JP5819216B2 - 回転電機 - Google Patents
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Description
このような回転電機では、ステータを固定する必要がある。ステータを固定する技術として、特許文献1に記載の技術がある。
特許文献1に記載の技術では、冷媒が充填されるケースの内部において、ステータの軸方向の一端面に押さえリングを配置すると共に、ステータの軸方向の他端面に台座を配置する。押さえリングと台座には、ボルトを通す孔が形成されている。ボルトをこれらの孔に通すことによって、ステータが台座に固定されるようにする。
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
<モータの構造>
図1は、モータの構成の一例を示す俯瞰図である。図2は、モータの構成の一例を示す断面図である。具体的に図2は、モータの軸に垂直な方向にモータを切ったときのモータの断面図(図1に示すI−I断面図)である。図3は、ステータコアの構成の一例を示す断面図である。具体的に図3は、モータの軸に沿ってステータコアを切ったときのステータコアの断面図である。より具体的に図3(a)は、ステータコアのティースを有する部分の断面図(図2の仮想線201に沿ってモータの軸に平行な方向に切ったときのステータコアの断面図)であり、図3(b)は、ステータコアのティースを有しない部分の断面図(図2の仮想線202に沿ってモータの軸に平行な方向に切ったときのステータコアの断面図)である。尚、図2のL1と図3のL1とが相互に対応し、図2のL2と図3のL2とが相互に対応する。
ステータ110は、相対的にモータ100の外側に配置される。ロータ120は、その外周面がステータ110の内周面と間隔を有して対向するように、相対的にモータ100の内側に配置される。回転軸130は、その外周面がロータ120の内周面と対向し、且つ、ロータ120に直接又は間接的に接続された状態でモータ100の中心部に配置される。ステータ110とロータ120の軸心は回転軸130の軸心と略一致している。尚、以下の説明では、「モータ100の外側」、「モータ100の内側」、「モータ100の軸方向」を、必要に応じて、それぞれ「外側」、「内側」、「軸方向」と略称する。
ステータコア111は、周方向に延在するヨークと、ヨークの内周側から軸心方向に延在する複数のティースとを有し、その外周面(ヨークの外周面)が露出している。複数のティースは、周方向において略等間隔で設けられている。
図1及び図2に示す例では、36個のティースが設けられている。しかしながら、ティースの数は36個に限定されるものではない。また、ティースには、図示しない巻線が分布巻で巻き回される。ただし、この巻線の巻線方式は、集中巻であってもよい。また、この巻線の巻数として12[Turn]を想定するが、この巻線の巻数は12[Turn]に限定されるものではない。さらに、モータ100の極数として4極を想定するが、モータ100の極数は4極に限定されるものではない。
ただし、端板140a〜140dの内周側の先端部が、ステータコア111のティースよりも突出(内側に位置)することを確実に防止するために、端板140a〜140dの「ティースに対応する部分の先端部(内側の端部)」が、ティースの先端部(内側の端部)よりも(僅かに)後退する位置(外側の位置)にあってもよい。また、端板140a〜140dの「ティースに対応する部分の周方向の端部」が、ステータコア111のスロットの領域に位置することを確実に防止するために、端板140a〜140dの「ティースに対応する部分の周方向の端部」が、ティースの周方向の端部よりも(僅かに)後退する位置にあってもよい。さらに、端板140a〜140dの「ヨークに対応する部分の内周側の端部(内側の端部)」が、ステータコア111のスロットの領域に位置することを確実に防止するために、端板140a〜140dの「ヨークに対応する部分の内周側の端部(内側の端部)」が、ヨークの内周側の端部(内側の端部)よりも(僅かに)後退する位置(外側の位置)にあってもよい。
端板140a〜140dは、厚みが1.6[mm]のステンレス鋼(SUS304)を前述した形に打ち抜くことにより形成される。
本発明者らは、モータの損失を低減するために、モータの損失を把握することを試みた。その中で、(従来の端板の材料である)SPCCを用いて形成した端板の鉄損が予想以上に大きいことを見出した。
図4は、端板の鉄損とステータコアの鉄損の一例を表形式で示す図である。
図1〜図3に示すステータコア111の磁束密度の分布をFEM(有限要素法)で解析した。このときのモータの無負荷運転条件は以下の通りである。
ロータ回転数:3000[rpm]
電流実効値:50[Arms]
このようにして求めたステータコア111の磁束密度の分布と、ステータコア111の材質である50A800の磁束密度−鉄損特性とから、ステータコア111全体の鉄損を求めた。その値が、図4に示すように2130[W]であった。
厚みが1.6[mm]のSPCCの板を、外径が120[mm]、内径が100[mm]のリング状に形成したものを3枚作製し供試材とした。この供試材に、一次巻線として180[Turn]の導体線を、二次巻線として20[Turn]の導体線をそれぞれ巻き回した。そして、以下の励磁条件で一次巻線に電流を流し、二次巻線の誘起電圧から磁束密度を測定することで、各磁束密度における鉄損の値を測定した。
周波数:100[Hz]
磁束密度:0.3[T]から1.8[T]、0.1[T]刻み
このようにして測定した3枚の供試材での各磁束密度における鉄損の値を平均して、SPCCの磁束密度−鉄損特性を求めた。以上の測定の結果、磁束密度が1[T]、1.5[T]のときの鉄損の値は、それぞれ50[W/kg]、150[W/kg]となった。
尚、50A800の磁束密度−鉄損特性についても、SPCCの磁束密度−鉄損特性と同様にして測定することができる。これらの結果から、本願発明者らは、SPCCの鉄損は、50A800の鉄損よりも数倍(概ね4〜5倍程度)大きくなるという知見を得た。
鉄損には、渦電流損が含まれる。この渦電流損を低減するために、固有抵抗値が大きい材料を、端板140を構成する材料として用いることが考えられる。そこで、本実施形態では、固有抵抗値が大きい材料のうち、比較的安価であり、且つ、加工(成形)が容易であるステンレス鋼を、端板140を構成する材料として採用した。
また、鉄損は、ステータ110の巻線に交流電流が流れることにより、磁束が端板140の内部に発生することに起因して生じる。したがって、端板140を構成する材料として非磁性体を用いれば、端板140の鉄損を著しく低減することができる。そこで、本実施形態では、ステンレス鋼のうち、非磁性体であるオーステナイト系のステンレス鋼を、端板140を構成する材料として採用した。
尚、本実施形態では、2枚の端板140a、140bを、ステータコア111の軸方向の一端面に取り付けると共に、他の2枚の端板140c、140dを、ステータコア111の軸方向の他端面に取り付けるようにした。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はなく、ステータコア111の軸方向の一端面と他端面にそれぞれ1枚ずつ端板を取り付けるようにしてもよい。
また、本実施形態のように、端板140a、140bと、端板140c、140dとの双方を、固有抵抗値が50[μΩ・cm]以上であるステンレス鋼、好ましくは非磁性体であるオーステナイト系のステンレス鋼で形成すれば、前述した効果が大きくなるのでこの好ましい。しかしながら、端板140a、140bと、端板140c、140dとの何れか一方を、本実施形態で説明した端板140とし、他方を、従来と同様の普通鋼で形成した端板としても鉄損の低減効果が得られるので、このようにしてもよい。
また、各端板140a〜140dの素材や厚みは、同じでなくてもよい。
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。前述した第1の実施形態では、ステータコア111の軸方向の一端面と他端面に取り付ける端板140の数をそれぞれ2枚とした。渦電流損Weは、材料の板厚tの二乗に比例する(We∝t2)。よって、第1の実施形態で示した端板140よりも、端板140の1枚当たりの板厚を薄くすれば、端板の鉄損をより一層低減することができる。また、ステータコア111の軸方向の一端面と他端面に取り付けたときの端板の全体の厚みを、第1の実施形態で示した端板140と同じ厚みにすれば、第1の実施形態の端板140を用いたときと比べて剛性が大きく低下することを抑制することができる。
また、第1及び第2の実施形態では、ステータコア111の軸方向の一端面と他端面に同数の端板を取り付けるようにした。しかしながら、ステータコア111の軸方向の一端面と他端面に取り付ける端板の数は、必ずしも同数である必要はない。
図5は、各種の端板の損失の一例を表形式で示す図である。
図5において、「SPCC」の欄に示す値は、1.6[mm]の4枚のSPCCのうち、2枚をステータコア111の軸方向の一端面に、他の2枚をステータコア111の軸方向の他端面に取り付けたものについての値である。また、「SUS304(1)」の欄に示す値は、1.6[mm]の4枚のSUS304のうち、2枚をステータコア111の軸方向の一端面に、他の2枚をステータコア111の軸方向の他端面に取り付けたものについての値である。また、「SUS304(2)」の欄に示す値は、0.4[mm]の16枚のSUS304のうち、8枚をステータコア111の軸方向の一端面に、他の8枚をステータコア111の軸方向の他端面に取り付けたものについての値である。尚、これらの端板の板面方向の形状及び大きさは、第1の実施形態で示したものと同じである。
「鉄損値(ステータコア鉄損基準)」とは、図4に示した「ステータコア」の「絶鉄損」の値を「1」としたときの端板全体の鉄損値(相対値)である。
「磁束密度」は、1.5[T]における「比透磁率」の値に比例するものとする。この「磁束密度」は、「SPCC」の値を「1」としたときの値(相対値)である。
「枚数を考慮した渦電流損比」とは、端板を構成する素材の枚数及び板厚の違いを渦電流損に換算した値であり、「SPCC」の値を「1」としたときの値(相対値)である。「枚数を考慮した渦電流損比」は、素材の枚数に比例するものとする。尚、「SUS304(2)」における「枚数を考慮した渦電流損比」は、「渦電流損板厚換算比(1枚当たり)」の値である「0.0625」に「4(=16/4)」を掛けることにより得られる。
尚、固有抵抗値が50[μΩ・cm]であり、厚みが1.6[mm]である材料で、第1の実施形態で示した端板140a〜140dと同じ大きさ・形状の板面を有する端板を4枚作製し、これらの4枚の端板を第1の実施形態と同様にして配置した場合、「材質・板厚変更時渦電流損比」は0.37となる。
尚、固有抵抗値が50[μΩ・cm]であり、厚みが0.4[mm]である材料で、第1の実施形態で示した端板140a〜140dと同じ大きさ・形状の板面を有する端板を16枚作製し、これらの16枚の端板を第2の実施形態と同様にして配置した場合、「材質・板厚変更時渦電流損比」は0.10となる。
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図6は、本実施形態のモータの構成の一例を示す俯瞰図である。本実施形態と第1、第2の実施形態とは、端板を構成する材料と枚数とが異なる。
第1、第2の実施形態では、端板を構成する材料として導電体(非絶縁体)であるステンレス鋼を用いた。これに対し、本実施形態では、端板を構成する材料として、非磁性体であり且つ絶縁体である材料を用いるようにする。このように、端板を構成する材料として絶縁体を用いた場合には、渦電流損は発生しない。よって、図6に示すように、ステータコア111の軸方向の一端面と他端面に取り付ける端板640a、640bの枚数はそれぞれ1枚でよい。
前述した絶縁体(材料)の引張強度の値は、ステンレス鋼の引張強度の値よりも小さい。このことを踏まえ、当該材料で端板を構成する場合には、モータ600を使用している最中にステータコア111が変形や破壊しないように、端板の厚みを適宜決定するようにする。
端板を成形する方法は、金型等を用いた公知の成形技術により実現することができる。
その他については、第1の実施形態と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
尚、第1、第2の実施形態と同様に、端板640aと、端板640bとの何れか一方を、本実施形態で説明した端板640とし、他方を従来と同様の普通鋼で形成した端板としてもよい。
また、端板640aと、端板640bとの何れか一方を、本実施形態で説明した端板640とし、他方を、第1、第2の実施形態で説明した端板140としてもよい。また、各端板640a、640bの素材や厚みは、同じでなくてもよい。
次に、本発明の第4の実施形態を説明する。図7は、本実施形態のモータの構成の一例を示す俯瞰図である。本実施形態と第1〜第3の実施形態とは、端板の板面方向の形状が異なる。
前述した第1〜第3の実施形態では、端板の板面に、ステータコア111の板面と略同一の形状・大きさを有する領域が含まれるようにした。これに対し本実施形態では、図7に示すように、端板740a〜740dの板面は、それぞれ、ステータコア111のヨーク及びティースのうち、ステータコア111のヨークに対応する領域のみを有する。このように、本実施形態の端板740a〜740dの板面には、ステータコア111の板面のうちヨークに対応する領域と略同一の形状・大きさを有する領域は存在するが、ティースに対応する領域は存在しない。ただし、第1の実施形態で説明したように、端板740a〜740bの「ヨークに対応する部分の内周側の端部(内側の端部)」が、ヨークの内周側の端部(内側の端部)よりも(僅かに)後退する位置(外側の位置)にあってもよい。
以上のように端板740a〜740dを配置することにより、端板740a〜740dの板面の、ステータコア111のヨークに対応する領域が、ステータコア111のヨークと対向する。
その他については、第1の実施形態と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
また、端板740a、740bと、端板740c、740dの双方について、ステータコア111のヨーク及びティースのうち、ステータコア111のヨークに対応する領域のみを有する端板とすれば、前述した効果が大きくなるので好ましい。しかしながら、例えば、端板740a、740bと、端板740c、740dとの何れか一方を、ステータコア111のヨークに対応する領域のみを有する端板とし、他方を、ステータコア111のステータとヨークに対応する領域を有する端板としても鉄損の低減効果が得られるので、このようにしてもよい。
また、端板740a、740bと、端板740c、740dの何れか一方を、第1、第2の実施形態で説明した端板140と同じ材料で形成し、他方を、第3の実施形態で説明した端板640と同じ材料で形成した端板としてもよい。
さらに、端板740a、740bと、端板740c、740dの何れか一方を、第1〜第3の実施形態で説明した端板140、640の何れかと同じ材料で形成した端板とし、他方を、従来と同様の普通鋼で形成した端板としてもよい。また、各端板740a〜740dの素材や厚みは、同じでなくてもよい。
110 ステータ
111 ステータコア
120 ロータ
130 回転軸
140、640、740 端板
Claims (3)
- 周方向に延在するヨークと、前記ヨークの内周側から軸心方向に延在する複数のティースとを有し、外周面が露出しているステータコアを備えるステータと、
外周面が前記ステータの内周面と間隔を有して相互に対向する位置に配置されるロータと、
前記ロータを回転させるための回転軸と、
前記ステータコアの変形及び破壊を防止するために、前記ステータコアの軸方向の一端面に取り付けられた第1の端板と、
前記ステータコアの変形及び破壊を防止するために、前記ステータコアの軸方向の他端面に取り付けられた第2の端板と、を有し、
前記第1の端板と、前記第2の端板の一方又は両方は、50[μΩ・cm]以上の固有抵抗値を有する非絶縁体の材料により形成され、
前記第1の端板と、前記第2の端板のうち、50[μΩ・cm]以上の固有抵抗値を有する非絶縁体の材料により形成されている端板は、複数配置され、
前記複数配置される端板は、相互に絶縁された状態で、厚み方向に積み重ねられており、
前記複数配置される端板の全てが非磁性の材料により形成されていることを特徴とする回転電機。 - 前記第1の端板の板面と、前記第2の端板の板面の一方又は両方は、前記ステータコアのヨークに対応する領域と、前記ステータコアのティースに対応する領域とを有し、
前記第1の端板と、前記第2の端板のうち、前記ステータコアのヨークに対応する領域と、前記ステータコアのティースに対応する領域とを有する端板の板面の、前記ステータコアのヨークに対応する領域が、前記ステータコアのヨークと対向すると共に、前記第1の端板と、前記第2の端板のうち、前記ステータコアのヨークに対応する領域と、前記ステータコアのティースに対応する領域とを有する端板の板面の、前記ステータコアのティースに対応する領域が、前記ステータコアのティースと対向していることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。 - 前記第1の端板の板面と、前記第2の端板の板面の一方又は両方は、前記ステータコアのヨーク及びティースのうち、前記ステータコアのヨークに対応する領域のみを有し、
前記第1の端板と、前記第2の端板のうち、前記ステータコアのヨークに対応する領域のみを有する端板の板面の、前記ステータコアのヨークに対応する領域が、前記ステータコアのヨークの全面と対向していることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
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