図3は、ある実施形態に係る通信の例を説明する図である。図3の例では、通信装置10aが、2つの帯域(キャリアC1、キャリアC2)を用いて、通信装置10bにデータを送信する場合の例を示す。また、通信装置10aと10bのいずれで生成されたキャリアであるかを判断しやすくするために、通信装置10aで生成されたキャリアの符号の末尾に「a」、通信装置10bで生成されたキャリアの符号の末尾に「b」を付すものとする。また、以下の説明では、生成されたキャリアの周波数の誤差を符号付きのppm(parts per million)単位で表した値を「周波数精度」と記載する。例えば、100MHzとして生成されたキャリアの周波数が100MHz+100Hzである場合、周波数精度は+1ppmであり、100MHz−100Hzである場合、周波数精度は−1ppmである。
(1)通信装置10a、10bは、通信に使用するキャリアの周波数精度を、代表キャリアの周波数精度に合わせる。ここで、「代表キャリア」は、複数の装置の間で周波数を比較して、周波数を一致させるキャリアのことを指す。ここでは、キャリアC1(C1a、C1b)が代表キャリアであるものとする。また、通信装置10aで生成されるキャリアC1aの周波数精度はXppmであるとする。すると、通信装置10aでは、キャリアC2aの周波数精度を、WppmからXppmに変更する。一方、通信装置10bでは、キャリアC2bの周波数精度をZppmからYppmに変更することにより、キャリアC1bの周波数精度に合わせる。従って、キャリアC1bとC2bのいずれも周波数精度がYppmになる。
(2)通信装置10bは、通信装置10aから信号を受信すると、通信装置10bで生成する代表キャリアC1bの周波数を、通信装置10aの代表キャリアC1aの周波数と一致させる。このため、キャリアC1bとキャリアC1aでは、周波数精度も同じ値となる。図3の例では、通信装置10bは、キャリアC1bの周波数精度をYppmからXppmに変更する。
(3)キャリアC1bの周波数精度が変更されたことに伴い、キャリアC1bの周波数精度とキャリアC2bの周波数精度に差が生じている。そこで、通信装置10bは、キャリアC2bの周波数精度を、キャリアC1aの周波数精度と同じ値に変更する。すなわち、キャリアC2bの周波数精度は、YppmからXppmに変更される。この結果、通信装置10aで生成されたキャリアC2aと通信装置10bで生成されたキャリアC2bの周波数が一致する。
このように、各通信装置10でキャリアの周波数精度を一致させることにより、通信装置10の間で複数のキャリアを用いて通信が行われる場合であっても、1つのキャリアでの調整結果を用いて他のキャリアについても周波数を装置間で一致させることができる。従って、本実施形態によると、通信装置10の間での周波数の調整は代表キャリアを用いて行われる。つまり、代表キャリアではないキャリアによって送受信されるフレームには、通信装置10間で周波数を揃えるために用いられるパイロットシンボルを含めなくても良い。従って、代表キャリアではないキャリアに含めることできる情報シンボルの数が増加するため、通信効率が改善される。
また、代表キャリア以外のキャリアの周波数が代表キャリアの周波数精度に合わせて変更されるため、通信の途中から使用されるキャリアが増加しても、新たに加えられたキャリアの周波数は通信中の通信装置10の間で一致している。従って、本実施形態によると、キャリアが追加されても、個々のキャリアについて周波数を一致させる処理により通信が長時間にわたって妨げられることがない。このため、キャリアの追加から通信の開始までの時間が短くなり、通信の効率が改善される。
<第1の実施形態>
〔送信機〕
以下、図4に示すように、送信機20から送信信号が受信機40に送信される場合を例として説明する。以下の説明では、キャリアC1、C2を用いて通信が行われるものとするが、通信に使用されるキャリアの数は任意である。さらに、本実施形態では、キャリアC1が代表キャリアであるものとする。また、キャリアC1の発振周波数はF1、キャリアC2の発振周波数はF2であるものとする。ここで、「発振周波数」は、あるキャリアに周波数の誤差がない場合にそのキャリアの周波数となる値のことをさすものとする。例えば、発振周波数が100MHzで、周波数精度が+1ppmである場合、そのキャリアの周波数は、100MHz+100Hzとなる。
図5は、送信機20の構成の例を示す。送信機20は、情報ビット分配部21、シンボルマッピング部22、AFC用パイロット生成部23、制御用パイロット生成部24、無線フレーム生成部25、波形整形部26、直交変調部27、キャリア生成部28、アンテナ29、装置内周波数制御部30を備える。
情報ビット分配部21は、情報ビット分配部21に入力された情報ビットを、シンボルマッピング部22aと22bに分配する。シンボルマッピング部22a、22bは、情報ビット分配部21から入力された情報ビットを情報シンボルに変換する。AFC用パイロット生成部23、制御用パイロット生成部24(24a、24b)は、パイロットシンボルを生成する。以下の説明では、AFC用パイロット生成部23で生成されたパイロットシンボルは、AFC処理に用いられる。一方、制御用パイロット生成部24で生成されたパイロットシンボルは、AGC(Auto Gain Control:ゲイン制御)、シンボル同期など、AFC以外の処理に用いられるものとする。なお、情報シンボルとパイロットシンボルのいずれも複素信号として無線フレーム生成部25に入力される。
無線フレーム生成部25aは、情報シンボルとパイロットシンボルを多重して送信シンボル(複素信号)を生成し、送信シンボルを波形整形部26aに出力する。無線フレーム生成部25aは、情報シンボル103とパイロットシンボル101を代表キャリアから送信するために配置するので、無線フレーム生成部25aで生成される無線フレームは、例えば、図6(a)に示すようになる。同様に、無線フレーム生成部25bは、シンボルマッピング部22bから入力された情報シンボル103gと、制御用パイロット生成部24bから入力されたパイロットシンボル101hから図6(b)に示すフレームを生成し、波形整形部26bに出力する。図6(b)に示すように、代表キャリアではないキャリアを介して送信されるフレームに含まれているパイロットシンボルの数は、代表キャリアから送信されるフレームに含まれるパイロットシンボルの数に比べて少ない。これは、代表キャリアではないキャリアから送信される無線フレームでは、AFCに用いられるパイロットシンボルが含まれていないためである。例えば、代表キャリア以外のキャリアで送信される無線フレームの先頭に含まれているパイロットシンボルの数は、代表キャリアから送信される無線フレームの先頭に含まれているパイロットシンボルの数よりも少ない。さらに、代表キャリア以外のキャリアから送信される無線フレームでは、情報シンボルの間にパイロットシンボルを含まなくても良い。
波形整形部26は、無線フレーム生成部25から入力された送信シンボルに対してオーバーサンプリング、フィルタ処理等を行うことにより、送信ベースバンド信号を生成する。キャリア生成部28(28a、28b)は、送信機20で使用されるキャリアのうちの1つを生成する。以下の説明では、キャリア生成部28aは、周波数F1のキャリアC1を生成し、キャリア生成部28bは、周波数F2のキャリアC2を生成するものとする。なお、キャリア生成部27aは複素キャリア(直交する2つのキャリア)を生成する。キャリア生成部27bも同様である。直交変調部27(27a、27b)は、生成されたキャリアと、送信ベースバンド信号を用いて直交変調処理を行ない、送信信号をアンテナ29(29a、29b)に出力する。
装置内周波数制御部30は、キャリア生成部28bで生成されるキャリアC2の周波数精度と、キャリア生成部28aで生成されるキャリアC1の周波数精度を比較し、キャリアC2の周波数精度をキャリアC1の周波数精度に合わせるよう制御する。
図7は、装置内周波数制御部30の構成の例を示す図である。図7は、装置内周波数制御部30にPhase Locked Loop(PLL、位相同期回路)が使用される場合の例を示す。装置内周波数制御部30は、分周器31(31a、31b)、位相比較器32、および、制御信号生成部33を含む。分周器31aは、代表キャリアを分周して基準信号を生成する。一方、分周器31bは、代表キャリア以外のキャリアを分周して比較信号を生成する。ここで、分周器31a、31bの分周比は、キャリアC1とキャリアC2のいずれも周波数精度が0ppmである場合に、基準信号と比較信号が一致するように、F1とF2の値に応じて予めオペレータなどによって決定される。分周比は、予め分周器31a、31bの各々に設定される。
位相比較器32は、基準信号と比較信号の位相を比較し、比較結果を制御信号生成部33に出力する。以下の説明では、位相比較器32は、基準信号の位相が比較信号の位相よりも早い場合に「1」を制御信号生成部33に出力し、基準信号と比較信号の位相が一致する場合に「0」を制御信号生成部33に出力するものとする。また、位相比較器32は、基準信号の位相が比較信号の位相よりも遅い場合に「−1」を制御信号生成部33に出力するものとする。
制御信号生成部33は、フィルタ定数を記憶している。制御信号生成部33は、フィルタ定数以上の数の比較結果が入力されると、フィルタ定数と同じ数の比較結果の移動平均を求める。例えば、フィルタ定数が3の場合、制御信号生成部33は、最初に入力された値から3番目に入力された値までの平均値を求める。制御信号生成部33は、最初に入力された比較結果から3番目に入力された比較結果までの平均値をキャリア生成部28bに出力した後で、2番目に入力された比較結果から4番目に入力された比較結果までの平均値を算出し、キャリア生成部28bに出力する。以下、基準信号と比較信号の間で位相を比較した結果を表す値の移動平均値のことを「制御信号」と記載することがある。制御信号生成部33は、例えば、ループフィルタとすることができる。なお、フィルタ定数は、装置内周波数制御部30の外部から設定される。制御信号生成部33は、制御信号をキャリア生成部28bに出力する。
キャリア生成部28bは、制御信号生成部33から入力された制御信号が正の値である場合、キャリアC2の周波数を高くする。一方、キャリア生成部28bは、制御信号が負の値である場合はキャリアC2の周波数を低くし、制御信号の値が「0」である場合はキャリアC2の周波数を変更しない。なお、キャリア生成部28bは、予め、周波数の変動量を記憶しているものとする。
図8は、送信機におけるキャリアの周波数精度の調整例を示す。以下、図7と図8を参照しながら、代表キャリアC1の発振周波数が100MHz、キャリアC2の発振周波数が250MHzである場合を例として、装置内周波数制御部30の動作を説明する。
装置内周波数制御部30が動作する前は、例えば、図8(a)に示すように、送信機20で生成されたキャリアの周波数と周波数精度は以下のとおりであるとする。
キャリアC1=100MHz−200Hz (周波数精度:−2ppm)
キャリアC2=250MHz+2kHz (周波数精度:+8ppm)
ここでは、キャリアC1、C2のいずれも1MHzに近い周波数になるように分周されるものとする。すなわち、分周器31aに設定される分周比は100分周、分周器31bに設定される分周比は250分周であるものとする。
分周器31aは、キャリア生成部28aで生成された100MHz−200Hzの周波数の信号を100分周し、1MHz−2Hzの基準信号を生成する。分周器31aは、基準信号を位相比較器32に入力する。一方、分周器31bは、キャリア生成部28bで生成された250MHz+2kHzの周波数の信号を250分周し、1MHz+8Hzの比較信号を生成する。分周器31bは、比較信号を位相比較器32に入力する。位相比較器32は、基準信号と比較信号の位相を比較する。ここでは、比較信号の周波数が基準信号の周波数よりも高いので、比較信号の位相の方が早くなっている。そこで、位相比較器32は、比較結果として「−1」を制御信号生成部33に出力する。
分周器31a、31b、位相比較器32の動作が繰り返されることにより、制御信号生成部33への比較結果の入力が繰り返される。制御信号生成部33は、フィルタ定数以上の数の比較結果が入力されると、制御信号を計算し、キャリア生成部28bに出力する。ここでは、キャリア生成部28bは、制御信号生成部33から入力された値が負の値であるので、キャリア生成部28bはキャリアC2の周波数を低くする。
キャリア生成部28bで周波数が低く変更されたキャリアC2が分周器31bに入力されると、分周器31bは、再度、入力された信号を250分周して、比較信号を生成する。分周器31bから新たな比較信号が位相比較器32に入力されると、位相比較器32は比較結果を制御信号生成部33に出力する。制御信号生成部33は、さらに制御信号を生成してキャリア生成部28bに出力し、キャリア生成部28bは、制御信号に応じた処理を行う。その結果、キャリアC2の周波数は、250MHz−500Hz(周波数精度:−2ppm)に変更される。すなわち、装置内周波数制御部30の処理により、図8(a)から図8(b)に示すように、キャリアC2の周波数精度がキャリアC1の周波数精度と一致するまで、キャリアC2の周波数が変更される。
図9は、2つのキャリアの周波数精度を一致させるときに行われる動作の例を説明するフローチャートを示す。図9は動作の例であり、例えば、ステップS1〜S3の順序は任意に変更される場合がある。また、ここでは、制御信号生成部33は、ループフィルタであるものとする。まず、フィルタ定数、キャリア生成部28a、28bで生成されるキャリアの発振周波数(F1、F2)、分周器31a、31bの分周比が設定される(ステップS1〜S3)。次に、キャリア生成部28aで生成された代表キャリアが装置内周波数制御部30に入力される(ステップS4)。すると、分周器31aは、代表キャリアを分周して基準信号を生成する(ステップS5)。さらに、代表キャリアではないキャリアをキャリア生成部28bから装置内周波数制御部30に入力する(ステップS6)。分周器31bは、キャリア生成部28bから入力されたキャリア信号を分周することにより、比較信号を生成する(ステップS7)。位相比較器32は、分周器31aで生成された基準信号と分周器31bで生成された比較信号の位相を比較し、基準信号の位相の方が比較信号の位相より早いかを判断する(ステップS8、S9)。基準信号の位相の方が比較信号の位相よりも早い場合、位相比較器32は、制御信号生成部33(ループフィルタ)に比較結果を表す値「1」を出力する(ステップS10)。基準信号の位相の方が比較信号の位相よりも早くない場合、位相比較器32は、基準信号の位相の方が比較信号の位相よりも遅いかを判断する(ステップS11)。基準信号の位相の方が比較信号の位相よりも遅い場合、位相比較器32は、制御信号生成部33(ループフィルタ)に比較結果を表す値として「−1」を出力する(ステップS12)。一方、基準信号の位相と比較信号の位相が一致する場合、位相比較器32は、比較結果を表す値として「0」を通知する。制御信号生成部33は、位相比較器32から通知された値を用いて移動平均を計算し、制御信号とする。制御信号の値が正の場合、キャリア生成部28bは、キャリアC2の周波数を高くする(ステップS13でYes、ステップS14)。一方、制御信号の値が0以下の場合、キャリア生成部28bは、制御信号の値が負であるかを確認する(ステップS15)。制御信号の値が負の場合、キャリア生成部28bは、キャリアC2の周波数を低くする(ステップS16)。一方、制御信号の値が0である場合、キャリア生成部28bはキャリアC2の周波数を変更しない。
〔受信機〕
図10は、受信機40の構成の例を示す。受信機40は、装置内周波数制御部30、アンテナ41、直交復調部42、無線フレーム同期部43、キャリア生成部44、シンボル判定部45、取得部46、フィルタ定数制御部47、および、装置間周波数制御部50を備える。
アンテナ41(41a、41b)は、送信機20から送信されてきた送信信号を受信する。直交復調部42(42a、42b)は、受信した信号を複素キャリア信号で直交検波し、受信ベースバンド信号(複素信号)に変換する。無線フレーム同期部43(43a、43b)は、受信ベースバンド信号に対して、シンボル同期とフレーム同期を確立する。さらに、無線フレーム同期部43は、受信ベースバンド信号をパイロットシンボルと、搬送波再生された情報シンボルに分離する。無線フレーム同期部43は、パイロットシンボルを装置間周波数制御部50に出力し、情報シンボルをシンボル判定部45に出力する。シンボル判定部45(45a、45b)は、情報シンボルを情報ビットに変換する。取得部46は、シンボル判定部45a、45bから入力された情報ビットを結合して、送信機20から送信されてきたデータ(情報ビット)を取得する。フィルタ定数制御部47は、装置内周波数制御部30に含まれている制御信号生成部33に設定されるフィルタ定数の時定数を制御する。
キャリア生成部44(44a、44b)は、複素キャリア信号を生成する。つまり、キャリア生成部44aは直交する2つのキャリアを生成し、キャリア生成部44bも同様である。さらに、キャリア生成部44aは、装置間周波数制御部50から入力された制御信号に基づいて、キャリア信号の周波数を調整する。一方、キャリア生成部44bは、装置内周波数制御部30から入力された制御信号に基づいて、キャリア信号の周波数を調整する。
装置内周波数制御部30は、送信機20に備えられた装置内周波数制御部30と同様であるが、制御信号生成部33のフィルタ定数はフィルタ定数制御部47によって制御される。フィルタ定数制御部47は、予め、複数のフィルタ定数を記憶しているものとする。フィルタ定数制御部47は、通信が開始された直後はフィルタ定数の時定数を小さくすることにより、装置内周波数制御部30が制御信号を生成する間隔を短くする。一方、送信機20と受信機40の間での周波数の調整が進んで、送信機20と受信機40の代表キャリア同士の周波数の微調整が行われる場合、フィルタ定数制御部47は、フィルタ定数の時定数を大きくする。つまり、フィルタ定数制御部47は、装置内周波数制御部30を用いた周波数の調整の頻度を、通信が開始された直後は高くし、周波数の調整が進んだ後は低くする。このため、キャリアC1とC2の間での周波数の調整が進んだ後に、代表キャリアの通信状況が劣化してもキャリアC2の通信状況も劣化することを防いでいる。
装置間周波数制御部50は、送信機20から受信した代表キャリアのパイロットシンボルを取得すると、パイロットシンボルに基づいて、送信機20の代表キャリアの周波数と受信機40の代表キャリアの周波数の間の偏差を解消する。
以下、受信機40が受信できるキャリアについての周波数精度の調整と、送信機20と受信機40の間での周波数の調整について詳しく説明する。
受信機40での周波数精度の調整も、送信機20と同様に行われる。例えば、図11(a)に示すように、受信機40で生成されたキャリアの周波数と周波数精度は以下のとおりであるとする。
キャリアC1=100MHz+100Hz (周波数精度:+1ppm)
キャリアC2=250MHz−1kHz (周波数精度:−4ppm)
装置内周波数制御部30の分周器31aは、キャリアC1を分周して基準信号を生成し、分周器31bは、キャリアC2を分周して比較信号を生成する。さらに、制御信号生成部33は基準信号と比較信号の位相を比較した結果に基づいて制御信号を生成する。キャリア生成部44bは、制御信号を用いてキャリアC2の周波数を変更する。周波数の変更方法等は、図7〜図9を参照しながら説明した方法と同様である。キャリア生成部44bでの調整によって、キャリアC2の周波数は、250MHz+250Hz(周波数精度:+1ppm)に変更される。周波数精度が調整された結果を図11(b)に示す。
次に、受信機40が送信機20からフレームを受信したときに行われる周波数偏差の解消について説明する。ここでは、図12(a)を参照しながら、データを表す情報ビットがQPSK(quadrature phase shift keying)で変調されており、パイロットシンボルも情報シンボルと同じ値のうちの予め決められたシンボルである場合を例として説明する。ここで、情報ビットは2ビットずつ組にして、以下のように複素平面上にマッピングされる。
ビット列00:座標(I,Q)=(+1/√2,+1/√2)
ビット列10:座標(I,Q)=(−1/√2,+1/√2)
ビット列11:座標(I,Q)=(−1/√2,−1/√2)
ビット列01:座標(I,Q)=(+1/√2,−1/√2)
以下の説明では、パイロットシンボルは、「00」のビット列と同じ(+1/√2,+1/√2)としてマッピングされているものとする。なお、QPSKは、送信機20と受信機40の間での通信に用いられる変調方法の一例である。送信機20と受信機40の間での通信には、QAM(quadrature amplitude modulation)などの任意の一次変調が用いられる場合がある。また、CDM(Code Division Multiplexing)、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)等の二次変調が用いられる場合もある。
図12(b)は、パイロットシンボルの検出例を表す。以下の説明では、送信機20と受信機40のいずれで生成されたキャリアであるかを判別しやすくするために、送信機20で生成されたキャリアの符号の末尾をt、受信機40で生成されたキャリアの符号の末尾をrとする。無線フレーム同期部43aからパイロットシンボルが入力されると、装置間周波数制御部50は、前に入力されたパイロットシンボルと新たに入力されたパイロットシンボルの間で位相回転した量を求める。さらに、装置間周波数制御部50は、1秒あたりの位相回転量を計算する。例えば、シンボルレートがR(baud)で、(M+1)シンボルごとにパイロットシンボルが含まれるフレームが処理されている場合について説明する。
図12(b)に示すように、パイロットシンボルP0が(+1/√2,+1/√2)の位置に配置されていたとする。パイロットシンボルP0の次に、装置間周波数制御部50は、パイロットシンボルP1を無線フレーム同期部43aから取得したとする。また、パイロットシンボルP1は、パイロットシンボルP0の位置からX度回転した位置にあるとする。パイロットシンボルの回転量を認識すると、装置間周波数制御部50は、1秒あたりの回転量を求める。
まず、パイロットシンボル間での位相の変化量を回転量に変更すると次のようになる。
パイロットシンボル間での位相回転量=(X°/360°)回転
次に、シンボルレートがR(baud)であるため、1シンボルの受信にかかる時間は、1/R(秒)である。パイロットシンボルは、M+1シンボルごとに受信されるので、パイロットシンボルP0が受信されてから、パイロットシンボルP1が受信されるまでの時間は、(M+1)/R(秒)である。従って、1秒あたりの位相回転量Y(Hz)は、次式で表される。
Y=(X°/360°)/{(M+1)/R}(回転/秒)
=X×R/(360×(M+1))(Hz)
そこで、装置間周波数制御部50は、送信機20で生成されたキャリアC1tの周波数が受信機40で生成されたキャリアC1rの周波数よりもYHz高いと判断する。そこで、装置間周波数制御部50は、キャリア生成部44aにキャリアC1rの周波数をYHz高くするように要求する。キャリア生成部44aは、装置間周波数制御部50の要求に応じてキャリアC1rの周波数を変更する。周波数が変更された後のキャリアC1rは、キャリア生成部44aから直交復調部42aに出力され、パイロットシンボル1の次に受信されたパイロットシンボルの処理に用いられる。新たなパイロットシンボルが無線フレーム同期部43aから入力されると、装置間周波数制御部50は、前述の処理を繰り返す。
図13に、装置間周波数制御部50での処理に使用されるパイロットシンボル101(101a〜101g)の配置の例を示す。ここで、装置間周波数制御部50は、周波数の調整を開始したときは周波数の変更量が大きいため、近い位置に配置された複数のシンボルを用いて調整を行い、その後、処理に用いるパイロットシンボル101の間のシンボル数を大きくしていく。なお、周波数の変動が大きい場合の装置間周波数制御部50の処理を「引き込み処理」と記載することがある。また、引き込み処理が終了した後に行われる周波数の微調整を「追従処理」と記載することがある。図13に示すように、装置間周波数制御部50は、最初の引き込み処理は、フレームの先頭に含まれているパイロットシンボル101aを用いて行う。装置間周波数制御部50は、次に、M本の情報シンボル103を挟んだ後に含まれるパイロットシンボル101bと、フレームの先頭のパイロットシンボル101aを用いて引き込み処理を行う。その後も、図13に示すように、フレームの先頭のパイロットシンボルと合せて使用するパイロットシンボルの位置を変更しながら引き込み処理を継続する。また、装置間周波数制御部50は、周波数の変化量をキャリア生成部44aに指定する度に、指定した変化量を予め記憶している閾値と比較しているものとする。周波数の変化量が閾値以上の場合、装置間周波数制御部50は、引き込み処理を継続する。周波数の変化量が閾値を下回ると、装置間周波数制御部50は、キャリアの周波数の微調整、すなわち追従処理を開始する。装置間周波数制御部50は、追従処理を開始するときに、引き込み完了信号をフィルタ定数制御部47に出力する。引き込み完了信号が入力されると、フィルタ定数制御部47は、制御信号生成部33に設定されているフィルタ定数の時定数を大きくする。
例えば、送信機20の代表キャリアC1tの周波数は、図8に示すように100MHz−200Hz(周波数精度:−2ppm)であるとする。一方、受信機40の代表キャリアC1rは、図11(b)に示すように100MHz+100Hz(周波数精度:+1ppm)であるとする。この場合、キャリアC1tはキャリアC1rに比べて300Hz低い。従って、装置間周波数制御部50は、キャリア生成部44aに、キャリアC1rの周波数を低くすることを要求し、周波数の変化量も指定する。引き込み処理や追従処理が行われることにより、キャリア1Crは、100MHz−200Hzに設定される。
キャリア生成部44aがキャリアC1rの周波数を変更したため、キャリア生成部44bで生成されるキャリアC2rとキャリアC1rの周波数精度は一致しなくなる。キャリアC1rの周波数が装置間周波数制御部50の動作により変更された場合のキャリアC1rとC2rの周波数を図14(a)に示す。図14(a)の例では、キャリア1Crが100MHz−200Hzに変更されている。一方、キャリアC2rについては、図11(b)に示すように設定された後は周波数が変更されていないので、250MHz+250Hz(周波数精度:+1ppm)のままである。
図15は、信号の入力と出力の例を示す。図15に示すように、キャリア生成部44aは、装置間周波数制御部50の要求に従って周波数を変更した後のキャリアC1rを、直交復調部42aだけでなく、装置内周波数制御部30にも出力する。すると、分周器31aは、周波数が変更された後のキャリアC1aを分周することにより基準信号を生成する。例えば、分周器31aに設定されている分周比が100である場合、装置間周波数制御部50による調整が行われた後の基準信号の周波数は、1MHz−2Hzになる。一方、分周器31bの分周比が250のときの比較信号は、1MHz+1Hzとなる。基準信号と比較信号の周波数が異なるため、基準信号と比較信号の位相が一致しないので、制御信号生成部33は、図7〜図9を参照しながら説明した方法と同様の方法で制御信号を生成してキャリア生成部44bに出力する。キャリア生成部44bは、制御信号に基づいてキャリアC2rの周波数を変更することにより、キャリアC2rの周波数精度をキャリアC1rの周波数精度に一致させる。図14(a)の例では、キャリアC1rの周波数精度は−2ppmであるので、キャリアC2rの周波数精度も−2ppmになるように調整される結果、キャリアC2rの周波数は250MHz−500Hzとなる。装置内周波数制御部30による調整が終了した後のキャリアC1rとキャリアC2rの例を図14(b)に示す。
〔送信機と受信機の間での周波数偏差の解消〕
通信に使用されるキャリアの各々についての周波数偏差は、送信機20と受信機40の代表キャリア同士の周波数を一致させた後、送信機20と受信機40の各々において、代表キャリアとその他のキャリアの周波数精度を一致させることにより、解消される。図8と図14を比較しながら、代表キャリアではないキャリアでの周波数偏差が解消されることについて述べる。前述のとおり、装置間周波数制御部50により、図8に示す送信機20のキャリアC1tの周波数と、図14(a)に示すキャリアC1rの周波数は一致している。キャリアC2rの周波数は、装置内周波数制御部30とキャリア生成部44bにより、キャリアC1rと周波数精度が一致するように変更され、図14(b)に示すように、250MHz−500Hzになっている。一方、送信機20で生成されたC2tの周波数も、図8(b)に示すように、250MHz−500Hzである。
従って、本実施形態による送信機20と受信機40との間の通信では、通信に使用される個々のキャリアについて送信機20と受信機40の間でAFC処理をしなくても、代表キャリア以外のキャリアの間の周波数偏差が解消されている。代表キャリアではないキャリアの周波数偏差は、代表キャリアでのAFC処理が終わった後に、代表キャリアではないキャリアの周波数精度を代表キャリアの周波数精度と一致させることにより解消される。このため、代表キャリア以外のキャリアでは、図6(b)に示すように、代表キャリアを介して送受信されるフレームよりもパイロットシンボルの量が少なく、情報シンボルの量が多いフレームが送受信され、通信効率が向上される。
さらに、1つの通信において文書データに続けて動画データを送受信する場合などのように、通信の途中から通信量が増加して通信帯域が広げられる場合、追加される帯域と代表キャリアの周波数精度が一致しているので、迅速に通信を開始できる。つまり、追加されるキャリアについても、通信に使用される前に周波数精度が代表キャリアの周波数精度に合わせられているため、送信機20と受信機40の間で周波数が一致しているため、早く通信が開始され、通信効率が向上する。
なお、図14(a)及び図14(b)の説明においては、送信機側のキャリアC1tの周波数と受信機側のキャリアC1rの周波数が一致した後で送信機側のキャリアC2tの周波数と受信機側のキャリアC2rの周波数を一致させる形としているが、必ずしもC1tとC1rとが一致した後でC2tとC2rを一致させる形式をとらなくてもよい。C1rをC1tに一致させる途中ステップでC2rをC2tに一致さるステップを行い、これらを一つのサイクルとしてループさせて合わせていくことも可能である。
図16は、送信機20と受信機40の間で行われる通信の例を表すシーケンス図である。以下、図16を参照しながら通信の際に行われる周波数制御の例を説明する。なお、図16は処理の例である。例えば、手順(11)で装置間周波数制御部50による引き込み処理が終了する前に装置内周波数制御部30による処理も開始し、装置間周波数制御部50による調整と装置内周波数制御部30による調整を交互に行うように変形される場合がある。
(1)ユーザAは送信機20の電源を投入する。
(2)送信機20は、初期化によってキャリアの発振周波数や分周比などを設定する。
(3)送信機20の装置内周波数制御部30などの動作により、通信に使用可能なキャリアの周波数精度は代表キャリアの周波数精度と同じ値に調整される。
(4)ユーザBは、受信機40の電源を投入する。
(5)受信機40は、初期化によってキャリアの発振周波数や分周比などを設定する。また、フィルタ定数制御部47は、値が小さいフィルタ定数を、受信機40に含まれている制御信号生成部33に設定する。
(6)装置内周波数制御部30により、通信に使用可能なキャリアの周波数精度が、受信機40の代表キャリアの周波数精度と同じ値に調整される。
(7)ユーザAが受信機40へのデータの送信を送信機20に要求する。
(8)受信機40が呼び出され、ユーザBは受信機40に受信の開始を要求する。
(9)送信機20は、代表キャリアを介してフレームを受信機40に送信する。
(10)送信機20は、代表キャリアではないキャリアを介してフレームを受信機40に送信する。
(11)受信機40は、代表キャリアを介して受信したフレームのパイロットシンボルを用いて、装置間周波数制御部50の動作により、受信機40の代表キャリアの周波数を、送信機20の代表キャリアの周波数に一致させる。このときの処理は、周波数の変動量が大きく、引き込み処理が行われる。
(12)装置内周波数制御部30は、手順(11)の処理が終わると、受信機40で用いられる全てのキャリアの周波数精度を代表キャリアの周波数精度に合わせる。
(13)フィルタ定数制御部47は、フィルタ定数の時定数を大きくする。
(14)フレームの最初に配置されたパイロットシンボルの位置と、併せて使用するパイロットシンボルの位置の差を大きくして、装置間周波数制御部50による調整が行われる。また、装置内周波数制御部30による周波数の調整も並行して行われる。
(15)ユーザAが送信を終了することを送信機20に指示する。
(16)送信機20からの送信データを全て受信すると、ユーザBは受信の終了を受信機40に指示する。
<第2の実施形態>
第2の実施形態では、通信の状況に応じて、代表キャリアを変更することができる実施形態について説明する。図17に第2の実施形態で行われる通信の例を示す。無線機60aと無線機60bは、キャリアC1とC2を介してデータを送受信する。この例では、送受信は、Time Division Duplex(TDD)によって行われるものとする。また、以下の説明では、キャリアノイズ比(C/N比)に基づいて、代表キャリアの切り替えを行うかが判断されるものとする。
無線機60は、送受切替制御61、切替スイッチ62(62a、62b)、バッファ64、送信機70、受信機80、アンテナ63(63a、63b)を備える。送受切替制御61は、送信のタイミングを送信機70、切替スイッチ62a、62bに通知する。送信のタイミングの例を図18(a)に示す。無線機60aに備えられている送受切替制御61は、無線機60aから無線フレームが送信されるタイミングを、無線機60aの送信機70、切替スイッチ62a、62bに通知する。同様に、送受切替制御61は、無線機60bの無線フレームが送信されるタイミングに合わせて、受信機80、切替スイッチ62a、62bに受信を指示する。切替スイッチ62は、送受切替制御61からの指示に従って、送信機70と受信機80のいずれかをアンテナ63に接続する。バッファ64は、送信機70や受信機80などから入力された情報を格納する。例えば、受信機80は、対向装置の受信状況を表す情報を対向装置から受信すると、受信した情報をバッファ64に格納する。送信機70は、バッファ64に格納されている情報に基づいて、代表キャリアを変更するための処理を開始することができる。
図19は、送信機70の構成の例を示す図である。送信機70は、パイロット生成部71(71a、71b)、代表キャリア制御部72を備える。さらに、送信機70は、情報ビット分配部21、シンボルマッピング部22、無線フレーム生成部25、波形整形部26、直交変調部27、キャリア生成部28、装置内周波数制御部30を備える。情報ビット分配部21、シンボルマッピング部22、無線フレーム生成部25、波形整形部26、直交変調部27、キャリア生成部28、装置内周波数制御部30の動作は、第1の実施形態と同様である。
パイロット生成部71は、AFC用のパイロットシンボルと制御に用いられるパイロットシンボルの両方を生成することができ、無線フレーム生成部25に出力する。代表キャリア制御部72は、代表キャリアとして使用するキャリアを介して送信されるフレームを生成する無線フレーム生成部25に、図18(b)に示すようなフレームを生成するように要求する。代表キャリアを介して送受信されるフレームには、パイロットシンボル101(101a〜101g)、情報シンボル103(103a〜103f)の他に、監視制御情報102が含まれる。
図20は、監視制御情報102に含まれる情報の例を説明するテーブルである。監視制御情報102は、無線機60で受信したキャリアのC/N比、送信機70がフレームを送信するときに用いる代表キャリア(送信代表キャリア)の番号、受信機80がフレームを受信するときに用いる代表キャリア(受信代表キャリア)の番号を含む。さらに、代表キャリアの切り替えのための動作が開始されている場合、監視制御情報102には、代表キャリアに切り替えられる候補となるキャリアを特定する情報が含まれる。以下の説明では、代表キャリアに切り替えられる候補となるキャリアを「代表キャリア候補」と記載する。代表キャリア候補を介して送信されるフレームは、代表キャリアを介して送信されるフレームと同様の情報要素を含む。すなわち、代表キャリアの切り替えが行われる場合、代表キャリア制御部72は、代表キャリア候補を介して送信されるフレームを生成する無線フレーム生成部25にも、図18(b)に示すフレームを生成するように要求する。一方、代表キャリアと代表キャリア候補のいずれでもないキャリアを介して送信されるフレームを生成する無線フレーム生成部25には、代表キャリア制御部72は、図18(c)に示すようにパイロットシンボルの数が少ないフレームの生成を要求する。無線フレーム生成部25は、代表キャリア制御部72からの指示に従って、無線フレームを生成する。
さらに、監視制御情報102は、代表キャリア候補が設定されたことを通知する信号も含む。以下の記載では、代表キャリア候補が設定されたことを通知する信号を「代表キャリア切替猶予フラグ」と記載することがある。代表キャリア切替猶予フラグが1に設定されている期間は、代表キャリアと代表キャリア候補を介して、監視制御情報102などを含むフレームが送信されている。従って、代表キャリア切替猶予フラグの値が1の間は、受信側の無線機60は受信代表キャリアを変更することができる。
代表キャリア制御部72は、バッファ64から、対向装置の受信機80で測定されたC/N比と、対向装置の受信機70が代表キャリアとしているキャリアを特定する情報を読み出す。代表キャリア制御部72は、代表キャリアのC/N比と代表キャリアではないキャリアのC/N比を比較して代表キャリアを切り替えるかを判断する。代表キャリアを切り替える場合、代表キャリア制御部72は、無線フレーム生成部25a、25bに代表キャリアの切り替えのための処理を開始することを通知する。また、対向装置で代表キャリアが切り替えられると、代表キャリア制御部72は、無線フレーム生成部25a、25bに代表キャリアの切り替えが終了したことを通知する。
図21は、受信機80の構成の例を示す図である。受信機80は、代表キャリア制御部81、スイッチ82(82a、82b)、C/N測定部83、装置内周波数制御部84を備える。受信機80は、さらに、直交復調部42、無線フレーム同期部43、キャリア生成部44、シンボル判定部45、取得部46、装置間周波数制御部50を備える。直交復調部42、無線フレーム同期部43、キャリア生成部44、シンボル判定部45、取得部46、装置間周波数制御部50の動作は、第1の実施形態と同様である。
代表キャリア制御部81は、受信したフレームに含まれている代表キャリアの識別子に従って、受信した代表キャリアがキャリア生成部44aと44bのいずれで生成されたキャリアと同じ帯域のキャリアであるかを判定する。さらに、監視制御情報102に含まれる代表キャリア切替猶予フラグが1の場合、代表キャリア制御部81は、代表キャリアを切り替える。また、代表キャリア制御部81は、受信した代表キャリアを識別する識別子をバッファ64に記憶する。代表キャリア制御部81は、受信した代表キャリアの帯域に基づいて、スイッチ82a、82bに切り替えを要求する。さらに、代表キャリア制御部81は、受信した代表キャリアと同じ帯域のキャリアの調整に用いられる装置間周波数制御部50に対して、周波数の調整を要求する。一方、代表キャリアではないキャリアと同じ帯域のキャリアの調整に用いられる装置間周波数制御部50に対しては、動作の中断を要求する。
また、代表キャリア制御部81は、装置内周波数制御部84に、代表キャリアが変更されたことと、代表キャリアを識別する識別子を通知する。装置内周波数制御部84は、代表キャリア制御部81から通知された識別子で識別されるキャリアを分周して得られた信号を基準信号、代表キャリアではないキャリアを分周して得られた信号を比較信号とする。処理装置内周波数制御部84は、基準信号と比較信号を装置内周波数制御部30と同様に処理する。また、装置内周波数制御部84の構成は、図7に示した装置内周波数制御部30と同様である。
スイッチ82は、代表キャリア制御部81からの要求に応じて、装置間周波数制御部50と装置内周波数制御部84のいずれかとキャリア生成部44を接続する。装置間周波数制御部50とキャリア生成部44がスイッチ82を介して接続されている場合、キャリア生成部44は、装置間周波数制御部50からの要求に応じて周波数を調整する。一方、装置内周波数制御部84がキャリア生成部44にスイッチ82を介して接続されている場合、キャリア生成部44は、装置内周波数制御部84からの要求に応じて周波数を調整する。
C/N測定部83は、受信機80が受信できる各キャリアについて、キャリア信号の強度のノイズの強度に対する比を求める。C/N測定部83は、得られたC/N比を、キャリアの識別子と対応付けてバッファ64に記憶する。
図22〜図24は、無線機60aと無線機60bの間での通信の例を説明する図である。以下、図22〜図24を参照しながら第2の実施形態について説明する。以下の説明では、無線機60aと60bのいずれで生成されたキャリアであるかを判別しやすくするために、無線機60aの送信機70aで生成されたキャリアの符号の末尾をa、無線機60bの送信機70bで生成されたキャリアの符号の末尾をbとする。また、無線機60bの受信機80bにおいて、受信した情報シンボルを取得するために生成されるキャリアは、キャリアの符号の末尾にrを加えて表現するものとする。例えば、キャリアC1aから情報シンボルを取得するために受信機80bが生成するキャリアは、キャリアC1brと表記する。
図22は、無線機60の間でC/N比を通知する方法の例を示す。まず、図22を参照しながら手順(1)〜(5)について説明する。
(1)無線機60aは、キャリアC1aとC2aを用いて無線機60bにフレームを送信している。この時点では、キャリアC1aが代表キャリアとなっているものとする。また、監視制御情報102は、以下のようになっているものとする。
送信代表キャリア : キャリアC1a
代表キャリア切替猶予フラグ : 0
送信代表キャリア候補 : なし
キャリアC1bのC/N測定値: X
キャリアC2bのC/N測定値: Y
受信代表キャリア : キャリアC1b
無線機60bが備える受信機80bは、キャリアC1aの周波数に基づいて、AFC処理を行う。従って、代表キャリア制御部81は、装置間周波数制御部50a(図21)に動作することを求めており、装置間周波数制御部50bの動作を停止させている。スイッチ82aは、装置間周波数制御部50aとキャリア生成部44aを接続している。また、スイッチ82bは、装置内周波数制御部84とキャリア生成部44bを接続する。この設定により、装置間周波数制御部50aは、キャリアC1brの周波数をキャリアC1aと一致するように調整する。さらに、キャリアC2brの周波数精度は、装置内周波数制御部84によって、キャリアC1brの周波数精度に合わせられる。この処理により、キャリアC2brの周波数は、キャリアC2aの周波数と同じ周波数となる。
一方、無線機60bのC/N測定部83は、キャリアC1aとC2aの各々についてC/N比を求めている。ここで、フレームを送信している間にキャリアC1aがノイズの影響を受けたことにより、無線機60bでのキャリアC1aのC/N比が、キャリアC2aのC/N比よりも悪かったものとする。
(2)無線機60bのC/N測定部83は、キャリアC1aとC2aの各々について求めたC/N比を、バッファ64に書き込む。
(3)送信機70bは、バッファ64からキャリアC1aとC2aのC/N比を読み出す。
(4)無線機60bは、キャリアC1bとC2bを介して、無線機60aにフレームを送信する。このとき、送信機70bは、キャリアC1bを代表キャリアとして使用しているものとする。無線機60bは、送信機70bを用いて、無線機60bでのキャリアC1aとC2aのC/N比を無線機60aに通知する。
(5)受信機80aは、受信したフレームの監視制御情報102を確認し、無線機60bでのキャリアC1aとC2aのC/N比を、無線機60aのバッファ64に格納する。送信機70aは、バッファ64から無線機60bでのキャリアC1aとC2aのC/N比を取得する。この処理により、送信機70aは、キャリアC1aのC/N比がキャリアC2aより悪いことを認識する。さらに、受信機80aに含まれるC/N測定部83は、キャリアC1bとC2bについてC/N比を求め、得られた値を、バッファ64を介して送信機70aに通知する。
図23は、代表キャリアの変更方法の例を説明する図である。以下、図23を参照しながら手順(6)〜(13)を説明する。
(6)無線機60aが備える代表キャリア制御部72は、キャリアC1aのC/N比がキャリアC2aのC/N比より悪いため、代表キャリアをキャリアC1aからキャリアC2aに変更することを決定する。そこで、代表キャリア制御部72は、キャリアC2aを代表キャリア候補に指定し、キャリアC2aを使って送信されるフレームを生成する無線フレーム生成部25に、図18(b)に示すような監視制御情報102等を含むフレームを生成するように要求する。
(7)無線機60aは、送信機70aを用いて、キャリアC1aとC2aの各々から、監視制御情報102を含むフレームを無線機60bに送信する。ここで送信されるフレームに含まれている監視制御情報102は以下の通りであるものとする。
送信代表キャリア : キャリアC1a
代表キャリア切替猶予フラグ : 1
送信代表キャリア候補 : キャリアC2a
キャリアC1bのC/N測定値: W
キャリアC2bのC/N測定値: Z
受信代表キャリア : キャリアC1b
(8)無線機60bは、受信機80bを用いて、無線機60aから送信されたフレームを受信する。代表キャリア制御部81は、監視制御情報102の代表キャリア切替猶予フラグが「1」であることを確認すると、代表キャリアの切り替えが可能であると判断する。
(9)また、代表キャリア制御部81は、キャリアC1aとキャリアC2aの両方から代表キャリア監視制御情報102やAFC処理に用いられるパイロットシンボルが含まれているフレームを受信していることを確認する。すると、代表キャリア制御部81は、受信代表キャリアをキャリアC2aに切り替える。すると、代表キャリア制御部81は、装置間周波数制御部50bに動作することを求め、装置間周波数制御部50aには、動作の停止を要求する。スイッチ82bは、代表キャリア制御部81からの指示により、装置間周波数制御部50bとキャリア生成部44bが接続されるように、接続を切り替える。また、スイッチ82aは、代表キャリア制御部81からの指示に従って、装置内周波数制御部84とキャリア生成部44aを接続する。この設定により、装置間周波数制御部50bは、キャリアC2brの周波数をキャリアC2aの周波数と同じ周波数になるように調整する。さらに、キャリアC1brの周波数精度がキャリアC2brの周波数精度に合わせられることにより、キャリアC1brの周波数は、キャリアC1aの周波数に一致する。このように、代表キャリアの切り替えが行われると、受信機80bは、キャリアC2aの周波数に基づいて、AFC処理を行う。
(10)代表キャリア制御部81は、送信機70bが備える代表キャリア制御部72に、受信代表キャリアをキャリアC1aからキャリアC2aに変更したことを通知する。
(11)送信機70bは、無線機60bから無線機60aへの代表キャリアであるキャリアC1bを用いて、無線機60bでの受信代表キャリアがキャリアC1aからキャリアC2aに変更されたことを通知する。すなわち、代表キャリアを介して無線機60bから無線機60aへ送信されたフレームの監視制御情報102には「受信代表キャリア=キャリアC2a」が記録されている。
(12)無線機60aの受信機80aは、無線機60bから受信したフレームの監視制御情報102に基づいて、無線機60bでの受信代表キャリアがキャリアC2aであることを認識する。
(13)受信機80aは、バッファ64を介して送信機70aに、無線機60bでの受信代表キャリアがキャリアC2aであることを通知する。代表キャリア制御部72は、前回フレームを送信したときの代表キャリア候補と、無線機60bでの受信代表キャリアを比較し、両者が一致することを認識する。すなわち、代表キャリア制御部72は、無線機60bにおいて、受信代表キャリアが変更されたことを認識する。
図24は、代表キャリアが変更された際に行われる処理の例を説明する図である。以下、図24を参照しながら手順(14)〜(15)について述べる。
(14)無線機60bで受信代表キャリアが変更されたため、送信代表キャリア候補のキャリアを、送信代表キャリアに変更する。代表キャリア制御部72は、無線フレーム生成部25aに、生成するフレームに監視制御情報102を含めず、パイロットシンボルの数も減らして、図18(c)に示すフレームを生成することを要求する。また、代表キャリア制御部72は、無線フレーム生成部25bに以下の監視制御情報102を含むフレームを生成するように要求する。
送信代表キャリア : キャリアC2a
代表キャリア切替猶予フラグ : 0
送信代表キャリア候補 : なし
キャリアC1bのC/N測定値: Z
キャリアC2bのC/N測定値: W
受信代表キャリア : キャリアC1b
代表キャリア制御部72は、送信機70aは、キャリアC2aを代表キャリアとしてフレームを無線機60bに送信する。
(15)無線機60bは、キャリアC1aとC2aを介してフレームを受信する。無線機60bが備える受信機80bは、キャリアC2aの周波数に基づいて、AFC処理を行う。
図25は、送信代表キャリアを変更する場合の無線機60の動作の例を説明するフローチャートである。図25のフローチャートは、図22〜図24を参照しながら説明した無線機60aの動作を表している。なお、図25は動作の例であり、例えば、ステップS21とS22の順序を変更するなどの変形が加えられる場合がある。
代表キャリアに指定されたキャリアを介して送受信されるフレームを生成する無線フレーム生成部25は、監視制御情報102を含むフレームを生成する。監視制御情報102は、送信代表キャリア=C1a、送信代表キャリア切替猶予フラグ=0である(ステップS21)。次に、装置内周波数制御部30の処理により、キャリアC1aの周波数精度を基準としてキャリアC2aの周波数精度が調整される(ステップS22)。無線機60aは、キャリアC1a、C2aを用いて、フレームを無線機60bに送信する(ステップS23、S24)。受信機80aは、無線機60bから送信代表キャリアを介して送られてきたフレームを受信し、無線機60aからの送信に用いられた各キャリアのC/N比を取得する(ステップS25、S26)。代表キャリア制御部81は、代表キャリアのC/N比が代表キャリアではないキャリアのC/N比よりも小さいかを確認する(ステップS27)。代表キャリアのC/N比が代表キャリアではないキャリアのC/N比以上の場合、ステップS23以降の処理が繰り返される(ステップS27でNo)。
一方、代表キャリアのC/N比が代表キャリアではないキャリアのC/N比よりも小さい場合、代表キャリア制御部72は、無線機60bに送信するフレームに含まれる監視制御情報102を次のように設定する。送信代表キャリア=C1a、送信代表キャリア候補=C2a、代表キャリア切替猶予フラグ=1(ステップS27でYes、ステップS28)。その後、無線機60aは、キャリアC1a、C2aを用いて、監視制御情報102を含むフレームを無線機60bに送信する(ステップS29、S30)。受信機80aは、無線機60bから受信したフレームを確認し、無線機60bでの受信代表キャリアがC2aに変更されたかを確認する(ステップS31〜S33)。受信代表キャリアの変更が終わっていない場合、ステップS28以降の処理が繰り返される(ステップS33でNo)。受信代表キャリアの変更が終わった場合、新たな代表キャリアC2aを介して送受信されるフレームを生成する無線フレーム生成部25は、監視制御情報102を含むフレームを生成する。監視制御情報102は、送信代表キャリア=C2a、送信代表キャリア切替猶予フラグ=0である(ステップS34)。無線機60aは、キャリアC1a、C2aを用いて、フレームを無線機60bに送信する(ステップS35、S36)。
図26は、受信代表キャリアを変更する場合の無線機60の動作の例を説明するフローチャートである。図26のフローチャートは、図22〜図24を参照しながら説明した無線機60bの動作を表している。
受信機80bは、無線機60aから送信された代表キャリアを受信し、フレームに含まれている監視制御情報102を取得する(ステップS41、S42)。C/N測定部83は、各キャリアについてC/N比を測定し、測定結果を送信機70bに通知する(ステップS43)。代表キャリア制御部72は、無線機60bから無線機60aに送信されるフレームの監視制御情報102に、受信機80aから通知されたC/N比を含める(ステップS44)。送信機70bは、無線機60aにフレームを送信する(ステップS45)。
次に受信機80aで代表キャリアを介してフレームを受信すると、代表キャリア制御部81は、監視制御情報102の内容を確認する。ここでは、送信代表キャリア=C1a、送信代表キャリア候補=C2a、代表キャリア切替猶予フラグ=1であるとする(ステップS46、S47)。すると、代表キャリア制御部81は、受信代表キャリアをキャリアC1aからキャリアC2aに変更する(ステップS48)。また、代表キャリア制御部81は、スイッチ82の設定を変更することにより、基準信号の元となるキャリアをC2brに変更する(ステップS49)。さらに、装置間周波数制御部50で周波数を調整するキャリアをキャリアC1brからキャリアC2brに変更する(ステップS50)。
送信機70bは、無線機60aに送信されるフレームに含まれる監視制御情報102の受信代表キャリアをキャリアC2aに変更する(ステップS51)。送信機70bは、監視制御情報102を含むフレームを無線機60aに送信することにより、受信代表キャリアを切り替えたことを通知する(ステップS52)。次に無線機60aからフレームを受信する際には、代表キャリアとしてキャリアC2aが用いられており、監視制御情報102には無線機60aからの送信代表キャリアがキャリアC2aに設定されている(ステップS53、S54)。
ここで、ステップS25、S26は、図22の(5)に相当し、ステップS27は図22の(1)に当たる。ステップS43〜S45は、図22の(2)〜(4)に当たる。ステップS28〜S30は図23の(6)、(7)に当たり、ステップS46〜S52は、図23の(8)〜(11)に当たる。ステップS31〜S34は、図23の(12)、(13)に当たる。ステップS35〜S36は、図24の(14)に当たり、ステップS53〜S54は、図24の(15)に当たる。
代表キャリアの通信状況が大きく劣化すると、無線フレーム同期の精度が劣化するなどの理由から、フレームを受信した無線機60においてパイロットシンボルを特定することができないことがある。パイロットシンボルの特定に失敗すると情報シンボルをパイロットシンボルとして取り扱って装置間周波数制御部50による調整が行われることがある。装置間周波数制御部50の調整結果に合せて代表キャリアではないキャリアの周波数精度が調整されるので、パイロットシンボルの特定に失敗すると、通信に用いられる全てのキャリアの周波数の調整に失敗するおそれがある。本実施形態では、以上述べたように、代表キャリアのC/N比が劣化したときに代表キャリアを変更するため、代表キャリアの通信状況の劣化によって装置間の周波数の調整に失敗することを防ぐことができる。
なお、代表キャリアが変更されても、図19に示すように、送信機70での周波数精度の調整の基準はキャリアC1である。すなわち、本実施形態では、送信機70では、予め決められたキャリアを基準として周波数精度を調整する。受信機80は、代表キャリアを基準として、送信機70との間で周波数を調整する。受信機80は、データの取得に用いる代表キャリア(取得代表キャリア)の周波数を対向装置の送信代表キャリアの周波数に合わせる。さらに、受信機80は、受信に用いるキャリアの周波数精度を調整する。これらの処理により、装置間での周波数偏差が解消される。
<第3の実施形態>
図27は、第3の実施形態に係る送信機85の構成の例を示す。送信機85では、キャリアC1tとC2tが生成され、キャリアC1tが代表キャリアとして用いられるものとする。送信機85は、情報ビット分配部21、シンボルマッピング部22、パイロット生成部71、無線フレーム生成部25、波形整形部26、直交変調部27、キャリア生成部28、アンテナ29、装置内周波数制御部30を備える。情報ビット分配部21、シンボルマッピング部22、無線フレーム生成部25、波形整形部26、直交変調部27、キャリア生成部28、アンテナ29、装置内周波数制御部30の動作は、第1の実施形態と同様である。パイロット生成部71の動作は、第2の実施形態と同様である。なお、キャリアC1tは、キャリア生成部28aで生成され、キャリアC2tは、キャリア生成部28bで生成されるものとする。
図28は、第3の実施形態に係る受信機90の構成の例を示す。受信機90では、キャリアC1rとC2rが生成され、キャリアC1rが代表キャリアとして用いられるものとする。また、キャリアC1rは、キャリア生成部44aで生成され、キャリアC2rは、キャリア生成部44bで生成されるものとする。
受信機90は、AFC切替制御部91を備える。受信機90は、さらに、アンテナ41、直交復調部42、無線フレーム同期部43、キャリア生成部44、シンボル判定部45、取得部46、装置間周波数制御部50を備える。アンテナ41、直交復調部42、キャリア生成部44、シンボル判定部45、取得部46の動作は、第1の実施形態と同様である。無線フレーム同期部43aの動作は第1の実施形態と同様である。
受信機90は、装置間周波数制御部50aと50bを備える。装置間周波数制御部50aは、第1の実施形態で説明した動作と同様の動作により、受信機90で生成する代表キャリアC1rの周波数を、送信機85から受信した代表キャリアC1tの周波数に一致させる。装置間周波数制御部50aは、キャリアC1rの周波数とキャリアC1tの周波数を一致させるための引き込み処理が終了すると、引き込み完了通知をAFC切替制御部91に出力する。
AFC切替制御部91は、装置間周波数制御部50aでの引き込み処理が行われている間は、キャリアC2を生成するキャリア生成部44bを装置内周波数制御部30と接続する。一方、装置間周波数制御部50aでの処理が引き込み処理から追従処理に切り替わると、AFC切替制御部91は、装置間周波数制御部50bとキャリア生成部44bを接続する。装置間周波数制御部50bは、AFC切替制御部91により、キャリア生成部44bと接続されると動作する。
図29は、本実施形態で直交復調部42bや装置間周波数制御部50bで処理されるフレームの構成例を示す。図29に示すフレームは、先頭にAFC以外の処理に用いられるパイロットシンボル101aを含み、フレームの末尾に装置間周波数制御部50bによる追従処理での調整に用いられるパイロットシンボル101bを含むフレームを生成する。図29のフレームは代表キャリアではないキャリアを介して送受信されるので、無線フレーム生成部25bによって生成される。
図30は、第3の実施形態で行われる受信機90の動作を説明するフローチャートである。受信機90に電源が投入されると初期化が行われ、分周比の設定やキャリア生成部44で生成されるキャリアの周波数の設定などが行われる(ステップS61)。受信機90で生成されているキャリアの周波数精度が代表キャリアの周波数精度に合わせられ、受信が開始される(ステップS62、S63)。
次に、装置間周波数制御部50aは、受信機90で生成される代表キャリアC1rの周波数を、送信機から受信した代表キャリアC1tの周波数に合わせるための引き込み処理を行う(ステップS64)。さらに、装置内周波数制御部30は、受信機90で生成される各キャリアの周波数精度を代表キャリアの周波数精度に合わせる(ステップS65)。ここでは、装置内周波数制御部30は、キャリアC2rの周波数精度をキャリアC1rの周波数精度に一致させるために用いられる制御信号を生成し、AFC切替制御部91に出力する。AFC切替制御部91は、装置内周波数制御部30から入力された制御信号をキャリア生成部44bに出力する。AFC切替制御部91は、装置間周波数制御部50aから引き込み完了通知を受信したかを判断する(ステップS66)。引き込み完了通知が受信されるまでステップS64〜S66の処理が繰り返される。キャリアC1rの周波数を、キャリアC1tの周波数に合わせるための引き込み処理が終わると、装置間周波数制御部50aは引き込み完了通知をAFC切替制御部91に出力する(ステップS66でYes)。すると、装置間周波数制御部50aは、キャリアC1tの周波数に合わせてキャリアC1rの周波数を微調整するための追従処理を開始する(ステップS67)。引き込み完了通知が入力されると、AFC切替制御部91は、装置内周波数制御部30とキャリア生成部44bの接続を切断して、装置間周波数制御部50bとキャリア生成部44bを接続する(ステップS68)。その後は、受信機90で生成されるキャリアの各々について、送信機85で生成されたキャリアの周波数に合わせるための追従処理が行われる(ステップS69)。例えば、装置間周波数制御部50bでは、キャリア生成部44bで生成されるキャリアC2rを、送信機85から受信したキャリアC2tに一致させるための追従処理が行われる。一方、装置間周波数制御部50aでは、キャリアC1tの周波数に合わせてキャリアC1rの周波数を微調整するための追従処理が継続される。
このように、AFC切替制御部91によってキャリア生成部44に周波数を制御するための信号の入力元が切り替えられるので、引き込み処理が終わった後は、周波数追従処理が個々のキャリアについて行われる。このため、各キャリアのC/N比が不規則的に劣化しても全てのキャリアの周波数偏差が代表キャリアに引きずられて劣化するということはない。代表キャリアでの不規則的なC/N比の劣化により代表キャリア以外のキャリアの通信環境が劣化することを防ぐため、第1の実施形態では、制御信号生成部33に設定するフィルタ係数が変更されているが、本実施形態では、フィルタ係数は変更されない。このため、周波数の調整の進捗に合わせて複数のフィルタ係数を設定し直さなくても良い。
なお、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、様々に変形可能である。以下にその例をいくつか述べる。
たとえば、分周器31a、31bの分周比は、装置内周波数制御部30の外部から設定される場合がある。
図12(a)に示したパイロットシンボルのマッピング位置は例であり、パイロットシンボルは任意の情報シンボルと同じ位置に配置される場合がある。さらに、パイロットシンボルは、情報シンボルがマッピングされない位置に配置されても良い。パイロットシンボルがいずれの位置に配置される場合も、送信機20と受信機40の間では、予め、パイロットシンボルの配置を記憶しているものとする。第1の実施形態以外の実施形態で用いられるパイロットシンボルについても同様である。
さらに、図12(b)に示した例では、パイロットシンボルは半径=1の円上に分布しているが、受信信号にはノイズやゲインの影響があるため、パイロットシンボルが半径=1の円上に分布しない場合がある。なお、パイロットシンボルが半径=1の円上に分布しなくても、装置間周波数制御部50で行われるAFC処理には影響はない。
また、以上の実施形態では、2つのキャリアが用いられる通信装置についての説明をしたが、通信装置で生成されるキャリアの数や通信で使用されるキャリアの数は実装に応じて任意に変更され得る。また、通信装置で生成されるキャリアの数に合わせて、装置内周波数制御部30などの数も適宜、変更されうる。
さらに、第2の実施形態と第3の実施形態を組み合わせることもできる。