JP5757523B2 - 一価銅の濃度測定方法及び濃度管理方法、並びに濃度測定装置 - Google Patents

一価銅の濃度測定方法及び濃度管理方法、並びに濃度測定装置 Download PDF

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Description

この発明は、銅めっき液中の一価銅の濃度を測定する方法、及び銅めっき液中の一価銅の濃度を管理する方法、並びにこれらに用いられる装置に関する。特に、水溶性のキレート剤を使用して銅めっき液中の一価銅濃度を測定する方法と、その銅めっき液中の一価銅濃度を管理する方法、並びにこれらに用いられる装置に関する。
プリント回路基板の製造においては、ファイン化及び多層化に対応すべく、より高度のめっきプロセス制御が求められている。例えば硫酸銅電気めっき浴において、めっき液中の銅が電解で溶解・析出するときに、一価の銅イオンが発生する。そのため、めっき条件によっては不均化反応(2Cu→Cu2++Cu)により銅パーティクルを生成し、これがスライムとなり、めっき表面にざらつきを生じる。この対策のために光沢剤が使用されるが、この光沢剤の過剰添加を招く原因のひとつになる。また、プリント回路基板のスルーホールやビアを銅めっきによって構成する場合は、層の厚さが一定とならず電気特性にも影響を与えるという問題がある。即ち、銅めっき液中の一価銅濃度はめっき製品の不良率に直接影響する。
この問題を解決すべく、特許文献1には、ネオクプロイン試薬を硫酸銅めっき液に添加し、めっき液の吸光度によりめっき液中の一価銅濃度をモニターしつつめっき浴を行う方法が開示されている。この方法の測定原理を示す。まず、ネオクプロイン試薬が一価銅と選択的に反応し、燈色のCu−ネオクプロイン錯体を精製する。この錯体はメンブランフィルターに補足され二価銅と分離される。この補足された錯体を有機溶媒により溶出し、その吸光度を測定することにより一価銅の濃度を測定する。
また特許文献1の方法以外にも、従来よりクプロイン試薬、バソクプロイン試薬を用いて同様の方法で一価銅の濃度を測定する技術が従来から知られており、用いられている。
特開2008−144186号公報
しかしながら、クプロイン、ネオクプロイン、バソクプロインのいずれも非水溶性であるため、各錯体を有機溶媒により溶出させる必要がある。実際の生産現場であるめっき浴工程の管理において、このような有機溶媒による溶出を一定期間毎に行うことは極めて煩雑である。また、錯体の補足作業も必要となるため、工程を複雑化、高コスト化させてしまうという問題があった。
本発明はこのような背景のもとになされたものであり、その目的は、簡易かつ高精度な一価銅の濃度測定方法及び濃度管理方法、並びにこれらに用いられる濃度測定装置を提供することにある。
本発明は以下の手段により上記課題を解決する。なお後述する発明を実施するための最良の形態の説明及び図面で使用した符号を参考のために括弧書きで付記するが、本発明の構成要素は該付記したものには限定されない。
本発明1の一価銅の濃度測定方法は、銅めっき液(例えば硫酸銅めっき液)を含むpH4〜10のサンプル溶液及びバソクプロインスルホン酸二ナトリウム試薬を混合した吸光度測定用溶液を調整する調整工程と、前記調整工程において調整された吸光度測定用溶液の吸光度(例えば波長485nmにおける吸光度)を測定する吸光度測定工程と、前記吸光度測定工程において測定された吸光度に基づいて、前記銅めっき液中の一価銅濃度を測定する(一価銅濃度と吸光度との関係をあらわす検量線において、測定された吸光度に対応する一価銅濃度を特定する)濃度測定工程と、を含むことを特徴とする。
本発明2の一価銅の濃度測定方法は、本発明1の濃度測定方法であって、前記銅めっき液は硫酸銅めっき液であり、前記調整工程において、前記硫酸銅めっき液を含むpH4〜7(好ましくはpH4〜5.5)のサンプル溶液及びバソクプロインスルホン酸二ナトリウム試薬を混合した吸光度測定用溶液を調整することを特徴とする。
本発明3の一価銅の濃度測定方法は、本発明1又は2の濃度測定方法であって、前記銅めっき液には、一価銅と錯体を形成する物質(例えばポリエチレングリコール等)が含まれ、前記吸光度測定工程において、吸光度の収束前の時点(例えば吸光度の上昇開始から2分後)における吸光度を測定し、 前記濃度測定工程において、前記吸光度測定工程において測定した吸光度に基づいて、吸光度の収束後の時点における前記銅めっき液中の一価銅濃度を推定することを特徴とする。
本発明4の一価銅の濃度測定方法は、本発明1又は2の濃度測定方法であって、前記銅めっき液には、一価銅と錯体を形成する物質(例えばポリエチレングリコール等)が含まれ、前記吸光度測定工程において、吸光度の上昇開始から収束前の時点までの所定期間(例えば吸光度の上昇開始から2分間)における吸光度を測定し、前記吸光度測定工程において測定された所定期間における吸光度の時間変動を示す第2吸光度曲線(例えば今回取得した吸光度曲線)を取得する第2吸光度曲線取得工程と、前記濃度測定工程において、一価銅濃度の異なる銅めっき液各々に関する吸光度の上昇開始から収束後の時点までの全体期間(例えば吸光度の上昇開始から120分間)における時間変動を示す第1吸光度曲線(例えば吸光度曲線1〜18)各々と、前記第2吸光度曲線取得手段により取得した第2吸光度曲線とを、前記所定期間内において各々比較し、当該第2吸光度曲線に近似する第1吸光度曲線を特定し、当該特定した第1吸光度曲線に基づいて、前記銅めっき液中の一価銅濃度を推定することを特徴とする。
本発明5の一価銅の濃度管理方法は、本発明1ないし4から選択される1の一価銅の濃度測定方法によって測定された一価銅濃度を管理する一価銅の濃度管理方法であって、前記一価銅濃度が所定値以上であるときに、前記銅めっき液に対して一価銅濃度を低減させる処理(例えばバブリング)を行うことを特徴とする。
本発明6の一価銅の濃度測定装置(1)は、銅めっき液を含むpH4〜10のサンプル溶液及びバソクプロインスルホン酸二ナトリウム試薬を混合した吸光度測定用溶液を収容する収容手段(例えば測定セル31)と、前記収容手段に収容された吸光度測定用溶液の吸光度(例えば波長485nmにおける吸光度)を測定する吸光度測定手段(例えば制御部37)と、を有することを特徴とする。
本発明7の一価銅の濃度測定装置(1)は、電解めっき槽(10)内の銅めっき液をサンプリングするサンプリング手段(例えばサンプリング部20)と、前記サンプリング手段によりサンプリングされた銅めっき液を含むpH4〜10のサンプル溶液及びバソクプロインスルホン酸二ナトリウム試薬を混合した吸光度測定用溶液を調整する調整手段(例えば測定セル31)と、前記調整手段により調整された吸光度測定用溶液の吸光度(例えば波長485nmにおける吸光度)を測定する吸光度測定手段(例えば制御部37)と、前記吸光度測定手段により測定された吸光度に基づいて、前記銅めっき液中の一価銅濃度を測定する(一価銅濃度と吸光度との関係をあらわす検量線において、測定された吸光度に対応する一価銅濃度を特定する)濃度測定手段(例えばシステム制御部40)と、を有することを特徴とする。
本発明では、キレート試薬として水に易溶であるバソクプロインスルホン酸二ナトリウム(Bathocuproinedisulfonic acid, disodium salt)(以下「BCS」と略記する。)試薬を使用している。これによれば有機溶媒による溶出が不要であり、錯体の補足が不要であるため、銅めっき液中の一価銅濃度の測定が容易化される。
図1は、BCSの構造式を示す図である。 図2は、一価銅標準溶液を分光光度測定したときの波長と吸光度の関係を示す図である。 図3は、一価銅濃度と吸光度との関係をあらわす検量線を示す図である。 図4は、硫酸銅めっき液を分光光度測定したときの波長と吸光度の関係を示す図である。 図5は、硫酸銅めっき液の吸光度の時間推移を示す図である。 図6は、硫酸銅めっき液をMALDI−MSにより質量分析したときのスペクトルを示す図である。 図7は、一価銅−PEG(ポリエチレングリコール)錯体のモデルを示す図である。 図8は、BCSによる一価銅の呈色反応の時間変化のモデルを示す図である。 図9は、硫酸銅電気めっき浴工程で使用されている硫酸銅めっき液の吸光度を長期間モニタリングした結果を示す図である。 図10は、銅めっき液の吸光度(T値)を、呈色反応が生じた直後に急激に増大する成分(F値)と、呈色反応後緩やかに増大する成分(H値)に分けたモデルを示す図である。 図11は、一価銅の濃度測定装置の一例を示す図である。 図12は、カーブフィッティングによる一価銅濃度の推定方法を示す図である。
[1:銅めっき液]
以下の例では、銅めっき液として硫酸銅めっき液を用いる。但し、本発明は硫酸銅めっき液に限らず、酸性浴及びアルカリ浴に使用される銅めっき液全般を対象とするものである。例えばシアン化銅めっき液やピロ燐酸銅めっき液等も対象となる。通常、銅めっき液のpHはBCS試薬で測定可能なpH域4〜10から外れている場合が多いが、各種銅めっき液を中和してBCS試薬と混合することで測定が可能となる。また、後述する実施形態に示すように、緩衝液を用いることによりpH調整を容易化することができる。短時間でのpH調整が可能となり、一価銅濃度を継続的にモニタリングする場合等に有用である。
[2:キレート試薬]
本例では、キレート試薬としてBCS試薬を用いる。BCSはCu(I)と選択的に橙黄色の錯体を形成することより、銅の比色試薬として使用される。バソクプロインをスルホン化して水溶性としたもので、水に易溶であるものを使用する。後述する実験では、図1に示すBCSを使用する。BCSは水溶液中、pH4〜10でCu(I)に対しBCS2分子で1:2の組成の橙黄色のキレートを形成する(λmax=485nm,ε=1.2×10)。重金属イオン類が共存してもCu(I)としか選択的に錯形成しない。一方、抽出操作を必要としないため、操作が簡便で分析に便利である。
(検量線の作成)
硫酸銅めっき溶液を還元することにより一価銅標準溶液を調整し、BCS試薬の検量線を作成した。BCS試薬はpH4〜10の領域でほぼ一定の吸光度が得られるが、pH4〜7、好ましくはpH4〜5.5で安定な吸光度を示すので、pHをこの範囲内に調整した。BCS(株式会社同仁化学研究所製、所在地:熊本県)を用いて、モル濃度10−2mol/dmのBCS水溶液を調整した。試薬特級硫酸銅(II)5水和物を用いてモル濃度10−3mol/dmの硫酸銅水溶液を調整した。この水溶液を分取し(0〜2.5mL)、還元剤である10%塩酸ヒドロキシルアミン5mLと2%クエン酸5mLを加え、25%アンモニア水でpHを7〜8に調整した。これに60%過塩素酸を加えてpH4〜5の一価銅標準溶液を調整後、モル濃度10−2mol/dmのBCS水溶液を5mL添加し、水を加えて全量100mLの吸光度測定用溶液を調整した。
このようにして得られた吸光度測定用溶液の吸光度を、分光光度計U−3310(株式会社日立製作所製、所在地:東京都)を用いて測定した。硫酸銅水溶液を加えていない吸光度測定用溶液(上記硫酸銅水溶液の分取量が0のもの)をブランク溶液とした。また、上記硫酸銅水溶液の分取量を異ならせた多くの吸光度測定用溶液を用意した。これら各吸光度測定用溶液に関して、波長400nm〜600nm付近の吸光度を測定した。測定結果のうち、代表的なものを図2に示す。図2には、Cu(I)のイオン濃度が0mol/dmであるブランク溶液の吸光度曲線(a)、及びCu(I)のイオン濃度が各々0.6×10−5mol/dm、3.0×10−5mol/dm、5.0×10−5mol/dmである吸光度測定用溶液の吸光度曲線(b)、(c)、(d)を示す。
吸光度が最大となる485nmの波長において、図3に示すように一価銅濃度0〜5.0×10−5mol/dmの範囲で吸光度との関係を示す直線の検量線(r値0.9999)が得られた。そのモル吸光度係数は1.26×10であり、試薬のモル吸光度係数1.2×10(485nm)とほぼ一致した。この結果から、BCSを使用した吸光度測定によって、硫酸銅水溶液中のCu(I)のイオン濃度を高精度に定量することが可能であることを確認した。ここで、吸光度は上昇を開始してから1分以内で一定の値を示した。即ち、呈色反応が生じてから1分以内に収束し、1時間経過後でも変化は認められなかった。なお本例では波長が485nmである光の吸光度を測定しているが、直線の検量線を取得可能な他の波長を用いるようにしても良い。ここで本実施の形態において「吸光度が収束する」とは、所定時間あたりの吸光度の上昇値が、一定値以下(例えば10分あたり0.01以下)となることを意味するものとする。また、図3に示すように、一価銅濃度と吸光度は1対1に対応していることから、本実施の形態において吸光度を測定することは、これに対応する一価銅濃度の測定も兼ねているものとする。
[3.呈色用緩衝液]
硫酸銅めっき液は酸濃度が極めて高く、BCS試薬による比色測定では、pHを4以上に調整する必要がある。一方、pHが7以上になると、水酸化銅の白色沈殿が生じてしまい、吸光度が不安定になるため、緩衝液を使用する必要がある。緩衝液によって硫酸銅めっき液をpH4〜7程度に調整することが好ましく、pH4〜5.5に調整することが特に好ましい。後述する実験では銅イオンとの相互作用が小さく、比較的単純な酢酸−NaOH系の緩衝液を用いた。
試薬として、1mol/dmのNaOH水溶液、1mol/dmの酢酸(容量分析用)、及び10−2mol/dmのBCS溶液を用いた。100mLビーカーに水20mL、酢酸水溶液10mL、めっき液1mL、BCS溶液2mLを加え、よく振り混ぜ、pHを測定する。これに濁りや沈殿が生じないように徐々にNaOH水溶液を加え、pHを4〜4.5(測定値は4.23)に調整した。この際使用したNaOH水溶液の添加量は7.2mLであった。この溶液を50mLメスフラスコに移して水で全量を50mLに希釈した。この溶液のpHを測定して、pHが4以上であることを確認した。このように、50mLメスフラスコに、水20mL、酢酸水溶液10mL、NaOH水溶液7.2mL、BCS試薬2mLを投入して、水で50mLに調整したものを呈色用緩衝液とした。
なお、本実施形態においては緩衝液(上記呈色用緩衝液からBCS試薬を除いた溶液)とBCS試薬を混合したものを呈色用緩衝液とし、この呈色用緩衝液を硫酸銅めっき液と混合することによって吸光度測定用溶液を調整している。即ち、硫酸銅めっき液を含むpH4〜5.5のサンプル溶液の調整及びバソクプロインスルホン酸二ナトリウム試薬の混合を同時に行うようにしている。しかし、吸光度測定用溶液の調整方法はこの方法に限られるものではなく、例えば硫酸銅めっき液に緩衝液を混合してサンプル溶液を調整した後、調整したサンプル溶液にBCS試薬を混合するようにしても良く、硫酸銅めっき液にBCS試薬を混合した後、さらに緩衝液を混合するようにしても良い。
[4.吸光度の測定]
呈色用緩衝液を分光光度計の参照用セルとサンプル用セルにそれぞれ2.5mL移した。サンプル用セルに硫酸銅めっき液50μLを注入して吸光度測定用溶液を調整した。その吸光度測定用溶液の1mL程度をピペットで吸い上げ、排出することで撹拌した。ここでセル中の硫酸銅めっき液は51倍に希釈されたことになる。吸光度測定用溶液調整後20分までの吸光度に関して、波長範囲350〜700nm、スキャンスピード200nm/minで吸収スペクトルを測定した。銅めっき液試料として、実際の硫酸銅電気めっき浴工程で使用されている添加剤成分の異なる2種類の硫酸銅めっき液(以下、A液、B液と称する)を用意した。
これらのA液及びB液について、それぞれ新液(A−1液,B−1液)及び稼働液(A−2液,B−2液)を用意した。新液であるA−1液を所定期間電気めっき浴工程で使用した後の状態のものがA−2液である。また、新液であるB−1液を所定期間電気めっき浴工程で使用した後の状態のものがB−2液である。各々に関して吸収スペクトルを測定した結果を図4に示す。新液と稼働液では吸収スペクトルに明確な差違が認められ、稼働液中には一価銅が比較的多量に存在していることが確認された。一方、新液中には一価銅は殆ど含まれていない。前述した検量線に基づいて、A−2液中の一価銅濃度が1.2mmol/dm、B−2液中の一価銅濃度が0.2mmol/dmであることが確認された。
図5には、A−1液及びA−2液の吸光度の時間変化を示す。稼働液であるA−2液に関しては、吸光度は、上昇開始から1〜5分以内で急激に上昇し、その後も徐々に上昇していることが確認された。新液であるA−1液では、吸光度の値が小さく、時間変化はほとんど認められなかった。この吸光度測定用溶液調整直後の吸光度の時間変化については、B液でも同様の傾向が認められた。稼働液であるA−2液及びB−2液における吸光度の時間変化は、前述した一価銅標準溶液の吸光度の時間変化と比較して大きな差違があることが把握された。一価銅標準溶液では、吸光度の値は上昇開始から1分以内で一定となり、その後、1時間経過しても変化は生じなかった。なお、A−2液に関しては、吸光度の上昇開始から1〜5分経過した後は上昇が徐々に緩やかになり、数時間経過した時点では吸光度の上昇が収束していた(10分あたりの上昇値が0.01以下となった)。このときの収束値(最終吸光度)は、0.36であった。
これらの実験結果より、一価銅を含む標準溶液に対しては1分程度で収束するBCS試薬の反応が、所謂稼働液に関しては、吸光度測定用溶液調整から長時間(上記の例では数時間)を経なければ当該稼働液の一価銅濃度を正確に測定することができないという問題があることがわかった。しかしながら一価銅濃度はめっき製品の不良率に直接影響する値であり、短時間でのフィードバックが必要なケースが多くある。この問題を解決すべく、本発明者らは、以下のように銅めっき液中の一価銅の状態分析を行った。
[4.銅めっき液中の一価銅の状態分析]
銅めっき液中の一価銅の状態分析のために、銅めっき液の新液B−1と稼働液B−2について、プロトン核磁気共鳴(H−NMR(H-Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy))及びマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization-Mass Spectrometry)による成分分析を行った。MALDI−MSにはAXIMA−TOF2(株式会社島津製作所製、所在地:京都府)を用い、マトリックスにはカーボンを用いた。試料としては、銅めっき液を中和し、遠心分離後、上澄み液を凍結乾燥したものを使用した。B−1液及びB−2液のH−NMRによる成分分析によって、銅めっき液中にはポリエチレングリコール(PEG(polyethylene glycol))が多量に存在することが確認された。PEGは通常、硫酸銅めっき液に抑制剤として添加されている。さらに、高分子量まで測定可能なMALDI−MSによる成分分析によって、鎖長の異なるPEGが一価銅に配位した[H(OCHCHOH+Cu]をn=4〜43で検出することができた。図6に示すように、[H(OCHCHOH+Cu](n=4〜43)の各質量対電荷比(Mass/Charge)に対応する強度(Intensity)の上方に「○」を表示させた。n=4〜43に対応する各位置に強度の明確なピークがあらわれている。このようにして、めっき液中のCu(I)−PEG錯体[H(OCHCHOH+Cu](n=4〜43)の各々の存在比率を比較することができる。
この結果は、一価銅がPEGの配位した錯体として安定に存在することを示している。図7にはCu(I)−PEG錯体のモデルを示す。本手法のように、MALDI−MSによるPEGが添加された硫酸銅めっき液の成分分析において、[H(OCHCHOH+Cu]の各質量対電荷比に対応する信号強度を特定可能な態様で表示することで、nの異なる、即ち鎖長の異なるPEGに配位されたCu(I)−PEG錯体の各々の存在比率を把握することができる。硫酸銅電気めっき液の中には抑制剤としての高分子のPEG以外にも、平滑剤、促進剤など、比較的分子量の小さい有機成分が存在している。これらの銅めっき液中での作用については、現在でも検討が進められている。銅めっき液中の一価銅は、これらの分子量の小さい有機分子との錯体(以下「小錯体」と称す)や、分子量が比較的大きなPEG等との錯体(以下「大錯体」と称す)を形成することにより、比較的安定にめっき液中で存在していると推定される。
図5及び図6に示した実験データに基づいて、BCS試薬による一価銅の呈色反応の時間変化のモデルを図8に示す。BCS等のキレート試薬は、銅めっき液中の一価銅の錯体(前述したPEGとの錯体等)と比較して、安定な錯体を形成するので呈色反応が進行する。ここで、小錯体の一価銅には容易にBCSが接触できるのに対し、大錯体であるCu(I)−PEG錯体では、大きなPEG分子に一価銅が取り囲まれているため、立体障害によってBCSが容易に一価銅に接触できずに呈色反応が抑制されていると考えられる。
このため、呈色反応の初期には、小錯体の一価銅とBCSとの反応が早く、急激に呈色を示すが、大錯体の一価銅との反応は容易には進まないために、初期の反応が終わると徐々にしか呈色反応は進まないことになる。これが図5に示した吸光度の時間変化となってあらわれたと推定される。BCSによる呈色反応に時間変化が生じることは、一価銅の定量分析に相当の時間を要することになり、銅電気めっき浴工程を管理する際の問題点となる。そこで本発明者らは、呈色反応の時間変化を一価銅の小錯体と大錯体のモデルに基づいて検討した。
図8(a)に示すように、BCSと混合させる前のめっき液中には、一価銅(Cu)、小錯体(small Cu(I) complex)、及び大錯体(Cu(I)-PEG complex)が混在している。この状態のめっき液にBCSを混合させると、図8(b)に示すように反応の初期段階で、錯体を形成していない一価銅にBCSが配位し、比較的接触しやすい小錯体の一価銅にもBCSが配位する。即ち、初期段階では錯体を形成していない一価銅及び小錯体の一価銅に容易にBCSが配位することで急激な呈色反応が生じる。一方、大錯体に関しては、鎖長の長いPEGが一価銅に配意しているためBCSが一価銅に接触し難い。従って図8(c)に示すように、錯体を形成していない一価銅及び小錯体の一価銅へのBCSの配位が終了した後、一定時間を経てから大錯体の一価銅へのBCSの配位が終了して呈色反応が終了すると推定される。
図5に示したように、BCSと硫酸銅めっき液を混合させてから1〜5分以内に急激に吸光度が上昇し、その後徐々に吸光度の上昇が緩やかになり、数時間を経過すると吸光度の上昇が概ね収束する。これはまず、錯体を形成していない一価銅及び接触しやすい小錯体の一価銅へBCSが配位し、この配位が概ね1〜5分程度で終了し、その後徐々に大錯体へのBCSの配位が進行し、大錯体へのBCSの配意が概ね数時間程度で終了するためと推定される。
なお、ポリエチレングリコールに限らず、一価銅と大錯体を形成しうる添加剤が存在する場合、同様に吸光度が上昇を開始してから数分後までは吸光度が急激に上昇し、その後徐々に吸光度の上昇が緩やかになり、数時間で収束に向かう現象が生じうる。
ここで、一価銅と大錯体を形成する物質としては、銅めっき液に添加剤として含まれるポリマー等がある。例えば、銅めっき液に添加剤として含まれるポリオキシエチレン系又はポリオキシプロピレン系のノニオン系界面活性剤(ポリエチレングリコール)であり、具体的には、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンオレインエーテル等が挙げられる。また、ポリビニールアルコール、カルボキシメチルセルロース等が一価銅と大錯体を形成しうる。但し、これらの物質に限定されるものではなく、ポリマー以外の物質、界面活性剤以外の物質であって一価銅と錯体を形成するものが該当する。
このようにポリエチレングリコールのような大錯体形成原因物質が存在することが、呈色反応が生じてから一定時間吸光度が収束せずに上昇を続ける原因であることを解明した。また、この大錯体形成原因物質による影響は初期の反応後に、徐々に増加するものでありその増加量は同一の稼働液においては安定していることがわかった。本発明では、収束前の吸光度に基づいて一価銅の濃度を測定することを可能としている。
[5.実証実験]
図9は、硫酸銅電気めっき浴工程で使用されている硫酸銅めっき液の吸光度を長期間モニタリングした結果を示す図である。一価銅の分析について、実際にプリント回路基板の硫酸銅電気めっき浴工程で使用されている硫酸銅めっき液(前述したA液)のモニタリングを実施した。生産ラインに使用されている硫酸銅めっき液についてほぼ1ヶ月の期間、生産ライン稼働中又は稼働直後の一価銅濃度、及び休止期間終了直前(稼働開始直前)の吸光度を測定した。通常、生産ライン稼働中に電解めっき槽に流している電流は、週末等の休暇時等に停止させている。図中のONで示す期間は電流を流している期間(稼働期間)であり、図中のOFFで示す期間は電流を停止している期間(休止期間)である。休止期間においてめっき浴は電気的に休止した状態に保たれている。図中の曲線aは、吸光度の上昇開始から20分後の吸光度を示しており、曲線bは、吸光度の上昇開始から2分後の吸光度を示している。曲線cは前記両吸光度の差、即ち吸光度の上昇開始から2分〜20分迄の18分間に上昇した吸光度を示している。
まず図9に示すようにモニタリング0日目に、稼働を終えた直後の硫酸銅めっき液の吸光度を測定した結果、吸光度の上昇開始から20分後の吸光度aが0.20、同2分後の吸光度bが0.14、両者の差cが0.06であった。次に、モニタリング3日目に休止期間(off期間)終了直前(on期間開始直前)の吸光度を測定した結果、吸光度の上昇開始から20分後の吸光度aが0.21、同2分後の吸光度bが0.15、両者の差cが0.06であった。次に、モニタリング5日目に稼働中(on期間中)の吸光度を測定した結果、吸光度の上昇開始から20分後の吸光度aが0.20、同2分後の吸光度bが0.14、両者の差cが0.06であった。次に、モニタリング10日目に休止期間(off期間)終了直前(on期間開始直前)の吸光度を測定した結果、吸光度の上昇開始から20分後の吸光度aが0.21、同2分後の吸光度bが0.15、両者の差cが0.06であった。
このようにして、稼働中又は稼働直後の吸光度、及び休止期間終了直前(稼働開始直前)の吸光度を交互に測定した結果、図9に示すように、休止期間終了直前(稼働開始直前)の吸光度aは、その前後の稼働期間中又は稼働期間直後に測定された吸光度よりも高いという特徴がみられた。全ての測定データについてこの傾向があてはまる。また、最も長い最後の休止期間(モニタリング21日目〜31日目)において、吸光度の上昇値が最も高い。これは休止期間中には例外なく一価銅濃度が上昇したことを示すものである。従来より、硫酸銅電気めっき浴工程において稼働開始日はめっき不具合の発生頻度が比較的高いことが経験的に知られていた。図9に示す実験結果は、この事実を裏付けるものである。
ここで呈色反応開始から2分後と20分後の吸光度の差については、曲線cが示すように稼働期間、休止期間にかかわらず、モニタリング期間中ほぼ一定値であった。これは前述した大錯体において、一価銅は大きな有機分子(PEG)に囲まれて比較的安定に存在しており、めっき浴の状態(on、off)に影響を受けにくいためと考えられる。一方、前述した小錯体では、立体障害が比較的小さいためにめっき浴中の溶存酸素などとの一価銅の反応が起こりやすく、その存在量については相対的にめっき浴の状態(on、off)の影響をうけやすいと考えられる。
これらの実験結果と、「稼働開始日はめっき不具合の発生頻度が比較的高い」という事実を勘案すれば、生産ラインで使用されている硫酸銅めっき液に関しては、稼働条件に影響を受けやすい、吸光度の上昇開始から数分後(本例では2分後)の吸光度の測定が重要であり、且つ十分である。即ち、一価銅濃度は時間経過によって変動するが、吸光度が収束するのを待つことなく、収束前の時点の吸光度を測定すれば十分である。これにより、硫酸銅電気めっき浴における一価銅の濃度測定を短時間で行うことができる。
ここで呈色反応開始から2分後から20分後までの期間に増加した吸光度は、曲線cが示すように稼働期間、休止期間にかかわらず、モニタリング期間中ほぼ一定値(0.05)であった。さらに、呈色反応開始から2分後から2時間経過し、十分に収束しているときの吸光度変化量は0.10であった、この結果より、吸光度の上昇開始から2分後から、収束時までの吸光度の上昇幅を予め取得しておくことで、上昇開始から2分後に測定した吸光度(例えば0.15)に、上記取得した吸光度を加算した吸光度(例えば0.25)を収束時の吸光度として推定し、これに基づいて一価銅濃度を推定することが可能である。
ここで、吸光度の上昇開始から数分後(本例では2分後)の吸光度、即ち吸光度が収束していない期間において吸光度を測定する場合、一価銅を再酸化させるためのエアバブリングを行うか否かの判定基準を設けておくと良い。例えば本例の場合には、吸光度の上昇開始から2分後の吸光度が0.15以上の場合には当該稼働液に対してエアバブリングを行うようにすると良い。吸光度の上昇が収束し実際の一価銅濃度を測定することができるまで、反応開始後2時間程度を要することがある。しかしここで、2分後から2時間後の吸光度変化量についてその間の上昇幅が0.10であることを予め取得しておくとき、2分後の吸光度が0.15を超えている場合、2時間経過時の吸光度は0.25を超えていると推定することができる。即ち、吸光度の上昇開始から数分後の基準値(本例では2分後の0.15)を設定することで、当該基準値に基づいてエアバブリングの有無を判定可能であるため、吸光度の収束を待つことなく一価銅の濃度管理を迅速に行うことが可能となる。
[6.一価銅濃度測定装置]
図10は、めっき液の吸光度(T値)を、数分以内に急激に増大する成分(F値)と、数十分以上かけて緩やかに増大する成分(H値)に分けたモデルを示す図である。図10に示すように、本発明者らは錯体の形成に伴う吸光度(以下T値と称する)の時間変化は、数分以内に急激に増大する成分(以下F値と称する)と、数十分かけて緩やかに増大する成分(以下H値と称する)に分けられると推定している。そして、前者は錯体を形成しない一価銅及び小錯体の一価銅とBCSとの反応、後者は大錯体の一価銅とBCSとの反応に各々対応すると推定した。また、図9に示した実験結果により、吸光度変化が急激な成分(F値)は電解めっき槽の稼働状態に影響され、吸光度変化が緩やかな成分(H値)は電解めっき槽の稼働状態にかかわらずほぼ一定であった。これらの結果を踏まえて本発明者らは図11に示す一価銅濃度測定装置を構築した。
(一価銅濃度測定装置の構成)
図11は、一価銅濃度測定装置の一例を示す機能ブロック図である。この一価銅濃度測定装置1は、電解めっき槽10から硫酸銅めっき液をサンプリングし、測定セル31に供給するサンプリング部20と、前述した呈色用緩衝液を測定セル31に供給する呈色用緩衝液供給部21と、分光光度計30を有し、分光光度計30の制御部37と接続されるシステム制御部40を含む装置である。
電解めっき槽10は、槽内の硫酸銅めっき液にエアバブリングを行うバブリング装置14を底部に備えている。本例では、このバブリング装置14もシステム制御部40と接続されている。また、電解めっき槽10には循環路11が設けられている。この循環路11の経路に設けられたポンプ13によって漕内の硫酸銅めっき液が循環路11内を循環しており、その流量はバルブ12によって調節される。さらにこの循環路11は、循環路11内を流れる硫酸銅めっき液をサンプリングするためのサンプリング部20を介して測定セル31と接続されている。例えば、サンプリング部20は硫酸銅めっき液に対して耐蝕性を有し、一定量をサンプリングするチュービングポンプと、サンプリングした硫酸銅めっき液に固形分が混入するのを防ぐための耐蝕性のフィルター等から構成される。
分光光度計30は、吸光度測定用溶液の吸光度を測定するための手段である。例えば、図11に示すように、吸光度測定用溶液が収容される測定セル31と、測定セル31内の吸光度測定用溶液の吸光度を測定する測定部とから構成される。暗所内に設置される測定セル31内では、サンプリング部20によりサンプリングされた所定量の硫酸銅めっき液と、呈色用緩衝液供給部21から供給された適正量の呈色用緩衝液が混合されることで吸光度測定用溶液が調整される。ここで用いられる呈色用緩衝液は、例えば酢酸−NaOH系の緩衝液にBCS試薬を混合して希釈したpH4〜5.5のものである。
分光光度計30の測定部は、例えばランプよりなる発光源32と、この発光源32からの光を分光するための分光部をなす例えば回折格子33と、この回折格子33から出射スリット34を通った単色光の中から例えば波長485nmの単色光を取り出す光学フィルター35と、この光学フィルター35より測定セル31内を透過した光を検知して電気信号に変換するための検知器36と、この信号を増幅して当該波長の吸光度を演算する制御部37とからなる。測定された当該波長の吸光度は表示部38に表示され、システム制御部40に送信される。システム制御部40は、バブリング装置14及び分光光度計30の制御部37との間で制御信号等の送受を行う。
(一価銅濃度測定装置の作用)
休止期間が明けて硫酸銅電気めっき浴工程を実行する前に、循環路11内を流れる硫酸銅めっき液をサンプリング部20によってサンプリングし、サンプリング部20から所定量の硫酸銅めっき液を測定セル31に供給する。一方、呈色用緩衝液供給部21からは所定量の呈色用緩衝液を測定セル31に供給する。呈色用緩衝液が測定セル31に供給されることで吸光度測定用溶液が調整され、呈色反応が生じる。本例では呈色用緩衝液の供給時点からの吸光度を計測するものとする。測定セル31は、上下方向の振動を発生するための撹拌機能付き恒温槽(図示せず)内に設置されている。撹拌による振動で吸光度測定用溶液が撹拌され、恒温槽によって一定温度に保たれている。測定部において吸光度測定用溶液の吸光度の測定が行われる。この吸光度は例えば以下のようにして測定される。
発光源32より発光した光は、光路中に設けられた回折格子33、出射スリット34、及び光学フィルター35を介して、400〜600nmのうちの特定波長(485nm)の単色光とされた後、測定セル31を透過する。この測定セル31を透過した透過光は検知器36によって検知されて電気信号に変換され、制御部37で増幅されて吸光度が演算される。この吸光度は表示部38に表示することが可能である。また、演算された吸光度はシステム制御部40に送信され、システム制御部40に記憶されている一価銅濃度と吸光度の関係を示す検量線(例えば図3)に基づいて、一価銅濃度が演算される。演算された一価銅濃度はシステム制御部40に測定日時と共に記憶され、当該システム制御部40のディスプレイに表示される。
ここで分光光度計30においては、測定された吸光度を逐次システム制御部40に送信している。例えば10秒毎に測定した吸光度をシステム制御部40に送信している。この吸光度の送信は、吸光度の上昇が収束するまでの期間(例えば120分間)継続される。そして、システム制御部40は分光光度計から受信した120分間の測定データを記憶装置に蓄積している。システム制御部40は測定毎に、吸光度測定用溶液調整時、即ち吸光度の上昇開始時から吸光度が収束するまでの期間の吸光度曲線を記憶している。例えば図12に示す例では、最終吸光度(吸光度の上昇が収束した時点における当該吸光度の値であり、例えば吸光度測定用溶液調整時から120分後における吸光度の値)が異なる複数(本例では18)の硫酸銅めっき液の吸光度曲線を記憶している。
また、本装置においては、吸光度の上昇が収束することを待つことなく、収束前の時点の吸光度に基づいて一価銅濃度を推定し、濃度管理を行うことができる。これは前述したように、めっき不具合に影響するのは呈色用緩衝液を混合後、数分で急激に変化する成分であることによる。測定された吸光度が基準値を超えているとエアバブリング命令を送信し、これを受信したバブリング装置14はエアバブリングを行って一価銅を再酸化させて、吸光度(即ち一価銅濃度)を低減させる。
エアバブリングから一定時間経過すると、硫酸銅めっき液を再度サンプリングして吸光度を計測する。計測された吸光度が基準値以下になるまで上記処理を繰り返す。このように、一価銅濃度測定装置によって一価銅濃度を短時間で計測し、基準値以上であればエアバブリングによって一価銅濃度を低減させ、硫酸銅電気めっき浴工程を実行可能な状態にすることで、濃度管理を行っている。特に、一価銅濃度を測定するに際しては、呈色用緩衝液を混合後、数分経過した時点の一価銅濃度を測定すればよく、時間変動が収束するまでの間待機する必要がない。本装置では短時間に複数回の測定が要求されるケースが多いため、その効果は特に大きく、休日明けなどに硫酸銅電気めっき浴工程を早期に再開することが可能である。
(一価銅濃度の推定)
上記のようにして、吸光度の上昇開始から数分後の吸光度を測定することで、エアバブリング等の要否を判断することができるが、最終的な一価銅濃度、即ち吸光度の上昇が収束した時点における一価銅濃度を取得するには、あくまで吸光度の収束を待たなければならないという問題がある。本システムでは、前述したシステム制御部40に記憶している吸光度曲線を利用して、吸光度の上昇が収束していない期間において、当該吸光度測定用溶液の最終的な一価銅濃度を推定することを可能とした。これによって、例えば吸光度測定用溶液調整から数分程度で当該吸光度測定用溶液の最終的な一価銅濃度を取得することが可能となる。
図12(a)に示すように、システム制御部40の記憶装置には、吸光光度計30によって計測された複数の吸光度曲線が記憶されている。これらは、添加剤成分が共通する特定の硫酸銅めっき液(例えば前述したA液)であって、一価銅濃度が異なるものについて測定された吸光度曲線である。本例では吸光度曲線1〜18を記憶しており、各々の吸光度曲線は、吸光度測定用溶液調整時から吸光度収束時(本例では120分)までの各サンプリングポイント(例えば10秒毎)において測定された吸光度に基づいて構築されている。本例における各吸光度曲線1〜18の最終吸光度は0.36〜0.02(0.02刻み)であるものとする。ここで、新たにサンプリングした硫酸銅めっき液について、測定セル31において吸光度測定用溶液を調整したものとする。このとき吸光度測定用溶液調整後から吸光度の上昇が収束していない期間(本例では2分後)までの吸光度を測定し、システム制御部40は、当該期間における吸光度曲線を取得する(図12(b)の「今回取得した吸光度曲線」参照)。
次いで、システム制御部40は、今回取得した吸光度曲線における吸光度測定用溶液調整後から所定時間後(本例では2分後)の吸光度(本例では0.11)と、既に記憶している吸光度曲線1〜18における当該所定時間後(本例では2分後)の吸光度とを比較し、最も近似する吸光度及び次に近似する吸光度となる吸光度曲線を各々特定する。本例では、吸光度測定用溶液調整後から2分後の吸光度が0.10、0.12である吸光度曲線9、10が各々特定されることになる。次いでシステム制御部40は、特定した吸光度曲線9、10の最終吸光度を参照し(本例では0.20、0.18)、これらの中間値(本例では0.19)を今回取得した吸光度曲線の最終吸光度として推定する。さらに、検量線を参照し、推定した最終吸光度に対応する一価銅濃度を特定し、当該一価銅濃度を推定値としてディスプレイ等の表示手段に表示する。このようにして吸光度測定用溶液調整後の、吸光度が収束していない早い段階で、当該吸光度測定用溶液の最終的な一価銅濃度を推定することができる。
なお、本実施形態においては、吸光度測定用溶液調整後から所定時間後の吸光度を比較することによって、今回取得した吸光度曲線に近似する吸光度曲線を特定しているが、吸光度測定用溶液調整後から当該所定時間までの複数のサンプリングポイントにおける2乗誤差の和が最小となる曲線を、近似する吸光度曲線として特定するようにしても良い。また、本実施形態のように近似する複数の吸光度曲線を特定せずに、今回取得した吸光度曲線に最も近似する吸光度曲線のみを1つ特定して、当該吸光度曲線の最終吸光度を、今回取得した吸光度曲線の最終吸光度として推定するようにしても良い。また、本実施形態では、一価銅濃度の異なる硫酸銅めっき液について吸光度を実測して得た吸光度曲線と、今回取得した吸光度曲線を比較する例について説明したが、今回取得した吸光度曲線の比較対象は、実測して得られた吸光度曲線に限らず理論値によって構成された吸光度曲線であっても良い。
また、本実施形態においては、吸光度測定前に、予めBCS試薬と緩衝液を混合して呈色用緩衝液を作成しておき、サンプリング部20によってサンプリングした硫酸銅めっき液と、呈色用緩衝液を測定セル31内で混合することで吸光度測定用溶液を調整した。しかし、これに限らず、まず銅めっき液と緩衝液を混合しておく緩衝部を吸光光度計30外部に設けておき、当該緩衝部において混合された混合液(無呈色)を測定セル31に供給し、当該測定セル31にキレート試薬としてBCS試薬を供給することで吸光度測定用溶液を調整するようにしても良い。また、測定セル31の前段に吸光度測定用溶液調整部を設けておき、当該吸光度測定用溶液調整部においてサンプリングした硫酸銅めっき液と呈色用緩衝液を混合した直後に測定セル31に供給するようにしても良い。また、銅めっき液のpHが当初から至適pHである場合(例えばpH4〜5.5程度の場合)には、緩衝液との混合は不要であり、BCS試薬と銅めっき液を測定セル31で混合することで吸光度を測定することができる。
1…一価銅濃度測定装置
10…電解めっき槽
14…バブリング装置
20…サンプリング部
21…呈色用緩衝液供給部
30…分光光度計
40…システム制御部

Claims (9)

  1. 一価銅と錯体を形成する物質を含む銅めっき液を含むpH4〜10のサンプル溶液及びバソクプロインスルホン酸二ナトリウム試薬を混合した吸光度測定用溶液を調整する調整工程と、
    前記調整工程において調整された吸光度測定用溶液の吸光度の収束前の時点における吸光度を測定する吸光度測定工程と、
    前記吸光度測定工程において測定された吸光度に基づいて、前記銅めっき液中の一価銅濃度を推定する濃度推定工程と、
    を含むことを特徴とする一価銅の濃度測定方法。
  2. 請求項に記載した一価銅の濃度測定方法であって、
    前記吸光度測定工程において、吸光度の上昇開始から収束前の時点までの所定期間における吸光度を測定し、
    前記吸光度測定工程において測定された所定期間における吸光度の時間変動を示す吸光度曲線を取得する吸光度曲線取得工程をさらに含み、
    前記濃度推定工程において、前記吸光度曲線取得工程において取得した吸光度曲線に基づいて、前記銅めっき液中の一価銅濃度を推定する、
    ことを特徴とする一価銅の濃度測定方法。
  3. 請求項1又は2に記載した一価銅の濃度測定方法であって、
    前記銅めっき液は硫酸銅めっき液であり、
    前記調整工程において、前記硫酸銅めっき液を含むpH4〜7のサンプル溶液及びバソクプロインスルホン酸二ナトリウム試薬を混合した吸光度測定用溶液を調整することを特徴とする一価銅の濃度測定方法。
  4. 請求項1〜3から選択される1項に記載した一価銅の濃度測定方法によって測定された一価銅濃度を管理する一価銅の濃度管理方法であって、
    前記一価銅濃度が所定値以上であるときに、前記銅めっき液に対して一価銅濃度を低減させる処理を行うことを特徴とする一価銅の濃度管理方法。
  5. 一価銅と錯体を形成する物質を含む銅めっき液を含むpH4〜10のサンプル溶液及びバソクプロインスルホン酸二ナトリウム試薬を混合した吸光度測定用溶液を収容する収容手段と、
    前記収容手段に収容された吸光度測定用溶液の吸光度の収束前の時点における吸光度を測定する吸光度測定手段と、
    前記吸光度測定手段により測定された吸光度に基づいて、前記銅めっき液中の一価銅濃度を推定する濃度推定手段と、
    を有することを特徴とする一価銅の濃度測定装置。
  6. 電解めっき槽内の、一価銅と錯体を形成する物質を含む銅めっき液をサンプリングするサンプリング手段と、
    前記サンプリング手段によりサンプリングされた銅めっき液を含むpH4〜10のサンプル溶液及びバソクプロインスルホン酸二ナトリウム試薬を混合した吸光度測定用溶液を調整する調整手段と、
    前記調整手段により調整された吸光度測定用溶液の吸光度の収束前の時点における吸光度を測定する吸光度測定手段と、
    前記吸光度測定手段により測定された吸光度に基づいて、前記銅めっき液中の一価銅濃度を推定する濃度推定手段と、
    を有することを特徴とする一価銅の濃度測定装置。
  7. 請求項5又は6に記載した一価銅の濃度測定装置であって、
    前記吸光度測定手段は、前記吸光度測定用溶液の吸光度の上昇開始から収束前の時点までの所定期間における吸光度を測定し、
    前記吸光度測定手段により測定された所定期間における吸光度の時間変動を示す吸光度曲線を取得する吸光度曲線取得手段をさらに含み、
    前記濃度推定手段は、前記吸光度曲線取得手段により取得した吸光度曲線に基づいて、前記銅めっき液中の一価銅濃度を推定する、
    ことを特徴とする一価銅の濃度測定装置。
  8. 請求項5〜7から選択される1項に記載した一価銅の濃度測定装置であって、
    前記銅めっき液は硫酸銅めっき液であり、
    前記吸光度測定用溶液は、前記硫酸銅めっき液を含むpH4〜7のサンプル溶液及びバソクプロインジスルホン酸二ナトリウム試薬を混合したものであることを特徴とする一価銅の濃度測定装置。
  9. 請求項5〜8から選択される1項に記載した一価銅の濃度測定装置であって、
    前記一価銅濃度が所定値以上であるときに、前記銅めっき液に対して一価銅濃度を低減させる手段を更に有することを特徴とする一価銅の濃度測定装置。
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