JP5790517B2 - 熱間鍛造用圧延棒鋼または線材 - Google Patents

熱間鍛造用圧延棒鋼または線材 Download PDF

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Description

本発明は、熱間鍛造用の圧延棒鋼または線材に関する。さらに詳しくは、歯車、シャフトなど熱間鍛造によって成形される部品の素材となる、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後の熱処理歪が小さく、しかも、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後の、曲げ疲労強度および面疲労強度にも優れた、熱間鍛造用圧延棒鋼または線材に関する。
自動車や産業機械に利用される歯車、シャフト等の鋼製部品は、JIS規格のSCr420、SCM420、SNCM420等の「機械構造用合金鋼鋼材」を用いて、例えば以下の製造方法により製造される。
〈1〉機械構造用合金鋼からなる圧延棒鋼または線材を熱間鍛造または冷間鍛造により粗成形し中間製品を得る。必要に応じて、中間製品に対して焼ならしを行う。
〈2〉中間製品に対して切削加工を施す。
〈3〉切削加工された中間製品に対して、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れを施し、その後、200℃以下の焼戻しを行う。
〈4〉焼入れおよび焼戻しされた中間製品に対して、必要に応じてショットピーニング処理を施す。
以上の製造工程により、接触疲労強度、曲げ疲労強度および耐摩耗性等の特性に優れた鋼製部品が製造される。
近年、自動車の燃費向上やエンジンの高出力化への対応のために、部品の軽量・小型化が進んでいる。これに伴い、部品にかかる負荷が増加する傾向にある。そのため、鋼製部品は、曲げ疲労強度および接触疲労強度が高いことが求められる。
ここで、「接触疲労」には「面疲労」、「線疲労」および「点疲労」が含まれるが、実際には、鋼製部品において線接触や点接触になることはほとんどない。このため、接触疲労強度として「面疲労強度」を取り扱う。
歯車の歯面およびシャフトにおける面疲労による損傷形態は、主にピッチングである。このため、面疲労強度が高いことは、ピッチング強度が高いことを意味する。
一方、コスト低減のため、ショットピーニング等の付加的な表面処理工程を省略したい、との要望も大きい。
さらに、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後の熱処理歪が大きい場合、焼入れ後に行う200℃以下の焼戻し後に切削または研磨が必要となるため、費用の増大と、歩留まりの低下といった問題が生じる。そのため、熱処理歪の低減に対する要望も大きい。
上述のように、鋼製部品用の圧延棒鋼または線材では、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後の、曲げ疲労強度および面疲労強度の向上ならびに熱処理歪の低減について、高いレベルでの両立が求められている。
そこで、例えば、特許文献1〜5に、種々の技術が提案されている。
具体的には、特許文献1に、特定量のC、Si、Mn、S、Cr、AlおよびNなどの元素を含み、さらに、〔Mn/S〕および〔Cr/(Si+2Mn)〕の値を特定の範囲に規定した、曲げ疲労強度および耐ピッチング性に優れ、自動車用歯車など浸炭部品の素材として用いるのに好適な「肌焼鋼」が開示されている。
特許文献2に、特定量のC、Si、Mn、S、Cr、Mo、AlおよびNなどの元素を含み、さらに、〔Mn/S〕および〔Cr/(Si+2Mn)〕の値を特定の範囲に規定した、曲げ疲労強度および耐ピッチング性に優れ、自動車用歯車など浸炭部品の素材として用いるのに好適な「肌焼鋼」が開示されている。
特許文献3に、特定量のC、Si、MnおよびCrなどの元素を含み、さらに、〔Si+Cr〕の値が特定の範囲にあって、浸炭窒化または浸炭浸窒後に焼入焼戻しした場合の表面(C+N)量を規定した、「面疲れ強度の優れた歯車用鋼」が開示されている。
特許文献4に、棒状圧延材の横断面において、等軸晶の占める領域が面積率で30%以下であることなどを規定した、浸炭焼入れ後に形状の修正を行う等の処理を必要としない「熱処理歪の少ない肌焼鋼」が開示されている。
特許文献5に、浸炭用鋼の連続鋳造による鋳片製造方法において、連続鋳造時の鋳型内平均用鋼流速を2cm/s〜15cm/sと規定することによって、熱処理寸法変化のバラツキが抑制され、寸法精度が良好で、熱処理後の切削または研磨などによる形状修正の省略が可能な「熱処理ひずみばらつきの小さい浸炭用鋼の鋳片製造方法および鋳片」が開示されている。
特開2009−249685号公報 特開2009−249684号公報 特開平9−296250号公報 特開平11−131184号公報 特開2003−320439号公報
特許文献1および2で提案された肌焼鋼は、熱処理歪の低減について配慮されていない。
特許文献3で提案された歯車用鋼は、耐ピッチング性には優れているが、熱処理歪の低減について配慮されていない。
特許文献4で提案された肌焼鋼は、浸炭焼入れ後の熱処理歪について、横断面の各位置における成分元素の含有量の違い、特に、容易に偏析する元素であるC、Mn、CrおよびMoの含有量の違いによる、各位置でのMs点の違いが考慮されていない。このため、安定して熱処理歪を低減することが困難である。
特許文献5で提案された技術も、浸炭焼入れ後の熱処理歪について、横断面の各位置における成分元素の含有量の違い、特に、容易に偏析する元素のうちでCを除いた、Mn、CrおよびMoの含有量の違いによる、各位置でのMs点の違いが考慮されていない。このため、安定して熱処理歪を低減することが困難である。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後の、曲げ疲労強度および面疲労強度が高く熱処理歪も小さい、歯車、シャフトなど熱間鍛造によって成形される部品の素材として好適な熱間鍛造用圧延棒鋼または線材を提供することを目的とする。
特許文献1〜3に開示されているとおり、これまでに、SiおよびCr含有量の調整などによって、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後の曲げ疲労強度および面疲労強度の優れた鋼材を得る技術は知られていた。しかしながら、前述したように、これらの特許文献では熱処理歪の低減についての配慮がなされていない。
また、特許文献4および5に開示されているとおり、等軸晶の占める割合を小さくすることや、C濃度のバラツキを小さくすることによって、熱処理歪の小さい鋼材を得る技術は知られていた。しかし、前述したように、等軸晶域の低減やC濃度のバラツキの低減のみでは、熱処理歪を安定して低減することはできない。
そこで、本発明者らは、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後の、曲げ疲労強度および面疲労強度の向上と、熱処理歪の低減とを高いレベルで両立させるために、調査・研究を重ねた。その結果、下記(a)〜(c)の知見を得た。
(a)浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後の、曲げ疲労強度および面疲労強度を高めるためには、結晶粒径の不均一性を抑制することが有効である。結晶粒径の不均一性は、フェライト粒径で評価できる。
(b)熱間鍛造用圧延棒鋼または線材を素材とする中間製品を浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れしたときにマルテンサイト変態が不均一に発生すれば、相変態に伴う不均一な体積変化が起こって熱処理歪が発生する。
(c)熱間鍛造用圧延棒鋼または線材の長手方向に対して垂直な断面(以下「横断面」ということがある。)内におけるマルテンサイト変態点(Ms点)のバラツキが小さければ、該棒鋼または線材を素材とする中間製品を浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れしたときの不均一なマルテンサイト変態の発生を抑制することができるので、浸炭焼入れ後または浸炭窒化焼入れ後の熱処理歪が小さくなる。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)〜(3)に示す熱間鍛造用圧延棒鋼または線材にある。
(1)熱間圧延棒鋼または線材であって、質量%で、
C:0.1〜0.3%、
Si:0.01〜0.6%、
Mn:0.4〜1.0%、
S:0.003〜0.05%、
Cr:0.80〜2.00%、
Mo:0〜0.50%、
Al:0.01〜0.05%および
N:0.010〜0.025%を含有し、
残部はFeおよび不純物からなり、
前記不純物中のP、TiおよびOがそれぞれ、
P:0.025%以下、
Ti:0.003%以下および
O:0.002%以下である化学組成を有し、
半径Rを有する前記棒鋼または線材の長手方向に対して垂直な断面において、前記断面の中心位置と、前記中心位置を中心とした半径(1/3)Rの円上に中心角45°毎に配置される8箇所の第1測定位置と、前記中心位置を中心とした半径(2/3)Rの円上に中心角45°毎に配置され、前記中心位置と前記第1測定位置とを含む直線上にある8箇所の第2測定位置との合計17箇所について、式(1)から求めたMs値の最大値と最小値の差が10以下であり、
さらに、ミクロ組織が、フェライト・パーライト組織、フェライト・パーライト・ベイナイト組織、またはフェライト・ベイナイト組織からなり、
前記断面において、1視野あたりの面積62500μm2でランダムに15視野観察測定したときの、フェライト平均粒径の最大値と最小値の比が2.0以下である、
ことを特徴とする、熱間鍛造用圧延棒鋼または線材。
Ms=550−361×C−39×Mn−20×Cr−5×Mo・・・(1)
但し、式(1)中の元素記号は、その元素の前記各測定位置における質量%での含有量を表す。
(2)Feの一部に代えて、質量%で、
Nb:0.08%以下
を含有することを特徴とする、上記(1)に記載の熱間鍛造用圧延棒鋼または線材。
(3)Feの一部に代えて、質量%で、
Cu:0.40%以下および
Ni:0.80%%以下
のうちから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の熱間鍛造用圧延棒鋼または線材。
なお、残部としての「Feおよび不純物」における「不純物」とは、鉄鋼材料を工業的に製造する際に、原料としての鉱石やスクラップあるいは環境などから混入するものを指す。
「フェライト・パーライト組織」とは、フェライトとパーライトからなる2相組織を、「フェライト・パーライト・ベイナイト組織」とは、フェライト、パーライトおよびベイナイトからなる3相組織を、また、「フェライト・ベイナイト組織」とは、フェライトとベイナイトからなる2相組織を指す。
本発明の熱間鍛造用圧延棒鋼または線材は、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後の、曲げ疲労強度および面疲労強度が高く熱処理歪も小さいので、歯車、シャフトなど熱間鍛造によって成形される部品の素材として好適に用いることができる。
半径Rの棒鋼または線材の横断面において、式(1)からMs値を求める合計17の位置(断面の中心位置、前記中心位置を中心とした半径(1/3)Rの円上に中心角45°毎に配置される8箇所の第1測定位置、および前記中心位置を中心とした半径(2/3)Rの円上に中心角45°毎に配置され、前記中心位置と前記第1測定位置とを含む直線上にある8箇所の第2測定位置)について説明する図である。 実施例で用いたローラピッチング小ローラ試験片の形状を説明する図である。図中の寸法の単位は「mm」である。 実施例で用いた切欠き付き小野式回転曲げ疲労試験片の形状を説明する図である。図中の寸法の単位は「mm」である。 実施例で用いた各種の試験片に施した「浸炭焼入れ」のヒートパターンを説明する図である。図中の「930℃」および「850℃」はそれぞれ、「浸炭温度」および「焼入れのための加熱温度」を指し、「Cp」は、「炭素ポテンシャル」を表す。また、「油冷」は油温90℃の油中に浸漬して焼入れしたことを示す。 実施例で用いたローラピッチング大ローラ試験片の形状を説明する図である。図中の寸法の単位は「mm」である。 実施例で熱処理歪測定のために用いたリング型試験片の形状を説明する図である。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
(A)化学組成
C:0.1〜0.3%
Cは、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れしたときの部品の芯部強度を確保するために必須の元素である。Cの含有量が0.1%未満では、強度が不十分である。一方、Cの含有量が0.3%を超えると、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れしたときの部品の変形量の増加が顕著になる。したがって、Cの含有量を0.1〜0.3%とした。Cの含有量は0.13%以上とすることが望ましく、また、0.25%以下とすることが望ましい。
Si:0.01〜0.6%
Siは、脱酸作用を有する。Siの含有量が0.01%未満では、前記効果が不十分である。一方、Siの含有量が0.6%を超えると、棒鋼または線材の熱間鍛造後や焼きならし後の強度が高くなりすぎ、被削性が大きく低下する。したがって、Siの含有量を0.01〜0.6%とした。Siの含有量は0.10%以上とすることが望ましく、また、0.55%以下とすることが望ましい。
Mn:0.4〜1.0%
Mnは、焼入れ性を高める効果が大きく、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れしたときの部品の芯部強度を確保するために必須の元素である。Mnの含有量が0.4%未満では、前記効果が不十分である。一方、Mnの含有量が1.0%を超えると、その効果が飽和するだけでなく、熱間鍛造後や焼きならし後の被削性の低下が顕著になる。さらに、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れしたときの部品の変形量の増加が顕著になる。したがって、Mnの含有量を0.4〜1.0%とした。Mnの含有量は0.5%以上とすることが望ましく、また、0.9%以下とすることが望ましい。
S:0.003〜0.05%
Sは、Mnと結合してMnSを形成し、被削性を向上させる。しかし、Sの含有量が0.003%未満では、前記の効果が不十分である。一方、Sの含有量が過剰に多くなると、粗大なMnSを生成しやすくなって曲げ疲労強度および面疲労強度が低下し、特にSの含有量が0.05%を超えると、前記疲労強度の低下が顕著になる。したがって、Sの含有量を0.003〜0.05%とした。Sの含有量は0.01%以上とすることが望ましく、また、0.04%以下とすることが望ましい。
Cr:0.80〜2.00%
Crは、焼入れ性および焼戻し軟化抵抗を高める効果が大きく、曲げ疲労強度および面疲労強度の向上に有効な元素である。しかし、Crの含有量が0.80%未満では、前記の効果が不十分である。一方、Crの含有量が2.00%を超えると、熱間鍛造後や焼きならし後の被削性が低下する。さらに、Crは容易に偏析する元素であるので、その含有量が2.00%を超えると、マクロ偏析により前記(1)式で定義されるMs値のバラツキが顕著となって、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後の熱処理歪が大きくなる。したがって、Crの含有量を0.80〜2.00%とした。Crの含有量は0.90%以上とすることが望ましく、また、1.95%以下とすることが望ましい。
Mo:0〜0.50%
Moは、その含有量が0%であっても(つまり、含有されていなくても)よい。ただし、Moは、焼入れ性および焼戻し軟化抵抗を高める効果が大きく、曲げ疲労強度および面疲労強度の向上に有効な元素である。このため、Moを含有してもよい。しかし、Moの含有量が0.50%を超えると、熱間鍛造後や焼きならし後の被削性が低下する。さらに、Moは容易に偏析する元素であるので、その含有量が0.50%を超えると、マクロ偏析により前記(1)式で定義されるMs値のバラツキが顕著となって、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後の熱処理歪が大きくなる。したがって、Moの含有量を0〜0.50%とした。Moの含有量は0.02%以上とすることが望ましく、また、0.45%以下とすることが望ましい。
Al:0.01〜0.05%
Alは、脱酸作用を有する元素である。Alは、Nと結合してAlNを形成しやすいため、浸炭または浸炭窒化加熱時のオーステナイト粒粗大化防止にも有効な元素である。しかし、Alの含有量が0.01%未満では、安定してオーステナイト粒の粗大化を防止できず、粗大化が生じると、曲げ疲労強度が低下する。一方、Al含有量が0.05%を超えると、粗大な酸化物を形成しやすくなり、曲げ疲労強度が低下する。したがって、Alの含有量を0.01〜0.05%とした。Alの含有量は0.02%以上とすることが望ましく、また、0.04%以下とすることが望ましい。
N:0.010〜0.025%
Nは、Al、Nbと結合してAlN、NbNを形成しやすいため、浸炭または浸炭窒化加熱時のオーステナイト粒の粗大化防止に有効な元素である。しかし、Nの含有量が0.010%未満では、安定してオーステナイト粒の粗大化を防止できず、粗大化が生じると、曲げ疲労強度が低下する。一方、Nの含有量が0.025%を超えると、製鋼工程において量産で安定して製造することが難しい。したがって、Nの含有量を0.010〜0.025%とした。Nの含有量は0.013%以上とすることが望ましく、また、0.02%以下とすることが望ましい。
本発明に係る熱間鍛造用圧延棒鋼または線材の化学組成の一つは、上記元素のほか、残部がFeと不純物からなり、不純物中のP、TiおよびO(酸素)がそれぞれ、P:0.025%以下、Ti:0.003%以下およびO:0.002%以下のものである。
以下、不純物中のP、TiおよびOについて説明する。
P:0.025%以下
Pは、粒界偏析して粒界を脆化させやすく、曲げ疲労強度を低下させる元素である。特に、Pの含有量が0.025%を超えると、曲げ疲労強度の低下が著しくなる。したがって、不純物中のPの含有量を0.025%以下とした。不純物中のPの含有量は0.020%以下とすることが好ましい。
Ti:0.003%以下
Tiは、Nと結合して硬質で粗大なTiNを形成しやすい元素であり、TiNは曲げ疲労強度を低下させる。特に、Tiの含有量が0.003%を超えると、曲げ疲労強度の低下が著しくなる。したがって、不純物中のTiの含有量を0.003%以下とした。不純物中のTiの含有量は0.002%以下とすることが好ましい。
O:0.002%以下
O(酸素)は、Alと結合して硬質な酸化物系介在物を形成し、曲げ疲労強度を低下させる。特に、Oの含有量が0.002%を超えると、曲げ疲労強度の低下が著しくなる。したがって、不純物中のO含有量を0.002%以下とした。不純物中のOの含有量は0.001%以下とすることが好ましい。
本発明に係る熱間鍛造用圧延棒鋼または線材の化学組成の他の一つは、Feの一部に代えて、Nb、CuおよびNiのうちの1種以上の元素を含有するものである。
以下、任意元素である上記Nb、CuおよびNiの作用効果と、含有量の限定理由について説明する。
Nb:0.08%以下
Nbは、C、Nと結合してNbC、NbN、Nb(C、N)を形成しやすく、前述したAlNによる浸炭または浸炭窒化加熱時のオーステナイト粒粗大化抑制を補完するのに有効な元素である。したがって、Nbを含有させてもよい。しかしながら、Nbの含有量が0.08%を超えると、オーステナイト粒粗大化防止の効果が却って低下する。このため、含有させる場合のNbの量を0.08%以下とした。なお、含有させる場合のNbの量は0.07%以下とすることが好ましい。
一方、前記したNbの効果を安定して得るためには、含有させる場合のNbの量は0.01%以上とすることが好ましい。
Cu:0.40%以下
Cuは、焼入れ性を高める効果が大きく、曲げ疲労強度および面疲労強度の向上に有効な元素である。したがって、Cuを含有させてもよい。しかしながら、Cuの含有量が0.40%を超えると、熱間鍛造後や焼きならし後の被削性が低下する。このため、含有させる場合のCuの量を0.40%以下とした。なお、含有させる場合のCuの量は0.30%以下とすることが好ましい。
一方、前記したCuの効果を安定して得るためには、含有させる場合のCuの量は0.10%以上とすることが好ましい。
Ni:0.80%以下
Niは、焼入れ性を高める効果が大きく、曲げ疲労強度および面疲労強度の向上に有効な元素である。したがって、Niを含有させてもよい。しかしながら、Niの含有量が0.80%を超えると、熱間鍛造後や焼きならし後の被削性が低下する。このため、含有させる場合のNiの量を0.80%以下とした。なお、含有させる場合のNiの量は0.60%以下とすることが好ましい。
一方、前記したNiの効果を安定して得るためには、含有させる場合のNiの量は0.10%以上とすることが好ましい。
上記のCuおよびNiは、そのうちのいずれか1種のみ、または、2種の複合で含有させることができる。CuとNiを複合して含有させる場合の合計量は、1.20%以下であってもよいが、0.90%以下とすることが好ましい。
(B)式(1)から求めたMs値の最大値と最小値の差
本発明の熱間鍛造用圧延棒鋼または線材は、図1に示す合計17箇所、つまり、該棒鋼または線材の長手方向に対して垂直な断面、つまり、横断面において、前記断面の中心位置と、前記中心位置を中心とした半径(1/3)Rの円上に中心角45°毎に配置される8箇所の第1測定位置と、前記中心位置を中心とした半径(2/3)Rの円上に中心角45°毎に配置され、前記中心位置と前記第1測定位置とを含む直線上にある8箇所の第2測定位置との合計17箇所について、式(1)から求めたMs値の最大値と最小値の差が10以下でなければならない。
Ms=550−361×C−39×Mn−20×Cr−5×Mo・・・(1)
但し、式(1)中の元素記号は、その元素の前記各測定位置における質量%での含有量を表す。
上記の式(1)で表されるMsは、マルテンサイト変態点と相関を有するパラメータであって、素材としての棒鋼または線材における前記17箇所でのMs値の最大値と最小値の差が10以下であれば、横断面内でのマルテンサイト変態点のバラツキが十分に小さくなる。このため、該棒鋼または線材を素材とする中間製品を浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れしたときの不均一なマルテンサイト変態の発生を抑制することができる。換言すれば、中間製品内における相変態に伴う体積変化のタイミングのバラツキは小さい。したがって、浸炭焼入れ後または浸炭窒化焼入れ後の熱処理歪が小さくなる。
これに対して、前記17箇所でのMs値の最大値と最小値の差が10を超えると、浸炭焼入れ後または浸炭窒化焼入れ後の熱処理歪が大きくなるので、切削または研磨が必要になってしまう。
前記17箇所でのMs値の最大値と最小値の差は、小さければ小さいほど好ましく、0が最も好ましい。
前記17箇所におけるMs値は、例えば、次の方法によって求めることができる。
先ず、棒鋼または線材をその長手方向と垂直に切断する。次いで、前記17の各測定位置を中心とする、直径(5/100)R〜(10/100)Rの円領域から化学組成分析用試料、例えば、切粉を、ドリル加工等適宜の方法で採取する。上記試料を用いて化学組成分析を実施し、各位置におけるC、Mn、CrおよびMoの含有量から、式(1)によってMs値を求める。
(C)ミクロ組織
(C−1)相
本発明の熱間鍛造用圧延棒鋼または線材は、組織(相)が、マルテンサイトを含む場合には、マルテンサイトが硬質で延性が低いことに起因して、熱間圧延棒鋼または線材の矯正や運搬時に割れが発生しやすくなるため、フェライト・パーライト組織、フェライト・パーライト・ベイナイト組織、またはフェライト・ベイナイト組織とした。
上記の「相」は、例えば、熱間鍛造用圧延棒鋼または線材の長手方向に垂直、かつ、中心部を含む断面を切り出し、該断面が被検面になるように鏡面研磨した後、ナイタールで腐食してミクロ組織を現出させ、その後、倍率400倍で、視野の大きさを250μm×250μm(=62500μm2)として、光学顕微鏡を用いてランダムに15視野観察することによって同定することができる。
(C−2)フェライト平均粒径
熱間圧延したままの棒鋼または線材の結晶粒径の不均一性は、熱間鍛造後、さらに浸炭焼き入れまたは浸炭窒化焼入れ後にも傾向としては引き継がれ、曲げ疲労強度および面疲労強度に影響する。
そこで、本発明の熱間鍛造用圧延棒鋼または線材においては、結晶粒径の不均一性を、長手方向に対して垂直な断面、つまり、横断面において、1視野あたりの面積62500μm2でランダムに15視野測定したときの、フェライト平均粒径の最大値と最小値の比(以下、「フェライト平均粒径の〔最大値/最小値〕」という。)を指標にして評価する。但し、上記のフェライト平均粒径を観察測定する15視野には、熱間圧延の際に生じた脱炭層が存在する表層領域は含まない。
フェライト粒径を指標にしたのは、パーライトやベイナイトと比較して、フェライトはナイタールでの腐食により粒界を容易に観察でき、フェライト粒径を利用すれば、組織の均一性を評価しやすいためである。また、フェライト平均粒径の〔最大値/最小値〕を指標としたのは、疲労破壊はいずれも、最も強度が低い部分を起点として発生するため、標準偏差を指標とするより適していると考えたためである。
熱間圧延したままの棒鋼または線材ミクロ組織が、前記(C−1)項で述べたフェライト・パーライト組織、フェライト・パーライト・ベイナイト組織、またはフェライト・ベイナイト組織からなる場合に、横断面において、上記1視野あたりの面積62500μm2でランダムに15視野観察測定したときの、フェライト平均粒径の〔最大値/最小値〕が2.0以下であれば、結晶粒径が均一なため、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後の、曲げ疲労強度および面疲労強度が一層高い。
これに対して、熱間圧延したままの棒鋼または線材ミクロ組織が、前記(C−1)項で述べたフェライト・パーライト組織、フェライト・パーライト・ベイナイト組織、またはフェライト・ベイナイト組織であっても、上記フェライト平均粒径の〔最大値/最小値〕が2.0を超えると、結晶粒径の不均一性に起因して、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後の、曲げ疲労強度および面疲労強度が低下する。
熱間圧延したままの棒鋼または線材の結晶粒径が均一であればあるほど、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後の、曲げ疲労強度および面疲労強度が高くなって好ましい。したがって、上述したフェライト平均粒径の〔最大値/最小値〕は1.6以下であることが好ましく、1であれば最も好ましい。
上記の「フェライト平均粒径」は、例えば、熱間鍛造用圧延棒鋼または線材の中心部を含む横断面を切り出し、該断面が被検面になるように鏡面研磨した後、ナイタールで腐食してミクロ組織を現出させ、その後、倍率400倍で、視野の大きさを250μm×250μm(=62500μm2)として、後学顕微鏡を用いてランダムに15視野観察して撮影した写真を、通常の方法で画像処理して測定することができる。次いで、このようにして測定したフェライト平均粒径の最大値および最小値から〔最大値/最小値〕を求めることができる。
本発明の熱間鍛造用圧延棒鋼または線材は、例えば、次に述べる方法によって製造することができる。
先ず、前記(A)項で述べた化学組成を有する鋼を溶製して、連続鋳造法により鋳片を製造する。
なお、連続鋳造法では、モールド下方に長さ1.5m以上の垂直部を有する連続鋳造機を用い、モールド内で電磁攪拌を実施するのが好ましい。
また、連続鋳造法では、凝固途中の鋳片に圧下を加えるのが好ましい。
次いで、製造した鋳片を加熱炉に装入し、1250〜1300℃の加熱温度で10時間以上加熱した後、分塊圧延して鋼片を製造する。なお、上記の加熱温度は炉内の平均温度を意味し、加熱時間は在炉時間を意味する。
このようにして得た鋼片を加熱炉に装入し、1250〜1300℃の加熱温度で1.5時間以上加熱した後、仕上げ温度を900〜1100℃として熱間圧延し、仕上げ圧延を行った後は、大気中で、冷却速度が放冷以下となる条件で冷却する。
仕上げ圧延を行った後は、冷却速度が上記の放冷以下となる条件で、室温に至るまで冷却しても構わないが、生産性を高めるためには、600℃に至った時点で、空冷、ミスト冷却および水冷など、適宜の手段で冷却することが好ましい。
なお、上記の加熱温度および加熱時間もそれぞれ、炉内の平均温度および在炉時間を意味する。また、熱間圧延の仕上げ温度は、複数のスタンドを備える圧延機の最終スタンド出口での棒鋼または線材の表面温度を意味する。仕上げ圧延を行った後の冷却速度は、棒鋼または線材の表面での冷却速度を指す。
鋼片から熱間圧延によって棒鋼または線材に加工する際、下記の式(2)で表される減面率(RD)を、87.5%以上にすることが好ましい。
RD={1−(棒鋼または線材の断面積/鋼片の断面積)}×100・・・(2)
なお、上記の断面積は、長手方向に対して垂直な断面における面積、つまり、横断面の面積を意味する。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
(実施例1)
表1に示す化学組成を有する鋼Aを70トン転炉で成分調整した後、表2に示す各条件で連続鋳造を行って、400mm×300mm角の鋳片を作製し、600℃まで冷却した。なお、連続鋳造の凝固途中の段階で圧下を加えた。上記の鋼Aは、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼のうちで、Moを含まない鋼であり、汎用鋼種であるJIS規格のSCr420Hに相当する鋼である。
このようにして作製した鋳片を、上記の600℃から1200℃または1280℃に再度加熱した後、分塊圧延して180mm×180mm角の鋼片を作製し、室温まで冷却した。さらに、上記180mm×180mm角の鋼片を加熱した後、熱間圧延を行って直径50mmおよび70mmの棒鋼を得た。
表2に、製造条件〈1〉〜〈5〉として、連続鋳造条件ならびに、400mm×300mmの鋳片から直径50mmおよび70mmの棒鋼に仕上げるに際しての、分塊圧延のための鋳片加熱条件、棒鋼圧延のための鋼片加熱条件および棒鋼圧延時の仕上げ条件の詳細を示す。なお、棒鋼圧延時の仕上げ条件は、そのうちで仕上げ圧延前の水冷の有無、仕上げ温度および仕上げ圧延を行った後の冷却の条件だけを示した。
なお、製造条件〈1〉は、汎用鋼種であるJIS規格のSCr420Hを用いて鋳片から棒鋼を圧延する場合の標準的な製造条件である。
Figure 0005790517
Figure 0005790517
上記のようにして得た圧延棒鋼のうち直径50mmの棒鋼を用いて、ミクロ組織の調査を行い、また、直径70mmの棒鋼を用いて、図1に示す合計17箇所における前記(1)式で定義されるMs値の調査を行った。
すなわち、直径50mmの圧延棒鋼の長手方向に垂直、かつ、中心部を含む断面(横断面)を切り出した後、鏡面研磨してナイタールで腐食した試験片について、表層の脱炭層を除いた領域を倍率400倍で、ランダムに各15視野観察してミクロ組織(相)を調査した。なお、各視野の大きさは250μm×250μmとした。次いで、上記の各視野について通常の方法による画像解析を行って、フェライトの平均粒径を求め、これからフェライト平均粒径の最大値と最小値の比を算出した。
また、直径70mmの圧延棒鋼の横断面において、図1に示す合計17箇所(断面の中心位置、前記中心位置を中心とした棒鋼半径の1/3の円上に中心角45°毎に配置される8箇所、および前記中心位置を中心とした棒鋼半径の2/3の円上に中心角45°毎に配置され、前記中心位置と前記棒鋼半径の1/3の円上の位置とを含む直線上にある8箇所)から、直径5mmのドリルで切粉を採取して化学組成分析を実施した。次いで、各位置におけるC、MnおよびCrの含有量から、
Ms=550−361×C−39×Mn−20×Cr−5×Mo・・・(1)
(但し、式(1)中の元素記号は、その元素の前記各測定位置における質量%での含有量を表す。)
によってMs値を求め、これからMs値の最大値と最小値の差を算出した。なお、鋼Aは、Moを含まない鋼であるため、Moは検出されなかった。
さらに、直径50mmの圧延棒鋼を、1200℃で30分加熱し、仕上げ温度が950℃以上になるように熱間鍛造して、直径35mmの丸棒を得た。次いで、上記の直径が35mmの各丸棒の中心部から、機械加工により、図2に示すローラーピッチング小ローラー試験片および図3に示す形状の切欠き付き小野式回転曲げ疲労試験片を作製した。
上記の各試験片に対し、ガス浸炭炉を用いて、図4に示す条件で浸炭焼入れを行い、次いで、170℃で1.5時間の焼戻しを行った。
上記の浸炭焼入れ−焼戻しを施したローラーピッチング小ローラー試験片および切欠き付き小野式回転曲げ疲労試験片は、熱処理ひずみを除く目的で、つかみ部の仕上げ加工を行い、それぞれ、次の[1]に示す小野式回転曲げ疲労試験および[2]に示すローラピッチング試験に供した。
[1]小野式回転曲げ疲労試験
仕上げ加工した切欠き付き小野式回転曲げ疲労試験片を用いて、下記の試験条件によって小野式回転曲げ疲労試験を実施し、繰り返し数が1.0×104回および1.0×107回まで破断しなかったうち、最も高い応力をそれぞれ、「中サイクル回転曲げ疲労強度」および「高サイクル回転曲げ疲労強度」とした。
なお、上記の回転曲げ疲労強度の目標値は、製造条件〈1〉で製造した試験番号1の中サイクル回転曲げ疲労強度および高サイクル回転曲げ疲労強度を、それぞれ「100」として基準化した場合に、いずれも10%以上上回る、すなわち110以上となることとした。
・試験数:8、
・温度:室温、
・雰囲気:大気中、
・回転数:3000rpm。
[2]ローラーピッチング試験
ローラーピッチング試験は、仕上げ加工したローラーピッチング小ローラー試験片と図5に示す形状のローラーピッチング大ローラー試験片の組み合わせで、表3に示す条件で行った。なお、潤滑油をローラーピッチング小ローラー試験片とローラーピッチング大ローラー試験片の接触部に噴出させて実施した。
表3における「すべり率」は、小ローラー試験片の周速をV1、大ローラー試験片の周速をV2として、下記の式で計算される値を指す。
{(V1−V2)/V1}×100。
上記のローラーピッチング大ローラー試験片は、JIS規格のSCM420Hを用いて、一般的な製造工程、つまり、「焼ならし、試験片加工、ガス浸炭炉による共析浸炭、低温焼戻しおよび研磨」の工程によって作製した。
各試験番号について、ローラーピッチング試験における試験数は6とし、縦軸に面圧、横軸にピッチング発生までの繰り返し数をとったS−N線図を作成し、繰り返し数2.0×107回までピッチングが発生しなかったうち、最も高い面圧を「面疲労強度」とした。
なお、ローラーピッチング小ローラーの試験部の表面が損傷している箇所のうち、最大のものの面積が1mm2以上になった場合をピッチング発生とした。
なお、上記の面疲労強度の目標値は、製造条件〈1〉で製造した試験番号1の面疲労強度を「100」として基準化した場合に、15%以上上回る、すなわち115以上となることとした。
Figure 0005790517
また、直径70mmの圧延棒鋼に、925℃で1時間加熱した後大気中で放冷する焼ならしを行い、その後、上記の直径が70mmの各圧延棒鋼の中心部から、機械加工により、図6に示すような外径60mm−内径20mm−厚さ25mmのリング型試験片を作製した。
次いで、上記のリング型試験片に対して、ガス浸炭炉を用いて、図4に示す条件で浸炭焼入れを行い、次いで、170℃で1.5時間の焼戻しを行った後、熱処理歪の調査に供した。熱処理歪の調査は、端面の外径真円度(長径と短径の差)を測定することにより実施した。
なお、上記の熱処理歪の目標値は、製造条件〈1〉で製造した試験番号1の端面の外径真円度を「100」として基準化した場合に、30%以上下回る、すなわち70以下となることとした。
表4に、上記の各調査結果を、棒鋼の製造条件とともにまとめて示す。なお、表4における製造条件記号は、前記表2に記載した製造条件記号に対応するものである。また、表4のMs値の欄における「ΔMs」は、Ms値の最大値と最小値の差を表す。
Figure 0005790517
表4から、本発明で規定する条件を満たす試験番号2および3の「本発明例」の場合は、曲げ疲労強度(中サイクル回転曲げ疲労強度および高サイクル回転曲げ疲労強度)と面疲労強度が高く、しかも、端面の外径真円度は良好で熱処理歪が小さいことが明らかである。
これに対して、本発明で規定する条件を満たさない「比較例」の試験番号4および5は、曲げ疲労強度、面疲労強度および熱処理歪特性のすべてに劣っている。
(実施例2)
表5に示す化学組成を有する鋼B〜Hを70トン転炉で成分調整した後、連続鋳造を行って、400mm×300mm角の鋳片を作製し、600℃まで冷却した。なお、連続鋳造の凝固途中の段階で圧下を加えた。
表5中の鋼B〜Eおよび鋼Hはいずれも、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼である。一方、鋼Fおよび鋼Gは、化学組成が本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼である。
このようにして作製した鋳片を、上記の600℃から1200℃または1280℃に再度加熱した後、分塊圧延して180mm×180mm角の鋼片を作製し、室温まで冷却した。さらに、上記180mm×180mm角の鋼片を加熱した後、熱間圧延を行って直径50mmおよび70mmの棒鋼を得た。
Figure 0005790517
上記のようにして得た圧延棒鋼を用いて、前記の「(実施例1)」と同様の方法で、ミクロ組織の調査、Ms値の調査、小野式回転曲げ疲労試験、ローラーピッチング試験および熱処理歪の調査を行った。
なお、回転曲げ疲労強度(中サイクル回転曲げ疲労強度および高サイクル回転曲げ疲労強度)、面疲労強度および熱処理歪の目標値は、それぞれ、前記の「(実施例1)」における目標値に設定した。
表6に、上記の各調査結果を、棒鋼の製造条件とともにまとめて示す。表6には、上記の各特性の目標値評価基準となる前記「(実施例1)」の表4に示した試験番号1を併記した。
なお、表6における製造条件記号は、前記「(実施例1)」の表2に記載した製造条件記号に対応するものである。また、表6のMs値の欄における「ΔMs」も、Ms値の最大値と最小値の差を表す。
Figure 0005790517
表6から、本発明で規定する条件を満たす試験番号6、9、11、13および20の「本発明例」の場合は、曲げ疲労強度(中サイクル回転曲げ疲労強度および高サイクル回転曲げ疲労強度)と面疲労強度が高く、しかも、端面の外径真円度は良好で熱処理歪が小さいことが明らかである。
これに対して、本発明で規定する条件を満たさない「比較例」の試験番号7、8、10、12、14〜19および21は、曲げ疲労強度、面疲労強度および熱処理歪特性のうち少なくともいずれかの特性に劣っている。
本発明の熱間鍛造用圧延棒鋼または線材は、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後の、曲げ疲労強度および面疲労強度が高く熱処理歪も小さいので、歯車、シャフトなど熱間鍛造によって成形される部品の素材として好適に用いることができる。

Claims (3)

  1. 熱間圧延棒鋼または線材であって、質量%で、
    C:0.1〜0.3%、
    Si:0.01〜0.6%、
    Mn:0.4〜1.0%、
    S:0.003〜0.05%、
    Cr:0.80〜2.00%、
    Mo:0〜0.50%、
    Al:0.01〜0.05%および
    N:0.010〜0.025%を含有し、
    残部はFeおよび不純物からなり、
    前記不純物中のP、TiおよびOがそれぞれ、
    P:0.025%以下、
    Ti:0.003%以下および
    O:0.002%以下である化学組成を有し、
    半径Rを有する前記棒鋼または線材の長手方向に対して垂直な断面において、前記断面の中心位置と、前記中心位置を中心とした半径(1/3)Rの円上に中心角45°毎に配置される8箇所の第1測定位置と、前記中心位置を中心とした半径(2/3)Rの円上に中心角45°毎に配置され、前記中心位置と前記第1測定位置とを含む直線上にある8箇所の第2測定位置との合計17箇所について、式(1)から求めたMs値の最大値と最小値の差が10以下であり、
    さらに、ミクロ組織が、フェライト・パーライト組織、フェライト・パーライト・ベイナイト組織、またはフェライト・ベイナイト組織からなり、
    前記断面において、1視野あたりの面積62500μm2でランダムに15視野観察測定したときの、フェライト平均粒径の最大値と最小値の比が2.0以下である、
    ことを特徴とする、熱間鍛造用圧延棒鋼または線材。
    Ms=550−361×C−39×Mn−20×Cr−5×Mo・・・(1)
    但し、式(1)中の元素記号は、その元素の前記各測定位置における質量%での含有量を表す。
  2. Feの一部に代えて、質量%で、
    Nb:0.08%以下
    を含有することを特徴とする、請求項1に記載の熱間鍛造用圧延棒鋼または線材。
  3. Feの一部に代えて、質量%で、
    Cu:0.40%以下および
    Ni:0.80%%以下
    のうちから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の熱間鍛造用圧延棒鋼または線材。
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