JP5811591B2 - 耐圧潰性および溶接熱影響部靱性に優れた高強度ラインパイプ及びその製造方法 - Google Patents

耐圧潰性および溶接熱影響部靱性に優れた高強度ラインパイプ及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、石油や天然ガスの輸送に使用される高強度ラインパイプ用溶接鋼管およびその製造方法に関し、特に厚鋼板を冷間で成型し2層以上の溶接をして製造される耐圧潰性および溶接熱影響部靱性に優れた高強度ラインパイプおよびその製造方法に関する。
一般に、海底に敷設するラインパイプは、敷設時に外部からの高い外圧を受け圧潰する可能性がある。そのため、海底に敷設されるラインパイプには、高い耐圧潰性が求められる。耐圧潰性は、ラインパイプの形状と圧縮降伏応力によって支配され、一般的に、ラインパイプの形状が真円であるほど、圧縮降伏応力が大きいほど耐圧潰性に優れることが知られている。そのため、海底に敷設されるラインパイプは、造管した状態で十分な圧縮降伏応力を有することが望ましいが、UOE鋼管のように厚鋼板を冷間加工した後、拡管することで造管される鋼管の場合、最終工程である拡管で大きな引張負荷を受ける。そのため、鋼管の圧縮降伏応力は、引張負荷時に発生した背応力により鋼管の引張降伏応力よりも低下することになる。
従って、鋼管の耐圧潰性を確保するためには、厚鋼板の設計強度を高く設計する、あるいは管厚を大きくする必要がある。しかしながら、強度を上げるあるいは管厚を大きくするためには、ともに合金コストの増大や母材および溶接熱影響部の靱性劣化を助長するため、過度に強度や管厚を大きくすることなく、耐圧潰性を確保できる溶接鋼管の製造方法を確立することが求められている。
また、海底に敷設するラインパイプは減圧時に管体が断熱的な温度低下を起こす可能性があるため、海水の最低温度(=0℃)からさらに低い温度での低温靱性の確保が求められ、耐圧潰性を確保するために厚肉化したラインパイプでは、突合せ部の溶接の溶接入熱量の増大により、使用温度での溶接熱影響部靱性の確保が困難となり、耐圧潰性と溶接熱影響部靱性の両立が課題として挙げられる。
このような課題に対し、特許文献1および特許文献2では、造管時のOプレス圧縮率と拡管率をパラメータに、圧縮率/拡管率を最適な範囲まで低減することによって、造管後における鋼管の圧縮降伏応力の低下を抑制する方法が開示されている。たとえば、特許文献2には、O成形時のアプセット率(すなわち圧縮率)αと拡管時の拡管率βとの比をα/β≧0.35とする技術が開示されている。また、特許文献2では、拡管率を極めて大きくすることにより、造管後における鋼管の圧縮降伏応力の低下を抑制する方法も開示されている。特許文献3では、縮管と拡管の順序と程度を最適化することによって、外圧による鋼管の圧潰強度を向上させる方法が開示されている。
特許文献4から7には、造管後に熱処理、もしくはコーティング加熱による低温ひずみ時効により、造管工程で鋼管に付与された背応力を低減することにより、鋼管の圧縮降伏応力の低下を抑制する方法が開示されている。
また、特許文献8および特許文献9では、厚鋼板の組織に含まれる島状マルテンサイト(以下「M−A」とも表記する。)を分解し、さらにフェライトとベイナイトの混合組織中のベイナイトの硬さを低下させることによりバウシンガー効果による圧縮降伏応力を向上させ、同時に管厚方向の硬さの均一化による真円度の向上により耐圧潰性をする方法が開示されている。
特開2002−102931号公報 特開2003−340518号公報 特開平9−1233号公報 特開平9−3545号公報 特開2002−295736号公報 特開2003−342639号公報 特開2004−35925号公報 特開2009−275261号公報 特開2010−84171号公報
しかし、特許文献1および特許文献2で示されているような最適な圧縮率/拡管率に造管条件を設定するためには、Oプレス圧縮率を通常よりも極めて大きくする必要がある。Oプレスの圧縮率を増大させることは、Oプレス機のプレス能力を増強する必要があり、新規設備導入や設備改修によるコストの増大が問題となる。
さらに、圧縮強度の確保が問題となる海底パイプライン用ラインパイプは、耐座屈性能確保の観点から厚肉で設計されることが多く、このことはOプレスの圧縮率を増大させることとなる。また、拡管率を低下させることにより、最適な範囲にすることもできるが、鋼管の真円度を低下させることとなり、耐圧潰性が劣化してしまう。本発明で耐圧潰性とは、鋼管の敷設時の外圧による座屈破壊に対する抵抗力と言う意味で使用する。
また、特許文献2および3に記載のように、拡管率を極めて大きくすることや縮管と拡管とを行うことは、過度な加工硬化による表面硬さの上昇や、拡管および縮管ダイスによる疵が鋼管表面に残ることが懸念される。
また、特許文献4から7に記載のように、造管後のコーティング加熱条件を最適化することにより、低温ひずみ時効処理を行うことは、圧縮降伏応力の低下を抑制するという観点では絶大な効果があるが、鋼管の引張の応力−ひずみ曲線が造管後のラウンドハウス型からリューダース型に変わり、曲げ座屈性能などの鋼管の変形能を低下させる。
さらに、コーティング加熱の条件は、使用するコーティング材によって変わり、必ずしも狙いとするコーティング加熱条件に合致させることができるとは限らず、コーティング加熱のかわりに熱処理によって低温ひずみ時効処理を行う場合は、工程が増えることにより生産性を著しく損なうこととなる。
また、特許文献8および特許文献9記載のように、加速冷却の直後に急速加熱を加えることで鋼材特性、鋼管形状の両面から耐圧潰性を向上させることができるが、加速冷却時に鋼板表面に厚いスケールが生成している場合は、スケールがある部分のみ表層が急速に冷却され硬化するため、板幅方向の表層硬さ分布が平坦にならず、その局所硬化域の存在が鋼管の真円度を確保する上での懸念材料になる。さらに、これらの方法はいずれも海底ラインパイプとして用いられる厚肉鋼管における溶接熱影響部靱性の確保方法が開示されていない。
上述したように、従来の技術では外観の劣化、溶接性の低下、生産性の低下や溶接熱影響部靱性の低下を生じることなく、耐圧潰性に優れた高強度ラインパイプを製造することは、困難であった。
そこで、本発明では、耐圧潰性および溶接熱影響部靱性を低下させることなく、高生産性、低コストで製造できる高強度ラインパイプおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記の課題を解決するために、鋼板のミクロ組織およびミクロ組織を達成するための鋼管素材製造方法、特に制御圧延、加速冷却、その後の再加熱という製造プロセスについて鋭意検討し、以下の知見を得た。
まず、耐圧潰性を確保するための方法を検討した。耐圧潰性は、鋼管の圧縮強度と真円度を高めることにより向上させることができることはすでに知られている。そこで、本発明では、圧縮強度と真円度を高める方法について検討した。圧縮強度は、母材のミクロ組織を均一化することによる向上されることができることがわかった。特に、M−Aは圧縮強度を著しく劣化させ、ついで2相組織になった場合の軟質相と硬質相の硬さ差が圧縮強度を劣化させることがわかった。
そこで、本発明では、加速冷却後に再加熱を行うことで、M−Aの分解および2相組織の硬質相の焼戻しによる軟質相と硬質相の硬さ差の低減を行うことで、圧縮強度を向上させることができることを明らかにした。
次に、真円度を向上させるための手法について検討した結果、真円度は同じ成形条件で造管した場合、鋼管素材の管周方向の硬度差および管厚方向の硬度差が小さいほど良好になることがわかった。
そこで、管周方向および管厚方向の硬度差を低減する方法を種々検討した。管周方向の硬度差は、おもに表面および/または裏面の表層部において生成しており、その原因を調査したところ、加速冷却時に表層に厚いスケールが生成していた箇所で表層が急激に冷却されることにより局所的に硬化部が生成することがわかった。
したがって、それを抑制するためには、加速冷却前の鋼板表面をできるだけ均一かつ薄スケール化する必要があることがわかるが、本発明では加速冷却直前にデスケーリングを行うことによりそれを達成した。また、管厚方向の硬さ差を平坦にするためには、圧縮強度の向上のために鋼板の加速冷却後に実施する再加熱を急速加熱により行うことで、表層の到達温度を高く、板厚中央すなわち管厚中央の到達温度を低くし、管厚方向の焼戻し効果に差をつけることが有効であることがわかった。
また、板厚中央すなわち管厚中央の再加熱温度を低く抑えることはDWTT(Drop Weight Tear Test:落重引裂試験)性能の確保の観点からも有利である。
以上の対策を講じることで、圧縮強度低下の原因となる拡管率の過度な上昇を行わずとも、所望の優れた真円度を得ることができ、圧縮強度、真円度の両立すなわち耐圧潰性の向上を実現した。
本発明では、さらに溶接熱影響部靱性を確保できる鋼材成分、シーム溶接条件および溶接熱影響部のミクロ組織について検討を加えた。また、本発明では、主にX65〜X80の内外面2層以上のシーム溶接によって製造される溶接鋼管を対象としているが、これらの鋼管の溶接熱影響部の組織は上部ベイナイト組織となる。溶接熱影響部の組織が上部ベイナイト組織である場合、靱性の改善方法としては、旧オーステナイト粒径の微細化およびM−Aの低減が挙げられる。発明者らは、旧オーステナイト粒径の微細化のためには、Tiの微量添加および溶接入熱の低減が有効であるとの知見を得た。一方で、M−Aの低減のためには、硬質第2相の総量を低減する効果のある、Cの低減が有効であり、硬質第2相のM−Aへのなりやすさを低減するためには合金元素を低減することがよいとの知見も得た。
さらに、この合金元素のなかで、Si、Al、Nbは、特にその効果に大きく寄与すること、Pは、Pそのものの効果でM−Aを低減する効果はわずかであるが、Pを低減することによりミクロ偏析の生成が抑制され、前述したM−Aの群集する領域を減らすことができ、その結果溶接熱影響部靱性を改善することができるとの知見も得た。
以上のような知見を基に、各合金元素のM−A生成に及ぼす機能と影響度を考慮した後述する式(2)で定義されるPMAが溶接熱影響部靱性の指標となることを見出した。すなわち、このPMAを5.5以下にすることにより、溶接熱影響部に生成するM−Aの生成を抑制し、靱性を大幅に向上できることがわかった。なお、PMAは、溶接熱影響部におけるM−Aの生成度合いをパラメータ化したものであり、溶接熱影響部靱性を向上させるためには、低いほどよいことを確認している。
また、2層以上の溶接により作製された溶接継手には、再熱によって1パスの溶接によって形成される溶接熱影響部よりもさらに靱性が劣化する領域が存在する。この領域は主に、1パスの溶接で最も靱性が劣化しているCGHAZ(HAZ:溶接熱影響部、CGHAZ:Coarse−grain HAZ)が再熱によって高温に600℃以上の高温に焼戻された領域および2相域まで再加熱された領域であることがわかった。これらのうち2相域まで再加熱された領域の靱性劣化因子は、M−Aであるため、上述のPMAを低減することで靱性の改善が図れる。
一方で、高温に焼戻された領域の靱性の劣化は、Nb、Vの析出により生じ、さらにNbとVが複合添加されている場合には、単独添加よりも析出脆化量が大きくなり、高温に焼戻された領域の靱性の劣化は顕著になる。
さらに、このNb、V複合添加による析出脆化を定量化した式(3)で定義されるPCPを低減することで靱性の改善が図れるとの知見を得た。また、1パス当たりの溶接入熱に上限を設けることにより、旧オーステナイト粒の粗大化抑制およびHAZ幅の拡大抑制が可能となり、以上の構成を採用することにより、良好な溶接熱影響部靱性が得られる。
本発明は、以上の知見をもとに、さらに検討を加えたもので、
[1] 厚鋼板からなる母材を管状に成形し、その突合せ部を2層以上の溶接によって接合し、拡管した溶接鋼管であって、
質量%で、
C: 0.03〜0.08%
Si: 0.01〜0.20%
Mn: 1.5超、2.5%以下
P: 0.015%以下
Al: 0.001〜0.05%
Nb: 0.005〜0.050%
Ti: 0.005〜0.030%
N: 0.0020〜0.0080%
を含有し、さらに、
Cu: 0.10〜0.50%
Ni: 0.10〜1.00%
Cr: 0.10〜0.40%
Mo: 0.10〜0.30%
V: 0.005〜0.030%
の中から選ばれる1種以上を含有し、
さらに、式(1)で規定されるCeqが0.30≦Ceq≦0.50を満たし、
式(2)で規定されるPMAが5.5以下、
式(3)で規定されるPCPが0.011以下、
残部Feおよび不可避的不純物からなり、
母材表層部の金属組織がフェライト及び上部ベイナイトの混合組織であり、
母材管厚中心部の金属組織がフェライトと上部ベイナイトの混合組織であるか又は上部ベイナイト単相であり、
母材管厚全域で島状マルテンサイト(M−A)の体積分率が2%以下、
管厚方向で同じ位置における管周方向の硬度差の最大値が30以下、
管周方向で同じ位置における管厚方向の硬度差の最大値が30以下である
ことを特徴とする耐圧潰性および溶接熱影響部靱性に優れた高強度ラインパイプ。
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5 式(1)
PMA=100000(C−0.0218)(0.2Si+0.5Al){2(C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B)+2.5Nb}{10/(50P+2.5)}−2 式(2)
PCP=Nb(25V+0.2)+V/2 式(3)
ここで、各式の右辺の元素記号はそれぞれの含有量(質量%)を表し、含有しない場合は0とする。
[2]さらに、質量%で、
Ca:0.0005〜0.0100%
Mg: 0.0005〜0.0100%
REM: 0.0005〜0.0200%
Zr: 0.0005〜0.0300%
の内から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする[1]に記載の耐圧潰性および溶接熱影響部靱性に優れた高強度ラインパイプ。
[3] 前記母材管厚中心部の金属組織が、フェライトと上部ベイナイトとの混合組織である場合には、
それらの組織の硬度の差が150以下であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の耐圧潰性および溶接熱影響部靱性に優れた高強度ラインパイプ。
[4] 前記溶接鋼管の突合せ溶接部の溶接熱影響部において、
島状マルテンサイト(M−A)の体積分率が2%以下であり、
平均旧オーステナイト粒径が200μm以下である
ことを特徴とする前記[1]〜[3] のいずれか1つに記載の耐圧潰性および溶接熱影響部靱性に優れたに高強度ラインパイプ。
[5] 真円度(Dmax−Dmin)が下記の(4)又は(5)式を満たすことを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の耐圧潰性および溶接熱影響部靱性に優れた高強度ラインパイプ。
D/t0.6≦135の場合は、真円度(Dmax−Dmin)≦3.0 式(4)
D/t0.6>135 の場合は、真円度(Dmax−Dmin)≦0.04D/ t0.6−2.4 式(5)
ここで、D: 公称外径(mm)、t: 管厚(mm)、Dmax−Dmin: 真円度(mm)、Dmax:測定最大外径(mm)、Dmin:測定最小外径(mm)である。
[6] 鋼素材を、900〜1200℃に加熱後、900℃以下の累積圧下率を30〜90%とし圧延終了温度を(Ar点−40℃)以上850℃以下とした熱間圧延を行った後、
加速冷却の直前に鋼板表面での噴射流衝突圧が1MPa以上のデスケーリングを行い、
直ちに(Ar−90℃)以上の温度から表層の冷却速度が200℃/s以下かつ平均の冷却速度が10℃/s以上で冷却停止温度が250℃〜450℃になる加速冷却を行い、
続いて、表層温度が冷却停止温度以上かつ(500℃〜Ac点)、
管厚中央温度が冷却停止温度以上かつ400〜550℃、
表層と管厚中央の到達温度差が40℃以上
となるように再加熱を実施し、
その後、室温まで冷却した後、冷間で管状に成形し、
その突合せ部を溶接し鋼管とした後、さらに0.5〜1.1%の拡管率で拡管を行うことによって製造する
ことを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の耐圧潰性および溶接熱影響部靱性に優れた高強度ラインパイプの製造方法。
[7] 前記突合せ部の溶接を、2層以上で行い、該溶接の最大溶接入熱量が式(6)を満たすことを特徴とする前記[6]に記載の耐圧潰性および溶接熱影響部靱性に優れた高強度ラインパイプの製造方法。
HImax≦0.0376t1.45+2.4 式(6)
ここで、HImax:最大溶接入熱量(kJ/mm)、t: 管厚(mm)である。
本発明により、耐圧潰性および溶接熱影響部靱性に優れる石油や天然ガスの輸送とりわけ海底パイプラインに使用する厚肉高強度ラインパイプ用として好適な厚鋼板を冷間で成形し溶接して製造される高靱性溶接鋼管の製造が可能となり、産業上極めて有効である。
Vノッチシャルピー試験片の採取位置を示す図である。
以下に本発明を実施するための形態について説明する。まず、本発明の構成要件の限定理由について説明する。本発明で対象とする厚鋼板とは、熱間圧延で製造される20mm以上の板厚を有する鋼板をいう。
本発明に係る鋼管は、成分組成、ミクロ組織について規定する。以下、これらを説明する。
1.成分組成
以下に本発明に係る鋼管の成分組成の限定理由を説明する。なお、成分組成を示す単位の%は、全て質量%とする。
C: 0.03〜0.08%
Cは低温変態組織においては、過飽和に固溶することで強度上昇に寄与する。この効果を得るためには、0.03%以上の添加が必要であるが、0.08%を超えて添加すると母材の第2相硬さが増大し圧縮強度が低下するだけでなく、溶接熱影響部においてM−Aが生成し、靱性を著しく劣化させるため上限を0.08%とする。より好ましくは、上限は0.07%である。
Si: 0.01〜0.20%
Siは脱酸材として作用し、さらに固溶強化により鋼材の強度を増加させる元素であるが、溶接熱影響部の組織が上部ベイナイトであるときは、セメンタイトの生成を遅延する効果により島状マルテンサイトの生成を助長し、溶接熱影響部靱性を著しく劣化させる。Siは製鋼工程で不可避的に含まれる元素であるため、下限を0.01%とする。一方で、0.20%を超えると溶接熱影響部にM−Aが多数生成し、靱性が著しく劣化するため、上限を0.20%とする。より好ましくは、0.01〜0.12%である。さらに、低温での靱性の確保が必要である場合は、0.01〜0.06%まで低減することがより好ましい。
Mn: 1.5%超、2.5%以下
Mnは焼入れ性を向上させる元素であり、添加量を多くすることで、組織が微細化し、母材靱性が向上する。また、本発明では、C、Si、Nb、Vなどの溶接熱影響部の靱性劣化を助長する元素を低減するため、520MPa以上の引張強度を確保するためには、1.5%を超えて添加する必要がある。一方で、Mnは連続鋳造の鋳片の板厚中央に偏析する元素としても知られ、2.5%を超える添加を行うと偏析部の靭性が劣化するため、上限を2.5%とする。より好ましくは、1.5%超、2.0%以下である。
P: 0.015%以下
Pは固溶強化により強度を増加させる元素であるが、母材および溶接熱影響部の靭性や溶接性を劣化させるため、一般的にその含有量を低減することが望まれる。本発明では、Pを低減することによりミクロ偏析の生成を抑制し、溶接熱影響部に生成するM−Aを低減することで、溶接熱影響部靭性を向上させる。Pの低減の効果は、0.015%以下に抑制することで、発揮されるため、上限を0.015%とする。より好ましくは、0.010%以下である。
Al:0.001〜0.05%以下
Alは脱酸に用いられる元素であり、いかなる手順の製鋼方法を用いても0.001%は不可避的に含まれる。一方で、0.05%を超えて添加すると鋼中の清浄度が低下し母材靱性が劣化するだけでなく、セメンタイトの生成を抑制する効果によりM−Aの生成を助長し、溶接熱影響部の靱性を劣化させるため上限を0.05%とする。より好ましくは0.001〜0.035%である。
Nb:0.005〜0.050%
Nbは、熱間圧延時のオーステナイト未再結晶領域を拡大する効果があり、特に900℃まで未再結晶領域とするためには、0.005%以上の添加が必要である。一方で、Nbの添加量を増大させると、特に溶接熱影響部に島状マルテンサイトが生成し、さらに多層溶接時の再熱溶接熱影響部では析出脆化を引き起こして靭性が著しく劣化するため、上限を0.050%とする。なお、Nbの添加量は、溶接熱影響部靭性の観点からは低いほど好ましく、より好ましくは0.005〜0.025%である。
Ti:0.005〜0.030%
Tiは窒化物を形成し、鋼中の固溶N量低減に有効である。析出したTiNはピンニング効果で熱間圧延前のスラブ加熱時の母材および溶接熱影響部、特に溶接熱影響部のオーステナイト粒の粗大化を抑制して、母材および溶接熱影響部の靭性の向上に寄与する。この効果を得るためには、0.005%以上の添加が必要であるが、0.030%を超えて添加すると、粗大化したTiNや炭化物の析出により母材および溶接熱影響部靭性が劣化するようになるため上限を0.030%とする。
N:0.0020〜0.0080%
Nは通常鋼中に不可避的不純物として存在するが、前述の通りTi添加を行うことで、オーステナイト粗大化を抑制するTiNを形成するため規定する。必要とするピンニング効果を得るためには、0.0020%以上鋼中に存在することが必要であるが、0.0080%を超える場合は、固溶Nの増大による母材および溶接熱影響部の靭性劣化が著しいため、上限を0.0080%とする。
本発明では、さらに強度確保などのために、Cu、Ni、Cr、Mo、Vの中から選ばれる1種以上添加する。
Cu: 0.10〜0.50%
Cuは、0.10%以上添加することで鋼の焼入れ性向上に寄与する。一方で、過剰に添加すると母材および溶接熱影響部の靭性を劣化させるため、添加する場合は、上限を0.50%とする。
Ni:0.10〜1.00%
Niは、0.10%以上添加することで鋼の焼入れ性向上に寄与する。特に多量に添加しても他の元素に比べ靭性劣化が小さく、強靭化には有効な元素である。しかし、高価な元素で、1.00%を超えて添加すると焼入れ性が過剰に増加して溶接熱影響部靭性が劣化するので、添加する場合は、上限を1.00%とする。
Cr:0.10〜0.40%
Crは、0.10%以上添加することで鋼の焼入れ性向上に寄与する。一方で、過剰に添加すると母材および溶接熱影響部の靭性を劣化させるため、添加する場合は、上限を0.40%とする。
Mo:0.10〜0.30%
Moは、0.10%以上添加することで鋼の焼入れ性向上に寄与する。一方で、Moの添加量を増大させると大入熱溶接部の靭性が劣化するようになる。また、多層溶接時の再熱溶接熱影響部で析出脆化を引き起こし靭性が劣化するようになるため、添加する場合は、上限を0.30%とする。なお、Moの添加量は、溶接熱影響部靭性の観点からは低いほど好ましいので、0.20%以下であることがさらに好ましい。
V:0.005〜0.030%
Vは0.005%以上添加することで鋼の焼入れ性の向上に付与する。一方で、Vの添加量を増大させると再熱を受けた溶接熱影響部で析出し、析出脆化を引き起こすため、添加する場合は、上限を0.030%以下とする。なお、Vの添加量は溶接熱影響部靱性の観点からは低いほどより好ましいので、0.010%以下であることがさらに好ましい。
さらに靭性の向上や面積性介在物の生成を抑制させる場合、Ca、Mg、REM、Zrを選択的に1種以上を添加することができる。
Ca:0.0005〜0.0100%
Caは、鋼中の硫化物の形態制御に有効な元素であり、0.0005%以上添加することで靭性に有害なMnSの生成を抑制する。しかし、0.0100%を超えて添加するとCaO−CaSのクラスタを形成し、靭性を劣化させるようになるので、添加する場合は、0.0005〜0.0100%とすることが好ましい。
Mg:0.0005〜0.0100%
Mgは、製鋼過程で鋼中に微細な酸化物として生成し、特に溶接熱影響部においてオーステナイト粒の粗大化を抑制するピンニング効果をもたらす。十分なピンニング効果を得るためには、0.0005%以上の添加が必要であるが、0.0100%を超えて添加すると鋼中の清浄度が低下し、靭性が低下するようになるため、添加する場合は、0.0005〜0.0100%とすることが好ましい。
REM:0.0005〜0.0200%
REMは、鋼中の硫化物の形態制御に有効な元素であり、0.0005%以上添加することで靭性に有害なMnSの生成を抑制する。しかし、高価な元素であり、かつ0.0200%を超えて添加しても効果が飽和するため、添加する場合は、0.0005〜0.0200%とすることが好ましい。
Zr:0.0005〜0.0300%
Zrは、鋼中で炭窒化物を形成し、特に溶接熱影響部においてオーステナイト粒の粗大化を抑制するピンニング効果をもたらす。十分なピンニング効果を得るためには0.0005%以上の添加が必要であるが、0.0300%を超えて添加すると鋼中の清浄度が著しく低下し、靭性が低下するようになるので、添加する場合は0.0005〜0.0300%とすることが好ましい。
Ceq: 0.30〜0.50
下記式(1)で定義されるCeqは溶接熱影響部の最高硬さを評価するために有効なパラメータであるが、同時に母材強度を評価する指標として用いることができる。Ceqが0.30未満であると母材で所望の強度を得ることができないため下限を0.30とする。一方で、0.50を超えると溶接熱影響部靱性の確保が困難になるため、上限を0.50とする。より好ましくは、0.34〜0.45である。
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5 式(1)
ここで、式の右辺の元素記号はそれぞれの含有量(質量%)を表し、含有しない場合は0とする。
PMA: 5.5以下
下記の式(2)で定義されるPMAは溶接熱影響部におけるM−Aの生成度合いをパラメータ化したものであり、溶接熱影響部靱性を向上させるためには、低いほどよく、5.5を上限とする。より好ましくは、5.0以下である。
PMA=100000(C−0.0218)(0.2Si+0.5Al){2(C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B)+2.5Nb}{10/(50P+2.5)}−2 式(2)
ここで、式の右辺の元素記号はそれぞれの含有量(質量%)を表わし、含有しない場合は0とする。
PCP: 0.011以下
下記の式(3)で定義されるPCPはNb、Vによる再熱溶接熱影響部の析出脆化をNb,Vの複合添加の影響を加味して作成したパラメータで、この指標が大きいほど再熱熱影響部の靱性劣化が大きく、会合部FL(Fusion line)靱性の確保が困難となる。その影響は0.011を超えると顕著になるため、上限を0.011とする。
PCP=Nb(25V+0.2)+V/2 式(3)
ここで、式の右辺の元素記号はそれぞれの含有量(質量%)を表わし、含有しない場合は0とする。
上記の元素以外はFeおよび不避的不純物とし、意図的に添加しない。本発明において、Sは不純物元素であり、靱性や延性を劣化させるため、極力低減することが望ましいが、過度のSの低減はコストの増大を招くため、S含有量は0.003%以下であれば許容されるものとする。
2.金属組織(ミクロ組織)
本発明では、母材である鋼板の金属組織の形態および体積分率を規定する。以下これらを説明する。
表層部の金属組織
本発明では、加速冷却の直前にデスケーリングを行うことで、厚いスケールの生成に起因した表層での硬化組織の生成を抑制し、なおかつ表層組織をフェライトと上部ベイナイトとの混合組織(「フェライト+上部ベイナイト」と表記することもある)主体にすることで、表層硬さの過度な上昇を防いでいる。なお、これらの表層組織はフェライトと上部ベイナイトとの混合組織である主体組織以外としては、マルテンサイト、M−A、下部ベイナイト、パーライトおよびセメンタイトがあり、いずれも、フェライト、上部ベイナイトにくらべて硬い組織であるため、少ない方が好ましい。なお、主体組織の体積分率は、85%以上であることが好ましい。主体組織の体積分率の測定の際、上部ベイナイトのラス間に生成するセメンタイトは上部ベイナイトの一部として測定する。また、表層とは最表層から管厚方向2mmまでの領域のことである。
管厚中心部の金属組織
管厚中心部の金属組織は、母材強度を確保する上で重要な因子である。圧縮強度確保の観点からは、できるだけ均一な組織であることが望ましい。しかしながら、DWTT性能などの低温靱性を確保するためには、フェライトを生成させた方がよい。また、後述する硬質相と軟質相の硬さ差を小さくすることにより、圧縮強度を確保することが可能となるので、組織形態としては、上部ベイナイト単相であるかまたはフェライト+上部ベイナイトのいずれかであればよい。
なお、これらの主体組織以外としては、マルテンサイト、M−A、下部ベイナイト、パーライトおよびセメンタイトがあり、いずれも第2相として主体組織との硬度差を生じ、圧縮強度およびを劣化させるため、少ない方がよい。なお、上記主体組織の体積分率は、85%以上であることが好ましい。主体組織の体積分率の測定の際、上部ベイナイトのラス間に生成するセメンタイトは上部ベイナイトの一部として測定する。また、管厚中心部とは、管厚中心から管厚方向±2mmの位置でなおかつ中央偏析部を除く領域のことである。中央偏析部は、例えばサルファープリント、EPMA、その他の慣用される手法によって位置と領域は確認できる。
管厚全域でM−Aの体積分率:2%以下
M−Aは上述した硬質第2相の中でも、最も硬度が大きい組織であり、圧縮強度を顕著に劣化させるため、できるだけ少ない方がよい。本発明では、加速冷却後の再加熱によりM−Aを分解し、実質的に含まない程度まで低減することができる。なお、再加熱によっても若干M−Aが残留することがあるが、M−Aの体積分率は2%までは許容することができる。母材管厚全域とは、中央偏析部を除く鋼管母材全域のことである。
母材管厚中心部の金属組織のフェライトとベイナイト組織の硬さの差:150以下
母材管厚中心部の金属組織がフェライト+ベイナイトである場合、両者の硬さ差が大きくなると圧縮強度が低下する。その影響は硬さ差が150を超えると顕著であるため、上限を150とすることが好ましい。ここで、管厚中心部の金属組織が上部ベイナイト単相である場合には、金属組織に起因する硬さの差は生じないので、この要件は混合組織である場合にのみ適用される。
なお、ここでいう硬さとは、荷重5gf(0.49N)でそれぞれの組織の硬さを10点以上測定したときビッカース硬さの平均値のことを示し、圧痕が測定したい組織以外の領域にまで入っている場合はその値を除外し、再試験する。
3.硬さ
本発明では、管周方向、管厚方向の硬さ分布および硬さの最大値を規定する。なお、管周方向、管厚方向の硬さ分布を測定する場合には、ビッカース硬さ試験機で荷重10kgf(98N)で測定する。
管厚方向で同じ位置における管周方向の硬度差の最大値: 30以下
管周方向の硬度差は、主に加速冷却時の表面性状に起因して発生する。スケールが厚い箇所は過度に冷却されて表層が著しく硬化し、一方スケール厚が薄い箇所では、それほど表層が硬化しないため表層硬さに大きな差が出ることになる。管周方向の硬度差が大きいと、UOE造管時のC−U−O成形における形状の乱れが生じ、その結果、所望の真円度を得るためにより大きな拡管率を必要としてしまう。拡管率が大きくなると、バウシンガー効果により圧縮強度が低下するため、耐圧潰性が低下することになる。
一方で、管周方向の硬度差が小さいと、拡管率が小さくても高い真円度を得ることができ、圧縮強度の低下の抑制および真円度の確保の両面から耐圧潰性を向上させることができる。その効果は、管周方向の硬度差を30以下にすることにより顕著に現れるため、上限を30とする。より好ましくは20以下である。
なお、管周方向の硬度差は管厚方向および管長方向の同じ位置で測定したものについて比較するものとし、上述したように母材管周方向の硬度差は主に表層部で生じるため、表層から1mmの位置および裏層から1mmの位置の3箇所を測定し、これを管周方向に複数回実施して、その最大値と最小値との差を求めれば、その鋼管の管周方向の硬度差を代表とみなしてもよい。
管周方向で同じ位置における管厚方向の硬度差の最大値: 30以下
管厚方向の硬度差は、主に加速冷却前の表層組織形態、加速冷却の冷却速度、加速冷却時の表面性状に起因して発生し、管周方向の硬度差と同じく、UOE造管時のC−U−O成形における形状の乱れが生じ、その結果、所望の真円度を得るためにより大きな拡管率を必要としてしまう。拡管率が大きくなると、バウシンガー効果により圧縮強度が低下するため、耐圧潰性が低下することになる。一方で、管厚方向の硬度差が小さいと、拡管率が小さくても高い真円度を得ることができ、圧縮強度の低下の抑制および真円度の確保の両面から耐圧潰性を向上させることができる。その効果は、管周方向の硬度差を30以下にすることにより顕著に現れるため、上限を30とする。より好ましくは20以下である。なお、管厚方向の硬度差は管周方向および管長方向の同じ位置で測定したものについて比較するものとする。
4.鋼管の真円度
真円度が高いほど、耐圧潰性が向上する。ここで、真円度とは、Dmax−Dminと定義する。Dmaxは測定最大外径(mm)で、Dminは測定最小外径(mm)である。真円度は、製造された鋼管の任意の管長位置で管周を12等分あるいは24等分して対向する位置での外直径を測定し、それらのうちの最大値と最小値をそれぞれDmax、Dminとすることで求めることができる。
耐圧潰性は、より真円であるほど(すなわち真円度が0に近いほど)高くなるが、UOE造管では完全な真円を達成することができず、また、外径が大きく、板厚が小さくなるほど真円度は悪くなる。
本発明では、管周方向の硬度分布を均一にすることにより、下記式(4),(5)に示す真円度を得ることができる。
D/t0.6≦135の場合は、真円度(Dmax−Dmin)≦3.0 式(4)
D/t0.6>135 の場合は、真円度(Dmax−Dmin)≦0.04D/ t0.6−2.4 式(5)
ここで、D:公称外径(mm)、t:管厚(mm)である。
真円度を3.0以下にすることにより顕著に耐圧潰性を向上させることができるため、特に高い耐圧潰性能が要求される場合には、鋼管寸法であるD/t0.6が135以下の場合には、Dmax−Dminは3.0を上限とすることが好ましい。D/t0.6が135を超える場合にはDmax−Dminは0.04D/t0.6−2.4の値以下であることが好ましい。
なお、本発明で高強度鋼板とは、DNV−OS−F101のSAWL415グレードに相当する520MPa以上の引張強度を有する鋼板をいう。
5.溶接部
本発明では、さらに突合せ溶接部の溶接熱影響部ミクロ組織形態および溶接条件を規定する。本発明で溶接熱影響部の靭性に優れたとは、−20℃での吸収エネルギを各条件について3本ずつ測定し、その平均値および最低値を求め、目標値はDNV−OS−F101に準拠して平均値50J以上、最低値40J以上の性能を示すものをいうこととする。
溶接熱影響部のM−A体積分率: 2%以下
M−A分率は溶接熱影響部靱性に大きな影響を及ぼし、M−A分率を少なくするほど溶接熱影響部靱性は向上するが、2%までは許容される。
溶接熱影響部の平均旧オーステナイト粒径: 200μm以下
平均旧オーステナイト粒径(平均旧γ粒径ともいう。)は溶接熱影響部靱性に大きな影響を及ぼし、平均旧γ粒径を小さくするほど溶接熱影響部靱性は向上する。平均旧γ粒径が200μmを超えるとM−A分率や溶接部形状などの他の因子を制御しても所望の靱性を得ることができないため、上限を200μmとすることが好ましい。より好ましくは上限を150μmとする。なお、ここでいう平均旧オーステナイト粒径とは、溶接部断面において溶融線に接している10個以上の旧オーステナイト粒から測定される平均円相当径のことを表す。
2層以上の溶接における最大溶接入熱
溶接入熱が上がるほど、溶接熱影響部の組織の粗大化およびHAZ幅の拡大により溶接熱影響部靱性が低下する。また、同じ溶接入熱でも管厚が小さいほど溶接後の冷却時間がかかり、実質的に溶接入熱を大きくした場合と同じ影響があるため注意が必要である。一方で過度に溶接入熱を小さくすると溶接欠陥の発生などが顕著になる。以上のことを踏まえて、溶接熱影響部靱性を確保するために多層溶接パスのうち最も高い溶接入熱量を下記の式(6)をみたした範囲で設定することが好ましい。
また、本発明では、その突合せ部を2層以上の溶接によって接合し、拡管した溶接鋼管を対象とする。突合せ部を2層以上の溶接とすることにより、溶接ビードの良好な外観形状が安定して得られ、溶接入熱量を制御しやすいためである。
HImax≦0.0376t1.45+2.4 式(6)
ここで、HImax:最大溶接入熱量(kJ/mm)、t: 管厚(mm)である。
6.製造方法
本発明では、上記の母材ミクロ組織および硬さ分布および所望の性能を得るための、鋼管素材および鋼管の製造方法を規定する。
スラブ加熱温度: 900〜1200℃
スラブをオーステナイト化しつつ、最低限のNbの固溶量を得るため、下限温度は900℃とした。一方、1200℃を超える温度までスラブを加熱すると、NbCおよびTiNによるピンニング効果が弱まり、オーステナイト粒が著しく成長し、母材靭性が劣化する。このため、スラブ加熱温度は900〜1200℃の範囲とする。
900℃以下の累積圧下率: 30〜90%
本発明に係る鋼では、Nb添加によって900℃以下はオーステナイト未再結晶温度領域である。この温度域以下において累積で大圧下の圧延を行うことにより、オーステナイト粒を伸展させ、特に板厚方向で細粒とし母材靭性を向上させる。累積圧下率が30%未満の場合は、細粒化が十分でなく靱性が劣化するため、900℃以下の温度域での累積圧下率は30%以上とする。累積圧下率が大きいほど圧延時の鋼板の反りや圧延能率の低下などが問題となり、また90%を超える圧下率を確保しても材質特性に大きな変化がみられないため、上限を90%とする。好ましくは50〜90%の範囲内である。
圧延終了温度: (Ar−40℃)以上850℃以下
圧延終了温度は、低い方が母材靱性確保の観点からは有利であるが、(Ar−40℃)を下回ると板厚中央すなわち管厚中央付近の母材組織に粗大な加工フェライトが多数生成するようになり、圧縮強度が低下するため、下限を(Ar−40℃)とする。より好ましくは、(Ar−40℃)以上である。また、DWTT性能確保の観点から上限を850℃以下とする。より好ましくは、830℃以下である。なお、温度の測定は、圧延終了後ただちに放射温度計により鋼板表面温度を測定するものとする。Ar点は実質的に同一とみなせる化学成分の鋼の熱膨張試験で加工後の変態開始温度を測定することがのぞましいが、下記の式(7)で代用してもよい。
Ar(℃)=910−310C−80Mn−20Cu−55Ni−15Cr−80Mo 式(7)
ここで、各式の右辺の元素記号はそれぞれの含有量(質量%)を表し、含有しない場合は0とする。
加速冷却前のデスケーリング
さらに、上記製造工程に加えて、加速冷却の直前に高衝突圧の噴射流によるデスケーリングを行う。鋼板内の材質均一性に優れた高強度鋼板とするためには、鋼板内の硬さのばらつきを低減することが必要であり、特に鋼板内部の強度を保ちながら、表層部の硬さを抑制することが重要である。圧延後の鋼板においては、圧延前および圧延中のデスケーリング等により幅方向にスケールの厚さにむらが生じることがある。また、スケール厚さが大きい場合には、部分的にスケールの剥離が生じることがある。
圧延後の加速冷却の際に、スケール厚さにばらつきがあると、その厚さに応じて鋼板表面の冷却速度も変化してしまい、その冷却速度に応じて鋼板表面の硬さも変化してしまう。鋼板を高強度化するためには、加速冷却時の冷却速度を大きくすることが有効であるが、高冷却速度の冷却では表層硬さに及ぼすスケール厚さの影響が顕著になるため、スケール厚さにむらがあると硬さのばらつきが増大して鋼板内の材質均一性が劣化する。
その対策として、高衝突圧のデスケーリングによりスケール厚さを冷却速度に大きな差が生じない程度に均一に薄くすることができる。
本発明では、加速冷却の直前に鋼板表面での噴射流の衝突圧が1MPa以上のデスケーリングを行う。鋼板表面での噴射流の衝突圧が1MPa未満では、デスケーリングが不十分でスケールむらが生じる場合があり、表層硬さのばらつきが生じるため、噴射流の衝突圧は1MPa以上とする。デスケーリングは高圧水を用いて行うが、鋼板表面での噴射流の衝突圧が1MPa以上であれば、他の噴射流を用いても構わない。また、デスケーリング後、5秒以内に加速冷却を行うことが望ましい。デスケーリング後、5秒を超えて加速冷却を行う場合、スケールが成長するため表層部の冷却速度が上昇し、硬さのばらつきが大きくなる場合があるからである。
加速冷却開始温度
加速冷却開始温度が低いと管厚中央にフェライトのみが生成し、圧縮強度が低下するため、(Ar−90℃)以上とする。より好ましくは、(Ar−90℃)〜(Ar+10℃)である。なお、温度の測定は、加速冷却前デスケーリングの直前に放射温度計により表面温度を測定するものとする。Arは式(7)を代用してもよい。
表層の加速冷却速度
表層の加速冷却速度は表層の組織および硬さを決定する重要な因子であり、表層の冷却速度が200℃/sを超えると表層組織にマルテンサイトや下部ベイナイトが多数生成し、表層硬さが大きくなるため上限を200℃/sとする。好ましくは板厚中央の冷却速度以上、150℃/s以下である。
鋼板の平均の冷却速度
鋼板の平均の冷却速度は、鋼板の板厚中央、すなわち、管厚中央の組織および硬さを決定する重要な因子であり、鋼板の板厚方向の平均の冷却速度が10℃/s未満では管厚中央にフェライトが過剰に生成し、圧縮強度が確保できないめ、下限を10℃/sとする。より好ましくは、10〜100℃/sである。
冷却停止温度
圧延終了後の鋼板を、ベイナイト変態の温度域である250〜450℃まで加速冷却することにより、ベイナイト相を生成させる。冷却停止温度が250℃を下回ると加速冷却時に未変態であったオーステナイトから多くのM−Aが生成し再加熱後もセメンタイトとして残留し、圧縮強度が低下するため、下限を250℃とする。一方で450℃を超えると、再加熱時に未変態オーステナイトにCが濃化しM−Aが生成してしまうため、上限を450℃とする。加速冷却停止温度の測定は、復熱で表層と板厚中央の温度差が小さくなったときに表面を放射温度計で測定することが出来る。
また、鋼板全体の水冷が終了してから10〜120秒の時間の範囲内で測定することが好ましい。
再加熱による表層到達温度: 冷却停止温度以上かつ(500℃〜Ac
加速冷却停止後の鋼板に再加熱を行うことにより表層組織に生成するM−Aの分解および表層組織の焼戻しにより表層硬さを低減できる。その効果は、冷却停止温度以上かつ500℃以上に加熱しないと現れないため下限を冷却停止温度以上かつ500℃とする。一方で、Ac点を超える温度まで加熱すると逆変態がおき、圧縮強度が低下するため、上限をAc点とする。なお、Ac点は熱膨張試験などにより求めることが好ましいが、以下の式(8)を用いて求めてもよい。
Ac=750.8−26.6C+17.6Si−11.6Mn−169.4Al−22.9Cu−23Ni+24.1Cr+22.5Mo+232.6Nb−39.7V−5.7Ti−894.7B 式(8)
ここで、各式の右辺の元素記号はそれぞれの含有量(質量%)を表し、含有しない場合は0とする。
加速冷却停止後の鋼板に対する上記再加熱は、製造効率や熱処理に要する燃料コストを削減する観点からは、加速冷却停止後、ただちに開始することが好ましく、たとえば、冷却停止の後120秒以内に再加熱を開始することが望ましい。
再加熱による管厚中央到達温度: 冷却停止温度以上かつ400〜550℃以下
加速冷却停止後の鋼板に再加熱を行うことにより管厚中央(すなわち母材である鋼板の板厚中央)に生成するM−Aを分解し、圧縮強度を向上させることができる。その効果は400℃以上に加熱しないと現れないため下限を400℃にする。一方で、550℃を超えて加熱するとセメンタイトが析出、粗大化し、DWTT性能が劣化するため、上限を550℃とする。管厚中央(すなわち母材である鋼板の板厚中央)の温度については、物理的に直接測定することはできないが、鋼板表面の温度変化を基にしたシミュレーション計算を行うことで、リアルタイムに求めることができる。
表層と管厚中央の到達温度差: 40℃以上
上述の再加熱を実施することにより表層は管厚中央(すなわち母材である鋼板の板厚中央)、よりも高温に加熱されるが、その際、管厚方向の硬さ分布を規定の範囲内にするためには、表層と管厚中央の到達温度差を40℃以上にする必要がある。40℃未満であると表層の焼戻しが十分でない、もしくは管厚中央が過度に焼戻される、などの現象によってそれぞれ規定の管厚方向硬さ差を満足できない。
室温まで冷却;
本発明の再加熱温度では、その後の冷却過程により鋼板の材質や形状に影響を与えない。そのため、再加熱後の鋼板を室温まで冷却するための冷却手段は、例えば、空冷でよい。放冷してもよいし、また、鋼板に空気を吹き付けて積極的に空冷してもよい。これ以外に、水冷や、その他の手段でもかまわない。
本発明は上述の方法によって製造された厚鋼板を用いて鋼管となすが、鋼管の成形方法は、UOEプロセスやプレスベンド等の冷間成形によって鋼管形状に成形する。その後、シーム溶接するが、このときの溶接方法は十分な継手強度及び継手靱性が得られる方法ならいずれの方法でもよいが、優れた溶接品質と製造能率の点からサブマージアーク溶接を用いることが好ましい。突き合せ部の溶接を行った後に、溶接残留応力の除去と鋼管真円度の向上のため、拡管を行う。以下、拡管率について説明する。
拡管率: 0.5〜1.1%
一般に厚肉高強度UOE鋼管は、0.9〜1.2%程度の範囲の拡管率で造管を行う。拡管率は、耐圧潰性を確保する上で重要な因子であり、拡管率を低くするほど圧縮強度が上昇するが、真円度が低下する。一方で、拡管率を高くするほど真円度は高くなるが、圧縮強度は下がり、さらにはダイスによる鋼管の傷つきが問題になる。拡管率を0.5%より小さくしても圧縮強度上昇効果はあまり期待できないので、下限を0.5%とする。一方で、本発明では、管厚および管周方向の硬さを均一化することによって成形性を著しく向上させているため、拡管率が低くても、所望の真円度を得ることができる。真円度は拡管率が1.1%を超えるとそれ以降は拡管率増加による真円度向上効果が飽和するため、上限を1.1%とする。以上、規定した拡管率を0.5〜1.1%の範囲で造管すれば、優れた耐圧潰性能が得られる。また、拡管率を0.5〜1.0%とすることがより好ましい。
表1に示す化学成分の鋼を連続鋳造法によりスラブとし、加熱したスラブを熱間圧延により圧延した後、加速冷却装置直前で高衝突圧デスケーリングを行い、5秒以内に水冷型の冷却設備を用いて加速冷却を行い、ただちに誘導加熱により急速加熱を行い、その後空冷することにより、厚鋼板を製造した。
Figure 0005811591
製造した鋼板をUOE成形によって造管した。なお、Oプレスの圧縮率はすべて0.3%とし、シーム溶接は4電極サブマージアーク溶接で内外面各1〜2層(合計2〜4層)の多層溶接を行い、すべての鋼管の溶接部で無欠陥であった。以上の方法で製造した溶接鋼管の製造方法の詳細を表2に示す。
Figure 0005811591
なお、加熱温度は鋼板全体の平均温度とし、圧延終了温度および冷却開始温度は鋼板表面温度を、冷却停止温度は復熱後の鋼板表面温度を、誘導加熱による表層加熱温度は鋼板表層温度を、管厚中央温度は、加熱パターンと実績表層加熱温度より熱伝導計算により計算した。
真円度は、鋼管外径を管周方向に6箇所以上測定し、その最大値/最小値を求めることで算出した。真円度の目標値は、請求項5に記載の範囲とした。
鋼管のミクロ組織の分率は、表層から1mm位置および管厚中心位置について400倍で組織観察した10枚の光学顕微鏡写真の画像解析からフェライト相とベイナイト相の合計の面積分率を平均して求めた。管厚中央に関しては中央偏析部を除外した。M−A分率は、表層から1mm、管厚内表面から1/4位置、管厚中央について2000倍で組織観察した5枚のSEM(走査型電子顕微鏡)写真の画像解析から面積分率を平均して求め、鋼管中に均一に第2相が分散していると仮定して、前記面積分率の値が体積分率の値に等しいものとみなした。ミクロ組織の目標形態は、本発明の請求項の範囲とした。
フェライトおよびベイナイトの硬度差は、管厚中央の組織がフェライト+ベイナイトであったものに対して行い、荷重5gf(0.49N)でフェライト部とベイナイト部を各10点ずつ測定し、その差を求めた。なお、圧痕が所望の測定組織からはみだした場合はその値を除外し、再試験した。
管周方向の硬さ分布は、鋼管のシーム溶接部を起点とした管周方向位置として、40〜320°位置の表面から1mmおよび裏面から1mm位置を20mmピッチで測定し、その最低値および最高値の差を求めた。管厚方向の硬さ分布は、鋼管90°位置について1mmピッチで表層から1mmの位置と裏面から1mmの位置にかけて測定し、その最低値と最大値の差を求めた。鋼管最大硬さは以上で測定した硬さ結果の最大値を用いた。なお、硬さをすべてビッカース硬さ試験機で10kgf(98N)の荷重で測定した。
鋼管の引張降伏応力および引張強度は、鋼管90°位置の鋼管周方向から全厚引張試験片を採取し、求めた。引張強度の目標値は、520MPa以上である。圧縮降伏応力は、鋼管180°位置の内表面から1mmの位置からASTM E9準拠の直径20mm、長さ60mmの円筒試験片を採取し、0.5%における応力を求めた。圧縮降伏応力の目標値は、引張降伏応力の80%以上とした。DWTT特性は、鋼管周方向から採取した19mmのDWTT試験片を用いて−17℃で試験を行い、破面率を求めた。試験は各2本実施し、その平均値が85%を以上になることを目標とした。
耐圧潰性は、DNV−OS−F101で規定されている下記の外圧による圧潰抵抗の式(9)〜(13)を用いて圧潰抵抗pを評価した。
Figure 0005811591
ここで、α=0.96、αfab=1.00、E=206000MPa、ν=0.3、t=管厚 (mm)、D=外径 (mm)、Dmax−Dmin=真円度 (mm)、YS=常温での圧縮降伏応力(MPa)、fy,temp=室温と最高使用温度の圧縮降伏応力の差(本発明では50℃以下での使用を想定し、0MPaとする)である。圧潰抵抗の目標値は、式(9)〜(13)に引張降伏応力、f=0.0050、αfab=0.85を代入して計算される値を基準値として1.10倍以上になることとした。
溶接熱影響部の組織は、溶接線垂直断面から採取したサンプルを、鏡面研磨、ナイタール腐食を行い、電解エッチを行うことによりM−Aを現出させ、SEM写真を撮影し、その写真にみられる白色組織の面積分率を画像解析により導出した。なお、撮影位置は、M−Aがもっとも生成していたICCGHAZに相当する箇所とした。ここで、ICCGHAZとは、粗粒域HAZが次の溶接によって2相域に加熱された部分のことをいう。
さらにそのサンプルの観察面を再研磨し、ピクリン酸腐食により旧オーステナイト粒を現出させ、光学顕微鏡で溶融線近傍の溶接熱影響部の写真を撮影し、得られた写真の旧オーステナイト粒界から画像解析により円相当径を算出した。なお、撮影位置は、シャルピー試験による靱性評価位置を一致させるため、内外面の表面した6mmの位置とした。
また、得られた溶接鋼管の溶接部から図1に示すDNV−OS−F101で規定される内外面FLおよび会合部FLからJIS Z 2202の規格に準拠した、Vノッチシャルピー試験片を採取し、JIS Z 2242の規格に準拠したシャルピー試験を実施し、−20℃での吸収エネルギを各条件について3本ずつ測定し、その平均値および最低値を求めた。なお、目標値はDNV−OS−F101に準拠して平均値50J以上、最低値40J以上とした。
表3に表2の製造方法で得られた溶接鋼管のミクロ組織形態と機械的特性を示す。
Figure 0005811591
本発明例の請求範囲内の溶接鋼管はいずれも、ラインパイプとして必要とされる強度、DWTT性能を満たしつつ、優れた耐圧潰性、溶接熱影響部靱性を両立していることがわかる。一方で、本発明の請求範囲外の溶接鋼管は、それらのいずれかの特性を満たしていない。
1 母材
2 溶接金属
3 外面溶接の溶接ボンド部のVノッチシャルピー試験片採取位置
3a 内面溶接の溶接ボンド部のVノッチシャルピー試験片採取位置
3b 中央部(t/2)の溶接ボンド部のVノッチシャルピー試験片採取位置
4 シャルピー試験片のノッチ位置
11 母材外表面
12 母材内表面

Claims (7)

  1. 厚鋼板からなる母材を管状に成形し、その突合せ部を2層以上の溶接によって接合し、拡管した溶接鋼管であって、
    質量%で、
    C: 0.03〜0.08%
    Si: 0.01〜0.20%
    Mn: 1.5超、2.5%以下
    P: 0.015%以下
    Al: 0.001〜0.05%
    Nb: 0.005〜0.050%
    Ti: 0.005〜0.030%
    N: 0.0020〜0.0080%
    を含有し、さらに、
    Cu: 0.10〜0.50%
    Ni: 0.10〜1.00%
    Cr: 0.10〜0.40%
    Mo: 0.10〜0.30%
    V: 0.005〜0.030%
    の中から選ばれる1種以上を含有し、
    さらに、式(1)で規定されるCeqが0.30≦Ceq≦0.50を満たし、
    式(2)で規定されるPMAが5.5以下、
    式(3)で規定されるPCPが0.011以下、
    残部Feおよび不可避的不純物からなり、
    母材表層部の金属組織がフェライト及び上部ベイナイトの混合組織であり、
    母材管厚中心部の金属組織がフェライトと上部ベイナイトの混合組織であるか又は上部ベイナイト単相であり、
    母材管厚全域で島状マルテンサイト(M−A)の体積分率が2%以下、
    管厚方向で同じ位置における管周方向の、ビッカース硬さ試験機で荷重10kgf(98N)で測定された硬度差の最大値が30以下、
    管周方向で同じ位置における管厚方向の、ビッカース硬さ試験機で荷重10kgf(98N)で測定された硬度差の最大値が30以下であり、
    下記の圧潰抵抗の式(9)〜(13)に基づく圧潰抵抗pが、式(9)〜(13)中にYS=引張降伏応力、f=0.0050、αfab=0.85を代入した場合の基準値の1.10倍以上であり、引張降伏応力が525MPa以上であり、
    DWTT SAが85%以上であり、
    −20℃での吸収エネルギーの平均値が50J以上であり、
    −20℃での吸収エネルギーの最低値が40J以上であることを特徴とする耐圧潰性および溶接熱影響部靱性に優れた高強度ラインパイプ。
    Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5 式(1)
    PMA=100000(C−0.0218)(0.2Si+0.5Al){2(C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B)+2.5Nb}{10/(50P+2.5)}−2 式(2)
    PCP=Nb(25V+0.2)+V/2 式(3)
    ここで、各式の右辺の元素記号はそれぞれの含有量(質量%)を表し、含有しない場合は0とする。
    Figure 0005811591

    ここで、式(9)〜(13)中、α=0.96、αfab=1.00、E=206000MPa、ν=0.3、t=管厚(mm)、D=外径(mm)、Dmax−Dmin=真円度(mm)、YS=圧縮降伏応力(MPa)、fy,temp=室温と最高使用温度の圧縮降伏応力の差である。
  2. さらに、質量%で、
    Ca:0.0005〜0.0100%
    Mg: 0.0005〜0.0100%
    REM: 0.0005〜0.0200%
    Zr: 0.0005〜0.0300%
    の内から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐圧潰性および溶接熱影響部靱性に優れた高強度ラインパイプ。
  3. 前記母材管厚中心部の金属組織が、フェライトと上部ベイナイトとの混合組織である場合には、
    それらの組織について、荷重5gf(0.49N)で測定されたビッカース硬さの平均値の差が150以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐圧潰性および溶接熱影響部靱性に優れた高強度ラインパイプ。
  4. 前記溶接鋼管の突合せ溶接部の溶接熱影響部において、
    島状マルテンサイト(M−A)の体積分率が2%以下であり、
    平均旧オーステナイト粒径が200μm以下である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐圧潰性および溶接熱影響部靱性に優れた高強度ラインパイプ。
  5. 真円度(Dmax−Dmin)が下記の(4)又は(5)式を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐圧潰性および溶接熱影響部靱性に優れた高強度ラインパイプ。
    D/t0.6≦135の場合は、真円度(Dmax−Dmin)≦3.0 式(4)
    D/t0.6>135の場合は、真円度(Dmax−Dmin)≦0.04D/ t0.6−2.4 式(5)
    ここで、D: 公称外径(mm)、t: 管厚(mm)、Dmax−Dmin: 真円度(mm)、Dmax:測定最大外径(mm)、Dmin:測定最小外径(mm)である。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の高強度ラインパイプの製造方法であり、鋼素材を、900〜1200℃に加熱後、900℃以下の累積圧下率を30〜90%とし圧延終了温度を(Ar点(℃)−40℃)以上850℃以下とした熱間圧延を行った後、
    加速冷却の直前に鋼板表面での噴射流衝突圧が1MPa以上のデスケーリングを行い、
    直ちに(Ar(℃)−90℃)以上の温度から表層の冷却速度が200℃/s以下かつ鋼板の板厚方向の平均の冷却速度が10℃/s以上で冷却停止温度が250℃〜450℃になる加速冷却を行い、
    続いて、表層温度が冷却停止温度以上かつ(500℃〜Ac点(℃))、
    管厚中央温度が冷却停止温度以上かつ400〜550℃以下、
    表層と管厚中央の到達温度差が40℃以上
    となるように再加熱を実施し、
    その後、室温まで冷却した後、冷間で管状に成形し、
    その突合せ部を溶接し鋼管とした後、さらに0.5〜1.1%の拡管率で拡管を行うことによって製造する
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐圧潰性および溶接熱影響部靱性に優れた高強度ラインパイプの製造方法。
  7. 前記突合せ部の溶接を、2層以上で行い、該溶接の最大溶接入熱量が式(6)を満たすことを特徴とする請求項6に記載の耐圧潰性および溶接熱影響部靱性に優れた高強度ラインパイプの製造方法。
    HImax≦0.0376t1.45+2.4 式(6)
    ここで、HImax:最大溶接入熱量(kJ/mm)、t: 管厚(mm)である。
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