JP5546196B2 - 時効析出型銅合金、銅合金材料、銅合金部品および銅合金材料の製造方法 - Google Patents
時効析出型銅合金、銅合金材料、銅合金部品および銅合金材料の製造方法 Download PDFInfo
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Description
り製造される銅合金部品に関し、さらにこの銅合金部品に適する時効析出型銅合金、この
銅合金が切削加工に適した形状に成形された銅合金材料およびその製造方法に関するもの
である。
雑な形状を持つ部品や高い寸法精度を要する部品の製造には有効な加工方法である。切削
加工を行う場合、切削性がしばし問題となる。切削性には切削屑処理、工具寿命、切削抵
抗、切削面粗さなどの項目があり、これらが向上するように材料に改良が施されている。
どの理由から多くの金属部品に使用されている。切削による加工も多く実施されており、
例えば水道の蛇口、バルブ、歯車、装飾品などの用途があり、黄銅(Cu−Zn系)、青
銅(Cu−Sn系)、アルミ青銅(Cu−Al系)、洋白(Cu−Zn−Ni系)に切削
性を向上させるために鉛を添加した合金が使用されている(特許文献1〜4参照)。なお
、これらはいずれも高強度または高導電性を必要としない用途である。
りん青銅やベリリウム銅に鉛を添加した快削りん青銅(特許文献5参照)、快削ベリリウ
ム銅(特許文献6参照)が使用されている。これらはNC旋盤等の精密な工作機械で切削
加工され、電子機器用途等の信頼性の高い部品に使用されている。
は、鉛が銅合金に固溶しないため材料内に微細に分散し、切削加工時に切削屑がその部分
で分断されやすくなることによる。しかし、鉛は人体や環境に悪影響を及ぼすとされてい
ることから使用が制限されつつあり、鉛を含有せずに切削性を向上させた銅合金の要求が
高まっている。鉛を添加せずに切削性を向上させる方法として、黄銅や青銅にはビスマス
を添加する方法(特許文献7〜8参照)が知られている。また黄銅では、亜鉛濃度を高く
して銅−亜鉛系化合物であるβ相やγ相を形成させ(特許文献9)、あるいはケイ素を添
加して銅−ケイ素系化合物であるκ相を形成させ(特許文献10)、これらの化合物を切
削屑分断の起点として作用させることで切削性を向上させる方法が知られている。
術では、切削性を向上させるための添加元素として鉛を用いており、環境への負荷が心配
される。特に特許文献6に記載の技術では、快削ベリリウム銅の切削性を向上させるため
の添加元素として鉛に代替するものはなく、またベリリウムそのものも環境に影響を与え
る元素の一つとして挙げられており、鉛を添加した銅合金の代替材のみならずベリリウム
銅の代替材を望む声も高まっている。また、特許文献7〜8の技術では、ビスマスを添加
すると切削性は改善されるが、加工中に割れ易くなり、特に熱間加工が困難となる。すな
わち、熱間加工性の改善を図ることが改めて必要となる。特許文献9〜10は、形成され
る化合物は黄銅系特有のものである。
合金系(Cu−Ni−Si系:いわゆるコルソン合金)などを用いることも考えられるが
、この合金系において切削性を高める検討は十分になされておらず、切削性に優れた材料
とするためにはさらなる検討が必要とされている。
る用途に最適な切削性に優れた銅合金を、環境負荷物質を利用することなく提供すること
を目的とするものである。
径)が1μm以上の金属元素含有化合物が1000個/mm2以上存在することによって
、切削性に優れ、さらに強度および導電性に優れる銅合金が得られることを見出した。ま
た、金属元素含有化合物が1000個/mm2以上存在する銅合金を得るには、鋳造時の
冷却速度の制御、核として作用する化合物の形成が好ましく、また溶解時に溶湯を酸化さ
せないことも好ましいことを見出した。
(1)Niを1.5〜7.0mass%、Siを0.3〜1.8mass%を含有し、さ
らに、Co、Zr、Ti、Fe、Mn、Cr、Sn、Al、Mg、V、P、Znの群から
選ばれる少なくとも1種を総量で0.05〜2mass%含有し、残部がCuおよび不可
避的不純物からなる銅合金であって、前記銅合金中にCo、Zr、Ti、Fe、Mn、C
r、Sn、Al、Mg、V、P、Znのいずれかを含有する平均径が2μm以上の大きさ
の晶出物である金属元素含有化合物が1000個/mm2以上存在することを特徴とする
、時効析出型銅合金。
(2)前記金属元素含有化合物の内部には、核として作用する化合物が存在し、前記核と
して作用する化合物は、前記金属元素含有化合物より融点が高いことを特徴とする、(1
)に記載の時効析出型銅合金。
(3)前記金属元素含有化合物の平均径は、30μm以下であることを特徴とする、(1
)または(2)に記載の時効析出型銅合金。
(4)前記金属元素含有化合物の密度は、30000個/mm2以下であることを特徴と
する、(1)〜(3)のいずれかに記載の時効析出型銅合金。
(5)超硬製のバイトを用いて、切削速度30m/min、送り速度0.1mm/rev
、切り込み代0.2mmの切削性試験をしたとき、切削屑が10mm以下に分断されるこ
とを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の時効析出型銅合金。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の時効析出型銅合金が所定形状に成形された銅合
金材料であって、成形後の引張強さが500MPa以上、導電率が25%IACS以上で
あることを特徴とする、銅合金材料。
(7)(6)に記載の銅合金材料が切削加工されて形成される銅合金部品。
(8)(6)に記載の銅合金材料を製造する方法であって、非酸化雰囲気で溶解鋳造を行
い、鋳造時の冷却速度を0.5℃/秒以上100℃/秒以下とし、 前記金属元素含有化
合物の融点が、前記銅合金材料の原料を溶解し、鋳造した後の工程における前記銅合金材
料の熱間加工温度、焼鈍温度、時効熱処理温度または溶体化温度のいずれかの最高温度よ
り高温であることを特徴とする、銅合金材料の製造方法。
(9)前記金属元素含有化合物を構成する元素より酸化されやすい元素を添加する工程を
有することを特徴とする、(8)に記載の銅合金材料の製造方法。
環境負荷物質を利用することなく切削性に優れたものとなる。また、本発明の銅合金は、
切削加工により製造される電子機器等の部品用材料として好適である。
明する。まず、各合金元素の作用効果とその含有量の範囲について説明する。
なお、本明細書において、「銅合金」とは形状の概念を含まないものをいい、「銅合金
材料」とは形状の概念を含むものをいう。また、本明細書において、「金属元素含有化合
物」を定義し、さらにこの「金属元素含有化合物」を、主に「晶出物」、「析出物」の2
種類に分類する。「晶出物」は銅合金の鋳造の際に溶融金属が凝固する過程で生じ、「析
出物」は固体金属の状態で熱処理により生じる。よって、「晶出物」と「析出物」とは明
確に区別される。
イ素(Si)は、NiとSiの含有比を制御することにより金属生地(マトリクス)中に
Ni−Si析出物(Ni2Si)を形成させて析出強化を行い、銅合金の強度および導電
性を向上させるために添加する。このNi−Si析出物(Ni2Si:析出強化のための
析出物)は、形式的には金属元素含有化合物であるが、切削性の向上にはあまり寄与しな
い。
ための析出物よりも粗大な、切削性向上に寄与する化合物を形成する。この化合物は金属
元素含有化合物であり、例えば、ニッケルまたはシリコンの少なくとも一方を含む晶出物
、あるいはニッケルまたはシリコンの少なくとも一方と後述する他の添加元素とを含む晶
出物などである。これらの金属元素含有化合物が、切削加工を行った時の切削屑分断の起
点として作用することで切削屑が細かく分断され易くなり、切削性が向上する。
%であることが好ましい。Ni量が1.5mass%より少ないと、Ni−Si析出物に
よる析出硬化量が小さく強度が不足する、また粗大な晶出物の形成量が少なく、切削性向
上の効果が見られない。Ni量が7.0mass%より多いと、熱処理時に粒界反応型析
出が生じ、さらに粗大な晶出物の量が多くなり過ぎ、強度が低下することがあるため好ま
しいとはいえない。
るとNi含有量の約1/4の量が必要となる。また、前記の金属元素含有化合物にSiを
含有する時にはその分のSi量を追加し、Niを含有するときにはその分のSi量を減ら
すことが好ましい。これらのことから、本発明において、Siの含有量は0.3〜1.8
質量%であり、0.35〜1.7質量%であることが好ましい。
μm以上の大きさの金属元素含有化合物が1000個/mm2以上存在する必要がある。
そのためには、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、鉄(Fe)
、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、錫(Sn)、アルミニウム(Al)、マグネシウ
ム(Mg)、バナジウム(V)、りん(P)、亜鉛(Zn)の1種または2種以上を含有
する。これらの元素は、CuやNiやSiと、あるいは相互に金属元素含有化合物を形成
し、切削性を向上させる。この場合の金属元素含有化合物は、ほぼ晶出物である。含有さ
せる場合には、Co、Zr、Ti、Fe、Mn、Cr、Sn、Al、Mg、V、P、Zn
の中から選ばれる1種または2種以上を総量で0.05〜2mass%含有させることが
好ましい。0.05mass%より少ない場合は、形成される晶出物の個数が少なく、切
削性が改善されない。また、2mass%より多い場合は、切削性向上の効果が飽和する
だけでなく、導電率が低下するため得策ではない。
びに形成方法や特徴について述べる。金属元素含有化合物は、切削加工時に発生する切削
屑を細かく分断する作用があり、それにより切削性が向上する。ただし、大きさ(平均径
)が1μmより小さいと、大きな効果は得られない。また1μm以上の金属元素含有化合
物があったとしても、存在する個数が少ないと切削屑は細かく分断されない。具体的には
、1μm以上の大きさの金属元素含有化合物(例えば晶出物)が1000個/mm2以上
の密度で分布していないと、切削屑が十分には分断されない。
とが好ましい。30μmを超えると、切削面の粗さが低下するだけでなく、冷間加工中に
割れが生じやすくなってユーザーの要求する寸法に加工することが困難となることがある
。また、金属元素含有化合物の密度の上限は、特に規定しないが30000個/mm2程
度であることが望ましい。30000個/mm2を超えると金属元素含有化合物の占める
割合が高くなり、材料の強度が低下することがある。
生じる金属元素含有化合物である。一般に晶出物は母相との結合力が弱いため、切削加工
時に屑を分断する起点として作用する。一方、析出物は、固体金属の状態で熱処理により
生じる金属元素含有化合物であり、合金系にもよるが、一般に晶出物よりサイズが小さく
、母相との結合力が強いため、切削屑分断の起点としては作用しにくい。ただし、結晶粒
界に形成する析出物の場合、サイズが大きくなったものが切削屑分断の起点として作用す
る場合がある。また、金属元素含有化合物として、溶解時に溶け残った化合物がそのまま
持ち来されたもの(未溶解化合物)があるが、これは母相との結合力が弱く切削屑分断の
起点として作用するため、晶出物と同様、切削性向上の手段として用いることができる。
すなわち、晶出物、析出物、未溶解化合物は、切削屑を細かく分断する作用を有するため
には、それぞれ大きさ(平均径)が1μm以上、かつ時効析出型銅合金中の金属元素含有
化合物の分布密度として1000個/mm2以上であることが求められる。
における銅合金材料の最高温度より高いことが好ましい。この最高温度とは、一般にはそ
の材料を熱間加工する場合の熱間加工温度、焼鈍温度、時効熱処理温度または時効析出前
の溶体化温度のいずれかである。これは、それぞれの加熱工程で切削性向上に寄与する化
合物である金属元素含有化合物の溶融、消滅を生じさせないためである。
時の冷却速度により大きさ、分布が変わる。冷却速度が遅いと晶出物は粗大となり、十分
な切削屑分断性が得られない場合があるため、好ましくは0.5℃/秒以上、より好まし
くは1℃/秒以上で冷却することで本発明の銅合金が得られる。また、冷却速度が速すぎ
ると晶出物が微細になりすぎて切削屑の分断性が劣ってくるため、100℃/秒以下であ
ることが好ましい。冷却速度を速くする鋳造方法としては、例えば双ロール鋳造法がある
。これは溶湯を回転する二対のロールの間に注ぐことで材料を急冷凝固させる方法である
。
る別の方法として、前述の晶出物とは異なる組成の化合物の周りに晶出物を形成させる方
法がある。これは、目的とする晶出物が形成される前に、溶湯内に晶出物とは異なる組成
の化合物またはその原料を投入あるいは形成させ、その化合物を核として晶出物を形成さ
せる方法である。
て作用する化合物」とする)は、目的とする晶出物より高融点である必要があり、具体的
には炭化物、硫化物、硼化物、酸化物、窒化物などの非金属元素含有化合物が有効である
。これらは、非金属元素含有化合物を粉末などで溶湯内に直接投入する、あるいはNi、
Siなどの合金成分や新たに添加した金属元素と溶湯内で結合することで核として作用す
る化合物として溶湯内に形成される。核として作用する化合物を形成させる場合の炭素、
硫黄、硼素などの非金属元素を銅合金中に添加する方法としては、そのまま添加する方法
(例えば炭素の棒を浸漬する)、あるいは他の元素との化合物の状態で添加する方法(例
えば銅−硼素の母合金を原料に用いる)などがある。なお、核として作用する化合物の大
きさ(平均径)は、通常1μmより小さく、核として作用する化合物自体が直接切削性向
上に寄与することはほとんどない。
は形成し、核の数が多ければ晶出物の数が増加し、切削屑を細かく分断する作用を有する
大きさおよび密度になる。本方法は特に冷却速度が遅い時に有効であり、冷却速度が速い
時は核として作用する化合物が無くても晶出物は切削屑を細かく分断する作用を有する大
きさおよび密度になることから、核として作用する化合物を形成する必要はなくなる。
る化合物(金属元素含有化合物)を形成するための添加元素には、酸化されやすい元素、
例えば、Si、Zr、Ti、Al、Mgなどが含まれる。これらの酸化されやすい元素を
用いる場合には、溶解鋳造時に溶解炉、溶湯経路、鋳型などを覆い、アルゴン、窒素など
の不活性ガス雰囲気にすることで酸化を防止することが好ましい。この方法により添加元
素のロスは減り、切削屑を細かく分断する作用を有する大きさおよび密度の晶出物が得ら
れる。
防止の別の方法として、切削性向上に寄与する化合物(金属元素含有化合物)を形成する
ための添加元素より酸化されやすい元素を添加する方法がある。例えば、Cu−Ni−S
i系をベースに、切削性向上に寄与する化合物(金属元素含有化合物)を形成するための
添加元素であるZr、Fe、TiおよびSnをそれぞれ含有する場合について述べる。こ
れらの元素(Zr、Fe、TiおよびSn)の溶解時に、これらの元素より酸化されやす
い元素であるAl、Mg、Caなどを添加すると、Al、Mg、Caが酸化するために、
切削性向上に寄与する化合物(金属元素含有化合物)を形成するための添加元素はほとん
ど酸化せず、目的とする化合物(金属元素含有化合物)が得やすくなる。なお、元素の酸
化されやすさは酸化物の標準生成自由エネルギーの大小で求められ、このエネルギーが小
さい方が、酸化物が安定(すなわち酸化されやすい)と言える。酸化物の標準生成エネル
ギーは、例えば「改訂4版 金属データブック 日本金属学会 編 発行元:丸善(株)
2004年2月発行」などに記載されている。
。
本発明の好ましい実施の態様における銅合金は、鉛を含有するりん青銅やベリリウム銅
の代替、すなわち環境負荷物質を含有する銅合金の代替を目指すものであり、これらの合
金と同等の強度を要する。そのため、実用上問題とならない強度および導電性として、引
張強さ500MPa以上、導電率25%IACS以上が必要である。本発明の銅合金は時
効析出型であり、前述のようにNi2Siを形成させることで強度、導電性を向上させて
おり、そのために、Niを1.5〜7.0mass%、Siを0.3〜1.8mass%
含有することが必要となる。また、製造工程における溶体化熱処理温度は800〜950
℃の範囲が好ましく、時効熱処理温度は350〜600℃の範囲が好ましい。
様における銅合金は、時効析出型銅合金であるため、少なくとも銅合金原料の溶解鋳造工
程の後に時効熱処理工程は必須となるが、熱間加工工程、焼鈍工程、溶体化熱処理工程は
必要に応じて行うこととなる。例えば、熱間加工工程に関しては、ビレットの熱間押出、
鋳塊の熱間鍛造、あるいは連続鋳造などの製造方法のいずれでも本発明の銅合金材料を製
造することが可能である。また、製品の形状は特に制約はなく、後工程である切削工程に
より最終形態である銅合金部品を得やすい形状としておくことが好ましい。すなわち、銅
合金部品の用途により線、棒、条、板、管などの所定の形状の銅合金材料として製造し、
使い分ければ良い。例えば、最終形態の銅合金部品がねじである場合は、銅合金材料の形
状は丸棒状であることが好ましい。
れるものではない。
表1の合金成分で示される組成の銅合金を高周波溶解炉にて溶解し、冷却速度5〜10
℃/秒で各ビレットを鋳造した。なお、溶解炉、溶湯を鋳型まで流す樋および鋳型の溶湯
が大気に接触する部分には、酸化防止のために蓋などの覆いを被せ、窒素ガスを流入した
。前記ビレットを900℃で熱間押出して、直ちに水中焼入れを行い、丸棒を得た。次い
で前記丸棒を冷間にて引抜きを行い、直径10mmの丸棒を製造し、さらに450℃で2
時間時効熱処理を行った。
切削性を下記方法により調べた。各評価項目の測定方法は以下の通りである。
[1]引張強度
JIS Z 2241に準じて3本測定しその平均値(MPa)を示した。
[2]導電率
四端子法を用いて、20℃(±1℃)に管理された恒温槽中で、各試料について2本ず
つ測定し、その平均値(%IACS)を示した。
[3]切削性
汎用旋盤を用いて切削実験を行い、切削屑の形態を観察した。切削屑が10mm以下に
分断されるものは良、切削屑が分断されるがその長さが10mm以上のものは可、切削屑
が螺旋状につながっているものは不良とした。実用上問題が生じないのは良および可であ
る。なお切削条件は、切削速度30m/min、送り速度0.1mm/rev、切り込み
代0.2mm、とした。バイトは超硬製のものを用い、切削油は不使用とした。
きさと数は、ビレットの横断面の任意の3か所について、走査型電子顕微鏡(SEM)を
用いてそれぞれ3視野について組織観察を行うことにより求めた。大きさ(平均径)は、
1視野当たり10個の化合物の大きさを測定し、その平均をとった。数は、1視野に見ら
れる化合物の数をカウントしてその平均をとり、1mm2あたりの数に換算して10の位
を四捨五入した。金属元素含有化合物の成分は、SEMに付随するエネルギー分散型蛍光
X線分析装置(EDX)を用いて調査した。
本発明の範囲外である比較例、合金No.29、30は、従来例である快削りん青銅、快
削ベリリウム銅である。
IACS以上を満足している。また、切削屑の分断性はいずれも良または可が得られてい
る。
外であることから、引張強さまたは導電率が満足できていない。合金No.25および2
6は、Ni、Si以外の添加元素の含有量が本発明の範囲より少ないことから、金属元素
含有化合物の密度が本発明の1000個/mm2を下回り、切削性が劣っている。また、
合金No.27およびNo.28はNi、Si以外の添加元素の含有量が本発明の範囲よ
り多いことから、導電性が劣っている。
表1の合金No.5およびNo.17について、実験用の小型の鋳型(25mm×25
mm×300mm)を用いて鋳造時の冷却速度を変化させ、種々の金属元素含有化合物の
大きさを持つ小型鋳塊を作成した。なお、試験例1と同様に溶解炉、樋などの溶湯が大気
に接触する部分には、酸化防止のため蓋を被せて窒素ガスを流入した。得られた鋳塊を9
00℃で熱間鍛造し、直に水中焼入れを行い、丸棒を得た。次いで前記丸棒を冷間にて引
抜きを行い直径10mmの丸棒を製造し、さらに450℃で2時間時効熱処理を行った。
このようにして得られた各々の丸棒について、[1]引張強度、[2]導電率、[3]切
削性を前記の方法により調べ、金属元素含有化合物の大きさと数を前記の方法により求め
た。結果を表3に示す。
および分布密度が本発明の範囲内であり、製造された丸棒の切削性が優れていた。サンプ
ルNo.A、Eは冷却速度が速く金属元素含有化合物の大きさが1μm以下となり、製造
された丸棒の切削性が劣っていた。また、サンプルNo.D、Hは冷却速度が遅く金属元
素含有化合物の密度が小さくなり、製造された丸棒の切削性が劣っていた。
試験例2にて、鋳造時の冷却速度が遅いために金属元素含有化合物の分布密度が小さく
なった結果、製造された丸棒の切削性が劣った合金No.5およびNo.17のサンプル
DおよびHについて、切削性に寄与する化合物(金属元素含有化合物)の核として作用す
る化合物(非金属元素含有化合物)を形成させるために、(a)溶解時にるつぼ内に炭素
棒を30分間浸漬、(b)原料に銅−硼素母合金を使用、(c)アルミニウムを0.1%
添加、の追加工程をそれぞれ行い、合金No.5は冷却速度0.2℃/秒で、合金No.
17は冷却速度0.1℃/秒でそれぞれ冷却を行って小型鋳塊を作製した。また、合金N
o.17について、追加工程(a)を行い、冷却速度を変化させて鋳造を行った。得られ
た鋳塊を900℃で熱間鍛造し、直に水中焼入れを行い、丸棒を得た。次いで前記丸棒を
冷間にて引抜きを行い直径10mmの丸棒を製造し、さらに450℃で2時間時効熱処理
を行った。このようにして得られた各々の丸棒について、[1]引張強度、[2]導電率
、[3]切削性を前記試験例1の方法により調べ、金属元素含有化合物の大きさと数を前
記の方法により求めた。またSEM観察時に、金属元素含有化合物の内部に見られた非金
属元素含有化合物について、EDXにより成分調査を行った。結果を表4に示す
H6と表3のサンプルHとの比較から、追加工程(a)、(b)、(c)を行うことによ
り、鋳造時の冷却速度が遅い場合でも金属元素含有化合物の大きさおよび密度は本発明の
範囲内となり、製造された丸棒の切削性が向上していることが分かる。追加工程(a)を
行い冷却速度を変化させた場合は、冷却速度を速くすると、化合物は切削屑を細かく分断
する作用を有する大きさおよび密度になるが、表3のサンプルE、F、Gとの比較より、
冷却速度が速い場合は工程(a)の効果はあまり見られなくなっている。追加工程(a)
、(b)、(c)を行ったものの化合物の内部には、核として作用する炭化物、硼化物な
どの非金属元素含有化合物が観測される。
鋳塊の切削性向上に寄与する化合物のSEM像を示す。図1において、1は金属元素含有
化合物(切削性向上に寄与する化合物)、2は非金属元素含有化合物(核として作用する
化合物)であり、図1の金属元素含有化合物1の中心付近に見られる粒状物は、金属元素
含有化合物1の核として作用する非金属元素含有化合物2であり、具体的にはTiの炭化
物(TiC)である。その化合物の大きさ(平均径)は、約0.6μmであった。
試験例1の合金No.5およびNo.17について、酸化防止のための窒素ガスの流入
を行わずに溶解鋳造を行ってビレットを作製し、試験例1と同じ工程で直径10mmの丸
棒を製造し、評価を行った。結果を表5に示す。
r、Tiが酸化し、Zr、Tiを含有する切削性向上に寄与する化合物の密度は著しく低
下した。その結果、製造された丸棒の切削性は悪化している。
試験例1の合金No.5およびNo.17について、酸化防止の窒素ガスの流入を行わ
ず、酸化されやすい元素としてMgを0.005mass%添加したビレットとMgを無
添加のビレットを作製し、試験例1と同じ工程で直径10mmの丸棒を製造し、評価を行
った。結果を表6に示す。
レットから製造された丸棒は切削性が良好であり、Mgを添加しなかったビレットから製
造された丸棒と比較して切削性の改善がみられた。これは、切削性向上に寄与する化合物
(金属元素含有化合物)を形成するための添加元素であるSi、Zr、Fe、Tiの溶解
時に、これらの元素より酸化されやすい元素であるMgを添加することにより、Mgが優
先的に酸化した結果、切削性向上に寄与する化合物(金属元素含有化合物)を形成するた
めの添加元素はほとんど酸化しなかったためであると考えられる。
2 非金属元素含有化合物(核として作用する化合物)
Claims (9)
- Niを1.5〜7.0mass%、Siを0.3〜1.8mass%を含有し、さらに
、Co、Zr、Ti、Fe、Mn、Cr、Sn、Al、Mg、V、P、Znの群から選ば
れる少なくとも1種を総量で0.05〜2mass%含有し、残部がCuおよび不可避的
不純物からなる銅合金であって、
前記銅合金中にCo、Zr、Ti、Fe、Mn、Cr、Sn、Al、Mg、V、P、Z
nのいずれかを含有する平均径が2μm以上の大きさの晶出物である金属元素含有化合物
が1000個/mm2以上存在することを特徴とする、時効析出型銅合金。 - 前記金属元素含有化合物の内部には、核として作用する化合物が存在し、前記核として
作用する化合物は、前記金属元素含有化合物より融点が高いことを特徴とする、請求項1
に記載の時効析出型銅合金。 - 前記金属元素含有化合物の平均径は、30μm以下であることを特徴とする、請求項1
または請求項2に記載の時効析出型銅合金。 - 前記金属元素含有化合物の密度は、30000個/mm2以下であることを特徴とする
、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の時効析出型銅合金。 - 超硬製のバイトを用いて、切削速度30m/min、送り速度0.1mm/rev、切
り込み代0.2mmの切削性試験をしたとき、切削屑が10mm以下に分断されることを
特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の時効析出型銅合金。 - 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の時効析出型銅合金が所定形状に成形された
銅合金材料であって、成形後の引張強さが500MPa以上、導電率が25%IACS以
上であることを特徴とする、銅合金材料。 - 請求項6に記載の銅合金材料が切削加工されて形成される銅合金部品。
- 請求項6に記載の銅合金材料を製造する方法であって、
非酸化雰囲気で溶解鋳造を行い、鋳造時の冷却速度を0.5℃/秒以上100℃/秒以
下とし、
前記金属元素含有化合物の融点が、前記銅合金材料の原料を溶解し、鋳造した後の工程
における前記銅合金材料の熱間加工温度、焼鈍温度、時効熱処理温度または溶体化温度の
いずれかの最高温度より高温であることを特徴とする、銅合金材料の製造方法。 - 前記金属元素含有化合物を構成する元素より酸化されやすい元素を添加する工程を有す
ることを特徴とする、請求項8に記載の銅合金材料の製造方法。
Priority Applications (1)
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