JP5742098B2 - 反射防止フィルム製造用金型の作製方法 - Google Patents
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第2に、技術的観点からしても、複数層による反射防止技術は光の干渉現象を利用するものであるため、反射防止効果が光の入射角や波長に大きく影響してしまい、望みどおりの反射防止効果を得ることが困難であるという問題点があった。
なお、上記モスアイ構造に用いられる凹凸パターンとしては、円錐形や四角錐形などの錐形体が一般的である。
前記不均一層が、表面が研磨されたことにより生じた加工変質層、部分的に欠けが生じた微細孔表層、及び、異物が付着した表層から選択される少なくとも1種であり、
前記ポーラスアルミナ膜形成工程が、0.1%シュウ酸水溶液を用いて電圧60Vで5分間陽極酸化を行う工程であり、
前記エッチング工程が前記アルミナ膜の一部をエッチングするものであって、10%リン酸水溶液を用いて50℃で5分間エッチングする工程であり、
前記微細孔形成工程が、少なくとも前記不均一層の厚み以上に前記金属基体のエッチングを伴うものであることを特徴とする、反射防止フィルム製造用金型の作製方法を提供する。
ここで、本発明の反射防止フィルム製造用金型の作製方法は、上記微細孔形成工程が、上記金属基体の表面に微細孔を有するアルミナ膜を形成するポーラスアルミナ膜形成工程と(図1(b))、上記アルミナ膜をエッチングすることにより上記微細孔の孔径を拡大するエッチング工程と(図1(c))を順次繰り返し実施することにより上記微細孔を形成するものである。
そして、本発明においては、上記微細孔形成工程においてエッチングされる厚みが少なくとも不均一層の厚み以上であることが好ましい。これは、換言すると金属基体1に当初存在していた不均一層1aが、上記微細孔形成工程においてすべて除去されることを意味するものである。
すなわち、例えば、図2に例示するように、ポーラスアルミナ膜形成工程と、エッチング工程とを複数回繰り返して実施することにより、当初は不均一層の影響により陽極酸化によって形成される微細孔の形状や配置が不均一になってしまったとしても、工程が繰り返されるにしたがって次第に形成される微細孔の形状や配置が均一化され、最終的には均一な微細孔を形成することができるのである(図2において、(a)、(c)、(e)はポーラスアルミナ膜形成工程、(b)、(d)、(f)はエッチング工程を表す。)。
以下、本発明に用いられる各工程について順に説明する。
まず、本発明に用いられる微細孔形成工程について説明する。上述したように本工程は、アルミニウムを含有し、表面に結晶状態あるいは表面形状が不均一となっている不均一層を有する金属基体を用い、陽極酸化によって上記金属基体の表面に微細孔を有するアルミナ膜を形成するポーラスアルミナ膜形成工程と、上記アルミナ膜をエッチングすることにより上記微細孔の孔径を拡大するエッチング工程とを順次繰り返し実施することにより上記金属基体の表面に微細孔を形成する工程である。そして、上記エッチング工程が上記アルミナ膜の一部をエッチングするものであることを特徴とするものである。
まず、本工程に用いられる金属基体について説明する。本工程に用いられる金属基体としては、アルミニウムを含有し、表面に不均一層が形成されているものであれば特に限定されるものではない。ここで、本発明における不均一層とは、例えば、結晶状態あるいは表面形状が不均一になっている層を挙げることができる。結晶状態が不均一である不均一層としては、例えば、結晶粒界に分布がある態様を挙げることができる。また、表面形状が不均一である場合は、表面が平滑ではなく傷が入っていたり、あるいは微細孔が不均一に形成されていたりする態様を例示することができる。不均一層の具体例としては、例えば、表面が研磨されたことにより生じた加工変質層、部分的に欠け、異物付着が生じた微細孔表層、異物が付着、混入した表層、不純物が含まれる表層、および不均一に化学反応をした表層を挙げることができる。このようなことから、例えば、使用済みの反射防止フィルム製造用金型で、表面に形成された微細孔が不均一になっているものも、本発明に用いられる金属基体に含まれることになる。
次に、本工程に用いられるポーラスアルミナ膜形成工程について説明する。本工程は、上記金属基体の表面に微細孔を有するアルミナ膜を形成する工程である。本工程において、上記金属基体の表面に微細孔を有するアルミナ膜を形成する方法としては、所望の深さ、および配列態様で微細孔が形成されたアルミナ膜を形成できる方法であれば特に限定されるものではない。ここで、上記ポーラスアルミナ膜形成工程において形成される微細孔の深さや配置態様は、陽極酸化に用いる電解液の液性等に依存するものであるところ、本工程に用いられる電解液は、中性の電解液であっても、あるいは酸性の電解液であっても好適に用いることができる。なかでも本工程においては、上記電解液として酸性の電解液が用いられることが好ましい。酸性の電解液が用いられることにより、本工程において上記金型基体の表面に微細孔をランダムな位置に形成することができるからである。本工程に用いられる酸性の電解液としては、例えば、硫酸水溶液、シュウ酸水溶液、およびリン酸水溶液等を挙げることができる。
次に、本工程に用いられるエッチング工程について説明する。本工程は、上記アルミナ膜をエッチングすることにより上記微細孔の孔径を拡大する工程である。ここで、本工程は、上記ポーラスアルミナ膜形成工程によって形成されたアルミナ膜の一部をエッチングするものであり、アルミナ膜の全部を除去するものでないことを特徴とするものである。
本工程において、上記ポーラスアルミナ膜形成工程と上記エッチング工程とを繰り返し実施する際の繰り返しの程度としては、反射防止フィルム製造用金型として用いることが可能な程度に均一な微細孔が形成できるまで、複数回繰り返して行われる。
本発明においては特に、本工程に用いられる金属基体の表面に存在していた不均一層の厚み以上に金属基体表面をエッチングできる程度まで、複数回繰り返して行われることが好ましい。これにより、確実に均一な微細孔を表面に形成することができ、高い品質の反射防止フィルム製造用金型とすることができるからである。
なお、上記周期はすべての微細孔において均一ではない場合があるが、その場合は、単位面積あたりに形成された微細孔の平均周期を指すものとする。
なお、上記間隔はすべての微細孔において均一ではない場合があるが、その場合における上記間隔は、単位面積あたりに形成された微細孔間の平均距離を指すものとする。
本発明の反射防止フィルム製造用金型の作製方法は、少なくとも上記微細孔形成工程を有するものであり、必要に応じて他の任意の工程を有してもよいものである。
本発明の反射防止フィルム製造用金型の作製方法は、新規にモスアイ型反射防止フィルム製造用金型を作製する方法として使用できる。本発明によって作製される反射防止フィルム製造用金型を用いて製造される反射防止フィルムは、通常、表示装置等の最表面に配置されて用いられるものである。しかしながら、当該反射防止フィルムの表面に形成されたモスアイ構造は反射防止機能のみでなく、例えば、アンカー効果により、モスアイ構造上に任意の層を形成した場合に当該任意の層との接着性を向上させるという機能も奏し得るものである。このため、本発明によって作製された反射防止フィルム製造用金型を用いて製造される反射防止フィルムの用途は、上述したような表示装置の最表面に配置される用途に限られるものではなく、例えば、複数の層が積層された構成を有する光学部材の内部に配置され、反射防止機能と上記アンカー効果による接着性向上機能とを奏する態様で用いられる場合もある。
金属基体として研削により鏡面加工したことで表面が加工変質したA1000系のアルミニウム板を用い、シュウ酸水溶液0.1%にて電圧60Vをかけて陽極酸化を5分間行った(ポーラスアルミナ膜形成工程)。次にリン酸水溶液10%、50℃にて5分間エッチング(エッチング工程)を行った。この陽極酸化工程とエッチング工程を19回繰り返して微細孔形成工程を実施し、金属基体表面の不均一層を取り除きながら、円錐の孔形状をもつ多孔質性のアルミ酸化膜表面を形成し、反射防止フィルム製造用金型を得た。
ここで、上記金属基体の不均一層の厚みは最大1μmであったのに対し、上記微細孔形成工程においてエッチングされた金属基体の厚みは1μmであった。
実施例1と同様にして、ポーラスアルミナ膜形成工程とエッチング工程を6回繰り返して微細孔形成工程を行い、反射防止フィルム製造用金型を得た。上記微細孔形成工程においてエッチングされた金属基体の厚みは0.3μmであった。
金属基体として、使用により表面に欠けが生じた金型(欠けのサイズは100nm程度)を用い、シュウ酸水溶液0.1%にて電圧60Vをかけて陽極酸化を5分間行った(ポーラスアルミナ膜形成工程)。次に、リン酸水溶液10%、50℃にて5分間エッチングを行った(エッチング工程)。この陽極酸化とエッチングの処理を5回繰り返して、微細孔形成工程を実施し、欠けが生じた表面を取り除きながら、円錐の孔形状をもつ多孔質性のアルミナ膜表面を形成し、反射防止フィルム製造用金型を得た。
上記、実施例1、3、及び参考例2で得た反射防止フィルム製造用金型をSEMにより観察した。また、上記、実施例で得た反射防止フィルム製造用金型を用いてモスアイフィルムを製造し、反射率を測定した。
1リットルのガラス製容器にペンタエリスリトールトリアクリレート/HDIヌレート体(デスモジュールN3300 住化バイエルウレタン(株)製、「HDI」は、ヘキサメチレンジイソシアネートを示す。)15部、ポリエチレングリコールジアクリレート35部、1,4−ブタンジオールジアクリレート(官能基数:2、分子量:198、Tg:45℃、SR213サートマー社製)50部、光重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イルガキュア184,チバスペシャリティーケミカルス(株)製)5部、スリップ剤(パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、メガファックF443,DIC(株)製)0.6部を入れ、ディスペーサーで撹拌し(温度50℃〜60℃、撹拌時間30分)、本発明の反射防止フィルム製造用組成物を得た。
上記実施例1、3、及び参考例2で得た反射防止フィルム製造用金型に上記組成物を吐工し、厚さ80μm、タテ30cm、ヨコ30cmのトリアセチルセルロースフィルム(フジタックT80SZ、富士フィルム(株)製)の1方の面を上記組成物が吐工された反射防止フィルム製造用金型に被せ、ゴム製ローラを用いて0.35MPaの荷重で押圧し、トリアセチルセルロースフィルムと反射防止フィルム製造用金型の間にある組成物が均一に広がったことを確認し、該被膜層に紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズ(株)製)により、照射距離0cm、照射強度200mW/cm2、搬送速度2.5m/sの条件にて、トリアセチルセルロースフィルムを介して紫外線を照射し、硬化処理を行った。硬化直後に、反射防止フィルム製造用金型からトリアセチルセルロースフィルムを剥離し、反射防止層が設けられた反射防止フィルムを得た。
JIS Z 8722に記載された方法に準拠し、コニカミノルタセンシング製分光測色計CM−2600dを用い測定した。測定には金型表面の法線に対して、8°の角度から測定光を入射することによって、金型表面の正反射光を含む分光反射率(SCI)と、金型表面の正反射光を除いた分光反射率(SCE)と、を測定した後、金型表面の正反射光を含む分光反射率(SCI)から、金型表面の正反射光を除いた分光反射率(SCE)を差引くことによって、反射率を得た。
不均一層の厚み以上に金属基体のエッチングを行った実施例1と実施例3で得た反射防止フィルム製造用金型表面は、均一な円錐の孔形状をもつ多孔質性のアルミ酸化膜表面であり、その反射防止フィルム製造用金型を用いた反射防止フィルムの反射率((Y)値(%))は、0.18%であった。不均一層の厚み以下の金属基体のエッチングを行った参考例2の金型表面は不均一な部分があり、その金型を用いたフィルムの反射率は2.58%であった。これにより、実施例1、実施例3は反射防止フィルムとして有用であることが確認できた。
1a … 不均一層
X … アルミナ膜
Claims (1)
- アルミニウムを含有し、表面に、結晶状態あるいは表面形状が不均一となっている不均一層を有する金属基体を用い、陽極酸化によって前記金属基体の表面に微細孔を有するアルミナ膜を形成するポーラスアルミナ膜形成工程と、前記アルミナ膜をエッチングすることにより前記微細孔の孔径を拡大するエッチング工程とを順次繰り返し実施することにより前記金属基体の表面に微細孔を形成する微細孔形成工程を有する、反射防止フィルム製造用金型の作製方法であって、
前記不均一層が、表面が研磨されたことにより生じた加工変質層、部分的に欠けが生じた微細孔表層、及び、異物が付着した表層から選択される少なくとも1種であり、
前記ポーラスアルミナ膜形成工程が、0.1%シュウ酸水溶液を用いて電圧60Vで5分間陽極酸化を行う工程であり、
前記エッチング工程が前記アルミナ膜の一部をエッチングするものであって、10%リン酸水溶液を用いて50℃で5分間エッチングする工程であり、
前記微細孔形成工程が、少なくとも前記不均一層の厚み以上に前記金属基体のエッチングを伴うものであることを特徴とする、反射防止フィルム製造用金型の作製方法。
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