JP5761528B2 - 透明酸化物膜及びその製造方法並びに酸化物スパッタリングターゲット - Google Patents
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Description
すなわち、上記特許文献1に記載のターゲットでは、スパッタリング時にノジュールが多く発生して装置の掃除等に手間がかかるため、酸化スズ系ではなく他の組成系のガスバリア性に優れる透明酸化物膜が要望されている。
また、上記特許文献2に記載のガスバリア膜は、高周波を印加したスパッタにより作製されているが、より高速に成膜を行うためにはDCスパッタで成膜できる膜である必要がある。
すなわち、この透明酸化物膜では、全金属成分量に対して、Alを3〜13at%、Siを21〜59at%、Mgを10〜48at%含有し、残部がZn及び不可避不純物からなる成分組成を有した酸化物であり、波長400〜750nmの可視光域での屈折率平均値が、1.9以下であり、前記可視光域での透過率平均値が90%以上であり、非晶質であるので、可視光域で低い屈折率及び高い透過率が得られると共に高いガスバリア性(例えば、水蒸気バリア性)を有している。
すなわち、この透明酸化物膜では、水蒸気透過率が0.03g/(m2・day)以下であるので、水蒸気バリア性が高いことから、電子ペーパーや太陽電池に用いる樹脂フィルム基材上に積層するガスバリア層等に好適である。
すなわち、この酸化物スパッタリングターゲットでは、全金属成分量に対して、Alを3〜8at%、Siを11〜27at%、Mgを5〜18at%含有し、残部がZn及び不可避不純物からなる成分組成を有した酸化物焼結体からなるので、導電性が高くDCスパッタにより上記本発明の透明酸化物膜を安定して形成することができる。
すなわち、この透明酸化物膜の製造方法では、酸素を含有させた不活性ガス雰囲気中及び基板を加熱した状態の少なくとも一方の環境下で、成膜される透明酸化物膜の透明性が向上し、屈折率が低下する。また、DCスパッタで高速成膜した膜であるので、RFスパッタで成膜した膜より緻密で、バリア性に優れている。
Al:
Alは、DCスパッタ可能にするためにZnOへのドーパントとしてスパッタリングターゲットに添加されたものであり、スパッタ成膜の結果として膜に含有されたものである。Alが上記含有量範囲よりも少ないと、ターゲットの導電性が不足してDCスパッタができなくなる。また、Alが上記含有量範囲よりも多いと、Znと複合酸化物を形成して結晶性が高くなり、ガスバリア性が低下してしまう。
Siは、Mgと共に膜の結晶性を低下させ、水蒸気やガスのパスを減少させることにより、ガスバリア性を向上させる効果を有する。Siが上記含有量範囲よりも少ないと、膜の結晶性が高くなり、ガスバリア性が低下すると共に屈折率が上昇してしまう。また、Siが上記含有量範囲よりも多いと、Znと複合酸化物を形成して結晶性が高くなり、ガスバリア性が低下してしまうと共に、所望の組成の膜をスパッタ成膜するために必要なターゲットのSi量が多くなり、導電性が低くなってDCスパッタができなくなる。
Mgは、Siと共に膜の結晶性を低下させ、水蒸気やガスのパスを減少させることにより、ガスバリア性を向上させる効果を有する。Mgが上記含有量範囲よりも少ないと、膜の結晶性が高くなり、ガスバリア性が低下してしまう。また、Mgが上記含有量範囲よりも多いと、Al,Znと複合酸化物を形成して結晶性が高くなり、ガスバリア性が低下してしまうと共に、所望の組成の膜をスパッタ成膜するために必要なターゲットのMg量が多くなり、導電性が低くなってDCスパッタができなくなる。
すなわち、本発明に係る透明酸化物膜によれば、全金属成分量に対して、Al、Si、Mgを上記範囲内で含有し、残部がZn及び不可避不純物からなる成分組成を有した酸化物で、可視光域で低い屈折率及び高い透過率を備え、非晶質であるので、高いガスバリア性を有している。
また、本発明に係る酸化物スパッタリングターゲットによれば、全金属成分量に対して、Al、Si、Mgを上記範囲内で含有し、残部がZn及び不可避不純物からなる成分組成を有した酸化物焼結体からなるので、導電性が高くDCスパッタにより上記本発明の透明酸化物膜を安定して形成することができる。
さらに、本発明に係る透明酸化物膜の製造方法によれば、上記酸化物スパッタリングターゲットを用いてDCスパッタが可能になり、酸素を含有させた不活性ガス雰囲気中及び基板を加熱した状態の少なくとも一方の環境下で、直流電流を投入してスパッタするので、透明性の高い上記組成の透明酸化物膜を成膜することができる。
したがって、本発明の透明酸化物膜を電子ペーパーや太陽電池などのガスバリア層に採用することで、要求される高透明性、低屈折率及び高ガスバリア性が得られ、高信頼性を有すると共に視認性の高い電子ペーパーや変換効率の良好な太陽電池などを作製可能である。
なお、水蒸気透過率は、JIS規格のK7129法にしたがってモコン法により測定されたものである。
さらに、本実施形態の透明酸化物膜の製造方法は、上記酸化物スパッタリングターゲットを用い、酸素を含有させた不活性ガス雰囲気中及び基板を加熱した状態の少なくとも一方の環境下で、直流電流を投入してスパッタ(DCスパッタ)する。
上記製法の一例について詳述すれば、例えば、図1に示すように、まず純度99.9%以上のAl2O3粉末とMgO粉末とSiO2粉末とZnO粉末とを上記含有量範囲となるように秤量し、得られた粉末と、ジルコニアボールとをポリ容器(ポリエチレン製ポット)に入れ、ボールミル装置にて所定時間湿式混合し、混合粉末とする。なお、溶媒には、例えばアルコールを用いる。
このようにホットプレスした焼結体は、通常放電加工、切削または研削工法を用いて、ターゲットの指定形状に機械加工し、加工後のターゲットをInを半田として、CuまたはSUS(ステンレス)またはその他金属(例えば、Mo)からなるバッキングプレートにボンディングし、スパッタに供する。
特に、水蒸気透過率が0.03g/(m2・day)以下であるので、水蒸気バリア性が高いことから、電子ペーパーや太陽電池に用いる樹脂フィルム基材上に積層するガスバリア層等に好適である。
さらに、酸素と不活性ガスとの雰囲気ガス全体に対する酸素のガス分圧を、0.05以上に設定するので、電子ペーパーや太陽電池で採用されるガスバリア層として十分な透明性と低い屈折率とを有する透明酸化物膜が得られる。
まず、表1に示す組成割合になるようにAl2O3粉末(4N,D50=0.2μm)とMgO粉末(3N,D50=0.4μm)とSiO2粉末(3N,D50=5μm)とZnO粉末(4N,D50=1μm)とを秤量し、得られた粉末とその4倍量(重量比)のジルコニアボール(直径5mmのボール)とを10Lのポリ容器(ポリエチレン製ポット)に入れ、ボールミル装置にて48時間湿式混合し、混合粉末とする。なお、溶媒には、アルコールを用いた。
ここで、例えば、D50=1μmは、粉末における50%の粒子の粒径が1μm以下であることを表している。
このようにホットプレスした焼結体を、ターゲットの指定形状(直径125mm、厚さ10mm)に機械加工し、加工したものを無酸素銅からなるバッキングプレートにボンディングして本実施例1〜13のスパッタリングターゲットを作製した。
また、本発明の実施例及び比較例の透明酸化物膜についてX線回折(XRD)の分析を行い、結晶ピークの有無について調べた結果を表1に示す。
さらに、水蒸気透過率(水蒸気バリア性)は、モコン法を用い、mocon社製PERMATRAN-WMODEL 3/33を用いてJIS規格のK7129法に基づいて測定した。測定されたそれぞれの結果は表1に示す。
比較例2では、ターゲットに複合酸化物(ZnAl2O4)組織ができて異常放電が多発し、DCスパッタできなかったので、RFスパッタしたところ、膜に複合酸化物相が析出して水蒸気バリア性が悪かった。
比較例4では、ターゲットの電気抵抗値が高すぎて、DCスパッタできなかったため、RFスパッタしたところ、複合酸化物(Zn2SiO4)が析出し、水蒸気バリア性が悪かった。
比較例5では、Mg添加量が少ないため、膜の結晶性が高くなり、粗大粒子が析出して水蒸気バリア性が低下している。
比較例6では、ターゲットの電気抵抗値が高すぎて、DCスパッタできなかったため、RFスパッタしたところ、複合酸化物(ZnMgO2)が析出し、水蒸気バリア性が悪かった。
比較例7では、本発明のスパッタ成膜条件を外れている。本発明のスパッタリングターゲットを用いても、基板加熱・酸素添加を行わなければ、膜に酸素欠損が残存するため、可視光域の屈折率が高く、可視光透過率が低い。
また、本発明の技術範囲は上記実施形態及び上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
Claims (4)
- 全金属成分量に対して、Alを3〜13at%、Siを21〜59at%、Mgを10〜48at%含有し、残部がZn及び不可避不純物からなる成分組成を有した酸化物であり、波長400〜750nmの可視光域での屈折率平均値が、1.9以下であり、前記可視光域での透過率平均値が90%以上であり、非晶質であることを特徴とする透明酸化物膜。
- 請求項1に記載の透明酸化物膜において、
水蒸気透過率が0.03g/(m2・day)以下であることを特徴とする透明酸化物膜。 - 請求項1又は2に記載の透明酸化物膜を製造するためのスパッタリングターゲットであって、
全金属成分量に対して、Alを3〜8at%、Siを11〜27at%、Mgを5〜18at%含有し、残部がZn及び不可避不純物からなる成分組成を有した酸化物焼結体からなることを特徴とする酸化物スパッタリングターゲット。 - 請求項1又は2に記載の透明酸化物膜を製造する方法であって、
請求項3に記載の酸化物スパッタリングターゲットを用い、酸素を含有させた不活性ガス雰囲気中及び基板を加熱した状態の少なくとも一方の環境下で、直流電流を投入してスパッタすることを特徴とする透明酸化物膜の製造方法。
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