JP5782753B2 - 高Cr高Ni合金管の製造方法および高Cr高Ni合金 - Google Patents

高Cr高Ni合金管の製造方法および高Cr高Ni合金 Download PDF

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Description

本発明は、高温構造材料(耐熱材料)として使用される、良好な靱性を備えた高Cr高Ni合金管の製造方法に関する。また、本発明は、良好な靱性を備えた高Cr高Ni合金に関する。
別に記載がない限り、本明細書における用語の定義は次のとおりである。
「%」:対象物に含まれる各成分の質量百分率(質量%)を表す。
「高Cr高Ni合金」:Niを主成分とし、その含有量がステンレス鋼よりも多く、Ni基合金よりは少なく、CrをNiに次いで多く含む合金をいう。概念的には、ステンレス鋼とNi基合金の中間に位置する合金である。管、板、その他定形もしくは不定形の部材、またはそれらの加工品であって、前記成分範囲内の合金はいずれもここでいう高Cr高Ni合金である。なお、「高Cr高Ni合金管」とは、高Cr高Ni合金製の管である。
「Cr析出量」:本発明の高Cr高Ni合金管の製造工程で、熱間加工後もしくは熱間加工に加えて冷間加工の後に熱処理を行った際に結晶粒界に析出するCrの析出物(主として、炭化物)、または本発明の高Cr高Ni合金において結晶粒界に析出しているCrの析出物(主として、炭化物)中のCr量の当該高Cr高Ni合金量に対する比率(百分率表示)をいう。この「Cr析出量」は、熱処理を行った後の高Cr高Ni合金管を電解して得られた抽出残渣の定量分析により求められる。
火力発電用ボイラ、蒸気タービンおよびガスタービン、化学工業用各種反応装置、原子力プラント等において使用される耐熱材料には、高温強度(引張強さ、クリープ強さ)が高く、高温耐酸化性・耐食性に優れていることに加え、延性、靱性も良好であることが要求される。耐熱材料としては、実際の使用環境の温度(使用温度)に応じて、Cr−Mo系低合金鋼、Cr量が9%以上のフェライト系およびマルテンサイト系ステンレス鋼、18Cr−8NiにMo、Nb、Ti等の合金元素を添加し、またはさらにCrやNiを増量したオーステナイト系ステンレス鋼、Niを主成分とし、Cr量を増した高Cr高Ni合金、Feをほとんど含まないNi基合金等が使用されている。
高Cr高Ni合金は、耐用温度の高い耐熱材料として、従来から火力発電プラントやガスタービンの高温部、原子力プラントの蒸気発生器等において使用されてきた。
ところが、高Cr高Ni合金製の管においては、製造の過程で、耐熱材料に要求される重要な特性の一つである靭性(シャルピー衝撃試験における20℃の衝撃値、以下、「20℃シャルピー衝撃値」、または単に「20℃衝撃値」ともいう)が低くなる場合があった。
高Cr高Ni合金管は、例えば、電気炉により溶製して得られた合金塊に、均熱処理、分塊(鍛造)、熱間での圧延または押出し加工が施され、必要に応じて、引き抜きまたは圧延による冷間加工、溶体化熱処理、およびスケール除去のための酸洗等の各工程を経て製造される。
具体的な例をあげると、Crを22.8%、Niを44.6%含有し、C、Si、Mn、Ti、Nb、Al、BおよびWを特定した(残部はFeおよび不純物)高Cr高Ni合金の管を、溶体化熱処理後、靭性(20℃シャルピー衝撃値)が低下する場合がある。靱性の低下は、後に詳述するように、溶体化熱処理の際にCr炭化物が粒界に析出したことによるものである。同様の靭性低下は、Crを29.8%、Niを50.1%含有し、C、Si、Mn、Ti、Nb、Zr、Al、BおよびWを特定した(残部はFeおよび不純物)高Cr高Ni合金の管を、溶体化熱処理した材料でも確認された。
前記の靱性低下の抑制を課題として取り上げ、解決策を提示している文献等は見当たらない。しかし、粒界近傍における腐食損傷を低減させ、耐粒界応力腐食割れ性を向上させるための研究開発は従来から行われてきた。
例えば、特許文献1には、Ni:58%以上、Cr:28〜31%を含有するNi基合金を加圧水型原子炉の発電プラントの蒸気発生器伝熱管に使用する場合の耐粒界腐食損傷性を大幅に向上させるNi基合金の製造方法が開示されている。この方法は、5〜20%の冷間加工と1070〜1200℃で1〜60分間の熱処理を組み合わせることによってNi基合金中に再結晶を生じさせ、耐腐食性の大きい対応粒界(両側の結晶粒がある結晶軸を対称に数度傾けると結晶格子が同じになる結晶粒界)の生成率を上げることにより耐粒界腐食損傷性を高める方法である。
特許文献2には、Cr:35%を超え40%以下、Ni:50〜57%を含有するNi基合金を加圧水型原子力発電所の熱交換器伝熱管に使用する場合の耐応力腐食割れ性に優れたNi基合金の熱処理方法が開示されている。この方法は、Ni基合金の製造時の最終焼鈍(溶体化処理に相当する)において、1000〜1200℃の温度域で1〜60分間保持した後、900〜500℃の温度範囲を冷却速度1〜100℃/secで冷却する方法である。
しかし、特許文献1、2に記載の方法はいずれも、CrおよびNiの含有量が本発明で対象とする高Cr高Ni合金における含有量とは異なる。さらに、これら文献に記載の方法は、粒界近傍における腐食損傷を低減させ、または耐粒界応力腐食割れ性を向上させるための手段であり、靱性低下の抑制については何も記載されていない。
特開2002−309355号公報 特開平−239739号公報
本発明の目的は、耐熱材料として高Cr高Ni合金管を製造するにあたって、靭性(シャルピー衝撃試験における20℃の衝撃値)の低下が起こらず、良好な靱性を備えた高Cr高Ni合金管の製造方法を提供することである。
本発明の他の目的は、良好な靱性を備えた高Cr高Ni合金を提供することである。
(1)質量%でC:0.05〜0.09%、Si:0.1〜0.3%、Mn:0.05〜1.3%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Ni:44〜52%、Cr:27〜32%、Ti:0.05〜1.0%、sol.Al:0.005〜0.2%、B:0.001〜0.008%およびW:4〜10%、並びにNb:0.005〜0.25%およびZr:0.001〜0.05%のうちの1種または2種を含有し、残部がFeおよび不純物からなる高Cr高Ni合金管の製造方法であって、熱間加工後の連続熱処理炉またはバッチ炉を用いた熱処理において、当該高Cr高Ni合金管を1180℃以上に加熱する均熱処理を行った後、放冷過程に続き、水冷過程で下記(i)式を満たす条件で冷却することを特徴とする高Cr高Ni合金管の製造方法。
ΔT×Δt/2≦100 ・・・(i)
ただし、ΔT:均熱温度と均熱後の急冷開始温度との差(℃)
Δt:均熱後、急冷開始までの時間(min)
本発明の高Cr高Ni合金管の製造方法によれば、溶体化熱処理の際のCr炭化物の粒界析出による靭性(20℃シャルピー衝撃値)の低下が起こらない、良好な靱性を備えた高Cr高Ni合金管を製造することができる。また、本発明の高Cr高Ni合金は、管、板その他いかなる形状の部材やそれらの加工品であっても良好な靱性を備えている。
Cr析出量と20℃衝撃値の関係を示す図であり、(a)は第一の調査に用いた高Cr高Ni合金管の結果を示し、(b)は第二の調査に用いた高Cr高Ni合金管の結果を示している。 ΔT×Δt/2とCr析出量の関係を示す図であり、(a)は第一の調査に用いた高Cr高Ni合金管の結果を示し、(b)は第二の調査に用いた高Cr高Ni合金管の結果を示している。 熱処理における合金素管の経時的な温度変化を模式的に示す図である。
本発明者らは、靭性(20℃シャルピー衝撃値)の低下を抑えて良好な靱性を備えた高Cr高Ni合金管の製造方法を確立するために、溶体化熱処理により、シャルピー衝撃試験における20℃の衝撃値が、一般に良好とされている範囲(150J/cm2以上)から外れて110J/cm2程度まで低下した高Cr高Ni合金の小径管(外径50.8mm)について、材料表面およびその近傍の組織を調査した。
第一の調査に用いた高Cr高Ni合金管の化学組成は、C:0.08%、Si:0.30%、Mn:0.92%、P:0.010%、S:0.0005%、Cr:22.8%、Ni:44.6%、W:6.87%、Ti:0.10%、Nb:0.18%、sol.Al:0.027およびB:0.0047%を含有し、残部がFeおよび不純物である。第一の調査の結果、酸洗による材料表面の荒れ(以下、「酸荒れ」という)が認められた。さらに、光学顕微鏡観察によると、材料表面近傍の粒界に割れが生じており、その粒界には比較的粗大な析出物が析出していることが判明した。
第二の調査に用いた高Cr高Ni合金管の化学組成は、C:0.07%、Si:0.11%、Mn:0.15%、P:0.010%、S:0.0005%、Cr:29.8%、Ni:50.1%、W:4.95%、Ti:0.77%、Nb:0.02%、Zr:0.026%、sol.Al:0.100%およびB:0.0023%を含有し、残部がFeおよび不純物である。第二の調査の結果、光学顕微鏡による組織観察から、結晶粒界に比較的粗大な析出物が析出していることが判明した。この粗大な析出物が靭性低下の一因になっていると推定された。一方、熱処理後の酸洗による酸荒れは認められなかった。
そこで、材料を10%アセチルアセトン−1%テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノール溶液で電解して析出物を残渣として抽出し、抽出残渣の定量分析を実施した。分析の結果、Cr析出量(すなわち、析出物中のCr量の材料質量に対する百分率)は、第一の調査に用いた材料では0.40%、第二の調査に用いた材料では0.46%であることが明らかになった。また、分析結果から、粒界に析出している炭化物はM236などのCr炭化物と推定された。
以上の結果を総合すると、以下のように結論づけることができる。
(a)調査に用いた高Cr高Ni合金管では、溶体化熱処理の際にCr炭化物が粒界に析出して靭性が低下する。
(b)炭化物の周囲(粒界近傍)にはCr濃度の低い領域(以下、「Cr欠乏領域」という)が形成されると推定される。材料中のCr濃度が25%以下の材料ではCr欠乏領域の形成により、酸洗処理の際に粒界近傍の酸による腐食が促進され、酸荒れや粒界に沿った割れが生じることがある。母材のCr含有量が29.8%と高い場合には酸荒れはみられない。
したがって、本発明合金の靭性を確保するためには、溶体化熱処理後の粒界への炭化物の析出を抑制することが重要であると考えられる。
そこで、溶体化熱処理後の結晶粒界への炭化物の析出を抑制するために、具体的にどのような熱処理が必要であるかを検討した。
前記第一の調査および第二の調査に用いた高Cr高Ni合金管と同様の素材から、肉厚11mm×幅11mm×長さ55mmの試験用素材を採取し、試験片の中央部10mmを高周波誘導加熱し、表1および表2に示す条件で熱処理を実施した。均熱温度は1230℃とした。急冷はヘリウムガスによる制御冷却を実施し、急冷開始までの温度勾配は、時間に対して直線関係になるように設定した。
熱処理後の試験片から衝撃試験片(JIS Z 2202で規定されるVノッチシャルピー試験片)を採取して20℃で衝撃試験を行うとともに、抽出残渣を採取してCr析出量を調査した。第一の調査に用いた高Cr高Ni合金管の結果を表1に示し、第二の調査に用いた高Cr高Ni合金管の結果を表2に示す。
Figure 0005782753
Figure 0005782753
表1および表2に、20℃衝撃試験結果およびCr析出量の調査結果を併せて示す。
表1および表2の「20℃衝撃値」欄の記号の意味は次のとおりである。
○:良好。20℃衝撃値が150J/cm2以上であることを示す。
×:不良。20℃衝撃値が150J/cm2未満であることを示す。
図1は、表1および表2に示した結果を図示したものであり、Cr析出量と20℃衝撃値の関係を示す図である。図1(a)は第一の調査に用いた高Cr高Ni合金管の結果を示し、図1(b)は第二の調査に用いた高Cr高Ni合金管の結果を示している。同図によれば、Cr析出量と20℃衝撃値の間には明瞭な相関関係がある。20℃衝撃値が150J/cm2以上であれば、高Cr高Ni合金系耐熱材料の靱性として良好であるといえる。
図1(a)、(b)から、20℃シャルピー衝撃値が150J/cm2以上のときのCr析出量は0.3%以下であることが分かる。したがって、溶体化熱処理後の粒界への炭化物の析出をCr析出量で0.3%以下とすることにより、靭性の低下を抑えて靱性を良好に維持することが可能となる。
図2は、同じく表1および表2に示した結果を図示したものであり、ΔT×Δt/2とCr析出量の関係を示す図である。図2(a)は第一の調査に用いた高Cr高Ni合金管の結果を示し、図2(b)は第二の調査に用いた高Cr高Ni合金管の結果を示している。ΔT×Δt/2とCr析出量の間には明瞭な相関関係が認められる。
図2(a)、(b)から、Cr析出量を0.3%以下とするためには、溶体化熱処理後の冷却条件を制御して、ΔT×Δt/2を100以下とすればよいことが分かる。
本発明は、上記の知見に基づきなされたものである。
以下に、本発明において、高Cr高Ni合金の化学組成、冷間加工後の熱処理条件、さらには当該合金の電解抽出残渣中のCr析出量を上記のように定めた理由について詳細に説明する。
1.高Cr高Ni合金の化学組成
C:0.05〜0.09%
Cは炭化物を形成して高Cr高Ni合金として必要な高温引張強さ、高温クリープ強度を確保する上で必要な成分であり、0.05%以上含有させることが必要である。しかし、その含有量が0.09%を超えると、Crの炭化物が増えて高Cr高Ni合金の靱性に悪影響を及ぼすおそれがあるので上限は0.09%とした。望ましいC含有量は0.055〜0.085%である。
Si:0.1〜0.3%
Siは、溶製時の脱酸剤として必要な元素であり、最低でも0.05%含有させることが必要である。しかし、その含有量が過剰になると当該合金の加工性が低下する。Si含有量は0.1〜0.3%である。
Mn:0.05〜1.3%
Mnは、当該合金中に含まれる不純物のSと結合してMnSを形成し、熱間加工性を向上させるが、その含有量が0.05%未満ではこの効果が十分ではない。一方、その含有量が過剰になると合金が硬くなり、加工性や溶接性が損なわれるので上限は1.3%とした。望ましいMn含有量は0.7〜1.1%であり、さらに望ましくは0.9〜1.1%である。
P:0.015%以下
Pは不純物として不可避的に混入する。過剰なPは溶接性および加工性を害するので、上限は0.015%とする。望ましい上限は0.012%である。
S:0.005%以下
SもPと同様に不純物として不可避的に混入する。過剰なSは溶接性および加工性を害するので、上限は0.005%とする。望ましい上限は0.0015%である。
Ni:44〜52%
Niは、本発明の高Cr高Ni合金の主成分であり、オーステナイト組織を安定にする元素である。高温耐食性を確保する上からも重要な合金元素である。Ni量はCr量とのバランスから決定されるため一概に上下限を定めることは難しいが、Crの下限が22%の場合でも44%以上は必要である。一方、Crの上限が32%の場合にNiの含有量が過剰になるとコスト上昇を招くので、上限は52%とした。
Cr:27〜32%
Crは、高温耐酸化性・耐食性を確保するための重要な合金元素である。高温下での十分な耐食性を確保するためには22%以上含有させることが必要である。Cr含有量が多いほど高温耐食性は向上する。さらにCrを27%以上含有する場合、高温での使用中にCr主体の微細な析出物が析出して高温強度に寄与する。そのため、高温強度を高めたい場合、27%以上のCrを含有させる。一方、その含有量が32%を超えるとオーステナイト組織を安定にするためにNi含有量を高めなければならず、コスト上昇を招くので、上限は32%とした。
Ti:0.05〜1.0%
Tiは、高温域での使用中における炭化物の析出による高温強度の向上効果がある。本発明合金では高温強度を確保する目的で0.05%以上含有させる。一方、その含有量が過剰になると不均一なクリープ変形や延性低下の原因となるのでその上限は1.0%とした。
Nb:0.005〜0.25%、Zr:0.001〜0.05%の1種または2種
NbおよびZrは、炭化物の析出によるクリープ強度の向上効果がある。しかし、それぞれの含有量がNb 0.005%、Zr 0.001%未満ではこれらの効果が十分に発揮されない。一方、その含有量が過剰になると溶接性が損なわれることから、それぞれの上限をNb 0.25%、Zr 0.05%とした。
sol.Al:0.005〜0.2%
Alは、Siと同様に脱酸作用を有する元素であり、十分な脱酸効果を得るには0.005%以上含有させることが必要である。一方、その含有量が過剰になると組織安定性が悪くなるのでその上限は0.2%とした。望ましいsol.Al含有量は0.008〜0.13%である。
B:0.001〜0.008%
Bは、クリープ抑制作用を有する元素であるが、その含有量が0.001%未満ではこの効果が得られない。一方、その含有量が過剰になると溶接性が損なわれるのでその上限は0.008%とした。望ましいB含有量は0.001〜0.003%である。
W:4〜10%
Wは、固溶強化作用によりクリープ抑制作用を有する元素であるが、その含有量が4%未満ではこの効果が得られない。一方、その含有量が過剰になると当該合金を著しく硬化させ、加工性および溶接性を劣化させるのでその上限は10%とした。望ましいW含有量は4.5〜9%である。
本発明の高Cr高Ni合金は上記の成分を含有し、残部はFeおよび不純物である。ここで「Feおよび不純物」における「不純物」とは、合金を工業的に製造する際に、鉱石あるいはスクラップ等のような原料を始めとして、製造工程の種々の要因によって混入するものをいう。
2.熱間加工または冷間加工後の熱処理条件
本発明の高Cr高Ni合金管の製造方法においては、上記の化学組成を有する合金を溶製する。次いで、得られた合金塊を均熱し、分塊(鍛造)、熱間加工(圧延または押出し)の順に処理した後、必要に応じて冷間加工を実施する。冷間加工では引き抜きまたは圧延による加工を行う。その後、熱処理(すなわち、均熱後、急冷する溶体化熱処理)を実施する。その後必要に応じて、酸洗または機械的処理(工具による内外削やショットブラストなど)を施し、高Cr高Ni合金管とする。
前記の熱処理において、当該高Cr高Ni合金管を1180℃以上に加熱する均熱処理を行うのは、当該合金素管中の析出物を十分に固溶させるためである。均熱処理温度が1180℃未満の場合には、処理後の合金素管中に安定なTiやB、およびCrを含む未固溶の炭化物や酸化物が存在するようになり、均質化しない。なお、加熱温度の上限は特に限定しないが、1270℃を超える温度まで加熱すると、粒界溶融が生じるので、加熱温度の上限は1270℃とするのがよい。
加熱時間は特に規定しない。従来の作業管理基準等を勘案して、均熱の目的が達せられるよう適宜定めればよい。
均熱処理後、下記(i)式を満たす条件で冷却するのは、溶体化熱処理後の結晶粒界への炭化物の析出を抑制するためである。(i)式のΔTおよびΔtについての下記定義において、「均熱温度」とは、実際に均熱処理を行った温度である。「急冷開始温度」とは、水冷を開始する温度である(次に述べる図3参照)。
ΔT×Δt/2≦100 ・・・(i)
ただし、ΔT:均熱温度と均熱後の急冷開始温度との差(℃)
Δt:均熱後、急冷開始までの時間(min)
図3は、熱処理における合金素管の経時的な温度変化を模式的に示す図である。この図は、高Cr高Ni合金管の素管を、送管速度1000mm/分で均熱炉内を通過させつつ1180℃以上に均熱した後、急冷する溶体化熱処理を行ったときの合金素管の温度を示している。
図3において、破線Aが均熱炉の出口位置を表す。均熱炉内を通過した合金素管は急冷されるが、急冷の過程を詳細に述べると、合金素管が均熱炉から排出された直後の「放冷」過程(図3中の破線Aと破線Bの間)と、放冷過程に続く「水冷」過程(図3中の破線B以降)とがある。図3に示すように、合金素管が均熱炉内を通過した後放冷過程おかれる時間がΔt(min)である。また、均熱温度と均熱後の急冷開始温度(つまり、「水冷」を開始する温度)との差がΔT(℃)である。
前記(i)式の関係は、前述したように、高Cr高Ni合金の試験用素材を用いて、前記表1および表2に示した条件で(すなわち、ΔTおよびΔtを変化させて)熱処理を行い、20℃シャルピー衝撃値およびCr析出量を調査した結果導き出された関係である。
すなわち、前記図2(a)、(b)に示したように、ΔT×Δt/2が100℃・min以下であれば、Cr析出量が0.3%以下となる。そして、前記図1(a)、(b)に示したように、Cr析出量が0.3%以下であれば、20℃シャルピー衝撃値が150J/cm2以上となるので、前記(i)式を満たす条件で冷却することにより、Cr炭化物の結晶粒界への析出を抑制して良好な靱性を備えた高Cr高Ni合金管を製造することができる。
本発明に適用する熱処理は、必ずしも前述した連続炉で実施する必要はなく、バッチ式の熱処理炉を用い均熱後水冷する場合にも、前述の定義と同様のΔTおよびΔtを制御すれば良好な靭性が得られる。
3.Cr析出量
Cr析出量とは、先に述べたように、熱処理を行った後の合金管を電解して得られた抽出残渣の定量分析により求められるCr析出量である。本発明の高Cr高Ni合金管の製造方法においては、さらに、製造する高Cr高Ni合金管のCr析出量を0.3%以下とする実施形態を採用することが望ましい。Cr析出量が0.3%以下という規定を構成要件に加えることにより、製造する高Cr高Ni合金管のCr析出量を管理し、安定して良好な靱性を備えた高Cr高Ni合金管を製造することができるからである。
Cr析出量を求めるにあたり、抽出残渣の採取に供する合金管は、熱処理を行った後のものであればよく、酸洗処理前の合金素管であっても、酸洗処理後の成品としての合金管であってもよい。
当該合金管の電解および抽出残渣の定量分析(Crの定量)は、常法に準じて行えばよい。例えば、合金管の電解は、10%アセチルアセトン−1%テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノール溶液を用い、常温で電解することにより行うことができる。また、抽出残渣中のCrの定量は、ICP分光分析法(誘導結合高周波プラズマ分光分析)等により行うことができる。
本発明の高Cr高Ni合金は、前記のように、本発明の製造方法で製造する高Cr高Ni合金管と同じ化学組成を有する合金であって、当該高Cr高Ni合金を電解して得られた抽出残渣の定量分析により求められるCr析出量が0.3%以下であることを特徴とする高Cr高Ni合金である。
本発明の高Cr高Ni合金が前記の化学組成を有する理由は、前述のとおりである。
本発明の高Cr高Ni合金は、当該合金を電解して得られた抽出残渣の定量分析により求められるCr析出量が0.3%以下なので、図1(a)、(b)に示したように、20℃シャルピー衝撃値が150J/cm2以上であり、良好な靱性を備えている。
表3に示す供試材1および供試材2の化学組成を有し、外径:50.8mm、内径:33.2mm、肉厚:8.8mmで、長さが7000mmの高Cr高Ni合金管を製造し、20℃シャルピー衝撃値およびCr析出量を調査して本発明の効果を確認した。
Figure 0005782753
前記合金管の製造に際しては、ビレットから熱間押出しにより鋼管を製造し、一部はそのまま熱処理に供した。また一部は冷間圧延により前記寸法の合金管とした。
熱処理は、連続熱処理炉またはバッチ炉を用いて実施した。連続炉は、加熱帯:15m、加熱帯から水冷帯までの距離:750mmである。加熱帯では、均熱温度を1230℃に設定した。バッチ炉は長さ9000mmのガス焚き雰囲気炉で、均熱1230℃に設定した。
均熱後の冷却過程では、ΔTを50〜230℃の範囲内で、Δtを0.25〜1.8分の範囲内で変化させた。また、送管速度は、300〜1500mm/分の範囲内で変化させた。前記供試材1を用いた場合の熱処理条件を表4に、前記供試材2を用いた場合の熱処理条件を表5に示す。
Figure 0005782753
Figure 0005782753
熱処理後、酸洗または機械加工により脱スケールを行った。酸洗は、合金管を弗硝酸(弗酸:5%、硝酸:10%)に浸漬することにより行った。
脱スケール後の合金管から、JIS Z 2202で規定されるVノッチシャルピー試験片を採取し、20℃でシャルピー衝撃試験を行った。また、当該合金管を10%アセチルアセトン−1%テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノール溶液を用いて電解し、抽出残渣に含まれるCrをICP分光分析法により定量してCr析出量を求めた。
20℃シャルピー衝撃値およびCr析出量の調査結果を表4および表5に併せて示す。
表4および表5の「20℃衝撃試験」欄の記号の意味は、前記表1および表2の場合と同様で、次のとおりである。
○:良好。20℃衝撃値が150J/cm2以上であることを示す。
×:不良。20℃衝撃値が150J/cm2未満であることを示す。
表4および表5の結果から、本発明で規定するΔT×Δt/2≦100の条件が満たされる場合、20℃シャルピー衝撃値が150J/cm2以上であって、高Cr高Ni合金管は良好な靱性を備えていることが確認できた。この場合、酸洗による酸荒れも認められなかった。
本発明は、耐熱材料として良好な靱性を備えた高Cr高Ni合金の製造に利用できる。

Claims (2)

  1. 質量%でC:0.05〜0.09%、Si:0.1〜0.3%、Mn:0.05〜1.3%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Ni:44〜52%、Cr:27〜32%、Ti:0.05〜1.0%、sol.Al:0.005〜0.2%、B:0.001〜0.008%およびW:4〜10%、並びにNb:0.005〜0.25%およびZr:0.001〜0.05%のうちの1種または2種を含有し、残部がFeおよび不純物からなる高Cr高Ni合金管の製造方法であって、
    熱間加工後の連続熱処理炉またはバッチ炉を用いた熱処理において、当該高Cr高Ni合金管を1180℃以上に加熱する均熱処理を行った後、放冷過程に続き、水冷過程で下記(i)式を満たす条件で冷却することを特徴とする高Cr高Ni合金管の製造方法。
    ΔT×Δt/2≦100 ・・・(i)
    ただし、ΔT:均熱温度と均熱後の急冷開始温度との差(℃)
    Δt:均熱後、急冷開始までの時間(min)
  2. 前記熱処理を、熱間加工に加えて冷間加工を行った後に行うことを特徴とする請求項1に記載の高Cr高Ni合金管の製造方法。
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