JP5756669B2 - 耐火二層管の製造方法 - Google Patents
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Description
また、成形型内に吐出された耐火性材料は、押し出されていく方向及び押出し機のスクリューの回転方向の一定方向に力を受けるため、該耐火性材料に含まれる繊維成分は特定方向に配向する傾向がある。このため、該耐火性材料のひび割れや剥離等に対する強度特性が必ずしも十分とは言えない。
また、抄造による方法では、厚さ3mm以上のモルタルフィルムを効率的に形成することは困難であり、所定厚さのモルタル層を得るためには、内管の外側にモルタルフィルムを積層するように巻き取らなければならない。さらに、抄造モルタルに配合される繊維成分は、フィルム面に平行に二次元的に配向する。したがって、巻き取りの始めと終わりの部分での管の径方向断面におけるモルタル層に段差が生じ、真円度が悪く、また、積層モルタル間の接着強度が必ずしも十分ではなく、層間での剥離や被覆の脱落が懸念される。
このような製造方法によれば、メッシュシートの伸縮力によってモルタルの自重によるモルタル含浸層の変形が抑制され、管の径方向断面におけるモルタル含浸層の真円度が高く、外層のモルタルの剥離や脱落が生じにくい耐火二層管を容易かつ低コストで得ることができる。
ここで、本発明でいう耐火二層管は、直管に限られず、曲管、Y字管、T字管等の分岐を有する管、継手等の各種形状を含むものである。
また、上記製造方法において、前記合成樹脂製管に代えて、合成樹脂製又は金属製の芯材を用い、前記モルタルの硬化・乾燥工程後、前記芯材を引き抜き、この引き抜いた部分に、合成樹脂製管を内挿する工程を備えても良い。
このように、合成樹脂製管に代えて芯材を用いれば、上記製造方法と同様の工程で、真円度の高いモルタル含浸層による外層(耐火層)を、内管の合成樹脂製管とは別に形成することができ、後から内管と外層とを一体化させて耐火二層管を製造することもできる。
これにより、曲面である合成樹脂製管を包囲するように、メッシュシートを簡便に固定することができる。
このような方法によっても、合成樹脂製管又は芯材の外面にメッシュシートを容易に被せることができ、また、種々の形状の合成樹脂製管又は芯材の外面に対するフィット性を高めることができる。
したがって、本発明に係る製造方法によって得られる耐火二層管は、合成樹脂製管の外層のモルタル部分の真円度が高く、外層表面の凹凸が抑制された滑らかな面で形成されており、耐衝撃性及び耐火性に優れ、高層又は低層の住宅又は建築物の排水管等の配管に好適である。
図1に、本発明に係る製造方法によって得られる耐火二層管の構成を示す。この耐火二層管1は、内管が合成樹脂製管2であり、その外周面が、不織布又は連続気泡フォームにモルタルを含浸させたモルタル含浸層3で被覆された2層構造からなる。そして、モルタル含浸層3は、その一部にメッシュシート(図示せず)を含んでいる。
このような工程を経ることにより、メッシュシートの伸縮力によって耐火二層管全体が一体化されるため、モルタルの自重によるモルタル含浸層の変形が抑制され、容易かつ低コストで、管の径方向断面におけるモルタル含浸層を高い真円度で形成することができる。
また、上記製造方法は、合成樹脂製管が直管の場合に限られず、曲管、Y字管、T字管等の分岐を有する管、継手等の複雑な形状の場合においても、好適に適用することができる。
本発明においては、不織布又は連続気泡フォームの外表面に伸縮性及び通気性を有するメッシュシートを被せてから、前記不織布又は連続気泡フォームにモルタルを含浸させることにより、上記のようなモルタル含浸層の自重による変形を抑制し、その形状を保持し、モルタル含浸層の真円度が悪くなることを防止することができる。また、モルタル含浸層の剥離や脱落を防止する補強効果も得られる。
このように、前記メッシュシートは、管の外側に被せて不織布又は連続気泡フォームに密着させるようにして用いることから、伸縮性を有しているものが好適に用いられる。
さらにまた、前記メッシュシートは、モルタルを硬化・乾燥させる際、モルタル中の水分、揮発成分等がメッシュシートの表面から蒸発するのに十分なサイズの網目であり、通気性を有していることが必要である。
ただし、前記メッシュシートは、モルタル含浸層に対する支持補強を目的として用いられる補助的材料であるため、その厚さは薄い方が好ましい。
また、このような熱可塑性樹脂からなるメッシュシートを用いれば、曲面である合成樹脂製管の外周面の不織布又は連続気泡フォームの表面にメッシュシートを巻き付けた後、その端部を熱溶着することにより、前記合成樹脂製管を包囲するように固定することができ、メッシュシートを被せる工程における作業が容易となる。
このように、メッシュシートがチューブ状であることにより、平面的なメッシュ状のシートを巻き付ける場合よりも、よじれたり、重畳したりすることがなく、管に対して均等な圧力で包囲するように被せることができる。しかも、伸縮性を有しているため、不織布又は連続気泡フォームをしっかりと押さえつけて支持することができ、ずれることも防止でき、管の外形状に対するフィット性に優れている。このため、モルタル含浸層の該表面をより滑らかな面で形成することが可能となる。
第2の態様に係る製造方法は、不織布又は連続気泡フォームにモルタルを含浸させる工程と、メッシュシートを被せる工程との順序が、前記第1の態様に係る製造方法とは逆であるが、メッシュシートはモルタル含浸層に対する補助的材料であり、このようにモルタル含浸後に被せても、前記第1の態様に係る製造方法の場合と同様の効果を得ることができる。
この場合も、前記メッシュシートは、不織布又は連続気泡フォームに含浸させたモルタルが硬化する前に被せることにより、接着剤や粘着剤を用いることなく、前記モルタル表面に密着させることができる。
このように、合成樹脂製管とは別に、モルタルを含浸させた不織布又は連続気泡フォームを形成しておき、後から、合成樹脂製管の外周面に巻き付けてもよい。前記モルタルが硬化する前に、このモルタルを含浸させた不織布又は連続気泡フォームを合成樹脂製管の外周面に巻き付け、その継ぎ目を覆うように、メッシュシートを被せることにより、接着剤や粘着剤を用いることなく、不織布又は連続気泡フォームの継ぎ目を接着させることができ、また、合成樹脂製管の外周面にモルタル含浸層を密着固定させることができる。また、前記第1の態様に係る製造方法と同様に、モルタル含浸層の真円度を高くすることができ、また、剥離や脱落も抑制される。
この製造方法は、特に、曲管、Y字管やT字管等の分岐を有する管、継手等の複雑な形状の耐火二層管を得るのに好適である。
なお、第3の態様に係る製造方法において用いられるメッシュシートも、前記第1及び第2の製造方法で用いられるものと同様の材質及び形態のものを用いることができる。
また、該合成樹脂製管の形状は、特に限定されるものではなく、直管、曲管、Y字管、T字管等の分岐を有する管、継手等のいずれであってもよい。
このように、前記芯材に不織布又は連続気泡フォームを巻き付けた後、上記第1〜第3の態様に係る製造方法と同様の工程を経て、モルタル含浸層による外層(耐火層)を内管の合成樹脂製管とは別に形成し、後から内管と外層とを一体化させて耐火二層管を製造することもできる。
このため、第4の態様に係る製造方法は、直管状の耐火二層管の製造に好適な方法である。
不織布は、繊維がランダムに配向しているため、モルタルをムラなく分散して含浸させることができ、また、引っ張りや曲げに対する強度が三次元的に均等である。同様に、連続気泡フォームも、連続気泡内にモルタルをムラなく分散して含浸させることができる。
前記不織布の繊維の材質は、有機系繊維又は無機系繊維のいずれであってもよい。有機系繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系(PET系ポリエステル)、ポリアミド(6−ナイロン、6,6−ナイロン等)、アクリル系、ビニロン、ポリオレフィン系、木綿、羊毛等が挙げられる。無機系繊維としては、例えば、ガラス繊維、ロックウール、セラミック繊維等が挙げられる。これらのうち、耐火性の観点からは、無機系繊維が好ましいが、物性や価格、さらに、市販品をそのまま使用することができる等の取扱い容易性等の観点から、特に、ポリエステルやポリプロピレン等の合成繊維からなる不織布が好ましい。
前記不織布又は連続気泡フォームは、平面的なシート状のものでも、予め内管の合成樹脂管の形状に合わせて立体的に成形されているものでもよい。
また、前記不織布又は連続気泡フォームは、両者を重ねたり、あるいはまた、密度や材料の異なるものを重ねたりして、複数層としてもよい。
使用するモルタルの粘度は、不織布又は連続気泡フォームの材質、面密度、厚さ、モルタルの含浸速度と硬化時間等を考慮して決定する必要がある。
不織布又は連続気泡フォームを芯材に巻き付けた場合には、不織布又は連続気泡フォームに含浸させたモルタルは、硬化する際に、収縮し、該芯材が強固に保持されて抜け難くなることがある。このとき、該芯材を強引に引き抜くとモルタル層が割れるおそれがある。
これに対して、上記のようにモルタル含浸層とモルタル非含浸層との2層構造とした場合には、前記モルタル非含浸層が緩衝材として作用し、芯材が抜きやすくなるという効果が得られる。
このような方法で、モルタルを不織布又は連続気泡フォームの全体に満遍なく含浸させた後、モルタルを硬化・乾燥させることにより、合成樹脂製管又は芯材の最外周面はモルタル含浸層で被覆される。
モルタルの硬化・乾燥の条件は、使用するモルタル、環境等に応じて適宜定められるが、通常は、初期強度が発現するまで養生した後、硬化・乾燥させる。
[実施例1]
長さ2mの称呼径φ100mm硬質ポリ塩化ビニル管(PVC管;VP100A)の外周面に、PETフェルト(材質PET;主として33デシテックス、その他数種の繊維径の混合品、概寸厚さ6.5mm、面重量平均120g/m2)を巻き付けた。このPETフェルトにポリエチレン製のメッシュチューブ(ネトロン(登録商標))を被せて、前記PVC管の外面を包囲し、前記PETフェルトにモルタル(主成分ポルトランドセメント70±10重量部、砂26±6重量部(国土交通大臣認定条件における配合))を含浸させた。そして、30℃で24時間養生した後、自然養生で14日間硬化・乾燥させてモルタル含浸層を形成し、耐火二層管を作製した。
実施例1において、PETフェルトにモルタルを含浸させた後、メッシュチューブを被せ、それ以外については、実施例1と同様にして、耐火二層管を作製した。
実施例1において、ポリエステル寒冷紗(ES3000;東洋紡績スペシャルティズトレーディング株式会社)を巻き付けた後、モルタルを含浸させ、それ以外については、実施例1と同様にして、耐火二層管を作製した。
実施例1において、メッシュチューブを被せずに、それ以外については、実施例1と同様にして、耐火二層管を作製した。
真円度は、管の径方向における同一円形断面での最大直径と最小直径の差により評価した。
また、モルタル含浸層とメッシュチューブ又は寒冷紗との密着性、モルタル含浸層の外表面状態を目視により観察した。
これらの結果を表1にまとめて示す。
表1において、密着性の評価は、メッシュチューブや寒冷紗の浮き上がり状態の有無により、○:浮きなし、×:浮きあり、とした。また、表面状態は、○:平滑(表面の凹凸がメッシュチューブや寒冷紗の網目程度までの場合)、×:表面の凹凸がメッシュチューブや寒冷紗の網目よりも大きい場合、とした。
2 合成樹脂製管
3 モルタル含浸層
Claims (5)
- 合成樹脂製管の外周面に不織布又は連続気泡フォームを巻き付ける工程と、
前記不織布又は連続気泡フォームを巻き付ける工程の後、前記不織布又は連続気泡フォームの表面に、伸縮性を有し、かつ、モルタルが通過可能なサイズの網目を有するメッシュシートを被せる工程と、
前記メッシュシートを被せる工程の後、モルタルを、前記メッシュシートを通過させ、前記不織布又は連続気泡フォームに含浸させる工程と、
前記不織布又は連続気泡フォームにモルタルを含浸させる工程の後、前記モルタルを硬化・乾燥させる工程と、
を備えていることを特徴とする耐火二層管の製造方法。 - 前記メッシュシートが、ポリエチレンテレフタレート系(PET系ポリエステル)、ポリアミド(6−ナイロン、6,6−ナイロン)、アクリル系、ビニロン、ポリオレフィン系の合成樹脂又はゴムにより成形されたもの、あるいはまた、前記合成樹脂又はゴム系繊維や木綿、羊毛の天然繊維を編み込んで形成したものであることを特徴とする請求項1記載の耐火二層管の製造方法。
- 前記合成樹脂製管に代えて、合成樹脂製又は金属製の芯材を用い、前記モルタルの硬化・乾燥工程後、前記芯材を引き抜き、この引き抜いた部分に、合成樹脂製管を内挿する工程を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐火二層管の製造方法。
- 前記メッシュシートを被せる工程は、前記メッシュシートを巻き付け、該メッシュシートの端部を熱溶着することにより行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐火二層管の製造方法。
- 前記メッシュシートを被せる工程は、メッシュシートが予めチューブ状に形成されたメッシュチューブを用いて、前記合成樹脂製管又は前記芯材を包囲するように前記メッシュチューブを被せることにより行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐火二層管の製造方法。
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