JP5798747B2 - 積層体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、積層体の製造方法に関する。
近年、酸素や水蒸気などのガスを遮断する透明ガスバリア材料は、従来からの主たる用途である食品、医薬品などの包装材料用途だけでなく、液晶ディスプレイのようなフラットパネルディスプレイ(FPD)や太陽電池用の部材(基板、バックシートなど)、電子ペーパーや有機エレクトロルミネッセント(有機EL)素子用のフレキシブル基板や封止膜などにも用いられるようになってきている。これらの用途においては、非常に高いガスバリア性が求められている。また、ガスバリア性能保証の観点から、湿熱試験(例えば、85℃、相対湿度85%、200時間放置)後もガスバリア性が低下しないという、耐湿熱性が求められている。
現在、一部の用途において採用されている透明ガスバリア材料は、プラズマCVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などのドライ法と、ゾルゲル法などに代表されるウェット法により製造されている。両方法は、いずれもガスバリア性を示す珪素の酸化物(シリカ)をプラスチック基材に堆積させる手法である。ドライ法とは異なり、ウェット法は大型の設備は必要とせず、さらに基材の表面粗さに影響されず、ピンホールもできないので、再現性良く均一なガスバリア膜を得る手法して注目されている。
このようなウェット法によるガスバリア性フィルムの作製方法の一つとして、非特許文献1のように基材に塗工したポリシラザン膜をシリカ転化させるという方法が知られている。ポリシラザンは、酸素または水蒸気の存在下における加熱処理(150〜450℃)によって、酸化もしくは加水分解、脱水重縮合を経て酸化珪素(シリカ)へと転化することが広く知られている。しかし、この方法ではシリカ形成に長時間を要するという問題点、および基材が高温に曝されて基材の劣化を免れ得ないという問題点があった。
一方、特許文献1および特許文献2には、基材にポリシラザンを含有する塗布液を塗布してポリシラザン膜を形成し、次いで、好適なプラズマガス種として空気または酸素ガスを用いた、一般的にプラズマ酸化法と呼ばれるプラズマによる酸化処理をポリシラザン膜に施す方法が開示されている。この方法によって、ポリシラザン膜を低温かつ比較的短時間でシリカ転化させることができると記載されている。
続いて、光学材料について述べる。
光学材料の一つ、プラスチック製メガネレンズなどには、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂やポリチオウレタン樹脂などの高屈折率樹脂が用いられている。この高屈折率樹脂は、耐擦傷性が低く、表面に傷が付き易いという欠点を有している。そのため、その表面にハードコートおよび高屈折率を兼ね備えた膜を設ける方法が行われている。また、同様の理由から、ワープロ、コンピュータ、テレビなどの各種ディスプレイ、液晶表示装置に用いる偏光板の表面、カメラ用ファインダーのレンズなどの光学レンズ、各種計器のカバー、自動車、電車などの窓ガラスの表面にもハードコートおよび高屈折率を兼ね備えた膜が必要とされている。このようなハードコート膜には、高屈折率を付与するため、超微粒子を添加したシリカゾルおよび有機珪素化合物を用いたコーティング液が主に使用されている。
しかしながら、このようなコーティング液では、干渉縞の発生を抑制するため、基材とコーティング膜との屈折率を合わせる必要がある。その場合、基材の種類に応じて多くの添加微粒子の中から最適なものを選択する必要があった。また、耐擦傷性に改良の余地があり、耐擦傷性を付与するためには数μm以上の膜厚が必要であった。
一方、特許文献3には、ペルヒドロポリシラザンまたはその変性物を基材に塗布した後、真空下に600℃以上の温度で焼成する、窒化珪素薄膜の形成方法が記載されている。このようにして形成された窒化珪素薄膜は、耐摩耗性、耐熱性、耐蝕性、耐薬品性に優れ、さらに高屈折率を有すると記載されている。
特開平8−269690号公報 特開2007−237588号公報 特開平10−194873号公報 特開平2−113521公報
「塗装と塗料」、569巻、11号、27〜33ページ(1997年) "Thin Solid Films"、515巻、3480〜3487ページ、著者: F.Rebib等(2007年) "Handbook of Optical Constants of Solids」"(1985年) 749〜763ページ、及び771〜774ページ
しかしながら、特許文献1のガスバリア性フィルムの無機高分子層とは、基材と金属蒸着層の中間層として、金属蒸着層の接着性、基材の化学的安定性を付与するための層であり、ポリシラザン層単独でガスバリア性を付与する発明ではない。また、特許文献1の実施例に記載のように空気をプラズマ種として用いた、一般的にコロナ処理と呼ばれる手法の場合、得られる無機高分子層は十分なガスバリア性は発現しなかった。さらに、耐擦傷性が良好ではないという問題点もあった。
また、特許文献2の発明は、ポリシラザン膜にプラズマ処理することによってガスバリア性フィルムを作製する方法である。しかしながら、特許文献2の発明もまたは、前述のような酸素プラズマ処理によって酸化珪素(シリカ)膜を作製する技術に関する。FPDや太陽電池用部材、有機EL素子用のフレキシブル基板・封止膜といった用途において要求されるガスバリア性能は、酸化珪素(シリカ)膜単体では実現が困難なレベルであった。そのため、特にこれらの用途に用いるには、ガスバリア性に改良の余地があった。さらに、湿熱試験(85℃、相対湿度85%雰囲気下で200時間放置)後、ガスバリア性が低下するという耐湿熱性にも問題があった。
このように、特許文献1、2に記載のガスバリア性フィルムには、酸素および水蒸気に対するガスバリア性、耐擦傷性、耐湿熱性に依然として解決すべき課題があった。
また、光学材料における特許文献3記載の方法は、ポリシラザン膜を600℃以上の高温で焼成する必要がある。そのため、窒化珪素膜を光学部材の表面に設ける場合に光学部材自体が高温に曝されるため、同文献に記載の方法は精密性が要求される光学用途へは応用できなかった。一方、600℃未満の温度でポリシラザン膜を加熱した場合、低屈折率のシリカに転化してしまい、高屈折率膜は得られない。
本発明者らは、
基材と、前記基材上に形成されたシリコン含有膜と、を備える積層体であって、
前記シリコン含有膜は、珪素原子と窒素原子、または珪素原子と窒素原子と酸素原子とからなる窒素高濃度領域を有し、
前記窒素高濃度領域は、基材上に形成されたポリシラザン膜に酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気下で波長150nm以下の光照射を行うことで、当該膜の少なくとも一部を変性することにより形成される、積層体、
により前記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
本発明はさらに、次の方法を提供する。
基材上にポリシラザン含有液を塗布し塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を乾燥し、ポリシラザン膜を形成する工程と、
前記ポリシラザン膜に酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気下で波長150nm以下の光照射を行い、当該膜の少なくとも一部を変性し、珪素原子と窒素原子、または珪素原子と窒素原子と酸素原子とからなる窒素高濃度領域を含むシリコン含有膜を形成する工程と、
を含む、積層体の製造方法。
本発明によると、基材と、前記基材上に形成されたシリコン含有膜と、を備えたガスバリア性積層体であって、該シリコン含有膜は、窒素高濃度領域を有し、該窒素高濃度領域は、少なくともケイ素原子と窒素原子、またはケイ素原子と窒素原子と酸素原子とからなり、X線光電子分光法により測定した全原子に対する窒素原子の組成比が、下記式において0.1以上、1以下の範囲にあることを特徴とする、ガスバリア性積層体が提供される;
式:窒素原子の組成比/(酸素原子の組成比+窒素原子の組成比)。
本発明によると、基材上に形成されたポリシラザン膜に波長150nm以下の光を照射し、当該膜の少なくとも一部を変性することにより形成された窒素高濃度領域の屈折率が1.55以上の領域を備えることを特徴とする高屈折率膜が提供される。
本発明の積層体は、ポリシラザン膜に波長150nm以下の光を照射し、当該膜の少なくとも一部を変性することにより形成された珪素原子と窒素原子、または珪素原子と窒素原子と酸素原子とからなる窒素高濃度領域を備えているため、高屈折率を有するとともに、耐擦傷性、透明性、基材との密着性に優れる。さらに、本発明の積層体は、生産性に優れるとともに、上記特性の安定性に優れる高屈折率膜として使用できる。
また、本発明の積層体は、従来技術のようなガスバリア性フィルムと比較して、水蒸気バリア性や酸素バリア性等のガスバリア性や耐擦傷性に優れる。
また、本発明の積層体の製造方法によれば、光学部材の精密性に対する影響が少ないので、光学用途に適した積層体を製造することができる。さらに、本発明の積層体の製造方法は、簡便な方法であり生産性に優れるとともに、屈折率の制御性にも優れる。
図1は、本発明に係る積層体の製造方法を示す工程断面図である。 図2は、本発明に係る積層体の他の態様を示す断面図である。 図3は、本発明に係る積層体の他の態様を示す断面図である。 図4は、実施例6で得られた積層体のシリコン含有膜を、X線光電子分光(XPS)法により測定した結果を示すチャートである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
本実施形態の積層体10は、図1(b)に示すように基材12と、基材12上に形成されたシリコン含有膜16と、を備える。シリコン含有膜16は、珪素原子と窒素原子、または珪素原子と窒素原子と酸素原子とからなる窒素高濃度領域18を有する。窒素高濃度領域18は、基材12上に形成されたポリシラザン膜14に波長150nm以下の光を照射し(図1(a))、ポリシラザン膜14の少なくとも一部を変性することにより形成される。
以下、本発明の積層体10の各構成要素について説明する。
(基材)
基材12として使用できる材料としては、シリコン等の金属基板、ガラス基板、セラミックス基板、樹脂フィルム等が挙げられる。本実施形態において、基材12として樹脂フィルムを用いる。また、基材12の厚みは、用途により適宜選択することができる。
樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン;アペル(登録商標)等の環状オレフィンポリマー;ポリビニルアルコール;エチレン−ビニルアルコール共重合体;ポリスチレン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン−6、ナイロン−11等のポリアミド;ポリカーボネート;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリイミド;ポリエーテルスルフォン;ポリアクリル;ポリアリレート;トリアセチルセルロース等が挙げられ、これらは単独でか、または2種以上組み合わせて用いることができる。
(シリコン含有膜)
シリコン含有膜16は、基材12上に形成されたポリシラザン膜14に酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気下で波長150nm以下の光照射を行い、このポリシラザン膜14の少なくとも一部を変性して、窒素高濃度領域18を形成することにより得られる。したがって、シリコン含有膜16は、その上面16aの近傍に窒素高濃度領域18を有する(図1(b))。本実施形態において「上面16aの近傍」とは、シリコン含有膜16の上面16aから下方向に深さ50nmの領域、好ましくは上面16aから下方向に深さ30nmの領域を意味する。
ここで、本明細書中における窒素高濃度領域とは、以下式で表される窒素原子の組成比が、0.1以上0.5以下である領域をいう;
窒素原子の組成比/(珪素原子の組成比+酸素原子の組成比+窒素原子の組成比)。
窒素高濃度領域18は、好ましくは、0.001μm以上0.2μm以下、より好ましくは、0.01μm以上0.1μm以下の厚みを有する。
また、窒素高濃度領域18を有するシリコン含有膜16は、好ましくは、0.02μm以上2.0μm以下、より好ましくは0.05μm以上1.0μm以下の厚みを有する。
本発明のシリコン含有膜16は、ポリシラザン膜14に酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気下で波長150nm以下の光照射することにより形成される窒素高濃度領域18を有する。シリコン含有膜16中の窒素高濃度領域18以外の部分は、波長150nm以下の光照射後、前記樹脂基材側から透過してきた水蒸気と反応し、酸化珪素に変化し得る。
すなわち、シリコン含有膜16は、窒素高濃度領域18と酸化珪素領域とから構成される。この窒素高濃度領域/酸化珪素/樹脂基材の構成により、シリコン含有膜16の、酸素バリア性、水蒸気バリア性等のガスバリア性やハードコート性などの機械特性は、SiOやSi34などの単層膜に比べ優れる。
シリコン含有膜16は、好ましくは、SiO、SiNH、SiO等から構成される。
本実施形態においてはシリコン含有膜16の膜厚が0.3μmであり、窒素高濃度領域18がシリコン含有膜16の上面16aの近傍全体に亘って形成された例によって説明するが、窒素高濃度領域18がシリコン含有膜16の上面近傍の一部に形成されていてもよい。
また、シリコン含有膜16の膜全体に亘って窒素高濃度領域18が形成されていてもよい。この場合、シリコン含有膜16の組成は窒素高濃度領域18と同様なものとなる。
窒素高濃度領域18は、少なくとも珪素原子と窒素原子とからなるか、または少なくとも珪素原子と窒素原子と酸素原子とからなる。本実施形態において、窒素高濃度領域18は、Si、SiO等から構成される。
また、窒素高濃度領域18の、X線光電子分光法により測定した全原子に対する窒素原子の組成比は、下記式において0.1以上、1以下、好ましくは0.14以上、1以下の範囲にある。
式:窒素原子の組成比/(酸素原子の組成比+窒素原子の組成比)。
または、窒素高濃度領域18は、X線光電子分光法により測定した、全原子に対する窒素原子の組成比が、下記式において0.1以上、0.5以下、好ましくは0.1以上、0.4以下である。
式:窒素原子の組成比/(珪素原子の組成比+酸素原子の組成比+窒素原子の組成比)
このような組成の窒素高濃度領域18を有する積層体10は、酸素バリア性、水蒸気バリア性等のガスバリア性、耐擦傷性等の機械特性に特に優れる。つまり、このような組成の窒素高濃度領域18を有することにより、積層体10はバリア性向上と機械特性向上のバランスに優れる。
また、ガスバリア性を向上させる観点から、シリコン含有膜16における、X線光電子分光法により測定した全原子に対する窒素原子の組成比は、前記シリコン含有膜の上面16a側が他方の面側よりも高いことが好ましい。
なお、シリコン含有膜16と窒素高濃度領域18との間において徐々に原子組成が変化している。このように連続的に組成が変化しているので、バリア性が向上するとともに機械特性も向上する。
<耐湿熱性>
液晶ディスプレイのようなフラットパネルディスプレイ(FPD)や太陽電池用の部材(基板、バックシートなど)、電子ペーパーや有機エレクトロルミネッセント(有機EL)素子用のフレキシブル基板や封止膜などの分野において、耐湿熱性の評価が求められる。これは、どんな環境下でもガスバリア性能が劣化しないかどうか調べるため、またはガスバリア性能の保証寿命の加速試験として実施される。
耐湿熱性の評価方法としては、一般的に、60℃・相対湿度90%、または85℃・相対湿度85%において数百時間保持し、この後、ガスバリア性が初期よりも低下していないかどうか調べるものである。本実施形態の積層体は、湿熱試験(85℃、相対湿度85%雰囲気下で200時間放置)後、以下の条件(JIS K7129)で測定された水蒸気透過度が0.01g/m・day以下であり、高いガスバリア性を保持する。
シリコン含有膜16の膜厚:0.1μm
40℃、湿度90%。
本発明の積層体の水蒸気バリア性は、窒素高濃度領域の形成により発現する。このため、窒素高濃度領域の膜厚が0.01μm以上でさえあれば、理論的に0.01g/m・day以下の水蒸気バリア性が発現する。しかし、塗工技術の都合上、0.1μmの膜厚において、再現性良く安定した水蒸気バリア性が得られる。また、もちろんのこと、0.1μm以上の膜厚であればより高い水蒸気バリア性が発現する。
本実施形態のシリコン含有膜は、好ましくは、1.7以上の屈折率を有する。
<積層体の製造方法>
本実施形態の積層体10の製造方法は、以下の工程(a)、(b)および(c)を含む。以下、図面を用いて説明する。
(a)基材12上にポリシラザン含有液を塗布し、塗膜を形成する工程。
(b)塗膜を低酸素・低水分濃度雰囲気下において乾燥し、ポリシラザン膜14を形成する工程。
(c)ポリシラザン膜14に酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気下で波長150nm以下の光照射を行い、ポリシラザン膜14の少なくとも一部を変性し、窒素高濃度領域18を含むシリコン含有膜16を形成する工程(図1(a)、(b))。
[工程(a)]
工程(a)においては、基材12上にポリシラザンを含む塗膜を形成する。
塗膜を形成する方法としては特に限定されないが、湿式法で形成することが好ましく、具体的にはポリシラザン含有液を塗布する方法が挙げられる。
ポリシラザンとしては、ペルヒドロポリシラザン、オルガノポリシラザン、およびこれらの誘導体より選択される一種または二種以上組み合わせて用いることができる。誘導体としては、水素の一部又は全部がアルキル基等の有機基または酸素原子等で置換されたペルヒドロポリシラザンまたはオルガノポリシラザンを挙げることができる。
本実施形態においては、HSi(NHSiHNHSiHで示されるペルヒドロポリシラザンを用いることが好ましいが、水素の一部又は全部がアルキル基等の有機基で置換されたオルガノポリシラザンでもよい。また、単一の組成で用いても良いし、二成分以上を混合して使用してもかまわない。
ポリシラザン含有液には、ポリシラザンをセラミックス化する触媒として、金属カルボン酸塩を含んでいてよい。金属カルボン酸塩は、下記一般式で表される化合物である。
(RCOO)nM
式中、Rは炭素原子数1〜22個の脂肪族基又は脂環式基であり、Mは下記金属群から選択される少なくとも1種の金属を表し、nは金属Mの原子価である。
Mは、ニッケル、チタン、白金、ロジウム、コバルト、鉄、ルテニウム、オスミウム、パラジウム、イリジウム、アルミニウムの群から選択され、パラジウム(Pd)であることが特に好ましい。上記金属カルボン酸塩は無水物であっても水和物であってもよい。また、金属カルボン酸塩/ポリシラザン重量比は好ましくは0.001〜1.0、より好ましくは0.01〜0.5である。
また、別の触媒として、アセチルアセトナト錯体が挙げられる。金属を含むアセチルアセトナト錯体は、アセチルアセトン(2,4−ペンタジオン)から酸解離により生じた陰イオンacac−が金属原子に配位した錯体であり、下記一般式で表される。
(CHCOCHCOCH
式中、Mはn価の金属を表す。
Mは、ニッケル、チタン、白金、ロジウム、コバルト、鉄、ルテニウム、オスミウム、パラジウム、イリジウム、アルミニウムの群から選択され、パラジウム(Pd)であることが特に好ましい。アセチルアセトナト錯体/ポリシラザン重量比は、好ましくは0.001〜1、より好ましくは0.01〜0.5である。
さらに、別の触媒として、アミン化合物や、ピリジン類、DBU、DBN等及び/又は有機酸や無機酸などの酸化合物が挙げられる。
アミン化合物の代表例として、下記一般式で表されるものが挙げられる。

式中、R〜Rは、それぞれ水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基又はアルコキシ基を表す。アミン化合物の具体例として、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ジヘプチルアミン、トリヘプチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、フェニルアミン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、等が挙げられる。なお、これらアミン化合物に含まれる炭化水素鎖は、直鎖であっても分枝鎖であってもよい。特に好ましいアミン化合物は、トリエチルアミン、トリペンチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン及びトリオクチルアミンである。
ピリジン類の具体例としては、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、ピペリジン、ルチジン、ピリミジン、ピリダジン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)、等が挙げられる。
酸化合物の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、マレイン酸、ステアリン酸、等の有機酸、塩酸、硝酸、硫酸、過酸化水素、等の無機酸、等が挙げられる。特に好ましい酸化合物は、プロピオン酸、塩酸及び過酸化水素である。
前記のアミン化合物や、ピリジン類、DBU、DBN等、及び/又は有機酸や無機酸などの酸化合物のポリシラザンに対する添加量は、ポリシラザン重量に対して0.1ppm以上であり、好ましくは10ppm〜10%である。
ポリシラザン含有液は、金属の微粒子を含むことができる。好ましい金属はAgである。金属微粒子の粒径は0.5μmより小さいことが好ましく、0.1μm以下がより好ましく、さらには0.05μmより小さいことが好ましい。特に、粒径0.005〜0.01μmの独立分散超微粒子を高沸点アルコールに分散させたポリシラザン含有液が好ましい。金属微粒子の添加量はポリシラザン100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部である。
ポリシラザン含有液は、溶媒に、ポリシラザンおよび必要に応じて用いられる触媒や金属微粒子等が溶解または分散している。
溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン等の芳香族化合物;n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、n−ノナン、i−ノナン、n−デカン、i−デカン等の飽和炭化水素化合物;エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、p−メンタン、デカヒドロナフタレン、ジペンテン;ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、MTBE(メチルターシャリーブチルエーテル)、テトラヒドロキシフラン等のエーテル類;MIBK(メチルイソブチルケトン)等のケトン類、塩化メチレン、四塩化炭素等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし混合して用いてもよい。
ポリシラザン含有液を基材へ塗布する方法としては、公知の塗布方法が適用でき、特に限定されるものではないが、例えば、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ディップコート法等が挙げられる。
本実施形態の方法によれば、特許文献3に記載の方法のように、ポリシラザン膜を高温で焼成する必要がないため、基材自体が高温に曝されることがない。そのため、本実施形態のシリコン含有膜16を、精密性が要求される光学部材の表面に直接設けることができる。なお、シリコン含有膜16を基材12表面に形成し、その後、基材12から剥がして用いることもできる。
基材12として樹脂フィルムを用いた場合、ポリシラザン含有液を塗工する前に、樹脂フィルムの表面を紫外線オゾン処理、コロナ処理、アーク処理、または、プラズマ処理等の表面処理を施すこともできる。例えば、樹脂フィルムとしてポリオレフィンまたは環状オレフィンポリマーからなるフィルムを用いた場合、これらの表面処理により、ポリシラザン膜との密着性が向上する。
[工程(b)]
工程(b)においては、工程(a)で形成されたポリシラザンを含む塗膜を、低酸素・低水分濃度雰囲気下において乾燥し、ポリシラザン膜14を形成する。
工程(b)の乾燥処理は、酸素濃度が20%(200,000ppm)以下、好ましくは2%(20,000ppm)、さらに好ましくは0.5%(5,000ppm)以下の範囲であり、相対湿度が70%以下、好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下の範囲である、低酸素・低水分濃度雰囲気下で行われることが好ましい。なお、酸素濃度の数値範囲と、相対湿度の数値範囲とは適宜組み合わせることができる。
このような低水蒸気濃度雰囲気下において乾燥処理を行うことにより、ポリシラザン膜14が酸化珪素(シリカ)に変化するのを、より効果的に抑制することができ、シリコン含有膜16のガスバリア性および屈折率を効果的に制御することができる。
工程(b)の乾燥処理は、窒素、アルゴンガス等の不活性ガスが充満された、オーブン内において行うことができ、乾燥条件は、ポリシラザン膜14の膜厚によって異なるが、本実施形態においては50〜120℃で1〜10分間である。
前記の低酸素・水蒸気濃度雰囲気下の乾燥処理を行った場合、溶媒中の溶存酸素および水分により、シリコン含有膜に珪素原子と窒素原子と酸素原子とからなる窒素高濃度領域の形成に必要な酸素原子が導入される。X線光電子分光法を用いた元素組成比分析よる、シリコン含有膜における全原子に対する酸素原子割合は60atom%以下、好ましくは、0〜40atom%、さらに好ましくは0〜30atom%である。なお、シリコン含有膜16および窒素高濃度領域18が酸素原子を含まない場合、溶媒中の溶存酸素および水分を取り除くことが必要である。
[工程(c)]
工程(c)においては、ポリシラザン膜14に、酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気下で波長150nm以下の光照射を行い、ポリシラザン膜14の少なくとも一部を変性し、窒素高濃度領域18を含むシリコン含有膜16を形成する。波長150nm以下の光照射方法としては、プラズマ処理または紫外線処理を挙げることができ、これらを組み合わせて処理することもできる。
光照射の波長の範囲としては、150nm以下が好ましく、更に30〜150nmの範囲がより好ましい。理由は下記の(1)〜(2)の通りである。
(1)光照射10を行うポリシラザン膜14は、少なくともケイ素原子、窒素原子を含んだ膜であり、光照射によって形成される高濃度窒素領域18は、Si、Si、SiO等から構成される。非特許文献3に示されているように、非晶質SiOや非晶質Siの光吸収係数は、波長30〜150nm以下の領域では、非常に大きくなる事が知られており、ポリシラザン膜14の光吸収係数も非常に大きく、光の侵入が非常に浅くなり、変性する厚みも薄くなると考えられる。この波長領域の光照射は、光の侵入深さが小さい分、変性に関係する原子数が少なくなるため、変性に必要なる光の照射量が少なくて済む。即ち、高速処理に適している。一方、波長が30nm以下、及び150nm以上の光照射は、乾式堆積膜14への光の侵入深さが大きくなると考えられ、変性に関係する原子数が多くなるため、変性に必要なる光の照射量の増大を招き、好ましくない。
(2)光の波長が短いほど光の量子であるフォトンのエネルギーは増加する。150nm以下の高エネルギーのフォトン(8.2 eV以上)は、ポリシラザン膜14に吸収され励起状態を作り、種々の化学結合が切断された後、化学結合の再構成が起こる。この過程で、ポリシラザンのSi-H結合やN-H結合に由来するHが効率よく膜外に除去され、Si構造の元になる緻密なSi-N-Si結合が、高濃度窒素領域18により多く形成されると考えられる。即ち、高濃度窒素領域18は、高い水蒸気バリア性、高屈折率、耐湿熱性を示す。
工程(c)では、基材12上に形成されたポリシラザン膜14に波長150nm以下の光照射を主に行うため、光の侵入が比較的浅く、基材12の特性に対する影響が少ない。基材12として光学部材を用いた場合であっても、その精密性に対する影響が少ないので、光学用途に適した高屈折率膜として使用可能なシリコン含有膜16を製造することができる。さらに、このような工程を含む製造方法は、簡便な方法であり、生産性にも優れる。
前記、「酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気」とは、酸素および/または水蒸気が全く存在しないか、あるいは酸素濃度0.5%(5000ppm)以下、好ましくは、酸素濃度0.05%(500ppm)以下、さらに好ましくは、酸素濃度0.005%(50ppm)以下、さらに好ましくは、酸素濃度0.002%(20ppm)以下、さらに好ましくは、0.0002%(2ppm)以下であるか、相対湿度0.5%以下、好ましくは相対湿度0.2%以下、さらに好ましくは、相対湿度0.1%以下、さらに好ましくは、相対湿度0.05%以下である雰囲気をいう。また、水蒸気濃度(室温23℃における水蒸気分圧/大気圧)では、140ppm以下、さらに好ましくは56ppm、さらに好ましくは28ppm、さらに好ましくは14ppm以下である雰囲気をいう。
工程(C)においてプラズマ処理は、酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気で実施するために、装置内の圧力を真空ポンプを用いて大気圧(101325Pa)から圧力100Pa以下、好ましくは10Pa以下まで減圧した後、請求項記載のガスを導入することで実施される。
真空下における酸素濃度および水蒸気濃度は、一般的に、酸素分圧および水蒸気分圧で
評価される。 具体的には、酸素分圧10Pa以下(酸素濃度0.001%(10ppm))以下、好ましくは、酸素分圧2Pa以下(酸素濃度0.0002%(2ppm))以下、水蒸気濃度10ppm以下、好ましくは1ppm以下になるまで減圧した後、記載のガスを導入することで行われる。
(基材加熱)
また、工程(c)において、前記の波長150nm以下の光照射プラズマ処理または紫外線処理と同時に、ポリシラザン膜14が塗工された基材12の加熱処理を行うことで、より短時間で処理することができる。加熱処理温度としては、高ければ高いほど良いが、基材を考えると、好ましくは25℃〜1000℃、より好ましくは30℃〜500℃、更に好ましくは60℃〜300℃の範囲である。
以下、本発明で用いる波長150nm以下の光(VUV:真空紫外光)の照射方法であるプラズマ処理と紫外線処理について、以下に説明する
(プラズマ処理)
本発明で用いる波長150nm以下のVUV照射方法の1つであるプラズマ処理ついて以下に説明する。プラズマによって励起されたガス種はエネルギーを放出して失活するが、その際、ガス種の種類とそのガス圧に依存して、種々の波長のVUVを放出する。プラズマ処理は、大別して低圧プラズマ処理と大気圧近傍のプラズマ処理の2つの手法に分けられる。
(低圧プラズマ処理)
低圧プラズマ処理は、前記のように減圧によって酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気にした後、下記のガス種を装置内に導入することで行われる。低圧プラズマ処理では、低圧力のガス種雰囲気下のプラズマにより励起されたガス原子や分子が基底状態もしくは下の準位に落ちる際のVUV発光を利用する。(低圧プラズマで発生する真空紫外光の波長は、プラズマを発生させるガス種に依存する。波長は短い方が良く、波長が125nm以下の真空紫外の発光を利用した方がより好ましい。しかしながら、波長が短過ぎると、高いエネルギー準位に励起される頻度は低くなるため発光強度は著しく減少する。実質的に低圧プラズマ処理で利用できる比較的高強度の真空紫外光の波長は、50nm以上となる。即ち、低圧プラズマ処理で利用する光の波長として50〜125nmの範囲がより好ましい。
低圧プラズマ処理の好ましい条件については、次の(1−1)〜(1−5)に示す通りである。
(1−1) 圧力範囲
この種の発光は、励起の原子が発したVUV光が、別の基底状態の原子に吸収され、その原子の励起に使われる自己吸収の影響がある。そのため、あまり圧力が高いと発生したVUVは雰囲気ガスの原子や分子に吸収され、ポリシラザン膜14に効率よく照射されない。概ね、100Pa以下の低圧が好ましい。一方、圧力あまり低圧過ぎると、プラズマの発生が困難になる。圧力の下限はプラズマの発生方式により異なるが、概ね0.1Pa以上が好ましい。
(1−2) ガス種
本発明で用いる波長150nm以下のVUVを発する低圧プラズマのガス種は、主としてHe、Ne、Arから選ばれる1種以上の希ガスが用いられる。これらの希ガス原子の発する主要なVUVの波長は、Heの場合で58.4nm、Neの場合で73.6nm及び74.4nm、Arの場合で104.8nm及び106.7nmである事が知られている。
また、これらの希ガス原子のプラズマは、プラズマによる励起によってVUVを発するだけでなく、発光しない準安定な励起状態の原子を多量に形成する。この準安定な励起状態の原子が持つエネルギーを有効利用するために、希ガスにH2、N2から選ばれる1種以上のガスを添加しても良い。希ガス中に特定の比率で前記のガスが添加されると、準安定な励起状態の希ガス原子の持つ励起エネルギーが効率よく添加ガスの励起に使われるため、希ガス原子のVUV発光に、添加ガスのVUV発光も加わり、波長150nm以下のVUVの照射強度を増すことができる。添加ガスは、解離・励起された原子がVUVを発する場合と、励起された分子がVUVを発する場合があるが、分子の発光はバンド状になっており、その中心波長は原子の発光波長より長い。ポリシラザン膜14の変性には、波長の短い原子の発光のほうが重要となる。励起されたH原子の発する主要な真空紫外光の波長は121.5nm、励起されたN原子の場合は120nmである事が知られている。添加ガス種としては、準安定な励起状態を持たないH2がより好ましい。
好ましいガス種は、He、Ne、HeとH2の混合ガス、NeとH2の混合ガス、ArとH2の混合ガスである。
添加ガスの比率は、0.1〜20%の範囲である。0.1%以下では、添加ガスの効果が顕著に現れず、20%以上では、添加カガスの影響でプラズマ密度の減少が顕著に現れ、添加ガスの励起に使われる準安定な励起状態の希ガス原子の密度も減るためである。好ましくは0.5〜10%の範囲である。
(1−3) 電源周波数
本発明で用いる波長150nm以下のVUVを発する低圧プラズマの生成に必要な電源の周波数は、1MHz〜100GHzが好ましい。1MHz未満の周波数では、プラズマ中の電子だけでなくイオンまで電界の変化に追従できてしまうため、プラズマ生成反応に直接寄与する電子に効率よくエネルギーを与える事ができない。一方、1MHz以上の周波数では、電界の変化にイオンは追従できなくなるため、電子に効率よくエネルギーを与える事ができ、電子密度、すなわちプラズマ密度は高くなる。これに伴い、プラズマで発生するVUVの強度も強くなる。しかし、100GHzを超えると電子が電界の変化に追従しにくくなり、エネルギーの伝達効率が悪くなる。好ましくは、4MHz〜10GHzの範囲である。
(1−4) プラズマ生成方式
本発明で用いる波長150nm以下のVUVを発するプラズマの生成方式は、従来から知られた方式を用いる事ができる。好ましくは、幅広の基材12に形成したポリシラザン膜14の処理に対応できる方式が良く、例えば、次に示す(A)〜(E)の方式が挙げられる。
(A)容量結合プラズマ(CCP)
高周波電力を印加した側の電極と接地側の電極との間にプラズマを生成する方式。対向した平板電極が代表的な電極構造である。高周波電力を印加した側の電極は、平板状だけでなく、例えば特許文献4に開示されているような凹凸形状を備えていても良い。平板電極上に凹凸形状を備えることで、突起部での電界集中やホローカソードの効果により、プラズマ密度を増加させる事ができ、プラズマで発生する150nm以下のVUVの強度も強くなる。
(B)誘導結合プラズマ(ICP)
アンテナコイルに高周波電流を流し、コイルが作る磁場による誘導電界でプラズマを生成する方式で、一般に容量結合プラズマに比べ高い電子密度(プラズマ密度)が得られるとされる。誘電体窓を介してアンテナコイルをチャンバの外に置く外部アンテナ型、アンテナコイルをチャンバ内に設置する内部アンテナ型のどちらを採用してもよい。また、幅広の基材に対応するため、アンテナコイルをアレイ状に配置する等の工夫をしても良い。
上記のような装置構成では、投入電力を上昇させていくと、コイルアンテナとの静電的な結合による放電(Eモードと呼ばれる)から誘導結合による放電(Hモードと呼ばれる)に移行する。場合によっては、モードジャンプ現象としてプラズマ密度急激に増加する現状が観測される事がある。ポリシラザン膜14を処理する際には、Hモードのプラズマになるように、十分な電力を投入する必要がある。
(C)表面波プラズマ
(D)電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマ
(E)ヘリコン波プラズマ
(1−5)投入電力密度
ポリシラザン膜14にと対向したプラズマへの投入電力の大きさの指標として、プラズマの大きさを反映するプラズマ源の占める面積で規格化した投入電力密度を定義する。これは、単位面積あたりのポリシラザン膜14に照射されるVUVの照射強度に相関するパラメータとなる。特に、容量結合プラズマのような有電極プラズマの場合、高周波を印加する側の電極面積が、実質的にプラズマの大きさを規定しており、これをプラズマ源の占める面積とする。
投入電力密度は、0.1〜20W/cm2が好ましい。より好ましくは0.3〜10W/cm2以上である。投入電力密度が0.1W/cm2以下では十分な強度のVUV照射ができず、20W/cm2以上では、基材12の温度上処理による熱変形、プラズマの不均一化、電極などのプラズマ源を構成する部材の損傷などの悪影響がある。
(大気圧近傍のプラズマ処理)
大気圧近傍のプラズマ処理では、前記のように減圧によって酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気にした後、低圧プラズマと異なり、大気圧近傍まで装置内のガス種圧力を上げた雰囲気下で行う。低圧プラズマと異なり、圧力が高いために、プラズマで励起された原子や分子が基底状態もしくは下の準位に落ちる際の真空紫外の発光は、自己吸収の影響が非常に大きく、乾式堆積膜14の変性に有効に利用する事ができない。大気圧近傍のプラズマ処理では、エキシマの発光を利用する。現実的に利用可能なエキシマの発光としては、Arガスを用いたプラズマによって形成されるArエキシマの発光が最も波長が短く、中心波長が126nmの光になる。より波長の短い真空紫外光が利用できるという点では、プラズマ処理方法としては低圧プラズマ処理の方が好ましい。
大気圧近傍のプラズマ処理の好ましい条件については、次の(2−1)〜(2−5)に示す通りである。
(2−1) ガス種
大気圧近傍のプラズマプロセスで利用できるガス種のうち、150nm以下のエキシマ光を出せるのは、Arガスである。Arエキシマは、中心波長126nmのVUV光を発する事ができる。尚、Arエキシマ(Ar )は、プラズマで形成された準安定状態のAr原子(Ar)をもとに、次式で表される3体衝突反応で生じるとされている。
Ar + Ar + Ar → Ar + Ar
そのため、Ar以外の不純物ガスの比率は、プラズマ密度や上記の反応に影響しない程度に少ない方が良い。不純物濃度は1%以下がよく、より好ましくは0.5%以下である。
(2−2) 圧力範囲
大気圧近傍とは、1〜110kPaの圧力を指し、大気に開放して使用できるほか、密閉容器の中で使用し、大気圧に比べ、僅かに減圧にする場合や、僅かに加圧状態にする場合にも使用可能であるという意味である。僅かに減圧にした方が、放電し易くなるため、プラズマによる準安定状態のAr原子(Ar)の形成は容易になるものの、減圧にし過ぎるとAr密度が減少し、Arエキシマ(Ar )の形成反応である3体衝突反応が起こる頻度が減る。ArエキシマによるVUV発光の強度を増すためには、密閉容器と簡便な減圧装置を利用し、10〜90kPaの範囲がより好ましい。また、このような範囲の減圧にすれば、処理に使用するガス量を削減できる上、酸素や水などの阻害成分の量を低下させることができる。
(2−3) プラズマ形成方式
本発明で用いるArエキシマを発するプラズマの生成方式は、従来から知られた大気圧近傍でプラズマを生成できる方式を用いる事ができる。好ましくは、プラズマで形成されたArとArから生じたArエキシマ(Ar )のVUV発光を直接ポリシラザン膜14に照射する事ができる方式が良く、さらには、幅広の基材12に形成したポリシラザン膜14の処理に対応できる方式が良い。例えば、少なくとも一方の電極表面に誘電体を配した電極間にポリシラザン膜14付き基材12を配置し、そこへガスを通し、電極間に交流電力を印加し、放電プラズマを形成する誘電体バリア放電を使ったダイレクト処理方式を用いる事ができる。
(2−4) 電源周波数
電源周波数は、50Hz〜1GHzの範囲が好ましい。低圧プラズマ処理とは、動作させる圧力範囲がことなるため、使用する電源周波数帯も異なる。50Hz以下では、プラズマで形成される準安定状態のAr原子が少なく、高い照射高度のArエキシマ光が得られない。また、1GHz以上ではプラズマのガス温度が高くなるため、基材12に熱的な損傷を与える。好ましくは、1kHz〜100MHzの範囲である。
(2−5) 放電電力密度
投入電力密度は、0.1〜20W/cm2が好ましい。より好ましくは0.3〜10W/cm2以上である。投入電力密度が0.1W/cm2以下では十分な強度のVUV照射ができず、100W/cm2以上では、基材12の温度上処理による熱変形、プラズマの不均一化、電極などのプラズマ源を構成する部材の損傷などの悪影響がある。
(紫外線処理)
紫外線処理は、前記のように減圧によって酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気下、もしくは不活性ガスまたは希ガスまたは還元ガス雰囲気中にて行うことができる。上記雰囲気において酸素濃度0.5%(5000ppm)以下、好ましくは0.1%(1000ppm)以下、相対湿度0.5%以下、好ましくは0.1%以下の低酸素・低水蒸気濃度雰囲気下において行うことができる。
上記条件を満たさない雰囲気下で紫外線処理を行った場合、窒素高濃度領域18は形成されず、酸化珪素(シリカ)やシラノール基が生成するため、十分な水蒸気バリア性が得られない場合がある。
上記条件を満たさない雰囲気で紫外線処理を行った場合、1.45程度の低屈折率の酸化珪素(シリカ)が多量に生成するため、所望の屈折率を有するシリコン含有膜が得られない場合がある。 本実施形態のシリコン含有膜16の屈折率は、紫外線照射における、露光量、処理時間を変えることによって、1.71.55〜2.1の範囲で任意に制御することが可能である。
本発明に用いる波長150nm以下のVUVを照射する紫外線処理方法としては、ArエキシマランプによるVUV照射があげられる。Arエキシマランプでは、窓材を介して中心波長が126nmのArエキシマ光を外部に取り出し、ポリシラザン膜14に照射する事になる。ArエキシマランプによるVUV照射では、窓材の光吸収によるArエキシマ光の強度の減少やArエキシマ光による窓材の劣化等の問題が残されている。一方、プラズマ処理は、プラズマで発生した波長150nm以下のVUVをポリシラザン膜14に直接照射する事ができ、前記のような問題は生じない。そのため、波長150nm以下のVUVによる処理方法としては、プラズマ処理の方が好ましい。
以上の工程を行うことにより、本実施形態の積層体10を製造することができる。なお、本実施形態においては、シリコン含有膜16に対しさらに以下の処理を行ってもよい。
プラズマ処理または紫外線処理により変性されたシリコン含有膜16に対し、さらに活性エネルギー線照射または加熱処理を施すことで、シリコン含有膜16における窒素高濃度領域18を増加させることができる。
活性エネルギー線としては、マイクロ波、赤外線、紫外線、電子線などが挙げられ、好ましくは赤外線、紫外線、電子線である。
紫外線の発生方法としては、前記と同様、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、エキシマランプ、UV光レーザー、等を使用する方法が挙げられる。
赤外線の発生方法としては、例えば、赤外線ラジエタや赤外線セラミクスヒータを使用する方法が挙げられる。また、赤外線ラジエタを使用する場合には、赤外線の使用波長に応じて、波長1.3μmに強度ピークを有する近赤外線ラジエタ、波長2.5μmに強度ピークを有する中赤外線ラジエタ、波長4.5μmに強度ピークを有する遠赤外線ラジエタを使用することができる。
活性エネルギー線の照射には、スペクトルが単一である赤外レーザーを使用することが好ましい。赤外レーザーの具体例として、HF、DF、HCl、DCl、HBr、DBrなどの気体化学レーザー、CO気体レーザー、NO気体レーザー、CO気体レーザー励起遠赤外レーザー(NH、CF、等)、Pb(Cd)S、PbS(Se)、Pb(Sn)Te、Pb(Sn)Se、等の化合物半導体レーザー(照射波長2.5〜20μm)、が挙げられる。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
たとえば、シリコン含有膜16の上面16a近傍の一部に窒素高濃度領域18を有していてもよく、シリコン含有膜16の膜全体が窒素高濃度領域18となっていてもよい。
また、図2の積層体10aのように、シリコン含有膜16の上面16a上に蒸着膜20を備えていてもよい。さらに別の態様として、図3に示す積層体10bのように、基材12とシリコン含有膜16との間に、蒸着膜20を備えていてもよい。
蒸着膜20は、物理的蒸着法(PVD法)および化学的蒸着法(CVD法)の内の少なくとも一つの蒸着法により得られる。
本実施形態の窒素高濃度領域18を有するシリコン含有膜16の表面は熱安定性および平滑性に優れるので、蒸着膜20の作製時に問題となる基材表面の凹凸や熱伸縮の影響が小さく、緻密な蒸着膜20を形成することができる。
また、樹脂フィルム(基材12)と窒素高濃度領域18を有するシリコン含有膜16との間に蒸着膜20を形成させた場合、シリコン含有膜16が蒸着膜20のピンホールなどの欠陥部位を補填することができるので、本実施形態のシリコン含有膜16もしくは蒸着膜20単体よりもさらに高いガスバリア性を発現することができる。
本実施形態において用いられる蒸着膜20は、無機化合物からなる。具体的には、Si、Ta、Nb、Al、In、W、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、Ca、Na、B、Pb、Mg、P、Ba、Ge、Li、K、Zrから選ばれる1種以上の金属の酸化物または窒化物または酸化窒化物を主成分として含む。
蒸着膜層の形成方法は、物理的蒸着法(PVD法)、低温プラズマ気相成長法(CVD法)、イオンプレーティング、スパッタリングなどの手段で実現される。蒸着膜20の好ましい膜厚としては、1〜1000nmの範囲内、特に10〜100nmの範囲内であることが好ましい。
上述した本実施形態の方法によって形成されるシリコン含有膜16は、窒素高濃度領域18を有する。窒素高濃度領域18は高屈折率を有し、その屈折率が1.55以上、好ましくは1.55〜2.1、さらに好ましくは1.58〜2.1である。本実施形態のシリコン含有膜は、膜全体が窒素高濃度領域18により構成されているので、シリコン含有膜16の屈折率が上記範囲にある。
本実施形態のシリコン含有膜16は、高屈折率を有し、さらに比較的薄いコート膜厚でも十分な耐擦傷性が発現する。さらに、透明性、基材との密着性にも優れる。
したがって、本実施形態のシリコン含有膜16は、例えばワープロ、コンピュータ、テレビなどの各種ディスプレイ、液晶表示装置に用いる偏光板、透明なプラスチック類からなるサングラスのレンズ、度付きメガネのレンズ、コンタクトレンズ、フォトクロレンズ、カメラ用ファインダーのレンズなどの光学レンズ、各種計器のカバー、自動車、電車などの窓ガラス等の光学部材の表面に形成されるハードコート材、電子ペーパーのガスバリアフィルム、タッチパネルの表面保護層、反射防止用コート材としても好適に使用できる。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
尚、実施例に用いたプラズマ処理装置の概略は下記の通りである。
(1)低圧容量結合プラズマ処理装置(ユーテック株式会社製)
SUS製の真空容器を用いた平行平板電極タイプの低圧容量結合プラズマ処理装置。一方は整合器を介して高周波電源に接続され、もう一方は接地されている。電極間隔は70mmとした。ポリシラザン膜は、接地されている電極側に設置して処理を行った。また、高周波電源側の対向している電極面の面積をプラズマ源の面積として投入電力密度を求めた。尚、電極は液体を流して温調する事ができ、ポリシラザン膜の基材を加熱する事ができる。
(2)低圧誘導結合プラズマ処理装置
SUS製の筒型の真空容器に石英製の誘電体窓を介してシングルループのアンテナコイル設置した外部アンテナ方式の低圧誘導結合プラズマ処理装置。真空容器の上面全部が、誘導結合プラズマ源となっている。そのため、真空容器の内径からプラズマ源の面積を算出し、投入電力密度を求めた。アンテナコイルの一方は、整合器を介して高周波電源に接続され、もう一方は接地されている。ポリシラザン膜は、誘電体窓より200mm離した試料台上に設置した。
(3)誘電体バリア放電型プラズマ処理装置
ガラス製の真空容器に、ガラスで被覆された平行平板電極タイプの誘電体バリア放電型プラズマ処理装置。一方はインパルス型の高圧電源に接続され、もう一方は接地されている。電極間隔は5mmとした。ポリシラザン膜は、接地されている電極側に設置して処理を行った。また、高圧電源側の対向している電極面の面積をプラズマ源の面積として投入電力密度を求めた。
<実施例1>
PETフィルム(厚さ50μm、「A4100」、東洋紡績株式会社製)に、ポリシラザン(NL110A、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)の5wt%キシレン(脱水)溶液をバーコートし、窒素流気もしくはドライ空気下で80℃で10分間乾燥して厚さ0.3μmのポリシラザン膜を作製した。
このポリシラザン膜に下記条件にて低圧プラズマ処理を施した。
プラズマ処理装置:低圧容量結合プラズマ処理装置(ユーテック株式会社製)
ガス:He
圧力:19Pa
基材加熱温度:室温
投入電力密度:1.3W/cm
周波数:13.56MHz
処理時間: 60秒
<実施例2>
実施例1と同様に作製したポリシラザン膜に下記条件にて低圧プラズマ処理を施した。
プラズマ処理装置:低圧容量結合プラズマ処理装置(ユーテック株式会社製)
ガス:Ar+H(H濃度:6 vol%)
全圧力:19Pa
基材加熱温度:室温
投入電力密度:1.3W/cm
周波数:13.56MHz
処理時間: 60秒
<実施例3>
実施例1と同様に作製したポリシラザン膜に下記条件にて低圧プラズマ処理を施した。
プラズマ処理装置:低圧容量結合プラズマ処理装置(ユーテック株式会社製)
ガス:He+H(H濃度:6 vol%)
全圧力:19Pa
基材加熱温度:室温
投入電力密度:1.3W/cm
周波数:13.56MHz
処理時間: 60秒
<実施例4>
実施例1と同様に作製したポリシラザン膜に下記条件にて低圧プラズマ処理を施した。
プラズマ処理装置:低圧容量結合プラズマ処理装置(ユーテック株式会社製)
ガス:He
圧力:19Pa
基材加熱温度:80℃
投入電力密度:1.3W/cm
周波数:13.56MHz
処理時間: 30秒
<実施例5>
実施例1と同様に作製したポリシラザン膜に下記条件にて低圧プラズマ処理を施した。
プラズマ処理装置:低圧容量結合プラズマ処理装置(ユーテック株式会社製)
ガス:Ar+H(H濃度:6 vol%)
全圧力:19Pa
基材加熱温度:80℃
投入電力密度:1.3W/cm
周波数:13.56MHz
処理時間: 30秒
<実施例6>
実施例1と同様に作製したポリシラザン膜に下記条件にて低圧プラズマ処理を施した。
プラズマ処理装置:低圧誘導結合プラズマ処理装置(自作)
ガス:Ar
圧力:5Pa
基材加熱温度:室温
投入電力密度: 2W/cm (1000W、プラズマ源の面積Φ250mm)
周波数: 13.56MHz
処理時間: 20秒
<実施例7>
実施例1と同様に作製したポリシラザン膜に下記条件にて大気圧近傍のプラズマ処理を施した。
プラズマ処理装置:誘電体バリア放電型プラズマ処理装置(自作)
ガス:Ar
圧力:50kPa
基材加熱温度:室温
投入電力密度:0.4W/cm
周波数:10kHz
処理時間: 600秒
<実施例8>
シリコン基板(厚さ530μm、信越化学工業株式会社製)に、ポリシラザン(NL110A、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)の2wt%キシレン(脱水)溶液をスピンコート(10s、3000rpm)し、実施例1と同様の条件にて乾燥して厚さ0.025μmのポリシラザン膜を作製した。
続いて、実施例1と同様の条件にて低圧プラズマ処理を施した。
<実施例9>
シリコン基板(厚さ530μm、信越化学工業株式会社製)に、ポリシラザン(NL110A、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)の2wt%キシレン(脱水)溶液をスピンコート(10s、3000rpm)し、実施例1と同様の条件にて乾燥して厚さ0.025μmのポリシラザン膜を作製した。
続いて、実施例2と同様の条件にて低圧プラズマ処理を施した。
<実施例10>
シリコン基板(厚さ530μm、信越化学工業株式会社製)に、ポリシラザン(NL110A、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)の2wt%キシレン(脱水)溶液をスピンコート(10s、3000rpm)し、実施例1と同様の条件にて乾燥して厚さ0.025μmのポリシラザン膜を作製した。
続いて、実施例3と同様の条件にて低圧プラズマ処理を施した。
<実施例11>
シリコン基板(厚さ530μm、信越化学工業株式会社製)に、ポリシラザン(NL110A、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)の2wt%キシレン(脱水)溶液をスピンコート(10s、3000rpm)し、実施例1と同様の条件にて乾燥して厚さ0.025μmのポリシラザン膜を作製した。
続いて、実施例6と同様の条件にて低圧プラズマ処理を施した。
<実施例12>
シリコン基板(厚さ530μm、信越化学工業株式会社製)に、ポリシラザン(NL110A、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)の2wt%キシレン(脱水)溶液をスピンコート(10s、3000rpm)し、実施例1と同様の条件にて乾燥して厚さ0.025μmのポリシラザン膜を作製した。
続いて、実施例7と同様の条件にて大気圧近傍のプラズマ処理を施した。
<膜構造解析・元素組成比の測定>
X線光電子分光(XPS)装置(「ESCALAB220iXL」,VG社製)を用い、膜深さ方向の膜構成元素の組成比を測定した。(X線源 Al−Kα、アルゴンスパッタ SiO換算0.05nm/スパッタ秒)
<水蒸気透過率測定>
40℃90%RH雰囲気下で、等圧法-赤外線センサー法を用いた水蒸気透過度測定装置(「PERMATRAN3 /31」、MOCON社製)を用いて測定した。本装置の検出下限値は、0.01g/m/dayである。
<耐湿熱性試験>
恒温恒湿機を用い、温度・湿度が85℃、85%RHの条件下において、200時間放置した後、前記の方法にて水蒸気透過率を測定し、試験前後で水蒸気バリア性が維持されているかどうか評価した。
<酸素透過率測定>
23℃90%RH雰囲気下で、等圧法-電解電極法を用いた酸素透過度測定装置(「OX−TRAN2/21」、MOCON社製)を用いて測定した。本装置の検出下限値は、0.01cc/m/day,atmである。
<屈折率測定>
エリプソメーター(日本分光(株)製)を用い、光波長590nm、入射角40−50度において、膜の屈折率の測定を行った。
実施例1の膜において、図1のようにX線光電子分光(XPS)法により、膜深さ方向の膜構成元素の組成比を測定した所、膜表層から深さ約50nm(0.05μm)においては、Si、O、Nから成る窒素高濃度領域の層が形成されていることが分かった。
前記の膜におけるXPSによる膜深さ約15nmにおける元素組成比より求めた、酸素原子と窒素原子との割合[N/(O+N)比]、珪素原子と酸素原子と窒素原子との割合[N/(Si+O+N)比]を表1に示す。表1のように実施例1〜3、6、7のN/(O+N)比は0.5以上となり、またN/(Si+O+N)比は0.28以上となった。
実施例1〜3の光波長150nm以下の発光を伴うプラズマ照射によって、表2のように高い酸素・水蒸気バリア性が発現することが分かり、また湿熱試験後も高い水蒸気バリア性を維持した。
実施例4、5のように、プラズマ照射時に加熱を加えることで、表2のように、より短時間で高い酸素・水蒸気バリア性および耐湿熱性が発現した。
実施例6のICP方式によるプラズマ照射によって、表2のように、より短時間で高い酸素・水蒸気バリア性および耐湿熱性が発現した。
実施例7の大気圧近傍のプラズマ処理によるアルゴンエキシマー(発光の中心波長:126 nm)を照射しても、表2のように高い酸素・水蒸気バリア性が発現することが分かり、また湿熱試験後も高い水蒸気バリア性を維持した。
表3に記載のように、実施例1〜7は、屈折率が1.7以上になり高屈折率を示した。

Claims (9)

  1. 基材と、前記基材上に形成されたシリコン含有膜と、を備える積層体を製造する方法であり、
    前記基材上にポリシラザン含有液を塗布し塗膜を形成する工程と、
    前記塗膜を乾燥し、ポリシラザン膜を形成する工程と、
    酸素0.5%以下または水蒸気140ppm以下の雰囲気下で前記ポリシラザン膜に波長150nm以下の光照射を行い、当該ポリシラザン膜の少なくとも一部を変性し、珪素原子と窒素原子と酸素原子とを含む窒素高濃度領域を含むシリコン含有膜を形成する工程と、
    を含み、
    以下の(a)または(b)のいずれかを満たす、積層体の製造方法。
    (a)前記波長150nm以下の光照射が、ヘリウム、ネオン、アルゴン、アルゴンと水素の混合ガス、ヘリウムと水素の混合ガス、ネオンと水素の混合ガス、アルゴンと窒素の混合ガス、ヘリウムと窒素の混合ガス、およびネオンと窒素の混合ガスから選ばれる雰囲気ガスの存在下、かつ5Pa以上100Pa以下の圧力雰囲気下でプラズマ処理することによって行われる
    (b)前記波長150nm以下の光照射が、アルゴンエキシマー発光より得られ、前記アルゴンエキシマー発光が、アルゴン雰囲気中1kPa以上110kPa以下の圧力下でのプラズマ処理で行われる
  2. 前記波長150nm以下の光照射が、単位面積あたりに印加される電力を0.1〜20W/cmの範囲として行われる、請求項1に記載の積層体の製造方法。
  3. 前記窒素高濃度領域は、X線光電子分光法により測定した、下記式で表される珪素原子、酸素原子および窒素原子の総和に対する窒素原子の組成比が、0.1以上、0.5以下の範囲である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
    式:[窒素原子の組成比/(珪素原子の組成比+酸素原子の組成比+窒素原子の組成比)]
  4. 前記シリコン含有膜は、屈折率が1.7以上である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
  5. 前記窒素高濃度領域は、前記シリコン含有膜の全面に亘って形成されている、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
  6. 前記窒素高濃度領域は、0.001μm以上0.2μm以下の厚みを有する、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
  7. 前記シリコン含有膜における、X線光電子分光法により測定した全原子に対する窒素原子の組成比は、前記シリコン含有膜の上面側が他方の面側よりも高い、請求項1に記載の積層体の製造方法。
  8. 湿熱試験(85℃、85%RH、200時間)後、JIS K7129において測定された前記シリコン含有膜の膜厚0.1〜0.3μm、40℃、湿度90%における水蒸気透過度が0.01g/m・day以下である、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
  9. 前記ポリシラザン膜は、ペルヒドロポリシラザン、オルガノポリシラザン、およびこれらの誘導体よりなる群から選択される1種以上である、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
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