JP5275321B2 - アルミ合金製塑性加工品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、Al−Mg−Si系アルミ合金の鋳塊から製造したアルミ合金製塑性加工品の製造方法に関する。
近年、高強度と耐食性が要求される車両、船舶、航空機、自動車あるいは自動二輪等の輸送機の構造材(部品)に、アルミ合金製塑性加工品が用いられている。
輸送機用構造材のアルミ合金製塑性加工品の例として、サスペンションアーム等の自動車部品では、車体の軽量化を目的として、加工性に優れ、高強度と耐食性を兼ね備えたAl−Mg−Si系合金の塑性加工品が用いられている。Al−Mg−Si系合金で、特にA6061が多用されているが、更なる軽量化を図るために高強度化が求められており、アルミ合金の材料側を改善することが行なわれている。
Al−Mg−Si系合金の高強度化を図るために、過剰Si量やCu元素の添加量を増加させることが行なわれている。特に、Cu元素は、Mg2Siの析出を促進し、マトリクスに固溶して強度向上に大きく寄与するため、添加量を増加させることは高強度化において有効な手段である。
しかし、高強度化のために添加しているCu元素量が0.05%以上になると、粒界腐食の感受性が高くなり、腐食環境下で使用した際に応力腐食割れを引き起こす恐れがある。
従来の技術では、Mn、Cr、Zr等の遷移元素を添加することにより、結晶粒径や晶出物を微細化することで粒界腐食や応力腐食割れを防ぎ、Al−Mg−Si系合金の耐食性の向上を図ることが知られている。
例えば、下記の特許文献1には次のことが開示されている。高強度高靱性アルミニウム合金鍛造材を提供することを目的として、Mg:0.6〜1.6%(質量%、以下同じ)、Si:0.6〜1.8%、Cu:0.05〜1.0%を含むとともに、Feを0.30%以下に規制し、Mn:0.15〜0.6%、Cr:0.1〜0.2%、Zr:0.1〜0.2%の一種または二種以上を含み、更に、水素:0.25cc/100gAl以下とし、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金鍛造材であって、10℃/sec以上の冷却速度で鋳造されたアルミニウム合金鋳塊を、530〜600℃の温度で均質化熱処理した後に、熱間鍛造して鍛造材とし、該鍛造材におけるアルミニウム合金組織中のMg2SiとAl−Fe−Si−(Mn、Cr、Zr)系の晶出物の合計の面積率を単位面積当たり1.5%以下とすることが提案されている。
また、下記の特許文献2には次のことが開示されている。高強度高靱性であるとともに、耐食性や耐久性に優れたAl合金鍛造材を提供することを目的として、Mg:0.6〜1.8%(質量%、以下同じ)、Si:0.6〜1.8%を含み、更に、Cr:0.1〜0.2%およびZr:0.1〜0.2%の一種または二種を含むとともに、Cu:0.25%以下、Mn:0.05%以下、Fe:0.30%以下、水素:0.25cc/100gAl以下に各々規制し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金鍛造材であって、アルミニウム合金組織の粒界上に存在するMg2SiやAl−Fe−Si−(Mn、Cr、Zr)系晶析出物(晶出物や析出物)の平均粒径を1.2μm以下とするとともに、これら晶析出物同士の平均間隔を3.0μm以上とすることが提案されている。
さらに、下記の特許文献3には次のことが開示されている。高強度高靱性であるとともに、耐食性や耐久性に優れたAl合金鍛造材を提供することを目的として、Mg:0.6〜1.8%(質量%、以下同じ)、Si:0.6〜1.8%を含み、更に、Cr:0.1〜0.2%およびZr:0.1〜0.2%の一種または二種を含むとともに、Cu:0.25%以下、Mn:0.05%以下、Fe:0.30%以下、水素:0.25cc/100gAl以下に各々規制し、残部Alおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金鍛造材であって、アルミニウム合金組織の粒界上に存在するMg2SiやAl−Fe−Si−(Mn、Cr、Zr)系晶析出物の平均粒径を1.2μm以下とするとともに、これら晶析出物同士の平均間隔を3.0μm以上とし、更に、該アルミニウム合金鍛造材の自然電位の最低値を−1020mV以上とすることが提案されている。
しかし、これらのAl−Mg−Si系合金素材では、結晶粒径や晶出物を微細化することによって粒界腐食を防止し、応力腐食割れの発生を抑制することができるが、Cu元素の添加量の増加により耐食性が悪化し、その結果発生する腐食減量は抑制することができない。軽量化を図るために部品形状を薄肉化した塑性加工品では、腐食減量で薄くなった肉厚の分だけ確実に強度が低下して耐久性が悪化する恐れがあり、厳しい腐食環境での使用に適さないという問題点がある。
一方、従来からアルミ合金材表面の導電率は、アルミ合金材の組織状態、析出物の固溶および析出状態によって大きく変わり、アルミ合金材の硬度および強度と密接に相関することは公知である。例えば下記の特許文献4にはAl合金鍛造材表面の導電率(IACS(International Annealed Copper Standard(国際軟銅標準))%)と強度(MPa)との関係が、図7のように、導電率が所定範囲のとき強度が最大となることを示している。
そして、この特許文献4には次のことが開示されている。合金元素量を多くして高強度化させ、かつ薄肉化された強度部材用鍛造材であっても、350MPa以上の0.2%耐力が安定して得られる6000系Al合金鍛造材および鍛造用素材を提供することを目的として、Mg:0.6〜1.8%(質量%、以下同じ)、Si:0.8〜1.8%、Cu:0.2〜1.0%を含み、Si/Mgの質量比が1以上であり、更にMn:0.1〜0.6%、Cr:0.1〜0.2%およびZr:0.1〜0.2%の一種または二種以上を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金鍛造材であって、人工時効硬化処理後のアルミニウム合金鍛造材の表面の導電率を41.0〜42.5IACS%とすることが提案されている。これは、図7に示す導電率と強度との関係を利用し、人工時効硬化処理後のアルミ合金鍛造材の表面の導電率を41.0〜42.5IACS%の範囲に制御することで、0.2%耐力が350MPa以上で安定して得られることを保証している。
しかし、この特許文献4のように、導電率を41.0〜42.5IACS%のようにある一定の範囲に制御するのは、強度の評価に対しては有効であるが、上記したような問題点、すなわちCu添加量の増加により耐食性が悪化し、腐食減量が発生するという問題点を解決するものではなく、部品形状を薄肉化した塑性加工品での耐食性の評価、つまり腐食減量の評価については何も記載されていない。
上記のような状況下において、Cu添加量を増加させたAl−Mg−Si系のアルミ合金製塑性加工品に対し、高強度を付与するとともに、耐食性をも向上させることが望まれている。
特開2000−144296号公報 特開2001−107168号公報 特開2002−294382号公報 特開平2004−43907号公報
本発明は上記に鑑み提案されたもので、Cu添加量を増加させたAl−Mg−Si系合金の塑性加工品において、高強度化とともに耐食性を向上させることができ、部品を薄肉化しても腐食減量を防止して軽量化を確実に行うことができるアルミ合金製塑性加工品の製造方法を提供することを目的とする。
1)上記目的を達成するために、第1の発明は、Al−Mg−Si系アルミ合金の鋳塊からアルミ合金製塑性加工品を製造するアルミ合金製塑性加工品の製造方法において、Cuを0.3〜1.0質量%、Mgを0.8〜1.15質量%、Siを0.95〜1.15質量%、Mnを0.4〜0.6質量%、Feを0.2〜0.3質量%、Crを0.11〜0.19質量%、Znを0.25質量%以下、Zrを0.05質量%以下、Tiを0.012〜0.035質量%、Bを0.0001〜0.03質量%以下含有し、残りがAlと不可避不純物からなるアルミ合金の溶湯を鋳造し、上記鋳造により得られた鋳造品に均質化処理および塑性加工を施し、この塑性加工での素材の加熱温度を、〔430+塑性加工率(%)〕℃以上550℃以下の範囲に制御し、上記塑性加工により得られた塑性加工品に、溶体化処理、水焼入れ処理および人工時効硬化処理を施し、上記人工時効硬化処理におけるピーク時効時点以降の時効処理時間を、当該塑性加工品の導電率が、ピーク時効時点での導電率に対して0より大で1IACS%以下の増分を有する時間とした、ことを特徴としている
また、これらの発明は、上記した構成に加えて、人工時効硬化処理は、時効処理温度が170℃以上210℃以下、時効処理時間が0.5時間以上18時間以下である、ことを特徴としている。
また、これらの発明は、上記した構成に加えて、溶体化処理は温度が530℃以上560℃以下で行われ、上記水焼入れ処理は温度が70℃以下で行われる、ことを特徴としている。
また、これらの発明は、上記した構成に加えて、塑性加工は、押出加工、鍛造加工および圧延加工から選ばれる1種又は2種以上の組合せである、ことを特徴としている。
また、これらの発明は、上記した構成に加えて、人工時効硬化処理におけるピーク時効時点以降の時効処理時間を、当該塑性加工品の導電率が、上記導電率がピーク時効時点での導電率に対して0より大で0.7IACS%以下の増分を有する時間とした、ことを特徴としている。
また、これらの発明は、上記した構成に加えて、上記ピーク時効時点は、人工時効硬化処理の際に時効処理時間に応じて硬度が増加しピークに達するまでに要する時効処理時間の経過時点である、ことを特徴としている。
また、これらの発明は、上記した構成に加えて、上記ピーク時効時点は、時効処理時間×温度を横軸として、硬度が最大になる時点である、ことを特徴としている。
また、これらの発明は、上記した構成に加えて、上記ピーク時効時点は、人工時効硬化処理の際に時効処理時間に応じて導電率が増加した後一定値を示し始めた時点である、ことを特徴としている。
また、これらの発明は、上記した構成のアルミ合金製塑性加工品の製造方法を用いて得られるアルミ合金製塑性加工品である、ことを特徴としている。
また、これらの発明は、上記した構成のアルミ合金製塑性加工品の製造方法を用いて得られ、または、上記したアルミ合金製塑性加工品から得られる自動車用部品である、ことを特徴としている。
また、これらの発明は、Al−Mg−Si系アルミ合金の鋳塊からアルミ合金製塑性加工品を製造する際の人工時効硬化処理に用いる時効処理炉において、Cuを0.3〜1.0質量%、Mgを0.8〜1.15質量%、Siを0.95〜1.15質量%、Mnを0.4〜0.6質量%、Feを0.2〜0.3質量%、Crを0.11〜0.19質量%、Znを0.25質量%以下、Zrを0.05質量%以下、Tiを0.012〜0.035質量%、Bを0.0001〜0.03質量%以下含有し、残りがAlと不可避不純物からなるアルミ合金の溶湯を鋳造し、得られた鋳造品に塑性加工を施し、この塑性加工での素材の加熱温度を、〔430+塑性加工率(%)〕℃以上550℃以下の範囲に制御した後の時効処理に適用され、加熱炉と、処理する上記鋳塊毎に対応して予め測定しておいた、時効処理におけるピーク時効時点の導電率を基準として、その増分Xが0<X≦1(IACS%)となる時間、温度の組合せデータが入力されたデータ部、前記加熱炉内の温度をモニターし、前記データ部に入力された時間、温度の組合せデータと比較し、その結果を出力する温度監視部、時効処理時間をモニターし、前記データ部に入力された時間、温度の組合せデータと比較し、その結果を出力する時間制御部、および前記温度監視部、前記時間制御部からそれぞれ出力された結果を受け取る温度制御部からなる制御部と、が設けられ、上記制御部が作動することによって、人工時効硬化処理におけるピーク時効時点以降の時効処理時間を、上記アルミ合金製塑性加工品の導電率が、ピーク時効時点での導電率に対して0より大で1IACS%以下の増分を有する時間とするように制御されている、ことを特徴としている。
また、これらの発明は、上記した構成の時効処理炉を有するアルミ合金製塑性加工品の製造システムである、ことを特徴としている。
なお、Al−Mg−Si系アルミ合金の鋳塊からアルミ合金製塑性加工品を製造する際の人工時効硬化処理に用いる時効処理炉において、上記アルミ合金製塑性加工品の導電率が、ピーク時効時点での導電率に対して0より大で1IACS%以下の増分を有するように人工時効硬化処理におけるピーク時効時点以降の時効処理時間を制御するものとする。
また、アルミ合金製塑性加工品の製造システムでは、上記した時効処理炉を有するものとする。
本発明によれば、Al−Mg−Si系アルミ合金の鋳塊から製造したアルミ合金製塑性加工品において、Cuを0.3〜1.0質量%含有するものとし、導電率がピーク時効時点での導電率に対して0より大で1IACS%以下の増分を有するようにしたので、Cu添加量を増加させたAl−Mg−Si系合金の塑性加工品であっても、腐食減量を抑制することができ、高強度化とともに耐食性をも向上させることができる。したがって、部品を薄肉化しても、腐食減量の抑制により、軽量化を確実に行うことができ、Al−Mg−Si系合金製塑性加工品の輸送機用としての用途をさらに拡大することができるようになる。
Al−Mg−Si系合金の塑性加工品を200℃で時効処理を行った時の時効処理時間と導電率との関係を示す図である。 Al−Mg−Si系合金の塑性加工品を200℃で時効処理を行った時の時効処理時間と硬度との関係を示す図である。 本発明の製造ラインの一例の概略説明図である。 時効処理炉の一例を示すブロック図である。 時効処理炉の他の例を示すブロック図である。 自動車のサスペンション部品の外観を示す図である。 Al合金鍛造材表面の導電率と強度との関係を示す図である。
本発明者らは、Al−Mg−Si系合金の塑性加工品において、組成中のCu量を増加させた場合、材料の高強度化を図ることができる一方、耐食性が悪化し、その結果孔食(ピッティング)による腐食減量が発生しやすくなるが、人工時効硬化処理(以下、「時効処理」という)を過時効にすることによって、孔食による腐食減量を抑制でき、高強度化とともに耐食性を向上させることができることを見い出した。
すなわち、時効処理時間を変えたときにAl−Mg−Si系合金の塑性加工品においては、硬度、導電率、腐食減量の間には一定の関係性があり、ピーク時効の時点の導電率を基準として、導電率の増分Xが0<X≦1IACS%の範囲、好ましくは0<X≦0.7IACS%の範囲となるように、時効処理を施すことによって、過時効処理においても強度特性を維持しつつ、腐食減量を抑制し、耐食性を向上することができることを見い出し本発明を完成させた。
なお、ここでピーク時効時点とは、時効処理において時効処理時間に応じて硬度が増加しピークに達するまでに要する時効処理時間の経過時点である。または、時効処理時間×温度を横軸として、硬度が最大になる時点とすることもできる。さらに、人工時効硬化処理の際に時効処理時間に応じて導電率が増加した後一定値を示し始めた時点、例えば導電率の微分値が一定値以下となった時点とすることもできる。これらの時点を基準とすることにより、耐食性を向上させることができるからである。
過時効処理は、ピーク時効時点を越えてさらに時間を掛けて時効処理を行うことを言う。
またIACS%は、単位長さ、単位断面積をもつ材料の電気伝導度と、国際標準軟銅(JI5600参照)の電気伝導度との比を表したもので、20℃における国際標準軟銅の体積抵抗率(1.7241μΩm×10-2)を、測定する材料の体積抵抗率で除し、百分率として算出したものである。
本発明ではAl−Mg−Si系合金の塑性加工品の強度だけでなく、耐食性についても導電率で評価する手法を提案する。
図1はAl−Mg−Si系合金の塑性加工品を200℃で時効処理を行った時の時効処理時間と導電率との関係を示す図である。合金組成に関係なくAl−Mg−Si系合金の塑性加工品の時効処理においては、時効処理時間と導電率は図1に示すような曲線の関係を示し、導電率は時効処理時間に応じて比較的速やかに増加するが、ある値に到達した時点からの数時間において一定若しくはわずかに上昇し、その後再度増加に転ずる傾向を示す。
図2はAl−Mg−Si系合金の塑性加工品を200℃で時効処理を行った時の時効処理時間と硬度との関係を示す図である。合金組成に関係なくAl−Mg−Si系合金の塑性加工品の時効処理においては、時効処理時間と硬度は図2に示すような曲線の関係を示し、硬度は時効処理時間に応じて最高硬度に至るまで急激に増加するが、最高硬度に到達した時点からの数時間において略一定を保ち、その後減少に転ずる傾向を示す。
本発明者らは、Al−Mg−Si系合金の塑性加工品に時効処理を施して様々な時効処理時間に応じて種々の値の導電率を持つ試料を用意し、その試料に対する孔食(ピッティング)による腐食減量を調査した。その結果、ピーク時効時点での導電率を基準として導電率の増分が所定の範囲に入っている試料では、孔食の発生による腐食減量が抑制され、耐食性を向上させることができ、なおかつ過時効処理による強度低下を防止できることを見出した。この時効処理による導電率の制御は、特にCu元素の添加量を増加させたAl−Mg−Si系合金に適用するとき有効である。
本発明では、ピーク時効時点での導電率を基準として、導電率の増分Xを測定することで、耐食性が向上する時効処理時間を適切に決定することができる。耐食性が向上する時効処理時間を決定する場合、硬度測定を用いると、時効処理時間と硬度との関係は、図2に示されるようにピーク時効時点に対して略左右対称の形をしているため、その硬度値からでは亜時効(ピーク時効時点の前)と過時効(ピーク時効時点の後)の区別がつかず、耐食性が向上する時効処理時間を適切に決定することが困難である。一方、本発明では図1に示す時効処理時間と導電率との関係を利用し、ピーク時効時点での導電率を基準とした導電率の増分を測定することによって、耐食性が向上する時効処理時間を適切に決定する。これにより初めてAl−Mg−Si系合金の塑性加工品の耐食性(腐食減量)についての的確な評価が可能となる。
そして本発明では、上記したように、時効処理におけるピーク時効時点での導電率を基準として、導電率の増分Xが0<X≦1IACS%の範囲、好ましくは0<X≦0.7IACS%の範囲と規定する。これにより、塑性加工品の耐食性が大幅に向上するとともに、過時効処理による強度低下を防ぎ、高強度を維持することができる。
硬度測定と比較して導電率測定は非破壊でなおかつ測定が容易であり、その場のリアルタイムで測定できるので製品の品質管理上大きなメリットがある。
導電率は、同じ合金組成の塑性加工品でも、製造条件のばらつきによって一定の値を示すとは限らないが、図1に示す時効処理時間と導電率との関係は変わらない。よって、予めピーク時効に到達する時間さえ測定しておけば、ピーク時効付近の導電率をその場のリアルタイムで測定し、ピーク時効の導電率を基準とした導電率の増分を測定することができる。これにより、時効処理中に現時点が耐食性が向上する時効処理時間か否かを適切に判別することができ、その判別結果に基づいて時効処理の継続、終了、条件変更を実施できる。
リアルタイムで導電率を測定する例として、熱処理炉内に導電率測定端子を導入し、塑性加工品と端子を接触させて固定した状態で時効処理を施し、時間の経過による導電率の変化を測定すればよい。また、時効処理の最中に熱処理炉から塑性加工品を取り出して冷却し、測定温度を常に一定にして導電率を測定してもよい。これらの方法によって、現時点が塑性加工品の耐食性が向上する時効処理時間か否かがリアルタイムで判別することができ、必要とされる強度と耐食性が確実に得られるため、塑性加工品を大量生産する上で品質管理の大きなメリットになる。
本発明におけるアルミ合金製塑性加工品の好ましい製造方法について説明する。
本発明におけるアルミ合金はAl−Mg−Si系アルミ合金であって、Cuの含有量が1質量%以下であるものである。他にMgを0.8〜1.15質量%、Siを0.95〜1.15質量%、Mnを0.4〜0.6質量%、Feを0.2〜0.3質量%、Crを0.11〜0.19質量%、Znを0.25質量%以下、Zrを0.05質量%以下、Tiを0.012〜0.035質量%、Bを0.0001〜0.03質量%以下含有するのが好ましく、残りはAlと不可避不純物からなる。
塑性加工品の製造自体は、時効処理においてピーク時効時点での導電率を基準として導電率の増分Xを0<X≦1IACS%の範囲に制御する以外は、公知の定法若しくはその改良方法により製造が可能である。例えば、上記のアルミ合金成分範囲内に溶解、調整されたアルミ合金溶湯を鋳造する場合に、連続鋳造圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)、ホットトップ鋳造法等の溶解鋳造法の何れを選択し鋳造しても構わない。ただし、溶解鋳造において、健全な鋳塊を得るためには、鋳造温度は750±50℃、鋳造速度240±50mm/分として鋳造することが好ましい。
次に、得られた鋳塊は470℃〜540℃で均質化処理を行うことが好ましい。この範囲で均質化処理を施すことにより、鋳塊の均質化と溶質原子の溶入化が十分になされるので、その後の時効処理によって必要とされる強度が得られるからである。保持時間は3〜10時間とすることができる。
そして、均質化処理後に塑性加工を施し、必要に応じて、機械加工により所定の大きさに加工する。塑性加工法は、加工時の素材の加熱温度が所定の範囲とする加工方法であれば従来の塑性加工方法を用いることができる。例えば、押出加工、鍛造加工および圧延加工などの加工法であるが、強度向上を図るために加工後の組織の再結晶を抑制する必要があり、素材の加熱温度は、〔430+塑性加工率(%)〕℃以上550℃以下の範囲に制御することが望ましい。塑性加工率を条件に入れた温度とすることで粗大再結晶の発生をより抑制し、その後の時効処理で強度をより一層向上させることができる。塑性加工率の定義について説明すると、例えば、押出加工のような場合は〔(変形を受ける断面積)÷(初期断面積)×100〕(%)であり、鍛造加工の一種の据込加工のような場合は〔(変形した高さ)÷(初期高さ)×100〕(%)である。また、多段で複数回の工程を経る塑性加工品の加工率は、その最終形状についての塑性加工率と定義する。複雑な形状の塑性加工品の加工率は、各部ごとに上式で加工率を算出しその平均値を塑性加工率と定義する。
塑性加工後は、溶体化処理、水焼入れ、および時効処理を行う。用途に応じた、例えば、車両、船舶、航空機、自動車あるいは自動二輪等の輸送機の構造材(部品)に必要とされる強度および耐食性を得るためである。
溶体化処理は、530〜560℃の範囲とするのが好ましい。溶体化温度が530℃未満では、Mg2Siなどが十分に固溶せず、その後の時効処理によって必要とされる強度が得られない恐れがある。また、溶体化温度が560℃を超えると、バーニング(局部溶解)が発生する恐れがある。また保持時間は2〜6時間とすることができる。
溶体化処理後の水焼入れ処理は、水温が70℃以下の条件で行うのが好ましい。また、焼き入れの処理は水冷が望ましく、焼入れ温度が70℃を超えた場合、焼入れの効果が得られずに、その後の時効処理によって必要な強度が得られない恐れがある。
時効処理は、ピーク時効時点での導電率を基準として、導電率の増分Xが0<X≦1IACS%の範囲、好ましくは0<X≦0.7IACS%の範囲となるように、時効処理時間を制御する。必要な強度と耐食性を得るために、例えば時効処理温度170〜210℃、時効処理時間0.5〜18時間の範囲内とするのが好ましい。時効処理温度が170℃未満では、時効効果が促進されず必要な強度が得られない恐れがある。また、時効処理温度が210℃を超えると、時効が促進されすぎて強度が低下する恐れがある。また、時効処理は、時効効果を促進し必要な強度を得るために、溶体化処理後、1時間以内に行うことが好ましい。
塑性加工品は、必要に応じてさらに機械加工、例えば切削加工、曲げ加工、絞り加工などが施されて、車両、船舶、航空機、自動車あるいは自動二輪等の輸送機の構造材(部品)などに仕上げられる。
溶解鋳造したアルミ合金鋳塊の組織について説明する。鋳塊の結晶粒径の大きさは、塑性加工、その後の時効処理を施した際の加工品の強度に大きく影響する。元の鋳塊の結晶粒径が大きいと塑性加工後の強度向上が得られないため、結晶粒径の大きさは平均値で300μm以下にする必要があり、好ましくは250μm以下にするのがよい。なお、結晶粒径の大きさは、例えば光学顕微鏡写真上での切片法により測定できる。
鋳塊のDAS(デンドライトアームスペース、Dendrite Arm Space)の大きさも、40μmを超えると塑性加工、その後の時効処理を施した際の強度が低下するため、平均値で40μm以下にする必要があり、好ましくは20μm以下にするのがよい。なお、DASの大きさは、例えば軽金属学会発行の『軽金属(1988年)、vol.38、No.1、p.45』に記載の『デンドライトアームスペーシングの測定方法』に従って測定できる。
鋳塊の晶出物、本発明でいう晶出物はAlMnSi相、Mg2Si相、FeおよびCrを含む2次相が結晶粒界に粒状や片状に晶出したものである。晶出物の平均粒径は、8μm以下であれば塑性加工性に影響を与えないため、8μm以下にする必要があり、好ましくは6.8μm以下にするのがよい。なお、晶出物の大きさは、例えば顕微鏡を有した画像解析装置(ルーゼックス)でミクロ組織を同定し、個々の晶出物の断面積を円に換算したときの直径として測定できる。
本発明における化学成分限定の理由を以下に説明する。
Siは、Mgと共存してMg2Si系析出物を形成し、最終製品の強度向上に寄与する。 Siは、後述するMgの量に対してMg2Siを生成する量を越えて過剰に添加することにより、時効処理後の最終製品の強度をさらに高めるため、Siの含有量は0.95質量%以上が望ましい。一方、1.15質量%を越えると、Siの粒界析出が多くなり、粒界脆化が生じ易く、鋳塊の塑性加工性、および最終製品の靭性を低下させるのみならず、鋳塊の晶出物の平均粒径が所定の上限を越える恐れがある。したがって、Siの含有量は、0.95質量%〜1.15質量%の範囲にするのが好ましい。
Mgは、Siと共存してMg2Si系析出物を形成し、最終製品の強度向上に寄与する。Mgの含有量が0.8質量%よりも少ないと、析出強化の効果が少なくなる恐れがある。一方、1.15質量%を越えると、鋳塊の塑性加工性、および最終製品の靭性を低下させるのみならず、鋳塊の晶出物の平均粒径が所定の上限を越えるおそれがある。したがって、Mgの含有量は、0.8質量%〜1.15質量%の範囲にするのが好ましい。
Cuは、Mg2Si系析出物の見かけの過飽和量を増加させ、Mg2Si析出量を増加させることにより、最終製品の時効硬化を著しく促進させる。Cuの含有量が1.0質量%を越えると、鋳塊の鍛造加工性、および最終製品の靭性を低下させ、さらに耐食性を著しく低下させる恐れがある。したがって、Cuの含有量は、1.0質量%以下の範囲にする必要がある。
MnはAlMnSi相として晶出し、晶出しないMnは、析出して再結晶を抑制する。この再結晶を抑制する作用により、塑性加工後も結晶粒を微細にし、最終製品の靭性向上および耐食性向上の効果がもたらされる。Mnの含有量が0.4質量%よりも少ないと、上記した効果が少なくなる恐れがある。一方、0.6質量%を越えると、巨大金属間化合物が生じ、この発明の鋳塊組織が満たされなくなる恐れがある。したがって、Mnの含有量は、0.4質量%〜0.6質量%の範囲にするのが好ましい。
CrもAlCrSi相として晶出し、晶出しないCrは、析出して再結晶を抑制する。この再結晶を抑制する作用により、塑性加工後も結晶粒を微細にし、最終製品の靭性向上および耐食性向上の効果がもたらされる。Crの含有量が0.1質量%よりも少ないと、上記した効果が少なくなる恐れがある。一方、0.2質量%を越えると、巨大金属間化合物が生じ、この発明の鋳塊組織が満たされなくなる恐れがある。したがって、Crの含有量は、0.11質量%〜0.19質量%の範囲にするのが好ましい。
Feは、合金中でAl、Siと結合して晶出するとともに、結晶粒粗大化を防止する。Fe含有量が0.2質量%より少ないと上記した効果が得られなくなる恐れがある。また、Feが0.3質量%を越えると、粗大な金属間化合物を生成するようになり、塑性加工性が悪化する恐れがある。したがって、Feの含有量は、0.2質量%〜0.3質量%にするのが好ましい。
Znは不純物として扱われ、0.25質量%を超えるとアルミの腐食自体を促進し、耐食性を劣化させるため、0.25質量%以下にするのが好ましい。
Zrは不純物として扱われ、0.05質量%を超えると、Al−Ti−B系合金の結晶粒微細化効果が弱められ、塑性加工後の加工品の強度低下を招くため、0.05質量%以下にするのが好ましい。
Tiは、結晶粒の微細化を図る上で有効な合金元素であり、かつ、連続鋳造棒に鋳塊割れなどが発生するのを防止する。Tiの含有量が0.012質量%よりも少ないと、微細化効果が得られず、一方、0.035%質量%を越えると、粗大なTi化合物が晶出し、靭性を劣化させる恐れがある。したがって、Tiの含有量は、0.012質量%〜0.035質量%の範囲にするのが好ましい。
BもTiと同様に、結晶粒微細化に有効な元素であり、0.0001質量%よりも少ないと、その効果が得られず、一方、0.03質量%を越えると、靭性を劣化させる恐れがある。したがって、Bの含有量は、0.0001質量%〜0.03質量%の範囲にするのが好ましい。
[製造ライン] 本発明の製造ラインの一例を図3を用いて説明する。
製造ラインは、合金溶解炉31、鋳造装置32、均質化処理炉33、素材予備加熱装置34、鍛造装置35、機械加工装置36、溶体化処理炉37、焼き入れ装置38、時効処理炉39、酸洗装置40、ショットブラスト装置41、最終機械加工装置42、および検査装置43から構成されている。
合金溶解炉31は、合金組成を調整し所定の温度に合金溶湯を保持しておくものである。溶解保持炉、溶湯清浄装置を設けても良い。
鋳造装置32は、合金溶湯を凝固させて鋳塊を得る装置である。冷却水温度、冷却水量などの冷却能を調整することによって凝固速度を調整することができる。
均質化処理炉33は、その炉内に鋳塊を挿入し、鋳塊に均質化処理を施す装置である。炉内を所定の温度状態となるように温度制御ができる。
鋳塊は適当な成形加工、たとえば押出加工、機械加工、切断加工により、素材に加工される。
素材予備加熱装置34は、成形する素材を予め加熱処理を施す装置である。
鍛造装置35は、成形孔を有する上金型下金型を配置し、鋳塊を成形用素材として成形孔内にセットし、金型を上下稼動して塑性加工するものである。必要に応じて、金型の成形孔に潤滑材塗布処理、素材に潤滑材塗布処理を施すための潤滑材噴霧装置を有したものとすることができる。
機械加工装置36は、塑性加工された成形品に切削、穴あけ、面取りなどの機械加工を施す装置である。製品仕様によっては省略することができる。
溶体化処理炉37は、塑性加工された成形品に溶体化処理を施す装置である。炉内を所定の温度状態となるように温度制御ができる。
焼き入れ装置38は、高温状態の成形品を急冷する装置である。一定温度範囲に制御された水中に、成形品を投入して急冷する。
時効処理炉39は、時効処理を行う装置であり、ピーク時効時点での導電率を基準として、その増分Xが0<X≦1(IACS%)の範囲となるように時効処理を施す。炉内を所定の温度状態となるように温度制御ができる。詳細は後述する。
酸洗装置40は、成形品を酸溶液で洗浄する装置である。製品仕様によっては省略することができる。
ショットブラスト装置41は、成形品の表面をショットブラスト処理する装置である。製品仕様によっては省略することができる。
最終機械加工装置42は、成形品を最終的な形状にするために、切削、穴あけ、面取りなどの機械加工を施す装置である。または、成形品と他の部材を組み合わせたり、接合したりして最終部品の形状とする装置である。製品仕様によっては省略することができる。
検査装置43は、外観検査や、必要に応じて重量検査などを行う装置である。場合によっては、人間による直接的な目視検査とすることができる。
各装置間は、コンベア、搬送車などの搬送装置によって結ばれているのが好ましい。
図4は時効処理炉の一例を示すブロック図である。時効処理炉39は、加熱炉5と制御部6から構成される。加熱炉5はさらに温度検出器51と加熱装置52を備え、制御部6は、入力部61、データ部62、温度監視部63、温度制御部64および時間制御部65を備えている。
データ部62には、処理する成形品に対応して予め測定しておいた、時効処理におけるピーク時効時点の導電率を基準として、その増分Xが0<X≦1(IACS%)となる、時間と温度の組合せを入力しておく。
温度監視部63は、炉内の温度をモニターし、データ部62に設定された温度と比較してその結果を温度制御部64へ出力して温度を所定の状態に保つ。
時間制御部65は、時効処理時間をモニターし、データ部62に設定された時間と比較してその結果を温度制御部64へ出力し保持時間を所定の状態とする。
入力部61を経由して、データ部62へのデータ入力、処理のスタート入力が行われる。入力部61は集中管理システムからの遠隔地操作のためのインターフェースとすることができる。
上記構成の時効処理炉39を用いて、鋳塊の導電率の増分Xを、時効処理におけるピーク時効時点での導電率を基準として、0<X≦1(IACS%)の範囲とする時効処理を実施することができる。
さらに、導電率の増分をキーとして、それを実現できる温度と保持時間の多数の組合せをデータベース化し、またはさらに成形品種ごとにデータベース化してデータ部62に記憶させておくことにより、運転状況、製品仕様、合金仕様が変更された場合であっても、速やかに適切な時効処理を選択して設定できることになる。
図5は時効処理炉の他の例を示すブロック図である。この時効処理炉39Aは、上記の時効処理炉39と同様に、加熱炉50と制御部60から構成される。加熱炉50はさらに温度検出器510と加熱装置520と導電率検出器530を備え、制御部60は、入力部610、データ部620、温度監視部630、温度制御部640、時間制御部650、演算部660および導電率測定部670を備えている。
導電率測定部670は、処理品の表面の導電率を測定する導電率検出器530からの出力信号をモニターし、演算部660へ転送する。
温度監視部630は、炉内の温度を温度検出器510からの出力信号でモニターし、データ部620に設定された温度と比較してその結果を温度制御部640へ出力して温度を所定の状態に保つ。
時間制御部650では、時効処理時間とデータ部620に入力されたピーク時効時点となる時間を比較し、ピーク時効時点となるタイミングを演算部660に知らせる。
演算部660では、そのピーク時効のタイミングから、導電率の増分Xのモニターを開始し、時効処理におけるピーク時効時点での導電率を基準として、その増分Xが0<X≦1IACS%となっているかを監視し、その範囲を超える時点で、またはそれ以前の時点で、温度制御部640、時間制御部650に制御信号を出力して、その増分Xが0<X≦1IACS%となる範囲で時効処理を終了させる。
入力部610を経由して、データ部620へのデータ入力、時効処理のスタート入力等が行われる。入力部610は集中管理システムからの遠隔地操作のためのインターフェースとすることができる。
上記構成の時効処理炉39Aを用いて、鋳塊の導電率の増分を、時効処理におけるピーク時効時点を基準として、その増分Xが0<X≦1(IACS%)の範囲とした、時効処理を実施することができる。このようにすることで、直接、熱処理中の鋳塊の導電率の増分を監視することができ、その監視結果を熱処理条件にフィードバックすることで確実な時効処理を施すことができる。
さらに、処理する成形品に対応して、予め測定しておいた時効処理におけるピーク時効時点となる時間と温度の組合せをデータベース化してデータ部620に記憶させておくことにより、運転状況、製品仕様、合金仕様が変更された場合であっても、速やかに適切な予定の時効処理を選択して設定できることになる。
図5の時効処理炉39Aの別の動作例を説明する。導電率測定部670は、処理品の表面の導電率を測定する導電率検出器530からの出力信号をモニターし、演算部660へ転送する。データ部620には、時効処理する成形品に対応して、時効処理温度、また時効処理時間とともに変化する導電率の微分値の下限値を入力しておく。この導電率の微分値はピーク時効時点を判定するためのものである。また好ましい時効処理時間を入力しておく。
温度監視部630は、炉内の温度をモニターし、データ部620に設定された温度と比較してその結果を温度制御部640へ出力して温度を所定の状態に保つ。
時間制御部650では、時効処理時間とデータ部620に入力された好ましい時効処理時間とを比較し、その比較した結果を演算部660に知らせる。
演算部660では、時効処理の開始から、導電率の増分Xのモニターを開始し、その微分値をデータ部620の判定値と比較し、時効処理におけるピーク時効時点をまず判定し、その時点を基準として、導電率の増分Xが0<X≦1(IACS%)となっているかを監視し、その範囲を超える時点で、またはそれ以前の時点で、温度制御部640および時間制御部650に制御信号を出力して、その増分Xが0<X≦1(IACS%)となる範囲で時効処理を終了させる。
このようにすることで、鋳塊の導電率の増分を、時効処理におけるピーク時効時点を基準として、その増分Xが0<X≦1(IACS%)の範囲とした、時効処理を実施することができる。また直接、熱処理中の鋳塊の導電率の増分を監視することができ、その監視結果を熱処理条件にフィードバックすることで確実な時効処理を施すことができる。例えば、成形品のばらつきに寄り導電率の変化状態が予想されるものと相違しているような場合あっても、確実に安定した時効処理を施すことができる。
さらに、予想以上に変化状態が相違される場合(例えば、好ましい処理時間の範囲で終了しないことが予想される場合など)は、温度を上昇または下降させることにより処理品質を安定化することができる。
時効処理炉はバッチ処理の場合を示したが、バッチ処理ではなく連続トンネル炉形式とすることも可能である。この場合は、トンネル内通過時間を一定範囲とするように導電率を監視しながら温度を変化することにより必要な処理時間を制御できるので、製造ラインの時間当たりの処理量を安定化させ、かつ処理品質も安定させることができる。
本発明の製造ラインで製造されたアルミ合金製塑性加工品は、鋳塊の導電率の増分を、時効処理におけるピーク時効時点を基準として、その増分Xが0<X≦1(IACS%)としたものであるので、高強度かつ耐食性に優れるアルミ合金製塑性加工品となる。
例えば、アルミ合金製塑性加工品としては、車両、輸送機の構造材として、自動車部品、自動二輪部品、船舶部品、航空機部品、電車、貨物の車両部品などがあげられる。
例えば、アルミ合金製塑性加工品の自動車部品としては、アッパーアーム、ロアアーム、ナックル、コントロールアーム、ロアリンク、サブフレーム、コンプレッションロッド、トランスバースリンク等が挙げられる。
また、これらの部品は全体を本発明のアルミ合金製塑性加工品として製造することもできるが、本発明のアルミ合金製塑性加工品と他の部材を組み合わせて、または接合して部品として製造する、すなわちアルミ合金製塑性加工品を部品の一部として用いるものとしたものとしても良い。
(実施例) 次に本発明の実施例を説明する。
Figure 0005275321
表1に示す化学成分組成のアルミ合金鋳塊を、ホットトップ鋳造法により、鋳造温度750±50℃、鋳造速度240±50mm/分の条件で鋳造した。この鋳塊を470℃で6時間、均質化処理を行なった。得られた鋳塊を530℃に加熱し、熱間鍛造によって図6に示すような自動車のサスペンションアーム部品の形状に塑性加工を施した。なお、塑性加工率を算出すると50%であった。次に、この塑性加工品を530℃で4時間、溶体化処理を行い、60℃で水焼入れ後、時効処理を行った。
Figure 0005275321
Figure 0005275321
表2に示すように180℃の温度で2〜15時間の範囲、また表3に示すように200℃の温度で0.5〜12時間の範囲で時効処理を実施した。
そして、表1の合金Aの化学成分のアルミ合金製塑性加工品である図6に示すサスペンションアーム部品から試験片を採取して硬度、導電率、引張強度を測定した。導電率は、メタルコンダックス2010(電子計測工業製)によりJIS−H0505に従って測定した。導電率は、図6のA部から試験片を採取し、被測定箇所を約0.05mm機械研磨した試験片表面を20℃に保持した状態で5点を測定した平均値である。硬度は、JIS−Z2245に準拠して測定を行い、図6のA部から試験片を採取して4点測定した平均値である。引張強度はJIS−Z2241に準拠して測定を行い、図6のB部からJIS14A号比例試験片(JIS−Z2201参照)を採取し、3回測定を行った平均値である。
また、図6のA部から、Cリング2号試験片(JIS−H8711参照)を採取し、応力腐食割れ試験(SCC試験)を実施した。試験条件は、液温を95℃に熱したCrO3:36g/l、K2Cr27:30g/l、NaCl:3g/lを含有する試験液に、Cリング試験片を95%の耐力を負荷した状態で10時間浸漬し、試験片の応力腐食割れの発生の有無の確認を行なった。その結果、全ての条件で応力腐食割れは発生しておらず問題がないことを確認した。また、腐食減量については、各試験片の断面を光学顕微鏡で観察し、発生した孔食の深さと幅の積を30個測定した平均値で評価を行った。
表2および表3は、時効処理後のアルミ塑性加工品の耐食性と強度について評価したものである。耐食性は、腐食減量として孔食の幅と深さの積で評価した。強度は、最大強度との強度比〔(強度/最大強度)×100(%)〕を算出し、過時効処理による強度低下について評価した。
評価欄の記号の定義は以下の通りである。
×:腐食量が多く耐食性が悪い
◎:腐食量が少なく耐食性が良い、なおかつ強度比が95%以上
○:腐食量が少なく耐食性が良い、なおかつ強度比が95%未満〜90%以上
△:腐食量が少なく耐食性が良い、なおかつ強度比が90%未満
表2の比較例1〜3と実施例1〜7、および表3の比較例6、7と実施例8〜14から、ピーク時効時点での導電率を基準とした導電率の増分Xが0を越えた範囲では、孔食深さと幅の積(腐食減量)が急激に減少しており、腐食量の増加を防ぐことによる耐食性の向上が確認できる。
表2の比較例5と実施例1〜7、および表3の比較例8と実施例8〜14から、導電率の増分Xが、0<X≦1IACS%の範囲では、強度比は90%以上であり、さらに導電率の増分Xが0<X≦0.7IACS%の範囲では、強度比は95%以上であり、過時効処理による強度低下が少ないので好ましい範囲である。導電率の増分Xが1を越えると強度比は90%未満となり、強度低下が顕著に現れてくる。よって、過時効処理による強度低下を防いで強度特性を維持するためには、ピーク時効時点での導電率を基準とした導電率の増分Xは0<X≦1IACS%の範囲、好ましくは0<X≦0.7IACS%の範囲と規定する必要があることがわかる。
Figure 0005275321
表4はCuの添加量について評価したものである。表1に示すCuの添加量の異なる3種のアルミ合金鋳塊の塑性加工品について、ピーク時効時点での導電率を基準とした導電率の増分Xが0<X≦1IACS%の範囲で時効処理を施したものである。Cu添加量が1質量%以上である比較例9では腐食減量が多く耐食性が著しく悪くなっている。また、Cu添加量が1質量%以下の実施例3および実施例15では、腐食減量が抑制され耐食性が向上している。このことから、Cu添加量を1質量%以下にする必要があることがわかる。
以上述べたように、本発明によれば、Al−Mg−Si系アルミ合金の鋳塊から製造したアルミ合金製塑性加工品において、Cuを1質量%以下含有するとともに、導電率がピーク時効時点での導電率に対して0より大で1IACS%以下の増分を有するようにしたので、Cu添加量を増加させたAl−Mg−Si系合金の塑性加工品であっても、腐食減量を大幅に抑制することができ、高強度化とともに耐食性をも向上させることができる。したがって、部品を薄肉化しても、腐食減量の抑制により、軽量化を確実に行うことができ、Al−Mg−Si系合金製塑性加工品の輸送機用としての用途をさらに拡大することができるようになる。
5 加熱炉
6 制御部
31 合金溶解炉
32 鋳造装置
33 均質化処理炉
34 素材予備加熱装置
35 鍛造装置
36 機械加工装置
37 溶体化処理炉
38 焼入れ装置
39 時効処理炉
39A 時効処理炉
40 酸洗装置
41 シショットブラスト装置
42 最終機械加工装置
43 検査装置
50 加熱炉
51 温度検出器
52 加熱装置
60 制御部
61 入力部
62 データ部
63 温度監視部
64 温度制御部
65 時間制御部
510 温度検出器
520 加熱装置
530 導電率検出器
610 入力部
620 データ部
630 温度監視部
640 温度制御部
650 時間制御部
660 演算部
670 導電率測定部

Claims (1)

  1. Al−Mg−Si系アルミ合金の鋳塊からアルミ合金製塑性加工品を製造するアルミ合金製塑性加工品の製造方法において、
    Cuを0.3〜1.0質量%、Mgを0.8〜1.15質量%、Siを0.95〜1.15質量%、Mnを0.4〜0.6質量%、Feを0.2〜0.3質量%、Crを0.11〜0.19質量%、Znを0.25質量%以下、Zrを0.05質量%以下、Tiを0.012〜0.035質量%、Bを0.0001〜0.03質量%含有し、残りがAlと不可避不純物からなるアルミ合金の溶湯を鋳造し、
    上記鋳造により得られた鋳造品に均質化処理および塑性加工を施し、この塑性加工での素材の加熱温度を、〔430+塑性加工率(%)〕℃以上550℃以下の範囲に制御し、
    上記塑性加工により得られた塑性加工品に、溶体化処理、水焼入れ処理および人工時効硬化処理を施し、
    上記人工時効硬化処理におけるピーク時効時点以降の時効処理時間を、当該塑性加工品の導電率が、ピーク時効時点での導電率に対して0より大で1IACS%以下の増分を有する時間とした、
    ことを特徴とするアルミ合金製塑性加工品の製造方法。
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