JP5791488B2 - 熱伝導性シート用樹脂組成物、熱伝導性シート及びパワーモジュール - Google Patents
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Description
他方、鱗片状窒化ホウ素を凝集させた二次粒子の代わりに、球状の窒化アルミニウム(AlN)を配合する方法もあるが、窒化アルミニウムの比誘電率(約9)は、窒化ホウ素の比誘電率(約4)に比べて高く、熱硬化性樹脂の比誘電率(約4)と大きく異なるため、電気絶縁性が大幅に低下してしまう。
また、本発明は、シート厚み方向の熱伝導性及び電気絶縁性に優れた熱伝導性シートを提供することを目的とする。
さらに、本発明は、放熱性及び電気絶縁性に優れたパワーモジュールを提供することを目的とする。
また、本発明は、エポキシ樹脂の硬化物中に充填材を含む熱伝導性シートであって、前記充填材が、鱗片状窒化ホウ素の二次粒子のみからなり、前記二次粒子が、3以上7以下の結晶化度を有する二次粒子を60質量%以上含むことを特徴とする熱伝導性シートである。
さらに、本発明は、一方の放熱部材に搭載された電力半導体素子と、前記電力半導体素子で発生する熱を外部に放熱する他方の放熱部材と、前記電力半導体素子で発生する熱を前記一方の放熱部材から前記他方の放熱部材に伝達する、前記熱伝導性シートとを備えることを特徴とするパワーモジュールである。
本実施の形態の熱伝導性シート用樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」と略す。)は、熱硬化性樹脂と鱗片状窒化ホウ素の二次粒子とを含む。ここで、本明細書において「鱗片状窒化ホウ素の二次粒子」とは、鱗片状窒化ホウ素(以下、「一次粒子」と言うこともある。)を等方的に凝集させ、焼結することによって鱗片状窒化ホウ素同士を結着させたものを意味する。
二次粒子は、熱伝導性シートの製造の際に崩壊して一次粒子がシート内で倒れた状態になることを抑制するため、凝集力が大きいことが望ましい。また、熱伝導性シートの厚み方向の熱伝導性を向上させるため、二次粒子それ自体の熱伝導率が高いことも望ましい。
結晶化度=[(100)+(101)]/(102) (式1)
上記の式1において、(100)、(101)及び(102)は、各面の回折ピーク面積を表す。一般に、二次粒子の結晶化度は、結晶性が低くなると大きな値となり、結晶性が高くなると小さな値となる。完全な結晶性では、二次粒子の結晶化度は1.6程度の値となる。
樹脂組成物中の二次粒子の結晶化度を算出する場合、原料の二次粒子をサンプルとして用いればよい。また、熱伝導性シート中の二次粒子の結晶化度を算出する場合、熱伝導性シートを、電気炉を用い、空気雰囲気中、500℃〜800℃の温度で5〜10時間程度熱処理して灰化することによって得られた二次粒子をサンプルとして用いればよい。
二次粒子の平均粒径は、好ましくは20μm以上180μm以下、より好ましくは40μm以上130μm以下である。ここで、樹脂組成物中の二次粒子の平均粒径を測定する場合、原料の二次粒子をサンプルとし、このサンプルについてレーザー回折・散乱法による粒度分布測定を行うによって求めることができる。また、熱伝導性シート中の二次粒子の平均粒径を測定する場合、熱伝導性シートを、電気炉を用いて500℃〜800℃の温度で空気雰囲気中にて5〜10時間程度熱処理して灰化することによって得た二次粒子をサンプルとし、このサンプルについてレーザー回折・散乱法による粒度分布測定を行うによって求めることができる。二次粒子の平均粒径が20μm未満であると、所望の熱伝導性を有する熱伝導性シートが得られないことがある。一方、二次粒子の平均粒径が180μmを超えると、二次粒子を樹脂組成物中に混合分散させることが困難となり、作業性や成形性に支障を生じることがある。
また、製造する熱伝導性シートの厚さに対する二次粒子の最大粒径が大きすぎる場合、界面を伝って電気絶縁性が低下するおそれがある。そのため、二次粒子の最大粒径は、製造する熱伝導性シートの厚さの約9割以下であることが好ましい。
硬化剤の配合量は、使用する熱硬化性樹脂や硬化剤の種類等に応じて適宜設定する必要があるが、一般的に100質量部の熱硬化性樹脂に対して0.1質量部以上200質量部以下である。
カップリング剤の配合量は、使用する熱硬化性樹脂やカップリング剤の種類等に応じて適宜設定する必要があるが、一般的に100質量部の熱硬化性樹脂に対して0.01質量部以上1質量部以下である。
上記の充填材の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されず、使用する充填材の種類に応じて適宜設定すればよい。
溶剤の配合量は、混練が可能な量であれば特に限定されないが、一般的に、熱硬化性樹脂、二次粒子及び任意の充填材の合計100質量部に対して40質量部以上85質量部以下である。
まず、所定量の熱硬化性樹脂と、この熱硬化性樹脂を硬化させるために必要な量の硬化剤とを混合する。次に、この混合物に溶剤を加えた後、二次粒子及び任意の充填材を加えて予備混合する。なお、樹脂組成物の粘度が低い場合には、溶剤を加えなくてもよい。次に、この予備混合物を3本ロールやニーダなどを用いて混練することによって樹脂組成物を得ることができる。なお、樹脂組成物にカップリング剤を配合する場合、カップリング剤は混練工程前までに加えればよい。
本実施の形態の熱伝導性シートは、上記の樹脂組成物をシート状に成形した後、硬化してなるものである。すなわち、本実施の形態の熱伝導性シートは、熱硬化性樹脂の硬化物中に鱗片状窒化ホウ素の二次粒子を含む。ここで、二次粒子は、3以上7以下の結晶化度を有する二次粒子を60質量%以上含む。
図1は、本実施の形態における熱伝導性シートの断面図である。図1において、熱伝導性シート1は、熱硬化性樹脂の硬化物2と、この熱硬化性樹脂の硬化物2中に分散された二次粒子3とから構成されている。そして、二次粒子3は、鱗片状窒化ホウ素(一次粒子)4から構成されている。
ここで、基材としては、特に限定されず、例えば、離型処理された樹脂シートやフィルムなどの公知の離型性基材が挙げられる。また、熱伝導性シート1を放熱部材上に直接形成する場合には、放熱部材を基材として用いてもよい。ここで、放熱部材としては特に限定されないが、例えば、リードフレーム、ヒートシンク、ヒートスプレッダなどが挙げられる。
樹脂組成物の塗布方法としては、特に限定されず、ドクターブレード法等の公知の方法を用いることができる。
塗布した樹脂組成物の乾燥は、周囲温度で行ってよいが、溶剤の揮発を促進させる観点から、必要に応じて80℃以上150℃以下に加熱してもよい。
塗布乾燥物の硬化温度は、使用する熱硬化性樹脂の種類にあわせて適宜設定すればよいが、一般的に150℃以上250℃以下である。また、硬化時間は、特に限定されないが、一般的に2分以上24時間以下である。
本実施の形態のパワーモジュールは、上記の樹脂組成物から得られる熱伝導性シートを具備する。すなわち、本実施の形態のパワーモジュールは、一方の放熱部材に搭載された電力半導体素子と、電力半導体素子で発生する熱を外部に放熱する他方の放熱部材と、半導体素子で発生する熱を一方の放熱部材から他方の放熱部材に伝達する、上記の熱伝導性シートとを備えることを特徴とする。
図2は、本実施の形態のパワーモジュールの断面図である。図2において、パワーモジュール10は、一方の放熱部材であるリードフレーム12と、他方の放熱部材であるヒートシンク14と、リードフレーム12とヒートシンク14との間に配置された熱伝導性シート11と、リードフレーム12に搭載された電力半導体素子13及び制御用半導体素子15とを備えている。そして、電力半導体素子13と制御用半導体素子15との間、及び電力半導体素子13とリードフレーム12との間は、金属線16によってワイヤボンディングされている。また、リードフレーム12の外部接続部、及びヒートシンク14の外部放熱部以外は封止樹脂17で封止されている。
ワイドバンドギャップ半導体によって形成された電力半導体素子13は、耐電圧性が高く、許容電流密度も高いため、電力半導体素子13の小型化が可能となる。そして、このように小型化された電力半導体素子13を用いることにより、電力半導体素子13を組み込んだパワーモジュールの小型化も可能になる。
また、ワイドバンドギャップ半導体により形成された電力半導体素子13は、耐熱性も高いため、リードフレーム12やヒートシンク14などの放熱部材などの小型化にもつながり、パワーモジュールの一層の小型化が可能になる。
さらに、ワイドバンドギャップ半導体により形成された電力半導体素子13は、電力損失も低いため、素子としての高効率化も可能となる。
また、ヒートシンク14に熱伝導性シート11を直接形成した場合、電力半導体素子13などの各種部品を搭載したリードフレーム12を熱伝導性シート11上に配置した後、これをトランスファーモールド成型用金型に配置し、トランスファーモールド成型装置を用いて封止樹脂17を金型に流し込み、加圧及び加熱して封止すればよい。
なお、上記では、トランスファーモールド法による封止方法を説明したが、それ以外の公知の方法(例えば、プレス成形法、射出成形法、押出成形法)などを用いてもよい。
下記の実施例及び比較例で用いた二次粒子は、鱗片状窒化ホウ素(一次粒子)を含むスラリーをスプレードライ法等の公知の方法によって凝集させた後、約2,000℃で焼結することによって製造した。原料や製造条件等を変えて作製した様々な二次粒子について、X線回折パターンを測定し、結晶化度を算出した。なお、一次粒子の平均長径及び二次粒子の平均粒径は上記の方法によって求めた。作製した二次粒子の特徴を表1に示す。
液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(熱硬化性樹脂、ジャパンエポキシレジン株式会社製エピコート828)100質量部と、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(硬化剤、四国化成工業株式会社製キュアゾール2PN−CN)1質量部とを混合した後、メチルエチルケトン(溶剤)166質量部をさらに加えて混合攪拌した。次に、この混合物に、二次粒子No.Cを287質量部加えて混合した。次に、この混合物を三本ロールにて混練し、二次粒子No.Cが均一に分散された樹脂組成物を得た。
次に、銅箔上に形成したBステージ状態の熱伝導性シートを、熱伝導性シート側が内側になるように2枚重ねた後、120℃で1時間加熱し、さらに160℃で3時間加熱することで、熱硬化性樹脂を完全に硬化させ、2つの銅箔に挟まれた熱伝導性シートを得た。
二次粒子No.Cの代わりに二次粒子No.Dを用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物及び2つの銅箔に挟まれた熱伝導性シートを得た。
(実施例3)
二次粒子No.Cの代わりに二次粒子No.Eを用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物及び2つの銅箔に挟まれた熱伝導性シートを得た。
(実施例4)
二次粒子No.Cの代わりに二次粒子No.Fを用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物及び2つの銅箔に挟まれた熱伝導性シートを得た。
(実施例5)
二次粒子No.Cの代わりに二次粒子No.Gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物及び2つの銅箔に挟まれた熱伝導性シートを得た。
二次粒子No.Cの代わりに二次粒子No.Aを用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物及び2つの銅箔に挟まれた熱伝導性シートを得た。
(比較例2)
二次粒子No.Cの代わりに二次粒子No.Bを用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物及び2つの銅箔に挟まれた熱伝導性シートを得た。
(比較例3)
二次粒子No.Cの代わりに二次粒子No.Hを用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物及び2つの銅箔に挟まれた熱伝導性シートを得た。
(比較例4)
二次粒子No.Cの代わりに二次粒子No.Iを用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物及び2つの銅箔に挟まれた熱伝導性シートを得た。
なお、表2では、上記の各実施例及び比較例で使用した構成成分の配合量等についてもまとめた。また、配合量については質量部を用いて表した。
上記の実施例1〜5及び比較例1〜4の結果を基に、二次粒子の結晶化度とシート厚み方向の熱伝導率との関係を表すグラフを図3に示す。図3に示すように、二次粒子の結晶化度とシート厚み方向の熱伝導性には密接な関係があることがわかる。
二次粒子No.Cの代わりに、二次粒子No.Bを114.8質量部及び二次粒子No.Dを172.8質量部用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物及び2つの銅箔に挟まれた熱伝導性シートを得た。
(実施例7)
二次粒子No.Cの代わりに、二次粒子No.Bを57.4質量部及び二次粒子No.Dを229.6質量部用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物及び2つの銅箔に挟まれた熱伝導性シートを得た。
(実施例8)
二次粒子No.Cの代わりに、二次粒子No.Bを28.7質量部及び二次粒子No.Dを258.3質量部用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物及び2つの銅箔に挟まれた熱伝導性シートを得た。
メチルエチルケトン(溶剤)の量を78質量部にすると共に、二次粒子No.Cの代わりに二次粒子No.Dを用い、その量を82質量部にしたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物及び2つの銅箔に挟まれた熱伝導性シートを得た。
(実施例10)
メチルエチルケトン(溶剤)の量を102質量部にすると共に、二次粒子No.Cの代わりに二次粒子No.Dを用い、その量を127質量部にしたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物及び2つの銅箔に挟まれた熱伝導性シートを得た。
(実施例11)
メチルエチルケトン(溶剤)の量を234質量部にすると共に、二次粒子No.Cの代わりに二次粒子No.Dを用い、その量を446質量部にしたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物及び2つの銅箔に挟まれた熱伝導性シートを得た。
二次粒子No.Cの代わりに、二次粒子No.Bを129.2質量部及び二次粒子No.Dを157.9質量部用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物及び2つの銅箔に挟まれた熱伝導性シートを得た。
なお、表3では、上記の各実施例及び比較例で使用した構成成分の配合量等についてもまとめた。また、配合量については質量部を用いて表した。
このパワーモジュールにおいて、リードフレームと銅のヒートシンクの中央部とに熱電対を取り付けた後、パワーモジュールを稼動させ、リードフレームとヒートシンクとの温度をそれぞれ測定した。その結果、実施例1〜11の熱伝導性シートを用いたパワーモジュールはいずれも、リードフレームとヒートシンクとの温度差が小さく、放熱性に優れていた。
Claims (11)
- エポキシ樹脂と充填材とを含む熱伝導性シート用樹脂組成物であって、
前記充填材が、鱗片状窒化ホウ素の二次粒子のみからなり、
前記二次粒子が、3以上7以下の結晶化度を有する二次粒子を60質量%以上含むことを特徴とする熱伝導性シート用樹脂組成物。 - 前記二次粒子が、20μm以上180μm以下の平均粒径を有することを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性シート用樹脂組成物。
- 前記熱伝導性シート用樹脂組成物の固形分における前記二次粒子の含有量が20体積%以上80体積%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱伝導性シート用樹脂組成物。
- 前記二次粒子を構成する前記鱗片状窒化ホウ素の平均長径が15μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱伝導性シート用樹脂組成物。
- エポキシ樹脂の硬化物中に充填材を含む熱伝導性シートであって、
前記充填材が、鱗片状窒化ホウ素の二次粒子のみからなり、
前記二次粒子が、3以上7以下の結晶化度を有する二次粒子を60質量%以上含むことを特徴とする熱伝導性シート。 - 前記二次粒子が、20μm以上180μm以下の平均粒径を有することを特徴とする請求項5に記載の熱伝導性シート。
- 前記熱伝導性シートにおける前記二次粒子の含有量が20体積%以上80体積%以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の熱伝導性シート。
- 前記二次粒子を構成する前記鱗片状窒化ホウ素の平均長径が15μm以下であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の熱伝導性シート。
- 一方の放熱部材に搭載された電力半導体素子と、前記電力半導体素子で発生する熱を外部に放熱する他方の放熱部材と、前記電力半導体素子で発生する熱を前記一方の放熱部材から前記他方の放熱部材に伝達する、請求項5〜8のいずれか一項に記載の熱伝導性シートとを備えることを特徴とするパワーモジュール。
- 前記電力半導体素子は、ワイドバンドギャップ半導体によって形成されていることを特徴とする請求項9に記載のパワーモジュール。
- 前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化ケイ素、窒化ガリウム系材料又はダイヤモンドであることを特徴とする請求項10に記載のパワーモジュール。
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