JP5745433B2 - 注入管 - Google Patents

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Description

本発明は、連続鋳造においてタンディッシュに溶鋼を注入する際に使用するタンディッシュ用の注入管に関する。
タンディッシュ用の注入管は、取鍋からタンディッシュに注入される溶鋼の二次酸化を防止する目的で、溶鋼の注入流を取り囲む形で配置され、上部がシールされ、かつ下部は、多くの場合タンディッシュの溶鋼内に浸漬されて使用される。このような注入管の材質としては、一般的にアルミナ−黒鉛質や、ハイアルミナ質などのパイプ状の不定形又は定形耐火物が使用されてきた。
しかしながら、これらの材質の注入管においては、内部の溶鋼流によるスプラッシュによる地金付着が顕著であり、地金が付着・堆積し、清浄な注入流による溶鋼の鋳込みが困難になってしまう。すなわち、注入管の閉塞現象により、長時間鋳造を行うことができず、連続鋳造に支障を来すといった大きな問題がある。更に、スプラッシュの付着は、注入管の自重の増加につながるため、そのフランジ部近傍で亀裂が発生し、破損脱落するなどの問題を抱えている。
そこで、これらの問題への対処として、例えば特許文献1では、0.5〜3.0°の下拡がりのテーパー構造を持つ注入管内壁面に2〜15mmのMgO−Al−SiO、Al−SiO系の耐火物層による剥離材を形成し、地金の自重により自然落下させる構成が提案されている。また、特許文献2では、注入管内壁面に雲母板からなるシート状の材料を内装して、地金付着、カーボンピックアップを防止する構成が提案されている。
一方、上述のような注入管内壁面に耐火物層等を形成する構成とは異なり、不活性ガスを注入する構成も提案されている。例えば、特許文献3では、下拡がりのテーパー形状を有する注入管内壁面に、不活性ガスをガス吹き出し可能な有孔質耐火物を備えた注入管が提案されている。
しかしながら、上述した特許文献1の構成では、付着・堆積した地金塊の落下が、主に地金冷却時の自然落下に委ねられており、地金塊が落下した場合、その衝撃により注入管が破損する恐れがある。また、鋳造中に落下が生じた場合は、鋼中の不純物源になる可能性もある。更に、付着地金と共に耐火物が落下した場合は、不定形耐火物の再施工が必要となる等の問題もある。
特許文献2は、耐火物層の代わりに、雲母板からなる層を設けて、雲母の劈開特性を利用し、地金冷却時の収縮によって付着した地金塊を落下させやすくするものであり、特許文献3は、下拡がりのテーパー形状を有する注入管内壁面から不活性ガスを吹き込み、鋳造終了後の付着地金の収縮により内壁面から剥離させてタンディッシュ内に落下させるものであるが、いずれも特許文献1で示した場合と同様の問題が発生することになる。
更に、上述した構成では、鋳造後の冷却時の収縮により内壁面に付着した地金除去は容易になるが、近年の高生産性化に伴う多連鋳化操業環境下では、鋳造中にスプラッシュの付着により地金が堆積して注入流路が閉塞し、清浄な注入流による溶鋼の鋳込みが困難になってしまうという問題を抱えている。この問題は、上述のいずれの構成によっても解消できない。
実公平7−44363号公報 特開2000−167658号公報 特開平5−293614号公報
本発明が解決しようとする課題は、注入管内壁面で地金が堆積して溶鋼流を阻害することを防止すること、言い換えると鋳造中に健全な溶鋼注入流路を確保することにある。
鋳造中に、溶鋼注入流路(内孔)を規定する注入管内壁面に地金が堆積して内孔が閉塞し、清浄な注入流による溶鋼の鋳込みが困難になってしまう現象は、スプラッシュ状になった鋳造中の溶鋼が注入管内壁面に付着し、その付着したスプラッシュが冷却されて地金となり、その地金が堆積及び成長することに起因する。
本発明は、この現象の根本的な原因であるスプラッシュ状態の溶鋼が注入管内壁面に付着にすることを抑制するものである。
本発明者らは、注入管内壁面を形成する耐火物(内壁面耐火物)に一定以上の炭素を含有させることで、注入管内壁面に高温で接触した溶鋼のスプラッシュ(以下、「溶鋼スプラッシュ」又は「スプラッシュ」ともいう。)が、接触界面にて短時間に内壁面耐火物中の炭素を溶解し低融化する現象(鋼の鋳鉄化、最低液相生成温度:約1150℃)により、付着した溶鋼スプラッシュが内壁面を流下する現象を利用することを見いだした。そして、この現象を利用することで、スプラッシュ状態の溶鋼が注入管内壁面に付着することを抑制でき、結果として地金として付着ないし堆積することを抑制できることを見いだした。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(3)に記載のとおりの注入管である。
(1)タンディッシュに溶鋼を注入するための注入管であって、一部又は全部の領域が異なる材質からなる層を半径方向に複数備え、この複数の層からなる領域において酸化防止層を除いて最も内孔側に位置する層である内張層とその外周側に隣接する層とは一体の構造であり、前記内張層は、1000℃の非酸化雰囲気中での加熱後の化学成分値で、炭素以外の元素との化合物を除く炭素であるフリー炭素を60質量%以上97質量%以下、SiCを3質量%以上40質量%以下含有していることを特徴とする注入管。
(2)前記内張層は、1000℃の非酸化雰囲気中での加熱後の化学成分値で、SiCを3質量%以上含有し、BC、Si、SiO、Al、ZrO、MgO及びCaOから選択する1種又は複数種の成分とSiCとの合量が3質量%を超え40質量%以下であって、かつ、SiO、Al、ZrO、MgO及びCaOの中から選択する1種又は複数種の成分の合計は37質量%以下(ゼロ含む)であり、BC及びSiのいずれか1種又は合計は1質量%以下(ゼロ含む)であり、残部が、炭素以外の元素との化合物を除く炭素であるフリー炭素からなる前記(1)に記載の注入管。
(3)溶鋼中に浸漬しない領域の一部又は全部の最外周層が断熱材からなる層である前記(1)又は前記(2)に記載の注入管。
以下詳細に説明する。
溶鋼スプラッシュの付着を抑制する最も基本となる要件は、スプラッシュが付着しやすい注入管の内壁面(内孔面)の一部又は全部の領域に、スプラッシュの融点を低下させる機能を備えた材質からなる層を形成することにある。したがって、このような注入管では、一部又は全部の領域が異なる材質からなる層を半径方向に複数備え、この複数の層からなる領域において最も内孔側に位置する層である内張層が、スプラッシュの融点を低下させる機能を有することになる。
スプラッシュの融点を低下させる機能を備えるために前記の内張層は、1000℃の非酸化雰囲気での加熱後の化学成分値で、炭素以外の元素との化合物を除く炭素、すなわちフリー炭素を少なくとも60質量%以上、最大で97質量%以下含むことが、まず必要である。
このような組成の内張層に溶鋼スプラッシュが付着すると、そのスプラッシュと内張層との接触界面で、溶鋼側への炭素の溶解が急速に進行する。炭素が溶解するとその溶鋼が鋳鉄化し、接触界面近傍での溶鋼の融点が急激に低下し、固着することなく内張層表面(注入管内壁面)を流下することになる。これは、炭素と溶鋼とが高温で接触した場合に、秒単位で急速に炭素を溶解する特性を利用したものである。
ここで、炭素が「炭素以外の元素との化合物を除く炭素」(フリー炭素)である理由は、炭素以外の元素との化合物である炭素は、溶鋼への溶解速度がフリー炭素と比較して顕著に小さいので、溶鋼スプラッシュの付着を抑制する程度にその融点を低下させる機能を得ることが困難になるからである。
なお、フリー炭素としては、構造体としての内張層の耐スポーリング性の確保等の観点から、黒鉛を主体とすることが好ましく、結合機能を担う炭素を含む、カーボンブラック等の無定形炭素、結晶質の炭素等も使用することができる。
ここで、化学成分値を1000℃の非酸化雰囲気の加熱後の値とするのは、製造段階における熱処理条件等によっては製品としての化学成分が異なることがあるからであり、また、本発明の特徴を正確に表すために、1000℃の非酸化雰囲気の加熱後の成分を基準にすることが必要であるからである。
溶鋼スプラッシュ内への炭素の溶解速度を大きくすると共に、より溶鋼スプラッシュが流下しやすいようにする点からは、内張層のフリー炭素量はできるだけ多いこと(最大でフリー炭素量100質量%)が好ましいが、フリー炭素量が97質量%を超えると、次のような問題が生じる。
すなわち、内張層のフリー炭素量が97質量%を超えると、炭素の溶鋼への溶解速度が、注入管本体の一般的な材質である、いわゆるアルミナ−黒鉛質耐火物の場合と比べて桁違いに大きくなる。実操業では、長時間に亘って持続的に、また新たな鍋(鍋が交換されることで溶鋼温度の低下が小さい)からの溶鋼を繰り返し受けるため、注入管内壁面を形成する内張層が鋳造途中に容易に溶解消失してしまう。内張層が消失すると直ちに、注入管内壁面で地金の付着ないし堆積現象が発生するようになる。すると、それ以後の鋳造時間内に溶鋼注入流路の確保が困難となる場合が生じる。
そこで、内張層の損耗を抑制しつつ、注入管内壁面での溶鋼スプラッシュの流下現象を維持すること、すなわちこれらのバランスを最適化することが、鋳造中の溶鋼注入流路を確保する上で重要となる。
本発明者らは、フリー炭素を主体とする内張層の組織内に、フリー炭素よりも耐食性に優れる耐火性骨材粒子を特定量配置することで、内張層の損耗速度を抑制することができ、溶鋼スプラッシュの流下現象も維持することができ、その結果、長時間に亘る安定操業が可能となることを見いだした。
この耐火性骨材粒子としては、SiCが最も好ましい。SiCを併存させることにより、フリー炭素を主体とする内張層の溶鋼スプラッシュによる損耗速度の制御が可能となる。これは、次のような作用、理由による。
(a)SiCが存在することで内張層の露出面におけるフリー炭素の面積が小さくなって、内張層内のフリー炭素が溶鋼スプラッシュと接触する頻度が小さくなり、その分溶損も小さくなること(いわば、フリー炭素と溶鋼スプラッシュとの接触防止材といえる)。
(b)SiCは溶鋼等に対する初期の濡れ性が小さく、溶鋼スプラッシュの流下促進機能を補う機能があり、溶鋼スプラッシュの内張層表面(内孔面)への付着防止及び初期の流下をフリー炭素に代わって担うことになり、フリー炭素の消失を抑制すること。
(c)SiCは溶鋼との接触によりSiと炭素に分解し、溶鋼中へ吸収される。この速度は内張層内に当初から存在するフリー炭素の速度よりも小さく、フリー炭素とSiCからなる構造体としての内張層の損耗速度を緩和し、調整する機能を発現すること。
(d)前記(c)の反応により、フリー炭素の消失よりも長い時間経過した後でSiCは消失し、新たに内張層組織内に存在するフリー炭素を露出させることになり、付着した溶鋼スプラッシュへ継続的な炭素の供給が可能となり、溶鋼スプラッシュの流下を持続させることができること。
この損耗速度の制御及び溶鋼スプラッシュの流下を持続させる機能等は、近年の長時間鋳造化の要請下では、特に溶鋼注入流路を安定的に確保するために重要な要素である。
注入管本体は、一般的にアルミナ−黒鉛系、アルミナ−シリカ−黒鉛系などの黒鉛を含有する耐火物で構成されている(なお、本発明においては材質に関し、例えばアルミナ系等のカタカナ及び漢字表記の場合は、化学成分としてのAlのみに限定するものではなく、一般にAl成分を主とするか多く含むAl系諸鉱物や化合物等をも含む、広い概念とする)。そして、他の連続鋳造用耐火物と同様、溶鋼注入前にタンディッシュ内又は外部からの加熱により、一般的に400℃〜1300℃程度の予熱工程を経る。また、取鍋の交換時にも開放されることがある。このとき、酸化雰囲気になる場合が多いため、フリー炭素(黒鉛、他)の酸化を防止するために、注入管の外表面にガラス系酸化防止層が設置されることが一般的である。一般的なアルミナ−黒鉛質耐火物の酸化防止メカニズムにおいては、高温下で軟化したガラス被膜は、アルミナやシリカ、ジルコニア等の、表面に露出した酸化物粒子を架橋点として、高温下のガラスフィルムを維持し、酸素イオンの拡散が極めて遅いこのガラス被膜によって、注入管内の主としてフリー炭素の酸化を防止している。
ところが、高温下で軟化したガラス被膜は、フリー炭素量が増加するのに伴い、架橋する表面露出の酸化物点が少なくなり、ガラスフィルムの膨れ、ハジケ、剥離などの塗膜欠陥を生じやすくなり、その塗膜欠陥を生じた組織部分での酸化現象が発生するようになる。
一定量のSiCを含有させることにより、このような高温下での塗膜欠陥を防止し、フリー炭素の酸化を抑制する効果も得ることができる。すなわち、フリー炭素を主体とする組織中にSiCを含有させることでその表面のガラス被膜との濡れ性が改善し、高温下でのガラス被膜の維持により酸化防止効果が改善する。またSiCは、その粒子表面で極薄いシリカ被膜を生成しやすく、あるいは、フリー炭素を主体とする組織中の気孔部分で微細なシリカ系のウイスカーなどを生成しやすいため、ガラス被膜と前記フリー炭素との間の濡れ性が改善され、酸化防止性能を維持する機能を高める特性を有する。更にSiCは、高温下の組織中で自ら酸化し、組織内に当初から存在するフリー炭素の酸化防止剤としても働く。
なお、注入管自体が酸化しない程度に予熱段階からその内孔内に不活性ガスを充満させる、又は予熱をせずに内孔側を不活性ガスで充満した溶鋼注入操業を行う等、注入管を酸化性雰囲気に曝さずに、又は酸素との接触頻度等を減じて使用することも可能である。このような強い酸化性雰囲気に曝さない操業条件においては、また前述のようにSiCを含有させること自体に内張層の酸化を抑制する効果もあることとも相俟って、ガラス被膜(酸化防止層)の存在は本発明の課題を解決するための必須の要件ではない。
本発明での内張層中のSiC含有量は、3質量%以上40質量%以下とする。3質量%未満であると、上述したようにフリー炭素の溶鋼中への溶解による損耗速度が増加し、また予熱段階で内張層に塗布された酸化防止層に塗膜欠陥などが入りやすく、酸化問題が発生しやくなる。また40質量%より多いと、損耗速度が低下し、新たなフリー炭素の露出タイミングが遅くなり、その結果、溶鋼スプラッシュとの界面での炭素の溶解が阻害されて、地金付着が発生しやすくなる。
更に、少なくともSiCを前述の最小含有量である3質量%以上含有させた上で、SiCの最大含有量40質量%の範囲のSiCの一部を置換する形態で、酸化物、炭化物、金属を含有させることも可能である。これにより、溶鋼スプラッシュ中へのフリー炭素の溶解が抑制され、内張層の損耗速度を更に低下させるように制御することが可能となる。酸化物としては、SiO、Al、ZrO、MgO、CaOが、炭化物としてはBCが、金属としてはSiを併存させることが可能である。
前述した酸化物は、SiCよりも溶鋼と濡れにくい特徴に加えて、溶鋼に対して耐食性を有し、炭素と溶鋼との物理的な接触を防止できる特徴がある。一方で、これらの酸化物は、SiCのように粒子自体の分解特性を持たない。このため、酸化物粒子周囲のフリー炭素の溶解が進行するのに伴い酸化物粒子の保持力が無くなって脱落消失する形態で損耗が進行することになる。このため、これらの酸化物は、SiCと併存させる形態でフリー炭素素地中に含有させることが必要であり、これらの含有量は最大37質量%以下であることが必要である。37質量%を超えると、溶鋼が付着傾向となる。
前述のように本発明は、注入管内壁面での溶鋼スプラッシュの付着を溶鋼中への炭素溶解により防止するものである。したがって、フリー炭素を主体とする内張層の厚さに制限はあるが、長時間の連続鋳造が必要な操業条件、又は極低炭素鋼などの鋼中炭素ピックアップが問題となる鋼種の操業条件では、炭素質の内張層の損耗速度を制御することがとりわけ重要となる。また、極低炭素鋼などの鋼種では、フリー炭素の損耗速度自体も大きくなる。
前述の酸化物を併用することにより、これらの操業条件においても内張層の損耗速度を低減させ、溶鋼スプラッシュの付着を安定的に抑制することが可能となる。更には、溶鋼中の炭素ピックアップを鋼の品質上問題にならないレベルにすることが可能となる。
前述の酸化物の他、BCやSiも併用することが可能である。これらはSiCと同様、酸化防止と損耗速度の制御を目的とする。しかし、BC及びSiのいずれか1種又は合計量は1質量%以下(ゼロ含む)とする。BC及びSiのいずれか1種又は合計量が1質量%を超えると、酸化防止効果は良好であるが、強度、弾性率、熱膨張率が高くなり押し割れなどのトラブルが発生しやすくなる。
これらの酸化物、炭化物、金属は、前述したように、フリー炭素又はSiCの損耗速度を更に低減させる効果を得る目的で追加的に含有させるのであるから、これらの含有量はゼロでも構わない。
フリー炭素を主体とする組成の内張層内に共存させるこれら酸化物、炭化物、金属は、1mm以下の粒子径の原料粒子として分散させることが好ましい。粒子径が1mmを超えると、組織内で粒子の偏在傾向が強まり、いわゆるセグリゲーションが発生しやすくなり、均質性が低下し、品質バラツキが増大する傾向となるからである。また、特に酸化防止機能を主目的とする場合は、0.2mm以下の微粒子であることが好ましい。その理由は、微粒子であるほど、反応性が富むため酸化防止性能が高まるからである。
以上の説明を言い換えると、1000℃の非酸化雰囲気中での加熱後の化学成分値でSiCを3質量%以上含有し、BC、Si、SiO、Al、ZrO、MgO及びCaOから選択する1種又は複数種の成分とSiCとの合量を3質量%を超え40質量%以下とし、これらの残部がフリー炭素からなる構成にすることができる、ということになる。ここで、SiO、Al、ZrO、MgO及びCaOの中から選択する1種又は複数種の成分の合計は37質量%以下(ゼロ含む)であり、BC及びSiのいずれか1種又は合計は1質量%以下(ゼロ含む)とする。なお、これらの量的限界値は、本発明者らが実施した溶鋼付着評価試験により得た知見である。
この溶鋼付着評価試験では、内張層用の炭素質材料を外周側に設置し、一般的なアルミナ−黒鉛材質を芯材に持つ棒状サンプル(形状:φ40mm−長さ180mm(外周炭素質材料(厚さ10mm−長さ180mm)、芯材アルミナ−黒鉛(φ20mm−長さ180mm)))を1550℃の溶鋼へ20秒間浸漬し、直ちに引き上げ、空冷を行い、表面温度が放射温度計で1000℃になった時点で再度浸漬する操作を繰り返す方法にて、溶鋼の付着状態、及び炭素質材料の損耗速度について同時に評価を行った。
以上、溶鋼スプラッシュの付着防止に関する機能につき述べたが、更に注入管としては、操業時に破壊を生じない程度の破壊抵抗性を備えておく必要がある。特に、半径方向に複数の層からなる部分を有する注入管では、これら各層がそれぞれ分離した状態である場合には、構造体としての機械的又は熱的な破壊抵抗性が弱く、いずれか1又は複数の層が破壊しやすくなる。また、操業時間の経過と共に内張層の損耗が進展するような特性を有する構造体の場合、内張層がその外周側層と分離している、又は容易に分離する程度の弱い結合状態であると、その内張層が早期に、部分的又は全体的に剥離する危険性が高まる。
そこで本発明の注入管は、複数層領域の最も内孔側に位置する層(内張層)とその外周側に隣接する層とは一体の構造とする。一体であるとは、各層が相互に接触する部分における双方の組織が相互に絡み合ったような連続状態になっていて、それら層相互を分離するような空間も存在せず、またそれら各組織の連続性が明確に分断されるような境界部分を有しない状態をいう。本発明においては、少なくとも内張層とその外周側に位置して内張層に隣接する層とが一体の構造であれば、内張層の破壊の危険を回避することができる。
この内張層の外周側に位置して内張層に隣接する層は、注入管の骨格的な部分、いわゆる本体部を成す層(以下単に「本体層」ともいう。)であって、注入管の大きさを含む本体部の形状、物性等は、個別の設備や操業条件に応じて調整することのできる設計事項である。本発明の注入管の内張層の厚さ、領域、本体層の厚さ等の形状、及び本体層の材質や物性等についても、同様に設計事項として個別に任意に設定することができる。具体的には、内張層の領域や厚さは、その鋳造条件における溶鋼スプラッシュの飛散状況、程度、鋳造時間等に応じて決定すればよい。本体層の厚さ、材質、その強度等の物性等も、その注入管の大きさ、機械的応力の発生状況やその程度等、及びその他鋳造条件に応じて決定すればよい。
なお、本発明での本体層の材質は、注入管用として一般的に使用されるアルミナ−黒鉛質耐火物、アルミナ−シリカ−黒鉛質耐火物等を使用することができる。また、本体層自体が前記の一般的な耐火物の外周側に、例えば炭素を含有しないキャスタブル耐火物による成形体を備える等の、多層構造であってもかまわない。
ところで本発明は、溶鋼スプラッシュが注入管内壁面に付着し、そこで内張層内のフリー炭素等と接触してその炭素成分が溶鋼スプラッシュ中に溶解する、との現象を継続させることで、鋳鉄化すなわち溶鋼スプラッシュの融点低下及び流下によりその付着を防止する。更には、SiC又は酸化物、炭化物、金属の併存とその含有量の調整によりその速度制御をも行う。
溶鋼スプラッシュとフリー炭素等との接触界面で炭素成分等の溶鋼スプラッシュ内への溶解速度をより高い精度で制御するためには、内張層自体を一定以上の温度に保持することがより好ましい。
この手段としては、注入管の最外周部に断熱材からなる層を設置することができる。一般的に注入管は、タンディッシュ内に挿入されて使用されるため、溶鋼スプラッシュと注入管内壁面(内張層)内の炭素との界面で液相が生成するのに十分な温度域で使用される。しかし、鋳造初期などの操業温度が低い場合などでは、外周部に断熱材からなる層を設けることで、予熱時や溶鋼注入時の保温効果を高め、前記界面での鋳鉄化を容易にし、又はより安定的に前述のSiCその他の挙動等を制御することが可能になる。その結果、更に安定した溶鋼流の確保と安定した操業を確保することができる。
ここで、断熱材とは、少なくとも本体層の最も外周側の層を構成する材料よりも低い熱伝導率を備える材料をいう。このような断熱材としては、一般的なアルミナ−シリカ質のファイバーブランケットやシート状の、1000℃以上の耐熱性を有した断熱材が最適である。その層の厚さは一般的な1mm程度のシート状のものから24mm程度のブランケット状のものが使用可能である。これらの材質は操業条件に応じて適宜選択し、その層の厚さは操業条件に応じて適宜設定すればよい。
本発明の注入管により、溶鋼スプラッシュが地金となって注入管内壁面に付着にすることを抑制することができる。その結果、鋳造中に注入管内壁面での溶鋼スプラッシュの付着による地金が堆積することを抑制して溶鋼注入流路が閉塞することを防止し、健全な溶鋼注入流路を確保することができる。
また、所定の酸化物、炭化物、金属を併用することで、鋼種や操業条件の違いに伴う溶鋼スプラッシュの注入管内壁面への異なる付着状態にも対応することができる。
更には、注入管の最外周側に断熱材からなる層を形成することで、溶鋼スプラッシュの注入管内壁面への付着抑制効果をより安定させることができる。
本発明の注入管の一例である。 本発明の注入管の他の例である。 本発明の注入管の更に他の例である。
本発明の注入管の製造方法について、内張層と一層からなる本体層との2層構造の場合を典型的な例として述べる。
本発明の注入管は、内張層及び本体層の各層ごとに専用はい土を作製する工程と、成形用鋳型に内張層及び本体層を形成するための、所定の大きさに仕切られた複数の空間を設ける工程と、成形用鋳型内の各空間にそれぞれ専用に作製したはい土を充填し、その空間の仕切りを除去する等によって隣接するはい土を直接接触させる工程と、これらの直接接触させたはい土を、CIP(Cold Isostatic Press)装置により加圧して成形する工程と、得られた成形体を、非酸化雰囲気中又は表面に酸化防止処理を施した状態での酸化雰囲気中で、600℃以上1400℃以下での熱処理をする工程とを含む製造方法により得ることができる。なお、前記の熱処理をする工程に先立って、前記温度より低い温度で、揮発分の除去や樹脂の硬化等を目的とする独立した熱処理工程を含んでもよい。
前記の各工程の基本的な操作、作業方法、使用する装置等は、一般的な注入管や黒鉛含有の連続鋳造用ノズルの製造方法と同様である。
内張層用のはい土内の炭素原料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、その他の、不可避の不純物以外がフリー炭素からなる原料であれば使用することができる。しかし、内張層の強度を高めるため、及び破壊抵抗を高める等の機械的特性の最適化のためには、板状構造を有する黒鉛を全フリー炭素原料のうち約10質量%以上含むことが好ましい。黒鉛は、粒子サイズが約2mm以下の天然の黒鉛であることがより好ましい。また、繊維状の黒鉛原料を約5質量%以下程度含ませてもよい。
内張層用のはい土内のSiC原料としては、純度が約90質量%以上の一般的なSiC原料を使用することができる。その粒子サイズは、内張層内での分散状態の均一性をできるだけ高めるため、及び溶鋼スプラッシュとの反応性を高めるために、1mm以下であることが好ましく、0.1mm以下であることがより好ましい。
必要に応じて含有させるSiO、Al、ZrO、MgO及びCaOから選択する1種又は複数種の酸化物については、それぞれ単体としての原料粒子又はこれら成分からなる化合物原料を使用することができる。例示すると、溶融シリカ、石英、コランダム、ムライト、シリマナイト族、スピネル、ジルコニア、ジルコン、MgO(ペリクレース)、MgO−CaOクリンカー、焼成ドロマイト、フォルステライト等である。これら酸化物に対しては溶鋼スプラッシュが付着しやすいので、局部的な溶鋼スプラッシュ付着と地金の成長を抑制するために、これらの原料粒子サイズは、1mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましい。
必要に応じて含有させるBC、Siの原料としては、それぞれ単体としての原料粒子を使用することができる。これらは酸化防止機能をも担うので、内張層内での分散状態の均一性をできるだけ高めることが好ましい。したがって、これらの粒子サイズは1mm以下であることが好ましく、0.1mm以下であることがより好ましい。
内張層を1000℃の非酸化雰囲気中で加熱した後の化学成分値であるフリー炭素量は、結合材としての炭素をも含む。したがって、粉体部分としてのフリー炭素原料粒子は、この結合材由来のフリー炭素を合算して60質量%以上97質量%以下となるように、調整する。SiC原料粒子も、内張層を1000℃の非酸化雰囲気中で加熱した後の化学成分値で3質量%以上40質量%以下となるよう、はい土製造時の粉体の量を調整する。また、必要に応じて含有させる酸化物、炭化物、金属の原料も前述の特定量の範囲に合致するように、はい土製造時に調整する。すなわち、はい土を構成する原料粒子全体に結合材由来の炭素量を合算した値を100質量%として、各成分の原料粒子の構成割合を調整すればよい。
次に、前述の原料粒子からなる粉末をミキサーにより均一に混和し、結合材を、成形体としての保形能を備えると共に具備すべき強度を得るのに必要な適量添加し混練して、成形用のはい土を得る。結合材としては、1000℃の非酸化雰囲気中での加熱後にフリー炭素を残留する性質のある、各種タール、ピッチ、フェノール樹脂、フラン樹脂等の一種又は複数を使用することができる。また、主として成形時のはい土の湿潤状態を調整する目的で、フリー炭素成分(炭素結合)を残留しない有機質結合材を前記の結合材と併用することもできる。その例としては、アクリル樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂等の有機質接着材、樹脂等がある。
これら内張層用のはい土を、同様に準備した本体層用のはい土と同時にCIP成形して、一体構造の成形体を得る。その具体的な工程・方法の要旨は次のとおりである。
まず、成形用鋳型内に所定の大きさに仕切られた、内張層のはい土を充填する空間及び本体層のはい土を充填する空間を、これら空間を仕切る板を介して、予め設けておく。次に、前記の各空間にそれぞれ専用に作製したはい土を充填する。次に、その空間を仕切る板を除去して、隣接するはい土を直接接触させる。その後、これらの直接接触させたはい土を、CIP装置により加圧して成形する。このように注入管を成形する際に複数層それぞれのはい土を相互に接触させて、同時に加圧成形する方法により複数層が一体となった構造体を容易に得ることができる。
この成形後の成形体を、約600℃〜約1400℃の非酸化雰囲気中又は表面に酸化防止処理を施した状態での酸化雰囲気中で加熱処理した後、適宜加工して、製品としての注入管を得る。なお、前記加熱工程に先だって、揮発分を除去する等の目的で、低温度(数百度〜600℃程度)で熱処理することもできる。
本発明の注入管について、試験室における実験によって得た結果を実施例A〜Dとして以下に述べる。
以下に示す実施例A〜Dにおいては、後述の「評価1〜3」の試験を各々の試料について実施し、各評価結果の設定基準を全て満たすか否かを総合評価とし、これら全てを満たした場合に本発明の課題が解決でき、しかも注入管としての使用が可能である実施例と判断した。その総合評価の基準は、次のとおりである。
○:良好(顕著な発明の効果があって課題が解決できると共に、注入管としての具備特性にも問題はない。)
△:可(発明の効果があって課題が解決できると共に、注入管としての具備特性にも問題はない。)
×:不良(課題が解決できないか、又は注入管としての具備特性に問題あり。)
評価1〜3の試験条件及び評価方法は次のとおりである。
<評価1>
評価1は、前述した溶鋼付着評価試験によるものであり、溶鋼スプラッシュの付着防止能及びその機能の継続能の評価である。その試験及び評価方法は次のとおりである。
供試料は、外形φ40mm、長さ180mmの円柱状とし、中心側の芯となる部分の20mm部分にアルミナ−黒鉛質耐火物を適用し、その外周側全体に10mmの厚さで、本発明の内張層用の耐火物層を配置した。試料の成形、加熱等は、前述の製造方法に準じて、製品と同程度の品質のものとした。なお、外周側に配置した内張層用の耐火物中及び本体層(芯材)用の耐火物中のフリー炭素は、各例の炭素成分量を100質量%としたときに黒鉛を85質量%含有する構成とした。これは、後述の実施例A〜D全てにおいて同じである。
前記の供試料を、1550℃に保持した低炭素鋼の溶鋼中に20秒間浸漬し、その溶鋼中から引き上げて、試料表面の温度が1000℃になるまで空冷する、という一連の操作を1サイクルとし、このサイクルを試料に溶鋼の付着が発生するまで複数回繰り返した。そして、溶鋼の付着が発生するまでのサイクル数を評価対象とした。その評価基準は次のとおりとした。なお、試験終了時すなわち付着発生時の試料の外観の状態も観察した。
○:良好(300サイクル以上)
△:可 (50サイクル超300サイクル未満)
×:不良(50サイクル以下)
<評価2>
評価2は、予熱時の耐酸化性すなわち酸化防止層の維持能の評価である。その試験及び評価方法は次のとおりである。
供試料は、内張層用の耐火物層及び芯材に関しては前記評価1と同じ構造、同じ製造方法により得たものとし、試料の外周面に、1000℃の酸化雰囲気中での熱加熱後の化学成分値が、SiOが約80質量%、アルカリ金属酸化物が約10質量%、その他の酸化物が約10質量%からなる、微粉構成の酸化防止材を約0.3mm〜約0.8mmの厚さで酸化防止層として形成した。なお、この酸化防止層は、泥状の酸化防止材浴中に前記の試料を浸漬し、引き上げることで試料外周面に酸化防止材を被覆させ、自然乾燥により、試料表面に固定させた。前記の酸化防止層を形成した供試料を1300℃の酸化雰囲気中に6時間曝し、その試料の外観の状態を観察した。評価基準は次のとおりとした。
○:良好(内張層の酸化なし)
△:可(酸化防止層に一部欠陥あり)
×:不良(内張層の酸化大)
<評価3>
評価3は、注入管内壁面に内張層を配置した構造での耐熱衝撃性の評価である。相対的に薄い内張層を内壁面に配置した多層構造における内張層の破壊等の抵抗性は、耐熱衝撃性を評価することで、注入管としての実用可能性を判断することができる。その試験及び評価方法は次のとおりである。
供試料は、内張層用の耐火物層を内孔側に10mmの厚さで設置し、その外周側に本体層用の耐火物層を12.5mmの厚さで設置した、最外周がφ100mm、本体層用の耐火物層内径がφ75mm、内孔がφ55mm、長さが300mmの円筒状とした。この試料は前記評価1と同様の製造方法(但し、成形時に芯棒を使用)により得たものとした。供試料は室温に保持しておき、その内孔の空間内に、1550℃の溶鋼を注入し、冷却後にその試料の外観及び内孔面の状態を観察した。評価基準は次のとおりとした。
○:良好(割れなし)
×:不良(亀裂発生)
[実施例A]
実施例Aは、内張層中のフリー炭素量とSiC添加の影響を調査した例である。
各試料の構成と評価結果を表1に示す。
Figure 0005745433
まず、従来技術による一般的な本体層用耐火物は、表3の比較例8又はこの比較例8類似のアルミナ−黒鉛質耐火物等の耐火物である。このような一般的なアルミナ−黒鉛質耐火物では、内張層の損傷(消失)に至る前のわずか5サイクル程度で付着が始まっていることがわかる。
表1を参照すると、フリー炭素が97質量%を超える比較例1及び比較例2は、評価1での損耗速度が大きく、サイクル数38以下で内張層が消失し、芯材が露出していることがわかる。また、付着以外の要素である、評価2において、この内張層を備える注入管は操業に支障が生じる可能性が大きい。
これに対し、フリー炭素が97質量%以下60質量%以上、SiCが3質量%以上40質量%以下の実施例1〜実施例5は、評価1において内張層が消失して芯材が露出するまでのサイクル数が増加し、また、付着以外の要素である、評価2及び評価3においても基準を満たし良好な結果となっていることがわかる。また、付着に関して従来技術による一般的な本体層用耐火物(表3の比較例8)に比較して、顕著な効果が得られていることがわかる。
一方、フリー炭素が60質量%未満、SiCが40質量%を超える比較例3及び比較例4は、評価1において内張層が損傷(消失)に至る前に付着が始まっていることがわかる。
[実施例B]
実施例Bは、SiC及びフリー炭素を含有する内張層における酸化物含有の影響を調査した例である。各試料の構成と評価結果を表2に示す。
Figure 0005745433
SiC含有量が下限値である組成の中にフリー炭素をそのほぼ中位にしてフリー炭素の一部を酸化物に置換した実施例6〜実施例8は、酸化物の含有量が多くなるのに伴い、評価1での損耗速度が小さくなる傾向が観られる。しかし、SiC含有量が下限値に満たない比較例5では、芯材が露出する前に付着が生じ始め、そのサイクル数が50に満たないことがわかる。実施例6〜実施例8は評価2では良好なレベルではないものの、基準を満たす。
SiC含有量を中位値である10質量%として、フリー炭素の一部をSiCと同量の酸化物に置換した実施例9、及びSiCを半分に減じてそれを酸化物に置換した実施例10〜実施例14では、本発明の酸化物であれば酸化物の種類にかかわらず、評価1での損耗速度が顕著に小さくなる傾向が観られ、評価2、評価3も良好な結果となっている。
[実施例C]
実施例Cは、フリー炭素をその下限値で含有する内張層におけるSiCと酸化物の含有の影響を調査した例である。各試料の構成と評価結果を表3に示す。
Figure 0005745433
実施例15〜実施例17は、SiCと酸化物の合量の含有量が上限値である組成において、酸化物/SiCの比率を漸次高くした例である。評価1で、これらいずれの実施例も芯材が露出する前に付着が生じ始めるが、酸化物/SiCの比率が高くなるのに伴い、そのサイクル数が小さくなる、すなわち損耗速度が低下すると共に付着速度が大きくなる傾向が観られる。
一方、SiCが下限値に満たない比較例6及び比較例7では、そのサイクル数が顕著に小さくなる、すなわち、損耗速度が大幅に低下すると共に付着速度が大幅に大きくなる傾向が観られ、さらに評価2の酸化防止層の維持機能も基準を満たすものの、低下している。なお、酸化物がAlである比較例8は、酸化物がSiOである比較例7よりもさらに前記の傾向が強くなっている。
[実施例D]
実施例Dは、BC及びSi含有の影響を調査した例である。各試料の構成と評価結果を表4に示す。
Figure 0005745433
C及びSiのいずれか又は合量を1.0質量%以下含み、SiC含有量が下限の3質量%以上であって、上限の40質量%からBC及びSiのいずれか又は合量を差し引いた量の範囲内の実施例18〜実施例25では、いずれの例でも評価1での損耗速度が低下すると共に、評価2、評価3も良好であることがわかる。
しかし、BC及びSiのいずれか又は両方の合量が1.0質量%を超える比較例9〜比較例11では評価3が基準に満たない不良な結果となった。これは、BC、Siが耐火物内の結合を過度に強化して、弾性率を上昇させる等を惹き起こしたためと考えられる。
以下、本発明の注入管の具体的な構成例を図面により説明する。
図1は、本発明の注入管の一例である。図1では、注入管11の内壁面全面に内張層2(実施例3の耐火物)を、C:25質量%、SiO:25質量%、Al:50質量%のAl−SiO−C材質の本体層2と一体構造で配置している。そして、図1(a)では、この注入管11の上端面を除く全周面に、予熱段階や鋳造途中の酸化防止の目的でガラス層を主成分とする酸化防止層3(有効温度範囲500〜1500℃)を0.3〜0.8mm厚で塗布している。また、図1(b)は、図1(a)において内張層2表面には酸化防止層3を形成していない例である。
図2は、本発明の注入管の他の例である。図2では、タンディッシュ内の溶鋼4中への浸漬領域での炭素ピックアップを防止する目的で、前記浸漬領域には内張層2を配置せず、内張層2、本体層1とも図1と同じ材質を、溶鋼スプラッシュが付着しやすい未浸漬部分にのみに配置している。
図3は、本発明の注入管の他の例である。図3では、図2の注入管において溶鋼中に浸漬しない領域の最外周部に、12mmのアルミナ−シリカ質ファイバー(最高使用温度:約1250℃)からなる断熱層5を配置し、溶鋼スプラッシュ接触部分での温度保持を強化している。
1 本体層
2 内張層
3 酸化防止層
4 溶鋼
5 断熱層
11 注入管

Claims (3)

  1. タンディッシュに溶鋼を注入するための注入管であって、一部又は全部の領域が異なる材質からなる層を半径方向に複数備え、この複数の層からなる領域において酸化防止層を除いて最も内孔側に位置する層である内張層とその外周側に隣接する層とは一体の構造であり、前記内張層は、1000℃の非酸化雰囲気中での加熱後の化学成分値で、炭素以外の元素との化合物を除く炭素であるフリー炭素を60質量%以上97質量%以下、SiCを3質量%以上40質量%以下含有していることを特徴とする注入管。
  2. 前記内張層は、1000℃の非酸化雰囲気中での加熱後の化学成分値で、SiCを3質量%以上含有し、BC、Si、SiO、Al、ZrO、MgO及びCaOから選択する1種又は複数種の成分とSiCとの合量が3質量%を超え40質量%以下であって、かつ、SiO、Al、ZrO、MgO及びCaOの中から選択する1種又は複数種の成分の合計は37質量%以下(ゼロ含む)であり、BC及びSiのいずれか1種又は合計は1質量%以下(ゼロ含む)であり、残部が、炭素以外の元素との化合物を除く炭素であるフリー炭素からなる請求項1に記載の注入管。
  3. 溶鋼中に浸漬しない領域の一部又は全部の最外周層が断熱材からなる層である請求項1又は請求項2に記載の注入管。
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