JP5777338B2 - Hpvに起因する癌細胞の検出方法、組織が高度異形成以上の段階の組織であるか否かの判定方法及びそれらに用いるプライマーセット並びにキット - Google Patents

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Description

本発明は、HPVに起因する癌細胞の検出方法、組織が高度異形成以上の段階の組織であるか否かの判定方法及びそれらに用いるプライマーセット並びにキットに関する。
ヒトパピローマウイルス(以下、「HPV」という)は、環状二本鎖DNAをゲノムとするウイルスであり、増殖性病変を誘発する。HPVは、100種以上のサブタイプに分類されている。また、HPVのサブタイプは、共通する領域として、非構造タンパク質をコードするE1領域、E2領域、E4領域、E5領域、E6領域及びE7領域、キャプシドタンパク質をコードするL1領域及びL2領域、並びにLCRを有していることが知られている。
HPVのDNAは、子宮頸癌や子宮頸部異形成の病変部、及び口腔癌や咽頭癌の組織から検出されている。そのため、HPVの感染は、子宮頸癌、口腔癌及び咽頭癌のリスクファクターの1つとされている。HPVの感染の様式は、ほとんどの場合、感染成立から一定期間後に細胞からHPVが自然消失する一過性感染である。しかしながら、HPVの感染のうち5〜10%の感染は、HPVが消失せず、子宮頸癌を引き起こす持続感染となる場合がある。
なお、子宮頸部の組織診では、子宮頸部異形成は、癌細胞が発生する前段階として、上皮内における異型細胞の出現の程度により、軽度、中等度又は高度の3段階の異形成に分類されている。高度異形成からさらに悪化すると、子宮頸部異形成の病変は、上皮内に癌細胞が出現する段階となる。そして、子宮頸部異形成は、癌細胞が上皮内に限局する「上皮内癌」、並びに癌細胞が上皮から皮下組織に浸潤する「微小浸潤扁平上皮癌」及び「浸潤扁平上皮癌」へと進行する。
軽度異形成又は中等度異形成の病変は、特に治療を行なわずに経過観察されることがほとんどである。しかしながら、高度異形成の前駆病変を治療せずに放置すると、病変が浸潤癌に進行する可能性が高いので、高度異形成と判断された被験者には、手術等の治療を施すことが多い。よって、被験者の病変が高度異形成又はそれより重篤な段階であるか否かを判断することは、被験者に対する治療方法を決定するために、重要である。
高等真核生物の染色体DNAでは、DNAを構成する塩基のうちシトシンの5位がメチル化されていることがある。この高等真核生物におけるDNAのメチル化は、遺伝情報の発現抑制機構として機能している。近年、HPVのゲノムDNAにおけるメチル化の有無が、癌の発症に強く関係していることを示す報告がなされている。
例えば、特許文献1には、患者の子宮頸部の細胞に含まれるHPVのE6領域及びLCRが、メチル化されていない場合、子宮頸癌の細胞の存在がより強く示されることが記載されている。しかしながら、メチル化されていないE6領域及びLCRは、子宮頸癌細胞以外の細胞から検出される場合がある。そのため、E6領域及びLCRのメチル化の状態のみを確認することで、患者の子宮頸部の細胞から、高い精度でHPVに起因する癌細胞を検出することは困難である。
また、非特許文献1には、子宮頸癌において、HPV−18のL1領域は、強くメチル化されているが、LCR及びE6領域はメチル化されていないことが記載されている。ここで、非特許文献1では、HPV−18のゲノムDNAに対応する亜硫酸水素塩で処理した後の核酸の塩基配列を決定し、そのメチル化の状態を確認している。しかしながら、塩基配列の決定によるDNAのメチル化の確認は、時間がかかり、かつ操作が煩雑である。そのため、被験者から採取された試料から、簡便にHPVに起因する癌細胞を検出することは困難である。
Tolga Turan et al., Virology 349 (2006) 175-183 特表2006−522607号公報
本発明は、高い精度で、かつ簡便に、HPVに起因する癌細胞を検出する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、高い精度で、かつ簡便に、組織が高度異形成以上の段階の組織であるか否かを判定することができる方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、高い精度で、かつ簡便に、HPVに起因する癌細胞の検出や組織が高度異形成以上の段階の組織であるか否かの判定を行なうことができるプライマーセットを提供することを目的とする。また、本発明は、高い精度で、かつ簡便に、HPVに起因する癌を診断することができるキットを提供することを目的とする。さらに、本発明は、高い精度で、かつ簡便に、異形成の段階を診断することができるキットを提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、
(A) 被験者から採取された子宮頸部の細胞からDNAを含有する試料を調製するステップ、
(B) 前記ステップ(A)で得られた試料に含まれるDNA中の非メチル化シトシンを他の塩基に変換して変換試料を得るステップ、
(C) 前記ステップ(B)で得られた変換試料と、HPVのL1領域又はL2領域中のCpG部位を有する塩基配列における、CpG部位以外に存在するシトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする第1プライマーと、HPVのLCR又はE6領域中のCpG部位を有する塩基配列における、シトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする第2プライマーとを用いて、第1プライマーがハイブリダイズする部位から第2プライマーがハイブリダイズする部位までの間の連続した塩基配列からなる核酸を増幅対象とする核酸増幅反応を行なうステップ、及び
(D) 前記ステップ(C)の核酸増幅反応の結果に基づいて、HPVに起因する癌細胞を検出するステップ、
を含み、
前記第1プライマーは、さらにメチル化CpG部位を含む領域にハイブリダイズし、
前記第2プライマーは、非メチル化CpG部位のシトシンが変換処理によって他の塩基に変換された配列を含む領域にハイブリダイズする、
HPVに起因する癌細胞の検出方法
を提供する。
また、本発明は、
(A) 被験者から採取された子宮頸部の組織からDNAを含有する試料を調製するステップ、
(B) 前記ステップ(A)で得られた試料に含まれるDNA中の非メチル化シトシンを他の塩基に変換して変換試料を得るステップ、及び
(C) 前記ステップ(B)で得られた変換試料と、HPVのL1領域又はL2領域中のCpG部位を有する塩基配列における、CpG部位以外に存在するシトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする第1プライマーと、HPVのLCR又はE6領域中のCpG部位を有する塩基配列における、シトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする第2プライマーとを用いて、第1プライマーがハイブリダイズする部位から第2プライマーがハイブリダイズする部位までの間の連続した塩基配列からなる核酸を増幅対象とする核酸増幅反応を行なうステップ、を含み、
前記第1プライマーは、さらにメチル化CpG部位を含む領域にハイブリダイズし、
前記第2プライマーは、非メチル化CpG部位のシトシンが変換処理によって他の塩基に変換された配列を含む領域にハイブリダイズし、
前記ステップ(C)の核酸増幅反応の結果を、組織が高度異形成以上の段階の組織であるか否かの判定に用いる、
組織が高度異形成以上の段階の組織であるか否かの判定を補助する方法
を提供する。


HPVの遺伝子構造の概略説明図である。 SiHa細胞に組み込まれているHPV16のゲノムDNAにおけるメチル化CpG部位及び非メチル化CpG部位を示す模式図である。 実施例1、比較例1及び比較例2のプライマーセットそれぞれと、正常組織試及び癌組織試料から調製された各分析用試料とを用いた核酸増幅後の増幅産物の結果を示す電気泳動図である。 C4−1細胞に組み込まれているHPV18のゲノムDNAにおけるメチル化CpG部位及び非メチル化CpG部位を示す模式図である。 実施例1のプライマーセットと、手術摘出試料及び生検試料から調製された各分析用試料とを用いた核酸増幅後の増幅産物の結果を示す電気泳動図である。 手術摘出試料由来のHPV18のゲノムDNAにおけるメチル化CpG部位及び非メチル化CpG部位を示す模式図である。 手術摘出試料由来のHPV58のゲノムDNAにおけるメチル化CpG部位及び非メチル化CpG部位を示す模式図である。 生検試料由来のHPV58のゲノムDNAにおけるメチル化CpG部位及び非メチル化CpG部位を示す模式図である。
本発明のプライマーセットは、HPVのL1領域又はL2領域中のCpG部位を有する塩基配列(「第1塩基配列」ともいう)における、CpG部位以外に存在するシトシンが他の塩基に変換された塩基配列(「第2塩基配列」ともいう)からなる核酸にハイブリダイズする第1プライマーと、HPVのLCR又はE6領域中のCpG部位を有する塩基配列(「第3塩基配列」ともいう)における、シトシンが他の塩基に変換された塩基配列(「第4塩基配列」ともいう)からなる核酸にハイブリダイズする第2プライマーとを含み、HPVのゲノムDNAに対応する非メチル化シトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸のうち、第1プライマーがハイブリダイズする部位から第2プライマーがハイブリダイズする部位までの間の連続した塩基配列からなる核酸を、核酸増幅反応により増幅するためのプライマーセットである。なお、前記第2塩基配列は、第1塩基配列からなる核酸を変換した後の核酸の塩基配列であり、CpG部位以外に存在するシトシンが他の塩基に変換されている点を除いて、第1の塩基配列に対応する配列である。また、前記第4塩基配列は、第3塩基配列からなる核酸を変換した後の核酸の塩基配列であり、全てのシトシンが他の塩基に変換されている点を除いて第3の塩基配列に対応する配列である。
本発明のプライマーセットは、HPVのL1領域又はL2領域中のCpG部位を有する塩基配列における、CpG部位以外に存在するシトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする第1プライマーと、HPVのLCR又はE6領域中のCpG部位を有する塩基配列における、シトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする第2プライマーとを含有している点に1つの大きな特徴がある。
HPVに起因する癌細胞に含まれるHPVのゲノムDNAは、L2領域又はL1領域のCpG部位のシトシンがメチル化されており、かつLCR又はE6領域中のCpG部位のシトシンがメチル化されていない。そのため、本発明のプライマーセットを核酸増幅反応に用いれば、癌化の原因となるHPVのゲノムDNAに対応する非メチル化シトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸を特異的に増幅することができる。これにより、本発明のプライマーセットによれば、HPVに起因する癌細胞を、高い精度で、かつ簡便に検出することができる。したがって、本発明のプライマーセットによれば、高い精度で、かつ簡便に、子宮頸癌、口腔癌及び咽頭癌の診断も行なうことができる。
また、高度異形成以上の段階の病変部に存在するHPVのゲノムDNAは、L2領域又はL1領域のCpG部位のシトシンがメチル化されており、かつLCR又はE6領域中のCpG部位のシトシンがメチル化されていない。そのため、本発明のプライマーセットを核酸増幅反応に用いれば、高度異形成以上の段階の病変部に存在するHPVのゲノムDNAに対応する非メチル化シトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸を特異的に増幅することができる。したがって、本発明のプライマーセットによれば、高い精度で、かつ簡便に、異形成の段階を診断することができる。また、本発明のプライマーセットによれば、高い精度で、かつ簡便に、組織が高度異形成以上の段階の組織であるか否かを判定することができる。
なお、本明細書において、HPVに起因する癌細胞とは、HPVの感染により、癌化した細胞及び癌化するリスクの高い細胞をいう。より具体的には、HPVに起因する癌細胞とは、子宮頸癌、口腔癌又は咽頭癌の発症を引き起こすHPV感染細胞、子宮頸癌細胞、口腔癌細胞又は咽頭癌細胞をいう。
本明細書において、「高度異形成以上の段階」とは、日本産婦人科学会による「子宮頸癌取り扱い規約1997」に基づく分類により、「高度異形成」又はそれより重篤な段階である「上皮内癌」、「微小浸潤扁平上皮癌」若しくは「浸潤扁平上皮癌」に分類される段階をいう。組織の病変が、これらの段階の病変であると判断されると、被験者は、ほとんどの場合、手術等の治療を必要とするので、高度異形成以上の段階の病変であるか否かを判断することは、臨床上、非常に重要である。一方、「高度異形成」より軽症の病変は、「上皮異常なし」、「軽度異形成」又は「中等度異形成」の段階の病変に分類される。病変が、これらの段階の病変である場合、被験者は、特別の治療を施さずに、経過観察されることがほとんどである。
本明細書において、「異常細胞」とは、異型細胞及び癌細胞をいう。ここで、「異型細胞」とは、癌細胞ではないが、核腫大、クロマチン増量、核形不整等の核の異常が認められる細胞をいう。
上述のように、HPVに起因する癌細胞は、L2領域又はL1領域のCpG部位のシトシンがメチル化されており、かつLCR又はE6領域中のCpG部位のシトシンがメチル化されていないHPVのゲノムDNAを有している。前記HPVに起因する癌細胞に含まれるHPVのゲノムDNAを、非メチル化シトシンを他の塩基に変換する非メチル化シトシン変換剤で処理した場合、L2領域又はL1領域のCpG部位のシトシンは、他の塩基に変換されないが、LCR又はE6領域中のCpG部位のシトシンは、他の塩基に変換される。したがって、本発明のプライマーセットを用いれば、非メチル化シトシン変換剤によって処理されたHPVのゲノムDNAのうち、L2領域又はL1領域のCpG部位がシトシンとグアニンとからなるジヌクレオチドの塩基配列のままであり、LCR又はE6領域中のCpG部位のシトシンが他の塩基に変換された核酸のみを核酸増幅反応により増幅することができる。
また、本発明のプライマーセットでは、第1プライマーが、HPVのL1領域又はL2領域中のCpG部位を有する塩基配列における、CpG部位以外に存在するシトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする。そして、第2プライマーが、HPVのLCR又はE6領域中のCpG部位を有する塩基配列における、シトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする。そのため、本発明のプライマーセットによれば、HPV感染細胞の癌化の原因となるHPVのゲノムDNA中の少なくともL2領域若しくはL1領域の一部とLCR若しくはE6領域の一部とを含む連続した領域のDNAに対応する非メチル化シトシン変換剤で処理された核酸を、1回の核酸増幅反応で増幅することができる。
HPVは、約8kbの環状DNAウイルスである。HPVとしては、例えば、HPV16、HPV18、HPV31、HPV33、HPV35、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV56、HPV58、HPV59、HPV68、HPV73、HPV82等が挙げられる。
HPVゲノムは、図1に示されるように、非構造タンパク質をコードする初期遺伝子のオープンリーディングフレーム(E1領域、E2領域、E4領域、E5領域、E6領域及びE7領域)と、キャプシドタンパク質をコードする後期遺伝子のオープンリーディングフレーム(L1領域及びL2領域)と、LCRの遺伝子領域とを有している。E1領域は、ウイルスゲノムの複製に関与する領域である。E2領域は、ウイルスの転写の調節に関与する領域である。E5領域、E6領域及びE7領域は、がん化に関与する領域である。E6領域は、がん抑制遺伝子であるp53と結合し、p53の分解を促進するタンパク質をコードする領域である。E7領域は、がん抑制遺伝子であるRbと結合し、Rbを不活化するタンパク質をコードする領域である。L1領域及びL2領域は、キャプシド形成に関与する領域である。LCR(Long control region)は、ウイルス遺伝子の発現調節に関与する領域である。
一般的に、HPVが細胞に感染し、侵入すると、HPVのゲノムDNAは、生体内におけるDNAのメチル化機構により、ゲノムDNA内のCpG部位のうち、所定のCpG部位におけるシトシンがメチル化される。なかでも、子宮頸癌細胞中のHPVでは、図2に示されるように、L1領域及びL2領域中のCpG部位のシトシンがメチル化されており、LCR及びE6領域のCpG部位のシトシンがメチル化されていない。
表1は、HPV感染細胞に含まれるHPVのゲノムDNAのL1領域及びL2領域並びにLCR及びE6領域のCpG部位におけるメチル化の状態を示す。ここで、表1で示されるHPV感染細胞のうち、HPV感染細胞2は、HPVに起因する癌細胞を示している
上述のように、子宮頸癌細胞内のHPVでは、L1領域及びL2領域中のCpG部位に、DNAのメチル化が検出される。ところが、表1に示されるように、HPVに起因する癌細胞ではないHPV感染細胞においても、L1領域又はL2領域のDNAのメチル化が見られる場合がある。そのため、HPVに起因するがん細胞の検出に際して、L1領域又はL2領域のメチル化のみを指標とすると、HPVに起因する癌細胞と、他のHPV感染細胞との区別化が困難な場合がある。すなわち、HPVに起因するがん細胞の検出に際して、L1領域又はL2領域のメチル化のみを指標とすると、表1に示されるHPVに起因する癌細胞であるHPV感染細胞2のみではなく、HPV感染細胞1も検出されることがある。
また、子宮頸癌細胞内のHPVでは、LCR及びE6領域のCpG部位は、非メチル化状態となっている。ところが、HPVに起因する癌細胞ではないHPV感染細胞等においても、LCR又はE6領域のCpG部位が非メチル化状態となっている場合がある。そのため、HPVに起因するがん細胞の検出に際して、LCR又はE6領域における非メチル化状態のみを指標とすると、HPVに起因する癌細胞と、他のHPV感染細胞の区別化が困難な場合がある。すなわち、HPVに起因するがん細胞の検出に際して、LCR又はE6領域における非メチル化状態のみを指標とすると、表1に示されるHPVに起因する癌細胞であるHPV感染細胞2のみではなく、HPV感染細胞4も検出されることがある。
しかしながら、本発明のプライマーセットは、表1に示されるHPV感染細胞2に含まれるHPVのゲノムDNAに対応する非メチル化シトシン変換剤で処理された核酸を、特異的に核酸増幅反応で増幅することができる。そのため、本発明のプライマーセットを用いれば、表1に示されるHPV感染細胞1〜4のなかから、HPVに起因する癌細胞であるHPV感染細胞2を特異的に検出することができるという優れた効果が奏される。
一方、高度異形成以上の段階の組織内のHPVにおいても、L1領域及びL2領域中のCpG部位のシトシンは、メチル化されており、LCR及びE6領域のCpG部位のシトシンは、メチル化されていない。したがって、本発明のプライマーセットを用いれば、高度異形成以上の段階の組織のHPVのDNAを特異的に検出することができるという優れた効果が奏される。
なお、本明細書において、「プライマーがハイブリダイズする」とは、プライマーが、核酸とストリンジェントな条件下にハイブリダイズすることをいう。プライマーが核酸にハイブリダイズした状態は、核酸増幅反応を進行させるに適した状態で核酸中の相補的な配列とアニーリングした状態となる。ここで、ストリンジェントな条件とは、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを行なう際に当業者が一般的に用いる条件である。前記ストリンジェントな条件は、本発明のプライマーセットが、HPVのゲノムDNAに対応する非メチル化シトシン変換剤で処理された核酸中における目的の塩基配列を有する核酸とハイブリダイズすることができる条件であれば特に限定されない。ハイブリダイゼーション時のストリンジェンシーは、温度、塩濃度、プライマーの鎖長、プライマーのヌクレオチド配列のGC含量及びハイブリダイゼーション緩衝液中のカオトロピック剤の濃度の関数であることが知られている。ストリンジェントな条件としては、例えば、Sambrook, J. et al. (1998) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd ed.), ColdSpringHarborLaboratory Press, New Yorkに記載された条件等を用いることができる。
なお、「他の塩基」としては、ウラシル、チミンが挙げられる。例えば、非メチル化シトシン変換剤として、亜硫酸水素塩を用いた場合、非メチル化シトシンは、ウラシルに変換される。また、本発明のプライマーセットを用いた核酸増幅反応により、このウラシルは、チミンに変換されることとなる。
第1プライマー及び第2プライマーは、核酸増幅法により核酸を増幅するためのプライマーである。具体的には、第1プライマー及び第2プライマーは、それぞれ、ポリメラーゼ連鎖反応法、鎖置換反応法、リガーゼ連鎖反応法又は転写増幅法により核酸を増幅するためのプライマーであることが好ましい。これにより、非メチル化シトシン変換剤で処理された、被験者の細胞から抽出されたDNAを鋳型として、本発明のプライマーセットを用いて核酸増幅反応を行えば、増幅反応の結果から簡便に、HPVに起因する癌細胞を有する被験者や高度異形成以上の段階の組織を確認することができる。
ポリメラーゼ連鎖反応法は、慣用の手法により実施することができる。鎖置換反応法としては、例えば、LAMP法、ICAN(登録商標)法、SMAP法等が挙げられる。転写増幅法としては、例えば、TAS法等が挙げられる。
本発明のプライマーセットは、使用する核酸増幅法の種類に応じて、公知の方法で作製することができる。より具体的には、まず、L1領域又はL2領域の塩基配列とLCR又はE6領域の塩基配列に関して、非メチル化シトシン変換剤による処理後の塩基配列を予測する。その後、予測した塩基配列から、市販のプライマー設計用ソフトウエア等を用いて、本発明のプライマーセットの各プライマーの塩基配列を設計し、各プライマーを合成することにより、本発明のプライマーセットを作製することができる。ポリメラーゼ連鎖反応法であるリアルタイムPCRに用いるプライマーセットの各プライマーを設計するためのソフトウエアとしては、例えば、GENETYXやprimer3等が挙げられる。また、鎖置換反応法であるLAMP法に用いるプライマーセットの各プライマーを設計するためのソフトウエアとしては、例えば、Primer Explorer等が挙げられる。
本発明のプライマーセットによれば、前記のように、HPVに起因する癌細胞を検出することができるため、HPVに起因する癌を診断することができる。したがって、本発明には、HPVに起因する癌の診断用キット(以下、「診断用キット1」ともいう)も包含される。
本発明の診断用キット1は、前述したプライマーセットと、核酸中の非メチル化シトシンを他の塩基に変換する非メチル化シトシン変換剤とを含有するキットである。
非メチル化シトシン変換剤としては、核酸中の非メチル化シトシンを他の塩基に変換するのであればよく、例えば、亜硫酸水素塩等が挙げられる。前記亜硫酸水素塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム等が挙げられる。
本発明の診断用キット1では、前述したプライマーセットは、核酸を安定に保持するに適した緩衝液等の溶媒に溶解させ、核酸を安定に保持するに適した容器等に封入されて提供される。また、非メチル化シトシン変換剤は、この非メチル化シトシン変換剤を溶解させるに適した溶媒に溶解され、適切な容器等に封入されて提供される。
本発明の診断用キット1を適用することができるHPVに起因する癌としては、例えば、子宮頸癌、口腔癌、咽頭癌等が挙げられる。
前述した本発明のプライマーセットによれば、前記のように、HPVに起因する癌細胞を検出することができる。本発明には、HPVに起因する癌細胞の検出方法も包含される。
本発明の癌細胞の検出方法は、
(A)被験者の細胞からDNAを含有する試料を調製するステップ、
(B)前記ステップ(A)で得られた試料に含まれるDNA中の非メチル化シトシンを他の塩基に変換して変換試料を得るステップ、
(C)前記ステップ(B)で得られた変換試料と、HPVのL1領域又はL2領域中のCpG部位を有する塩基配列における、CpG部位以外に存在するシトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする第1プライマーと、HPVのLCR又はE6領域中のCpG部位を有する塩基配列における、シトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする第2プライマーとを用いて、第1プライマーがハイブリダイズする部位から第2プライマーがハイブリダイズする部位までの間の連続した塩基配列からなる核酸を増幅対象とする核酸増幅反応を行なうステップ、及び
(D)前記ステップ(C)の核酸増幅反応の結果に基づいて、HPVに起因する癌細胞を検出するステップ、
を含む方法である。本発明の癌細胞の検出方法は、例えば、前述したHPVに起因する癌の診断用キットを用いることにより、簡便に行なうことができる。
本発明の癌細胞の検出方法では、まず、被験者の細胞からDNAを含有する試料を調製する〔ステップ(A)〕。
前記ステップ(A)では、被験者の細胞からのDNAを含有する試料の調製は、公知の方法等により行なえばよい。前記DNAを含有する試料の調製は、例えば、
(a)界面活性剤を含有する溶液と、被験者の細胞とを混合して混合物を得るステップ、
(b)前記ステップ(a)で得られた混合物を遠心分離に供して、不溶物を沈殿させ、上清を得るステップ、及び
(c)前記ステップ(b)で得られた上清を分取するステップ、
により行なうことができる。前記ステップ(A)において、これらのステップ(a)〜(c)を行なうことにより、被験者の細胞からDNAを抽出し、DNAを含有する試料を調製することができる。
また、前記ステップ(A)は、ステップ(a)とステップ(b)との間において、(a1)ステップ(a)で得られた混合物に物理的処理を施して、細胞からDNAを遊離させるステップをさらに含んでもよい。この場合、前記ステップ(b)において、前記ステップ(a1)で得られた産物を遠心分離に供して、不溶物を沈殿させ、上清を得る。
界面活性剤としては、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、テトラデシル硫酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウム、コール酸ナトリウム(CHO)、デオキシコール酸ナトリウム(DOC)、タウロコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム等が挙げられ、特にドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が好ましい。また、物理的処理を行なう方法としては、物理的に細胞を破砕する公知の方法であればよく、例えば、ホモジナイザーにより細胞を破砕する方法やミキサーにより細胞を振盪して破砕する方法等が挙げられる。DNAを含有する試料の調製には、市販のDNAを抽出するためのキットを用いてもよい。
抽出したDNAは、水や緩衝液に溶解してDNA溶液として用いることができる。DNAを溶解するための水や緩衝液としては、溶解したDNAを安定に保持することができるものが好ましい。前記DNAを溶解するための水や緩衝液としては、例えば、ヌクレアーゼを含まないPCRグレードの水や、TE溶液(10mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、1mM EDTA)等が挙げられる。
被験者の細胞としては、HPVが感染する対象となる細胞又はHPVが潜伏する対象となる細胞であればよい。被験者の細胞としては、特に限定されない。例えば、粘膜の細胞、皮膚の細胞等が挙げられる。粘膜としては、例えば、泌尿生殖器、消化器、呼吸器等の管腔臓器の内腔面の粘膜が挙げられる。より具体的な粘膜としては、子宮頸部の粘膜、口腔咽喉部の粘膜等が挙げられる。被験者の細胞の中では、子宮頸部の細胞及び口腔咽頭部の細胞が好ましい。本発明の検出方法では、被験者の細胞として、子宮頸部の細胞又は口腔咽頭部の細胞を用いることにより、子宮頸癌、口腔癌又は咽頭癌の発症を引き起こすHPVに起因する癌細胞を検出できる。子宮頸部の細胞は、被験者の子宮頸部(例えば、子宮頸部の粘膜等)から採取することができる細胞である。また、口腔咽頭部の細胞は、被験者の口腔咽頭部(例えば、口腔咽頭部の粘膜等)から採取することができる細胞である。
つぎに、前記ステップ(A)で得られた試料に含まれるDNA中の非メチル化シトシンを他の塩基に変換する〔ステップ(B)〕。
他の塩基への非メチル化シトシンの変換は、前記非メチル化シトシン変換剤により行なうことができる。非メチル化シトシン変換剤として、亜硫酸水素塩を用いる場合、前述のように、メチル化シトシンは、変換されず、非メチル化シトシンは、ウラシルに変換されることとなる。前記亜硫酸水素塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム等が挙げられる。他の塩基への非メチル化シトシンの変換は、非メチル化シトシン変換剤として、亜硫酸水素塩である亜硫酸水素ナトリウムを用いる場合、DNAを含有する試料に10M亜硫酸水素ナトリウム溶液を添加し、得られた混合物を適切な温度条件下にインキュベーションすることにより行なうことができる。
つぎに、前記ステップ(B)で得られた変換試料と、HPVのL1領域又はL2領域中のCpG部位を有する塩基配列における、CpG部位以外に存在するシトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする第1プライマーと、HPVのLCR又はE6領域中のCpG部位を有する塩基配列における、シトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする第2プライマーとを用いて、第1プライマーがハイブリダイズする部位から第2プライマーがハイブリダイズする部位までの間の連続した塩基配列からなる核酸を増幅対象とする核酸増幅反応を行なう〔ステップ(C)〕。本発明の検出方法では、ステップ(C)において、前記変換試料と、前記第1プライマー及び第2プライマーとを用いて核酸増幅反応を行なうため、癌化の原因となるHPVのゲノムDNAに対応する非メチル化シトシンが他の塩基に変換された核酸を、特異的に増幅することができる。したがって、本発明の検出方法によれば、高い精度でHPVに起因する癌細胞を検出することができる。
核酸増幅反応は、前記ポリメラーゼ連鎖反応法、鎖置換反応法、リガーゼ連鎖反応法又は転写増幅法により行なわれる。これらのなかでは、好ましくは、ポリメラーゼ連鎖反応法である。
前記プライマーセットを用いた核酸増幅反応では、上述の非メチル化シトシン変換剤により処理されたDNAを含有する試料中に、L2領域又はL1領域のCpG部位のシトシンがメチル化されており、かつLCR又はE6領域中のCpG部位のシトシンがメチル化されていないHPVのゲノムDNAが存在している場合、増幅産物が得られることとなる。すなわち、被験者の細胞のDNAを含有する試料中に、表1のHPV感染細胞2に示されるHPVのゲノムDNAが存在する場合、増幅産物が得られることとなる。一方、被験者の細胞のDNAを含有する試料中に、表1に示されるHPV感染細胞1、3、及び4に示されるHPVのゲノムDNAしか存在ない場合、増幅産物が得られないこととなる。
その後、ステップ(C)の核酸増幅反応の結果に基づいて、HPVに起因する癌細胞を検出する〔ステップ(D)〕。核酸増幅反応により増幅産物が得られた場合、被験者が、HPVに起因する癌細胞を有すると判断される。すなわち、前記増幅産物の存在は、被験者が持続感染したHPVを有することの指標となり得る。一方、核酸増幅反応により増幅産物が得られない場合、被験者がHPVに起因する癌細胞を有していないと判定される。この場合、前記増幅産物が存在しないことは、被験者が、HPVに感染していないか、HPVに感染していたとしても一過性感染の感染であることの指標となり得る。このように、本発明の検出方法では、増幅産物の存在を確認することにより、HPVに起因する癌細胞を、簡便に検出することができる。
なお、核酸増幅反応により増幅産物が得られたか否かは、公知の方法によって確認することができる。かかる方法としては、例えば、アガロースゲル電気泳動法、標識プローブを増幅産物にハイブリダイズさせて検出する方法、二本鎖DNAに結合可能なインターカレータ(例えば、SYBRGreen等)を用いて蛍光を検出する方法及び核酸増幅で生じる副生成物の濁りを検出する方法等が挙げられる。
また、本発明のプライマーセットによれば、被験者から得られた組織が、高度異形成以上の段階の組織であるか否かを判定することができ、異形成の段階を診断することもできる。したがって、本発明には、異形成の段階の診断用キット(以下、「診断用キット2」ともいう)も包含される。
本発明の診断用キット2は、前述したプライマーセットと、前記非メチル化シトシン変換剤とを含有するキットである。本発明の診断用キット2では、前述したプライマーセット及び非メチル化シトシン変換剤は、前述した診断用キット1と同様の形態で提供される。
本発明の診断用キット2を適用することができる被験者の組織としては、HPVが感染する対象となる細胞又はHPVが潜伏する対象となる細胞を含む組織であればよい。例えば、子宮頸部や口腔咽喉部から採取した組織が挙げられ、特に、子宮頸部から採取した組織の異形成を診断するのに適用することが好ましい。
さらに、本発明のプライマーセットによれば、前記のように、被験者の組織が高度異形成以上の段階の組織であるか否かを判定することができる。本発明には、組織が高度異形成以上の段階の組織であるか否かの判定方法も包含される。
本発明の判定方法は、
(A)被験者の組織からDNAを含有する試料を調製するステップ、
(B)前記ステップ(A)で得られた試料に含まれるDNA中の非メチル化シトシンを他の塩基に変換して変換試料を得るステップ、
(C)前記ステップ(B)で得られた変換試料と、HPVのL1領域又はL2領域中のCpG部位を有する塩基配列における、CpG部位以外に存在するシトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする第1プライマーと、HPVのLCR又はE6領域中のCpG部位を有する塩基配列における、シトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする第2プライマーとを用いて、第1プライマーがハイブリダイズする部位から第2プライマーがハイブリダイズする部位までの間の連続した塩基配列からなる核酸を増幅対象とする核酸増幅反応を行なうステップ、及び
(D)前記ステップ(C)の核酸増幅反応の結果に基づいて、組織が高度異形成以上の段階の組織であるか否かを判定するステップ、
を含む方法である。
本発明の判定方法では、まず、被験者の組織からDNAを含有する試料を調製する〔ステップ(A)〕。
本判定方法のステップ(A)では、被験者の組織からのDNAを含有する試料の調製は、公知の方法等により行なえばよい。また、前述のHPVに起因する癌細胞の検出方法におけるステップ(A)の被験者の細胞からのDNAを含有する試料の調製と同じ操作で、被験者の組織からDNAを含有する試料を調製することもできる。
被験者の組織としては、HPVが感染する対象となる細胞又はHPVが潜伏する対象となる細胞を含む組織であればよい。具体的な被験者の組織としては、被験者の子宮頸部及び口腔咽喉部から採取された組織が挙げられる。
本発明の判定方法におけるステップ(B)及びステップ(C)は、前述のHPVに起因する癌細胞の検出方法におけるステップ(B)及びステップ(C)と同じ操作で行なうことができる。本発明の判定方法では、前記ステップ(C)において、前記ステップ(B)で得られた変換試料と、前記第1プライマー及び第2プライマーとを用いて核酸増幅反応を行なうため、高度異形成以上の段階の病変部に存在するHPVのゲノムDNAに対応する非メチル化シトシンが他の塩基に変換された核酸を、特異的に増幅することができる。したがって、本発明の判定方法によれば、高い精度で、組織が高度異形成以上の段階の組織であるか否かを判定することができる。
その後、本発明の判定方法では、核酸増幅ステップにおける核酸増幅反応の結果に基づいて、組織が高度異形成以上の段階の組織か否かを判定する〔ステップ(D)〕。核酸増幅反応により増幅産物が得られた場合、被験者の組織が、高度異形成以上の段階の組織であると判定される。逆に、核酸増幅反応により増幅産物が得られない場合、被験者の組織が、高度異形成以上の段階の組織ではないと判定される。このように、本発明の判定方法では、増幅産物の有無を確認することにより、この増幅産物の有無を指標として、組織が高度異形成以上の段階の組織であるか否かを、簡便に判定することができる。
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
(実験例1)
HPV16ゲノムが染色体に組み込まれている子宮頸部癌由来細胞株であるSiHa細胞のゲノムDNA1μgに、300μLの0.3M水酸化ナトリウム溶液を加え、37℃で10分間インキュベートした。その後、10M亜硫酸水素塩溶液(10M亜硫酸水素ナトリウム水溶液)300μLを添加し、80℃で40分間インキュベートすることにより、前記ゲノムDNAの亜硫酸水素塩処理を行なった。亜硫酸水素塩処理後の溶液中に含まれるDNAをDNA精製キット〔キアジェン社製、商品名:Qiaquick PCR purification kitを用いて精製した。精製したDNAに、最終濃度0.3Mとなるように、水酸化ナトリウムを添加し、室温で5分間インキュベートした。その後、得られた産物を核酸精製用スピンカラム(GEヘルスケア社製、商品名:MicroSpin S−300 HR Columns)で精製し、分析用試料を得た。
分析用試料2μLに対して、PCR用試薬〔タカラバイオ株式会社製、商品名:TaKaRa EX Taq(登録商標)Hot Start Version〕に含まれている試薬(×10 buffer)2.5μL、DNAポリメラーゼ〔商品名:TaKaRa Ex Taq HS(5U/μL)〕0.125μL及び2.5mM dNTP混合物 2μLと、フォワードプライマー水溶液(10μM)1μLと、リバースプライマー水溶液(10μM)1μLと水16.38μLとを添加して、PCR用反応液を調製した。
用いたフォワードプライマーとリバースプライマーとからなるプライマーセット及びPCRサーマルプロファイルを表2に示す。
表2中、PCRサーマルプロファイル(1)は、95℃4.5分間の保温後、95℃30秒間と60℃30秒間と72℃40秒間とを1サイクルとする40サイクルの反応を行なう条件である。また、表2中、PCRサーマルプロファイル(2)は、95℃4.5分間の保温後、95℃30秒間と53℃15秒間と72℃30秒間とを1サイクルとする40サイクルの反応を行なう条件である。
前記PCR用反応液を用いて、プライマーセットの種類に応じたPCR条件で、PCRを行なった。
PCR後の増幅産物を、TAクローニングキット(インビトロジェン株式会社製、商品名:TA cloning kit)に含まれるベクターに組み込んだ。得られた構築物を用いて、大腸菌(TOP10)を形質転換した。形質転換した大腸菌を、LB寒天培地〔組成:1%(w/v)トリプトン、0.5%(w/v)酵母エキス、1%(w/v)塩化ナトリウム、1.5%(w/v)寒天〕を用いて、37℃で、一晩培養した。得られた大腸菌のコロニーを、LB液体培地に播種して、37℃、一晩培養した。得られた大腸菌から、プラスミド抽出キット(シグマ−アルドリッチ社製、商品名:GenElute Plasmid Miniprep Kit)を用いて、プラスミドを精製した。得られたプラスミドに組み込まれている前記増幅産物の塩基配列を、BigDye terminator Cycle Sequencing法により、遺伝子解析システム〔アプライドバイオシステムズ社製、商品名:ABI Prism 3100〕を用いて決定した。
CpG部位のシトシンがメチル化されている場合(メチル化CpG部位)、前記CpG部位は、決定された塩基配列では、「CG」として現れる。一方、CpG部位のシトシンがメチル化されていない場合(非メチル化CpG部位)、前記CpG部位は、決定された塩基配列では、「TG」として現れる。そこで、決定された増幅産物の塩基配列に基づき、HPV16のゲノムDNAにおけるメチル化CpG部位及び非メチル化CpG部位の局在を解析した。その結果を図2に示す。図2は、SiHa細胞に組み込まれているHPV16のゲノムDNAにおけるメチル化CpG部位及び非メチル化CpG部位を示す模式図である。図中、黒丸は、メチル化CpG部位を示し、白丸は、非メチル化CpG部位を示す。また、図中、CpG部位の欄の数値は、GenBank NC_001526(配列番号:9)におけるゲノムポジションを示す。
図2に示される結果から、SiHa細胞のゲノムDNAに組み込まれているHPV16(組込型HPV16)の塩基配列のうち、L1領域におけるCpG部位及びL2領域におけるCpG部位それぞれのシトシンは、メチル化されていることがわかる。それに対し、LCRにおけるCpG部位及びE6領域におけるCpG部位それぞれのシトシンは、ほとんどメチル化されていないことがわかる。したがって、図2に示される結果から、L1領域のCpG部位及びL2領域のCpG部位のシトシンがメチル化されており、LCRのCpG部位及びE6領域のCpG部位のシトシンがメチル化されていないHPV16のゲノムDNAの有無により、子宮頸癌の発症を引き起こす組込型HPV16を検出できる可能性が示唆される。
(試験例1)
HPV16の感染が確認された子宮頸部の組織のうち、病理学的に異形成が起こっていない正常組織と、癌組織それぞれを、厚さ20μmに薄切して、正常組織試料及び癌組織試料を得た。得られた各組織試料に、1%(w/v)SDSと0.1M水酸化ナトリウムとを含む溶液500μLを添加した。得られた混合物を、100℃で20分間保温した。保温後の混合物を、4℃で遠心分離し、上清を回収した。
得られた上清に、上述の亜硫酸水素塩溶液500μLを添加した。その後、得られた混合物を80℃で40分間インキュベートすることにより、亜硫酸水素塩処理を行なった。亜硫酸水素塩処理後の溶液中に含まれる核酸を核酸精製キット〔キアジェン社製、商品名:QIAquick PCR purification kitを用いて精製した。得られた核酸に、最終濃度0.3Mとなるように、水酸化ナトリウムを添加した。つぎに、得られた混合物を室温で5分間インキュベートした。その後、得られた産物を、核酸精製用スピンカラム(GEヘルスケア社製、商品名:MicroSpin S−300 HR Columns)で精製し、分析用試料を得た。
分析用試料4μLに対して、PCR用試薬(ロシュ社製、商品名:FastStart Taq DNA polymerase)に含まれる試薬(商品名:×10 buffer) 2μL、DNAポリメラーゼ〔商品名:FastStart Taq DNAポリメラーゼ(5U/μL)〕0.16μL及び2.5mM dNTP混合物1.6μLと、フォワードプライマー水溶液(10μM)0.8μLと、リバースプライマー水溶液(10μM)0.8μLと、水10.64μLとを添加して、PCR用反応液を調製した。
用いたフォワードプライマーとリバースプライマーとからなるプライマーセット及びPCRサーマルプロファイルを表3に示す。
表3中、実施例1のプライマーセットは、フォワードプライマーである16L1/LCR−Fと、リバースプライマーである16L1/LCR−Rとからなる。前記16L1/LCR−Fは、HPV16のゲノムDNAに対応する亜硫酸水素塩処理された核酸において、所定のメチル化されたCpG部位を含むL1領域に対応する部分とハイブリダイズする。前記16L1/LCR−Rは、HPV16のゲノムDNAに対応する亜硫酸水素塩処理された核酸において、所定のメチル化されていないCpG部位を含むLCRに対応する部分とハイブリダイズする。すなわち、分析用試料中に、L1領域のCpG部位のシトシンがメチル化されており、かつLCRのCpG部位のシトシンがメチル化されていないHPV16のゲノムDNAを亜硫酸水素塩処理して得られた核酸が含まれる場合、実施例1のプライマーセットを用いてPCRを行なうと、増幅産物が生じることになる。
表3中、比較例1のプライマーセットは、フォワードプライマーである16L1Me1−Fと、リバースプライマーである16L1Me1−Rとからなる。前記16L1Me1−F及び16L1Me1−Rは、HPV16のゲノムDNAに対応する亜硫酸水素塩処理された核酸において、それぞれ所定のメチル化されたCpG部位を含むL1領域に対応する部分とハイブリダイズする。すなわち、分析用試料中に、L1領域のCpG部位のシトシンがメチル化されているHPV16のゲノムDNAを亜硫酸水素塩処理して得られた核酸が含まれる場合、比較例1のプライマーセットを用いてPCRを行なうと、増幅産物が生じることになる。
表3中、比較例2のプライマーセットは、フォワードプライマーである16LCRUnMe1−Fと、リバースプライマーである16LCRUnMe1−Rとからなる。前記16LCRUnMe1−F及び16LCRUnMe1−Rは、HPV16のゲノムDNAに対応する亜硫酸水素塩処理された核酸において、それぞれ所定のメチル化されていないCpG部位を含むLCRに対応する部分とハイブリダイズする。すなわち、分析用試料中に、LCRのCpG部位のシトシンがメチル化されていないHPV16のゲノムDNAを亜硫酸水素塩処理して得られた核酸が含まれる場合、比較例2のプライマーセットを用いてPCRを行なうと、増幅産物が生じることになる。
また、表3中、PCRサーマルプロファイル(3)は、95℃4.5分間の保温後、95℃30秒間と60℃15秒間と72℃30秒間とを1サイクルとする45サイクルの反応を行なう条件である。PCRサーマルプロファイル(4)は、95℃4.5分間の保温後、95℃30秒間と63℃15秒間と72℃30秒間とを1サイクルとする45サイクルの反応を行なう条件である。PCRサーマルプロファイル(5)は、95℃4.5分間の保温後、95℃30秒間と56℃15秒間と72℃30秒間とを1サイクルとする45サイクルの反応を行なう条件である。
前記PCR用反応液を用いて、プライマーセットの種類に応じたPCR条件で、PCRを行ない、増幅産物の有無を確認した。その結果を図3に示す。図3は、実施例1、比較例1及び比較例2のプライマーセットそれぞれと、正常組織試及び癌組織試料から調製された各分析用試料とを用いた核酸増幅後の増幅産物の結果を示す電気泳動図である。図3のパネル(a)〜(c)のレーン1は、正常組織試料から得られた核酸の場合の増幅産物、レーン2は、癌組織試料から得られた核酸の場合の増幅産物を示す。また、図3のパネル(a)は、比較例1のプライマーセットを用いた場合の結果、パネル(b)は、実施例1のプライマーセットを用いた場合の結果、パネル(c)は、比較例2のプライマーセットを用いた場合の結果を示す。パネル(d)〜(f)は、増幅対象の核酸に対応するHPV16のゲノムDNAにおける遺伝子領域のメチル化・非メチル化の状態を模式化して示したものである。パネル(d)〜(f)において黒丸はメチル化シトシンの存在、及び白丸は非メチル化シトシンの存在を、それぞれ模式的に示している。
図3のパネル(a)に示される結果から明らかなように、比較例1のプライマーセットを用いた場合、レーン1及びレーン2において増幅産物が検出されている。すなわち、比較例1のプライマーセットでは、正常組織及び子宮頸癌組織から調製されたいずれの分析試料からも、増幅産物が得られてしまう。この結果から、メチル化されたL1領域(CpG部位のシトシンがメチル化されたL1領域)を検出するだけでは、正常組織と子宮頸癌組織を識別できないことがわかる。
また、図3のパネル(c)に示される結果から明らかなように、比較例2のプライマーセットを用いた場合、レーン1及びレーン2において増幅産物が検出されている。すなわち、比較例2のプライマーセットでは、正常組織及び子宮頸癌組織から調製されたいずれの分析試料からも、増幅産物が得られてしまう。この結果から、メチル化されていないLCR(CpG部位のシトシンがメチル化されていないLCR)を検出するだけでは、正常組織と子宮頸癌組織を識別できないことがわかる。
これに対して、図3のパネル(b)に示される結果から明らかなように、実施例1のプライマーセットを用いた場合、レーン1では増幅産物は検出されず、レーン2では増幅産物が検出されている。すなわち、実施例1のプライマーセットでは、正常組織から調整された分析用試料では、増幅産物が得られず、子宮頸癌組織から調整された分析用試料では、増幅産物が得られることがわかる。実施例1のプライマーセットでは、図3のパネル(e)に示されるように、メチル化されているL1領域に対応する核酸におけるプライマーがハイブリダイズする部位から、メチル化されていないLCRに対応する核酸におけるプライマーがハイブリダイズする部位までの連続した領域に対応する核酸を増幅対象とする。したがって、実施例1のプライマーセットによれば、前記表1に示されるHPV感染細胞2に含まれるHPV16のゲノムDNAにおける所定のL1領域及びLCRを含む連続した核酸に対応する亜硫酸水素塩処理後の核酸のみが増幅される。その結果、実施例1のプライマーセットによれば、正常組織試料と子宮頸癌組織試料とを区別することが可能となる。
以上の結果から、HPVのL1領域のCpG部位を有する塩基配列における、CpG部位以外のシトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする第1プライマーと、HPVのLCRのCpG部位を有する塩基配列における、シトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする第2プライマーとからなるプライマーセットを用いることにより、HPVに起因する癌細胞を検出できることが示唆された。
(実験例2)
実験例1と同様の操作により、HPV18ゲノムが染色体に組み込まれている子宮頸部癌由来細胞株であるC4−1細胞を用い、HPV18ゲノムにおけるメチル化CpG部位及び非メチル化CpG部位の解析を行なった。具体的には、SiHa細胞のゲノムDNAに代えて、C4−1細胞のゲノムDNAを用い、かつ表2に示されるプライマーセット及びPCRサーマルプロファイルに代えて、表4に示されるプライマーセット及びPCRサーマルプロファイル(6)を用いてPCR反応を行なったことを除き、実験例1と同様の操作を行ない、増幅産物の塩基配列を決定した。
表4中、PCRサーマルプロファイル(6)は、95℃4.5分間の保温後、95℃30秒間と54℃30秒間と72℃40秒間とを1サイクルとする40サイクルの反応を行なう条件である。
そこで、決定された増幅産物の塩基配列に基づき、HPV18のゲノムDNAにおけるメチル化CpG部位及び非メチル化CpG部位の局在を解析した。その結果を図4に示す。図4は、C4−1細胞に組み込まれているHPV18のゲノムDNAにおけるメチル化CpG部位及び非メチル化CpG部位を示す模式図である。図中、黒丸は、メチル化CpG部位を示し、白丸は、非メチル化CpG部位を示す。また、図中、CpG部位の欄の数値は、GenBank NC_001357(配列番号:16)におけるゲノムポジションを示す。
図4に示される結果から、C4−1細胞のゲノムDNAに組み込まれているHPV18(組込型HPV18)も、SiHa細胞のゲノムDNAに組み込まれているHPV16(組込型HPV16)と同様に、L1領域におけるCpG部位のシトシンがメチル化されており、LCRにおけるCpG部位及びE6領域のCpG部位それぞれのシトシンは、メチル化されていないことがわかる。この結果から、本発明のプライマーセットを用いれば、HPVの種類に関わらず、子宮頸癌の発症を引き起こす組込型HPVを検出できる可能性が示唆される。
(試験例3)
被験者から手術により摘出され、HPV16の感染が確認された14種類の子宮頸部の組織のパラフィンブロック(以下、「手術摘出試料」という)及び被験者の子宮頸部からコルポスコピー観察下でかきとられ、HPV16の感染が確認された7種類の子宮頸部の組織のパラフィンブロック(以下、「生検試料」という)のそれぞれを、厚さ10μmとなるように薄切し、組織試料を得た。
なお、前記手術摘出試料及び生検試料は、いずれも、従来の組織診により異形成以上の段階の組織であることが診断された組織を含むものである。14種類の手術摘出試料のうち、軽度異形成(CIN1)の試料は1種類、中等度異形成(CIN2)の試料は4種類、高度異形成(CIN3)の試料は4種類、癌(SCC)の試料は4種類、正常試料は1種類である。また、生検試料のうち、軽度異形成(CIN1)の試料は2種類、高度異形成(CIN3)の試料は2種類、癌(SCC)の試料は3種類である。
1.5mLチューブに、同じパラフィンブロックから得られた組織試料3枚と、キシレン1mLとを添加した。得られた混合物を12000rpmで10分間の遠心分離に供した。遠心分離後、上清を除き、ペレットに100体積%エタノール1mLを添加して懸濁し、得られた懸濁物を12000rpmで10分間の遠心分離に供した。遠心分離後、上清を除き、再度ペレットに100体積%エタノールを添加して懸濁し、得られた懸濁物を再度12000rpmで10分間の遠心分離に供した。遠心分離後、上清を除き、ペレットを乾燥させた。得られたペレットを、以下、「乾燥ペレット」という。
1%(w/v)SDSと0.1M水酸化ナトリウムとを含む溶液700μLを、手術摘出試料から得られた乾燥ペレットに添加した。また、1%(w/v)SDSと0.1M水酸化ナトリウムとを含む溶液500μLを、生検試料から得られた乾燥ペレットに添加した。得られた各混合物を、100℃で20分間保温した。保温後の各混合物を、4℃で12000rpmで10分間の遠心分離に供し、上清を回収した。
前記亜硫酸水素塩溶液700μLを、手術摘出試料から得られた上清に添加し、混合した。また、前記亜硫酸水素塩溶液500μLを、生検試料から得られた上清に添加し、混合した。その後、得られた各混合物を80℃で40分間インキュベートすることにより、亜硫酸水素塩処理を行なった。亜硫酸水素塩処理後の溶液中に含まれる核酸を核酸精製キット(キアジェン社製、商品名:QIAquick PCR purification kit)を用いて精製した。得られた核酸に、最終濃度0.3Mとなるように、水酸化ナトリウムを添加した。つぎに、得られた混合物を室温で5分間インキュベートした。その後、得られた産物を、核酸精製用スピンカラム(GEヘルスケア社製、商品名:MicroSpin S−300 HR Columns)で精製し、分析用試料を得た。
分析用試料として、手術摘出試料由来の分析用試料を用いたことを除き、試験例1と同様の操作を行なって、PCR用反応液を調製した。また、分析用試料として、生検試料由来の分析用試料を用い、分析用試料の量を2μLとしたことを除き、試験例1と同様の操作を行なって、PCR用反応液を調製した。PCR用反応液のプライマーセットとして、配列番号:10で示される塩基配列からなるプライマーと、配列番号:11で示される塩基配列からなるプライマーとからなる実施例1のプライマーセットを用いた。
なお、手術摘出試料由来の分析用試料を含むPCR用反応液を用いた場合のPCR条件は、表3中のPCRサーマルプロファイル(3)と同じ条件である。生検試料由来の分析用試料を含むPCR用反応液を用いた場合のPCR条件は、95℃4.5分間の保温後、95℃30秒間と60℃15秒間と72℃30秒間とを1サイクルとする40サイクルで反応を行なう条件である。
前記PCR用反応液を用いて、プライマーセットの種類に応じたPCR条件で、PCRを行ない、増幅産物の有無を確認した。その結果を図5に示す。図5は、実施例1のプライマーセットと、手術摘出試料及び生検試料から調製された各分析用試料とを用いた核酸増幅後の増幅産物の結果を示す電気泳動図である。図5中、レーン1は、CIN3の手術摘出試料を用いた結果、レーン2は、CIN2の手術摘出試料を用いた結果、レーン3は、CIN1の手術摘出試料を用いた結果、レーン4は、CIN3の手術摘出試料を用いた結果、レーン5は、CIN3の手術摘出試料を用いた結果、レーン6は、SCCの手術摘出試料を用いた結果、レーン7は、SCCの手術摘出試料を用いた結果、レーン8は、SCCの手術摘出試料を用いた結果、レーン9は、SCCの手術摘出試料を用いた結果、レーン10は、CIN2の手術摘出試料を用いた結果、レーン11は、CIN2の手術摘出試料を用いた結果、レーン12は、CIN2の手術摘出試料を用いた結果、レーン13は、CIN3の手術摘出試料を用いた結果、レーン14は、正常の手術摘出試料を用いた結果、レーン15は、CIN1の生検試料を用いた結果、レーン16は、CIN1の生検試料を用いた結果、レーン17は、CIN3の生検試料を用いた結果、レーン18は、CIN3の生検試料を用いた結果、レーン19は、SCCの生検試料を用いた結果、レーン20は、SCCの生検試料を用いた結果、レーン21は、SCCの生検試料を用いた結果を示す。図5中、PCは、分析用試料として、SiHa細胞のゲノムDNAを亜硫酸水素塩処理した核酸を用いた結果、NCは、分析用試料として、蒸留水を用いた結果を示す。さらに、図5の結果について、異形成の段階に基づいて分析した結果を表5に示す。表5中、「L1−LCR陽性」は、増幅産物が検出された試料を示す。また、表5において、全試料数に対するL1−LCR陽性の試料数の割合(%)を、括弧内に示す。
図5及び表5に示される結果から、実施例1のプライマーセットによれば、組織診により高度異形成(CIN3)以上の段階の組織であると判定された組織から調製された分析用試料を用いた場合、高い割合で、増幅産物が得られるが、組織診により中度異形成(CIN2)以下の段階の組織であると判定された組織から調製された分析用試料を用いた場合、増幅産物が得られる割合が低いことがわかる。この結果から、実施例1のプライマーセットによれば、手術摘出試料、生検試料等の臨床検体として得られた組織が高度異形成以上の段階の組織であるか否かを判定できることがわかる。
(試験例4)
被験者から手術により摘出され、HPV18の感染が確認された癌組織のパラフィンブロック及び被験者から手術により摘出され、HPV58の感染が確認され、かつCIN3の段階の組織であると診断された子宮頸部の組織のパラフィンブロック(手術摘出試料)、並びに被験者の子宮頸部からコルポスコピー観察下でかきとられ、HPV58の感染が確認され、かつCIN3の段階の組織であると診断された患者由来の子宮頸部の組織のパラフィンブロック(生検試料)を用い、試験例2と同様の操作を行なうことにより、それぞれの分析用試料を得た。
分析用試料2μLに対して、PCR用試薬〔タカラバイオ株式会社製、商品名:TaKaRa EX Taq(登録商標)Hot Start Version〕に含まれている試薬(×10 buffer)1.5μL、DNAポリメラーゼ〔商品名:TaKaRa Ex Taq HS(5U/μL)〕0.075μL及び2.5mM dNTP混合物 1.2μLと、フォワードプライマー水溶液(10μM)0.6μLと、リバースプライマー水溶液(10μM)0.6μLと水9.025μLとを添加して、PCR用反応液を調製した。
HPV18を含む試料由来の分析用試料に用いたフォワードプライマーとリバースプライマーとからなるプライマーセットを表6に示す。HPV58を含む試料由来の分析用試料に用いたフォワードプライマーとリバースプライマーとからなるプライマーセットを表7に示す。
なお、PCR条件として、実験例2で用いたPCRサーマルプロファイル(6)及び手術摘出試料由来の分析用試料及び生検試料由来の分析用試料それぞれを用い、実験例1と同様の操作を行ない、HPV18及びHPV58それぞれのゲノムDNAにおけるメチル化CpG部位及び非メチル化CpG部位を解析した。これらの結果を図6〜8に示す。
図6は、手術摘出試料由来のHPV18のゲノムDNAにおけるメチル化CpG部位及び非メチル化CpG部位を示す模式図である。図7は、手術摘出試料由来のHPV58のゲノムDNAにおけるメチル化CpG部位及び非メチル化CpG部位を示す模式図である。図8は、生検試料由来のHPV58のゲノムDNAにおけるメチル化CpG部位及び非メチル化CpG部位を示す模式図である。図中、黒丸は、メチル化CpG部位を示し、白丸は、非メチル化CpG部位を示す。また、図6において、CpG部位の欄の数値は、GenBank NC_001357(配列番号:16)におけるゲノムポジションを示す。また、図7及び8において、CpG部位の欄の数値は、GenBank NC_001443(配列番号:37)におけるゲノムポジションを示す。
図6に示される結果から、HPV18の感染が確認された癌組織由来のHPV18では、L1領域のCpG部位のシトシンが高頻度でメチル化されており、LCRのCpG部位のシトシンがほとんどメチル化されておらず、かつE6領域のCpG部位のシトシンはメチル化されていないことがわかる。また、図7に示される結果から、HPV58の感染が確認され、かつCIN3と診断された子宮頸部の組織由来のHPV58では、L1領域及びL2領域のCpG部位のシトシンは、高頻度でメチル化されており、LCRのCpG部位のシトシンは、メチル化されていないことがわかる。さらに、図8に示される結果から、コルポスコピー観察下で得られたHPV58の感染が確認され、かつCIN3と診断された患者由来の子宮頸部の組織由来のHPV58は、L1領域のCpG部位のシトシンは、高頻度でメチル化されており、LCRのCpG部位のシトシンは、ほとんどメチル化されていないことがわかる。
これらの結果から、HPVのL1領域又はL2領域中のCpG部位を有する塩基配列における、CpG部位以外に存在するシトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする第1プライマーと、HPVのLCR又はE6領域中のCpG部位を有する塩基配列における、シトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする第2プライマーとからなるプライマーセットによれば、HPVの種類に関わらず、子宮頸癌の発症を引き起こすHPVを検出できることが示唆される。また、前記プライマーセットによれば、手術摘出試料や生検試料等の臨床検体として得られた組織が高度異形成以上の段階の組織であるか否かを判定できることが示唆された。
(調製例1)
HPVに起因する癌の診断用又は異形成の段階の診断用のキットを調製した。その一例を、以下に示す。かかるキットは、下記プライマーセットの各プライマーの水溶液が入ったヌクレアーゼフリーの容器と非メチル化シトシン変換剤である亜硫酸水素塩溶液(10M亜硫酸水素ナトリウム水溶液)が入ったヌクレアーゼフリーの容器とからなる。
HPVに起因する癌の診断用又は異形成の段階の診断用のキットの内容:
容器1
フォワードプライマー水溶液(配列番号:10に示される塩基配列からなるプライマー16L1/LCR−Fをヌクレアーゼフリーの水に溶解することにより得られた水溶液)
容器2
リバースプライマー水溶液(配列番号:1に示される塩基配列からなるプライマー16L1/LCR−Rをヌクレアーゼフリーの水に溶解することにより得られた水溶液)
容器3
10M亜硫酸水素ナトリウム水溶液

かかるキットを用いて、前記試験例1と同様の操作を行なうことにより、HPVに起因する癌を、高い精度で、かつ簡便に診断することができる。また、本キットを用いて、前記試験例3と同様の操作を行なうことにより、異形成の段階を、高い精度で、かつ簡便に診断することができる。
配列番号:1は、プライマーの配列である。
配列番号:2は、プライマーの配列である。
配列番号:3は、プライマーの配列である。
配列番号:4は、プライマーの配列である。
配列番号:5は、プライマーの配列である。
配列番号:6は、プライマーの配列である。
配列番号:7は、プライマーの配列である。
配列番号:8は、プライマーの配列である。
配列番号:10は、プライマーの配列である。
配列番号:11は、プライマーの配列である。
配列番号:12は、プライマーの配列である。
配列番号:13は、プライマーの配列である。
配列番号:14は、プライマーの配列である。
配列番号:15は、プライマーの配列である。
配列番号:17は、プライマーの配列である。
配列番号:18は、プライマーの配列である。
配列番号:19は、プライマーの配列である。
配列番号:20は、プライマーの配列である。
配列番号:21は、プライマーの配列である。
配列番号:22は、プライマーの配列である。
配列番号:23は、プライマーの配列である。
配列番号:24は、プライマーの配列である。
配列番号:25は、プライマーの配列である。
配列番号:26は、プライマーの配列である。
配列番号:27は、プライマーの配列である。
配列番号:28は、プライマーの配列である。
配列番号:29は、プライマーの配列である。
配列番号:30は、プライマーの配列である。
配列番号:31は、プライマーの配列である。
配列番号:32は、プライマーの配列である。
配列番号:33は、プライマーの配列である。
配列番号:34は、プライマーの配列である。
配列番号:35は、プライマーの配列である。
配列番号:36は、プライマーの配列である。

Claims (13)

  1. (A) 被験者から採取された子宮頸部の細胞からDNAを含有する試料を調製するステップ、
    (B) 前記ステップ(A)で得られた試料に含まれるDNA中の非メチル化シトシンを他の塩基に変換して変換試料を得るステップ、
    (C) 前記ステップ(B)で得られた変換試料と、HPVのL1領域又はL2領域中のCpG部位を有する塩基配列における、CpG部位以外に存在するシトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする第1プライマーと、HPVのLCR又はE6領域中のCpG部位を有する塩基配列における、シトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする第2プライマーとを用いて、第1プライマーがハイブリダイズする部位から第2プライマーがハイブリダイズする部位までの間の連続した塩基配列からなる核酸を増幅対象とする核酸増幅反応を行なうステップ、及び
    (D) 前記ステップ(C)の核酸増幅反応の結果に基づいて、HPVに起因する癌細胞を検出するステップ、
    を含み、
    前記第1プライマーは、さらにメチル化CpG部位を含む領域にハイブリダイズし、
    前記第2プライマーは、非メチル化CpG部位のシトシンが変換処理によって他の塩基に変換された配列を含む領域にハイブリダイズする、
    HPVに起因する癌細胞の検出方法。
  2. 前記ステップ(A)が、
    (a) 界面活性剤を含有する溶液と、被験者の子宮頸部の細胞とを混合して混合物を得るステップ、
    (b) 前記ステップ(a)で得られた混合物を遠心分離に供して、不溶物を沈殿させ、上清を得るステップ、及び
    (c) 前記ステップ(b)で得られた上清を分取するステップ、
    を含む、請求項1に記載の検出方法。
  3. 前記ステップ(A)が、ステップ(a)とステップ(b)との間において、
    (a1) ステップ(a)で得られた混合物に物理的処理を施して、細胞からDNAを遊離させるステップをさらに含み、
    前記ステップ(b)において、前記ステップ(a1)で得られた産物を遠心分離に供して、不溶物を沈殿させ、上清を得る、請求項2に記載の検出方法。
  4. (A) 被験者から採取された子宮頸部の組織からDNAを含有する試料を調製するステップ、
    (B) 前記ステップ(A)で得られた試料に含まれるDNA中の非メチル化シトシンを他の塩基に変換して変換試料を得るステップ、及び
    (C) 前記ステップ(B)で得られた変換試料と、HPVのL1領域又はL2領域中のCpG部位を有する塩基配列における、CpG部位以外に存在するシトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする第1プライマーと、HPVのLCR又はE6領域中のCpG部位を有する塩基配列における、シトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする第2プライマーとを用いて、第1プライマーがハイブリダイズする部位から第2プライマーがハイブリダイズする部位までの間の連続した塩基配列からなる核酸を増幅対象とする核酸増幅反応を行なうステップ、を含み、
    記第1プライマーは、さらにメチル化CpG部位を含む領域にハイブリダイズし、
    前記第2プライマーは、非メチル化CpG部位のシトシンが変換処理によって他の塩基に変換された配列を含む領域にハイブリダイズし、
    前記ステップ(C)の核酸増幅反応の結果を、組織が高度異形成以上の段階の組織であるか否かの判定に用いる、
    組織が高度異形成以上の段階の組織であるか否かの判定を補助する方法。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載のHPVに起因する癌細胞の検出方法又は請求項4に記載の組織が高度異形成以上の段階の組織であるか否かの判定を補助する方法に用いるためのプライマーセットであって、
    HPVのL1領域又はL2領域中のCpG部位を有する塩基配列における、CpG部位以外に存在するシトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする第1プライマーと、
    HPVのLCR又はE6領域中のCpG部位を有する塩基配列における、シトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズする第2プライマーと
    を含み、
    前記第1プライマーは、さらにメチル化CpG部位を含む領域にハイブリダイズし、
    前記第2プライマーは、非メチル化CpG部位のシトシンが変換処理によって他の塩基に変換された配列を含む領域にハイブリダイズし、
    非メチル化シトシンが他の塩基に変換されたHPVのゲノムDNAの塩基配列からなる核酸のうち、第1プライマーがハイブリダイズする部位から第2プライマーがハイブリダイズする部位までの間の連続した塩基配列からなる核酸を核酸増幅反応により増幅するためのプライマーセット。
  6. 第1プライマーが、HPVのL1領域中のCpG部位を有する塩基配列における、CpG部位以外に存在するシトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズするプライマーである、請求項5に記載のプライマーセット。
  7. 第2プライマーが、HPVのLCR中のCpG部位を有する塩基配列における、シトシンが他の塩基に変換された塩基配列からなる核酸にハイブリダイズするプライマーである、請求項5又は6に記載のプライマーセット。
  8. 他の塩基が、ウラシル又はチミンである、請求項5〜7のいずれかに記載のプライマーセット。
  9. 第1プライマー及び第2プライマーが、ポリメラーゼ連鎖反応法、鎖置換反応法、リガーゼ連鎖反応法又は転写増幅法により核酸を増幅するためのプライマーである、請求項5〜8のいずれかに記載のプライマーセット。
  10. 請求項5〜9のいずれかに記載のプライマーセットと、
    核酸中の非メチル化シトシンを他の塩基に変換する非メチル化シトシン変換剤とを含有してなる、HPVに起因する癌の診断用キット。
  11. 非メチル化シトシン変換剤が、亜硫酸水素塩である、請求項10に記載の診断用キット。
  12. HPVに起因する癌が、子宮頸癌、口腔癌又は咽頭癌である、請求項10又は11に記載の診断用キット。
  13. 請求項5〜9のいずれかに記載のプライマーセットと、
    核酸中の非メチル化シトシンを他の塩基に変換する非メチル化シトシン変換剤とを含有してなる、異形成の段階の診断用キット。
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