本発明の第1の実施形態に係る車両用シート10について、図1〜図5に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印OUTは、それぞれ車両用シート10が適用された自動車の前方向(進行方向)、上方向、車幅方向の外側をそれぞれ示している。以下、前後、上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下を示すものとする。
図1及び図2には、後述する車両用乗員拘束装置11が適用された車両用シート10が斜視図にて示されている。車両用シート10は、乗員が前方を向いて着座するように設けられており、シート幅方向は車幅方向に略一致する。具体的には、車両用シート10は、着座部を成すシートクッション12と、該シートクッション12の後端部に下端部が接続されバックレストを成すシートバック14と、シートバック14の上端に設けられたヘッドレスト16とを主要部として構成されている。この実施形態における車両用シート10は、運転席又は助手席用とされているが、2列目以降の後部座席用としても良い。
(ポップアップダクトの構成)
図1に示される如く、車両用シート10は、車両用乗員拘束装置11を構成する突出部材としてのポップアップダクト18を備えている。ポップアップダクト18は、図4に示される如く折り畳み状態でシートバック内に収納されており、ガス供給を受けて膨張して図1に示される如くシートバック14上で展開される構成とされている。以下、具体的に説明する。
シートバック14の後部はバックボード20で被覆されている。このバックボード20の上端には、ポップアップダクト18が突出するためのダクトドア20Aが形成されている。この実施形態に係るバックボード20は、シートバック14を後部及び左右両側から覆っている。ダクトドア20Aは、バックボード20におけるシートバック14の左右両側部を覆う部分まで回り込んで形成されている。すなわち、ダクトドア20Aは、平面視で前向きに開口する略「U」字状に形成されている。このダクトドア20Aは、バックボード20の上端壁にポップアップダクト18の膨張展開圧により破断されるティアライン20Tを形成することで、該ポップアップダクト18のシートバック14上での展開を許容するように開放される構成とされている。
ポップアップダクト18は、図4に示される如く、通常はシートバック14内の上部に収容されている。このポップアップダクト18は、図5に示される如く、背面視(正面視)で上向きに凸となる略「U」字状に湾曲した縁部が形成される形状(略半円状)に展開されるようになっている。具体的には、ポップアップダクト18は、ガス供給を受けて膨張する筒状のダクト部18Aと、略半円状を成す規制布18Bとを含んで構成されている。このように、規制布18Bの略「U」字状に湾曲した縁部にダクト部18Aが縫合等により固定されることにより、ダクト部18Aは下向きに開口する略「U」字状に膨張展開されるようになっている。これにより、ポップアップダクト18は、上記の通り背面視(正面視)で略半円状に展開される構成とされている。
また、図4に示される如く、シートバック14内の上部には、ガス供給手段としてのダクト用インフレータ22がシートバックフレーム14Aに支持された状態で収容されている。ダクト用インフレータ22は、シートバック14のシート幅方向一端側(左右何れか)で、ダクト部18Aの一端部にガスの供給可能に接続されている。これにより、ダクト用インフレータ22が作動されると、ダクト部18Aにガスが供給され、上記の如くポップアップダクト18がシートバック14上で展開されるようになっている。
(側方展開部材の構成)
図1に示される如く、車両用乗員拘束装置11は、後述する側突時に車両用シート10の側方で展開され側方展開部材としてのテンションクロス26を備えている。テンションクロス26は、展開状態での側面視で略三角形状を成している。この実施形態では、車両用シート10の左右両側にテンションクロス26が設けられた例を示すが、左右何れか一方のみにテンションクロス26が設けられた構成としても良い。なお、車幅方向外側に設けられるテンションクロス26の機能は、主に側面衝突等の衝突時に着座乗員Pの車幅方向外側への移動を規制する機能とされる。一方、車幅方向内側に設けられるテンションクロス26の機能は、主に側面衝突等の衝突時に隣席の着座乗員Pとの干渉を抑制する機能とされる。
テンションクロス26は、それぞれの下端26Aがシートクッション12の前端側で、図示しないシートクッションフレーム等に接続されている。一方、テンションクロス26の上端26Bは、それぞれポップアップダクト18における左右対応する側の上端側に接続されている。さらに、図3に示される如く、テンションクロス26の後縁部26Cは、それぞれシートバックフレーム14Aに接続されている。
これらのテンションクロス26は、ポップアップダクト18の展開前には、図2に示される如く、シートクッション12及びシートバック14の側部に沿った略「L」字状に折り畳まれ、該シートクッション12及びシートバック14の側部に収容されている。シートクッション12及びシートバック14の側部には、テンションクロス26が張り出すための切れ目(スリット)28が形成されている。この実施形態では、切れ目28は、シートバック14の左右両側部におけるバックボード20の前縁、及びシートクッション12の左右両側部におけるサイドカバー25の上縁に沿って形成されている。なお、切れ目28は、シートクッション12、シートバック14の左右両側部の表皮材等に形成しても良い。
これらのテンションクロス26は、ポップアップダクト18のシートバック14への収容状態からシートバック14上での展開状態への移行に伴って、切れ目28を通じてシートクッション12及びシートバック14から引き出されるようになっている。そして、シートクッション12に接続された下端26Aとポップアップダクト18に接続された上端26Bとを結ぶ直線(テンションラインTL)に沿って張力が作用され、図1に示される如く展開される構成である。
ポップアップダクト18の展開に追従し得るように、テンションクロス26の上部26U(図4に想像線にて示される上端26B下側の部分)は、適宜上下方向に折り畳まれている(図示省略)。この展開状態でテンションクロス26のポップアップダクト18との接続部は、ヘッドレスト16の上端よりも上方に位置するようになっている。テンションクロス26は、上記の展開状態において、着座乗員Pの車幅方向の内側及び外側への移動を規制する構成である。
(制御装置の構成)
図4に示される如く、ダクト用インフレータ22は、車両用乗員拘束装置11を構成する制御装置としての側突ECU30に電気的に接続されている。また、側突ECU30には側面衝突を検出する側突センサ32が電気的に接続されている。側突ECU30は、側突センサ32からの信号に基づいて側面衝突(の不可避)を検知した場合に、ダクト用インフレータ22を作動させるようになっている。
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
上記構成の車両用シート10では、側突センサ32からの信号に基づいて側面衝突を検知した側突ECU30は、ダクト用インフレータ22を作動させる。すると、ダクト用インフレータ22からのガス供給を受けて、ポップアップダクト18がシートバック14上で展開される。この展開に伴って、テンションクロス26が切れ目28を通じてシートクッション12及びシートバック14から引き出され、図1及び図3に示される如く展開される。
この展開状態のテンションクロス26によって、着座乗員Pが慣性により側面衝突側に移動することが抑制される。具体的には、側面衝突側の車両用シート10の着座乗員Pは車幅方向外側への移動が抑制され、反衝突側の車両用シート10の着座乗員Pは隣席側への移動が抑制される。このように、着座乗員Pがテンションクロス26によって拘束される。
ここで、車両用シート10では、テンションクロス26の上端26Bがポップアップダクト18に接続されている。このため、例えば上端がシートバック14の上端部に接続された比較例に係る側方展開部材と比較して、展開状態でのテンションラインTLが前側に位置する。
具体的には、上記比較例に係る側方展開部材では、図3に想像線にて示されるTLcがテンションラインとされる。これに対して車両用シート10では、展開状態のテンションクロス26の上端26Bがシートバック14の上端よりも上側に位置することで、比較例のテンションラインTLcと比較してテンションラインTLが前側に位置する。特に、展開されたポップアップダクト18に接続されたテンションクロス26の上端26Bがヘッドレスト16より上側に位置するため、テンションラインTLが一層前側に位置する。これらによって本実施形態では、着座乗員Pの肩中心Scよりも前側にテンションラインTLを位置させる構成を得ることができる。
そして、テンションクロス26は、後縁部26Cがシートバックフレーム14Aに接続された面状部材であるため、該後縁部26CとテンションラインTLとの間の広い面で着座乗員Pの移動を効果的に抑制することができる。すなわち、上端がシートバック14上端とされたテンションクロスを備えた比較例と比較して、テンションクロス26による着座乗員Pの拘束に寄与する有効面積が広くなる。また、ポップアップダクト18とシートクッション12の前端とを架け渡すベルト部材を展開する構成(本発明に含まれる)を備えた構成と比較して、テンションクロス26による着座乗員Pの拘束に寄与する有効面積が広い。この実施形態では、着座乗員Pの肩中心Scを含む部分にテンションクロス26が接触することとなり、着座乗員Pを、その高剛性部位である肩部において効果的に拘束することができる。
このように、第1の実施形態に係る車両用シート10では、衝突側のテンションクロス26によって、車両の側面衝突時における乗員の車幅方向外側への移動を効果的に抑制することができる。また、反衝突側のテンションクロス26によって、車両の側面衝突時における乗員の車幅方向内側への移動(隣席乗員との干渉等)を効果的に抑制することができる。さらに、テンションクロス26の拘束に寄与する有効面積が前側に広くなるため、着座乗員Pを効果的に拘束することができる衝突の形態が増す。例えば、着座乗員Pの前方への移動を伴う側方移動を生じる斜突等に対して、上端がシートバック14のテンションクロスを備えた比較例と比較して、着座乗員Pを効果的に拘束することができる。より具体的には、衝突角度が75°の斜め側面衝突に対しても着座乗員Pを保護することができる。
また、車両用シート10では、側突時にテンションクロス26の上端26Bを上方に変位させる機能が、ガス供給を受けて膨張展開されるポップアップダクト18によって果たされる。このため、上記した如き効果的な乗員拘束(保護)を小型、軽量な構成により得ることができる。すなわち、ポップアップダクト18は、軽量な基布にて構成されると共に通常はコンパクトに折り畳まれてシートバック14内に収納されており、車両用シート10の車両用乗員拘束装置11を小型、軽量に構成することに寄与している。
なお、上記第1の実施形態において、側突ECU30は側面衝突を予測した場合にダクト用インフレータ22を作動させ、テンションクロス26を展開させる構成としても良い。また、展開状態のテンションクロス26の上端26Bがヘッドレスト16よりも上方に位置する構成には限られない。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る車両用シート40について、図6〜8に基づいて説明する。なお、上記第1の形態の構成と基本的に同様の構成については、上記第1の形態の構成と同一の符号を付して、その説明、図示を省略する場合がある。
図6には、本発明の第2の実施形態に係る車両用シート40が示されている。この図に示される如く、車両用シート40は、テンションクロス26に加えてサイドエアバッグ装置を備える点で、第1の実施形態に係る車両用シート10とは異なる。この実施形態では、車両用シート40の左右両側に、車両用乗員拘束装置41を構成するサイドエアバッグ装置が設けられた例を示す。
図6に示される如く、車両用シート40を構成するシートバック14の車幅方向外側の側部には、ニア側サイドエアバッグ装置42が設けられており、シートバック14の車幅方向内側の側部には、ファー側サイドエアバッグ装置44が設けられている。
(ニア側サイドエアバッグ装置)
ニア側サイドエアバッグ装置42は、着座乗員Pに対する車幅方向外側で膨張展開されるニア側サイドエアバッグ46と、ニア側サイドエアバッグ46にガスを供給するサイドエアバッグ用インフレータ48(図8参照)とを主要部として構成されている。ニア側サイドエアバッグ装置42は、ニア側サイドエアバッグ46及びサイドエアバッグ用インフレータ48を含む各部がモジュール化されてシートバック14内でシートバックフレーム14Aに支持されている。ニア側サイドエアバッグ46は、膨張展開の際には切れ目28からシートバック14外に突出され、テンションクロス26の内側(着座乗員P)側で膨張展開されるようになっている。
ニア側サイドエアバッグ46は、着座乗員Pの胸部及び肩部を拘束するための中央チャンバ46Aと、着座乗員Pの頭部を拘束するための頭部保護チャンバ46Bと、着座乗員Pの腰部を拘束するための腰部保護チャンバ46Cとを含んで構成されている。なお、中央チャンバ46A(と頭部保護チャンバ46Bとの間)に形成された凹みは、着座乗員Pの腕の逃がし部とされている。また、頭部保護チャンバ46Bは、膨張展開状態で後上の角部となる接続部46Dにおいて、テンションクロス26の上端26Bと共にポップアップダクト18に接続されている。
すなわち、ニア側サイドエアバッグ46は、その上端側がポップアップダクト18の展開に伴って上方に移動される構成とされている。この移動を許容するため、ニア側サイドエアバッグ46は、蛇腹折り等で前後方向に折り畳まれると共に、その前後に折り畳まれた中間部が蛇腹折り等で上下方向に折り畳まれている(図示省略)。そして、ニア側サイドエアバッグ46は、この上下方向の折りを解消しながら、ポップアップダクト18の上方への展開を許容する構成とされている。
(ファー側サイドエアバッグ装置)
ファー側サイドエアバッグ装置44は、着座乗員Pに対する車幅方向内側で膨張展開されるファー側サイドエアバッグ52と、ファー側サイドエアバッグ52にガスを供給するサイドエアバッグ用インフレータ54とを主要部として構成されている。ファー側サイドエアバッグ装置44は、ファー側サイドエアバッグ52及びサイドエアバッグ用インフレータ54を含む各部がモジュール化されてシートバック14内でシートバックフレーム14Aに支持されている。ファー側サイドエアバッグ52は、膨張展開の際には切れ目28からシートバック14内に突出され、テンションクロス26の内側(着座乗員P)側で膨張展開されるようになっている。
ファー側サイドエアバッグ52は、着座乗員Pの胸部及び肩部を拘束するための中央チャンバ52Aと、着座乗員Pの頭部を拘束するための頭部保護チャンバ52Bと、着座乗員Pの腹部を拘束するための腹部保護チャンバ52Cとを含んで構成されている。腹部保護チャンバ52Cは、ニア側サイドエアバッグ46の腰部保護チャンバ46Cに対し上方で膨張展開されるようになっている。なお、中央チャンバ52A(と頭部保護チャンバ52Bとの間)に形成された凹みは、着座乗員Pの腕の逃がし部とされている。また、頭部保護チャンバ52Bは、膨張展開状態で後上の角部となる接続部52Dにおいて、テンションクロス26の上端26Bと共にポップアップダクト18に接続されている。
すなわち、ファー側サイドエアバッグ52は、その上端側がポップアップダクト18の展開に伴って上方に移動される構成とされている。この移動を許容するため、ファー側サイドエアバッグ52は、蛇腹折り等で前後方向に折り畳まれると共に、その前後に折り畳まれた中間部が蛇腹折り等で上下方向に折り畳まれている(図示省略)。そして、ファー側サイドエアバッグ52は、この上下方向の折りを解消しながら、ポップアップダクト18の上方への展開を許容する構成とされている。
図7に示される如く、頭部保護チャンバ52Bは、テンションクロス26の前方まで張り出して膨張展開されるが、このような張出部分を含めて着座乗員Pとテンションクロス26との間で展開されるものと捉えることとする。換言すれば、頭部保護チャンバ52Bは、正面視で着座乗員Pとテンションクロス26との間で展開される。図示は省略するが、ニア側サイドエアバッグ装置42の頭部保護チャンバ46Bについても同様である。
(制御装置の構成)
図8に示される如く、車両用シート40の車両用乗員拘束装置41は、ダクト用インフレータ22、サイドエアバッグ用インフレータ48、54の作動を制御する制御装置としての側突ECU56を備えている。側突ECU56は、ダクト用インフレータ22、サイドエアバッグ用インフレータ48、54の他、側面衝突を予測するプリクラッシュセンサ58及び側突センサ32に電気的に接続されている。側突ECU56は、プリクラッシュセンサ58からの信号に基づいて側面衝突を予測した場合にダクト用インフレータ22を作動し、側突ECU30からの信号に基づいて側面衝突を検知した場合にサイドエアバッグ用インフレータ48、54を作動する構成とされている。これにより例えば、側突ECU56は、側面衝突発生の略300msec前にダクト用インフレータ22を作動してポップアップダクト18を展開完了させ、側面衝突開始(検出)から1〜10msec後にサイドエアバッグ用インフレータ48、54を作動させるようになっている。
車両用シート40の他の構成は、図示しない部分を含め、車両用シート10の対応する部分と同様に構成されている。
次に、第2の実施形態の作用を説明する。
上記構成の車両用シート40では、プリクラッシュセンサ58からの信号により側面衝突を予測した側突ECU56は、ダクト用インフレータ22を作動させる。すると、ダクト用インフレータ22からのガス圧によってポップアップダクト18がシートバック14の上方で展開される。この展開に伴って、テンションクロス26が切れ目28を通じてシートクッション12及びシートバック14から引き出され、図6に示される如く展開される。また、接続部46D、52Dにおいてポップアップダクト18に接続されているニア側サイドエアバッグ46、ファー側サイドエアバッグ52の少なくとも一部が切れ目28を通じてシートバック14から引き出される。
さらに、側突センサ32からの信号により側面衝突を検知した側突ECU56は、サイドエアバッグ用インフレータ48、54を作動させる。すると、左右のニア側サイドエアバッグ46、ファー側サイドエアバッグ52が膨張展開される(図6は、テンションクロス26、左右のサイドエアバッグ46、52の展開完了状態を図示している)。これらサイドエアバッグ46、52は、既に展開されているテンションクロス26と着座乗員Pとの間で、該テンションクロス26に沿って前方に向けて膨張、展開される。衝突側の座席の着座乗員Pは、テンションクロス26及びニア側サイドエアバッグ46によって拘束され、反衝突側の座席の着座乗員Pは、テンションクロス26及びファー側サイドエアバッグ52によって拘束される。衝突後のゆり戻しの際は、各乗員Pは、衝突時とは逆のテンションクロス26、サイドエアバッグにて拘束される。
ここで、車両用シート40では、テンションクロス26による着座乗員Pの保護については、第1の実施形態と同様である。
また、上記の通りニア側サイドエアバッグ46、ファー側サイドエアバッグ52は、展開済みのテンションクロス26に沿って膨張展開されるため、着座乗員Pからシート幅方向に離れる方向の移動を規制され、展開方向が安定する。すなわち、側面衝突の検知(膨張展開の開始)から短時間で、適正に膨張展開が完了される。さらに、中央チャンバ46A、52Aによって、着座乗員Pの高剛性部位である肩部を拘束するため、該着座乗員Pの頭部の車幅方向への移動を効果的に抑制することができる。しかも、ニア側サイドエアバッグ46、ファー側サイドエアバッグ52には、頭部保護チャンバ46B、52Bが設けられている。このため、頭部の車幅方向の移動を一層効果的に抑制することができる。
さらに、頭部保護チャンバ46B、52Bが接続部46D、52Dにおいてポップアップダクト18に接続されている。このため、ポップアップダクト18の展開に伴ってニア側サイドエアバッグ46、ファー側サイドエアバッグ52の少なくとも一部がサイドエアバッグ用インフレータ48、54の作動に先立ってシートバック14から引き出される。これにより、左右のサイドエアバッグ46、52を、側面衝突の検知から一層短時間で、適正に膨張展開させることができる。
また、ニア側サイドエアバッグ46に、中央チャンバ46A、頭部保護チャンバ46B、腰部保護チャンバ46Cを有する。このため、車幅方向の外側(衝突側)において、着座乗員Pを頭部から腰部に亘って拘束し、該乗員Pを側面衝突に対し効果的に保護することができる。特に、頭部保護チャンバ46Bが設けられていることで、サイドウインドウガラスに沿って展開されるカーテンエアバッグ等の頭部保護エアバッグを不要又は簡素化することができる。さらに、ファー側サイドエアバッグ52に、中央チャンバ52A、頭部保護チャンバ52B、腹部保護チャンバ52Cを有する。このため、車幅方向の内側(反衝突側)において、着座乗員Pを頭部から腹部に亘って拘束し、該乗員Pを隣席乗員との干渉に対し効果的に保護することができる。
なお、第2の実施形態では、プリクラッシュセンサ58からの信号に基づいてニア側サイドエアバッグ装置42、ファー側サイドエアバッグ装置44の作動に先立ってポップアップダクト18を展開させる例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、側突センサ32からの信号により側面衝突(の不可避)を検知した側突ECU56が、サイドエアバッグ用インフレータ48、54に先行してダクト用インフレータ22を作動するようにしても良い。また、ダクト部18Aのガス容量はサイドエアバッグ46、52のガス容量に対し十分に小さく、ポップアップダクト18の展開は、ニア側サイドエアバッグ46の膨張展開よりも十分短時間で完了する。このガス容量差に基づく時間差でサイドエアバッグ46、52が膨張展開に先行して切れ目28から引き出される構成であれば、サイドエアバッグ用インフレータ48、54とダクト用インフレータ22とを同時に作動させても良い。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る車両用シート60について、図9に基づいて説明する。なお、上記第2の形態の構成と基本的に同様の構成については、上記第2の形態の構成と同一の符号を付して、その説明、図示を省略する場合がある。
図9には、本発明の第3の実施形態に係る車両用シート60が示されている。この図に示される如く、車両用シート60の車両用乗員拘束装置61は、テンションクロス26に代えてテンションクロス62を備えている。そして、車両用シート60は、テンションクロス62がニア側サイドエアバッグ46、ファー側サイドエアバッグ52に接続されている点で、第2の実施形態に係る車両用シート40とは異なる。
具体的には、テンションクロス62は、その展開状態で、シートクッション12に接続された下端62Aとポップアップダクト18に接続された上端62Bとを結ぶテンションラインTLよりも前方に張り出す張出部62Cを有する。張出部62Cは、テンションクロス62の少なくとも上部に設定されており、これによりテンションクロス62は、展開状態の側面視で頭部保護チャンバ46B、52B全体を覆うように形成されている。また、テンションクロス62の後縁部62Dは、それぞれシートバックフレーム14Aに接続されている。
そして、テンションクロス62とニア側サイドエアバッグ46とは、頭部保護チャンバ46Bと張出部62Cとが縫製等によって接合されている。この実施形態では、頭部保護チャンバ46Bと張出部62Cとは、ティアシーム64(破断予定糸)にて接続されており、頭部保護チャンバ46Bの膨張展開が完了すると、ティアシーム64が破断されて上記接続が解消されるようになっている。また、テンションクロス62とニア側サイドエアバッグ46とは、該テンションクロス62の下部と腰部保護チャンバ46Cとが縫製66等により接合されている。
また、テンションクロス62とファー側サイドエアバッグ52とは、頭部保護チャンバ52Bと張出部62Cとで縫製等によって接合されている。この実施形態では、頭部保護チャンバ52Bと張出部62Cとは、ティアシーム65(破断予定糸)にて接続されており、頭部保護チャンバ52Bの膨張展開が完了すると、ティアシーム65が破断されて上記接続が解消されるようになっている。また、テンションクロス62とファー側サイドエアバッグ52とは、該テンションクロス62の下部と腹部保護チャンバ52Cとが縫製68等により接合されている。車両用シート60の他の構成は、図示しない部分を含め、車両用シート40の対応する部分と同様に構成されている。
したがって、第3の実施形態に係る車両用シート60によっても、基本的に第2の実施形態に係る40と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
また、車両用シート60では、そのニア側(車幅方向外側)において、先行して展開されるテンションクロス62の張出部62Cに頭部保護チャンバ46Bが接続されている。このため、ポップアップダクト18に接続されていることで膨張展開に先行してシートバック14から引き出されるニア側サイドエアバッグ46は、さらにテンションクロス62の展開に伴って前方(テンションラインTL側)へも引き出されることとなる。さらに、テンションクロス62と腰部保護チャンバ46Cとが接続されており、ニア側サイドエアバッグ46は、下部においてもテンションクロス62の展開に伴って大きく前方に引き出される。すなわち、ガス供給前にニア側サイドエアバッグ46の折りの解消が促進される。これらにより、ニア側サイドエアバッグ46がより一層短時間で適正に膨張展開させることに寄与する。すなわち、ニア側サイドエアバッグ46のシートバック14からの引き出し(折りの解消)が促進されることで、該ニア側サイドエアバッグ46が短時間で膨張展開されることに寄与する。
一方、テンションクロス62の張出部62Cは、テンションラインTLよりも前方に位置するが、頭部保護チャンバ46Bに接続されることで、該テンションクロス62の膨張展開過程で着座乗員Pからの荷重を支持することが可能となる。このため、テンションクロス62による乗員の拘束範囲は、テンションクロス26と比較して、張出部62Cの分だけ広くなる。これにより、車両用シート60では、一層多様な衝突形態に対し着座乗員Pの保護性能を向上させることができる。
さらに、張出部62Cと頭部保護チャンバ46Bとはティアシーム64にて縫製されているので、ニア側サイドエアバッグ46の膨張展開が完了されると、張出部62Cと頭部保護チャンバ46Bとの接続状態(拘束)が解消される。このため、テンションクロス62は、頭部保護チャンバ46Bの膨張展開形状に倣って湾曲する(波打つ)ことが抑制され、テンションラインTLに沿ってほぼまっすぐに展開される(テンションクロス62としての展開形状が維持される)。
また同様に、車両用シート60のファー側(車幅方向内側)において、先行して展開されるテンションクロス62の張出部62Cに頭部保護チャンバ52Bが接続されている。このため、ポップアップダクト18に接続されていることで膨張展開に先行してシートバック14から引き出されるファー側サイドエアバッグ52は、さらにテンションクロス62の展開に伴って前方(テンションラインTL側)へも引き出されることとなる。さらに、テンションクロス62と腹部保護チャンバ52Cとが接続されており、ファー側サイドエアバッグ52は、下部においてもテンションクロス62の展開に伴って大きく前方に引き出される。すなわち、ガス供給前にファー側サイドエアバッグ52の折りの解消が促進される。これらにより、ファー側サイドエアバッグ52がより一層短時間で適正に膨張展開させることに寄与する。すなわち、ファー側サイドエアバッグ52のシートバック14からの引き出し(折りの解消)が促進されることで、該ファー側サイドエアバッグ5が短時間で膨張展開されることに寄与する。
一方、テンションクロス62の張出部62Cは、テンションラインTLよりも前方に位置するが、頭部保護チャンバ52Bに接続されることで、該テンションクロス62の膨張展開過程で着座乗員Pからの荷重を支持することが可能となる。このため、テンションクロス62による乗員の拘束範囲は、テンションクロス26と比較して、張出部62Cの分だけ広くなる。これにより、車両用シート60では、一層多様な衝突形態に対し着座乗員Pの保護性能を向上させることができる。さらに、張出部62Cと頭部保護チャンバ52Bとはティアシーム64にて縫製されているので、ファー側サイドエアバッグ52の膨張展開が完了されると、張出部62Cと頭部保護チャンバ52Bとの接続状態(拘束)が解消される。このため、テンションクロス62は、頭部保護チャンバ52Bの膨張展開形状に倣って湾曲する(波打つ)ことが抑制され、テンションラインTLに沿ってほぼまっすぐに展開される(テンションクロス62としての展開形状が維持される)。
なお、第3の実施形態では、テンションクロス62の張出部62Cと頭部保護チャンバ46B、52Bとがティアシーム64、65にて接続された例を示したが、本発明はこれに限定されない。張出部62Cと、頭部保護チャンバ46B、52Bの何れか一方とは、膨張展開後も接続状態が維持されるように接続されても良い。補足すると、ニア側サイドエアバッグ46の頭部保護チャンバ46Bは、ファー側サイドエアバッグ52の頭部保護チャンバ52Bと比較して膨張展開形状が車幅方向に厚く、膨張展開形状がテンションクロス62の展開形状に与える影響が相対的に大きい。このため、ニア側サイドエアバッグ46の頭部保護チャンバ46Bとテンションクロス62との接続は、ティアシーム64による接続が望ましい。
また、第3の実施形態では、テンションクロス62の下部と腰部保護チャンバ46C、腹部保護チャンバ52Cとが縫製66、68にて接続された例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、テンションクロス62の下部と腰部保護チャンバ46C及び腹部保護チャンバ52Cの少なくとも一方とは、接続されない構成としても良く、テンションクロス62の上部のみがティアシーム64にて接合された構成としても良い。
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る車両用シート100について、図10〜図18に基づいて説明する。なお、上記第1〜第3の形態の構成と基本的に同様の構成については、上記第1〜第3の形態の構成と同一の符号を付して、その説明、図示を省略する場合がある。
図10には、第4の実施形態に係る車両用シート100が示されている。この図に示される如く、車両用シート100の車両用乗員拘束装置101は、側面衝突に対する乗員拘束装置11、41、61に加えて、前面衝突に対する乗員拘束装置を備える点で、上記各実施形態とは異なる。図示例の車両用乗員拘束装置101は、乗員拘束装置61に加えて前面衝突用の乗員拘束装置を備えている。以下、車両用乗員拘束装置101のうち前面衝突に対する乗員拘束装置について、具体的に説明する。なお、図11〜図18においては、ポップアップダクト18を含む側面衝突用の乗員拘束装置の図示を省略する。
図11には、車両用乗員拘束装置101が適用された車両用シート100を含む車室内部が平面図にて示されている。この実施形態における車両用シート100は、運転席とされており、車体における車幅方向の中央部に配置されたセンタコンソール118に対し該車幅方向の一方側に配置されている。なお、助手席である車両用シート100に対し車両用乗員拘束装置101が適用可能であることは言うまでもない。
(支持構造体の構成)
車両用乗員拘束装置101は、後述する前突エアバッグ装置146及びシートベルト装置155を着座乗員Pの保護可能な位置で支持する支持構造体としてのラップディバイス120を備えている。ラップディバイス120は、第1支持部材としてのアウタバー122と、第2支持部材としてのラップバー124と、第3支持部材としてのインナバー126とを主要部として構成されている。
アウタバー122は、前後方向に長手とされており、後端側においてシートクッション12の後端部にシート幅方向に沿った軸122A回りに回転可能に支持されている。この回転によりアウタバー122は、図14Aに示す格納位置と、図14B〜図14Dに示す使用位置との間を移動可能とされている。格納位置でアウタバー122は、シートクッション12の車幅方向外側の側縁部に沿って配置されている。この実施形態では、外側の側縁部に形成された格納凹部128内に格納されている。使用位置でアウタバー122は、その前端が後端(軸122A)に対し上方に位置する傾斜姿勢とされている。このように、アウタバー122は、軸122A周りに回転することで、シートクッション12の側縁部に沿った格納位置と、上記傾斜姿勢の使用位置とをとり得る構成とされている。
インナバー126は、前後方向に長手とされており、後端側においてシートクッション12の後端部にシート幅方向に沿った軸126A回りに回転可能に支持されている。この回転によりインナバー126は、図14Aに示す格納位置と、図14B〜図14Dに示す使用位置との間を移動可能とされている。格納位置でインナバー126は、シートクッション12の車幅方向内側の側縁部に沿って配置されている。この実施形態では、内側の側縁部に形成された格納凹部130内に格納されている。使用位置でインナバー126は、その前端が後端(軸126A)に対し上方に位置する傾斜姿勢とされている。このように、インナバー126は、軸126A周りに回転することで、シートクッション12の側縁部に沿った格納位置と、上記傾斜姿勢の使用位置とをとり得る構成とされている。
この実施形態では、軸122Aと軸126Aとは図示しない連動機構を介して連結されており、アウタバー122及びインナバー126の何れか一方を格納位置と使用位置との間で移動させると、他方が追従する構成とされている。また、アウタバー122とインナバー126とは、それぞれの格納位置、使用位置において、側面視で全体としてオーバラップする構成とされている。換言すれば、アウタバー122とインナバー126とは、着座乗員Pに対する左右対称性を維持するように動作するようになっている。
ラップバー124は、アウタバー122に連結されており、アウタバー122と共に格納凹部128に格納される格納姿勢(図14A参照)と、アウタバー122とインナバー126とを架け渡す使用姿勢(図14D参照)とをとり得る構成とされている。以下、具体的に説明する。
図15は、アウタバー122及びインナバー126が使用位置に位置し、ラップバー124が格納姿勢をとる状態を示す斜視図である。図16は、図15の状態からラップバー124が使用姿勢に移行する状態を示す斜視図である。これらの図に示される如く、アウタバー122は、軸122Aによる支持側である基部132と、基部132における軸122Aとは反対側に設けられたガイド部134とを有する。
基部132は、矩形筒状を成すブーツ構造とされており、後述するラップベルト156が挿通(保持)されるようになっている。ガイド部134は、格納姿勢において長手方向に直交する断面視でシート幅方向中央向きに開口する略「コ」字状を成しており、互いに対向する一対の側壁134Aと、これらを繋ぐ連結壁134Bとを主要部とする。ガイド部134の各側壁134Aには、それぞれアウタバー122の長手方向に沿ってスリット134Cが形成されている。一方、ラップバー124の長手方向一端部には、各スリット134Cに抜け止め状態で入り込まされた一対の連結ピン124Aを有する。これにより、ラップバー124は、アウタバー122に対し、連結ピン124A回りに回転可能でかつスリット134Cに沿ってスライド可能に連結されている。
そして、ラップバー124は、図15に示す状態から長手方向(図15の矢印T参照)に引き出されると、図16に想像線にて示される伸長姿勢となり、さらに連結ピン124A回りに矢印U方向に回転すると、図16に実線にて示される使用姿勢となる構成である。ラップバー124の長手方向の他端には、被結合部としてのバー側タングプレート136が設けられており、該バー側タングプレート136がインナバー126の前端側に設けられたバー側バックル138に離脱可能に結合されるようになっている。
この結合状態では、図11及び図14Dに示される如く、アウタバー122とラップバー124とインナバー126とが平面視で後向きに開口すると共に、正面視で下向きに開口する略「コ」字状を成すようになっている。この形態が、ラップディバイス120の使用形態(着座乗員Pの立場で擬似装着状態。以下、単に装着状態という場合がある)とされる。この使用形態でラップディバイス120は、着座乗員Pの腹部を3方から囲む構成とされている。
また、アウタバー122及びインナバー126には、着座乗員Pの腹部に対しラップバー124を接離させ得る装着位置調整構造としてのアジャスタ140を備えている。アウタバー122側のアジャスタ140は、基部132に設けられて各スリット134Cに入り込まされた一対のアジャストピン140Aを含んで構成されている。一方、インナバー126側のアジャスタ140は、基部142と、基部142にスライド可能に支持されたバックル保持部144とを含んで構成されている。そして、インナバー126の長手方向に沿って基部142に形成された一対のスリット142Aには、バックル保持部144に設けられたアジャストピン144Aがそれぞれ入り込まされている。
アジャストピン140Aがスリット134C内をスライドすると共に、アジャストピン144Aがスリット142A内をスライドすることで、上記の通り着座乗員Pの腹部に対しラップバー124を接離させ得るアジャスタ140が構成されている。なお、図示しないロック機構又は摩擦ストッパ構造等によって、ラップバー124を任意の調整位置(無段階でも有限段階でも良い)で停止させることができる構造とされている。
(前突エアバッグの構成)
図11に示される如く、以上説明したラップディバイス120のラップバー124には、前面衝突(前突)に対する着座乗員Pの拘束(保護)用の前突エアバッグ装置146が配設されている。この前突エアバッグ装置146は、ラップバー124の長手方向に沿って配置されている。
具体的には、図18(A)に示される如く、少なくとも前突エアバッグ装置146の配設範囲でラップバー124は中空構造とされており、該ラップバー124の内部空間であるエアバッグ収容部148内に前突エアバッグ装置146が配置されている。前突エアバッグ装置146は、作動によりガスを発生するガス供給手段としてのインフレータ150と、インフレータ150からのガス供給を受けて膨張、展開されるエアバッグとしての前突エアバッグ152とを主要部として構成されている。
インフレータ150は、ラップバー124の幅方向中央部で、該ラップバー124のエアバッグ収容部148を囲む壁のうち着座乗員P側を向く底壁148Aに固定されている。前突エアバッグ152は、その内側にインフレータ150が収容された状態で、該インフレータ150を介して底壁148Aに固定されている。この前突エアバッグ152は、インフレータ150に対する前後両側でロール折りされると共に、図示しない保護布にて覆われて折り畳み状態が維持されている。この保護布は、バッグ膨張圧を受けると、図示しないミシン目状の切り込みにおいて破断され、前突エアバッグ152の展開を許容する構成になっている。この実施形態における前突エアバッグ152は、図10及び図12に示される如く、その後端側が左右に分割された如きツインチャンバタイプのエアバッグとされている。これにより、バッグ容量の低減、着座乗員Pとの接触面積増加、着座乗員Pの両肩の適正支持等が得られる。
また、ラップバー124における底壁148Aと対向する天壁148Bには、前突エアバッグ152の膨張展開圧によって破断され開口するエアバッグドア154が形成されている。この実施形態に係るエアバッグドア154は、天壁148Bに形成した溝状のティアライン113(図18(A)参照)において開裂されることで、側壁148Cとの角部をヒンジとして展開され、天壁148Bに開口を形成するようになっている。この開口を通じて、図12に示される如く前突エアバッグ152のラップバー124外への膨張展開が許容される構成である。
図12及び図13に示される如く、前突エアバッグ152は、着座乗員Pの前方に位置する車両構造物と着座乗員Pの上部との間で展開される構成とされている。運転席に適用された図12、図13の例では、車両構造物としてのステアリングホイールSWと着座乗員Pの上部との間で、前突エアバッグ152が展開される構成とされている。なお、図13に想像線にて示す前突エアバッグ152(符号152P)は、助手席用エアバッグの展開形状例であり、この例では車両構造物としてのインストルメントパネルIPと着座乗員Pの上部との間で、前突エアバッグ152が展開されることとなる。
インフレータ150のラップバー124への固定構造について補足すると、インフレータ150に固定され底壁148Aを貫通したスタッドボルト151Aにナット151Bが螺合されている。これにより、インフレータ150は、ラップバー124の底壁148Aに締結固定されている。また、この実施形態では、後述するベルトホルダ162が、スタッドボルト151Aにナット151Bによる共締めにて底壁148Aの外面側に固定されている。
(シートベルト装置の構成)
車両用乗員拘束装置101は、図12に示される如く、着座乗員Pの腰部を拘束するためのシートベルト装置155を備えている。シートベルト装置155は、着座乗員Pの腰部に装着されるラップベルト156と、ラップベルト156の長手方向の一端側を支持するリトラクタ158とを備えている。この実施形態に係るシートベルト装置155は、通常は図15及び図16に示される如くラップベルト156がラップディバイス120(アウタバー122及びラップバー124)に保持されるようになっている。一方、前面衝突時には、図12及び図13に示される如くラップベルト156が着座乗員Pの腰部に装着される構成とされている。以下、具体的に説明する。
ラップベルト156は、図15及び図18(A)に示される如く、ブーツ構造の基部132に挿通されてアウタバー122に保持されると共に、ベルト保持手段としてのベルトホルダ162を介してラップバー124に離脱可能に保持されている。図18(B)に示される如く、ベルトホルダ162は、ラップバー124の底壁148Aに固定される基板部162Aと、基板部162Aの幅方向両側において該基板部162Aの長手方向に離間された複数の保持爪162Bとを含んで構成されている。この実施形態では、基板部162Aと各保持爪162Bとは、連結壁162Cによって連結されている。これにより、ベルトホルダ162は、保持爪162Bの形成部位において、長手方向に直交する断面視で扁平C字状に形成されている。ベルトホルダ162は合成樹脂等で形成されており、各保持爪162Bは基板部162Aに対し接離する方向に弾性変形(撓み)可能とされている。
このベルトホルダ162は、その基板部162Aが上記したインフレータ150と共に、スタッドボルト151Aにナット151Bによって、ラップバー124の底壁148Aに共締め固定されている。この状態で、ラップベルト156は、基板部162Aと各保持爪162Bとの間に幅方向の両端側が入り込まされている。各保持爪162Bは、ラップベルト156に対しラップバー124側と反対側(着座乗員P側)から対向して該ラップベルト156の着座乗員P側への移動を規制している。これにより、ラップベルト156は、ラップバー124に対する厚み方向の移動がベルトホルダ162によって規制され、該ベルトホルダ162を介してラップバー124に保持される構成とされている。
図15に示される如く、ラップベルト156は、上記したブーツ構造の基部132に挿通されており、該基部132と軸122Aとの間に設けられたリトラクタ158に一端側が引き出し可能に巻き取られている。これにより、アウタバー122に対するラップバー124の伸長姿勢への変位やアジャスタ140によるラップバー124の位置調整の際にラップベルト156が弛むことなく出し入れされるようになっている。このリトラクタ158には、作動によってラップベルト156を強制的に巻き取る張力付与手段としてのプリテンショナ機構158Aが設けられている。プリテンショナ機構158Aは、一般的なリトラクタに設けられているもの(例えばガスジェネレータからのガスにより巻取軸を強制回転させるもの)と同様に構成されているので、詳細な説明は省略する。
一方、ラップベルト156の他端部には、ベルト結合手段を構成するベルト側タングプレート160が設けられている。ベルト側タングプレート160は、該ベルト側タングプレート160がバー側バックル138と隣接してインナバー126に設けられたベルト側バックル163に離脱可能に結合されるようになっている。
この実施形態では、ベルト側バックル163には、インナ側のラップベルト164の一端側が連結されており、ラップベルト164の他端側は、インナバー126の基部142と軸126Aとの間に設けられたリトラクタ166に引き出し可能に巻き取られている。これにより、アジャスタ140によるラップバー124の位置調整の際にラップベルト164が弛むことなく出し入れされるようになっている。図示は省略するが、リトラクタ166には、リトラクタ158のものと同様のプリテンショナ機構が設けられている。
そして、ベルト側バックル163は、バー側バックル138に対して、所要の外力を受けると離脱されるように保持されている。具体的には、リトラクタ158及びリトラクタ166のプリテンショナが作動すると、ベルト側バックル163は、バー側バックル138から脱落される。これにより、ベルト側バックル163は、ラップベルト156、164、ベルト側タングプレート160と共に着座乗員Pの腰部に装着されるようになっている。したがって、この実施形態に係るシートベルト装置155は、ベルト側タングプレート160及びベルト側バックル163により結合されたままのラップベルト156、164がラップディバイス120から離脱されて着座乗員Pに装着される構成とされている。ラップベルト156の離脱構造について補足する。ラップベルト156は、張力を受けつつ短縮しようとすることでベルトホルダ162の各保持爪162Bを着座乗員P側に弾性変形させ、該各保持爪162Bによる保持から解放され、ベルトホルダ162すなわちラップバー124から離脱されるようになっている。一方、上記外力による離脱可能なバー側バックル138に対するベルト側バックル163の保持構造としては、各種構造を採用することができる。例えば、接着、上記の外力により破断や変形して保持を解除する係合構造、磁力や面状ファスナによる保持構造等を採用することができる。
(バックル構造)
バー側タングプレート136とベルト側タングプレート160とは、共通の結合動作(ワンアクション)でバー側バックル138、ベルト側バックル163に結合されるようになっている。すなわち、上記した通りバー側バックル138に保持されているベルト側バックル163に対して、バー側タングプレート136に保持されたベルト側タングプレート160が、共通の動作にて結合されるようになっている。
また、バー側タングプレート136及びベルト側タングプレート160は、ラップバー124が格納姿勢をとる場合にラップバー124の長手方向に沿って位置する。そして、使用姿勢に移行するのに伴ってバー側バックル138、ベルト側バックル163側を向く構成とされている。具体的には、バー側タングプレート136は、図17(A)に示される如くラップバー124に対し軸136A回りに回転可能に支持されている。また、ベルト側タングプレート160は、プレートホルダ168を介してバー側タングプレート136に離脱可能に保持されている。これにより、ベルト側タングプレート160は、通常はバー側タングプレート136と共に軸136A回りに回転可能とされている。プレートホルダ168は、保持片168Aによりベルト側タングプレート160を保持している。そして、リトラクタ158及びリトラクタ166のプリテンショナが作動すると、プレートホルダ168は、保持片168Aが弾性変形又は塑性変形することでバー側タングプレート136から離脱されるようになっている。
そして、バー側タングプレート136は、ラップバー124の格納姿勢においては図17(A)に示される如くラップバー124の長手方向に沿って位置する格納用姿勢に保持されている。一方、ラップバー124を伸長姿勢にすると、ラップベルト156が引き出されてリトラクタ158(の巻き取りばね)の巻取力が増すので、ベルト側タングプレート160に作用するリトラクタ158の巻取力が増す。このため、図17(B)に示される如く、バー側タングプレート136及びベルト側タングプレート160が、リトラクタ158の巻取力によって矢印V側に倒れる結合準備姿勢に移行するようになっている。
これにより、ラップバー124が格納姿勢から使用姿勢に移行するのに伴って、バー側タングプレート136及びベルト側タングプレート160がバー側バックル138及びベルト側バックル163を向く構成とされている。なお、ラップバー124を使用姿勢から格納姿勢に戻す際には、着座乗員Pによる手動で又は図示しないリターンスプリングの付勢力によってバー側タングプレート136及びベルト側タングプレート160が格納用姿勢に復帰される構成とすることができる。リターンスプリングを用いる構成では、その付勢力はラップバー124の格納姿勢でのリトラクタ158の巻取力よりも強く、ラップバー124伸長姿勢でのリトラクタ158の巻取力よりも弱く設定される。また、バー側タングプレート136及びベルト側タングプレート160は、手動で格納用姿勢に復帰する構成においては、摩擦力などでラップバー124の格納姿勢でのリトラクタ158の巻取力に抗して格納用姿勢に保持される。
(乗員保護ECUの構成)
図示は省略するが、車両用乗員拘束装置101は、制御装置としての乗員保護ECU(図示省略)を備えている。乗員保護ECUは、前突エアバッグ装置146のインフレータ150、リトラクタ158のプリテンショナ機構158A、及びリトラクタ166のプリテンショナ機構のそれぞれに電気的に接続されている。また、乗員保護ECUは、車両用乗員拘束装置101が適用された自動車の前面衝突を検知する前突検知センサ、バー側タングプレート136とバー側バックル138との結合を検知するバックルセンサに電気的に接続されている。バックルセンサは、ベルト側タングプレート160とベルト側バックル163との結合を検出するものであっても良い。乗員保護ECUは、前突検知センサから衝突検知信号が入力されると、前突エアバッグ装置146のインフレータ150、リトラクタ158、166の各プリテンショナ機構158A等を作動するようになっている。すなわち、前面衝突を検知した場合に、インフレータ150及び各プリテンショナ機構158A等を作動させるようになっている。これにより、本実施形態の作用の説明において後述するように、前突エアバッグ152及びラップベルト156、164によって着座乗員Pの前方への移動が拘束される構成とされている。
次に、第4の実施形態の作用について、主に上記した第1〜第3の実施形態の作用とは異なる部分を説明する。
上記構成の101は、側面衝突用の乗員拘束装置(乗員拘束装置61(11、41))及び前面衝突用の乗員拘束装置を含んで構成されている。したがって、車両用乗員拘束装置101を備えた車両用シート100は、全方位安全シートとして構成されている。そして、上記構成の車両用乗員拘束装置101を備えた車両用シート100では、乗員の乗降の際には、ラップディバイス120が格納位置に位置される。具体的には、アウタバー122及びラップバー124がシートクッション12の車幅方向外側の格納凹部128に格納され、インナバー126がシートクッション12の車幅方向内側の格納凹部130に格納される。このため、ラップディバイス120が着座乗員Pの乗降の妨げになることはない。
乗車して車両用シート100に着座した乗員は、格納位置にあるアウタバー122(及びラップバー124)、又はインナバー126を使用位置まで引き上げる。すると、連動機構により、アウタバー122及びインナバー126の非操作側のバーも共に使用位置に移行する。次いで着座乗員Pは、ラップバー124をアウタバー122に対し前方にスライドして伸長姿勢とし、さらに連結ピン124A回りに矢印U方向に回転させて使用姿勢とする。この動作に伴って、バー側タングプレート136及びベルト側タングプレート160は、格納用姿勢(図17(A)参照)から結合準備姿勢(図17(B)参照)に移行する。これらバー側タングプレート136及びベルト側タングプレート160をバー側バックル138及びベルト側バックル163に結合させると、着座乗員Pは、腹部がラップディバイス120にて前方側の3方から囲まれた状態となる。
さらに、着座乗員Pは、好みに応じてラップバー124の前後位置を調整する。ラップディバイス120による圧迫感を避ける場合は、該ラップバー124と腹部との間に隙間を維持しておくこととなる。一方、装着感(密着感)、拘束感(安心感)を優先する場合には、ラップバー124を腹部に近づけ、必要に応じて腹部に接触させることとなる。上記の通りバー側タングプレート136がバー側バックル138に結合されると、乗員保護ECUは、ラップディバイス120が使用位置に位置することを認識する。
この状態から乗員保護ECUは、前突検知センサから信号に基づいて前面衝突を検知すると、前突エアバッグ装置146のインフレータ150及びリトラクタ158、166の各プリテンショナ機構158A等を作動させる。すると、ラップベルト156及びラップベルト164は、リトラクタ158、166によって所定値以上の張力で引き込まれる。すると、ベルト側バックル163がバー側バックル138から離脱されると共に、ラップベルト156がベルトホルダ162から離脱される。これにより、ベルト側タングプレート160とベルト側バックル163とで連結されたラップベルト156、164が着座乗員Pの腰部に装着される。前方への慣性力が作用する着座乗員Pは、ラップベルト156、164によって前方への移動が抑制される(車両用シート100に拘束される)。
また、前突エアバッグ152が、その膨張展開圧にて保護布を破断すると共にティアライン113を開裂させてエアバッグドア154を展開させる。これにより、前突エアバッグ152は、ラップバー124の外側で膨張する。前突エアバッグ152は、インフレータ150(ラップディバイス120)にて反力を支持されつつ、ステアリングホイールSW(インストルメントパネルIP)と着座乗員Pの上部との間で展開される。これにより、着座乗員Pの上部の前方移動が展開された前突エアバッグ152にて拘束される。
一方、自動車の衝突に至らず、着座乗員Pが降車する場合には、図示しない解除ボタンの操作によりバー側タングプレート136、ベルト側タングプレート160をバー側バックル138、ベルト側バックル163から離脱させる。共通の動作で上記2つの結合を解除可能とするように、解除ボタンが共通化されることが望ましい。この解除後は、装着時とは逆に、ラップバー124を使用姿勢から伸長姿勢を経て、格納姿勢に復帰させれば良い。格納姿勢への復帰に伴って、バー側タングプレート136及びベルト側タングプレート160は、ラップバー124の長手方向に沿った姿勢に復帰する又は復帰される。この状態からアウタバー122又はインナバー126を格納位置に移動すると、左右のバーは連動して格納位置に至る。したがって、ラップディバイス120を構成するアウタバー122、ラップバー124が格納凹部128に格納されると共に、インナバー126が格納凹部130に格納される。着座乗員Pは、乗降口側に位置するラップバー124等に妨げられることなく、スムースに降車することができる。
ここで、車両用乗員拘束装置101では、不使用時には、アウタバー122及びラップバー124がシートクッション12の側縁部に沿う格納凹部128に格納される。また、インナバー126がシートクッション12の側縁部に沿う形成された格納凹部130に格納される。このため、ラップディバイス120はコンパクトに格納され、不使用時にエアバッグを保持する可動体の格納スペースが小さく抑えられる。
特に、ラップディバイス120は、ラップバー124がアウタバー122及びインナバー126を介してシートクッション12に支持される両端支持構造であるため、可動体が片持ち構造である比較例と比較して、ラップバー124に要求される剛性、強度が小さい。しかも、前突エアバッグ装置146の前突エアバッグ152は、ステアリングホイールSW(インストルメントパネルIP)にて反力が支持されるので、ラップバー124には前突エアバッグ152の反力を支持する強度、剛性が要求されない。また、ラップベルト156は、前突時には着座乗員Pに直接的に装着され、ラップバー124に乗員拘束荷重を支持させる必要がない。これらにより、上記比較例と比較してラップバー124をコンパクトに形成することができる。さらに、ラップバー124には前突エアバッグ装置146及びラップベルト156が保持されているので、前後両側に展開する2つのエアバッグ装置を保持する可動体を採用する比較例と比較して、ラップバー124を一層コンパクトに構成することができる。以上のようにコンパクトに構成されるラップバー124は、該ラップバー124を含むラップディバイス120の格納スペースを小型化することに寄与する。
またここで、車両用乗員拘束装置101では、上記の通り通常は、着座乗員Pの腰部を拘束するためのラップベルト156が、ラップディバイス120のラップバー124に保持されている。このため、通常時にラップディバイス120、ラップベルト156が着座乗員Pに対し直接的(肉体的)な圧迫(拘束)感を与えることがない。また、ラップディバイス120は、アジャスタ140によって、着座乗員Pの腹部に対するラップバー124の位置(距離)を調整し得る。このため、着座乗員Pは、好みに応じて、ラップディバイス120による圧迫感の回避を優先してラップバー124を非接触としたり、ラップディバイス120による装着感や拘束感を優先してラップバー124を腹部に接触させたりする選択が可能である。
さらに、バー側タングプレート136及びベルト側タングプレート160は、格納姿勢のラップバー124に対し該ラップバー124の長手方向に沿って位置する。このため、ストレートな格納凹部128にラップバー124及びアウタバー122をコンパクトに格納することができる。また、ラップバー124の格納姿勢から使用姿勢への移行に伴ってバー側タングプレート136及びベルト側タングプレート160が結合準備姿勢に至るため、ラップバー124のインナバー126への結合動作が容易である。
またさらに、通常の3点式シートベルト装置のバックルに相当するインナバー126が、該バックルと同様に車幅方向内側に配置されている。このため、着座乗員Pは違和感なくラップバー124等を操作して該ラップバー124をインナバー126に装着させることができる。そして、インナバー126に対して大型部品であるラップバー124をアウタバー122と共に格納凹部128内にコンパクトに格納する構成によって、換言すれば、ラップバー124が乗降を妨げない構成によって、上記インナバー126の配置が得られた。
さらにここで、車両用乗員拘束装置101では、リトラクタ158、166の作動により着座乗員Pの腰部に装着されるラップベルト156にて、該着座乗員Pの腰部を拘束する構成とされている。このため、例えばラップバー124から腰部に向けて展開されるエアバッグにて着座乗員Pの腰部を拘束する比較例と比較して、前面衝突の検知から短時間で乗員への装着状態とすることができる。これにより、車両用乗員拘束装置101では、通常時に着座乗員Pに与える圧迫感を抑え得る構成において、前面衝突時の初期拘束性能を向上することができる。
また、前突エアバッグ152は、ラップバー124からステアリングホイールSW(インストルメントパネルIP)と乗員Pとの間に展開される構成であるため、ウインドシールドガラスにて反力が支持される構成とする必要がない。このため、前突エアバッグ152の容量を小容量化することができる。特に、上下方向に扁平とされた薄型のインストルメントパネルを採用する自動車の場合、該インストルメントパネルに前突用エアバッグを配設する構成では、通常のインストルメントパネルを採用する自動車の場合と比較して、該エアバッグの容量が大きくなる。
これに対して車両用乗員拘束装置101では、上記の通り前突エアバッグ152にはウインドシールドガラスによる反力の支持が要求されないので、薄型のインストルメントパネルを採用した構成においても、前突エアバッグ152の容量が小さく抑えられる。また。前突時における着座乗員Pの移動方向と前突エアバッグ152の展開方向とが共に車両前方であるため、前突エアバッグ152による着座乗員Pへの負荷が小さい。
また、車両用乗員拘束装置101では、ラップベルト156を所定値以上の張力で引き込むことで、ラップベルト156がベルトホルダ162から離脱されると共にベルト側バックル163がバー側バックル138から離脱される。すなわち、シートベルト装置155がラップディバイス120から離脱されてラップベルト156、164が着座乗員Pの腰部に直接的に装着される。
なお、上記した第4の実施形態では、ラップバー124が乗降側に配置されたアウタバー122と共に格納凹部128に格納される例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ラップバー124が車幅方向内側に配置されたインナバー126と共に格納凹部130に格納される構成としても良い。
また、上記した第4の実施形態では、ラップベルト164、リトラクタ166がインナバー126側に設けられた例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、一端にベルト側バックル163が連結されると共に他端がアンカによりシートクッション12に固定された可撓性のステーを設けた構成としても良い。この構成では、リトラクタ158のプリテンショナ機構158Aからの張力によって、ベルト側バックル163がベルトホルダ162から離脱すると、上記ステーがラップベルト156と共に着座乗員Pの腰部に装着されることとなる。
さらに、上記した第4の実施形態では、ベルトホルダ162がラップベルト156を離脱可能にラップバー124に保持する例を示したが、本発明はこれに限定されない。ベルト保持手段は、ラップベルト156を離脱可能にラップバー124に保持するものであれば足り、例えば、マグネットや面状ファスナ等の他の構成を採用することができる。また、マグネットや面状ファスナ等を採用することで、衝突予測後に衝突に至らなかったケースにおいて、ラップベルト156をラップバー124に再保持させることが可能になる。
またさらに、上記した第4の実施形態では、バー側タングプレート136及びベルト側タングプレート160がリトラクタ158の巻取力で格納用姿勢から結合準備姿勢に移行する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ガイド部134に対するラップバー124の姿勢変化(回転やスライド)に連動するリンク機構等によってバー側タングプレート136及びベルト側タングプレート160が格納用姿勢から結合準備姿勢に移行する構成としても良い。また、ガス供給手段の動力でバー側タングプレート136及びベルト側タングプレート160が格納用姿勢から結合準備姿勢に移行する構成としても良い。さらに、バー側タングプレート136及びベルト側タングプレート160を格納用姿勢から結合準備姿勢に移行させる構造を有しない構成としても良い。
また、上記した第4の実施形態では、車両用乗員拘束装置101が運転席又は助手席に適用された例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、複数列のシートを有する車両の2列目以降のシートに車両用乗員拘束装置101を適用しても良い。
さらに、上記した第4の実施形態では、格納位置にあるアウタバー122(及びラップバー124)又はインナバー126を乗員によって使用位置まで引き上げる例を示したが、本発明本発明はこれに限定されない。例えば、乗員の着座を検出して電気モータを作動させて、アウタバー122及びインナバー126を格納位置から使用位置へ自動的に移動させる構成としても良い。
なお、上記した各実施形態では、車両用シート10、40、60、100が左右のテンションクロス26、62を備えた例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、テンションクロス26、62が車幅方向外側(ニア側)にのみ設けられた構成としても良い。また例えば、テンションクロス26、62が車幅方向内側(ファー側)にのみ設けられた構成としても良い。例えば車幅方向外側にテンションクロス26、62が設けられない構成では、ニア側サイドエアバッグ装置42、又は車体やドアに設けられたサイドエアバッグ装置やカーテンエアバッグ装置等にて着座乗員Pを側面衝突から保護するようにすることができる。
また、上記した第2、第3(及び第4)実施形態では、車両用シート40、60(100)がニア側サイドエアバッグ装置42、ファー側サイドエアバッグ装置44を共に備えた例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ニア側サイドエアバッグ装置42、ファー側サイドエアバッグ装置44の何れか一方のみを備えた構成としても良い。例えばニア側サイドエアバッグ装置42を有しない構成では、車体やドアに設けられたサイドエアバッグ装置やカーテンエアバッグ装置等にて着座乗員Pを側面衝突から保護するようにすることができる。
さらに、本発明に含まれない例として、テンションクロス26、テンションクロス62を備えず、頭部保護チャンバ46Bがポップアップダクト18に接続されて成るニア側サイドエアバッグ装置42を備えた構成としても良い。同様に、テンションクロス26、62を備えず、頭部保護チャンバ52Bがポップアップダクト18に接続されて成るファー側サイドエアバッグ装置44を備えた構成としても良い。これらの構成によっても、サイドエアバッグ46、52の膨張展開前にポップアップダクト18の展開によってサイドエアバッグ46、52をシートバック14から引き出すことができ、短時間での適正展開に寄与する。
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で各種変更して実施可能であることは言うまでもない。