JP5794906B2 - 被削性に優れた銅合金材 - Google Patents

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Description

この発明は、電子機器、精密機械等に使用される金属部品、特に切削加工により製造される銅合金部品に適する銅合金材およびその製造方法に関するものである。
金属部品を製造する方法として旋削、穿孔などの切削加工がある。切削加工は、特に複雑な形状を持つ部品や高い寸法精度を要する部品の製造には有効な加工方法である。切削加工を行う場合、被削性がしばし問題となる。被削性には切削屑処理、工具寿命、切削抵抗、切削面粗さなどの項目があり、これらが向上するように材料に改良が施されている。
銅合金は、強度が高い、導電性・熱伝導性に優れる、耐食性に優れる、色調に優れるなどの理由から多くの金属部品に使用されている。切削による加工も多く実施されており、例えば水道の蛇口、バルブ、歯車、装飾品などの用途があり、黄銅(Cu−Zn系)、青銅(Cu−Sn系)、アルミ青銅(Cu−Al系)、洋白(Cu−Zn−Ni系)に被削性を向上させるために鉛を添加した合金が使用されている(特許文献1〜4)。
このように銅合金材の被削性を向上させるために、一般的には鉛が添加されている。これは、鉛が銅合金に固溶しないため材料内に微細に分散し、切削加工時に切削屑がその部分で分断されやすくなることによる。しかし、鉛は人体や環境に影響を及ぼすとされていることから使用が制限されつつあり、鉛を含有せずに被削性を向上させた材料の要求が高まっている。鉛を含有する銅合金の代替材料として、黄銅や青銅にビスマスを添加した銅合金(特許文献5,6)が知られている。
また黄銅では、亜鉛量を向上させることで、銅−亜鉛系化合物であるβ相γ相を形成させ、あるいはケイ素を添加して銅−亜鉛−ケイ素系化合物であるκ相を形成させ、これらの化合物を切削屑分断の起点として作用させることで被削性を向上させている(特許文献7)。亜鉛量を向上させ形成させる銅−亜鉛系化合物のうち、特にγ相を形成させる技術としては、Snを添加する事により、α、β、γの3相にする技術等が知られている(特許文献8〜11)。
特開昭60−056036号公報 特開昭58−113336号公報 特開昭51−101716号公報 特開平01−177327号公報 特開2001−059123号公報 特開2000−336442号公報 特開2004−183056号公報 特開2000−319737号公報 特開平11−131159号公報 特開2002−12928公報 特許第3303301号公報 特開2001−11551公報
しかし、各特許文献に記載された技術は、以下の問題点を有する。
特許文献1〜4の各技術では、前述のとおり被削性を向上させるための添加元素として鉛を用いており、環境への負荷が懸念される。また、特許文献5および6の技術では、ビスマスを添加すると被削性は改善されるが、加工中に割れやすくなり、特に熱間加工が困難となる。すなわち、熱間加工性の改善を図ることが改めて必要となる。
特許文献7では、銅−亜鉛−ケイ素系化合物のκ相は被削性を向上させるが、熱間加工性、冷間加工性を劣化させ、板形状等への加工は困難である。
特許文献8〜11では、銅-亜鉛-錫系の合金において、β相およびγ相の分散により被削性を向上させるが、α相との共存により冷間加工性を担保するため、被削性を犠牲にしており、更なる被削性の向上の要求がある。
上述のように被削性を向上させようとした銅合金の発明では、有害元素を含有する、被削性がまだ不十分である、板形状等への加工には展伸性が不十分であるといった問題がある。歯車、時計地板等の精密機械用の金属部品には、板の形状の金属素材からプレス加工後切削加工を施す、などの工程にて作成されるため、板形状への加工が可能な銅合金材料が求められる。またICソケットのピン等への用途では、細径の棒材からの切削にて製造される為、細径の棒材への加工が必要である。しかしながら、被削性と展伸性の両立は不十分であるため、いまだに鉛を含有させた被削黄銅が使用されているのが現状であり、環境および人体への影響から鉛を含有せずに被削性を向上させ、かつ展伸性に優れたCu−Zn板の開発が望まれている。
このような問題に鑑み本発明はなされたもので、被削性に優れる銅合金素材でありながら、板形状や、細径の棒形状への加工が可能であり、環境負荷を軽減するCu−Zn合金材を提供することを課題とするものである。
本発明者らは鋭意検討した結果、Cu−Zn系合金において、Zn量を向上させ、合金中の組織をβ相とγ相の2相組織とし、β相の粒界上のγ相がβ相粒界を包括する割合を制御し、β相粒界上のγ相の厚さを制御し、また、β相粒内のγ相の分散を制御することによって、被削性に優れるCu−Zn系合金を見出した。
すなわち、本発明は、以下の解決手段を提供するものである。
(1)Znを48〜54mass%含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅合金材であって、γ相がβ相の粒界上にβ相の周囲を覆うように形成されており、β相の全粒界長さにおいてγ相が包括している割合を断面で評価したとき、その粒界包括率が60%以上であり、γ相の厚さの平均値のβ相の平均粒径に対する比が、0.5%以上、10%以下であることを特徴とする、被削性に優れた銅合金材。
(2)β相の粒内にγ相が分散しており、β相粒内にあるγ相の数密度が250個/mm以上、1000個/mm未満であることを特徴とする、(1)に記載の被削性に優れた銅合金材。
(3)形状が板材である(1)または(2)に記載の銅合金材。
(4)β単相にする熱処理を600℃以上840℃以下で10〜120分行った後、γ相を分散させる熱処理を300℃以上600℃未満で10〜600分行う処理を含む(1)〜(3)のいずれか1項に記載の銅合金材の製造方法。
(5)β単相にする熱処理を600℃以上840℃以下で10〜120分行った後、γ相をβ相の粒界に覆うように形成させる500℃以上600℃未満で10〜120分行う熱処理と、γ相をβ相の粒内に形成させる300℃以上500℃未満で120〜600分行う熱処理とを、任意の順番で実施する処理を含む(1)〜(3)のいずれか1項に記載の銅合金材の製造方法。
(6)β単相にする熱処理の前に熱間加工の工程を含み、熱間加工前の材料加熱を600℃以上840℃以下で実施し、熱間加工を470℃以上で終了する製造工程を含む(4)または(5)に記載の製造方法。
(7)前記熱間加工が熱間圧延であり、熱間圧延前の材料加熱を600℃以上840℃以下で実施し、熱間圧延を470℃以上で終了する製造工程を含む(6)に記載の製造方法。
(8)前記熱間加工が熱間押出であり、熱間押出前の材料加熱を600℃以上840℃以下で実施し、熱間押出を470℃以上で終了する製造工程を含む(6)に記載の製造方法。
(9)熱間加工の工程を含み、熱間加工前の材料加熱を600℃以上840℃未満で実施し、熱間加工を600℃以上で終了し急冷する工程で熱間加工と同時にβ単相にした後に、γ相を分散させる熱処理を300℃以上600℃未満で10〜600分行う処理を含む製造工程を含む(1)〜(3)のいずれか1項に記載の銅合金材の製造方法。
(10)熱間加工の工程を含み、熱間加工前の材料加熱を600℃以上840℃未満で実施し、熱間加工を600℃以上で終了し急冷する工程で熱間加工と同時にβ単相にした後に、γ相をβ相の粒界に覆うように形成させる500℃以上600℃未満で10〜120分行う熱処理と、γ相をβ相の粒内に形成させる300℃以上500℃未満で120〜600分行う熱処理とを、任意の順番で実施する処理を含む(1)〜(3)のいずれか1項に記載の銅合金材の製造方法。
(11)前記熱間加工が熱間圧延である(9)または(10)に記載の製造方法。
(12)前記熱間加工が熱間押出である(9)または(10)に記載の製造方法。
図1に本発明における、材料組織の模式図を示す。なお、γ相がβ相粒界を「包括する」とは、図1に示すように、β相粒1の周回をγ相2が覆う状態をいう。γ相の厚さとは図1の4で示す矢印間の幅をいう。β相粒内にγ相が分散するとは図1においてγ相3がβ相粒内に分散して存在している状態をいう。
また、粒界包括率を評価する断面の位置は特に制限はないが、板材の場合には「切削加工に供する面」、棒材の場合には「押出方向に対して垂直な面」が好ましい。
本発明のCu−Zn銅合金材は、鉛などの環境負荷物質を利用することなく、被削性に優れる。また、本発明の銅合金材は、切削加工により製造される精密部品等の部品用材料として好適である。
本発明の銅合金材の組織を模式的に示す断面図である。
本発明において銅合金材とは、その形状や厚さや幅を制限するものでなく、板材、棒材などを包含する。好ましくは板材である。
本発明の銅合金材の好ましい実施の態様について、詳細に説明する。まず、各合金元素の作用効果とその含有量の範囲について説明する。
本発明の銅合金材に好ましい実施の態様において亜鉛(Zn)は、β相およびγ相の形成を左右し、被削性を向上させる。本発明においては、β+γの2相組織を呈する範囲にする必要があり、48〜54mass%が好ましい。より好ましくは49〜52mass%である。少なすぎるとγ相が形成せず、多すぎる場合γ相の形成量が多すぎるために好適なγ相分散状態にできず、加工中に割れが発生するなどの問題が生じる。
CuおよびZn以外の不純物はCu−Zn合金の相を変化させる水準でなければ、微量含有することを許容される。
次に、被削性向上を可能にする金属組織の好ましい形態について述べる。β相を母相として、被削性を向上させるために屑分断の起点となるγ相を形成させる形態が必要である。γ相は単に形成すれば良いものではなく、γ相はβ相の粒界上に形成し、β相の周囲を覆うように形成されていることが必要である。β相の全粒界長さにおいてγ相が包括している割合を粒界包括率として、次式にて定義した場合、ある断面についての粒界包括率fの範囲は60%〜100%である。60%未満では、屑分断性が不十分である。100%でも屑分断性に問題は無いが、γ相に覆われないβ相粒界が存在した場合の方が、切削加工時に粒内にも亀裂が進展しやすいため、切削加工製品の形状が良好になるといえる。その観点からより好ましい範囲は、80〜95%である。

粒界包括率f=β相粒界上のγ相長さの総和/β相粒界長さ×100(%)
粒界上のγ相の厚さの平均値は、次式で決定されるβ相の平均結晶粒径に対する比が0.5%以上、10%以下であることが好ましい。0.5%よりも小さい場合には被削性が不十分であることがある。10%を超えて大きい場合には、脆くなりすぎるため、切削加工時に欠けが発生し、製品形状が出ない場合がある。

β相粒界上のγ相厚さの平均値/β相平均結晶粒径×100(%)
また、γ相はβ相の粒内にも形成させることで、被削性をより向上させることが出来る。β相粒内にあるγ相の数密度が250〜1000個/mmとなるように形成することが好ましい。より好ましい範囲は400〜1000個/mmである。数密度が250個/mmよりも小さい場合は、被削性が不十分となることがある。数密度が1000個/mmを超える場合、脆くなりすぎるため、切削加工時に欠けが発生し、製品形状が出ない場合がある。
β相の粒内のγ相の粒子サイズは、被削性に対する寄与度はγ相の数密度よりも大きくはなく、その粒子サイズはミクロンオーダーであれば良い。
β相は実質的に再結晶組織を有することが好ましい。その結晶粒径は30〜500μmが好ましい。より好ましくは、50〜300μmである。本明細書において結晶粒径とはJIS H 0501の切断法に基づき測定した平均結晶粒径をいう。
次いで、本発明の好ましい実施の態様における製造条件について述べる。本発明の銅合金材の製造工程は、常法により製造した上記合金組成の鋳塊を、熱間加工後、熱処理の一連の工程を含む製造工程で処理して行うことができる。上述のγ相の分散状態が被削性を決定するため、熱間加工から熱処理までの一連の工程を制御することが必要となる。
熱間加工前の、鋳塊の保持温度は600℃以上840℃以下で実施することが好ましく、より好ましくは、650〜750℃である。保持時間は30〜600分、好ましくは60〜120分である。保持温度が840℃を超えて高い場合、Cu−Zn系の相が溶解し、熱間加工時に割れる要因となる。600℃未満の場合には、熱間加工時中の温度低下により後述の熱間加工を470℃までに完了することが出来ない。保持時間が30分よりも短い場合には、鋳造組織の均質化が出来ない。600分を超えて実施した場合には、Znの蒸発が材料表面から起こり材料が不均一となる可能性がある。
熱間加工は470℃までで完了することが好ましい。470℃未満ではβ相の規則度が高まり、材料の加工性が著しく低下して熱間加工中に割れに至ることがある。
熱間加工の加工方法について鍛造、押出、圧延等の様式は特に選ばないが、熱間圧延および熱間押出により材料を展伸させる処理が好ましい。
熱間加工の加工率を調整することで、実質的に再結晶したβ相の結晶粒径を制御することが可能である。具体的には加工率を5〜40%にするのが好ましい。
γ相の形態を制御するためには、一度β単相にした後にγ相を形成する熱処理を実施する必要がある。β単相にする熱処理は熱間加工後、600℃以上840℃以下で実施することが好ましい。より好ましい温度は650℃以上750℃以下である。熱処理時間は10〜120分が好ましい。より好ましくは30〜60分である。600℃未満ではβ単相に出来ず、840℃を超えて高い場合、Cu−Zn系の相が溶解する。処理時間が10分よりも短い場合にはβ単相に出来ず、処理時間が120分を超える場合にはβ相の結晶粒粗大化が著しい。β単相とはγ相がβ相の粒界および粒内に存在しない状態をいう。β単相化処理の後は水冷や送風による急速冷却等により、冷却速度を10℃/分以上としγ相の形成を抑制することが望ましい。より好ましくは50℃/分以上である。
β単相化は熱間加工と同時に行っても良い。熱間加工とβ単相化を同時に行う場合には、熱間加工を600℃までに完了し、β単相化処理の後は水冷や送風による急速冷却等により、冷却速度を10℃/分以上で冷却しγ相の形成を抑制することが望ましい。より好ましくは50℃/分以上である。
γ相の分散についてはβ単相化処理の後、300℃以上600℃未満で10〜600分の熱処理により、上述の形態に形成することができる。300℃未満および600℃以上の場合にはγ相の形成が不十分であり、粒界包括率が低く、また粒内のγ相密度も低い。
γ相の分散については、2段階の熱処理を実施することにより、β粒界上と粒内のγ相の制御を厳密にすることができる。すなわち、γ相をβ相の粒界に覆うように形成させる熱処理を500℃以上600℃未満で10〜120分行い、γ相をβ相の粒内に形成させる熱処理を300℃以上500℃未満で120〜600分実施するとより好ましいγ相形態となる。γ相をβ相の粒界に形成させる処理とβ相の粒内に形成させる処理はどちらを先に実施してもよい。この場合、粒界上への形成を促す高温処理は、粒内への形成を促す低温処理よりも短時間で行うことが望ましい。
以下に、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
(実施例1)
表1の合金成分で示される組成の発明例および比較例の銅合金を高周波溶解炉にて溶解し、厚さ30mm、幅120mm、長さ150mmの鋳鉄製鋳型に鋳造し鋳塊を得た。
発明例1〜3および比較例1では、得られた鋳塊の湯口および湯底部を切断して750℃に加熱し、その温度にて1時間保持後、熱間圧延を施した。各パスの圧延率は10〜25%として、8回のパスにて厚さ6mmまで実施した。熱間圧延は600℃までで終了しその後室温まで空冷を行った。両面を各1.5mmずつ切削して酸化皮膜を除去した。その後、アルゴンガス雰囲気にて680℃で30分の熱処理を行い水冷した(冷却速度150℃/分以上)。続けてアルゴンガス雰囲気にて450℃で60分の熱処理を行い室温まで空冷を行った。
発明例4では、発明例1と680℃までの熱処理は同様であるが、最後の熱処理をアルゴンガス雰囲気で500℃で60分とし、室温まで空冷を行った。
発明例5では、発明例1と680℃までの熱処理は同様であるが、最後の熱処理をアルゴンガス雰囲気で400℃で60分とし、室温まで空冷を行った。
発明例6では、発明例1と680℃までの熱処理は同様であるが、最後の熱処理をアルゴンガス雰囲気で300℃で600分とし、室温まで空冷を行った。
発明例7では、発明例2と680℃までの熱処理は同様であるが、最後の熱処理をアルゴンガス雰囲気で420℃で60分とし、室温まで空冷を行った。
発明例8では、発明例1と680℃までの熱処理は同様であるが、その後、アルゴンガス雰囲気で550℃にて30分の熱処理を実施し室温まで空冷した後、最後の熱処理をアルゴンガス雰囲気にて350℃で300分実施し室温まで空冷を行った。
発明例9では、発明例1と680℃までの熱処理は同様であるが、その後、アルゴンガス雰囲気で350℃にて300分の熱処理を実施し室温まで空冷した後、最後の熱処理をアルゴンガス雰囲気にて570℃で20分実施し室温まで空冷を行った。
発明例10では、得られた鋳塊の湯口および湯底部を切断して切断後830℃に加熱し、その温度にて1時間保持後、熱間圧延を施した。各パスの圧延率は10〜25%として、8回のパスにて厚さ6mmまで実施した。熱間圧延は780℃までで終了しその後室温まで空冷を行った。両面を各1.5mmずつ切削して酸化皮膜を除去した。その後、アルゴンガス雰囲気にて450℃で60分の熱処理を行い室温まで空冷を行った。
発明例11では、得られた鋳塊の湯口および湯底部を切断して切断後600℃に加熱し、その温度にて1時間保持後、熱間圧延を施した。各パスの圧延率は10〜25%として、8回のパスにて厚さ6mmまで実施した。熱間圧延は470℃までで終了しその後室温まで空冷を行った。両面を各1.5mmずつ切削して酸化皮膜を除去した。その後、アルゴンガス雰囲気にて680℃で30分の熱処理を行い水冷した(冷却速度150℃/分以上)。続けてアルゴンガス雰囲気にて450℃で60分の熱処理を行い室温まで空冷を行った。
発明例12では、得られた鋳塊の湯口および湯底部を切断して750℃に加熱し、その温度にて1時間保持後、熱間圧延を施した。各パスの圧延率を10〜25%として、7回のパスを実施し、最後の8パス目の圧延パスを33%で実施した。熱間圧延は600℃までで終了しその後速やかに水冷を行った。両面を各1.5mmずつ切削して酸化皮膜を除去した。その後、アルゴンガス雰囲気にて680℃で30分の熱処理を行い水冷した(冷却速度150℃/分以上)。続けてアルゴンガス雰囲気にて450℃で60分の熱処理を行い室温まで空冷を行った。
発明例13では、得られた鋳塊の湯口および湯底部を切断して750℃に加熱し、その温度にて1時間保持後、熱間圧延を施した。各パスの圧延率を10〜25%として、6回のパスを実施し、最後の7パス目および8パス目を各々8%および9%で実施した。熱間圧延は600℃までで終了しその後速やかに水冷を行った。両面を各1.5mmずつ切削して酸化皮膜を除去した。その後、アルゴンガス雰囲気にて680℃で30分の熱処理を行い水冷した(冷却速度150℃/分以上)。続けてアルゴンガス雰囲気にて450℃で60分の熱処理を行い室温まで空冷を行った。
比較例2では、得られた鋳塊の湯口および湯底部を切断時に材料が砕けた為、試験を中止した。
比較例3は、得られた鋳塊の湯口および湯底部を切断して750℃に加熱し、その温度にて1時間保持後、熱間圧延を施した。各パスの圧延率は10〜25%として、8回のパスにて厚さ6mmまで実施した。熱間圧延は600℃までで終了しその後空冷にて室温まで冷却した。両面を各1.5mmずつ切削して酸化皮膜を除去した。その後、アルゴンガス雰囲気にて450℃で60分の熱処理を行い室温まで空冷を行った。
比較例4では、発明例1と680℃までの熱処理は同様であるが、最後の熱処理をアルゴンガス雰囲気で300℃で5分とし、室温まで空冷を行った。
比較例5では、発明例1と680℃までの熱処理は同様であるが、最後の熱処理をアルゴンガス雰囲気で280℃で600分とし、室温まで空冷を行った。
比較例6は、得られた鋳塊の湯口および湯底部を切断して750℃に加熱し、その温度にて1時間保持後、熱間圧延を施した。各パスの圧延率は10〜25%として、8回のパスにて厚さ6mmまで実施した。熱間圧延は600℃までで終了しその後空冷にて室温まで冷却した。両面を各1.5mmずつ切削して酸化皮膜を除去した。その後、アルゴンガス雰囲気にて450℃で60分の熱処理を行い室温まで空冷を行った。
比較例7では、得られた鋳塊の湯口および湯底部を切断して850℃に加熱し、その温度にて1時間保持後、熱間圧延を施したところ、熱延中に割れが発生した為、試験を中止した。
比較例8では、得られた鋳塊の湯口および湯底部を切断して550℃に加熱し、その温度にて1時間保持後、熱間圧延を施した。最終パスを450℃で実施したところ、熱延中に割れが発生した為、試験を中止した。
このようにして得られた各々の銅合金板材のサンプルについて被削性を調べた。被削性として、汎用ボール盤を用いて切削屑の分断性を評価した。切削屑が1mm以下に分断されるものは優、切削屑が1mmを超え2mm以下のものは良、切削屑が2mmを超え3mm以下のものは可、切削屑が3mmを超えるものは不良とした。使用可能な水準は優、良および可であり、より好ましいのは優および良である。また、切削屑は使用可能な水準にあるものの、切削後の穴の周囲に欠け等が発生したものは「欠け」として、使用不可とした。なお切削条件は、2mmφの超硬製ドリルを用い、回転数420rpmとし、切削油は不使用とした。
材料組織の評価は、板状サンプルの任意の3か所の圧延面について、光学顕微鏡を用いて、それぞれ3視野(総計9視野に相当)について組織観察を行うことにより求めた。β相の粒界長さおよび、β相の粒界上に形成したγ相の長さを各視野にて測定し、その総和を算出して次式により、粒界包括率fを定義した。

粒界包括率f=β相粒界上のγ相長さの総和/β相粒界長さ×100(%)
β相粒界上に形成したγ相の厚さは、各視野において20点測定し、その平均をγ相厚さとした。β相の平均結晶粒径は、JIS H 0501の切断法に基づき測定し、平均粒径とした。求めたγ相の厚さをβ相の平均粒径で除した比率を次式で算出した

β相粒界上のγ相厚さの平均値/β相平均結晶粒径×100(%)
β相粒内におけるγ相の数を各視野にて測定して総和し、観察視野面積の総和で除して規格化して、粒内のγ相の数密度とした。
Figure 0005794906
本発明例1〜13は成分および組織の形態が、本発明の範囲内であり、被削性に優れていた。特にβ相内のγ相の数密度が多かった発明例3および8、9は特に被削性に優れた。
比較例1および4は粒界包括率fと粒内のγ相の数密度が本発明の範囲よりも小さかったために被削性が劣った。比較例3および6はβ相粒界上のγ相の厚さ比率および粒内のγ相の数密度が、本発明の範囲よりも大きかったために、切削屑形状は「優」であったが、穴周囲に欠けは発生したため、「欠け」として使用不可とした。被削試験中に加工部から亀裂進展し破壊した。比較例5は粒界包括率fおよび粒界上のγ相の厚さ比率が本発明よりも小さかった為に、被削性が劣った。比較例2、7および8は上述の様に試験を中止している。
(実施例2)
表2の合金成分で示される組成の発明例および比較例の銅合金を直径200mm×500mmの鋳塊を作成し、熱間押出用のビレットとした。
発明例2−1〜2−3では、得られた鋳塊の湯口および湯底部を切断して750℃に加熱し、その温度にて1時間保持後、押出加工を実施して厚さ10mm×幅180mmの素板を得た。押出直後は速やかに室温まで水冷した(冷却速度150℃/分以上)。その後、100mm長さ分をサンプル採取して、続けてアルゴンガス雰囲気にて450℃で60分の熱処理を行い室温まで空冷を行った。
発明例2−4〜2−6では、得られた鋳塊の湯口および湯底部を切断して750℃に加熱し、その温度にて1時間保持後、押出加工を実施して直径20mmφの棒材を得た。押出直後は速やかに室温まで水冷した(冷却速度150℃/分以上)。その後、100mm長さ分をサンプル採取して、続けてアルゴンガス雰囲気にて450℃で60分の熱処理を行い室温まで空冷を行った。
発明例2−7では、得られた鋳塊の湯口および湯底部を切断して520℃に加熱し、その温度にて1時間保持後、押出加工を実施して直径20mmφの棒材を得た。押出直後は速やかに室温まで水冷した(冷却速度150℃/分以上)。その後、100mm長さ分をサンプル採取して、アルゴンガス雰囲気にて680℃で30分の熱処理を行い水冷した。続けてアルゴンガス雰囲気にて450℃で60分の熱処理を行い室温まで空冷を行った。
比較例2−1では、発明例2−7の熱間押出までは同様であるが、100mm長さをサンプル採取後、アルゴンガス雰囲気にて450℃で60分の熱処理を行い室温まで空冷を行った。
比較例2−2では、得られた鋳塊の湯口および湯底部を切断して450℃に加熱し、その温度にて1時間保持後、押出加工を実施したところ、材料に割れが発生した為、試験を中止した。
このようにして得られた各々の銅合金板材のサンプルについて被削性は、実施例1と同様の条件にて被削性を評価した。
材料組織の評価は、板状サンプル、棒状サンプル共に、押出方向と垂直な面にて任意の3か所について光学顕微鏡を用いて、それぞれ3視野(総計9視野に相当)について組織観察を行うことにより求めた。組織の定量評価は実施例1と同様である。
Figure 0005794906
本発明例2−1〜2−7は成分および組織の形態が、本発明の範囲内であり、被削性に優れていた。
比較例2−1は粒界包括率fと粒内のγ相の数密度が本発明の範囲よりも大きかったので、切削屑形状は「優」であったが、穴周囲に欠けが発生した為「欠け」として使用不可とした。比較例2−2は上述の様に試験を中止している。
1 β相粒
2 β相粒界上のγ相
3 β相内のγ相
4 β相粒界上のγ相の厚さ

Claims (12)

  1. Znを48〜54mass%含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅合金材であって、
    γ相がβ相の粒界上にβ相の周囲を覆うように形成されており、β相の全粒界長さにおいてγ相が包括している割合を断面で評価したとき、その粒界包括率が60%以上であり、
    γ相の厚さの平均値のβ相の平均粒径に対する比が、0.5%以上、10%以下であることを特徴とする、被削性に優れた銅合金材。
  2. β相の粒内にγ相が分散しており、β相粒内にあるγ相の数密度が250個/mm以上、1000個/mm未満であることを特徴とする、請求項1に記載の被削性に優れた銅合金材。
  3. 形状が板材である請求項1または2に記載の銅合金材。
  4. β単相にする熱処理を600℃以上840℃以下で10〜120分行った後、γ相を分散させる熱処理を300℃以上600℃未満で10〜600分行う処理を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅合金材の製造方法。
  5. β単相にする熱処理を600℃以上840℃以下で10〜120分行った後、γ相をβ相の粒界に覆うように形成させる500℃以上600℃未満で10〜120分行う熱処理と、γ相をβ相の粒内に形成させる300℃以上500℃未満で120〜600分行う熱処理とを、任意の順番で実施する処理を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅合金材の製造方法。
  6. β単相にする熱処理の前に熱間加工の工程を含み、熱間加工前の材料加熱を600℃以上840℃以下で実施し、熱間加工を470℃以上で終了する製造工程を含む請求項4または5に記載の製造方法。
  7. 前記熱間加工が熱間圧延であり、熱間圧延前の材料加熱を600℃以上840℃以下で実施し、熱間圧延を470℃以上で終了する製造工程を含む請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記熱間加工が熱間押出であり、熱間押出前の材料加熱を600℃以上840℃以下で実施し、熱間押出を470℃以上で終了する製造工程を含む請求項6に記載の製造方法。
  9. 熱間加工の工程を含み、熱間加工前の材料加熱を600℃以上840℃未満で実施し、熱間加工を600℃以上で終了し急冷する工程で熱間加工と同時にβ単相にした後に、γ相を分散させる熱処理を300℃以上600℃未満で10〜600分行う処理を含む製造工程を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅合金材の製造方法。
  10. 熱間加工の工程を含み、熱間加工前の材料加熱を600℃以上840℃未満で実施し、熱間加工を600℃以上で終了し急冷する工程で熱間加工と同時にβ単相にした後に、γ相をβ相の粒界に覆うように形成させる500℃以上600℃未満で10〜120分行う熱処理と、γ相をβ相の粒内に形成させる300℃以上500℃未満で120〜600分行う熱処理とを、任意の順番で実施する処理を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅合金材の製造方法。
  11. 前記熱間加工が熱間圧延である請求項9または10に記載の製造方法。
  12. 前記熱間加工が熱間押出である請求項9または10に記載の製造方法。
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