6の範囲内の実施例1〜7では、強度変化率が非常に小さく、非常に良好であった。これに対しαが非常に大きい比較例3や、非常に小さい比較例4では、強度変化率が大きく不良であるのが判る。
表4を基にすると、α=1〜20を満たしている場合に、強度変化率が好ましい値になることが予測される。
Figure 0005819294
表5は実施例1(10)〜7,11,12のAl合金鋳塊(サンプル)におけるDAS(μm)、晶出物の平均粒径(μm)を示している。
表5に示すように、本発明に関連した実施例のサンプルは全て、DASが40μm以下、晶出物の平均粒径が8μm以下である。
以上の実施例および比較例から明らかなように、本発明によれば、溶接後の硬度回復性能を失わずに、強度が高く、所望の機械的特性および耐応力腐食割れ性能を備えたAl合金製品(Al合金接合体)を得ることができる。さらに130〜170℃×8〜12Hrという短時間で簡略化された一段時効処理で、上記所望の特性を備えたAl合金製品を確実にかつ効率良く製造することができる。
本願は、2010年6月11日付で出願された日本国特許出願の特願2010−134024号の優先権主張を伴うものであり、その開示内容は、そのまま本願の一部を構成するものである。
ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではなく、ここに示され且つ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、この発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。
本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものであるが、この開示は本発明の原理の実施例を提供するものと見なされるべきであって、それら実施例は、本発明をここに記載しかつ/または図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、多くの図示実施形態がここに記載されている。
本発明の図示実施形態を幾つかここに記載したが、本発明は、ここに記載した各種の好ましい実施形態に限定されるものではなく、この開示に基づいていわゆる当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ(例えば、各種実施形態に跨る特徴の組み合わせ)、改良及び/又は変更を有するありとあらゆる実施形態をも包含するものである。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施例に限定されるべきではなく、そのような実施例は非排他的であると解釈されるべきである。
本発明のAl合金接合体の製造方法は、高品質のAl合金製品を製造するための鍛造加工・溶接技術に適用可能である。
10:Al合金接合体(Al合金製品)
11,12:接合部品
13:溶接部
14:肉盛り部
15:熱影響部
16:溶接熱の影響が及ばない部位
22:溶体化ゾーン(溶体化用熱処理ゾーン)
23:水槽ゾーン
231:水槽
25:時効処理ゾーン(一段時効用熱処理ゾーン)
27:コンベア(搬送手段)
225,235,255,311,321:コンベア(搬送手段)
226:256:ターンテーブル(搬送手段)
W:被処理材

Claims (12)

  1. Fe:0.2〜0.35質量%、Cu:0.1〜0.4質量%、Mn:0.3〜0.6質量%、Mg:2.0〜2.5質量%、Zn:5.0〜5.5質量%、Zr:0.1〜0.2質量%、Ti:0.2質量%以下含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる合金組成を有するAl合金溶湯を得る工程と、
    前記Al合金溶湯を、「最大鋳造速度(mm/min)≦−1.43×鋳造径(mm)+500」の条件を満たす鋳造速度で連続鋳造することによって、デンドライト2次アーム間隔(DAS)が40μm以下、かつ晶出物の平均粒径が8μm以下の組織を有するAl合金鋳塊を得る工程と、
    前記Al合金鋳塊に対して、400〜600℃の温度で1時間以上保持する均質化処理を施すことによって、Al合金鋳造部材を得る工程と、
    前記Al合金鋳造部材に対して、熱間鍛造を行ってAl合金鍛造部材を得る工程と、
    前記Al合金鍛造部材に対して、溶体化処理を施す工程と、
    前記溶体化処理後のAl合金鍛造部材に対して、焼き入れ処理を施す工程と、
    前記焼き入れ後のAl合金鍛造部材に対して、一段時効処理を施す工程と、
    前記一段時効処理後のAl合金鍛造部材を、Al合金製の接合部品と溶接してAl合金接合体を得る工程と、を含むことを特徴とするAl合金接合体の製造方法。
  2. 前記一段時効処理を、130〜170℃の温度で、溶体化処理時間の1〜6倍の時間で行うようにした請求項1に記載のAl合金接合体の製造方法。
  3. 前記熱間鍛造を、350〜500℃の温度で行うようにした請求項1または2に記載のAl合金接合体の製造方法。
  4. 前記溶体化処理を、400〜500℃の温度で行うようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載のAl合金接合体の製造方法。
  5. 前記接合部品として、前記時効処理後のAl合金鍛造部材と同じ構成の部材を用いるようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載のAl合金接合体の製造方法。
  6. 「Znの質量%」/(「Mgの質量%」−α×「Cuの質量%」)=3、かつ
    α=1〜20の条件を満たすようにした請求項1〜5のいずれか1項に記載のAl合金接合体の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のAl合金接合体の製造方法に用いられるAl合金接合体の製造装置であって、
    前記Al合金鍛造部材としての被処理材を搬送するための搬送手段と、
    前記溶体化処理を施す工程を実施するための溶体化用熱処理ゾーンと、
    水が貯留された焼き入れ処理用水槽を有する水槽ゾーンと、
    前記一段時効処理を施す工程を実施するための一段時効用熱処理ゾーンと、を備え、
    前記搬送手段の搬送によって、被処理材を前記溶体化用熱処理ゾーン、前記水槽ゾーンおよび前記一段時効用熱処理ゾーンに順次通過させることにより、被処理材に対し溶体化処理、焼き入れ処理および一段時効処理を順次実施するようにしたことを特徴とするAl合金接合体の製造装置。
  8. 前記溶体化用熱処理ゾーンおよび前記一段時効用熱処理ゾーンが並列に、かつ被処理材の搬送方向が互いに逆向きに配置されるとともに、
    前記溶体化用熱処理ゾーンの搬出側端部と、前記一段時効用熱処理ゾーンの搬入側端部とが対応して配置され、
    前記溶体化用熱処理ゾーン、前記水槽ゾーンおよび前記一段時効用熱処理ゾーンを通過する被処理材が前記水槽ゾーンの周辺部で折り返して搬送されるようになっている請求項7に記載のAl合金接合体の製造装置。
  9. Fe:0.2〜0.35質量%、Cu:0.1〜0.4質量%、Mn:0.3〜0.6質量%、Mg:2.0〜2.5質量%、Zn:5.0〜5.5質量%、Zr:0.1〜0.2質量%、Ti:0.2質量%以下含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる合金組成を有するAl合金溶湯を得る工程と、
    前記Al合金溶湯を、「最大鋳造速度(mm/min)≦−1.43×鋳造径(mm)+500」の条件を満たす鋳造速度で連続鋳造することによって、デンドライト2次アーム間隔(DAS)が40μm以下、かつ晶出物の平均粒径が8μm以下の組織を有するAl合金鋳塊を得る工程と、
    前記Al合金鋳塊に対して、400〜600℃の温度に1時間以上保持する均質化処理を施すことによって、Al合金鋳造部材を得る工程と、
    前記Al合金鋳造部材に対して、熱間鍛造を行ってAl合金鍛造部材を得る工程と、
    前記Al合金鍛造部材に対して、溶体化処理を施す工程と、
    溶体化処理後のAl合金鍛造部材に対して、一段時効処理を施す工程と、を含むことを特徴とする溶接用Al合金鍛造部材の製造方法。
  10. 前記Al合金溶湯を準備するのに先立って、そのAl合金溶湯におけるFe、Cu、Mn、Mg、Zn、Zr、Tiの各含有量を仮設値に設定する第1準備工程と、
    製造予定の前記Al合金鍛造部材における目標とする特性を設定する第2準備工程と、
    前記仮設値を基にして得られた試作のAl合金溶湯に対し、前記Al合金鋳塊を得る工程に準拠した工程と、前記Al合金鋳造部材を得る工程に準拠した工程と、前記Al合金鍛造部材を得る工程に準拠した工程と、前記溶体化処理を施す工程に準拠した工程と、前記一段時効処理を施す工程に準拠した工程と、を順次行って、試作のAl合金鍛造部材を得る第3準備工程と、
    試作のAl合金鍛造部材から求められた実際の特性を、前記目標とする特性と比較し、その比較結果を基に、前記仮設値を変更する第4準備工程と、を含み、
    前記第3および第4準備工程を繰り返し行って、実際に使用するAl合金溶湯を準備するようにした請求項に記載の溶接用Al合金鍛造部材の製造方法。
  11. 前記第2準備工程において、前記一段時効処理における目標とする時効時間を予め設定し、
    前記第3準備工程において、実際の時効時間を測定し、
    前記第4準備工程において、実際の時効時間を、前記目標とする時効時間と比較し、その比較結果を基に、前記仮設値を変更するようにした請求項10に記載の溶接用Al合金鍛造部材の製造方法。
  12. 複数のAl合金製の接合部品が溶接されて、接合部品間の溶接部に、溶接による肉盛り部が設けられるとともに、その肉盛り部の近傍に、溶接による熱の影響が及ぶ熱影響部が設けられたAl合金接合体であって、
    前記複数の接合部品のうち、少なくとも1つ以上の接合部品が、Fe:0.2〜0.35質量%、Cu:0.1〜0.4質量%、Mn:0.3〜0.6質量%、Mg:2.0〜2.5質量%、Zn:5.0〜5.5質量%、Zr:0.1〜0.2質量%、Ti:0.2質量%以下含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる合金組成を有し、
    前記熱影響部の硬度を「V」、溶接による熱の影響が及ばない部位の平均硬度を「V」として、「V/V≧0.8」の関係が成立するように構成されたことを特徴とするAl合金接合体。
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